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特許7395863トナーセット、現像剤セット、トナーカートリッジセット、プロセスカートリッジセット、印刷物の製造装置、及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】トナーセット、現像剤セット、トナーカートリッジセット、プロセスカートリッジセット、印刷物の製造装置、及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20231205BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/09
G03G9/087 331
G03G9/087 325
G03G9/093
G03G21/18
G03G15/01 J
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019132141
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021018269
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 保伸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 啓
(72)【発明者】
【氏名】吉野 進
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016714(JP,A)
【文献】特開2018-002889(JP,A)
【文献】特開2014-115505(JP,A)
【文献】特開2018-122572(JP,A)
【文献】特開2005-292683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
G03G 21/18
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有彩色トナーと、圧力相転移性を有する透明トナーと、を有し、
前記有彩色トナーはポリエステル樹脂を含有し、前記透明トナーはビニル系樹脂を含有し、
前記透明トナーは、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル及びアクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも2種のアクリル酸アルキルエステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める前記少なくとも2種のアクリル酸アルキルエステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含み、
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含み
前記透明トナーは、前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆するシェル層と、を有し、前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有し、
前記有彩色トナーにおける100℃のtanδをtanδ1とし、前記透明トナーにおける100℃のtanδをtanδ2としたとき、前記tanδ1が1.0以上4.0以下であり、かつ、前記tanδ1及び前記tanδ2が下記式1を満たすトナーセット。
式1 : 1.2≦tanδ1/tanδ2≦3.0
【請求項2】
前記tanδ1が1.5以上3.5以下である請求項1に記載のトナーセット。
【請求項3】
前記tanδ1及び前記tanδ2が下記式2を満たす請求項1又は請求項2に記載のトナーセット。
式2 : 1.5≦tanδ1/tanδ2≦2.9
【請求項4】
前記透明トナーは、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である請求項1~請求項のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種のアクリル酸アルキルエステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種のアクリル酸アルキルエステルのうち最も質量割合の多い2種のアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、請求項~請求項のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項8】
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、請求項~請求項のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、請求項~請求項のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、請求項~請求項のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項11】
前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、請求項~請求項10のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項12】
前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する、請求項~請求項11のいずれか1項に記載のトナーセット。
【請求項13】
前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、請求項12に記載のトナーセット。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤と、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤と、
を有する現像剤セット。
【請求項15】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを収容した第1のトナーカートリッジと、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記透明トナーを収容した第2のトナーカートリッジと、
を有し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジセット。
【請求項16】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、前記第1の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された有彩色トナー像用の静電荷像を有彩色トナー像として現像する第1の現像手段を備えた第1のプロセスカートリッジと、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、前記第2の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された透明トナー層用の静電荷像を透明トナー層として現像する第2の現像手段を備えた第2のプロセスカートリッジと、
を有し、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジセット。
【請求項17】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、前記第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成手段と、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、記録媒体上に、前記透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置手段と、
定着部材を備え、前記定着部材が前記透明トナー層に接触した状態で、前記有彩色トナー像を前記記録媒体に熱定着させる熱定着手段と、
前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、
を含む印刷物の製造装置。
【請求項18】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成工程と、
記録媒体上に、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のトナーセットにおける前記透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置工程と、
定着部材が前記透明トナー層に接触した状態で、前記有彩色トナー像を前記記録媒体に熱定着させる熱定着工程と、
前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、
を含む印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーセット、現像剤セット、トナーカートリッジセット、プロセスカートリッジセット、印刷物の製造装置、及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粉体トナー粒子を接着剤として用いてシートを接着する装置であって、前記接着剤を前記シートに熱定着するための定着部を2箇所に有することを特徴とする圧着シート作製装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、シートに粉体接着剤を電子写真方式による転写により塗布して、該粉体接着剤を塗布された秘匿情報印刷面を圧着する圧着印刷物作製装置であって、シートの裏面にトナーによる秘匿情報を転写する第1の画像形成ユニットと、秘匿情報の転写面に粉体接着剤を転写する第2の画像形成ユニットと、シートに秘匿情報を定着すると共に粉体接着剤を仮定着する第1の加熱加圧装置と、シートを反転搬送する搬送機構と、シートの表面に可変情報を転写する第3の画像形成ユニットと、可変情報を前記シートの表面に定着する第2の加熱加圧装置と、シートの裏面を中央部から谷折りする第1の折り装置と、粉体接着剤の仮定着面を熱と圧力により本定着して圧着させる第3の加熱加圧装置と、を備えて、投函可能状態の二つ折り圧着印刷物を作製することを特徴とする圧着印刷物作製装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、像担持体と現像手段と転写手段と像担持体クリーニング手段とを有した複数の作像部と、定着手段と、を備えた画像形成装置において、現像手段で用いるトナーは、圧力相転移樹脂を含む圧力相転移樹脂トナー、又は熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂トナーであり、前記圧力相転移樹脂トナー及び前記熱可塑性樹脂トナーは、いずれも少なくとも1つ以上の作像部に有した現像手段で用いられ、記録媒体上に転写されたトナー画像を形成する前記圧力相転移樹脂トナーを、前記記録媒体に定着させる定着手段の定着ニップが形成される圧力定着ニップ部と、前記記録媒体上に転写されたトナー画像を形成する前記熱可塑性樹脂トナーを、前記記録媒体に定着させる定着手段の定着ニップが形成される熱定着ニップ部とを別に備え、前記圧力定着ニップ部での圧力相転移樹脂トナーの定着条件における温度Tb及び圧力Pbと、前記熱定着ニップ部での熱可塑性樹脂トナーの定着条件における温度Ta及び圧力Paとの大小関係が、Tb<TaかつPb>Paであることを特徴とする画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-173917号公報
【文献】特開2008-155412号公報
【文献】特開2013-015664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0008】
<1> 有彩色トナーと、圧力相転移性を有する透明トナーと、を有し、
前記有彩色トナーにおける100℃のtanδをtanδ1とし、前記透明トナーにおける100℃のtanδをtanδ2としたとき、前記tanδ1が1.0以上4.0以下であり、かつ、前記tanδ1及び前記tanδ2が下記式1を満たすトナーセット。
式1 : 1.2≦tanδ1/tanδ2≦3.0
<2> 前記tanδ1が1.5以上3.5以下である<1>に記載のトナーセット。
<3> 前記tanδ1及び前記tanδ2が下記式2を満たす<1>又は<2>に記載のトナーセット。
式2 : 1.5≦tanδ1/tanδ2≦2.9
<4> 前記有彩色トナーはポリエステル樹脂を含有し、前記透明トナーはビニル系樹脂を含有する<1>~<3>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<5> 前記透明トナーは、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である<1>~<4>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<6> 前記透明トナーは、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<7> 前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、<6>に記載のトナーセット。
<8> 前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、<6>又は<7>に記載のトナーセット。
<9> 前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、<6>~<8>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<10> 前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、<6>~<9>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<11> 前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、<6>~<10>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<12> 前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、<6>~<11>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<13>
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、<6>~<12>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<14>
前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、<6>~<13>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<15>
前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する、<6>~<14>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<16> 前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、<15>に記載のトナーセット。
<17> 前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、
前記コア部を被覆するシェル層と、
を有する、<6>~<16>のいずれか1つに記載のトナーセット。
<18> 前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有する、<17>に記載のトナーセット。
【0009】
<19>
<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤と、
<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤と、
を有する現像剤セット。
<20> <1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを収容した第1のトナーカートリッジと、
<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記透明トナーを収容した第2のトナーカートリッジと、
を有し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジセット。
<21> <1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、前記第1の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された有彩色トナー像用の静電荷像を有彩色トナー像として現像する第1の現像手段を備えた第1のプロセスカートリッジと、
<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、前記第2の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された透明トナー層用の静電荷像を透明トナー層として現像する第2の現像手段を備えた第2のプロセスカートリッジと、
を有し、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジセット。
<22> <1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、前記第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成手段と、
<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、記録媒体上に、前記透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置手段と、
定着部材を備え、前記定着部材が前記透明トナー層に接触した状態で、前記有彩色トナー像を前記記録媒体に熱定着させる熱定着手段と、
前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、
を含む印刷物の製造装置。
<23> <1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成工程と、
記録媒体上に、<1>~<18>のいずれか1つに記載のトナーセットにおける前記透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置工程と、
定着部材が前記透明トナー層に接触した状態で、前記有彩色トナー像を前記記録媒体に熱定着させる熱定着工程と、
前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、
を含む印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
<1>又は<4>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットが提供される。
<2>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.5未満又は3.5超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットが提供される。
<3>に係る発明によれば、前記tanδ1/tanδ2が1.5未満若しくは2.9超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットが提供される。
<5>に係る発明によれば、透明トナーのガラス転移温度が1つのみである場合又は少なくとも2つのガラス転移温度を有し最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃未満である場合に比べ、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<6>に係る発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである場合に比べ、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<7>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が95質量%超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<8>に係る発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80の範囲を外れる場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<9>に係る発明によれば、前記2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が5個以上である場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<10>、<11>、又は<12>に係る発明によれば、透明トナーがスチレン系樹脂の代わりにポリスチレンを含む場合に比べて、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<13>に係る発明によれば、透明トナーがスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含み、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がアクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである場合に比べて、接着性に優れる透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<14>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の含有量が(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも少ない場合に比べて、接着性が維持される透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<15>に係る発明によれば、透明トナーが前記海島構造を有しない場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<16>に係る発明によれば、島相の平均径が500nm超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<17>に係る発明によれば、透明トナーがコア部にスチレン系樹脂のみ又は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみを含有するコア・シェル構造を有する場合に比べて、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
<18>に係る発明によれば、透明トナーのシェル層がスチレン系樹脂を含有せずそれ以外の樹脂を含有する場合に比べて、圧力によって相転移しやすい透明トナーを有するトナーセットが提供される。
【0011】
<19>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立した現像剤セットが提供される。
<20>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットの各トナーをそれぞれ収容したトナーカートリッジが提供される。
<21>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットの各トナーを含む静電荷像現像剤をそれぞれ収容したプロセスカートリッジセットが提供される。
【0012】
<22>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットを適用した印刷物の製造装置が提供される。
【0013】
<23>に係る発明によれば、前記tanδ1が1.0未満若しくは4.0超え、又は前記tanδ1/tanδ2が1.2未満若しくは3.0超えの場合に比べ、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立したトナーセットを適用した印刷物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例における配置手段及び圧着手段を含む一部を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るプロセスカートリッジセットを構成する第1のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0016】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別されない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0020】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0021】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0022】
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0023】
本開示において、有彩色トナー及び透明トナーを総称して「トナー」という場合があり、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0024】
本開示において、記録媒体を折り重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物、又は、2以上の記録媒体を重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物を、「圧着印刷物」という。
【0025】
[トナーセット]
本実施形態に係るトナーセットは、有彩色トナーと、圧力相転移性を有する透明トナーと、を有し、前記有彩色トナーにおける100℃のtanδをtanδ1とし、前記透明トナーにおける100℃のtanδをtanδ2としたとき、前記tanδ1が1.0以上4.0以下であり、かつ、前記tanδ1及び前記tanδ2が下記式1を満たす。
式1 : 1.2≦tanδ1/tanδ2≦3.0
【0026】
ここで、トナーにおける100℃のtanδは、以下のようにして求める。
具体的には、正弦波振動法により測定した動的粘弾性から求めた。動的粘弾性の測定にはレオメトリックサイエンティフィック社製ARES測定装置を用いた。動的粘弾性の測定は、トナーを錠剤に成形した後、8mm径のパラレルプレートにセットし、ノーマルフォースを0とした後に6.28rad/secの振動周波数で正弦波振動を与えた。測定は20℃から開始し、昇温速度1℃/minで、120℃まで継続した。この際の測定時間インターバルは30秒である。
【0027】
また、「有彩色トナー」とは、トナー粒子中の着色剤量がトナー粒子全体に対して1.0質量%を超えるトナーをいう。また、「透明トナー」とは、トナー粒子が着色剤を含まないか、又は、トナー粒子中の着色剤量がトナー粒子全体に対して1.0質量%以下であるトナーをいう。
「圧力相転移性を有するトナー」とは、下記式3を満たすトナーを意味する。
式3・・・10℃≦T1-T2
式3において、T1は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度である。T1及びT2の求め方は後述する。
【0028】
有彩色トナーと圧力相転移性を有する透明トナーとを有するトナーセットを用いた印刷物の製造は、例えば、有彩色トナー像が形成された記録媒体上に透明トナー層を形成した後、熱定着工程及び圧着工程を経ることで行われる。
上記熱定着工程では、例えば、定着部材が透明トナー層に接触した状態で記録媒体等を加熱することで、有彩色トナー像を記録媒体に熱定着させつつ、透明トナー層を固定化する。この熱定着工程において、定着部材に接触した透明トナー層の少なくとも一部(場合によっては、前記透明トナー層及び有彩色トナー像の少なくとも一部)が定着部材側に移行するオフセット現象が生じる場合がある。
【0029】
これに対して、本実施形態に係るトナーセットでは、tanδ1が前記範囲であり、かつ、tanδ1及びtanδ2が前記式1を満たすことにより、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とが両立される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0030】
まず、tanδ1が前記範囲であることで、有彩色トナー像の記録媒体に対する良好な定着性が得られやすくなる。具体的には、tanδ1が前記範囲であると、前記範囲よりも小さい場合に比べて熱定着時に有彩色トナー像が溶融しやすく、記録媒体に対する熱定着性が良好となり、オフセットも抑制される。また、tanδ1が前記範囲であると、前記範囲よりも大きい場合に比べて有彩色トナー像の粘性が高くなりすぎず、オフセットが抑制され、圧着性も良好となる。
そして、tanδ1を前記範囲としつつtanδ1/tanδ2の値を前記範囲とすることで、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性との両立が実現される。具体的には、tanδ1/tanδ2の値が前記範囲であると、前記範囲よりも小さい場合に比べ、有彩色トナーの方が透明トナー層よりも相対的に高粘性となるため、透明トナー層が有彩色トナー像側に残存しやすくなり、透明トナー層が定着部材側に移行すること(つまり、オフセット)が抑制されやすくなる。また、tanδ1/tanδ2の値が前記範囲であると、前記範囲よりも大きい場合に比べ、透明トナー層の粘性が高くなりすぎることによる圧着性の低下が抑制される。
以上の理由により、本実施形態に係るトナーセットは、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とが両立されると推測される。
【0031】
tanδ1及びtanδ2が上記条件を満たすように制御する方法は、特に限定されず、例えば、各トナーに含まれるトナー粒子の分子量を調整する方法、トナー粒子の組成(例えば、結晶性樹脂の比率等)を調整する方法などが挙げられる。
【0032】
トナーセットは、少なくとも有彩色トナーと圧力相転移性を有する透明トナーとを有し、必要に応じて他のトナー(例えば、圧力相転移性を有さない透明トナー)を有してもよい。以下、圧力相転移性を有する透明トナーを単に「透明トナー」と称する場合がある。
有彩色トナー及び透明トナーは、それぞれ、1種のみでもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
以下、本実施形態に係るトナーセットを構成する各トナーについて説明する。
【0033】
<透明トナー>
透明トナーは、前記の通り、圧力相転移性を有する。
圧力相転移性を有する透明トナーは、tanδ2がtanδ1との関係において前記式1を満たし、かつ、前記式3を満たすトナーであれば特に限定されるものではない。
圧力相転移性を有する透明トナーは、ビニル系樹脂を含有することが好ましい。ここで、ビニル系樹脂とは、ビニル基を有する単量体をラジカル重合して得られた樹脂を指す。ビニル基を有する単量体としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリル基等を有する単量体が挙げられる。
圧力相転移性を有する透明トナーの具体例としては、例えば、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上であるトナーが挙げられる。
また、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上であるトナーの好ましい例としては、例えば、結着樹脂が、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含むトナーが挙げられる。
【0034】
以下の説明において、特に断らない限り、「スチレン系樹脂」は「スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂」を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」は「少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」を意味する。
【0035】
結着樹脂がスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを含むトナーは、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の代わりに(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーを含むトナーに比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる。そのメカニズムとして、次のことが推測される。
【0036】
一般的にスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは互いに対する相溶性が低いので、両樹脂はトナー粒子中に相分離した状態で含まれていると考えられる。また、トナー粒子が加圧されると、ガラス転移温度が比較的低い(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がまず流動化し、その流動化がスチレン系樹脂に波及し、両樹脂ともに流動化すると考えられる。また、トナー粒子中の両樹脂は、加圧によって流動化したのち減圧にしたがい固化して樹脂層を形成する際に、相溶性の低さゆえ、再び相分離状態を形成すると考えられる。
少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含む(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、主鎖に結合しているエステル基の種類が少なくとも2種類であることにより、(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーに比べて、固体状態での分子の整列度が低く、それゆえ加圧によって流動化しやすいと推測される。さらに、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上であると、エステル基が少なくとも2種類、密度高く存在することになるので、固体状態での分子の整列度がより低くなり、それゆえ加圧によってより流動化しやすいと推測される。したがって、上記トナーは、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーであるトナーに比べて、圧力によって流動化しやすい、つまり圧力によって相転移しやすいと推測される。
そして、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、再び固化する際においても分子の整列度が低いので、スチレン系樹脂との相分離が微小な相分離になると推測される。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂との相分離の状態が微小であるほど、被接着物に対する接着面の状態が均一性高くなり、接着性に優れると推測される。したがって、上記トナーは、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーであるトナーに比べて、接着性に優れると推測される。
【0037】
以下、透明トナーの好ましい一例として、結着樹脂が上記スチレン系樹脂と上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを含むトナーについて、成分、構造、及び特性を詳細に説明する。
【0038】
透明トナーは、少なくともトナー粒子を含み、必要に応じて外添剤を含む。
【0039】
(トナー粒子)
トナー粒子は、少なくとも結着樹脂を含む。結着樹脂は、例えば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する。
トナー粒子は、着色剤、離型剤、その他添加剤を含有していてもよい。
【0040】
結着樹脂に含まれるスチレン系樹脂の含有量は、接着性を維持する観点から、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多いことが好ましい。スチレン系樹脂の含有量は、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量に対して、55質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0041】
-スチレン系樹脂-
上記トナー粒子は、例えば、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂を含有する。
【0042】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0043】
スチレン系樹脂を構成するスチレン以外のその他のビニルモノマーとしては、例えば、スチレン以外のスチレン系モノマー、アクリル系モノマーが挙げられる。
【0044】
スチレン以外のスチレン系モノマーとしては、例えば、ビニルナフタレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のアルキル置換スチレン;p-フェニルスチレン等のアリール置換スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン;p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン;m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のニトロ置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0048】
スチレン系樹脂を構成するその他のビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーのほかに、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;も挙げられる。
【0049】
スチレン系樹脂は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、重合成分として(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0050】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
【0051】
スチレン系樹脂は重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
【0052】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、50000以下が好ましく、45000以下がより好ましく、40000以下が更に好ましい。
【0053】
本開示において樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、GPC装置として東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー製TSKgel SuperHM-M(15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。樹脂の重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0054】
スチレン系樹脂のガラス転移温度は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましい。
【0055】
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0056】
樹脂のガラス転移温度は、重合成分の種類及び重合割合によって制御される。ガラス転移温度は、主鎖に含まれるメチレン基、エチレン基、オキシエチレン基等の柔軟な単位の密度が高いほど低く、主鎖に含まれる芳香環、シクロヘキサン環等の剛直な単位の密度が高いほど高い傾向がある。また、ガラス転移温度は、側鎖における脂肪族基の密度が高いほど低い傾向がある。
【0057】
透明トナーにおけるトナー粒子全体に占めるスチレン系樹脂の質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0058】
-(メタ)アクリル酸エステル系樹脂-
上記トナー粒子は、例えば、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、例えば90質量%以上が挙げられ、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70であることがより好ましく、60:40~40:60であることが更に好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差は、圧力によって転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、1個以上4個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましく、3個又は4個であることが更に好ましい。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種がアクリル酸n-ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとであることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含む場合、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、10万以上が好ましく、12万以上がより好ましく、15万以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
【0073】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0074】
トナー粒子全体に占める(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の質量割合は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0075】
トナー粒子に含まれるスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計量は、トナー粒子全体に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0076】
-その他の樹脂-
トナー粒子は、例えば、ポリスチレン:エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;などを含有していてもよい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
-各種の添加剤-
トナー粒子は、必要に応じて、着色剤(例えば、顔料、染料)、離型剤(例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス)、帯電制御剤などを含有していてもよい。
ただし、トナー粒子は、着色剤を含まないか、又は、トナー粒子中の着色剤量がトナー粒子全体に対して1.0質量%以下である。トナーの透明性を高める観点からは、トナー粒子中の着色剤量が少ないほど好ましい。
【0078】
-トナー粒子の構造-
トナー粒子の内部構造は海島構造であることが好ましく、海島構造としては、スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する海島構造が好ましい。海相に含まれるスチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。海相に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含まない島相が分散していてもよい。
【0079】
トナー粒子が海島構造を有する場合、島相の平均径は、200nm以上500nm以下が好ましい。島相の平均径が500nm以下であると、圧力によってトナー粒子が相転移しやすく、島相の平均径が200nm以上であると、トナー粒子に求められる機械的強度(例えば、現像器内で攪拌された際に変形しにくい強度)に優れる。これらの観点から、島相の平均径は、220nm以上450nm以下がより好ましく、250nm以上400nm以下が更に好ましい。
【0080】
海島構造の島相の平均径を上記範囲に制御する方法としては、例えば、後述するトナー粒子の製造方法において、スチレン系樹脂の量に対する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の量を増減する、凝集した樹脂粒子を融合・合一する工程において高温に維持する時間を増減する、等が挙げられる。
【0081】
海島構造の確認、及び島相の平均径の測定は、次の方法により行う。
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。海島構造の海相と島相とは、四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムによる樹脂の染色度合いに起因する濃淡で区別され、これを利用して海島構造の有無を確認する。SEM画像から100個の島相を無作為に選択し、各島相の長径を計測し、長径100個の平均値を平均径とする。
【0082】
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、コア部とコア部を被覆するシェル層とを有するコア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、トナー粒子はコア・シェル構造であることが好ましい。
【0083】
トナー粒子がコア・シェル構造を有する場合、圧力によって相転移しやすい観点から、コア部がスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。さらに、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。スチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0084】
トナー粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部がスチレン系樹脂を含む海相と、海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有することが好ましい。島相の平均径は、先述の範囲であることが好ましい。さらに、コア部が上記構成であることに加えて、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。この場合、コア部の海相とシェル層とが連続した構造となり、圧力によってトナー粒子が相転移しやすい。コア部の海相及びシェル層に含まれるスチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。コア部の島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0085】
シェル層に含まれる樹脂としては、ポリスチレン:エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;なども挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
シェル層の平均厚は、トナー粒子の変形抑制の観点から、120nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましく、圧力によってトナー粒子が相転移しやすい観点から、550nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。
【0087】
シェル層の平均厚は、次の方法により測定する。
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。SEM画像から10個のトナー粒子断面を無作為に選択し、トナー粒子1個につきシェル層の厚さを20か所計測して平均値を算出し、トナー粒子10個の平均値を平均厚とする。
【0088】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、トナー粒子の取り扱いの容易さの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましく、圧力によってトナー粒子全体が相転移しやすい観点から、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、9μm以下が更に好ましい。
【0089】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)及びアパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2mLにトナー粒子を0.5mg以上50mg以下加え分散させ、次いで、電解液(ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)100mL以上150mL以下と混合し、超音波分散機で1分間分散処理を行い、得られた分散液を試料とする。試料中の粒径2μm以上60μm以下の粒子50000個の粒径を測定する。小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0090】
トナー粒子の重量平均分子量は、熱定着時におけるオフセットを抑制する観点から、10000以上が好ましく、20000以上がより好ましく、50000以上が更に好ましく、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立する観点から、250000以下が好ましく、200000以下がより好ましく、150000以下が更に好ましい。
【0091】
トナー粒子の数平均分子量は、熱定着時におけるオフセットを抑制する観点から、5000以上が好ましく、8000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましく、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性とを両立する観点から、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、30000以下が更に好ましい。
【0092】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0093】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0094】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0095】
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0096】
(透明トナーの特性)
-圧力相転移性-
上記透明トナーは、圧力によって相転移するトナーであり、下記の式3を満たす。
式3・・・10℃≦T1-T2
式3において、T1は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度である。
【0097】
温度差(T1-T2)は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、10℃以上であり、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
温度T1の値は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、115℃以下が特に好ましい。
温度T2の値は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。温度T2の上限は、85℃以下が好ましい。
【0098】
トナーが圧力によって相転移しやすいことを示す指標として、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T1と、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T3との温度差(T1-T3)が挙げられ、温度差(T1-T3)は5℃以上であることが好ましい。透明トナーは、圧力によって相転移しやすい観点から、温度差(T1-T3)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
温度差(T1-T3)は、一般的に25℃以下である。
【0099】
温度差(T1-T3)が5℃以上となる観点から、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T3が90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。温度T3の下限は、60℃以上が好ましい。
【0100】
温度T1、温度T2、及び温度T3を求める方法は、次のとおりである。
トナーを圧縮してペレット状の試料を作製する。ペレット状の試料をフローテスター(島津製作所製、CFT-500)にセットして、印加圧力を1MPaに固定して、1MPaにおける温度に対する粘度を測定する。得られた粘度のグラフから、印加圧力1MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度T1を決定する。印加圧力1MPaを10MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T2を決定する。印加圧力1MPaを4MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T3を決定する。温度T1と温度T2から温度差(T1-T2)を算出する。温度T1と温度T3から温度差(T1-T3)を算出する。
【0101】
-ガラス転移温度-
前記の通り、圧力相転移性を有するトナーの例として、例えば、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上であるトナーが挙げられる。また、少なくとも2つのガラス転移温度を有するトナーがスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを含むトナーである場合、ガラス転移温度の1つはスチレン系樹脂のガラス転移温度と推測され、もう1つは(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度と推測される。
【0102】
上記透明トナーは、3つ以上のガラス転移温度を有していてもよいが、ガラス転移温度の個数は2個であることが好ましい。ガラス転移温度の個数が2個である形態としては、トナーに含まれる樹脂がスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみである形態;スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂ではないその他の樹脂の含有量が少ない形態(例えば、その他の樹脂の含有量がトナー全体に対して5質量%以下である形態);である。
【0103】
トナーが少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である場合、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、その上限が、例えば、140℃以下であり、130℃以下であってもよく、120℃以下であってもよい。
【0104】
トナーが示す最も低いガラス転移温度は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0105】
トナーが示す最も高いガラス転移温度は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0106】
本開示において、トナーのガラス転移温度は、トナーを圧縮して板状の試料を作製し、これを試料として示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0107】
(透明トナーの製造方法)
上記透明トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0108】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法によりトナー粒子を得ることがよい。
【0109】
トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、例えば、
スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン系樹脂粒子分散液準備工程)と、
スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する工程(複合樹脂粒子形成工程)と、
複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、
凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0110】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤及び離型剤を含まないトナー粒子を得る方法について説明する。着色剤、離型剤、その他添加剤は、必要に応じて用いてもよい。トナー粒子に着色剤及び離型剤を含有させる場合は、複合樹脂粒子分散液と着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合した後、融合・合一工程を行う。着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液は、例えば、材料を混合した後、公知の分散機を用いて分散処理を行うことで作製される。
【0111】
-スチレン系樹脂粒子分散液準備工程-
スチレン系樹脂粒子分散液は、例えば、界面活性剤によりスチレン系樹脂粒子を分散媒中に分散させた分散液である。
【0112】
分散媒としては、例えば、水、アルコール類などの水系媒体が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば、スチレン系樹脂と分散媒とを混合し、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等を用いて攪拌して分散させる方法が挙げられる。
【0115】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する別の方法としては、乳化重合法が挙げられる。具体的には、スチレン系樹脂の重合成分と連鎖移動剤又は重合開始剤とを混合した後、界面活性剤を含有する水系媒体をさらに混合し、攪拌して乳化液を作製し、乳化液中でスチレン系樹脂を重合する。この際、連鎖移動剤としてドデカンチオールを用いることが好ましい。
【0116】
スチレン系樹脂粒子分散液中に分散するスチレン系樹脂粒子の体積平均粒径は、100nm以上250nm以下が好ましく、120nm以上220nm以下がより好ましく、150nm以上200nm以下が更に好ましい。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)にて粒径を測定し、小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0117】
スチレン系樹脂粒子分散液に含まれるスチレン系樹脂粒子の含有量は、30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0118】
-複合樹脂粒子形成工程-
スチレン系樹脂粒子分散液と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分とを混合し、スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する。
【0119】
複合樹脂粒子は、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態で含まれる樹脂粒子であることが好ましい。当該樹脂粒子は、例えば、下記の方法で製造される。
【0120】
スチレン系樹脂粒子分散液に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分(少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー群)を添加し、必要に応じて水系媒体を添加する。次いで、分散液をゆっくりと攪拌しながら、分散液の温度をスチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱する。次いで、温度を保ちながら、重合開始剤を含有する水系媒体をゆっくりと滴下し、さらに1時間以上15時間以下の範囲で長時間攪拌を継続する。この際、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0121】
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、上記の方法を採用した場合、スチレン系樹脂粒子中にモノマーと重合開始剤とが含浸し、スチレン系樹脂粒子の内部で(メタ)アクリル酸エステルが重合すると推測される。これによって、スチレン系樹脂粒子の内部に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が含まれており、粒子内部においてスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態を形成している複合樹脂粒子が得られると推測される。
【0122】
複合樹脂粒子分散液中に分散する複合樹脂粒子の体積平均粒径は、140nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上280nm以下がより好ましく、160nm以上250nm以下が更に好ましい。
【0123】
複合樹脂粒子分散液に含まれる複合樹脂粒子の含有量は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0124】
-凝集粒子形成工程-
複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ凝集粒子を形成する。
【0125】
具体的には、例えば、複合樹脂粒子分散液に凝集剤を添加すると共に、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、スチレン系樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、複合樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
【0126】
凝集粒子形成工程においては、複合樹脂粒子分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0127】
凝集剤としては、例えば、複合樹脂粒子分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0128】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0129】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0130】
以上の工程を経て得られたトナー粒子は、通常、スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する海島構造を有する。複合樹脂粒子においてはスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態であったところ、融合・合一工程において、スチレン系樹脂が互いに集まって海相になり、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が互いに集まって島相になるものと推測される。
【0131】
海島構造の島相の平均径は、例えば、複合樹脂粒子形成工程において使用するスチレン系樹脂粒子分散液の量又は少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの量を増減すること、融合・合一工程において高温に維持する時間を増減すること、等によって制御される。
【0132】
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、
凝集粒子分散液を得た後、凝集粒子分散液とスチレン系樹脂粒子分散液とをさらに混合し、凝集粒子の表面にさらにスチレン系樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、
を経て製造する。
上記工程を経て得られるコア・シェル構造のトナー粒子は、スチレン系樹脂を含むシェル層を有する。スチレン系樹脂粒子分散液の代わりに他の種類の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を用いて、他の種類の樹脂を含むシェル層を形成してもよい。
【0133】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0134】
そして、上記透明トナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。さらに、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0135】
<有彩色トナー>
有彩色トナーは、トナー粒子中の着色剤量がトナー粒子全体に対して1.0質量%を超えるトナーであれば特に限定されるものではない。
有彩色トナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0136】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0137】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上35質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0139】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0140】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0141】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0142】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
【0144】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましく、10000以上300000以下がさらに好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましく、3000以上20000以下がさらに好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
【0145】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0146】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0147】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0148】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0149】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0150】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0151】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0152】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と同様に、周知の製造方法により得られる。
【0153】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0154】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0156】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0157】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0158】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0159】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0160】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0161】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0162】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0163】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0164】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0165】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、透明トナーの外添剤として用いられる無機粒子と同様の無機粒子が挙げられる。
【0166】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0167】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0168】
(有彩色トナーの製造方法)
次に、有彩色トナーの製造方法について説明する。
有彩色トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0169】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0170】
そして、有彩色トナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0171】
<トナーセットの構成>
有彩色トナーと透明トナーとの組み合わせは、tanδ1及びtanδ2が上記条件を満たす組み合わせであればよく、特に限定されるものではない。
tanδ1は、1.0以上4.0以下であり、有彩色トナー像の記録媒体に対する定着性、有彩色トナー像の発色性、及びオフセット抑制の観点から、1.5以上3.5以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
tanδ2は、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性との両立の観点から、0.5以上2以下が好ましく、0.7以上1.5以下がより好ましく、0.8以上1.3以下がさらに好ましい。
tanδ1/tanδ2の値は、1.2以上3.0以下であり、熱定着時におけるオフセットの抑制と圧着性との両立の観点から、1.5以上2.9以下が好ましく、1.8以上2.5以下がより好ましい。
有彩色トナーと透明トナーとの好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリエステル樹脂を含有する有彩色トナーとビニル系樹脂を含有する透明トナーとの組み合わせが挙げられる。
【0172】
[現像剤セット]
本実施形態に係る現像剤セットは、本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを少なくとも含む第1の静電荷像現像剤と、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを少なくとも含む第2の静電荷像現像剤と、を有するものである。本実施形態に係る現像剤セットを構成する静電荷像現像剤は、上記トナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、上記トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。なお、第1の静電荷像現像剤及び第2の静電荷像現像剤の両方が二成分現像剤である場合、これらの現像剤に含まれるキャリアの種類及び含有量は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0173】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0174】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0175】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0176】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0177】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0178】
[印刷物の製造装置、印刷物の製造方法]
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成手段と、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、記録媒体上に、透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置手段と、定着部材を備え、定着部材が透明トナー層に接触した状態で有彩色トナー像を記録媒体に熱定着させる熱定着手段と、有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
【0179】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法が実施される。
【0180】
本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有彩色トナー像を形成する有彩色トナー像形成工程と、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を用いて、記録媒体上に、透明トナーを電子写真方式により配置して透明トナー層を形成する配置工程と、定着部材が透明トナー層に接触した状態で有彩色トナー像を記録媒体に熱定着させる熱定着工程と、有彩色トナー像が熱定着された記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、有彩色トナー像が熱定着された記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0181】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む有彩色トナー像形成手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、前記第1の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有彩色トナー像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える。
【0182】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む前記配置手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、前記第2の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を透明トナー層として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された透明トナー層を、記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える。
【0183】
本実施形態に係る印刷物の製造方法が含む有彩色トナー像形成工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有彩色トナー像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された有彩色トナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
を含む。
【0184】
本実施形態に係る印刷物の製造方法が含む前記配置工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を透明トナー層として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された透明トナー層を、記録媒体の表面に転写する転写工程と、
を含む。
【0185】
前記有彩色トナー像形成手段は、例えば、感光体の表面に形成された有彩色トナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された有彩色トナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された有彩色トナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;有彩色トナー像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;有彩色トナー像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。前記有彩色トナー像形成手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に有彩色トナー像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された有彩色トナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された有彩色トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0186】
前記配置手段は、例えば、感光体の表面に形成された透明トナー層を直接、有彩色トナー像が形成された記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された透明トナー層を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された透明トナー層を、記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;透明トナー層の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;透明トナー層の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。前記配置手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に透明トナー層が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された透明トナー層を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された透明トナー層を、記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0187】
前記有彩色トナー像形成手段及び配置手段は、それぞれ、現像手段を含む部分が、前記有彩色トナー像形成手段及び配置手段に着脱するカートリッジ構造(いわゆるプロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る現像剤セットにおける各静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。プロセスカートリッジは、第1の静電荷像現像剤を収容した第1の現像手段を備える第1のプロセスカートリッジと、第2の静電荷像現像剤を収容した第2の現像手段を備える第2のプロセスカートリッジと、を有するプロセスカートリッジセットを構成していてもよい。
【0188】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む圧着手段は、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーが配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において上記透明トナーが流動化し接着性を発揮する。上記透明トナーを流動化させる目的で圧着手段が記録媒体に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0189】
本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーは、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーは、記録媒体上に1層又は複数層配置される。本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーの層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。
【0190】
記録媒体上の透明トナーの量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m以上50g/m以下であり、1g/m以上40g/m以下であり、1.5g/m以上30g/m以下である。記録媒体上の透明トナーの層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0191】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。記録媒体は、片面又は両面に画像を有していてもよい。
【0192】
以下、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0193】
図1は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例における配置手段及び圧着手段を含む一部を示す概略構成図である。図1に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200とを備える。矢印は、感光体の回転方向又は記録媒体の搬送方向を示す。
【0194】
配置手段100は、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む現像剤を用いて、上記透明トナーを電子写真方式により、有彩色トナー像が形成された記録媒体P上に配置する直接転写方式の装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め有彩色トナー像が形成されている。
【0195】
配置手段100は、感光体101を有している。感光体101の周囲には、感光体101の表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)102、帯電した感光体101の表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)103、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)104、現像したトナー画像を記録媒体P上に転写する転写ロール(転写手段の一例)105、及び転写後に感光体101の表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)106が順に配置されている。
【0196】
配置手段100が透明トナーを記録媒体P上に配置する動作について説明する。
まず、帯電ロール102によって感光体101の表面が帯電される。帯電した感光体101の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置103がレーザ光線を照射する。それにより、透明トナーの配置パターンの静電荷像が感光体101の表面に形成される。
【0197】
感光体101上に形成された静電荷像は、感光体101の走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体101上の静電荷像が、現像装置104によって現像され透明トナー層になる。
【0198】
現像装置104内には、少なくとも透明トナーとキャリアとを含む現像剤が収容されている。透明トナーは、現像装置104の内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体101の表面が現像装置104を通過していくことにより、感光体101表面の静電荷像に透明トナーが静電的に付着し、静電荷像が透明トナーによって現像される。透明トナーの透明トナー層が形成された感光体101は、引き続き走行し、感光体101上に現像された透明トナー層が転写位置へ搬送される。
【0199】
感光体101上の透明トナー層が転写位置へ搬送されると、転写ロール105に転写バイアスが印加され、感光体101から転写ロール105に向う静電気力が透明トナー層に作用し、感光体101上の透明トナー層が記録媒体P上に転写される。
【0200】
感光体101上に残留した透明トナーは感光体クリーニング装置106で除去されて回収される。感光体クリーニング装置106は、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等である。感光体クリーニング装置106は、感光体の表面に残留した透明トナーが圧力により流動化して感光体の表面に膜状に付着する現象を抑制する観点から、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0201】
透明トナー層が転写された記録媒体Pは定着装置(定着手段の一例)107へと搬送される。定着装置107は、例えば、一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)である。定着装置107が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体Pに印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0202】
定着装置107は内部に、記録媒体Pを加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。定着装置107が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、155℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、定着装置107が内部に加熱源を有しないことは、配置手段100が備えるモーター等の発熱により、定着装置107内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0203】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に透明トナーが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0204】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0205】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0206】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、透明トナーが配置された状態である。
【0207】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、1MPa以上10MPa以下が好ましい。
【0208】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0209】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0210】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0211】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において透明トナーが圧力によって流動化し接着性を発揮する。加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0212】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。加圧装置230が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体P2の表面温度は、30℃以上120℃以下が好ましく、40℃以上100℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が更に好ましい。なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0213】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面どうしが流動化した透明トナーによって接着され、圧着印刷物P3が作製される。圧着印刷物P3は、対向する面どうしが、一部又は全部、接着されている。
【0214】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0215】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、透明トナーによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0216】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、透明トナーによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0217】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0218】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0219】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって透明トナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって透明トナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって透明トナーによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0220】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0221】
以下、有彩色トナー像形成手段を備える本実施形態に係る印刷物の製造装置の他の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0222】
図2は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の他の一例を示す概略構成図である。図2に示す印刷物の製造装置は、記録媒体への透明トナーの配置と有彩色トナー像の形成とを一括で行う印刷手段300と、印刷手段300の下流に配置された圧着手段200とを備える。
【0223】
印刷手段300は、5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段である。印刷手段300は、透明トナー(T)を配置するユニット10Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色の有彩色トナー像を形成するユニット10Y、10M、10C、及び10Kとを備えている。ユニット10Tが、透明トナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に透明トナーを配置する配置手段である。ユニット10Y、10M、10C、及び10Kがそれぞれ、有彩色トナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に有彩色トナー像を形成する手段である。ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kは、電子写真方式を採用している。
【0224】
ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。ユニット10T、10Y、10M、10C、10Kは、印刷手段300に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0225】
ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kの下方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22、支持ロール23、及び対向ロール24に巻きつけて設けられ、ユニット10Tからユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置21が備えられている。
【0226】
ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kはそれぞれ、現像装置(現像手段の一例)4T、4Y、4M、4C、及び4Kを備える。現像装置4T、4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C、8Kに収められた透明トナー、有彩色トナーであるイエロートナー、有彩色トナーであるマゼンタトナー、有彩色トナーであるシアントナー、有彩色トナーであるブラックトナーの供給がなされる。
【0227】
ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、透明トナーを記録媒体上に配置するユニット10Tについて代表して説明する。
【0228】
ユニット10Tは、感光体1Tを有している。感光体1Tの周囲には、感光体1Tの表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2T、帯電した感光体1Tの表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3T、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4T、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5T、及び一次転写後に感光体1Tの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Tが順に配置されている。一次転写ロール5Tは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Tに対向した位置に設けられている。
【0229】
以下、ユニット10Tの動作を例示しながら、記録媒体P上に透明トナーの配置と有彩色トナー像の形成とを行う動作について説明する。
まず、帯電ロール2Tによって感光体1Tの表面が帯電される。帯電した感光体1Tの表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置3Tがレーザ光線を照射する。それにより、透明トナーの配置パターンの静電荷像が感光体1Tの表面に形成される。
【0230】
感光体1T上に形成された静電荷像は、感光体1Tの走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体1T上の静電荷像が、現像装置4Tによって現像され可視化されトナー画像になる。
【0231】
現像装置4T内には、少なくとも透明トナーとキャリアとを含む現像剤が収容されている。透明トナーは、現像装置4Tの内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体1Tの表面が現像装置4Tを通過していくことにより、感光体1T表面の静電荷像にトナーが静電的に付着し、静電荷像がトナーによって現像される。トナーのトナー画像が形成された感光体1Tは、引き続き走行し、感光体1T上に現像されたトナー画像が一次転写位置へ搬送される。
【0232】
感光体1T上のトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Tに一次転写バイアスが印加され、感光体1Tから一次転写ロール5Tに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1T上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。感光体1T上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Tで除去されて回収される。感光体クリーニング装置6Tは、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等であり、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0233】
ユニット10Y、10M、10C、及び10Kにおいても、ユニット10Tと同様の動作が、有彩色トナーを含む現像剤を用いて行われる。ユニット10Tにて透明トナーの透明トナー層が転写された中間転写ベルト20が、ユニット10Y、10M、10C、10Kを順次通過し、中間転写ベルト20上に各色の有彩色トナー像が多重転写される。
【0234】
ユニット10T、10Y、10M、10C、及び10Kを通して5つのトナー画像(すなわち、透明トナー層及び4つの有彩色トナー像)が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する対向ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に給紙され、二次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録媒体P上に転写される。
【0235】
トナー画像が転写された記録媒体Pは熱定着装置(熱定着手段の一例)28へと搬送さる。熱定着装置28は、ハロゲンヒータ等の加熱源を備え、記録媒体Pを加熱する。熱定着装置28によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、155℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。熱定着装置28を通過することにより、有彩色トナー像が記録媒体P上へ熱定着される。
【0236】
熱定着装置28は、記録媒体Pから透明トナーが脱落することを抑制する観点、及び、有彩色トナー像の記録媒体Pへの定着性を向上させる観点から、加熱と共に加圧を行う装置であることが好ましく、例えば、内部に加熱源を備える一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)であってよい。熱定着装置28が加圧を行う場合、熱定着装置28が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0237】
記録媒体Pは、印刷手段300を通過することによって、有彩色トナー像及び透明トナーが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0238】
図2における圧着手段200の構成は、図1における圧着手段200と同じでよく、圧着手段200については構成及び動作の詳細な説明を省略する。
【0239】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、印刷手段300と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。印刷手段300と圧着手段200とが離隔している場合、印刷手段300と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0240】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、印刷手段300と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって透明トナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって透明トナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって透明トナーによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0241】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して有彩色トナー像形成工程、配置工程、及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0242】
<プロセスカートリッジセット>
本実施形態に係るプロセスカートリッジセットについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジセットは、本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを含む第1の静電荷像現像剤を収容し、第1の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された有彩色トナー像用の静電荷像を有彩色トナー像として現像する第1の現像手段を備えた第1のプロセスカートリッジと、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを含む第2の静電荷像現像剤を収容し、第2の静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された透明トナー層用の静電荷像を透明トナー層として現像する第2の現像手段を備えた第2のプロセスカートリッジと、を有し、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジセットである。
【0243】
本実施形態に係るプロセスカートリッジセットを構成する各プロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、感光体、帯電手段、静電荷像形成手段、転写手段などから選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0244】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジセットの一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0245】
図3は、本実施形態に係るプロセスカートリッジセットを構成する第1のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図3に示すプロセスカートリッジ500は、例えば、図1又は図2に示す印刷物の製造装置に着脱される。
【0246】
プロセスカートリッジ500は、感光体501と、感光体501の周囲に備えられた帯電ロール502(帯電手段の一例)、現像装置504(現像手段の一例)及び感光体クリーニング装置506(クリーニング手段の一例)とが筐体517により一体化されたカートリッジである。筐体517は、露光のための開口部518を有する。筐体517は、取り付けレール516を有し、取り付けレール516を介してプロセスカートリッジ500が印刷物の製造装置に装着される。
【0247】
図3には、プロセスカートリッジ500が印刷物の製造装置に装着された際に、プロセスカートリッジ500の周囲に配される露光装置503及び転写装置505と、記録媒体Pも図示している。
【0248】
<トナーカートリッジセット>
本実施形態に係るトナーカートリッジセットは、本実施形態に係るトナーセットにおける有彩色トナーを収容した第1のトナーカートリッジと、本実施形態に係るトナーセットにおける透明トナーを収容した第2のトナーカートリッジと、を有し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジセットである。トナーカートリッジセットを構成する各トナーカートリッジは、それぞれ、印刷物の製造装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0249】
図2に示す印刷手段300は、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C、及び8Kで構成されるトナーカートリッジセットが着脱される構成を有しており、現像装置4T、4Y、4M、4C、及び4Kはそれぞれ、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C、及び8Kと、図示しないトナー供給管で接続されている。本実施形態に係るトナーカートリッジセットを構成する第1のトナーカートリッジであるトナーカートリッジ8Tには、透明トナーが収容されている。一方、本実施形態に係るトナーカートリッジセットを構成する第2のトナーカートリッジであるトナーカートリッジ8Y、8M、8C、及び8Kには、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各有彩色トナーが収容されている。トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、これらトナーカートリッジが交換される。
【実施例
【0250】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0251】
[実施例A]
<透明トナーコア部用樹脂粒子の調製>
(コア部用樹脂粒子分散液(A1)の調製)
・スチレン: 450部
・アクリル酸n-ブチル: 138部
・アクリル酸: 18部
・ドデカンチオール: 9部
前記成分を混合溶解して溶液Aを調製した。
【0252】
他方、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記溶液Aを加えてフラスコ中で分散し、乳化した(単量体乳化液A)。
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、アニオン性界面活性剤水溶液が仕込まれた重合用フラスコ中に、定量ポンプを介して20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aを、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃で3時間保持して1段階目の重合を終了した。これにより、体積平均粒径が200nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が34,000であるスチレン系樹脂粒子が分散したコア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体が得られた。
【0253】
次に、室温(25℃)まで温度が低下した後、コア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体が入った重合用フラスコに、アクリル酸2-エチルヘキシル240部、アクリル酸n-ブチル160部、及びイオン交換水1200部を加え、ゆっくりと2時間撹拌した。その後、撹拌を続けながら70℃に昇温し、過硫酸アンモニウム4.5部及びイオン交換水100部を、定量ポンプを介して30分かけて滴下した。その後、撹拌を続けながら3時間保持して重合を終了した。以上の工程を経て、体積平均粒径が220nm、重量平均分子量が132,000、数平均分子量が18,000(分子量分布7.33)である複合樹脂粒子が分散し、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたコア部用樹脂粒子分散液(A1)を得た。
【0254】
得られたコア部用樹脂粒子分散液(A1)の樹脂粒子を乾燥し、乾燥した樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋した試料を作製した。そして、ダイヤモンドナイフにより試料を切断し、樹脂粒子の断面切片を作製した。そして、試料の切断面を、四酸化ルテニウム蒸気中で染色した後、透過型電子顕微鏡観察により確認した。樹脂粒子の断面観察の結果、樹脂粒子は、母材となる高Tgスチレン樹脂中に低Tg(メタ)アクリル酸エステル樹脂のドメインが複数分散されている構成であることが確認された。
また、乾燥した樹脂粒子について、-150℃から100℃まで、(株)島津製作所製示差走査熱量計(DSC)でガラス転移温度Tg挙動を分析すると、-60℃に低Tg(メタ)アクリル酸エステル樹脂によるガラス転移が観測された。また、53℃に高Tgスチレン樹脂によるガラス転移が観測された(ガラス転移温度差:113℃)。
【0255】
(コア部用樹脂粒子分散液(A2~A3)の調製)
コア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体の調製後におけるアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルの添加量をそれぞれ表1のように変えたこと以外は、コア部用樹脂粒子分散液(A1)と同様にして、固形分量30質量%に調整されたコア部用樹脂粒子分散液(A2)~(A3)を得た。
コア部用樹脂粒子分散液(A2)~(A3)に含まれる複合樹脂粒子の体積平均粒径、重量平均分子量、数平均分子量、及びガラス転移温度差をそれぞれ表1に示す。
【0256】
【表1】
【0257】
<透明トナーシェル部用樹脂粒子分散液の調製>
(シェル部用樹脂粒子分散液(B1)の調製)
・スチレン: 450部
・アクリル酸n-ブチル: 135部
・アクリル酸: 12部
・ドデカンチオール: 9部
前記成分を混合溶解して溶液Bを調製した。
【0258】
他方、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記溶液Bを加えてフラスコ中で分散し、乳化した(単量体乳化液B)。
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、アニオン性界面活性剤水溶液が仕込まれた重合用フラスコ中に、定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Bを、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを76℃で3時間保持して1段階目の重合を終了した。これにより、体積平均粒径が190nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が32,000、数平均分子量が15,000であるスチレン系樹脂粒子が分散し、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたシェル部用樹脂粒子分散液(B1)を得た。
【0259】
<透明トナー用離型剤分散液の調製>
(離型剤分散液(1)の調製)
・フィッシャートロプシュワックス:270部
(日本精鑞(株)製、商品名:FNP-0090、融解温度=90℃)
・アニオン性界面活性剤: 1.0部
(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
・イオン交換水: 400部
上記成分を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で360分間の分散処理をして、体積平均粒子径が0.23μmである離型剤粒子を分散させてなる離型剤分散液(1)(固形分濃度:20質量%)を調製した。
【0260】
<透明トナー粒子の作製>
(透明トナー粒子(T1)の作製)
・コア部用樹脂粒子分散液(A1):840部
・離型剤分散液(1): 8部
・コロイダルシリカ水溶液: 13部
(日産化学(株)製、スノーテックスOS)
・イオン交換水: 800部
・アニオン性界面活性剤 : 1部
(ダウケミカル(株)社製、Dowfax2A1)
コア部形成用材料として上記成分を、温度計、pH計、及び攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0質量%硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製、ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液を4部添加してさらに6分間分散した。
【0261】
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が7.8μmになったところで温度を保持し、シェル部形成用材料としてシェル部用樹脂粒子分散液(B1)150部を5分かけて投入した。30分間保持した後、1質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0にした。その後、5℃ごとにpHが6.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、96℃で保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、96℃での保持を開始してから2.0時間後に粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0262】
冷却後のスラリーを、目開き30μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナーを手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナーを手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、25℃の乾燥器で36時間真空乾燥して、透明トナー粒子(T1)を得た。得られた透明トナー粒子(T1)は、体積平均粒径が8.5μm、重量平均分子量が126,000、数平均分子量が17,000(分子量分布7.41)であった。また、この透明トナー粒子(T1)の圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T3を測定したところ123℃であり、温度差(T1-T3)は17℃、tanδ2は1.2であった。
また、透明トナー粒子(T1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。透明トナー粒子(T1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層とを有していた。海相はスチレン系樹脂を含み、島相は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島相の平均径を求めた。表2に島相の平均径を示す。
【0263】
(透明トナー粒子(T2)~(T5)の作製)
コア部用樹脂粒子分散液(A1)の代わりに表2に示すコア部用樹脂粒子分散液を用い、かつ、シェル部用樹脂粒子分散液(B1)150部を5分かけて投入する前の体積平均粒径を変えた以外は、透明トナー粒子(T1)と同様の方法で、透明トナー粒子(T2)~(T5)をそれぞれ作製した。
透明トナー粒子(T2)~(T5)における体積平均粒径、重量平均分子量、数平均分子量、tanδ2、温度T3、温度差(T1-T3)、及び島相の平均径を測定した結果をそれぞれ表2に示す。
【0264】
【表2】
【0265】
<外添透明トナーの作製>
(外添透明トナー(T1)の作製)
得られた透明トナー粒子(T1)100部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部を加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合した。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分して、外添透明トナー(T1)を調製した。得られた外添透明トナー(T1)の体積平均粒子径は8.6μmであった。
外添透明トナー(T1)におけるT1及びT2を前述の方法により求めたところ、式3「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0266】
(外添透明トナー(T2)~(T5)の作製)
透明トナー粒子(T1)の代わりに、透明トナー粒子(T2)~(T5)を用いた以外は、外添透明トナー(T1)と同様の方法で、外添透明トナー(T2)~(T5)をそれぞれ作製した。
外添透明トナー(T2)~(T5)におけるT1及びT2を前述の方法により求めたところ、いずれの外添透明トナーも式3「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0267】
<透明静電荷像現像剤の作製>
(現像剤(T1)の作製)
外添透明トナー(T1)8部と下記キャリア(1)100部とをVブレンダーで混合し、透明静電荷像現像剤である現像剤(T1)を作製した。
【0268】
(キャリア(1)の作製)
トルエン14部、スチレン-メチルメタクリレート共重合体(質量比:80/20、重量平均分子量:70000)2部、酸化亜鉛(チタン工業、MZ500)0.6部を混合し、10分間スターラーで撹拌させて酸化亜鉛が分散した被覆層形成用溶液を調製した。次に、この被覆層形成用溶液とフェライト粒子(体積平均粒子径:38μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
【0269】
(現像剤(T2)~(T5)の作製)
外添透明トナー(T1)の代わりに外添透明トナー(T2)~(T5)を用いた以外は、現像剤(T1)と同様の方法で、現像剤(T2)~(T5)をそれぞれ作製した。
【0270】
<有彩色トナー用各分散液の調製>
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(A))
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル100mol%及びノナンジオール100mol%の比率で構成されるモノマー成分と、触媒として該モノマー成分100部に対しジブチル錫オキサイド0.3部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で4時間攪拌及び還流を行った。
【0271】
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は15300で数平均分子量(Mn)は3800、酸価は13.5mgKOH/gであった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は77.2℃であった。
【0272】
次いで、結晶性ポリエステル樹脂(1)を用い、樹脂粒子分散液を調製した。
・結晶性ポリエステル樹脂(1):90部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水:210部
以上を混合して100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径210nm、固形分量30質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)を得た。
【0273】
(無定形ポリエステル樹脂分散液(A))
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20mol%
・テレフタル酸:60mol%
・フマル酸:20mol%
・ドデセニル無水琥珀酸:20mol%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記の比率のモノマー成分を仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、前記モノマー成分100部に対しジブチル錫オキサイド1.2部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移温度が63℃、酸価10.5mgKOH/g、重量平均分子量が17000、数平均分子量4200の非晶性ポリエステル樹脂である無定形ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0274】
次に、得られた無定形ポリエステル樹脂(1)を用いて樹脂粒子分散液を調製した。
・無定形ポリエステル樹脂(1):100部
・酢酸エチル:50部
5リットルのセパラブルフラスコに酢酸エチルを投入し、その後上記樹脂成分を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を合計で2部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、無定形ポリエステル樹脂分散液(A)を得た。この分散液における無定形ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は120nmであり、固形分濃度は30質量%であった。
【0275】
(無定形ポリエステル樹脂分散液(B))
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:50mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50mol%
・無水トリメリット酸:5mol%
・テレフタル酸:85mol%
・ドデセニル無水琥珀酸:10mol%
上記の比率のモノマー成分のうち無水トリメリット酸以外のモノマーを用いて前記無定形ポリエステル樹脂(1)の合成に準じて、軟化点が110℃になるまで反応をさせた。つまり、攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記の比率のモノマー成分(ただし無水トリメリット酸を除く)を仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、前記モノマー成分100部に対しジブチル錫オキサイド1.2部を投入し、さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続した。
次いで、温度を190℃まで下げ無水トリメリット酸の5mol%量を徐々に投入し、同温度で2時間反応を継続し、ガラス転移温度が63℃、酸価15.3mgKOH/g、重量平均分子量49000、数平均分子量7000の非晶性ポリエステル樹脂である無定形ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0276】
次に、無定形ポリエステル樹脂(2)を用いて樹脂粒子分散液を調製した。
無定形ポリエステル樹脂分散液(A)の調製において、無定形ポリエステル樹脂(1)の代わりに無定形ポリエステル樹脂(2)を用いた以外は無定形ポリエステル樹脂分散液(A)の調製に準じて、無定形ポリエステル樹脂分散液(B)を得た。この分散液における無定形ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は220nmであり、固形分濃度は30質量%であった。
【0277】
(着色剤粒子分散液1)
・カーボンブラック(キャボット社製、リーガル330):50部
・アニオン界面活性剤(日油(株)製、ニューレックスR):2部
・イオン交換水:198部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分予備分散した後に、アルティマイザー(対向衝突型湿式粉砕機、スギノマシン製)を用い圧力245MPaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が354nmで固形分が20.0質量%の着色剤粒子分散液1を得た。
【0278】
(着色剤粒子分散液2)
・青色顔料(銅フタロシアニン、C.I.Pigment blue15:3、大日精化製):50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):5部
・イオン交換水:195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対向衝突型湿式粉砕機、スギノマシン製)を用い圧力245MPaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が462nmで固形分量が20.0質量%の着色剤粒子分散液2を得た。
【0279】
(着色剤粒子分散液3)
・マゼンタ顔料(C.I.Pigment Red 122):80部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬製):8部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合して溶解し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散し、次いで超音波分散機を用いて、28kHzの超音波を10分間照射し、体積平均粒径が132nmで固形分量が29.0質量%の着色剤粒子分散液3を得た。
【0280】
(着色剤粒子分散液4)
・イエロー顔料(5GX03、クラリアント製):80部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬製):8部
・イオン交換水:200部
上記成分を混合して溶解し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散し、次いで超音波分散機を用いて、28kHzの超音波を20分間照射し、体積平均粒径が108nmで固形分量が29.0質量%の着色剤粒子分散液4を得た。
【0281】
(離型剤粒子分散液2)
・オレフィンワックス(融点:88℃):90部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水:210部
以上を混合し100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径180nm、固形分量30質量%の離型剤粒子分散液2を得た。
【0282】
<有彩色静電荷像現像剤の作製>
(黒トナー粒子1の作製)
・無定形ポリエステル樹脂分散液(A):166部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(A):50部
・着色剤粒子分散液1:25部
・離型剤粒子分散液2:40部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(ウルトラタラックスT50)で混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ウルトラタラックスT50で分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分間保持した後、ここに無定形ポリエステル樹脂分散液(A)を少しずつ60部追加した。その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpH8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。
【0283】
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1リットルに再分散し、300rpmで15分間攪拌及び洗浄をした。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度が7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続して黒トナー粒子1を得た。
この黒トナー粒子1の粒子径をマルチサイザーIIにて測定したところ、体積平均粒径D50は6.4μm、体積粒度分布指標GSDvは1.21、100℃におけるtanδ1は3.7であった。
【0284】
(黒トナー1の作製)
黒トナー粒子1を100部と、平均粒子径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル社製)1.3部と、を混合し、ヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、黒トナー1を得た。
【0285】
(キャリア(2)の作製)
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm、体積抵抗率:10Ωcm):100部
・トルエン:14部
・パーフルオロオクチルエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比40/60、Mw:5万):1.6部
・カーボンブラック(VXC-72、キャボット社製):0.12部
・架橋メラミン樹脂粒子(数平均粒子径:0.3μm):0.3部
上記成分のうち、フェライト粒子以外の成分を混合し10分間スターラーで分散し、被膜形成用液を調製した。この被膜形成用液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去して、フェライト粒子表面に樹脂被膜を形成して、キャリア(2)を製造した。
【0286】
(現像剤C1の作製)
キャリア94部と黒トナー1:6部とを混合し、V-ブレンダーを用い40rpmで20分間攪拌し、177μmの網目を有するシーブで篩うことにより現像剤C1を作製した。
【0287】
(現像剤C2の作製)
黒トナー粒子1の作製において、着色剤粒子分散液1の代わりに着色剤粒子分散液2を20部用いた以外は、黒トナー粒子1の作製に準じてシアントナー粒子1を得た。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表3に示す。
黒トナー粒子1の代わりにシアントナー粒子1を用いた以外は、現像剤C1と同様にして、現像剤C2を得た。
【0288】
(現像剤C3の作製)
黒トナー粒子1の作製において、着色剤粒子分散液1の代わりに着色剤粒子分散液3を25部用いた以外は、黒トナー粒子1の作製に準じてマゼンタトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表3に示す。
黒トナー粒子1の代わりにマゼンタトナー粒子1を用いた以外は、現像剤C1と同様にして、現像剤C3を得た。
【0289】
(現像剤C4の作製)
黒トナー粒子1の作製において、着色剤粒子分散液1の代わりに着色剤粒子分散液4を25部用いた以外は、黒トナー粒子1の作製に準じてイエロートナー粒子1を得た。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表3に示す。
黒トナー粒子1の代わりにイエロートナー粒子1を用いた以外は、現像剤C1と同様にして、現像剤C4を得た。
【0290】
(現像剤C5~C8の作製)
トナー粒子作製初期に用いる無定形ポリエステル樹脂分散液を無定形ポリエステル樹脂分散液(A)166部から無定形ポリエステル樹脂分散液(A)80部及び無定形ポリエステル樹脂分散液(B)80部に変更し、追添加する無定形ポリエステル樹脂分散液を、無定形ポリエステル樹脂分散液(A)60部から無定形ポリエステル樹脂分散液(A)30部及び無定形ポリエステル樹脂分散液(B)30部に変更した以外は、黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1と同様にして、それぞれ、黒トナー粒子2、シアントナー粒子2、マゼンタトナー粒子2、及びイエロートナー粒子2を作製した。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表3に示す。
黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1の代わりに、それぞれ黒トナー粒子2、シアントナー粒子2、マゼンタトナー粒子2、及びイエロートナー粒子2を用いた以外は、現像剤C1~C4と同様にして、それぞれ現像剤C5~C8を得た。
【0291】
(現像剤C9~C12の作製)
トナー粒子作製初期に用いる無定形ポリエステル樹脂分散液を無定形ポリエステル樹脂分散液(A)166部から無定形ポリエステル樹脂分散液(B)166部に変更し、追添加する無定形ポリエステル樹脂分散液を、無定形ポリエステル樹脂分散液(A)60部から無定形ポリエステル樹脂分散液(B)60部に変更した以外は、黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1と同様にして、それぞれ、黒トナー粒子3、シアントナー粒子3、マゼンタトナー粒子3、及びイエロートナー粒子3を作製した。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表3に示す。
黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1の代わりに、それぞれ黒トナー粒子3、シアントナー粒子3、マゼンタトナー粒子3、及びイエロートナー粒子3を用いた以外は、現像剤C1~C4と同様にして、それぞれ現像剤C9~C12を得た。
【0292】
(現像剤C13~C16の作製)
トナー粒子作製初期に用いる結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)の量を50部から130部に変更した以外は、黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1と同様にして、それぞれ、黒トナー粒子4、シアントナー粒子4、マゼンタトナー粒子4、及びイエロートナー粒子4を作製した。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表4に示す。
黒トナー粒子1、シアントナー粒子1、マゼンタトナー粒子1、及びイエロートナー粒子1の代わりに、それぞれ黒トナー粒子4、シアントナー粒子4、マゼンタトナー粒子4、及びイエロートナー粒子4を用いた以外は、現像剤C1~C4と同様にして、それぞれ現像剤C13~C16を得た。
【0293】
(現像剤C17~C20の作製)
トナー粒子作製初期に用いる結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)の量を50部から20部に変更した以外は、黒トナー粒子3、シアントナー粒子3、マゼンタトナー粒子3、及びイエロートナー粒子3と同様にして、それぞれ、黒トナー粒子5、シアントナー粒子5、マゼンタトナー粒子5、及びイエロートナー粒子5を作製した。得られたトナー粒子における体積平均粒径D50、体積粒度分布指標、及びtanδ1を表4に示す。
黒トナー粒子3、シアントナー粒子3、マゼンタトナー粒子3、及びイエロートナー粒子3の代わりに、それぞれ黒トナー粒子5、シアントナー粒子5、マゼンタトナー粒子5、及びイエロートナー粒子5を用いた以外は、現像剤C9~C12と同様にして、それぞれ現像剤C17~C20を得た。
【0294】
【表3】
【0295】
【表4】
【0296】
<評価>
富士ゼロックス(株)社製Color1000 Press改造機のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの現像器と第5現像器とに、表5に示す各現像剤を充填した。記録紙(OKプリンス上質紙、王子製紙(株)製)をセットし、定着温度170℃、定着圧力4.0kg/cmにて、透明トナーの載り量3g/mとし、文字と写真画像を混在させた画像(面積密度を30%)を形成し、定着をおこなった。トナー像の配置の順番としては、記録紙に近い側から、有彩色トナー像、透明トナー層の順で配置した。
【0297】
(圧着性)
次に、定着した画像を定着面が重なるように折り曲げ、圧着シーラーPRESSELE LEADA(トッパンフォームズ(株)製)改造機を用いて圧力90MPaで圧着し、圧着印刷物(1)を作製した。圧着印刷物(1)を長辺方向に切断することにより、幅15mmの長方形状の試料を作製して、剥離力を公知の方法(90度剥離法)により測定した。結果を表5に示す。なお、剥離力が大きいほど、圧着性が良好であることを示す。
【0298】
(オフセット)
次に20℃55%の環境で連続1000枚プリント(すなわち、有彩色トナー像及び透明トナー層の形成並びにこれらの定着)を行った後に、定着部材を目視観察して、トナー汚れを確認することで下記基準によりオフセットの評価を行った。結果を表5に示す。
A:定着部材におけるトナー汚れが全く確認されなかった
B:定着部材の表面にわずかに透明トナーの付着が見られたが、許容範囲内であった
C:定着部材の表面に有彩色トナーの付着がみられた
【0299】
【表5】
【0300】
以上の結果から、上記実施例では、上記比較例に比べ、オフセットの抑制と圧着性とが両立されていることがわかる。
【0301】
[参考例B]
<スチレン系樹脂粒子を含む分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製]
・スチレン :390部
・アクリル酸n-ブチル:100部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール :7.5部
上記の材料を混合し溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)8部をイオン交換水205部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化し、乳化液を得た。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)2.2部をイオン交換水462部に溶解し、攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた重合用フラスコに仕込み、攪拌しながら73℃まで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム3部をイオン交換水21部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して15分間かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して160分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、スチレン系樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が174nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が49k、ガラス転移温度が54℃、固形分量が42%のスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を得た。
【0302】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を乾燥してスチレン系樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-100℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が1つ観察された。表6にガラス転移温度を示す。
【0303】
[スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)の調製]
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製と同様にして、但しモノマーを表6に記載の通りに変更して、スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)を調製した。
【0304】
表6においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA
【0305】
【表6】
【0306】
<複合樹脂粒子を含む分散液の調製>
[複合樹脂粒子分散液(M1)の調製]
・スチレン系樹脂粒子分散液(St1):1190部(固形分500部)
・アクリル酸2-エチルヘキシル :250部
・アクリル酸n-ブチル :250部
・イオン交換水 :982部
上記の材料を重合用フラスコに仕込み、25℃で1時間攪拌した後、70℃に加熱した。
過硫酸アンモニウム2.5部をイオン交換水75部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して60分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを70℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、複合樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が219nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が219k、固形分量が32%の複合樹脂粒子分散液(M1)を得た。
【0307】
複合樹脂粒子分散液(M1)を乾燥して複合樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表7にガラス転移温度を示す。
【0308】
[複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を表7に記載の通りに変更して、又は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分を表7に記載の通りに変更して、複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)を調製した。
【0309】
[複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但しアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルの使用量を調節して、複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)を調製した。
【0310】
表7においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA、アクリル酸ヘキシル:HA、アクリル酸プロピル:PA
【0311】
【表7】
【0312】
<トナーの調製>
[トナー(1)及び現像剤(1)の調製]
・複合樹脂粒子分散液(M1) :504部
・イオン交換水 :710部
・アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1): 1部
【0313】
温度計及びpH計を備えた反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて回転数5000rpmで分散しながら、2.0%硫酸アルミニウム水溶液を23部添加した。次いで、反応容器に攪拌機及びマントルヒーターを設置し、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)170部を5分間かけて投入した。投入終了後、50℃に30分間保持した後、1.0%水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーのpHを6.0に調整した。次いで、5℃ごとにpHを6.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、10時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0314】
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粒子を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
【0315】
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、25℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)は、体積平均粒径が8.0μmであった。
【0316】
トナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部とを混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、トナー(1)を得た。
【0317】
トナー(1)を試料にして、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表8にガラス転移温度を示す。
【0318】
トナー(1)の温度T1及び温度T2を先述の測定方法によって求めたところ、トナー(1)は式3「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0319】
トナー(1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。トナー(1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層とを有していた。海相はスチレン系樹脂を含み、島相は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島相の平均径を求めた。表8に島相の平均径を示す。
【0320】
トナー(1)10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間攪拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(1)を得た。
【0321】
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間攪拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0322】
[トナー(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)の調製]
トナー(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表8に記載の通りに変更して、トナー(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)を調製した。
【0323】
トナー(2)~(27)の温度T1及び温度T2を先述の測定方法によって求めたところ、トナー(2)~(27)はすべて式3「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0324】
[比較用のトナー(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)の調製]
トナー(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表8に記載の通りに変更して、トナー(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)を調製した。
【0325】
[圧力応答性相転移の評価]
トナーが圧力によって相転移しやすいことを示す指標である温度差(T1-T3)を求めた。各トナーを試料にして、フローテスター(島津製作所製、CFT-500)にて、温度T1及び温度T3を測定し、温度差(T1-T3)を算出した。表8に温度差(T1-T3)を示す。
【0326】
[接着性の評価]
印刷物の製造装置として、図2に示す形態の装置を用意した。すなわち、記録媒体への透明トナーの配置と有色画像形成とを一括で行う5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段と、折り装置及び加圧装置を有する圧着手段とを備える印刷物の製造装置を用意した。
印刷手段が有する5つの現像器にそれぞれ、透明トナー、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを入れた。イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーは、富士ゼロックス社製の市販品を使用した。
記録媒体として富士ゼロックス社製のハガキ用紙V424を用意した。
ハガキ用紙に形成する画像は、黒色文字とフルカラー写真画像とが混在した面積密度30%の画像とし、ハガキ用紙の片面に形成した。
透明トナーの付与量は、ハガキ用紙の画像形成面の画像形成領域に、3g/mとした。
折り装置は、画像形成面が内側になるようにハガキ用紙を二つ折りにする装置とした。
加圧装置は、圧力90MPaとした。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面どうしが接着されたハガキを連続して10通作製した。
10通目のハガキを長辺方向に幅15mmで裁断し長方形の試験片を作製して、90度剥離試験を行った。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、さらに試験片3枚の荷重(N)を平均した。剥離に要する荷重(N)を下記のとおり分類した。表8に結果を示す。
【0327】
A:0.8N以上
B:0.6N以上、0.8N未満
C:0.4N以上、0.6N未満
D:0.2N以上、0.4N未満
E:0.2N未満
【0328】
【表8】
【符号の説明】
【0329】
100 配置手段
101 感光体
102 帯電ロール(帯電手段の一例)
103 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
104 現像装置(現像手段の一例)
105 転写ロール(転写手段の一例)
106 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
107 定着装置(定着手段の一例)
200 圧着手段
220 折り装置
230 加圧装置
231、232 加圧ロール
P 記録媒体
P1 画像上に透明トナーが付与された記録媒体
P2 折り重なった記録媒体
P3 圧着印刷物
【0330】
300 印刷手段
1T、1Y、1M、1C、1K 感光体
2T、2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3T、3Y、3M、3C、3K 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
4T、4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5T、5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6T、6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8T、8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10T、10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
21 中間転写体クリーニング装置
22 駆動ロール
23 支持ロール
24 対向ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 熱定着装置(熱定着手段の一例)
【0331】
500 プロセスカートリッジ
501 感光体
502 帯電ロール(帯電手段の一例)
503 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
504 現像装置(現像手段の一例)
505 転写装置(転写手段の一例)
506 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
516 取り付けレール
517 筐体
518 露光のための開口部
図1
図2
図3