(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液体燃料用タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20231205BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20231205BHJP
B60K 15/077 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B60K15/04 E
B60K15/077 Z
(21)【出願番号】P 2019126805
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】垰 寛明
(72)【発明者】
【氏名】坂井 桂次
(72)【発明者】
【氏名】福田 紀久
(72)【発明者】
【氏名】倉内 健太
(72)【発明者】
【氏名】臼本 翔汰
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-234573(JP,A)
【文献】実開昭59-151823(JP,U)
【文献】実開平04-041412(JP,U)
【文献】特開2018-071502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B60K 15/04
B60K 15/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に
設けられた開口部から
供給される液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び
上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、
上記隔壁部の上端が、上記第1室に対する開口となる第1開口と、上記第2室に対する開口となる第2開口とに上記開口部を区画し、上記第1開口の開口面積が上記第2開口の開口面積より大きく、
上記隔壁部に、上記開口部から上記第1室への液体燃料の注入時に上記第1室から上記第2室へ液体燃料が流入するように上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成され、
上記第1室への液体燃料の注入時に上記第2室内の液体燃料の液面が上記第1室内の液体燃料の液面より低く位置するように上記連通孔が設けられている液体燃料用タンク。
【請求項2】
上部に
設けられた開口部から
供給される液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び
上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、
上記隔壁部の上端が、上記第1室に対する開口となる第1開口と、上記第2室に対する開口となる第2開口とに上記開口部を区画し、上記第1開口の開口面積が上記第2開口の開口面積より大きく、
上記隔壁部の下部に、上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成されている液体燃料用タンク。
【請求項3】
上記連通孔の開孔面積が、上記
第1開口の
開口面積より小さい請求項1又は請求項2に記載の液体燃料用タンク。
【請求項4】
上記タンク本体の上記開口部から外方へ突設された筒状のフィラーネックをさらに備えており、
上記フィラーネックが、内部流路を第1流路及び第2流路に区画する仕切部を有し、
上記仕切部の下端と上記隔壁部の上記上端とが連続している請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液体燃料用タンク。
【請求項5】
上記隔壁部が、上記第2室及び上記第1室を上下に区画する第1隔壁を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体燃料用タンク。
【請求項6】
上記隔壁部が、上記上端を有する第2隔壁を有し、
上記第2隔壁の下端と上記第1隔壁の端部とが連続している請求項5に記載の液体燃料用タンク。
【請求項7】
上記隔壁部が、上記第1室及び上記第2室を左右に区画し、上記第1隔壁の端部と上端が連続する第3隔壁を有し、
上記第3隔壁に上記連通孔が設けられている請求項6に記載の液体燃料用タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料用タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料用タンクとしては例えば特開2003-341799号のものが公知である。この公報所載の液体燃料用タンクは、タンクの外面に満タンを確認するゲージを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報所載の液体燃料用タンクは、ゲージを目視することで満タンを確認するものであるため、見逃し等により液体燃料を入れ過ぎることがある。特に、液体燃料供給ノズルとして、自動的に液面を検知して供給を停止する機能を備える給油ガンを用いることが多く、ゲージを見逃し、所望の液体燃料膨張用の空気規定容量を超えて液体燃料を入れるおそれが高くなる。さらに、フィラーネックが長い場合、フィラーネック内で液面が急上昇しやすいことから、給油ガンが液面を検知して自動停止するタイミングが遅くなり、上記空気規定容量を超えるおそれがさらに高くなる。タンク内の空気が空気規定容量以下となる場合、燃料温度が上昇し体積が増加した際にエアベンドから液体燃料が漏出するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、十分な空気空間を残した状態で液体燃料を容易かつ確実に注入することができる液体燃料用タンクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る液体燃料用タンクは、上部に開口部を有し、液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、上記隔壁部に、上記開口部から上記第1室への液体燃料の注入時に上記第1室から上記第2室へ液体燃料を流入するように上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成され、上記第1室への液体燃料の注入時に上記第2室内の液体燃料の液面が上記第1室内の液体燃料の液面より低く位置するように上記連通孔が設けられている。
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る液体燃料用タンクは、上部に開口部が形成され、液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、上記隔壁部の下部に、上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液体燃料用タンクは、十分な空気空間を残した状態で液体燃料を容易かつ確実に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体燃料用タンクの内部構造を説明するための模式的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の液体燃料用タンクを示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の液体燃料用タンクを示す模式的拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の他実施形態に係る液体燃料用タンクの内部構造を説明するための模式的断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の液体燃料用タンクを示す模式的斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の他実施形態に係る液体燃料用タンクの内部構造を説明するための模式的断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の液体燃料用タンクを示す模式的斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の他実施形態に係る液体燃料用タンクの内部構造を説明するための模式的断面図である。
【
図9】
図9は、
図8の液体燃料用タンクを示す模式的斜視図である。
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
当該液体燃料用タンクは、上部に開口部を有し、液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、上記隔壁部に、上記開口部から上記第1室への液体燃料の注入時に上記第1室から上記第2室へ液体燃料を流入するように上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成され、上記第1室への液体燃料の注入時に上記第2室内の液体燃料の液面が上記第1室内の液体燃料の液面より低く位置するように上記連通孔が設けられている。
【0011】
当該液体燃料用タンクにおいて、上記開口部から上記第1室へ液体燃料を注入すると、上記第1室から上記第2室へ液体燃料が上記連通孔を介して流入する。そして、上記第1室内の燃料液体の液面が上記開口部近傍まで到達すると、液体燃料の注入を停止する。停止時に、上記第2室内の液体燃料の液面は上記第1室の液体燃料の液面よりも低く位置するため、上記第2室の上方には十分な空気空間が残される。
【0012】
当該液体燃料用タンクは、上部に開口部が形成され、液体燃料を貯留可能なタンク本体、及び上端が上記開口部に向けて設けられ、上記タンク本体の内部空間を第1室と第2室とに区画する隔壁部を備え、上記隔壁部の下部に、上記第1室及び上記第2室を連通する連通孔が形成されている。
【0013】
当該液体燃料用タンクにおいて、上記開口部から上記第1室へ液体燃料を注入すると、上記第1室から上記第2室へ液体燃料が上記隔壁部の下部に形成された上記連通孔を介して流入する。上記第1室への液体燃料の注入の体積流量を上記第2室への液体燃料の流入の体積流量よりも大きくすることで、上記第1室への液体燃料の注入時において、上記第2室内の液体燃料の液面が上記第1室内の液体燃料の液面より低く位置する。そして、上記第1室内の液体燃料の液面が上記開口部近傍まで到達すると、液体燃料の注入を停止する。停止時に上記第2室内の液体燃料の液面は上記第1室の液体燃料の液面よりも低く位置するため、上記第2室の上方には十分な空気空間が残される。なお、液体燃料の注入完了後、当該液体燃料用タンク内の液体燃料がサクションパイプなどから排出される際に、上記第2室から上記第1室へ又は上記第1室から上記第2室へ液体燃料が上記連通孔を介して流入する。上記連通孔が形成される「上記隔壁部の下部」とは、隔壁部の最下端のみならず、液体燃料が排出された際に上記第1室又は上記第2室に残存する量が許容される位置であれば最下端でなくともよい。
【0014】
なお、上述の液体燃料の注入を停止する方法は、液体燃料供給ノズルが備える自動停止機構による停止でもよいし、上記開口部近傍への液面の到達を目視することによる手動での停止でもよい。いずれの方法によっても、上述の通り上記第2室に十分な空気空間を容易かつ確実に残すことができる。
【0015】
上記連通孔の開孔面積は、上記第1室の上部開口の面積より小さいことが好ましい。これにより、上記第1室への液体燃料の注入時に上記第2室内の液体燃料の液面が上記第1室内の液体燃料の液面より低く位置するよう容易かつ確実に構成することができる。
【0016】
当該液体燃料用タンクは、上記タンク本体の上記開口部から外方へ突設された筒状のフィラーネックをさらに備えており、上記フィラーネックが、内部流路を第1流路及び第2流路に区画する仕切部を有し、上記仕切部の下端と上記隔壁部の上記上端とが連続している。これにより、液体燃料供給ノズルの吐出口から上記第1室へ液体燃料を容易かつ確実に注入することができる。
【0017】
上記隔壁部が、上記第2室及び上記第1室を上下に区画する第1隔壁を有することが好ましい。これにより、上記第2室が上記第1室よりも上方に位置することで、液体燃料の注入の停止時に上記第2室の上方に空気空間をより容易に残すことができる。
【0018】
上記隔壁部が上述のように上記第1隔壁を有する場合、当該液体燃料用タンクは、上記隔壁部が、上記上端を有する第2隔壁を有し、上記第2隔壁の下端と上記第1隔壁の端部とが連続していることが好ましい。これにより、上記第2隔壁によって上記第1室と上記第2室とが左右方向で区画され、液体燃料の注入の停止時に上記第2室の上方に空気空間をより容易に残すことができる。
【0019】
上記隔壁部が上述のように上記第2隔壁を有する場合、上記隔壁部が、上記第1室及び上記第2室を左右に区画し、上記第1隔壁の端部と上端が連続する第3隔壁を有し、上記第3隔壁に上記連通孔が設けられていることが好ましい。これにより、上記第3隔壁によって上記第1室と上記第2室とが左右方向で区画され、液体燃料の注入の停止時に上記第2室の上方に空気空間をより容易に残すことができる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る液体燃料用タンクについて図面を参照しつつ詳説する。なお、以下の説明において、当該液体燃料用タンクの底面に対して垂直上向きを上、垂直下向きを下ということがある。また、上下方向に直交する方向を左右ということがある。
【0021】
[液体燃料用タンクの全体構成構造]
図1及び
図2の液体燃料用タンク1は、上部に開口部13を有し、液体燃料を貯留可能なタンク本体2、及び上端21aが開口部13に向けて設けられ、タンク本体2の内部空間を第1室11と第2室12とに区画する隔壁部21を備えている。隔壁部21には、第1室11及び第2室12を連通する連通孔31が形成されている。
【0022】
当該液体燃料用タンク1は、タンク本体2の開口部13から外方へ突設された筒状のフィラーネック41を備えている。フィラーネック41は、上部に液体供給ノズルが挿入される注入口46を有している。フィラーネック41は、内部流路42を第1流路44と第2流路45に区画する仕切部43を有している。
【0023】
当該液体燃料用タンク1は、
図1に示すように、第1室11の内部にサクションパイプ16を備えている。サクションパイプ16は、図示しない内燃機関に液体燃料を供給するために設けられている。また、当該液体燃料用タンク1は、タンク本体2の下部に設けられたドレーン17を備えている。ドレーン17は、第1室11及び第2室12の下方にそれぞれ設けられている。
【0024】
なお、当該液体燃料用タンク1は、対向する一対の側壁間に配され、多数の開口が形成された1又は複数のバッフルプレート(図示省略)を備えている。バッフルプレートは、加速時や減速時に液体燃料が片寄らないようにするために設けられている。また、当該液体燃料用タンク1は、フロート、リターンパイプ、フューエルベーパーバルブ等、種々の部品を具備している。フロートは、液体燃料の残量を計測するための部材である。リターンパイプは、使われなかった液体燃料をタンク本体2に戻すための部材である。フューエルベーパーバルブは、タンク本体2内に一定以上の圧力が加わった場合にその圧力を解放する部品で、液体燃料の気化によって内圧が上昇した場合にタンク本体2の損傷を防ぐための部材である。
【0025】
[タンク本体]
タンク本体2は、直方体の箱形に設けられている。このタンク本体2は、矩形板状の下壁2a、下壁2aと略同形同寸法で下壁2aの上方で対向する上壁2b、上壁2bの前縁と下壁2aの前縁とに接続された前壁2c、この前壁2cに対向するとともに上壁2bの後縁と下壁2aの後縁とに接続された後壁2d、及び上壁2bの側縁と下壁2aの側縁とにそれぞれ接続され互いに対向する一対の側壁2eを有している。タンク本体2は、例えば鋼板などによって形成されている。
【0026】
タンク本体2の開口部13は、円形に設けられている。開口部13は、後述するように
タンク本体2の開口部13まで設けられた隔壁部21の上端21aによって、第1開口14(第1室11の上部開口)と第2開口15(第2室12の上部開口)とに区画されている。第1開口14は、第2開口15よりも開口面積が大きく設けられる。
【0027】
[隔壁部]
隔壁部21は、上述のように上端21aがタンク本体2の開口部13まで設けられている。隔壁部21は、第2室12及び第1室11を上下に区画する第1隔壁22と、隔壁部21の上端21aを有する第2隔壁23とを有し、第2隔壁23の下端部と第1隔壁22の端部とが連続している。隔壁部21は、例えば鋼板などによって形成されている。
【0028】
第1隔壁22は、タンク本体2の下壁2a及び上壁2bと対向し、タンク本体2の下壁2a及び上壁2bと略平行に配されている。第1隔壁22は、矩形状に設けられている。第1隔壁22の三辺の端部が、前壁2c及び一対の側壁2eとそれぞれ接続されている。第1隔壁22の残りの一辺の端部は、タンク本体2の開口部13の下方に至るまで延出している。
【0029】
第2隔壁23は、第1隔壁22と略垂直に配され、タンク本体2の前壁2c及び後壁2dと対向している。第2隔壁23は、第1室11及び第2室12を左右に区画する。第2隔壁23によって左右に区画される第1室11の箇所の水平断面面積は、第2室12の箇所の水平断面面積よりも大きい。
【0030】
第2隔壁23は、矩形状に設けられている。第2隔壁23の三辺の端部は、上壁2b及び一対の側壁2eと接続されている。第2隔壁23の残りの一辺の端部は、上述のようにタンク本体2の開口部13の下方まで延出した第1隔壁22の残りの一辺の端部と接続されている。
【0031】
第1隔壁22と第2隔壁23とは、第1隔壁22及び第2隔壁23を補強するための補強板25によって接続されている。この補強板25は、第2室12に配され、第1隔壁22の上面、第2隔壁23の一方の面及び一対の側壁2eに接続されている。補強板25には、多数の開口が形成されている。
【0032】
上記バッフルプレート(図示省略)は、第1室11及び第2室12にそれぞれ設けられていることが好ましい。この場合、第1室11内のバッフルプレートは、第1隔壁22の上面と、タンク本体2の上壁2b及び一対の側壁2eとに接続されている。第2室12内のバッフルプレートは、第1隔壁22の下面と、タンク本体2の下壁2a及び一対の側壁2eとに接続されている。
【0033】
[連通孔]
連通孔31は、上記第1隔壁22に形成されている。このように連通孔31は水平かつ隔壁部21の最も低い位置に配された第1隔壁22に形成されているため、連通孔31は隔壁部21の下部に形成されている。連通孔31のみによって第1室11と第2室12とが連通しており、第1室11への液体燃料の注入時に、連通孔31を介して、第1室11から第2室12へ燃料液体が流入する。また、液体燃料の注入完了後、当該液体燃料用タンク1内の液体燃料がサクションパイプ16から排出される際に、連通孔31を介して、第2室12から第1室11へ液体燃料が流入する。
【0034】
本実施形態においては、第1隔壁22に複数(図示例では二つ)の連通孔31が形成されている。一の連通孔31は、第2隔壁23に隣接して形成され、他の連通孔31は、タンク本体2の前壁2cに隣接して形成されている。このため、当該液体燃料用タンク1が前後方向に傾斜しても、少なくともいずれか一方の連通孔31を介して、第2室12から第1室11へ液体燃料が的確に流入する。
【0035】
連通孔31は、第1室11への液体燃料の注入時に、第2室12内における液体燃料の液面が第1室11内における液体燃料の液面より低く位置するよう設けられている。連通孔31の開孔面積(複数の連通孔31の合計開孔面積)は、第1室11の上部開口(第1開口14)の面積より小さい。具体的には、連通孔31は、液体燃料供給ノズルによる液体燃料の注入の体積流量よりも第1室11から第2室12への液体燃料の流入の体積流量よりも小さくなるよう設けられている。連通孔31の形状は特に限定されるものではなく、円形、正円形、楕円形、正方形、直方形、線形、三角形、四角形、五角形、六角形、略四角形等の形状であってよい。
【0036】
[フィラーネック]
フィラーネック41は、仕切部43の下端が隔壁部21の上端21aと連続している。このため、内部流路42の第1流路44及び第2流路45が、第1開口14及び第2開口15にそれぞれ連通している。液体燃料の注入時において、注入口46、第1流路44及び第1開口14を介して液体燃料供給ノズルの吐出口を挿入し、液体燃料を第1室11内に注入することができる。第1流路44は、第2流路45よりも開口面積が大きく設けられる。
【0037】
なお、第2流路45の上部開口の最小径が、液体燃料供給ノズルの吐出口の外径より小さいとよい。これにより、第2流路45への液体燃料供給ノズルの誤挿入を防止することができる。
【0038】
フィラーネック41は、フィラーキャップの係合部に係合可能な被係合部(図示省略)を備えている。フィラーキャップがフィラーネック41に係合されることで、液体燃料の漏出の防止がなされ、当該液体燃料用タンク1への異物の混入が防止される。
【0039】
仕切部43の上端は、フィラーネック41の注入口46(上部開口)まで至らず、第1流路44と第2流路45とは第1流路44及び第2流路45の上部の内部流路42を介して連通している。
【0040】
[液体燃料]
当該液体燃料用タンク1に注入される液体燃料とは、内燃機関に使用することが可能な燃料であって、例えば、A重油、B重油、C重油、軽油、ガソリン、石油溜分、石炭乾溜、分解油等の化石燃料や、バイオマスから製造されるメタノールやエタノール等のバイオ燃料をいう。
【0041】
[利点]
当該液体燃料用タンク1は、注入口46及び第1開口14を介して第1室11内へ液体燃料供給ノズルの吐出口を挿入し、液体燃料が第1室11内に注入される。第1室11に液体燃料が注入され、第1室11内における液体燃料の液面が第1隔壁22まで到達すると、第1室11から第2室12へ液体燃料が連通孔31を介して流入する。第2室12へ液体燃料が流入すると、第2室12内の空気は、第2開口15及び第2流路45を介して外部に排出される。液体燃料が第2室12に連通孔31を介して流入するが、第2室12への液体燃料の流入速度は第1室11への液体燃料の注入速度より低下する。すると、第2室12に流入する液体燃料の体積流量が第1室11に注入される液体燃料の体積流量よりも小さくなる。その結果、第1室11への液体燃料の注入時において、第2室12内における液体燃料の液面が第1室11内における液体燃料の液面より低く位置する。そして、第1室11内の液面が第1開口14近傍まで到達すると、液体燃料の注入を停止する。この液体燃料の注入を停止する方法は、液体燃料供給ノズルが備える自動停止機構による停止でもよいし、作業者の目視であってもよい。
【0042】
液体燃料の注入の停止時には、第2室12内の液面は第1室11内の液面よりも低く位置するため、第2室12の上方には十分な空気空間が残される。また、液体燃料の注入の停止後も液体燃料が、第1室11から第2室12へ連通孔31を介して流入するため、液体燃料の注入を停止してから所定時間経過すると第2室12の液面と第1室11の液面とが一致する。
【0043】
当該液体燃料用タンク1において、液体燃料の注入の停止時に第2室12上方に残存する空気空間が液体燃料用タンク1全体として必要な空気空間となる。上述の通り、液体燃料の注入の停止後も液体燃料が第2室12に流入するが、当該液体燃料用タンク1全体の液体燃料の容量及び空気容量は変動しない。従って、液体燃料の注入の停止時に第2室12上方に残存する空気空間と同容量の空気空間が、所定時間の経過後に第1室11上方及び第2室12上方に存在することとなる。この結果、当該液体燃料用タンク1内にはその内部に十分な空気空間が存在するため、燃料温度が上昇し体積が増加した際にエアベンド等から液体燃料が漏出するおそれが少ない。
【0044】
特にフィラーネックが長い場合は、フィラーネック内で液面が急上昇しやすいことから、給油ガンが液面を検知して自動停止するタイミングが遅くなり、給油者が空気規定容量を超えて液体燃料を注入するおそれが高くなる。当該液体燃料用タンク1は、その内部に十分な空気空間が残されるため、燃料温度が上昇した際にエアベンド等から液体燃料が漏出するおそれを的確に抑制できる。
【0045】
[その他の実施形態]
今回開示された実施形態は、例示であって本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換、追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0046】
なお、以降の説明において、
図1から
図3までに図示した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。また、
図4から
図9では、フィラーネックを省略して図示している。
【0047】
また、
図1から
図3に示す実施形態においては、隔壁部に複数の連通孔を有するものについて説明したが、
図4及び
図5に示す液体燃料用タンク51のように、隔壁部21に一つの連通孔31が形成されているものであってもよい。この
図4及び
図5の隔壁部21には、第1隔壁22に一つの連通孔31が形成されている。
【0048】
また、
図1から
図3に示す実施形態においては、第1隔壁22の一端部は、第2隔壁23の下端部に接続されているが、他端部(上記一端部に対向する他辺の端部)は、タンク本体2の前壁2cに接続されていなくてもよい。例えば、下壁2a、上壁2b、後壁2dに接続されていてもよいし、下壁2a、上壁2b、後壁2dと接続された別の隔壁と接続されていてもよい。かかる場合において第2隔壁23は、第1隔壁22と略垂直に配されていなくてもよい。
【0049】
図6及び
図7に示す液体燃料用タンク61は、隔壁部21が、
図1から
図3のものと同様に第1隔壁22及び第2隔壁23を有するとともに、第1室11及び第2室12を左右に区画し、第1隔壁22の端部と上端が連続する第3隔壁24を有している。第3隔壁24によって左右に区画される第1室11の箇所の水平断面面積は、第3隔壁24によって左右に区画される第2室12の箇所の水平断面面積よりも小さい。また、この隔壁部21は、第1隔壁22には連通孔31が形成されておらず、第3隔壁24の下部に連通孔31が設けられている。
【0050】
図6及び
図7の第1隔壁22の一端部は、
図1から
図3のものと同様に第2隔壁23の下端部に接続されているが、他端部(上記一端部に対向する他辺の端部)は、前壁2cに接続されておらず、第3隔壁24の上辺の端部と接続されている。この第3隔壁24は、第1隔壁22と略垂直に配され、タンク本体2の前壁2c及び後壁2dと対向している。第3隔壁24は、矩形状に設けられている。第3隔壁24の三辺の端部は、下壁2a及び一対の側壁2eと接続され、第3隔壁24の上端部は、上述のようにタンク本体2の上記他端部と接続されている。なお、
図6及び
図7の液体燃料用タンク61にあっては、第1室11及び第2室12のそれぞれにドレーン17が接続されている。また、
図6及び
図7の第1隔壁22に連通孔31を設けることも適宜設計変更可能である。さらに、
図6及び
図7の液体燃料用タンク61において、第3隔壁24の上方に第3隔壁24に連続するように第2室12内のバッフルプレートを設けることが可能である。また、
図6及び
図7の液体燃料用タンク61において、第2隔壁23の下方に第2隔壁23に連続するように第1室11内のバッフルプレートを設けることが可能である。
【0051】
さらに、
図1から
図3に示す実施形態においては、第1隔壁及び第2隔壁を有するものについて説明したが、
図8及び
図9に示すように隔壁部21が第1隔壁22のみを有するものであってもよい。この
図8及び
図9の第1隔壁22は、上端21aがフィラーネック41の仕切部43の下端に接続され、下端がタンク本体2の下壁2aに接続されている。換言すると、第1隔壁22が、傾斜した状態でタンク本体2の上壁2b及び下壁2aに対向して設けられているものであってもよい。なお、
図8及び
図9の液体燃料用タンク71にあっては、第1室11及び第2室12のそれぞれにドレーン17が接続されている。
【0052】
上記実施形態における、タンク本体、第1室、第2室、開口部、連通孔の長さ、幅、高さ、孔径等は適宜設計可能である。連通孔の開孔面積は、第1室の上部開口の面積より小さいとよい。
【0053】
例えば、
図4及び
図5に示す液体燃料用タンク51がタンク本体2の長さを215cm、幅を35cm、高さを150cmとし、第2室12の長さを200cm、幅を35cm、高さを35cmとし、連通孔31をその直径が2cmの円形孔として設計された場合、上記液体燃料用タンク51に液体燃料を注入すると液体燃料の注入の停止時には、第2室12の液面は第1室11の液面よりも低く位置する。上記液体燃料用タンク51に30L/分で液体燃料を注入した場合、第1開口14に液面が達した際の第2室12の液面は、第2室12の底面から1.5cmの高さに位置する。すなわち、高位の第1室11の液面と低位の第2室12の液面の高さの差は、98.5cmとなる。この場合、10秒間で下がる第1室11の液面は、トリチェリの定理より算出される連通孔31を介した第2室12への液体燃料の流入速度及び流入する体積流量から、およそ0.3cmとなる。例えば、給油者が液体燃料の注入を停止して10秒後に目視により上記液体燃料用タンク51の内部を確認した場合、上記給油者は上記液体燃料用タンク51の内部が液体燃料で満たされている状態と認識し、追加での液体燃料の注入は行わない。この結果、上記液体燃料用タンク51内には十分な空気空間が残される。
【0054】
上記実施形態にあっては、タンク本体が直方体の箱形であるものについて説明したが、タンク本体の形状はこれに限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。
【0055】
上記実施形態にあっては、仕切部の下端がタンク本体の上端と下端が接続されるフィラーネックを有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに、フィラーネックを有する場合であっても、上記仕切部を有さないものであってもよい。また、上記実施形態にあっては、隔壁部の上端がタンク本体の開口まで設けられているものについて説明したが、本発明はこれに限定されず、隔壁部によって第1室と第2室とが区画され液体燃料を注入する際に液体燃料供給ノズルの吐出口から液体燃料が直接第2室に注入されないものであれば適宜設計変更可能である。
【0056】
上記実施形態にあっては、補強板が第2室内に設けられるものについて説明したが、補強板を第1室内に設けることも可能である。補強板は、隔壁部を構成するいずれかの隔壁と他のいずれかの隔壁とを接続するように設けられていてもよいし、隔壁部とタンク本体の上壁、側壁、前壁、後壁、下壁のいずれかの壁とを接続するように設けられていてもよい。また補強板は、タンク本体の上壁、側壁、前壁、後壁、下壁のいずれかの壁と他のいずれかの壁とを補強板で接続するように設けてもよい。
【0057】
上記実施形態にあっては、サクションパイプが第1室に設けられるものについて説明したが、サクションパイプを第2室に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る液体燃料用タンクは、例えばクレーン車やショベルカー等の建設機械、産業機械等に取付けられ、液体燃料を貯蔵し、内燃機関に供給するために特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,51,61,71 液体燃料用タンク
2 タンク本体
11 第1室
12 第2室
13 開口部
14 第1開口
15 第2開口
16 サクションパイプ
17 ドレーン
21 隔壁部
21a 上端
22 第1隔壁
23 第2隔壁
24 第3隔壁
25 補強板
31 連通孔
41 フィラーネック
42 内部流路
43 仕切部
44 第1流路
45 第2流路
46 注入口