(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】反射スクリーン、映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20231205BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231205BHJP
G02B 5/09 20060101ALI20231205BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231205BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20231205BHJP
G02B 5/23 20060101ALI20231205BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20231205BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/00 D
G02B5/09
G02B5/00 A
G02B5/02 B
G02B5/23
H04N5/74 C
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2019131975
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2019075530
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】関口 博
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146666(JP,A)
【文献】特開平04-001740(JP,A)
【文献】特開2017-211454(JP,A)
【文献】特開2017-090617(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108387(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/151006(WO,A1)
【文献】特開2004-198931(JP,A)
【文献】特開2014-095771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036359(US,A1)
【文献】特開2016-200783(JP,A)
【文献】特表2015-524079(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094581(WO,A1)
【文献】特開2016-080787(JP,A)
【文献】特開2002-090513(JP,A)
【文献】特開2005-107011(JP,A)
【文献】特開2017-156452(JP,A)
【文献】特開2018-063404(JP,A)
【文献】特開2015-179201(JP,A)
【文献】特開平05-011347(JP,A)
【文献】特開昭53-082330(JP,A)
【文献】中国特許第104298063(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 - 1/08 、 3/00 - 5/136、
5/20 - 5/28 、
G02F 1/13 、 1/137- 1/141、
G03B21/00 -21/10 、21/12 -21/30 、
21/56 -21/64 、33/00 -33/16 、
H04N 5/66 - 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光の一部を反射して映像を表示する反射スクリーンであって、
光透過性を有し、単位光学形状が背面側の面に複数配列された光学形状層と、
前記単位光学形状の少なくとも一部に形成され、入射光の一部を反射し、入射光のその他の少なくとも一部を透過させる反射層と、
を備え、
前記単位光学形状は、配列方向で切断した断面形状において、
背面側に最も突出した鋭角状の頂点部及び映像源側に最も凹んだ湾曲形状の谷底部、又は、背面側に最も突出した湾曲形状の頂点部及び映像源側に最も凹んだ鋭角状の谷底部を有し、
前記光学形状層は、前記頂点部及び前記谷底部を境にして、
映像光が入射する第1の面と、
前記第1の面よりも幅が狭く、前記第1の面に対向する側の第2の面と、
を有し、
前記光学形状層の前記第1の面及び前記第2の面は、配列方向で切断した断面形状が湾曲しており、
前記単位光学形状の配列方向における光の拡散作用は、前記配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きく、
画面中央で、正面が、最大輝度となる条件で、映像光を投影した状況での角度輝度分布を測定した場合に、前記単位光学形状の配列方向における半値角は、配列方向に直交する方向における半値角よりも大きい、反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
画面中央で、正面が、最大輝度となる条件で、映像光を投影した状況での角度輝度分布を測定した場合に、前記単位光学形状の配列方向における半値角は、配列方向に直交する方向における半値角よりも、20%から100%大きいこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記光学形状層は、
映像光が入射する前記第1の面と、
前記第1の面に対向する前記第2の面と、
前記第1の面と前記第2の面とを接続する曲面で構成された接続面と、
を有すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
前記反射層は、少なくとも映像源側の面が粗面であり、入射光の一部を拡散反射すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項5】
請求項4に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位光学形状は、その表面に微細な凹凸形状を有し、
前記凹凸形状は、前記単位光学形状の配列方向の光拡散効果が前記単位光学形状の配列方向に直交する方向の光拡散効果よりも高くなる形状であって、
前記反射層の少なくとも前記単位光学形状側の面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有していること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項6】
請求項4に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位光学形状は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状を有し、
前記反射層の少なくとも前記単位光学形状側の面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有していること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位光学形状の配列方向において、該反射スクリーンの反射光のピーク輝度となる出射角度から輝度が1/2となる出射角度までの角度変化量を+α
V1,-α
V2とし、その絶対値の平均値をα
Vとするとき、5°≦α
V≦45°であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位光学形状の配列方向において、該反射スクリーンの反射光のピーク輝度となる出射角度から輝度が1/2となる出射角度までの角度変化量を+α
V1,-α
V2とし、その絶対値の平均値をα
Vとし、前記第1の面がスクリーン面に平行な面となす角度をθ1とするとき、該反射スクリーンの少なくとも一部の領域において、α
V<arcsin(n×sin(2×(θ1)))という関係を満たすこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項9】
請求項1から請求項8の発明までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
当該反射スクリーンの厚み方向において、前記反射層よりも背面側に設けられた光吸収層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
当該反射スクリーンの厚み方向において、前記反射層よりも背面側に設けられ、透過率を変化させる調光層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項11】
請求項10に記載の反射スクリーンにおいて、
前記調光層は、
透明な第1電極と、
前記第1電極と対向配置された透明な第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差に応じて透過率を変化させる調光材料と、
を有すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項12】
請求項11に記載の反射スクリーンにおいて、
前記調光材料は、二色性色素を有する液晶であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項13】
請求項12に記載の反射スクリーンにおいて、
前記調光層は、感光物質を含むこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項14】
請求項13に記載の反射スクリーンにおいて、
前記感光物質は、紫外線を励起光として受光することにより透過率が変化し、
励起光を前記感光物質へ導光する導光層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項15】
請求項14に記載の反射スクリーンにおいて、
前記調光層は、前記感光物質及び前記導光層を両側から挟む位置に配置され前記励起光の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
前記反射層は、前記単位光学形状の前記映像光が入射する位置に複数の島状に形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
前記反射層は、誘電体膜を少なくとも1層含むこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
前記光学形状層は、前記単位光学形状が同心円状に複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を有すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項19】
請求項18に記載の反射スクリーンにおいて、
前記サーキュラーフレネルレンズ形状の中心は、当該反射スクリーンの外に設けられていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
当該反射スクリーンの厚み方向において前記反射層よりも背面側に、光透過性を有し、前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項21】
請求項1から請求項20までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
光を拡散する機能を有する拡散粒子を含有する光拡散層を備えていないこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項22】
請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記反射層は、当該反射スクリーンの厚み方向において所定の間隔を空けて複数層設けられていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項23】
請求項1から請求項22までのいずれかに記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源と、
を備える映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン、及び、これを備える映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、映像源から投射された映像光を反射して表示する反射スクリーンとして、様々なものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。なかでも、窓ガラス等のように透光性の高い部材に貼り付ける等し、映像光を投射して映像が良好に視認できる反射スクリーンとして使用でき、映像光を投射しない不使用時等にはスクリーンの向こう側の景色が透けて見える半透過型の反射スクリーンは、意匠性の高さ等から需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半透過型の反射スクリーンには、フレネルレンズ形状等を形成して映像光を所定の位置で見やすくするように偏向(集光)させるものがある。しかし、映像光の偏向効果を高めるためには、反射スクリーンと映像源との相対的な位置を厳密に設定する必要があり、反射スクリーン及び映像源の設置作業の難易度が高い場合があった。
【0005】
本発明の課題は、反射スクリーンと映像源との相対的な位置の自由度が高く、かつ、良好な映像を表示できる反射スクリーン、映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の発明は、映像源(LS)から投射された映像光の一部を反射して映像を表示する反射スクリーン(10)であって、光透過性を有し、単位光学形状(121)が背面側の面に複数配列された光学形状層(12)と、前記単位光学形状(121)の少なくとも一部に形成され、入射光の一部を反射し、入射光のその他の少なくとも一部を透過させる反射層(13)と、を備え、前記単位光学形状(121)の配列方向における光の拡散作用は、前記配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きい反射スクリーン(10)である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に記載の反射スクリーン(10)において、画面中央で、正面が、最大輝度となる条件で、映像光を投影した状況での角度輝度分布を測定した場合に、前記単位光学形状(121)の配列方向における半値角は、配列方向に直交する方向における半値角よりも、5%以上大きいこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記光学形状層(12)は、映像光が入射する第1の面(121a)と、前記第1の面(121a)に対向する第2の面(121b)と、前記第1の面(121a)と前記第2の面(121b)とを接続する曲面で構成された接続面(121c)と、を有すること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0010】
第4の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記単位光学形状(121)は、配列方向で切断した断面形状において、映像源側とは反対側に最も突出した頂点部(T)と、映像源側に最も凹んだ谷底部(V)とを有し、前記光学形状層(12)は、前記頂点部(T)及び前記谷底部(V)を境にして幅が広い側の第1の面(121a)と、前記第1の面(121a)に対向する側の第2の面(121b)と、を有し、少なくとも前記第1の面(121a)は、配列方向で切断した断面形状が湾曲していること、を特長とする反射スクリーン(10)である。
【0011】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、前記反射層は、少なくとも映像源側の面が粗面であり、入射光の一部を拡散反射すること、を特徴とする反射スクリーン(10)。
【0012】
第6の発明は、第5の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記単位光学形状(121)は、その表面に微細な凹凸形状を有し、前記凹凸形状は、前記単位光学形状(121)の配列方向の光拡散効果が前記単位光学形状(121)の配列方向に直交する方向の光拡散効果よりも高くなる形状であって、前記反射層の少なくとも前記単位光学形状(121)側の面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有していること、を特徴とする反射スクリーン(10)。
【0013】
第7の発明は、第5の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記単位光学形状(121)は、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状を有し、前記反射層の少なくとも前記単位光学形状(121)側の面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有していること、を特徴とする反射スクリーン(10)。
【0014】
第8の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10)において、前記単位光学形状(121)の配列方向において、該反射スクリーン(10)の反射光のピーク輝度となる出射角度から輝度が1/2となる出射角度までの角度変化量を+αV1,-αV2とし、その絶対値の平均値をαVとするとき、5°≦αV≦45°であること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0015】
第9の発明は、第1の発明から第8の発明までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10)において、前記単位光学形状(121)の配列方向において、該反射スクリーン(10)の反射光のピーク輝度となる出射角度から輝度が1/2となる出射角度までの角度変化量を+αV1,-αV2とし、その絶対値の平均値をαVとし、前記第1の面がスクリーン面に平行な面となす角度をθ1とするとき、該反射スクリーン(10)の少なくとも一部の領域において、αV<arcsin(n×sin(2×(θ1)))という関係を満たすこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0016】
第10の発明は、第1の発明から第9の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、当該反射スクリーン(10)の厚み方向において、前記反射層(13)よりも背面側に設けられた光吸収層(60)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0017】
第11の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれ21かに記載の反射スクリーン(10)において、当該反射スクリーン(10)の厚み方向において、前記反射層(13)よりも背面側に設けられ、透過率を変化させる調光層(20、40、210)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0018】
第12の発明は、第11の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記調光層(20)は、透明な第1電極(22A)と、前記第1電極(22A)と対向配置された透明な第2電極(22B)と、前記第1電極(22A)と前記第2電極(22B)との間に配置され、前記第1電極(22A)と前記第2電極(22B)との間の電位差に応じて透過率を変化させる調光材料(26、27)と、を有すること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0019】
第13の発明は、第12の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記調光材料(26、27)は、二色性色素を有する液晶であること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0020】
第14の発明は、第11の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記調光層(40)は、感光物質を含むこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0021】
第15の発明は、第14の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記感光物質は、紫外線を励起光として受光することにより透過率が変化し、励起光を前記感光物質へ導光する導光層(214)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0022】
第16の発明は、第15の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記調光層(210)は、前記感光物質及び前記導光層(214)を両側から挟む位置に配置され前記励起光の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽層(212、213)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0023】
第17の発明は、第1の発明から第16の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、前記反射層(13)は、前記単位光学形状(121)の前記映像光が入射する位置に複数の島状に形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0024】
第18の発明は、第1の発明から第17の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、前記反射層(13)は、誘電体膜を少なくとも1層含むこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0025】
第19の発明は、第1の発明から第18の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、前記光学形状層(12)は、前記単位光学形状(121)が同心円状に複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を有すること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0026】
第20の発明は、第19の発明に記載の反射スクリーン(10)において、前記サーキュラーフレネルレンズ形状の中心は、当該反射スクリーン(10)の外に設けられていること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0027】
第21の発明は、第1の発明から第20の発明までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10)において、当該反射スクリーン(10)の厚み方向において前記反射層(13)よりも背面側に、光透過性を有し、前記単位光学形状(121)の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層(14)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0028】
第22の発明は、第1の発明から第21の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10)において、光を拡散する機能を有する拡散粒子を含有する光拡散層を備えていないこと、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0029】
第23の発明は、第1の発明から第22の発明までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10)において、前記反射層(13)は、当該反射スクリーン(10)の厚み方向において所定の間隔を空けて複数層設けられていること、を特徴とする反射スクリーン(100)である。
【0030】
第24の発明は、第1の発明から第23の発明までのいずれかに記載の反射スクリーン(10、100)と、前記反射スクリーン(10、100)に対して映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示装置(1)である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、反射スクリーンと映像源との相対的な位置の自由度が高く、かつ、良好な映像を表示できる反射スクリーン、映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図4】実施形態の第1光学形状層12を説明する図である。
【
図5】
図3中の1点鎖線の円で囲んだ領域Aを拡大した図である。
【
図6】1/2角α
Vと映像光の入射角φ及び第1斜面121aの角度θ1の関係について説明する図である。
【
図7】本実施形態のスクリーン10での映像光及び外光の様子を示す図である。
【
図8】第1実施形態の変形形態を
図3と同様な断面で示した図である。
【
図9】第2実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図10】第2実施形態のスクリーン10の層構成の他の例を
図9と同様にして示す図である。
【
図11】実施例1及び実施例2の透過率をまとめて示した図である。
【
図12】第3実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図13】第2実施形態の映像表示装置1を自動車のフロントウインドウに配置した例を車内側から見た自動車VCの運転席周辺を示した図である。
【
図14】
図13におけるフロントウインドウ2のb-b断面図である。
【
図15】第4実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図16】第5実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図17】第5実施形態の反射層13を示す図である。
【
図18】第5実施形態の反射層13の別な形態を示す図である。
【
図19】第5実施形態の反射層13の製造方法の一例を示す図である。
【
図20】第6実施形態のスクリーン100の層構成を説明する図である。
【
図21】第6実施形態のスクリーン100の別の形態を説明する図である。
【
図22】第6実施形態のスクリーン100の別な形態2を説明する図でありスクリーン100を画面上下方向の上側から見た図である。
【
図23】第6実施形態のスクリーン100の別な形態2を説明する図でありスクリーン100を画面左右方向の右側から見た図である。
【
図24】第7実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。
【
図25】第7実施形態の映像表示装置1を上面から見た図である。
【
図26】第8実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
【
図27】単位光学形状121の変形形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張、又は、簡略化している。
本明細書中において、記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書中において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、シート面とは、各シートにおいて、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。なお、板面、フィルム面についても同様である。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。
図2は、映像表示装置1を側面から見た図である。
映像表示装置1は、スクリーン10、映像源LS等を有している。本実施形態のスクリーン10は、映像源LSから投影された映像光Lを反射して、画面上に映像を表示する反射スクリーンである。このスクリーン10の詳細に関しては、後述する。
本実施形態では、一例として、映像表示装置1は、室内用の透明板によって構成されたパーテーションに適用され、スクリーン10がその透明板に固定される例を挙げて説明する。なお、このような透明板としては、ガラス製や樹脂製等の透明性の高い板状の部材が用いられる。
【0035】
ここで、理解を容易にするために、
図1及び
図2を含め以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン10の画面の水平方向(左右方向)をX方向、鉛直方向(上下方向)をY方向とし、スクリーン10の厚み方向をZ方向とする。スクリーン10の画面は、XY面に平行であり、スクリーン10の厚み方向(Z方向)は、スクリーン10の画面に直交する。
また、スクリーン10の映像源側の正面方向に位置する観察者O1から見て水平方向の右側に向かう方向を+X方向、鉛直方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において背面側(裏面側)から映像源側に向かう方向を+Z方向とする。
さらに、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
【0036】
映像源LSは、映像光Lをスクリーン10へ投影する映像投射装置であり、例えば、短焦点型のプロジェクタである。
この映像源LSは、映像表示装置1の使用状態において、スクリーン10の画面(表示領域)を正面方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、スクリーン10の画面左右方向の中央であって、スクリーン10の画面よりも鉛直方向下方側に位置している。
映像源LSは、奥行き方向(Z方向)において、スクリーン10の表面からの距離が、従来のスクリーンの画面正面方向に位置する汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から斜めに映像光Lを投影できる。したがって、従来の汎用プロジェクタに比べて、映像源LSは、スクリーン10までの投射距離が短く、投射された映像光Lがスクリーン10に入射する入射角度が大きく、入射角度の変化量(入射角度の最小値から最大値までの変化量)も大きい。
【0037】
スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光Lを映像源側(+Z側)の正面方向に位置する観察者O1側へ向けて反射して、観察者O1に映像を表示でき、かつ、スクリーン10の向こう側の景色を観察できる透明性を有する半透過型の反射スクリーンである。
スクリーン10の画面(表示領域)は、使用状態において、観察者O1側から見て長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。また、スクリーン10は、その画面サイズが対角40~100インチ程度であり、画面の横縦比が16:9である。
なお、これに限らず、スクリーン10は、例えば、観察者O1側から見た形状を他の形状としてもよいし、その画面サイズを40インチ以下の大きさとしてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、その大きさや形状は適宜選択できるものとする。
【0038】
スクリーン10が、樹脂製の薄い層の積層体等の場合は、それ単独では平面性を維持するだけの十分な剛性を有していない。そのため、本実施形態のスクリーン10は、
図1及び
図2等に示すように、その背面側に光透過性を有する接合層51を介して支持板50に一体に接合(あるいは部分固定)され、画面の平面性を維持している。
支持板50は、光透過性を有し、剛性が高い平板状の部材であり、アクリル樹脂やPC(ポリカーボネート)樹脂等の樹脂製、ガラス製等の板状の部材を用いることができる。本実施形態の支持板50は、室内用パーテーションのガラス製の透明板である。
なお、これに限らず、スクリーン10は、不図示の枠部材等によってその四辺等が支持され、その平面性を維持する形態としてもよい。もちろん、基材に剛性の高い透明シートを用いる事も可能である。
【0039】
図3は、第1実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
図3では、スクリーン10の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点A(
図1及び
図2参照)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面として示している。なお、
図3では、スクリーン10のみを示し、支持板50等は省略して示している。
図4は、実施形態の第1光学形状層12を説明する図である。
図4では、第1光学形状層12を背面側(-Z側)から見た図であり、理解を容易にするために、反射層13等を省略して示している。
スクリーン10は、
図3に示すように、厚み方向(Z方向)において、その映像源側(+Z側)から順に、基材層11、第1光学形状層12、反射層13、第2光学形状層14、保護層15等を備えている。
【0040】
基材層11は、光透過性を有するシート状の部材であり、その背面側(-Z側)に、第1光学形状層12が一体に形成されている。この基材層11は、第1光学形状層12を形成する基材(ベース)となる層である。
基材層11は、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル・スチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
基材層11は、スクリーン10の画面サイズ等に応じてその厚さを適宜設定してよい。
【0041】
第1光学形状層12は、基材層11の背面側(-Z側)に形成された光透過性を有する層である。第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面には、単位光学形状121が複数配列されて設けられている。
単位光学形状121は、
図4に示すように、真円の一部形状(円弧状)であり、スクリーン10の画面(表示領域)外に位置する点Cを中心として、同心円状に複数配列されている。すなわち、第1光学形状層12は、点Cを中心(フレネルセンター)とする、いわゆるオフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状を、その背面側に有している。
本実施形態では、
図4に示すように、第1光学形状層12をスクリーン面の法線方向背面側から見たときに、点Cは、画面左右方向の中央であって画面外下方に位置しており、点Cと点Aとは、Y方向に平行な同一直線上に位置している。
【0042】
図5は、
図3中の1点鎖線の円で囲んだ領域Aを拡大した図である。
単位光学形状121は、
図3及び
図5に示すように、スクリーン面に直交する方向(Z方向)に平行であって、単位光学形状121の配列方向に平行な断面において、頂点が丸みを帯びた略三角形形状の断面形状となっている。
単位光学形状121は、背面側(-Z側)に凸であり、映像光が入射する第1斜面(第1の面)121aと、これに対向する第2斜面(第2の面)121bと、第1斜面121aと第2斜面121bとを接続する曲面で構成された接続面121cとを有している。1つの単位光学形状121において、第1斜面121aは、頂点aの部位に形成されている接続面121cを挟んで第2斜面121bの上側(+Y側)に位置している。
【0043】
第1斜面121aがスクリーン面に平行な面となす角度は、θ1である。第2斜面121bがスクリーン面に平行な面となす角度は、θ2である。角度θ1,θ2は、θ2>θ1という関係を満たしている。
この単位光学形状121の第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとには、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている。この微細な凹凸形状は、凸形状と凹形状とが2次元方向に不規則に配列されて形成されており、凸形状及び凹形状は、その大きさや形状、高さ等が不規則である。
【0044】
接続面121cは、本実施形態では、
図5に示す断面形状が微細な凹凸形状を除くと(巨視的に見ると)、略円弧形状となる略円筒面として構成されている。この接続面121cを設けることにより、後述する反射層13が映像光を反射する部位が、第1斜面121aのみではなく、この接続面121cによっても映像光の一部が反射されることとなる。接続面121cは、第1斜面121aから第2斜面121bへと滑らかに繋がる曲面によって構成されている。したがって、接続面121c上に形成されている反射層13は、第1斜面121aのみが映像光を反射する場合の光路よりも、映像光の有効な光路を上下方向について拡大することができる。よって、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用は、配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きい。
なお、
図5では、接続面12α1cは、接続面121cをわかりやすく示すために正確な円弧として示したが、第1斜面121a及び第2斜面121bと同様に接続面121c上には、微細な凹凸形状が設けられている。なお、この微細な凹凸形状及び反射層は、接続面121c上についても設けられているが、接続面121c上には設けない構成としてもよい。
【0045】
単位光学形状121の配列ピッチは、Pであり、単位光学形状121の高さ(厚み方向における頂点aから単位光学形状121間の谷底となる点bまでの寸法)は、hである。
理解を容易にするために、
図2では、単位光学形状121の配列ピッチP1、角度θ1,θ2は、単位光学形状121の配列方向において一定である例を示している。しかし、本実施形態の単位光学形状121は、実際には、配列ピッチPは一定であるが、角度θ1が単位光学形状121の配列方向においてフレネルセンターとなる点Cから離れるにつれて次第に大きくなっている。
また、角度θ1,θ2、配列ピッチP等は、映像源LSからの映像光の投射角度(スクリーン10への映像光の入射角度)や、映像源LSの画素(ピクセル)の大きさ、スクリーン10の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜設定してよい。例えば、単位光学形状121の配列方向に沿って、配列ピッチPや角度θ1等が変化する形態としてもよい。
【0046】
本実施形態では、第1光学形状層12の背面側の面には、サーキュラーフレネルレンズ形状が形成される例を示した。これに限らず、第1光学形状層12の背面側の面には、単位光学形状121が画面左右方向(X方向)を長手方向とし、画面上下方向(Y方向)に配列されたリニアフレネルレンズ形状が形成される形態としてもよい。また、柱状の単位プリズムが、画面左右方向(X方向)を長手方向とし、画面上下方向(Y方向)に複数された形態としてもよい。
【0047】
第1光学形状層12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
なお、本実施形態では、第1光学形状層12を構成する樹脂として、紫外線硬化型樹脂を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0048】
反射層13は、単位光学形状121上(第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとの上)に形成されている。この反射層13は、入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層、いわゆるハーフミラーである。
前述のように、第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとの上(単位光学形状121の表面)には、微細な凹凸形状が形成されており、反射層13は、この微細な凹凸形状に追従して形成され、かつ、単位光学形状121側とは反対側の面にも、この微細かつ不規則な凹凸形状が維持された状態で成膜されている。したがって、反射層13の映像源側の面(第1光学形状層12側の面)と、背面側の面(第2光学形状層14側の面)とは、微細かつ不規則な凹凸形状を有するマット面(粗面)となっている。
この反射層13は、入射した光の一部を反射面の微細な凹凸形状により拡散して反射し、反射しない他の光を拡散しないで透過するという機能を有する。
【0049】
本実施形態では、反射層13は、金属を用いた構成と、誘電体多層膜を用いた構成と、単層の誘電体膜を用いた構成と、の3種類を作製した。また、反射層13は、金属膜、誘電体膜を単層又は複層として適宜組み合わせて用いることができる。
反射層13は、金属を用いる場合、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル等により形成され、その厚さは、数10Å程度である。反射層13は、これに限らず、例えば、上述のような光反射性の高い金属をスパッタリングして形成してもよい。
また、金属を用いた反射層13の反射率及び透過率は、所望する光学性能に合わせて適宜に設定できるが、映像光を良好に反射させるとともに、映像光以外の光(例えば、太陽光等の外界からの光)を良好に透過させる観点から、例えば、透過率が30~80%程度、反射率が5~60%程度の範囲とすることができる。なお、上記透過率を含めて、以下に示す各層の透過率に関する数値は、空気界面における反射については考慮していない値を示している。また、スクリーン10の表面(空気界面)における反射は、その表面処理によって大きく左右されるが、例えば、10%程度を考慮するとよい。
本実施形態で金属を用いて構成した反射層13は、アルミニウムを蒸着することにより形成されており、反射層13のみでの透過率が約70%、反射率が約5%、吸収率が約25%のハーフミラー状である。
【0050】
また、反射層13は、誘電体多層膜を用いる場合、金属蒸着膜等に比べて高い透明性及び反射率を実現可能である。誘電体多層膜は、屈折率の高い誘電体膜(以下、高屈折率誘電体膜という)と屈折率が低い誘電体膜(以下、低屈折率誘電体膜という)とが交互に複数積層されて形成されている。
高屈折率誘電体膜は、例えば、TiO2(二酸化チタン)、Nb2O5(五酸化ニオブ)、Ta2O5(五酸化タンタル)等により形成される。高屈折率誘電体膜の屈折率は、2.0~2.6程度である。
低屈折率誘電体膜は、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)等により形成される。低屈折率誘電体膜の屈折率は、1.3~1.5程度である。
高屈折率誘電体膜及び低屈折率誘電体膜の膜厚は、約5~100nmであり、これらが交互に2~10層程積層されて形成されており、誘電体多層膜の総厚は、10~1000nm程度である。
この誘電体多層膜を用いて構成された反射層13は、波長域400~800nmの光に対して、その透過率が90%程度、反射率が10%程度である。
【0051】
誘電体多層膜により形成された反射層13は、アルミニウム等の金属蒸着膜等により形成された反射層に比べて、高い透明性を有しており、また、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現できる。
この反射層13は、単位光学形状121上(第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとの上)に、上述のような誘電体多層膜を蒸着加工する、スパッタ加工する等により、所定の厚さで形成される。
本実施形態で誘電体多層膜を用いて構成した本実施形態の反射層13は、TiO2(二酸化チタン)により形成された高屈折率誘電体膜と、SiO2により形成された低屈折率誘電体膜を交互に計5層積層(高屈折率誘電体膜が3層、低屈折率誘電体膜が2層)して形成されており、透過率が約90%、反射率が約10のハーフミラー状である。
【0052】
また、反射層13は、単層の誘電体膜を用いる場合、例えば、ZnS(硫化亜鉛)、TiO2(二酸化チタン)、Nb2O5(五酸化ニオブ)、Ta2O5(五酸化タンタル)、SiO2(二酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)等により形成される。誘電体膜の膜厚は、約20~100nmである。
この反射層13は、可視光の波長域の光に対して、その反射率が約5~20%、透過率が約80~95%である。なお、スクリーン10全体としてみた場合、スクリーン10の表面における反射成分(約10%)も存在するので、スクリーン10全体としての透過率は約70~85%となる。
単層の誘電体膜を用いる反射層13は、アルミニウム等の金属蒸着膜等により形成された反射層に比べて、高い透明性を有しており、また、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現でき、光の利用効率が高い。本実施形態の反射層13は、ZnS(硫化亜鉛)の誘電体膜により形成されている。
なお、いずれの材料を用いた場合であっても、反射層13の厚さは、その材質や所望する光学性能等によって適宜設定してよい。
【0053】
第2光学形状層14は、第1光学形状層12の背面側(-Z側)に設けられた光透過性を有する層である。
第2光学形状層14は、単位光学形状121間の谷部を埋めるように充填され、第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面を平坦化している。この第2光学形状層14の映像源側(+Z側)の面は、第1光学形状層12の単位光学形状121の略逆型の形状が複数配列されて形成されており、第1光学形状層12と屈折率が同じ材料を用いている。
このような第2光学形状層14を設けることにより、スクリーン10の透明性を確保でき、反射層13を保護することができる。また、このような第2光学形状層14を設けることにより、スクリーン10の背面側に保護層15等を積層しやすくなる。
【0054】
第2光学形状層14の屈折率は、第1光学形状層12と略同等(同等とみなせる程度に小さい屈折率差を有している状態)であることが好ましく、同等であることが望ましい。また、第2光学形状層14は、前述の第1光学形状層12と同じ樹脂を用いて形成してもよいし、異なる樹脂を用いて形成してもよい。
本実施形態の第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ紫外線硬化型樹脂により形成されている。
【0055】
保護層15は、第2光学形状層14の背面側(-Z側)に形成された光透過性を有する層であり、このスクリーン10の背面側(-Z側)を保護する機能を有している。
保護層15は、光透過性の高い樹脂製のシート状の部材が用いられる。保護層15は、例えば、前述の基材層11と同様の材料を用いて形成されたシート状の部材を用いてもよい。なお、保護層15は、省略してもよい。
【0056】
本実施形態のスクリーン10では、反射層13は、微細な凹凸形状を有する第1斜面121a及び第2斜面121bに形成され、反射面となる第1光学形状層12側の面がマット面(粗面)となっている。したがって、第1斜面121aに入射した光の一部は、拡散反射される。
ここで、単位光学形状121の配列方向において、第1斜面121aから反射層13に入射して拡散反射し、スクリーン10から出射した光(反射光)のピーク輝度の角度Kに対して、単位光学形状121の配列方向(本実施形態では、画面上下方向)において、輝度が1/2となる角度をK1,K2とし、ピーク輝度の角度Kから輝度が1/2となる角度K1,K2までの角度変化量を+αV1(ただし、K+αV1=K1),-αV2(K-αV2=K2)とするとき、ピーク輝度から輝度が1/2になるまでの角度変化量の絶対値の平均値をαV(これを以下、1/2角αVという)とするとき、この1/2角αVは、5°以上45°以下(5°≦αV≦45°)とすることが好ましい。
αV<5°である場合、視野角が狭くなり過ぎ、映像が見えにくくなるので好ましくない。また、αV<5°である場合、反射光において鏡面反射成分が増え、光源の映り込み等が生じるため、好ましくない。
αV>45°である場合、視野角は広くなるが映像の明るさが低下したり、映像のぼけが強くなったり、外光のスクリーン10の表面での反射によって映像のコントラストが低下したりするので好ましくない。したがって、1/2角αVは、上記範囲が好ましい。
【0057】
また、第1斜面121aのうち、粗面ではない領域、すなわち、微細な凹凸形状が形成されていない領域であって反射層13の反射面が鏡面状あり、入射した映像光が鏡面反射する鏡面領域は、第1斜面121a上に形成された反射層13の単位面積当たり5%以下であることが、映像光を十分に拡散し、良好な視野角を得るために必要であり、0%であることが理想的である。
第1斜面121aの単位面積当たりにおいて、粗面ではない鏡面領域が5%を超えると、拡散されず反射して観察者O側に到達する映像光の成分により輝線が生じたり、視野角が低下したりするため、好ましくない。
【0058】
図6は、1/2角α
Vと映像光の入射角φ及び第1斜面121aの角度θ1の関係について説明する図である。
図6では、理解を容易にするために、スクリーン10内の構成は簡略化し、基材層11及び保護層15は省略して示している。
図6では角度α
V,φに関して、スクリーン面の法線に対して画面上側を+、画面下側を-として示している。
第1斜面121aの角度θ1は、映像光をスクリーン10の正面方向に位置する観察者に最も効率よく映像を反射するように、すなわち、反射光のピーク輝度となる角度Kが0°となるように、各層の屈折率等に基づいて設計されている。また、-α
Vから+α
Vまでの範囲は、スクリーン正面に位置する観察者が映像を良好に観察することを想定している範囲である。
ここで、画面上下方向(単位光学形状121の配列方向)におけるある点において、映像光Lがスクリーン10の下方から入射角φで入射し、屈折率nの第1光学形状層12を進み、スクリーン面に対して角度θ1をなす第1斜面121aに入射して反射層13で反射し、スクリーン10からスクリーン面に直交する方向(出射角度0°)へ出射するとき、角度θ1は、以下の式1で表される。
θ1=1/2×arcsin((sinφ)/n) ・・・(式1)
【0059】
本実施形態のように、映像源LSから映像光を投射してスクリーン10で反射させ、映像を表示する際に、映像光を投射する映像源LSの光源が映り込み、映像のコントラストが低下するという問題が生じる場合がある。この映像源の映り込みは、スクリーンの表面で反射した映像光が観察者に届くことが主な原因である。
このような映像源の映り込みを防止するためには、スクリーン10の表面で観察者が主に映像を良好に観察する範囲となる角度範囲(-αV~+αV)よりも外側に、スクリーンの表面で反射した映像光が進むことが好ましい。入射角φで入射した映像光Lの一部Lrがスクリーン表面で反射する場合、その反射角はφである。したがって、映像源の映り込みを防止するために、αV<φであることが好ましい。
【0060】
よって、前述の(式1)から、画面上下方向(単位光学形状121の配列方向)において、1/2角αVは、第1斜面121aの角度θ1に対して、映像源の映り込みを防止するために、少なくともスクリーン10の一部の領域(例えば、スクリーン中央)において、以下の式2を満たすことが好ましい。
αV<arcsin(n×sin(2×(θ1))) ・・・(式2)
また、映像源の映り込み防止のためには、1/2角αVは、第1斜面121aの角度θ1に対して、スクリーン10の全域において、上記式2を満たすことがさらに好ましい。
角度θ1が1/2角αVに対して、上記式2を満たす形態とすることにより、スクリーン10への入射時にスクリーン10の表面で反射する光が主に向かう方向(+φの方向)が、反射層13で反射した映像光がスクリーン10から出射して進む範囲(-αV~+αV)よりも外側となる。これにより、-αVから+αVまでの範囲において、映像源LSの映り込みを低減し、コントラストの高い良好な映像を表示することができる。
また、単位光学形状121の延在方向におけるピーク輝度から輝度が1/2になるまでの角度変化量の絶対値の平均値をαH(これを以下、1/2角αHという)とすると、本実施形態のスクリーン10では、αV>αHの関係を満たしている。
【0061】
スクリーン10は、例えば、以下のような製造法により形成される。
基材層11を用意し、その一方の面に、単位光学形状121を賦形する成形型に紫外線硬化型樹脂を充填した状態で積層し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるUV成形法により第1光学形状層12を形成する。このとき、単位光学形状121を賦形する成形型の第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとを賦形する面には、微細な凹凸形状が形成されている。この微細な凹凸形状は、成形型の第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとを賦形する面に、メッキやエッチング、ブラスト等を組み合わせること等によって形成できる。
第1光学形状層12を、基材層11の一方の面に形成した後、第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとに、反射層13を蒸着等により形成する。
【0062】
その後、反射層13の上から、単位光学形状121間の谷部を充填して平面状となるように、紫外線硬化型樹脂を塗布し、保護層15を積層して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、第2光学形状層14及び保護層15を一体に形成する。その後、所定の大きさに裁断する等により、スクリーン10が完成する。
基材層11及び保護層15は、枚葉状としてもよいし、ウェブ状としてもよい。基材層11及び保護層15をウェブ状とした場合には、裁断前の状態のスクリーン10を連続して製造することができ、スクリーン10の生産効率を向上させ、生産コストを低減することができる。
【0063】
また、例えば、第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとに粗面を形成する方法として、第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとの上に拡散粒子等を塗布してその上から反射層13を形成したり、第1光学形状層12を形成後に第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとにブラスト加工を行ったりする方法等が知られている。しかし、このような製法で反射層13の反射面を粗面とした場合には、個々のスクリーン10での拡散特性や品質等のばらつきが大きく、安定した製造が行えない。これに対して、上述のように、単位光学形状121の第1斜面121aと第2斜面121bと接続面121cとの微細凹凸形状を成形型によって賦形することにより、多数の第1光学形状層12及びスクリーン10を製造する場合にも、品質のばらつきが少なく、安定して製造できるという利点がある。
【0064】
図7は、本実施形態のスクリーン10での映像光及び外光の様子を示す図である。
図7では、単位光学形状121の配列方向(Y方向)及びスクリーンの厚み方向(Z方向)に平行な断面での断面の一部を拡大して示している。また、
図7では、理解を容易にするために、粘着層30及び調光層20を含めてスクリーン10内の各層の界面における屈折率差はないものとして示している。
スクリーン10の下方に位置する映像源LSから投射され、スクリーン10に入射した映像光L1のうち、一部の映像光L2は、その単位光学形状121の第1斜面121a及び接続面121cに入射し、反射層13によって拡散反射され、観察者O1側へ出射する。
【0065】
第1斜面121a及び接続面121cに入射した映像光のうち反射しなかった他の映像光L3は、反射層13を透過し、スクリーン10の背面側(-Z側)から出射する。このとき、映像光L3は、スクリーン10の上方へと出射し、スクリーン10の背面側の正面方向に位置する観察者O2には到達しない。
また、映像源LSから投射された映像光L1うち、一部の映像光L4は、スクリーン10の映像源側表面で反射するが、スクリーン10上方へ向かうので、観察者O1の映像の視認の妨げにはならない。
なお、本実施形態では、映像源LSがスクリーン10よりも下方に位置し、映像光L1がスクリーン10の下方から投射され、かつ、第2斜面121bの角度θ2(
図3参照)がスクリーン10の画面上下方向の各点における映像光の入射角度よりも大きいので、映像光が第2斜面121bに直接入射することはなく、第2斜面121bは、映像光の反射には殆ど影響しない。
【0066】
次に、背面側(-Z側)又は映像源側(+Z側)からスクリーン10に入射する映像光以外の太陽光等の外界からの光(以下、外光という)について説明する。
図7に示すように、スクリーン10に入射する外光G1,G5のうち、一部の外光G2,G6は、スクリーン10の表面で反射し、スクリーン下方側へ向かう。また、一部の外光G3,G7は、反射層13で反射し、例えば、外光G3は、スクリーン10の映像源側(+Z側)の表面で全反射してスクリーン10内下方へ向かい、外光G7は、背面側(-Z側)のスクリーン外上方側へ出射する。また、反射層13で反射しなかった他の外光G4,G8は、反射層13を透過して、それぞれ背面側、映像源側へ出射する。このとき、映像源側へ出射する外光G2,G3,G8は、観察者Oには到達しないので、映像のコントラスト低下を抑制できる。
【0067】
また、スクリーン10に入射した外光の一部は、スクリーン10の映像源側及び背面側の表面で全反射して、スクリーン内部下方側へ向かい、減衰する。
また、他の外光G9,G10は、反射層13を透過して、それぞれ背面側、映像源側へ出射する。スクリーン10は、拡散粒子を含有する拡散材等を含有していないので、このスクリーン10を透過する外光G9,G10は、拡散されない。したがって、スクリーン10を通して、スクリーン10の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン10の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりすることなく、高い透明性を有して観察することができる。
【0068】
ここで、上述したように、本実施形態のスクリーン10は、拡散作用を有する粒子等の拡散材を含有した光拡散層を備えておらず、拡散作用を有するのは、反射層13の微細凹凸形状である。
【0069】
従来の拡散粒子を含有する拡散層を備えた半透過型の反射スクリーンでは、映像光は、反射層での反射前後の2回拡散されるので、良好な視野角が得られる一方で映像の解像度が低下するという問題がある。また、拡散粒子によって外光も拡散されるため、スクリーンの向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりして観察され、透明性が低下する。
【0070】
しかし、本実施形態のスクリーン10では、反射層13の映像源側の面が微細な凹凸形状を有しているので、映像光は反射時のみ拡散される。また、本実施形態のスクリーン10では、反射層13で反射する光のみが拡散され、透過光は拡散されない。したがって、本実施形態のスクリーン10は、良好な視野角及び解像度を有する映像を表示でき、かつ、スクリーン10の向こう側の景色が白くにじんだり、ぼけたりすることがなく観察者O1に良好に視認され、高い透明性を実現できる。また、本実施形態のスクリーン10では、スクリーン10に映像光が投射された状態においても、観察者O1が、スクリーン10の向こう側(背面側)の景色を一部視認することが可能である。さらに、本実施形態のスクリーン10では、背面側に位置する観察者O2は、映像光の投射の有無に関わらず、スクリーン10越しに映像源側(+Z側)の景色を高い透明性を有して良好に視認することができる。
【0071】
また、画面中央で、正面が、最大輝度となる条件で、映像光を投影した状況での角度輝度分布を測定した場合に、単位光学形状121の配列方向における半値角は、配列方向に直交する方向における半値角よりも、5%以上大きいことが望ましく、20%から100%大きいことがさらに望ましい。これにより、映像源LSを設置する位置の自由度を大きくすることができる。
【0072】
以上説明したように、第1実施形態のスクリーン10は、接続面121cを設けることにより、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用は、配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きい。よって、第1実施形態のスクリーン10は、スクリーン10と映像源LSとの相対的な位置の自由度が高く、かつ、良好な映像を表示できる。
【0073】
また、スクリーン10は、第1光学形状層12及び反射層13の背面側の面に、光透過性を有し、配列された複数の単位光学形状121間の凹凸を埋める第2光学形状層14を備えるので、背面側の反射層13を保護することができる。また、スクリーン10の背面側の面を平坦にすることができるので、例えば、スクリーン10を、合わせガラスを構成する2枚のガラス板に挟持させたり、スクリーン10をガラス板に貼付したりする場合に、隙間なくスクリーン10をガラス板に対して配置することができる。
【0074】
さらに、第1実施形態のスクリーン10は、第1光学形状層12の単位光学形状121が同心円状に複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状であり、その光学的中心C1が当該反射スクリーンの表示領域外に位置している。これにより、スクリーン10は、スクリーン10の表示領域外であって画面上下方向下側に位置する短焦点型の映像源LSから投射された入射角度の大きい映像光であっても、画面左右方向の映像が暗くなることがなく、明るさの面均一性の高い良好な映像を表示することができる。
また、スクリーン10は、反射層13が誘電体膜により形成されている場合には、反射層13に入射した光の吸収を極力抑制して、入射光の一部を反射するとともに、他の一部をスクリーン10の背面側に透過させることができ、入射光の利用効率を向上させることができる。
【0075】
(第1実施形態の変形形態)
上記第1実施形態では、単位光学形状121の第1斜面121aと第2斜面121bとの間に、曲面で構成された接続面121cを設けることにより、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用を配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きくなる構成とした例を示した。
これに限らず、さらに積極的に映像光の配光特性を制御し光の拡散(偏向)作用に異方性を与える構成として、以下に変形形態を説明する。
【0076】
図8は、第1実施形態の変形形態を
図3と同様な断面で示した図である。なお、
図8では、第1の面121d及び第2の面121eの形状をわかりやすくするために、反射層13の厚さを表現せずに1本の線で示している。また、同様な理由から、
図8では、単位光学形状121に設けられている微細な凹凸形状についても省略して示している。
【0077】
図8に示す変形形態の単位光学形状121は、配列方向で切断した断面形状において、映像源側とは反対側に最も突出した頂点部Tと、映像源側に最も凹んだ谷底部Vとを有している。また、単位光学形状121は、頂点部T及び谷底部Vを境にして、配列方向において幅が広い側の第1の面121dと、幅が狭い側の第2の面121eとを有しており、第1の面121dと第2の面121eとは、対向している。
図8に示す例では、第1の面121d及び第2の面121eの双方とも、配列方向で切断した断面形状が湾曲した構成となっている。また、光学形状層12の曲面は、谷底部Vにおいて連続し、頂点部Tにおいて不連続となっている。すなわち、上記断面形状において、谷底部Vは湾曲形状であり、頂点部Tは鋭角状である。このように構成することにより、より積極的に映像光の配光特性を制御することができ、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用を配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きくすることができる。
【0078】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
第2実施形態のスクリーン10は、第1実施形態における保護層15に代えて、粘着層30と、調光層20とを設けた形態であり、これら以外の構成は、第1実施形態のスクリーン10と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態のスクリーン10は、粘着層30を介して調光層20を設けたことにより、透過する光の透過率を選択的に変化させることができる。
【0079】
図9に示す調光層20は、印加電圧を変化させることにより透過光の光量を制御することができるフィルムである。
この調光層20は、第2光学形状層14の背面側に、粘着層30を介して接合されており、透過光の光量を制御することができる。本実施形態のスクリーン10では、反射スクリーン部分(11~14)と調光層20とを別々に設けずに接合していることから、入射する光については空気界面が1つ減るので、その分、透過率を高めるためには有利な構成となっている。
【0080】
調光層20は、二色性色素を使用したゲストホスト型の液晶セルであり、液晶に印加する電界により透過光量を変化させる液晶セルである。調光層20は、フィルム状の液晶用第2積層体20B及び液晶用第1積層体20Aにより液晶層26を挟持して構成される。
液晶用第2積層体20Bは、基材21Bに、透明電極22B、配向層23B、ビーズスペーサー24を積層して形成される。
液晶用第1積層体20Aは、基材21Aに、透明電極22A、配向層23Aを積層して形成される。
調光層20は、この液晶用第1積層体20A及び液晶用第2積層体20Bに設けられた透明電極22B、22Aの駆動により、液晶層26に設けられたゲストホスト液晶組成物による液晶材料の配向を変化させ、これにより透過光の光量を変化させる。
【0081】
基材21B、21Aは、種々の透明樹脂フィルムを適用することができるが、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380~800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
特に、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。
基材21B、21Aは、種々の厚みの透明樹脂フィルムを適用することができる。
【0082】
透明電極(第1電極)22A、透明電極(第2電極)22Bは、透明樹脂フィルムに積層される透明導電膜から構成されている。
透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
【0083】
酸化錫(SnO2)系としてはネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。
酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。
酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide)により透明導電膜が形成される。
【0084】
本実施形態ではスペーサーとして球形状のビーズスペーサー24を用いる。ビーズスペーサー24は、液晶層26における外周部を除く部分の厚み(セルギャップ)を規定するために設けられる。ビーズスペーサー24は、シリカ等による無機材料による構成、有機材料による構成、これらを組み合わせたコアシェル構造の構成等を広く適用することができる。また、ビーズスペーサー24の形状は、上述した球形状の構成の他、円柱形状や角柱形状等で構成されたロッド形状としてもよい。
ただし、液晶層26の厚みを規定するスペーサーとしては、ビーズスペーサー24に限定されず、例えば、フォトレジストを基材21A側に塗工して露光、現像することにより円柱形状等に作製してもよい。
なお、上述の説明では、スペーサーは、液晶用第2積層体20Bに設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、液晶用第1積層体20A、液晶用第2積層体20Bの両方、又は、液晶用第1積層体20Aにのみ設けられるようにしてもよい。
【0085】
配向層23A、23Bは、液晶分子群を一定方向に配列させるための膜である。例えば、配向層23A、23Bは、光配向層として作製したり、光配向層に代えてラビング処理により配向層を作製したりしてもよいし、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。なお、配向層23A、23Bの作製方法は、上述した方法に限らず、適宜異なる方法を用いてもよい。
本実施形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。このような光二量化型の材料の具体例としては、例えば特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報及びWO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。
また、本実施形態では、調光層20は、配向層23A,23Bを備える形態を示したが、これに限らず、配向層23A,23Bを備えない形態としてもよい。
【0086】
液晶層(調光材料としての液晶材料)26には、二色性色素組成物を使用したゲストホスト液晶組成物を広く適用することができる。ゲストホスト液晶組成物にはカイラル剤を含有させるようにして、液晶材料を水平配向させた場合に液晶層26の厚み方向に螺旋形状に配向させるようにしてもよい。なお、調光層20において、液晶層26を囲むように、シール材25が配置されている。このシール材25により、液晶用第1積層体20A、液晶用第2積層体20Bが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材25は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
【0087】
調光層20は、遮光時におけるゲストホスト液晶組成物の配向が電界印加時となるように配向層23B,23Aを一定の方向にプレチルトに係る配向規制力を設定した垂直配向層に構成し、これによりノーマリークリアにより構成される。なお、この透光時の設定を電界印加時としてノーマリーダークにより構成してもよい。
ここで、ノーマリーダークとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最小となり、黒い画面になる構造である。ノーマリークリアとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最大となり、透明となる構造である。
【0088】
なお、本実施形態の調光層20は、ゲストホスト型の液晶セルとしたが、二色性色素組成物を用いない液晶セルとして構成してもよい。この場合、直線偏光層をさらに設けることで、調光セルとして機能させることができる。これについて、以下により詳しく説明する。
【0089】
図10は、第2実施形態のスクリーン10の層構成の他の例を
図9と同様にして示す図である。
図10に示すスクリーン10の液晶層27は、
図9に示したスクリーン10の液晶層26に用いた二色性色素組成物を使用したゲストホスト液晶組成物ではない液晶を用いている。以下、このタイプの調光層20について、「非ゲストホスト型」と呼び、
図2に示したタイプの調光層20は、「ゲストホスト型」と呼ぶこととする。
【0090】
液晶層27には、重合性官能基を有していない液晶化合物として、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物及びコレステリック液晶化合物を適用することができる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、トリフルオロ系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、及びアゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、エステル系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、及びビフェニルエチン系化合物等を挙げることができる。
スメクチック液晶化合物としては、例えば、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリクロロアクリレート系、ポリオキシラン系、ポリシロキサン系、ポリエステル系等の強誘電性高分子液晶化合物を挙げることができる。
コレステリック液晶化合物としては、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチド等を挙げることができる。
また、市販品としては、例えばメルク社製MLC2166等の液晶材料を適用することができる。
【0091】
また、
図10に示す非ゲストホスト型の調光層20は、直線偏光板29A,29Bで両側を挟持した形態となっている。直線偏光板29A,29Bを設けることにより、非ゲストホスト型の液晶を備える液晶層27としても、調光機能を実現できる。
【0092】
さらに、
図10に示す非ゲストホスト型の調光層20は、スペーサー28の形態を、
図10に示したゲストホスト型の調光層20とは異なる形態を例示した。
図10に示すスペーサー28は、フォトレジストにより製造される形態とした。スペーサー28は、透明電極22Bを製造して構成された基材21Bの上に、フォトレジストを塗工して露光、現像することにより製造される。なお、このスペーサーの形態については、ゲストホスト型においてフォトレジストを用いて構成してもよいし、非ゲストホスト型においてビーズスペーサーを用いて構成してもよい。
また、液晶の駆動方式として、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等の各種駆動方式が知られているが、ゲストホスト型及び非ゲストホスト型のいずれにおいても、これら公知の駆動方式を適宜選択して用いることができる。
【0093】
次に、本実施形態のスクリーン10のより具体的な実施例を2種類例示し、その透過率と効果について説明する。
(実施例1)
実施例1のスクリーン10は、調光層20は、
図9に示したゲストホスト型とした。
単位光学形状121は、配列ピッチPが100μmである。
反射層13は、アルミニウムの蒸着膜により形成され、厚さ約5Å、透過率70%、反射率5%である。
基材層11は、PET樹脂製であり、厚さt11=100μmとした。
第1光学形状層12及び第2光学形状層14は、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂(屈折率1.52)を素材とした。
第1光学形状層12と反射層13と第2光学形状層14とを合せた厚さt121314=100μmとした。
第2光学形状層14の背面側の面から反射層13までの最短距離t14=300μmとした。
粘着層30は、厚さt30=10μmとした。
基材21A、21Bは、ポリカーボネートフィルムを素材とし、厚さt21=100μmとした。
透明電極22A、22Bは、ITOを素材とし、厚さt22=100μmとした。
配向層23A、23Bは、ポリイミド樹脂を素材とし、厚さt23=0.1μmとした。
液晶層26は、二色性色素組成物を使用したゲストホスト液晶組成物を用いた液晶としており、厚さt26=6.2μmとした。液晶層26は、ノーマリークリアの構成である。
以上の構成により、反射層13と液晶層26との間の最短距離は、0.1mmとなり、0.5mm以下に収まっている。
【0094】
(実施例2)
実施例2のスクリーン10については、実施例1と異なる点についてのみ説明する。
実施例2のスクリーン10では、調光層20は、
図10に示した非ゲストホスト型とした。
反射層13は、誘電体多層膜により構成されており、具体的には、TiO
2と、SiO
2とを積層した構成とした。
直線偏光板29A,29Bは、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素等を含浸させた後、延伸して直線偏光板としての光学的機能を果たす光学機能層が形成され、TAC(トリアセチルセルロース)等の透明フィルム材による基材により光学機能層を挟持して作製される、厚さt29=200μmとした。
液晶層27は、誘電率異方性が負の液晶を用いた液晶としており、厚さt27=3.5μmとした。
なお、液晶層27は、実施例1とは異なり、ノーマリーダークの構成である。
以上の構成により、反射層13と液晶層26との間の最短距離は、0.3mmとなり、実施例2においても0.5mm以下に収まっている。
【0095】
実施例1及び実施例2のいずれにおいても、反射層13と液晶層26との間の最短距離は、0.5mm以下としたので、製造時の貼り合わせを容易に行うことができ、かつ、厚さの均一性確保を容易に行うことができる。
【0096】
図11は、実施例1及び実施例2の透過率をまとめて示した図である。
図11中の調光層部分欄におけるON,OFFは、調光層20への通電のON,OFFを示しており、実施例1のノーマリークリアと実施例2のノーマリーダークとで挙動が反対に構成されている。
図11に示すように、実施例1では、調光層20へ通電を行えば、スクリーン10全体での透過率を14%に下げることができ、映像を投影していない領域については僅かに背景を視認できるようにしながら、映像を投影する領域では、背景の影響を抑えてコントラストの高い映像を観察可能である。また、背景側への抜け光も抑えることができる。
また、実施例2では、調光層20への通電をOFFとすれば、背景からの透過光を略全て遮断することができ、背景の影響を略完全に排除して映像を観察することができる。なお、実施例2では、反射層13の反射率が低下してしまうが、背景の影響がなくなるので、十分に良好な映像を観察できるが、映像源LSの光量を高めるとより良好な映像を観察可能である。
【0097】
図11に示すように、反射層13の構成と調光層20の構成とを適切な条件で組み合わせることにより、調光層20として例示した光吸収層の透過率が最も高くなる状態におけるスクリーン10の全体における透過率は、10%以上、50%以下の範囲に設定することができる。よって、十分に背景の観察が可能である。また、光吸収層(調光層20)の透過率が最も低くなる状態では、略背景の透過がない状態にすることも可能であり、背景の影響を殆ど受けることなく、映像の観察が可能である。
【0098】
また、実施例1及び実施例2の双方とも、調光層20が反射層を備える層と接合されて一体化されているので、両者の間に空気間隔部分が存在しない。これにより、
図11に示すように高い透過率を実現可能である。
また、調光層20は、スクリーン10の全面にわたって設けられており、スクリーン10全体の透過率を変化させることができる。そして、調光層20は、外光等の外部からの影響を受けることなく、透過率を変化させることができる。
さらに、実施例2の形態であれば、光源の偏光状態を揃えることにより、直線偏光板29A,29Bによって抜け光の発生を防止できる。
【0099】
以上説明したように、第2実施形態によれば、スクリーン10は、調光層20を備えているので、調光層20への通電の切換によって光の透過率を選択的に変更することができる。よって、背景を透かして見えるようにしたい場合には透過率が高い状態とし、映像を見やすくしたい場合には透過率が低い状態とするといった使い方が可能となり、使い勝手がよい。
【0100】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
第3実施形態のスクリーン10は、第2実施形態における調光層20をより簡素化した調光層40とした形態であり、この調光層40以外の構成は、第2実施形態のスクリーン10と同様である。よって、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0101】
第3実施形態の調光層40は、感光物質を含んだ層であり、調光層40に到達する紫外線量に応じて光の透過率が変化する。具体的には、調光層40は、例えば、ハロゲン化銀を含む調光ガラス層としてもよいし、スピロオキサジンを含む調光樹脂層としてもよく、従来公知の感光物質を適宜利用することができる。
【0102】
以上説明したように、第3実施形態によれば、調光層40は、感光物質を含む構成であるので、より簡易な構成によって、調光層を構成することができる。
【0103】
(第2実施形態及び第3実施形態の透過率)
上述した第2実施形態及び第3実施形態の調光層20、40の透過率は、利用用途に応じて適宜設定することができる。ここでは、具体的な使用形態を例示して、その場合の調光層20、40の好ましい透過率について、例示する。
【0104】
図13は、第2実施形態の映像表示装置1を自動車のフロントウインドウに配置した例を車内側から見た自動車VCの運転席周辺を示した図である。
図14は、
図13におけるフロントウインドウ2のb-b断面図である。
なお、
図14では、第2実施形態のスクリーン10を用いる例を例示しているが、第3実施形態のスクリーン10も、同様に配置して用いることができる。
【0105】
図13及び
図14に示す使用例では、映像表示装置1は、自動車VCのフロントウインドウ2及びその近傍に配置されている。具体的には、映像表示装置1は、スクリーン10が自動車VCのフロントウインドウ2の全面に配置され、映像源LSが自動車VCの内装パネル3の内部に配置されている。ハンドル4の手前側に運転者が着座する。これにより、本実施形態の映像表示装置1は、自動車の速度や、方向指示器の状態、障害物の接近等の注意喚起等の表示をフロントウインドウ2の運転者の視界を妨げない位置に表示することができ、自動車VCの搭乗者のうち主に運転手は、視線を大きく逸らすことなく、各種情報を確認することができる。
【0106】
なお、フロントウインドウ2に設けられたスクリーン10は、映像源LS(プロジェクタ)から投射された映像光を拡散反射することにより映像を表示する。そのため、液晶表示デバイス、有機ELデバイス等の映像源から映像光を投射しても、スクリーン10には鮮明な映像を表示することはできない。
【0107】
フロントウインドウ2は、
図14に示すように、車内側から順に、第1ガラス板61、第1中間層62、スクリーン10、第2中間層63、第2ガラス板64が積層される、いわゆる合わせガラスの形態により構成されている。
第1ガラス板61は、フロントウインドウ2の最も運転者側(車内側)に配置される透明な部材である。第1ガラス板61としては、例えば、ソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等の材料を用いることができる。また、第1ガラス板61の厚みは、例えば、2~3mmの範囲とすることが好ましい。
【0108】
第1中間層62は、第1ガラス板61とスクリーン10との間に設けられる層である。第1ガラス板61及びスクリーン10は、第1中間層62により接合される。第1中間層62は、フロントウインドウ2の破損時に、第1ガラス板61の破片が飛散するのを防止するために設けられている。第1中間層62としては、例えば、PVB(ポリビニルブリラール)を用いることができる。第1中間層62の厚みは、0.3~0.8mmの範囲とすることが好ましい。また、第1中間層62の屈折率は、第1ガラス板61、スクリーン10の第1光学形状層12と同等であることが望ましい。
【0109】
第2中間層63は、第2ガラス板64とスクリーン10との間に設けられる層である。第2ガラス板64及びスクリーン10は、第2中間層63により接合される。第2中間層63は、フロントウインドウ2の破損時に、第2ガラス板64の破片が飛散するのを防止するために設けられている。第2中間層63は、第1中間層62と同様に、例えば、PVB(ポリビニルブリラール)を用いることができ、第2中間層63の厚みは、0.3~0.8mmの範囲とすることが好ましい。また、第2中間層63の屈折率は、第2ガラス板64、スクリーン10の第2光学形状層14と同等であることが望ましい。
【0110】
第2ガラス板64は、フロントウインドウ2の最も車外側に配置される透明な部材である。第2ガラス板64は、第1ガラス板61と同様に、例えば、ソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等の材料を用いることができる。また、第2ガラス板64の厚みは、例えば、2~3mmの範囲とすることが好ましい。
【0111】
なお、本実施形態のスクリーン10は、上述のように、中間層(32、33)を介して2枚のガラス板(31、34)で挟持される合わせガラスの形態で構成されるフロントウインドウ2に内蔵される例で説明したがこれに限定されるものでない。スクリーン10は、フロントウインドウの車内側の面や、車外側の面に接合層を介して貼付されるようにしてもよい。
【0112】
以上のような構成によって、自動車VCの搭乗者(運転手)は、映像光が投射されていない場合、フロントウインドウ2の全面を通して、車外の景色を観察することができ、映像光がフロントウインドウ2(スクリーン10)の少なくとも一部に投射されている場合は、映像光が投射されている部分については映像光を視認することができ、それ以外の部分については、車外の景色を観察することができる。また、映像光が投射されている部分についても、若干の車外の景色を観察することができる、いわゆるシースルーの状態で映像を確認することができる。
【0113】
ここで、このような自動車等の乗り物のウィンドウにスクリーン10を適用する場合には、調光層20、40の光吸収率については、以下のような範囲とすることが望ましい。
まず、スクリーン10全体の光吸収率が低すぎると、車外からの外光によってスクリーン10が白濁して見える場合がある。この白濁現象を抑制するために、調光層の光吸収率が固定であるとすると、光吸収率は、50%以上であることが望ましい。
また、映像光の非投射時に前方の視界が良好であること、及び、映像光の投射時に映像を容易に認識可能であること、の全てを満たすために、以下の条件を満たすことが望ましい。
調光層20、40の光吸収率は、映像光の非投射時には、低い方が望ましく、0%であることが最も望ましい。
調光層20、40の光吸収率は、映像光の投射時には、50%以上が望ましく、70%以上であることがさらに望ましい。
調光層20、40は、光吸収率が可変であり、上記2つの条件の少なくとも一方、より好ましくは、双方を満たすことが望ましい。
【0114】
(第4実施形態)
図15は、第4実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
第4実施形態のスクリーン10は、第3実施形態における調光層20をより簡素化した光吸収層60とした形態であり、この光吸収層60以外の構成は、第3実施形態のスクリーン10と同様である。よって、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0115】
第4実施形態の光吸収層60は、灰色や黒色等の染料や顔料等の着色材等により、着色が施され、光吸収性を有する。光吸収層60は、スクリーン10の光の透過率が所定の値となるように、その着色の濃度や層の厚さが設定されている。そして、光吸収層60は、スクリーン10に入射する照明光等の不要な外光や迷光を吸収し、映像のコントラストを向上させる機能を有する。なお、第1実施形態における保護層15に光吸収機能を持たせても、同様な効果を得ることができる。
【0116】
以上説明したように、第4実施形態によれば、光吸収層60を備えるので、より簡易な構成によって、映像のコントラストを向上させることができる。
【0117】
(第5実施形態)
図16は、第5実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
図17は、第5実施形態の反射層13を示す図である。
図18は、第5実施形態の反射層13の別な形態を示す図である。
第5実施形態のスクリーン10は、反射層13の構成が第1実施形態と異なる他は、第1実施形態のスクリーン10と同様な構成をしている。よって、反射層13の説明の他は、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0118】
第5実施形態の反射層13は、
図17に示すように、第1斜面121a上において複数の島状に形成されている。ここで、複数の島状とは、第1斜面121a上において、円形、楕円、矩形等の多角形、その他の任意の形状が、複数、規則的又は不規則的に配置されている状態をいう。
本実施形態の反射層13は、複数の円形状の反射膜13aが、第1斜面121aに沿って規則的に配置されている。第1斜面121a上の反射層13(複数の円形状の反射膜13a)が形成されていない部分は、入射した光を透過する光透過部となる。
【0119】
第1実施形態等に示した透過型のスクリーンの反射層は、第1斜面の全面に設けられていたため、反射率及び透過率の調整は、誘電体膜の場合、使用する材料を変更等することによって行うことができた。しかし、材料の変更だけでは反射率及び透過率を十分に所望な値に調整することができない場合があった。
これに対して、本実施形態のスクリーン10は、第1斜面121aの面積に対する複数の円形状の反射膜13aが占める面積の割合を調整することによって、スクリーン10に入射する光の反射率及び透過率を調整することができる。これにより、上述のような誘電体膜の材料を変更する等の調整が不要になり、より効率よく反射層の反射率及び透過率を調整することができる。
【0120】
なお、
図17では、円形状の反射膜13aの直径が、単位光学形状121の配列ピッチP(第1斜面121aの配列方向の幅)よりも小さく、第1斜面121a上に複数の円形状の反射膜13aが形成される例を示したが、これに限定されるものでない。例えば、
図18に示すように、円形状の反射膜13aの直径が、単位光学形状121の配列ピッチP1(第1斜面121aの配列方向の幅)よりも大きく、円形状の反射膜13aが、隣接する第1斜面121a上にまたがるようにして形成されるようにしてもよい。なお、
図17に示す形態とした方が、
図18に示す形態よりも島状の反射膜それぞれが小さく形成できるので、観察者から、反射膜の形状が視認され難く、またモアレも生じ難い。
【0121】
また、
図16では省略しているが、第4本実施形態のスクリーン10においても、第1斜面121aのうち反射層13(複数の円形状の反射膜13a)が形成される部位には、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されており、反射層13は、この微細かつ不規則な凹凸形状に追従して形成され、その凹凸形状を維持した状態で成膜されている。そのため、反射層13の第1光学形状層12側(映像源側)の面及び第2光学形状層14側(背面側)の面は、微細かつ不規則な凹凸形状を有する粗面となっている。これにより、反射層13は、入射した光の一部を微細かつ不規則な凹凸形状により拡散して反射させ、反射しない他の光を拡散させることなく透過させる。
ここで、島状の反射膜13aの大きさ(平面視における面積、以下同様)は、微細かつ不規則な凹凸形状の凸部1つの大きさ、及び、凹部1つの大きさよりも大きく構成されている。したがって、島状の反射膜13aは、複数の凸部及び凹部が含まれて構成されている。仮に、島状の反射膜13aが凸部及び凹部よりも小さくなってしまうと、反射膜13aによって反射される光の向きの分布のばらつきが大きくなり、第1斜面121aによる光の偏向作用を十分に得ることができず、適切な映像を観察することができなくなるからである。
なお、この凹凸形状は、微細な凸形状と凹形状とが2次元方向に不規則に配列されて形成されており、凸形状及び凹形状は、その大きさや形状、高さ等は不規則である。
【0122】
反射層13は、第1実施形態と同様に金属を用いた構成と、誘電体多層膜を用いた構成と、単層の誘電体膜を用いた構成と、の3種類のいずれとしてもよい。また、反射層13は、金属膜、誘電体膜を単層又は複層として適宜組み合わせて用いることができる。
反射層13は、第1斜面121a上に複数の円形状の反射膜13aが規則的に配置される例を示したが、これに限定されるものでなく、不規則に配置されるようにしたり、円形以外の形状の反射膜が規則的又は不規則に配置されるようにしたりしてもよい。
なお、本実施形態では、映像光の観察者側への反射に直接寄与しないので、反射層13が、第2斜面121b上に設けられていない例を示すが、これに限定されるものでなく、反射層13が第2斜面121b上にも設けられるようにしてもよい。
【0123】
第1実施形態と同様に、第2光学形状層14は、第1光学形状層12及び反射層13の背面側(-Z側)に設けられた光透過性を有する層である。
上述のように、反射層13は、複数の島状(円形状の反射膜13a)により構成されており、第1光学形状層12の第1斜面121aのうち、円形状の反射膜13aが形成されていない部分(光透過部)は、第1光学形状層12と第2光学形状層14とが直接接触することとなり、第1光学形状層12に対する第2光学形状層14の密着をより強固にすることができる。
【0124】
第5実施形態のスクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により製造される。
図19は、第5実施形態の反射層13の製造方法の一例を示す図である。
まず、基材層11を用意し、その一方の面に、単位光学形状121を賦形する成形型に紫外線硬化型樹脂を充填した状態で積層し、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させるUV成形法により第1光学形状層12を形成する。このとき、単位光学形状121を賦形する成形型の第1斜面121aを賦形する面には、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている。この微細かつ不規則な凹凸形状は、成形型の第1斜面121aを賦形する面に、めっき処理やエッチング処理、ブラスト処理等を1回以上行うことによって形成できる。
【0125】
それから、次の反射層13の形成に備えて、
図19に示すように、反射層13を構成する複数の円形状の反射膜13aに対応する位置に貫通孔Hが設けられたマスクMを、第1光学形状層12上に積層配置する。
なお、作製された基材層11及び第1光学形状層12からなる積層体がウェブ状である場合、この積層体は、反射層13の形成工程の前に、ロール体に巻き取られる場合がある。このような場合、上記積層体がマスクMとともに巻き取られていれば、第1光学形状層12が汚損されたり、傷付いたりするのを抑制することができ、その後の反射層13の形成工程において、反射膜の蒸着不良等の不具合が生じてしまうのを極力防ぐことができる。
【0126】
続いて、単位光学形状121上にマスクMを配置した状態で、例えば、誘電体膜を蒸着又はスパッタ加工する等により、所定の厚さの反射層13(複数の円形状の反射膜13a)が第1斜面121a上に形成される。
また、反射層13は、これに限らず、例えば、アルミニウム、クロム(Cr)、銀、ニッケル等の光反射性の高い金属を蒸着したり、光反射性の高い金属をスパッタリングしたり、金属箔を転写したりする等により形成してもよい。例えば、反射層13にアルミニウムを用いる場合、膜厚を十分に厚く(0.1μm以上)することにより、入射光の反射率が70~80%程度となり、入射光の吸収率が約20%程度となる。この場合において、第1斜面121a上における反射層13の面積の占める割合を20%としたとき、第1斜面121aの全面における反射層13による反射率が14~16%、吸収率が約4%となり、反射層13における入射光の吸収を極力抑制した上で、入射光の反射及び透過の割合を調整することができる。また、このように、反射層13の膜厚を十分に厚くすることにより、膜厚の変動が起因となる斑模様等が生じてしまうのを防ぐことができる。
なお、金属材料による反射層13の反射率(透過率)は、その膜厚を変化させることにより調整することができる。具体的には膜厚を薄くすれば、透過率が向上するが、反射率が低下し、膜厚を厚くすれば、反射率が向上するが、透過率は低下する。
【0127】
次に、反射層13の上から、単位光学形状121間の谷部を充填して平面状となるように紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、第2光学形状層14を形成する。以上により、スクリーン10が完成する。
なお、単位光学形状121の第1斜面121aには、上述したように微細な凹凸形状が形成されているので、第1斜面121a上に形成された反射層13の両面には微細な凹凸形状が形成される。また、第1斜面121a上の反射層13が形成されていない部分の凹凸形状は、第2光学形状層14の樹脂が充填されることによって殆ど目立たなくなり、完成したスクリーン10においては、第1斜面121aの反射層13が形成されていない部分に入射した光を拡散させることなく透過させることができる。
【0128】
以上説明したように、第5実施形態のスクリーン10は、単位光学形状121の映像光が入射する位置(第1斜面121a)に、複数の島状に形成される反射層13、すなわち、複数の円形状の反射膜13aが形成されている。これにより、映像源LSから投射された映像光を、反射層13により観察者O1側に反射させるとともに、スクリーン10の背面側の景色等の外光の一部を、反射層及び単位光学形状の反射層が形成されていない部分(光透過部)を拡散させることなく透過させて観察者O1側に出射することができる。そのため、観察者O1に対して、映像源LSの映像を表示するとともに、スクリーン10の背面側の景色をより鮮明に観察させることができる。
【0129】
(第6実施形態)
図20は、第6実施形態のスクリーン100の層構成を説明する図である。
図20では、スクリーン100の画面中央となる点Aを通り、画面上下方向(Y方向)及び厚み方向(Z方向)に平行な断面を示している。
第6実施形態のスクリーン100は、第5実施形態のスクリーン10が2枚(以下、第1スクリーン部10A、第2スクリーン部10Bという)、接合層17を介して接合されている点以外は、前述の第5実施形態のスクリーン10と同様の形態である。したがって、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0130】
第6実施形態のスクリーン100は、
図20に示すように、第1スクリーン部10Aと、第1スクリーン部10Aの背面側に位置する第2スクリーン部10Bとを備え、これらが接合層17によって一体に接合されている。より具体的には、第1スクリーン部10Aの背面側の第2光学形状層14と、第2スクリーン部10Bの映像源側の基材層11とが、接合層17によって接合されている。
接合層17は、光透過性の高い粘着剤又は接着剤により形成された層であり、スクリーン100の厚み方向において、第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bとの間に設けられている。この接合層17は、第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bとを一体に接合している。
本実施形態のスクリーン100の第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10Bは、それぞれの光学的中心が一致するようにして互いに接合されている。
また、第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10Bの各単位光学形状は、同一の形状に形成されている。したがって、各スクリーン部の焦点位置(集光点)は、略一致する。
【0131】
ここで、透明性を有するスクリーンは、投射瞳径が小さい映像源等により高輝度の映像光を投射した場合には、シンチレーション(スペックル)が生じやすい傾向を有する。
しかし、本実施形態のスクリーン100では、第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bとは、同じ表示領域に同じ映像を表示しており、かつ、同じ映像を表示する光が、異なる2つの光路を通ってスクリーン10から出射するので、シンチレーション(スペックル)が低減される。
よって、映像のシンチレーション(スペックル)を低減し、明るく良好な映像を表示できるスクリーン100及び映像表示装置1とすることができる。
また、本実施形態のスクリーン100は、上述の第5実施形態のスクリーン10と同様の効果を奏する。
【0132】
(第6実施形態の別な形態1)
上述の第6実施形態では、第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10Bの焦点位置(集光点)が、略一致する例を示したが、これに限らず、以下のような形態としてもよい。
図21は、第6実施形態のスクリーン100の別の形態を説明する図である。
図21は、別な形態のスクリーン100の第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bとの焦点位置(集光点)を示す図である。
図21では、スクリーン100を画面左右方向の右側(+X側)から見た様子を示している。
【0133】
スクリーン100は、第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10Bの焦点位置(集光点)が、厚み方向(Z方向)において異なるようにしてもよい。
本実施形態では、
図21に示すように、第2スクリーン部10Bの集光点F2は、第1スクリーン部10Aの集光点F1よりも厚み方向(Z方向)においてスクリーン100から離れた側(+Z側)に位置している。すなわち、本実施形態のスクリーン100では、第2スクリーン部10Bの第1光学形状層12が有するサーキュラーフレネルレンズ形状は、第1スクリーン部10Aの第1光学形状層12が有するサーキュラーフレネルレンズ形状とは、その形状や光学設計が異なり、集光点の位置が異なる設計となっている。
【0134】
そのため、第2スクリーン部10Bの第1光学形状層12の単位光学形状121を形成する第1斜面、第2斜面の角度θ1、θ2等は、この集光点F2に対応して設計されている。したがって、光学的中心(C1)からの距離rが等しい点に位置する第1スクリーン部10Aの単位光学形状121と第2スクリーン部10Bの単位光学形状121とでは、それぞれ角度θ1が相違している。
【0135】
また、この形態では、第2スクリーン部10Bの単位光学形状121の配列ピッチP2の値は、第1スクリーン部10Aの単位光学形状121の配列ピッチP1の値とは異なり、例えば、配列ピッチP1の値の1.4倍となっている。このように、第1スクリーン部10Aの単位光学形状121の配列ピッチP1と第2スクリーン部10Bの単位光学形状121の配列ピッチP2とを異ならせることにより、第1スクリーン部10Aの表示する映像の映像光と第2スクリーン部10Bが表示する映像の映像光との干渉によるモアレを改善できる。モアレ改善のためには、一方の配列ピッチを他方の配列ピッチの1.4倍や2.4倍とすることが好ましい。
なお、この形態では、配列ピッチP1と配列ピッチP2とは異なる値である例を示したが、これに限らず、同じ値としてもよい。
【0136】
このような形態とすることにより、第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bとが表示する同じ映像を、異なる位置に集光させることができ、異なる位置の観察者に良好な映像を表示できる。
したがって、この別な形態によれば、前述の第6実施形態によって得られる効果に加えて、さらに、異なる2つの位置に向けて映像光を集光でき、異なる2つの位置の観察者に良好な映像を表示できる。
【0137】
なお、上述のように異なる2つの位置へ映像光を集光する場合には、第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10Bの反射光の輝度分布(視野角分布)において、ピーク輝度に対する半値全幅αHが20°以下であることが好ましい。これにより、映像光の集光性を高めて、集光点に位置する観察者により明るく明瞭な映像を表示することができる。
【0138】
(第6実施形態の別な形態2)
図22は、第6実施形態のスクリーン100の別な形態2を説明する図でありスクリーン100を画面上下方向の上側から見た図である。
図22に示すように、第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10Bの焦点位置(集光点)F1,F2は、画面左右方向(X方向)において異なっていてもよい。このような形態とすることにより、画面左右方向の視野角を広げることができる。また、このような形態は、例えば、画面左右方向の寸法が画面上下方向の寸法より大きい横長のスクリーンにおいて好適である。
【0139】
図23は、第6実施形態のスクリーン100の別な形態2を説明する図でありスクリーン100を画面左右方向の右側から見た図である。
図23に示すように、第1スクリーン部10Aの集光点F1と第2スクリーン部10Bの集光点F2とは、画面上下方向(Y方向)において異なっていてもよい。このような形態とすることにより、画面上下方向の視野角を広げることがでる。また、このような形態は、例えば、画面上下方向の寸法が画面左右方向の寸法より大きい縦長のスクリーンにおいて好適である。
また、集光点F1,F2は、画面左右方向(X方向)及び厚み方向(奥行き方向、Z方向)で異なっていてもよいし、画面上下方向(Y方向)及び奥行き方向(Z方向)で異なっていてもよいし、画面上下方向(Y方向)及び画面左右方向(X方向)で異なっていてもよい。
また、集光点F1,F2は、いずれか一方が無限遠となっていてもよい。
【0140】
このように集光点F1,F2が異なる場合には、それに合わせて、第1スクリーン部10Aの第1光学形状層12及び第2スクリーン部10Bの第1光学形状層12のサーキュラーフレネルレンズ形状を設計する。したがって、フレネルセンターとなる光学的中心は、その設計に応じて、スクリーン面の法線方向から見て一致していてもよいし、一致していなくともよい。
【0141】
例えば、第1スクリーン部10Aの第1光学形状層12と第2スクリーン部10Bの第1光学形状層12とは、サーキュラーフレネルレンズ形状は同じであるが、そのフレネルセンターとなる点(光学的中心)がスクリーン面の法線方向から見て異なる位置にあってもよい。また、第1スクリーン部10Aの第1光学形状層12と第2スクリーン部10Bの第1光学形状層12とは、サーキュラーフレネルレンズ形状が異なり、さらに、そのフレネルセンターとなる点(光学的中心)がスクリーン面の法線方向から見て異なる位置にある形態でもよい。
さらに、例えば、集光点F1,F2の位置が一致する(又は、略一致する)が、各スクリーン部の第1斜面の角度θ1の角度分布や、光学的中心の位置が異なる形態としてもよい。
なお、第6実施形態では、第5実施形態のスクリーン10が2枚(第1スクリーン部10Aと第2スクリーン部10B)、接合層17を介して接合されている形態を例示したが、スクリーンを複数枚設けることと同様な構成は、例えば、反射層が当該反射スクリーンの厚み方向において所定の間隔を空けて複数層設けられている形態として実現してもよい。ここで、反射層が所定の間隔を空けて独立して複数層積層とは、多層膜反射層のような形態ではなく、映像光に対して反射層として作用する独立した反射層を複数層設けることを指している。
【0142】
(第7実施形態)
図24は、第7実施形態の映像表示装置1を示す斜視図である。なお、
図24では、理解を容易にするために、スクリーン10の表面に単位光学形状121のサーキュラーフレネルレンズ形状に相当する円弧形状を併記している。
図25は、第7実施形態の映像表示装置1を上面から見た図である。
なお、第7実施形態のスクリーン10は、上述した各実施形態のスクリーン10と同様な構成を適宜利用するものとする。よって、スクリーン10の具体的な形態の説明は省略する。
上述した各実施形態では、単位光学形状121の配列方向を上下方向としてスクリーン10を使用する形態を例示して説明した。第7実施形態では、単位光学形状121の配列方向を左右方向(水平方向)としてスクリーン10を使用する。よって、第7実施形態では、映像源LSは、スクリーン10の斜め側方に配置される。スクリーン10では、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用は、配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きい。したがって、第7実施形態では、観察者O1の位置が左右方向にずれた場合にも、良好な映像を提供できる範囲を拡大することができる。
【0143】
(第8実施形態)
図26は、第8実施形態のスクリーン10の層構成の一例を示す図である。
第8実施形態のスクリーン10は、第3実施形態における調光層40を改良した調光層210とした形態であり、この調光層210の構成と、励起光源220とを備える他は、第3実施形態のスクリーン10と同様である。よって、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0144】
調光層210と励起光源220とは、調光部200を構成しており、この調光部200は、不図示の制御部によって励起光源220が制御されることにより、フォトクロミック層211の透過率を調整することができる構成となっている。
調光層210は、フォトクロミック層211と、第1遮蔽層212と、第2遮蔽層213と、導光層214とを備えている。
【0145】
フォトクロミック層211は、特定の波長領域の励起光を受光すると透過率が変化する光応答性を備えた層である。本実施形態のフォトクロミック層211は、通常は可視光の透過率が高く可視光に対して略透明であり、紫外光を受光することによりグレー又は黒色に変色して可視光の透過率が低下した状態となる。また、紫外光を受光したフォトクロミック層211は、紫外光の受光が終了すると、徐々に可視光の透過率が上昇して透明な状態に戻る。
フォトクロミック層211は、フォトクロミック材料(感光物質)を含有する樹脂により構成されている。フォトクロミック材料としては、例えば、ジアリールエテン系化合物、スピロピラン系化合物、スピロペリミジン系化合物、フルギド系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、ナフトピラン系化合物等が挙げられるが、これらに限らず、従来公知のフォトクロミック材料を適宜利用することができる。
【0146】
本実施形態のフォトクロミック層211は、紫外光により変色されていない状態の垂直に入射する可視光の最大透過率が430nm~700nmで80%であり、紫外光によって最も濃く変色された状態の最小透過率が430nm~700nmで20%である。
【0147】
第1遮蔽層212は、フォトクロミック層211の映像源側に配置され、励起光である紫外光の透過を遮蔽する層である。より具体的には、第1遮蔽層212は、紫外線吸収層として構成してもよいし、紫外線反射層として構成してもよい。第1遮蔽層212は、遮断する紫外光以外の帯域の光は透過する(透過率が十分に高い)ので、可視光に対しては略透明である。本実施形態では、第1遮蔽層212は、調光層210の映像源側の最表面(粘着層30と接する位置)に配置されている。
【0148】
第2遮蔽層213は、フォトクロミック層211の背面側に配置され、励起光である紫外光の透過を遮蔽する層である。より具体的には、第2遮蔽層213は、紫外線吸収層として構成してもよいし、紫外線反射層として構成してもよい。第2遮蔽層213は、遮断する紫外光以外の帯域の光は透過する(透過率が十分に高い)ので、可視光に対しては略透明である。本実施形態では、第2遮蔽層213は、調光層210の背面側の最表面に配置されている。
【0149】
本実施形態では、第1遮蔽層212及び第2遮蔽層213は、同一の構成となっており、紫外線吸収層として構成されており、垂直に入射する280nm~380nmの紫外光の90%以上を遮蔽(吸収)する。より好ましくは、第1遮蔽層212及び第2遮蔽層213は、垂直に入射する280nm~380nmの紫外光の95%以上を遮蔽(吸収)するとよい。
【0150】
第1遮蔽層212及び第2遮蔽層213によってフォトクロミック層211を挟んで構成されていることにより、調光層210へ映像源側及び背面側から到達する紫外光は、その殆どが第1遮蔽層212及び第2遮蔽層213によって遮蔽され、フォトクロミック層211へは到達しない。よって、フォトクロミック層211は、外来光や映像光によっては透過率の変化を生じない。
【0151】
導光層214は、第1遮蔽層212と第2遮蔽層213との間に配置され、調光層210の端部から入射する光を導光して少なくとも一部の光をフォトクロミック層211側へ出射する。本実施形態では、導光層214は、フォトクロミック層211よりも映像源側に配置されている。
導光層214は、高屈折率層215と、第1低屈折率層216と、第2低屈折率層217とを有している。
【0152】
高屈折率層215は、導光される励起光(本実施形態では、紫外光)が導光される領域であり、第1低屈折率層216及び第2低屈折率層217の屈折率よりも屈折率が高い。また、高屈折率層215は、可視光及び励起光である紫外光の透過率が高い材料を用いて形成することが望ましい。
第1低屈折率層216は、高屈折率層215の映像源側に隣接して配置され、高屈折率層215よりも屈折率が低い。
第2低屈折率層217は、高屈折率層215の背面側に隣接して配置され、高屈折率層215よりも屈折率が低い。
第1低屈折率層216及び第2低屈折率層217は、いずれも、可視光及び励起光である紫外光の透過率が高い材料を用いて形成することが望ましい。本実施形態では、第1低屈折率層216及び第2低屈折率層217は、同一の素材により構成されている。
導光層214は、上述したような構成、すなわち、高屈折率層215を第1低屈折率層216及び第2低屈折率層217によって挟み込む構成とすることにより、高屈折率層215と第1低屈折率層216との界面、及び、高屈折率層215と第2低屈折率層217との界面において、臨界角よりも大きな角度でこれらの界面に到達する励起光源220からの励起光が全反射される。これにより、導光方向(
図26中の下から上に向かう方向)へと励起光が導光される。
【0153】
また、導光層214は、導光する光の一部の進む向きを変える進路変更部215aを備えている。本実施形態の進路変更部215aは、高屈折率層215の映像源側に設けられた溝形状として構成されている。この進路変更部215aは、導光方向に直交する方向、すなわち、画面左右方向に溝形状が同一形状を維持して延在している。また、進路変更部215aは、導光方向に沿って、複数が間隔を空けて配置されている。本実施形態の進路変更部215aは、
図26に示す断面形状が矩形形状としたが、断面形状が三角形形状であってもよいし、半円形状や楕円形状の一部形状等、その形状は適宜変更してもよい。
また、進路変更部215aの溝形状の内部には、例えば、第1低屈折率層216を形成する樹脂が充填された構成としてもよいし、他の樹脂を充填してもよい。ただし、進路変更部215aの溝形状の内部を空隙としてしまうと、結露する等して進路変更部215aが視認されやすくなる恐れがあるので、何らかの樹脂により充填することが望ましい。
【0154】
励起光源220は、調光層210の端部210aに配置されており、励起光となる紫外光を発光し、端部210aへ励起光を照射する。端部210aへ照射された励起光は、端部210aから高屈折率層215内へ入射して、導光方向へ進む。本実施形態では、励起光源220は、点光源のLED(発光ダイオード)光源を複数配置した。
【0155】
端部210aについては、図示しないが、高屈折率層215の端部以外の端部、特に、フォトクロミック層211の端部については、励起光が直接入射しないように遮光膜や遮光部材等を配置することが望ましい。また、端部210aと対向する側の端部210bや、調光層210の導光方向に沿って延びる画面左右の端部については、例えば、励起光を反射する紫外光反射材料を配置して励起光を戻すようにしてもよいし、励起光を吸収する紫外光反射材料を配置してもよい。
【0156】
励起光源220が発光すると、励起光が端部210aから入射して、
図26中の矢印のように進む。高屈折率層215内を進む励起光は、先に説明したように、高屈折率層215と第1低屈折率層216との界面、及び、高屈折率層215と第2低屈折率層217との界面において、臨界角よりも大きな角度でこれらの界面に到達すると全反射される。これを繰り返すことにより、導光方向へと励起光が導光される。また、進路変更部215aに到達した励起光は、その進む方向が大きく変更される。ここで、進路変更部215aによって変更される励起光の進む向きは様々であるが、一部の光は、高屈折率層215と第2低屈折率層217との界面に臨界角よりも小さい角度で入射する。この励起光は、この界面を通過して導光層214から出射して、フォトクロミック層211へと到達して、フォトクロミック層211の透過率が低下する。
【0157】
上述したように進路変更部215aは、励起光の進路を変更することによりフォトクロミック層211へ励起光を進める。よって、進路変更部215aへ励起光が当たる程度によってフォトクロミック層211へ向かう励起光の分布具合が変わる。フォトクロミック層211全体における透過率を均一にするためには、進路変更部215aの配置を適宜最適化することが望ましい。なお、導光層214は、励起光の面光源として捉えることができるので、従来公知の面光源装置と同様な構成を進路変更部215aの具体的な構成として適宜利用することができる。例えば、進路変更部215aに代えて、光拡散粒子を導光層14内に含めるようにしてもよい。
【0158】
本実施形態のような進路変更部215aの形態の場合には、進路変更部215aの溝の深さを場所によって変えることにより、励起光の出射光量の分布を均一化することができる。具体的には、励起光源220に近い側の進路変更部215aの溝の深さを励起光源220から遠い側の進路変更部215aの溝の深さよりも小さくするとよい。なお、複数の進路変更部215aの溝の深さは、導光方向に沿って、進路変更部215aが1個ずつの単位で変化していてもよいし、導光方向に沿って、進路変更部215a複数個ずつの単位で段階的に変化していてもよい。
なお、進路変更部215aの幅(導光方向の幅)及びその配列ピッチを変えることによっても励起光の出射光量の分布を均一化することが可能である。しかし、進路変更部215aの幅及びその配列ピッチについては、一定とすることが望ましい。これは、進路変更部215aが視認されてしまうことを防止するためである。
【0159】
励起光源220が励起光を発光すると、フォトクロミック層211の透過率が下がり、いわゆる調光作用を発揮することができる。フォトクロミック層211の透過率の低下は、励起光源220が励起光を発光すると略同時に生じるので、透過率変化の応答速度が速い。また、上述したようにフォトクロミック層211は、最大透過率が80%であり、最小透過率が20%であるので、液晶等を用いる調光層と比べて透過率のダイナミックレンジが高く、透過時と調光時(透過率の低下時)との差が大きく、利用価値が高い。
また、調光層210は、第1遮蔽層212及び第2遮蔽層213によってフォトクロミック層211を挟んで構成されている。よって、フォトクロミック層211は、映像光や外来光によって透過率の変化を生じない。また、励起光が調光層210から出射されてしまうことも防止できる。
【0160】
なお、上記第8実施形態では、励起光源220のみを設けたが、例えば、フォトクロミック層211の透過率を高める作用を有する光(例えば、可視光)を導光層14へ入射する光源をさらに設けてもよい。
【0161】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0162】
(1)各実施形態において、断面では、第1斜面121a(第1の面)及び第2斜面121b(第2の面)が直線(第1斜面及び第2斜面が平面)であり、接続面121cが曲線である例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第1斜面(第1の面)についても断面において曲線、すなわち、第1斜面(第1の面)を曲面としてもよいし、第2斜面(第2の面)についても断面において曲線、すなわち、第2斜面(第2の面)を曲面としてもよい。
【0163】
(2)各実施形態において、スクリーン10の表面や裏面に、傷つき防止を目的としたハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は、例えば、スクリーン10の面に、ハードコート機能を有する紫外線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を塗布する等により、形成される。
また、ハードコート層に限らず、スクリーン10の使用環境や使用目的等に応じて、スクリーン10に、例えば、反射防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能、帯電防止機能等、適宜必要な機能を有する層を1つ又は複数選択して設けてもよい。さらに、基材層11の映像源側にタッチパネル層等を設けてもよい。
特に、スクリーン10の映像源側の表面に反射防止層を設けた場合には、反射層13で反射した映像光が、映像源側の空気との界面で反射して、背面側から出射して背面側に映像が漏れたように表示されることを防止できる。
【0164】
(3)第6実施形態において、第5実施形態のスクリーン10(第1スクリーン部10A及び第2スクリーン部10B)を重ねて配置する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第1実施形態のスクリーン10を重ねて配置してもよい。
【0165】
(4)各実施形態において、反射層13の表面(単位光学形状121の表面)の微細な凹凸形状は、その大きさや形状、配列等が不規則である例を示したが、大きさや形状、配列のいずれかが規則性を有していてもよい。
【0166】
(5)各実施形態において、映像源LSは、スクリーン10の画面左右方向の中央であって画面外の下方に位置する例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、スクリーン10の斜め下側等に配置され、スクリーン10に対して画面左右方向において斜め方向光から映像光を投射する形態としてもよい。
この場合、単位光学形状121の配列方向は、映像源LSの位置に合わせて傾けた形態とする。このような形態とすることにより、映像源LSの位置等を自由に設定することができる。
【0167】
(6)各実施形態において、第1斜面121a及び第2斜面121b及び接続面121cは、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている例を示したが、これに限らず、例えば、第1斜面121aにのみ微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている形態としてもよい。
また、反射層13は、単位光学形状121の全面に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、第1斜面121aの少なくとも一部に形成される形態としてもよい。
【0168】
(7)各実施形態の説明において、映像表示装置1は、室内用のパーテーションに配置される例を主として説明し、第2実施形態及び第3実施形態においては、自動車の窓に配置される例についても例示した。これに限らず、いずれの実施形態についても、例えば、展示会等における映像表示や、店舗等のショーウィンドウ等に適用してもよいし、自動車に限らず各種乗り物(例えば、航空機や、鉄道車両、船舶等)の窓(フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等)等に適用してもよい。
【0169】
(8)第2実施形態において、調光層20は、液晶を用いる例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、調光層は、液晶以外を用いたものとして、例えば、EC方式、SPD方式、PDLC方式調光フィルム等、電極間の電位差に応じて明暗(透過率)が変化するデバイスであってもよい。
EC方式(Electro chromic)を用いた調光フィルムは、一対の電極で調光層(電解質層)を挟んだ構造を有する。電極間の電位差に応じ、酸化還元反応を利用して調光層の色が透明と濃紺との間で変化する。
SPD方式(Suspended Particle Device)を用いた調光フィルムは、微粒子の配向を利用し、通常濃紺色に着色しているが、電圧を印加すると透明に変化し、電位を切ると元の濃紺色に戻るものであり、電圧によって濃淡を調整できる。
PDLC方式(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いた調光フィルムは、液晶層中に特殊なポリマーによるネットワーク構造体を形成させたもので、ポリマーネットワークの作用により、液晶分子の配列が不規則な状態を誘起して光を散乱させる。そして、電圧を印加することで、液晶分子を電界方向に配列させると、光が散乱されず、透明な状態となる。
【0170】
(9)各実施形態において、スクリーン10の単位光学形状121は、サーキュラーフレネルレンズ形状に形成される例を説明したが、これに限定されるものでなく、リニアフレネルレンズ形状としてもよい。また、サーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心をスクリーン10の画面領域外に配置する例を説明したが、これに限定されるものでなく、光学的中心が、スクリーン10の画面領域内に存在するようにしてもよい。
【0171】
(10)第6実施形態において、第1スクリーン部10Aの表示領域と、第2スクリーン部10Bの表示領域とは、スクリーン100の正面方向から見てスクリーン100の画面(表示領域)と一致している例を挙げて示したが、これに限らず、例えば、第1スクリーン部10Aの表示領域と第2スクリーン部10Bの表示領域とは、一部が重複しており、スクリーン100の正面方向(Z方向、スクリーン面の法線方向)から見て、その重複する領域の面積は、スクリーン100の画面(表示領域)の面積の50%よりも大きい形態としてもよい。このような形態としても、シンチレーションの改善は期待できる。
なお、スクリーン10の画面に表示される映像のシンチレーションを低減し、良好な映像を表示する観点から、第1スクリーン部の表示領域と第2スクリーン部の表示領域との重複する領域の面積は、スクリーン100の画面(表示領域)の面積の90%以上とすることがより好ましい。
【0172】
(11)第6実施形態において、スクリーン10を2枚積層する例を説明したが、これに限定されるものでなく、3枚以上積層するようにしてもよい。3枚のスクリーンは、それぞれ集光点が一致していてもよいし、相違していてもよい。
【0173】
(12)各実施形態において、映像表示装置1は、映像源LSがプロジェクタであり、スクリーン10が入射光を拡散反射させる反射層13を有する例を説明したが、これに限定されるものでなく、映像源がLCD(Liquid Crystal Display)等のマイクロディスプレイであり、スクリーンが入射光を鏡面反射させる反射層から構成されるいわゆるHUD(ヘッドアップディスプレイ)のような形態であってもよい。
【0174】
(13)第1実施形態において、単位光学形状121の形状によって、単位光学形状121の配列方向における光の拡散作用を、配列方向に直交する方向における光の拡散作用よりも大きくする例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、単位光学形状121の表面に形成される微細な凹凸形状に規則性及び異方性を持たせることによって、光の拡散作用に異方性を付与してもよいし、凹凸を付与する時に反射面を湾曲させてもよい。
【0175】
(14)第1実施形態の変形形態において、
図8に示したように、単位光学形状121の形状は、谷底部Vにおいて曲面が連続し、頂点部Tにおいて曲面が不連続である例を例示した。これに限らず、単位光学形状121の形状は、様々な変形形態を採用することができる。
図27は、単位光学形状121の変形形態の一例を示す図である。
図27に示すように頂点部Tにおいては曲面が連続しており、谷底部Vにおいて曲面が不連続な形態としてもよい。また、図示しないが、頂点部T及び谷底部Vの双方において曲面が連続する形態としてもよい。また、曲面の凸となる向きは、
図8に示すように観察者側に凸であってもよいし、
図27に示すように観察者側に凹であってもよい。
【0176】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0177】
1 映像表示装置
2 フロントウインドウ
3 内装パネル
4 ハンドル
10 スクリーン
10A 第1スクリーン部
10B 第2スクリーン部
11 基材層
12 第1光学形状層
13 反射層
13a 反射膜
14 第2光学形状層
15 保護層
17 接合層
20 調光層
20A 液晶用第1積層体
20B 液晶用第2積層体
21A、21B 基材
22A、22B 透明電極
23A、23B 配向層
24 ビーズスペーサー
25 シール材
26、27 液晶層
28 スペーサー
29A、29B 直線偏光板
30 粘着層
40 調光層
50 支持板
60 光吸収層
51 接合層
61 第1ガラス板
62 第1中間層
63 第2中間層
64 第2ガラス板
100 スクリーン
121 単位光学形状
121a 第1斜面
121b 第2斜面
121c 接続面
200 調光部
210 調光層
210a、210b 端部
211 フォトクロミック層
212 第1遮蔽層
213 第2遮蔽層
214 導光層
215 高屈折率層
215a 進路変更部
216 第1低屈折率層
217 第2低屈折率層
220 励起光源