(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモーター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20231205BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20231205BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/14 Z
H02K21/24 M
(21)【出願番号】P 2019147286
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英伸
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-228363(JP,A)
【文献】特開2011-045198(JP,A)
【文献】特開2005-348552(JP,A)
【文献】特開2010-220412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/14
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するローターと、
前記ローターに対向し、前記回転の軸と平行な第1方向にギャップを隔てて配置されたステーターと、
を備え、
前記ステーターは、磁束が貫通する薄板が前記第1方向と直交する第2方向に沿って積層されたコア、および前記コアを有する環状のヨークを有し、
前記コアは、独立した複数の嵌込部を隔たった位置に有し、前記コア毎の前記複数の嵌込部は、前記ヨーク
自体に前記複数の嵌込部に対応して
形成された複数の取付部に嵌まり込んでいる、
アキシャルギャップモーター。
【請求項2】
前記複数の嵌込部は、前記ヨークの周方向に並んでいる、請求項1記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項3】
前記複数の嵌込部は、前記ヨークの径方向に並んでいる、請求項1記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項4】
前記コアの前記積層の方向は、前記ヨークの径方向である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項5】
前記コアの前記積層の方向は、前記ヨークの周方向である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項6】
前記積層する薄板の厚さは、前記ヨークの外周側端部が前記ヨークの内周側端部より大きい、請求項5記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項7】
前記コアは、同一形状の前記薄板同士が積層された、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項8】
前記コアは、異なる形状の前記薄板を含んで積層された、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモーター。
【請求項9】
前記薄板は表面に絶縁層を備えた電磁鋼板であり、
前記薄板が積層されたコアは、前記ヨークの径方向外側における前記ヨークの周方向長さが、前記ヨークの径方向内側における前記ヨークの周方向長さより大きい形状である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のアキシャルギャップモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキシャルギャップモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップモーターは、回転磁束が形成されるステーターとローターとの間のギャップをモーターの回転軸方向に備える。こうしたアキシャルギャップモーターは、コアを大きくできるので、薄型かつ出力トルクの大きなモーターを構成しやすいものの、磁束を形成するための巻線(コイル)を巻付けるコアとこのコアのバックヨークとの製造が、ラジアルギャップモーターと比べて困難であった。ラジアルギャップモーターでは、コアとバックヨークとを、同一形状の電磁鋼板を厚み方向に積層することで、容易に形成できるのに対して、アキシャルギャップモーターでは、コアは、バックヨークからその厚み方向に突出した形状であり、同一形状の電磁鋼板を積層することでは製造できないからである。このため、従来、バックヨークとコアとは別々に製造してから、両者を接合してステーターを構成している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、バックヨークにコア(ティース)が嵌まる穴を設け、ここにコアを挿入しており、コアとバックヨークとの接合を、電磁鋼板のコーティング剤による固着や、接着剤による固定、あるいは溶接等により実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アキシャルギャップモーターでは、回転磁界によってローターを回転させる際、ローターを回転させるトルクの反力は、ステーター側のコアにおいて周方向の力として作用するため、モーターの高出力化を図るほど、コアとバックヨークの接合部に大きな力が働くことになる。このため、特許文献1の構成では、ステーターが損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。即ち、本開示にかかるアキシャルギャップモーターは、回転するローターと、前記ローターに対向し、前記回転の軸と平行な第1方向にギャップを隔てて配置されたステーターと、を備え、前記ステーターは、磁束が貫通する薄板が前記第1方向と直交する第2方向に沿って積層されたコア、および前記コアを有する環状のヨークを有し、前記コアは、独立した複数の嵌込部を隔たった位置に有し、前記コア毎の前記複数の嵌込部は、前記ヨーク自体に前記複数の嵌込部に対応して形成された複数の取付部に嵌まり込んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のアキシャルギャップモーターの概略構成を断面視で示す概略構成図。
【
図3】ステーターを構成する一つのコアとヨークとの取付関係を示す説明図。
【
図4】コアへのコイルの取り付け関係を例示する説明図。
【
図5】コアをヨーク方向に向かって見た場合の形状を模式的に示す平面図。
【
図6A】ヨークの内周側から外周側に向けた所定長さの溝形状の取付部を設けた場合を例示する説明図。
【
図6B】ヨークの外周側から内周側に向けた所定長さの溝形状の取付部を設けた場合を例示する説明図。
【
図6C】ヨークの幅方向略中心に、幅方向を長手方向とする開口部として取付部を設けた場合を例示する説明図。
【
図7】2種類のコアの形態と、積層される電磁鋼板の形状を例示する説明図。
【
図9】他のステーターに用いられるヨークと取付部の形状を示す説明図。
【
図10】
図9に示したヨークに取り付けられるコアの形状とコアを形成する電磁鋼板の形状を例示する説明図。
【
図11】他の実施形態であるステーターの一部を示す平面図。
【
図12】更に、他の実施形態であるステーターの一部を示す平面図。
【
図13】第2実施形態のステーターの一部を示す斜視図。
【
図14】第2実施形態のコアを、ヨークに取り付けた状態を示す斜視図。
【
図15】第2実施形態のステーターの一部を平面視として示す説明図。
【
図16】他の実施形態のステーターの構成を示す説明図。
【
図17】更に他の実施形態のステーターの構成を示す説明図。
【
図18】更に他の実施形態のステーターの構成を示す説明図。
【
図19】更に他の実施形態のステーターの構成を示す説明図。
【
図20】ヨークとコアとの電磁鋼板の積層方向を例示する説明図。
【
図21】電磁鋼板が径方向に沿って積層される場合を示す説明図。
【
図22】電磁鋼板が周方向に沿って積層される場合を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1の態様:
(1)第1実施形態:
図1は、第1実施形態のアキシャルギャップモーター20の概略構成を断面視で示す概略構成図である。このアキシャルギャップモーター20は、回転軸21の軸方向中心に、ローター40を備え、このローター40の軸方向に両側にステーター31,32を備えるいわゆるダブルステーフー構造を備える。図示するように、回転軸21の軸方向上向きを符号A、この回転軸21に対する径方向外側向きを符号R、として各々示す。この符号A、Rで示す方向は、他の図でも同様に示した。符号Aの方向を軸方向、符号Rの方向を径方向と呼ぶことがある。これらの方向に加えて、ローター40やステーター31,32の周方向を、符号Cとして、併せて図示することがある。軸方向Aの向きを第1方向とすると、径方向Rや、周方向Cの向きが、第1方向に直交する第2方向に相当する。
【0009】
回転軸21は、
図1では、円柱体として示したが、中空の回転軸としてもよい。アキシャルギャップモーター20では、回転軸方向Aの厚みが薄くなり、径方向Rの寸法が大きくなる傾向にあるため、回転軸21の径を大きくし、中空軸として、内部にアキシャルギャップモーター20への配線を通すといった構成を取ることも望ましい。
【0010】
この回転軸21の軸方向の略中心に固定されたローター40は、その径方向Rの終端近くに、複数個の永久磁石41,43を周方向に均等に、本実施形態では、12個配置している。永久磁石41,43の個数と配置は、アキシャルギャップモーター20の相数と極数とにより定められる。ローター40の中心部は、回転軸21が固定される固定部45が形成されており、回転軸21は、固定部45に圧入されて、固定される。もとより、キーとキー溝とにより両者を結合してもよい。
【0011】
ローター40の固定部45には、軸受け23,24を介して、ステーター31,32が取り付けられる。この軸受け23,24により、回転軸21およびローター40は、ステーター31,32を側面ケース27で結合したモーターケースに対して、回転可能に保持される。ステーター31,32は、ローター40の永久磁石41,43に対向するように、ステーターコア(以下、単にコアという)51,52が設けられている。ステーター31の概略構成を、
図2の斜視図に示した。本実施形態のアキシャルギャップモーター20は、三相4スロットの構成を備えることから、ステーター31当りのコア51の数は12個である。
【0012】
ステーター31は、12個のコア51と、これらのコア51に共通に設けられたバックヨーク(以下単にヨークという)35と、各コア51の外周に巻き取られた巻線であるコイル61とからなる。ヨーク35は、コア51の径方向の幅と略同一の幅を有する環状、すなわちドーナツ形状の電磁鋼板を積層して構成されており、所定の厚みを有する。電磁鋼板の表面には、絶縁皮膜が形成されており、積層後、各電磁鋼板は絶縁被膜を溶融させて固着される。なお、接着剤の塗布や溶接によって、積層後の電磁鋼板を接合してもよい。電磁鋼板同士の接合は、後述するコアにおいても同様である。
【0013】
コア51の外周を取り巻くコイル61は、コア51に個々に巻き取ってもよいが、予めボビン状に巻き取っておき、コア51の外周に嵌め込むものとしてもよい。もうひとつのステーター32も、同様に、12個のコア52と、これらのコア52に共通のヨーク36と、各コア52の外周に巻き取られたコイル63とを備える。12個のコア51に取り付けられた12個のコイル61は、3相4極の巻線を構成する。二つのステーター31,32は、ローター40を挟んで面対称の構造を備える。ローター40に設けられた12個の永久磁石41,43とコア51、コア52とは、第1方向である軸方向Aに沿った所定の距離のギャップを隔てて、向き合っている。
【0014】
次に、第1実施形態におけるコア51の構成、ならびにこのコア51とヨーク35との取り付けについて説明する。
図3は、ステーター31を構成する一つのコア51とヨーク35との取付関係を示す説明図である。図示するように、本実施形態のコア51は、薄板状の電磁鋼板71を複数枚積層して構成される。各電磁鋼板71は同一形状をしており、正面視で、矩形形状の下端両側に凸形状の嵌込部72,73を有する。従って、複数の電磁鋼板71が積層されたコア51は、全体が直方体の形状をしており、嵌込部72,73もそれぞれ連続して、コア51下端両サイドに、2つの直方体形状の突出部を形成する。電磁鋼板71は一枚で使用されることはないので、「嵌込部」は、電磁鋼板71一枚について説明するときは凸形状の部分を指し、電磁鋼板71が積層された状態で説明するときはコア51下端の直方体形状の部分全体を指す。
【0015】
このコア51が取り付けられるヨーク35には、コア51の嵌込部72,73に対応して、ヨーク35の内周側から所定長さの溝状の取付部81,82が設けられている。ヨーク35の取付部81,82それぞれの大きさは、コア51の嵌込部72,73の大きさと等しいので、コア51の嵌込部72,73をヨーク35の取付部81,82に嵌め込むことで、コア51をヨーク35に固定することができる。すなわち、コア51が有する嵌込部72,73は、ヨーク35が有する取付部81,82に嵌まり込んでいる。嵌込部72,73が取付部81,82に取り付けられてコア51がヨーク35に固定される位置が、コアの固定位置である。固定位置にコア51が固定された状態を、
図4に示した。コア51とヨーク35との固定は、嵌込部72,73を取付部81,82に圧入することによってもよいし、接着剤や溶接によって固定するものとしてもよい。
図4に示した状態で、コア51にコイル61を嵌め込むことで、ステーター31は組み立てられる。
【0016】
図5は、このコア51をヨーク35方向に向かって見た場合の形状を模式的に示す平面図である。但し、コア51をヨーク35とは反対側から平面視した場合、ヨーク35の取付部81,82は本来は見えないが、取付関係を分かりやすく示すため、図では、取付部81,82の外形線を、隠れ線(破線)により示している。これは、他の図でも、特に断らない限り同様である。
図5には、回転軸方向A、径方向R、周方向Cを示したが、図示の都合上、回転軸方向の中心Aは、ヨーク35の図形上の中心位置には描かれておらず、ヨーク35の図示された範囲に近接している。第1実施形態およびその変形例では、複数の取付部(ここでは2つの取付部81,82)は、ヨーク35の周方向Cに隔たった位置に設けられている。換言すれば、2つの取付部81,82は、ヨーク35の周方向Cに並んでいる。複数の取付部が、ヨーク35の径方向Rに沿って隔たっている場合の構成は、第2実施形態で説明する。電磁鋼板71の積層の方向は、径方向Rとなっている。電磁鋼板71の積層方向が、周方向Cとなっている構成については、他の実施形態の項で説明する。
【0017】
取付部81,82の位置は様々なバリエーションが可能である。例えば、
図6Aに示すように、ヨーク35の内周側から外周側に向けた所定長さの溝形状の取付部81,82としてもよいし、
図6Bに示すように、ヨーク35の外周側から内周側に向けた所定長さの溝形状の取付部83,84としてもよい。あるいは
図6Cに示すように、ヨーク35の幅方向略中心に、幅方向を長手方向とする開口部として取付部85,86を設けてもよい。
【0018】
以上説明した第1実施形態によれば、アキシャルギャップモーター20において、コア51は2つの嵌込部72,73がヨーク35の2つの取付部81,82によって固定されているので、ローター40を回転させる磁束によるトルクの反力がコア51に対して、周方向に加わっても、コア51がヨーク35から外れたり、せん断力により損傷を受けるという可能性を低減できる。また、本実施形態では、全ての電磁鋼板71の嵌込部72,73が周方向の力を受け止めるので、せん断力に対する強度を一層高めることができる。この他、本実施形態では、コア51を構成する電磁鋼板71は同一形状のものを用いることができ、コア51の製造を容易なものにできる。本実施形態では、コア51のヨーク35への取付は、複数の嵌込部72,73を取付部81,82に差し込むだけでよく、この点で、アキシャルギャップモーター20の製造を容易としている。
【0019】
更に、本実施形態では、嵌込部72,73と取付部81,82とが、ヨーク35の幅方向(径方向R)に亘って設けられているので、ヨーク35の周方向Cに掛かる力を受ける面積が広くなり、換言すれば、単位面積当たりの荷重が小さくなるので、周方向のせん断力に対する強度を一層高めることができる。
【0020】
また、本実施形態では、コア51に電磁鋼板71を用いているので、アキシャルギャップモーター20を構成するコアとして高い効率を実現している。アキシャルギャップモーター20では、磁性体の粉末を高い圧力で固めた、いわゆる圧粉でコアを形成するものが知られているが、これに対して、電磁鋼板71を積層したコア51は、損失で約10%程度、出力トルクとしては約5%程度、それぞれ高い性能を示した。なお、本実施形態では、ヨーク35も同一形状の電磁鋼板を積層しているので、製造が容易であり、ヨークも含めて高い効率を実現している。
【0021】
(2)第1の態様の他の実施形態1:
第1実施形態のアキシャルギャップモーター20では、嵌込部や取付部のそれぞれは、ヨーク35の幅方向に亘って設けられ、2つの嵌込部、あるいは2つの取付部は、ヨーク35の周方向Cに隔てられた位置に設けられている。この構成を備えた他の実施形態について以下説明する。
図7は、コア51Aやコア51aの形態と、積層される電磁鋼板の形状を示す説明図である。
図7において、各電磁鋼板は、積層方向に見た、正面図として描かれ、コア51A,51aは、ヨーク35の側から見た、下面図として描かれている。コア51A,51aは、いずれも2種類の電磁鋼板711,712を積層して形成される。
【0022】
コア51Aは、複数枚の電磁鋼板711を積層した両側に、それぞれ1枚以上の電磁鋼板712を積層している。電磁鋼板711は、
図2に示した第1実施形態の電磁鋼板71と同一の形状を有する。従って、この電磁鋼板711を積層した部分には、略直方体のコア51Aの下端に嵌込部72A,73Bが出っ張った形状となる。他方、電磁鋼板712は、電磁鋼板711と比べると、この嵌込部72A,73Aに相当する部位が除かれた略長方形状をしている。従って、この電磁鋼板712を積層した部分には、嵌込部72A,73Aに相当する出っ張りは存在しない。このような形状に、コア51Aを形成しても、このコア51Aは、
図6Aに示した形状の取付部81,82、
図6Bに示した形状の取付部83,84、
図6Cに示した形状の取付部85,86に、それぞれ取り付けることができる。
【0023】
(3)他の実施形態2:
図7に示したもう一つの実施形態であるコア51aでは、積層された複数枚の電磁鋼板711に対して、その片側にのみ電磁鋼板712を複数枚積層している。この場合、嵌込部72A,73Aは、コア51aの径方向片側に寄せて形成される。このコア51aも、
図6Aから
図6Cに示した様々な形態の取付部81,82等に取り付けることができる。なお、コア51A,51aは、ヨーク35の面に対向する方向から、つまりヨーク35の平面視おいて上方から、取付部81,82等に取り付けてもよいし、
図6A,
図6Bの形態の取付部81~84に対しては、内周側外側あるいは外周側外側から、ヨーク35の面方向にスライドさせるようにして、取り付けてもよい。
【0024】
(4)他の実施形態3:
図8は、更に他のコア51Bの形態を示す説明図である。このコア51Bは、上述したコア51,51A、51aが平面視の形状が長方形であったのに対して、平面視の形状が台形形状となっている点で相違する。コア51Bをこの形状とするためには、積層される全ての電磁鋼板の形状と異ならせる必要がある。つまり、各電磁鋼板の高さは同じで、幅(周方向長さ)は外周側に位置する電磁鋼板ほど大きな形状とされている。
【0025】
図8には、コア51Bを構成する代表的な電磁鋼板として、ヨークの内周端に用いられる電磁鋼板721、コア51Bを構成する積層方向中程に用いられる電磁鋼板722、更にヨークの外周端に用いられる電磁鋼板723の3枚を例示した。図示するように、各電磁鋼板721,722,723は、それぞれ外形形状が異なるが、ヨーク側の取付部に取り付けられる嵌込部72B,73B等の形状は、
図6Aに示した取付部81,82に取り付けられる形状、即ち、2つの平行に設けられた取付部81,82に取り付けられる形状となっている。この結果、電磁鋼板721では、その嵌込部72B,73Bは、電磁鋼板721の両端に設けられており、電磁鋼板722では、その嵌込部72C,73Cは、電磁鋼板722の両端から内側に位置して設けられており、電磁鋼板723では、その嵌込部72D,73Dは、電磁鋼板723の両端から更に内側に位置して設けられている。但し、全ての嵌込部の間隔は等しい。
【0026】
以上説明したコア51Bは、このコア51Bをヨーク35に取り付けると、ヨーク35の内周端において隣接するコア51B同士の間隔と、ヨーク35の外周端において隣接するコア51B同士の間隔とが、コアの平面視形状が長方形のものより、均等に近付けることができる。このため、ヨークに取り付けられるコア51Bの平面視における面積を大きくすることができ、コイルに通電した場合に発生しうる磁力を強め、アキシャルギャップモーター20としての出力を高めることができる。なお、コアを台形形状とした場合は、コアに取り付けるコイルも内形を、コアに合わせた台形形状とすることが好ましい。
【0027】
(5)他の実施形態4:
更に他の実施形態として、ヨーク35とコア51Cからなるステーター31Cの構成を、
図9、
図10に例示する。この実施形態のステーター31Cに用いられるコア51Cは、
図8に示したコア51Bと、コアの全体形状は近似している。即ち、コア51Cは、ヨーク35に取り付けたとき、ヨーク35の外周側ほど、周方向Cの幅が大きな略台形形状をしている。このコア51Cが
図8に示したコア51Bと異なるのは、コア51C両側の嵌込部がヨーク35に設けられた取付部81C,82Cと同様、互いに平行ではなく、ヨーク35の中心から径方向Rに沿った形状とされている点である。
【0028】
従って、
図10に示すように、コア51Cを構成する各電磁鋼板は、全て大きさが異なり、略相似形の形状をしている。
図10には、コア51Cを構成する代表的な電磁鋼板として、ヨークの内周端に用いられる電磁鋼板731、コア51Cを構成する積層方向中程に用いられる電磁鋼板732、更にヨークの外周端に用いられる電磁鋼板733の3枚を例示した。図示するように、各電磁鋼板731,732,733は、ヨーク側の取付部81C、82Cに取り付けられる嵌込部72E,73E等の形状は、
図9に示した取付部81C,82Cに取り付けられる形状、即ち、径方向外側に向かって次第に間隔を広げる取付部81C,82Cに取り付けられる形状となっている。この結果、各電磁鋼板の両端に設けられた嵌込部の間隔は、電磁鋼板731の嵌込部72E,73Eの間が一番狭く、電磁鋼板732の嵌込部72F,73Fの間が次に狭く、電磁鋼板733では、その嵌込部72G,73Gの間が最も広い。
【0029】
このような構成されたコア51Cは、コア51Bと同様、平面視台形形状をしており、ヨーク35上において、コアとして広い面積を確保することができる。また、ヨーク35の外周方向に近づくほど、二つの取付部81C,82Cの間隔が広くなっており、コア51Cの嵌込部をヨーク35上方から取付部81C,82Cに嵌め込むと、ヨーク35の表面に沿ったいずれの方向の力を受けても、コア51Cがスライドして外れるということがない。また、上述した他の実施形態のコア51,51A,51a,51Bと同様の作用効果を奏することは勿論である。
【0030】
(6)他の実施形態5:
図11は、更に他の実施形態であるステーター31Dの一部を示す平面図である。この実施形態では、ヨーク35側の取付部81,82は、第1実施形態と同じ形状をしている(
図6A参照)。これに対して、コア51Dは、外形形状は、第1実施形態と同様であるものの、電磁鋼板の積層方向が異なっている。つまり、このコア51Dでは、電磁鋼板は、ヨーク35の周方向Cに沿って配列されている。このコア51Dは、従って、2種類の大きさの電磁鋼板741,742から構成される。電磁鋼板741は、コア51Dの両側にそれぞれ複数枚積層され、この電磁鋼板741に挟まれた中央領域には電磁鋼板741より小さな電磁鋼板742が、積層されている。これらの電磁鋼板741,742は、上辺を揃えて積層される。従って、積層され溶着された電磁鋼板からなるコア51Dは、電磁鋼板の積層方向は異なるものの、その外形形状は、第1実施形態のコア51と同様となる。この場合、高さ方向に長い電磁鋼板741の下側が突出して嵌込部741を構成することになり、これが取付部81,82に取り付けられる。
【0031】
掛かる形態のコア51Dでは、アキシャルギャップモーター20として周方向Cへの力が掛かったとき、複数枚の電磁鋼板741がその力を受けるので、せん断力に対して、十分な強度を確保することができる。また、矩形の電磁鋼板を積層するだけなので、電磁鋼板の加工が容易であるという利点を有する。更に、コアの数が増減したり、コアの周方向の大きさが設計変更された場合などでも、積層する電磁鋼板742の枚数を変えるだけで、容易に対応できる。
【0032】
(7)他の実施形態6:
次に、他の実施形態6としてのステーター31Eについて、
図12を用いて説明する。このステーター31Eでは、コア51Eを構成する電磁鋼板の積層方向や取付部81,82の構成は、他の実施形態5のステーター31Dと同様である。このステーター31Eでは、コア51Eの形状が、平面視台形形状をしている点で、コア51Dとは異なる。このコア51Eでは、平面視台形形状とするため、コア51Eの積層方向外側の電磁鋼板の大きさが、徐々に小さくなっている。つまり、この実施形態のコア51Eでは、
図11に示したコア51Dと同様に、2種類の大小の電磁鋼板751および752を積層した外側に、ヨーク35の幅方向(径方向R)に対応した寸法が徐々に小さくなる複数枚の電磁鋼板753が積層される。
【0033】
この結果、この実施形態のコア51Eは、平面視台形形状を備えるものとなり、ヨーク35上において、コアとして広い面積を確保することができる。この実施形態でもコア51Eの周方向の大きさの変更に容易に対応できる。
【0034】
以上、第1の態様の様々な実施形態について説明したが、第1の態様の実施形態はこれに留まらない。上記の各実施形態では、取付部は、2つとしたが、3つ以上設けてもよい。3つの場合、例えば取付部81,82の中間に新たな取付部を設け、コアの対応する部分に嵌込部を増設すればよい。また、嵌込部は、同一形状の矩形の電磁鋼板を積層して形成した直方体のコアに後加工することにより、形成してもよい。後加工の際には、積層された電磁鋼板を治具等で固定して加工すればよい。この場合、嵌込部の形状や配置の自由度は高い。
【0035】
B.第2の態様:
(8)第2実施形態:
次に、
図13以下を用いて、第2実施形態のアキシャルギャップモーター20の構成について説明する。第2実施形態とその他の実施形態をまとめて第2の態様と呼ぶ。上述した第1の態様では、取付部81,82等は、いずれもヨーク35の幅方向に亘って設けられ、複数の取付部はヨーク35の周方向に隔てて設けられていた。これに対して、第2の態様では、
図13に示したように、2つの取付部91,92は、ヨーク35の最内周の位置である内周側端部と最外周の位置である外周側端部とに設けられる。取付部91,92の周方向の長さは第2実施形態では同一である。
【0036】
第2実施形態のステーター31Fは、複数個のコア51Fに対応する箇所に取付部91,92を備えたヨーク35と、このヨーク35に取り付けられる複数個のコア51Fと、各コア51Fに取り付けられる図示しないコイルとを備える。コイルの取り付けは、第1実施形態で説明したものと同じである(
図4、
図5参照)。
【0037】
この実施形態のコア51Fは、第1実施形態のコア51と類似の形状を備える。即ち、下端両側において下方に突出した嵌込部77,78を備えた電磁鋼板76を積層した形態を備える。嵌込部77,78の間隔は、取付部91,92の間隔と等しい。嵌込部77は、ヨーク35の径方向の内側位置に対応して設けられ、嵌込部78はヨーク35の外側位置に対応して設けられる。すなわち、嵌込部77,78は、ヨーク35の径方向Rに並んでいる。嵌込部77,78の幅は、ヨーク35側の取付部91,92の周方向の幅に等しい。従って、コア51Fの嵌込部77,78をヨーク35の取付部91,92に嵌め込むようにして取り付けると、
図14に示したように、コア51Fは、ヨーク35の幅方向に亘って配置される。コア51Fがヨーク35を取り付けられた状態を、平面視したのが
図15である。この場合、
図15に示したように、積層される電磁鋼板76は、全て同一の形状にできる。
【0038】
以上説明した第2実施形態によれば、アキシャルギャップモーター20において、コア51Fは2つの嵌込部77,78がヨーク35の2つの取付部91,92によって固定されているので、ローター40を回転させる磁束によるトルクの反力がコア51Fに対して、周方向Cに加わっても、コア51Fがヨーク35から外れたり、せん断力により損傷を受けるという可能性を低減できる。また、
図14に占めたように、この実施形態のコア51Fは、ヨーク35の幅方向の全範囲を覆う形状にすることが容易であり、結果的にヨーク35に対して大きな面積のコアとすることができる。コアが大きくできれば、一般に小さいものよりモーターとしての出力を大きくできる。なお、電磁鋼板76の形状を、
図8に示した電磁鋼板723のように、嵌込部77,78の外側に張出した部分が存在する形状とすれば、ヨーク35の幅方向に対して、更にコアの形状を大きなものにすることも可能である。
【0039】
更に、本実施形態では、コア51Fを構成する電磁鋼板76は同一形状のものを用いることができ、コア51Fの製造を容易なものにできる。本実施形態では、コア51Fのヨーク35への取付は、複数の嵌込部77,78を取付部91,92に差し込むだけでよく、この点で、アキシャルギャップモーター20の製造を容易なものにしている。
【0040】
(9)他の実施形態7:
図16に他の実施形態7のステーター31Gの構成を示す。このステーター31Gは、第2実施形態と同じ形状のヨーク35に、コア51Gを取り付けた構成を備える。このコア51Gは、平面視台形形状を有する。つまり他の実施形態7のコア51Gは、第2実施形態のコア51Fと同じ電磁鋼板76を積層した両側に、幅が漸減する複数の電磁鋼板761,762等を積層した構成を有する。この実施形態では、幅が漸減する複数の電磁鋼板761,762等は、電磁鋼板76に溶着され、一体化している。
【0041】
この実施形態7のステーター31Gは、ヨーク35との取付については、第2実施形態のステーター31Fと同様の作用効果を僧衣する上、コア51Gの平面視における面積を大きくすることができ、コア51Gに設けられたコイル(不図示)の通電による磁力を高めることができる。
図16に示した例では、ヨーク35側の取付部91と取付部92とは、同じ周方向長さとしたが、取付部92の周方向長さを長くし、電磁鋼板761,762等の片側に、嵌込部78を形成して、取付部92に嵌め込むようにしてもよい。この場合、コア51Gの固定はより強固なものとなる。
【0042】
(10)他の実施形態8:
更に他の実施形態8のステーター31Hの要部を
図17に示す。このステーター31Hは、コア51Hと共に、第2実施形態や他の実施形態7と同じ形態の取付部91,92を備えるヨーク35とを備える。コア51Hは、電磁鋼板の積層方向が第2実施形態や他の実施形態7と異なり、ヨーク35の径方向Rになっている。コア51Hは、高さの異なる矩形の2種類の電磁鋼板を積層して構成される。つまり、コア51Hは、電磁鋼板772を複数枚積層した上で、その両側に、電磁鋼板772より高さの大きな電磁鋼板771を、それぞれ複数枚積層した構成を備える。このとき、電磁鋼板771および電磁鋼板772は、上辺が揃えられているので、電磁鋼板771の下端は、コア51Hの下方にそれぞれ突出した形となり、嵌込部77Aを形成する。この嵌込部77Aが取付部91,92に晴れ込まれることで、コア51Hはヨーク35に取り付けられる。
【0043】
この実施形態8でも、第2実施形態や他の実施形態7同様、コア51Hは、複数箇所でヨーク35に取り付けられ、コア51Hにかかるせん断力に対して高い強度を示す。
【0044】
(11)他の実施形態9:
他の実施形態8と類似の実施形態9のステーター31Iの構成を
図18に示す。この実施形態9では、ステーター31Iを構成するコア51Iは、平面視台形形状をしている。このため、積層される電磁鋼板は、全て大きさが異なる。中心部において積層された電磁鋼板782のヨーク35内周側端部には嵌込部を形成する電磁鋼板781であって、電磁鋼板782により高さの大きな電磁鋼板781が積層される。また、積層された電磁鋼板782のヨーク35外周側端部には嵌込部を形成する電磁鋼板783であって、電磁鋼板782により高さの大きな電磁鋼板783が積層される。全ての電磁鋼板は、ヨーク35の周方向Cに沿った長さが、ヨーク35の内周側から外周側にかけて漸増する形状となっている。
【0045】
従って、このヨーク35に設けられた取付部91A,92Aは、径方向外側、すなわち、外周側の取付部92Aの周方向Cに沿った長さの方が、径方向内側、すなわち、内周側の取付部91Aの長さより長い。かかる構成を有するステーター31Iは、他の実施形態8と同様の作用効果を奏得する上、更にコア51Iの平面視の面積を大きくでき、アキシャルギャップモーター20における出力の増大を図ることができる。
【0046】
(12)他の実施形態10:
次に他の実施形態10のステーター31Jの構成について、
図19を用いて説明する。この実施形態10では、ステーター31Jを構成するコア51Jは、同じ形状の電磁鋼板を周方向Cに沿って積層しつつ、平面視において略台形形状のコアを実現している。ヨーク35は、他の実施形態9と同様に外周側の取付部92Bが、内周側の取付部91Bより、周方向Cに沿った長さが長い形状となっている。
【0047】
他方、コア51Jを構成する電磁鋼板79は、全て同一の形状をしている。つまり、電磁鋼板79は、その両端に嵌込部77B,78Bを備え、積層された状態で、ヨーク35に取り付けられる。この電磁鋼板79は、
図18下段の右端に示したように、その内周側の厚みd1が、外周側の厚みd2より小さくされている。このため、複数の電磁鋼板79を積層すると、コア51Jは、全体の平面視形状が台形形状となる。この状態では、コア51Jの嵌込部77B,78Bとヨークの取付部91B,92Bとの関係は、
図18に示した他の実施形態と9と同様だが、本実施形態では、全ての電磁鋼板79が同一形状をしていること、および全ての電磁鋼板79が嵌込部77B,78Bにおいて、取付部91B,92Bに嵌め込まれ、強度を高めるのに寄与している点で優れる。
【0048】
もとよりこの形状の電磁鋼板79を用いれば、その外周側、内周側は共に円弧の一部となるように積層することも可能である。この場合には、嵌込部77B,78Bも円弧状になるため、取付部91B,92Bも円弧状の形状とすればよい。なお、こうた内周側と外周側とで厚みの違う電磁鋼板79は、電磁鋼板をプレスにより型抜きする前段階で、ローラ軸方向の荷重が異なる圧延ローラを通すことで容易に製作することができる。
【0049】
以上、第2の態様の様々な実施形態について説明したが、第2の態様の実施形態はこれに留まらない。上記の各実施形態では、取付部91,92は、ヨーク35の最内周および最外周に凹部として設けたが、ヨーク35の最内周位置および最外周位置よりヨーク内側に開口部として設けてもよい。この場合、コア51Fを形成する電磁鋼板を、
図8に示した電磁鋼板723のように、嵌込部77,78等をコア51Fの両端ではなく、両端から内側に入った位置に設け、これを積層してコア51Fを形成すればよい。また、取付部は、複数あればよく、例えば3つ以上設けてもよい。3つの場合、取付部91,92の中間に新たな取付部を設け、コアの対応する部分に嵌込部を増設するなどの構成を採用すればよい。また、嵌込部は、同一形状の矩形の電磁鋼板を積層して形成した直方体のコアに後加工することにより、形成してもよい。後加工の際には、積層された電磁鋼板を治具等で固定して加工すればよい。この場合、嵌込部の形状や配置の自由度は高い。
【0050】
C.他の態様:
上述した第1の態様および第2の態様は、取付部の配設方向の違いに対応しているが、この分け方は便宜的なものであり、例えば、第1の態様における取付部81,82を、ヨーク35の径方向Rに沿った方向に対して45度など斜めに配置してもよい。あるいは、
図6Cに示した取付部85,86を略円形あるいは略矩形の開口部とし、径方向にずらして配置し、これに合わせた嵌込部を、コア側に形成するものとしてもよい。また、複数の嵌込部の各形状は、長方形に限らず、T字形状、十字形状、H字形状や円弧形状であってもよい。更に、複数の嵌込部の形状はそれぞれ異なっていてもよい。これらは取付部においても同様である。
【0051】
上記の各実施形態で用いたコアは、同一形状の電磁鋼板を積層したものと異なる形状の電磁鋼板を積層したものとがある。前者は、電磁鋼板が1種類で済み、製造が容易である。他方、後者は、複数種類の形状の電磁鋼板を組み合わせるので、形状の自由度が高い。なお、電磁鋼板は、その厚みや材質など、1種類のものを用いてもよいが、2種類以上の電磁鋼板を取り混ぜてコアを形成してもよい。
【0052】
上述したアキシャルギャップモーター20において、各ステーターを構成するコアとヨークは、共に電磁鋼板により構成したが、コアとヨークにおける電磁鋼板の積層方向は、いずれであってもよい。
図20に示すように、ヨーク35における電磁鋼板の積層方向は、アキシャルギャップモーター20の軸方向Aに沿った方向にしてよい。ヨーク35の内部を通る磁束の方向およびヨーク35の構成のし易さから、この積層方向が好ましい。これに対して、コアを形成する電磁鋼板の積層方向は、軸方向Aに沿った方向以外であることが好ましい。
【0053】
図21,
図22に代表的な積層方向を、コア51Cおよびコア51Eを用いて示した。
図21に例示したコア51Cでは、電磁鋼板は、径方向Rに沿った方向に積層される。また、
図22に例示したコア51Eでは、電磁鋼板は、周方向Cに沿った方向に積層される。
図21,
図22に示したいずれの積層方向でも、コイル61によって形成される磁束がコア51C,51Eを通り易く、かつ渦電流による損失は小さくなる。
【0054】
D.アキシャルギャップモーターの製造方法:
こうしたアキシャルギャップモーター20の製造方法について簡単に説明する。このアキシャルギャップモーター20は、一般にM相巻線(Mは、3以上の奇数)を備えたモーターとして製造される。3相4極のアキシャルギャップモーター20であれば、コアの数は12となるが、そのアキシャルギャップモーター20の製造工程は、以下のようになる。
[1]ヨーク35に取り付けられるコア51等であって、複数の嵌込部72,73等を、ヨーク35に対向する側の異なる位置に備えたコア51を、磁束が貫通可能な薄板、例えば電磁鋼板71を積層して形成する工程T1、
[2]コア51等を、少なくとも12個準備する工程T1、
[3]12個のコア51等が固定される位置のそれぞれに、複数の嵌込部72,73等に対応して複数の取付部81,82等を備えるヨーク35を準備する工程T3、
[4]ヨーク35の取付部81,82等に、12個のコア51等のそれぞれの嵌込部72,73を嵌め込んで、ヨーク35とコア51等とを備えたステーター31等を組み立てる工程T4、
[5]ステーター31等の組み立ての前または後において、12個のコア51等のそれぞれに界磁コイル61を取り付ける工程T5、
[6]回転可能に支持されるローター40とステーター31等とを、コア51等のヨーク35と反対側の端面が、ローター40に対して、回転の軸Aと平行な方向に所定距離のギャップを隔てて配置される位置に組み付ける工程T6。
以上の工程により、アキシャルギャップモーター20は、製造される。なお、工程T1、T2の順序は同時であっても逆であっても差し支えない。
【0055】
かかる製造方法によれば、コイルへの通電によって、モーターの出力トルクの反力であって、ヨーク35の周方向に沿った力がコア51等に掛かっても、このせん断力に耐えるアキシャルギャップモーター20を容易に製造できる。
【0056】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、ローターの軸方向に片側にステーターを備えるシングルステーターの構造としてもよい。また、軸を固定軸とし、ローターとステータとの配置を逆にして、固定軸の周りにアウターが回転する形態とすることもできる。更に、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
20…アキシャルギャップモーター、21…回転軸、27…側面ケース、31,31C~31J,32…ステーター、35,36…ヨーク、40…ローター、41,43…永久磁石、45…固定部、51,51A~51J,51a,52…コア、61,63…コイル、71,76,79…電磁鋼板、72,72A~72G…嵌込部、77,77A,77B,78…嵌込部、81~85,81C,91,92,92A,92B…取付部、711~783…電磁鋼板