(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ゲートブレイク方法及びゲートブレイク装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20231205BHJP
B29C 45/38 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/38 G
H01L21/56 D
(21)【出願番号】P 2019151351
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】又野 竜輔
(72)【発明者】
【氏名】生田 慶伝
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187441(JP,A)
【文献】特開平08-008276(JP,A)
【文献】特開平07-241888(JP,A)
【文献】特開2008-118012(JP,A)
【文献】特開2005-228769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に載置された半導体素子を樹脂封止したパッケージを有する樹脂封止成形品から、カルとランナー及びゲートを打ち抜くゲートブレイク方法であって、
前記パッケージをパッケージ載置部に載置する工程と、
前記パッケージに、前記ランナーに対し所定の角度で傾斜した姿勢を取らせて、前記ゲートにクラックを生じさせる工程と、
前記パッケージが前記傾斜した姿勢の状態で、前記クラックを境に前記ゲートに繋がる前記ランナーを前記カルと共に打ち抜く工程と、
前記パッケージに前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向に対して略直角な姿勢をとらせた状態で、前記ゲートの残部を打ち抜く工程とを備え、
前記ゲートにクラックを生じさせる工程、前記ゲートに繋がるランナーを前記カルと共に打ち抜く工程、及び前記ゲートの残部を打ち抜く工程は、
前記パッケージ載置部に載置した前記パッケージの厚み方向の一方の面をクランパーで所定の弾性を以て前記パッケージ載置部に押し付ける方向へ押さえると共に、
前記パッケージを、前記パッケージの厚み方向の一方の面と他方の面を前記クランパーと前記パッケージ載置部で挟んで略固定した状態で各工程を行う
ゲートブレイク方法。
【請求項2】
前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向において、前記パッケージの前記ゲートに近い方の側面を、前記ランナーが打ち抜かれる際の軌跡から離れる方向に前記パッケージを傾斜させた状態で前記ランナーを打ち抜く
請求項1記載のゲートブレイク方法。
【請求項3】
前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向において、前記パッケージの前記ゲートに近い方の側面を、前記ランナーが打ち抜かれる際の軌跡から離れる方向に前記パッケージを傾斜させた状態で前記ランナーを打ち抜いた後、下降したパッケージガイドによってパッケージの位置決めを行い、前記パッケージガイドと共に下降するゲートパンチによってゲートを打ち抜く
請求項1記載のゲートブレイク方法。
【請求項4】
基材に載置された半導体素子を樹脂封止したパッケージを有する樹脂封止成形品から、カルとランナー及びゲートを打ち抜き部で打ち抜くゲートブレイク装置であって、
前記パッケージを載置して前記パッケージに前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向に対して略直角な姿勢をとらせることができるパッケージ載置部と、
該パッケージ載置部に載置した前記パッケージを、前記パッケージの厚み方向の一方の面を所定の弾性を以て前記パッケージ載置部に押し付ける方向へ押さえることができるクランパーと、
前記パッケージを前記クランパーが押し付ける方向とは逆向きに押圧して、前記クランパーと協働して、前記パッケージに、前記ランナーに対し所定の角度で傾斜した姿勢をとらせることができるワークレシーバとを備え、
前記パッケージを前記クランパーと前記パッケージ載置部で挟んだ状態、及び前記パッケージを前記クランパーと前記パッケージ載置部及び前記ワークレシーバで挟んだ状態で、前記パッケージを略固定することが可能である
ゲートブレイク装置。
【請求項5】
前記クランパーの先端面は、前記パッケージの前記傾斜した姿勢の傾斜と同じ方向に所定の角度で傾斜させてある
請求項4記載のゲートブレイク装置。
【請求項6】
前記パッケージ載置部は、前記パッケージ載置部に対向する前記パッケージの面を沿わせて、前記パッケージを傾斜させる角度設定部を備える
請求項4又は5記載のゲートブレイク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートブレイク方法及びゲートブレイク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの製造では、基材に載置した半導体素子を樹脂封止した樹脂封止成形品からカルとランナー及びゲート等の不要樹脂を除去し、更に複数取りのパッケージを個々に分けることで、製品である半導体パッケージを得ている。
【0003】
そして、樹脂封止成形品から不要樹脂を除去する工程は、不要樹脂のうちカルとランナーをプッシャーによって打ち抜くことで行われ、カルとランナーから剥離が始まり、最後にゲートが剥離される。
【0004】
このとき、ランナーは、強度の弱い部分を引きちぎるようにして基材から剥離されるために、パッケージと繋がる部分の切断位置が安定せずに、ゲート残部が発生する。
【0005】
なお、ここでいうゲート残部とは、不要樹脂を打ち抜いた後に、パッケージと繋がって残ったゲート、或いはゲートの一部を意味する。
【0006】
パッケージにゲート残部が生じることを抑止するものとしては、例えば特許文献1記載の半導体処理装置がある。この半導体処理装置は、樹脂封止後の複数のパッケージが配列、成形された成形品からプッシャーによってカルとランナーを打ち抜く際に、各パッケージが傾斜するようにパレットの上面に段差を設けている。
【0007】
そして、カルとランナーを打ち抜く際には、薄いゲートから剥離が始まるようにすることで、剥離の途中段階において、樹脂片がゲート近傍において切断されるということがなく、ゲート残部は発生しない、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、近年においては、半導体パッケージの薄型化や小型化が進み、効率化を図るためにパッケージの多数個取りが主流となっている。このため、各パッケージが小さくなって、上記従来の装置では、ゲート残部が生じることが多くあり、ゲート残部の対策として充分とはいえなかった。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、基材に載置された半導体素子を樹脂封止した樹脂封止成形品から不要樹脂であるカルとランナー及びゲートを除去する際に、パッケージにゲート残部が生じることを抑止することができるゲートブレイク方法及びゲートブレイク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明に係るゲートブレイク方法は、基材に載置された半導体素子を樹脂封止したパッケージを有する樹脂封止成形品から、カルとランナー及びゲートを打ち抜くゲートブレイク方法であって、前記ゲートにクラックを形成する第1の姿勢を前記パッケージに取らせる工程と、前記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢を、前記ランナーを打ち抜いた後の前記パッケージに取らせて前記ゲートを打ち抜く工程とを備える。
【0012】
本発明のゲートブレイク方法によれば、基材に載置された半導体素子を樹脂封止したパッケージに第1の姿勢を取らせることにより、ゲートにクラックを形成することができる。これにより、ゲートに脆弱な部分を形成できる。
【0013】
そして、ランナーを打ち抜いた後のパッケージに、第1の姿勢とは異なる第2の姿勢を取らせることにより、ゲートを打ち抜くために好適な姿勢にすることができる。これにより、パッケージにゲート残部が生じることを抑止できる。
【0014】
また、パッケージが第2の姿勢を取った状態で、ゲートを打ち抜くので、パッケージのゲート以外の部分が損傷することを抑止できる。
【0015】
(2)本発明は、前記ランナーに対して所定の角度で傾斜した第1の姿勢を前記パッケージに取らせるようにしてもよい。
【0016】
この場合は、ランナーに対して所定の角度で傾斜した第1の姿勢をパッケージに取らせることにより、ゲートにクラックを形成することができる。
【0017】
(3)本発明は、前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向において、前記ゲートから遠い方の前記パッケージの側面が、前記ランナーが打ち抜かれる軌跡から離れる方向に前記パッケージを傾斜させた状態で前記ランナーを打ち抜くようにしてもよい。
【0018】
(4)本発明は、前記カルと前記ランナー及び前記ゲートを打ち抜く方向に対して略直角な第2の姿勢を前記パッケージに取らせるようにしてもよい。
【0019】
この場合は、カルとランナー及びゲートを打ち抜く方向に対して略直角な第2の姿勢をパッケージに取らせることにより、パッケージの側面が、カルとランナー及びゲートを打ち抜く方向と略平行になる。これにより、精度よくゲートを打ち抜くことが可能になり、パッケージの側面の損傷やゲート残部を抑止できる。
【0020】
(5)上記の目的を達成するために、本発明に係るゲートブレイク装置は、基材に載置された半導体素子を樹脂封止したパッケージを有する樹脂封止成形品から、カルとランナー及びゲートを打ち抜き部で打ち抜くゲートブレイク装置であって、前記パッケージを載置するパッケージ載置部と、前記ゲートにクラックを形成する第1の姿勢を前記パッケージ載置部に載置した前記パッケージに取らせると共に、前記パッケージに残るゲートを前記打ち抜き部で打ち抜くための第2の姿勢を前記パッケージに取らせる姿勢設定部とを備える。
【0021】
本発明のゲートブレイク装置によれば、パッケージ載置部に載置したパッケージに第1の姿勢を取らせることにより、ゲートにクラックを形成することができる。これにより、ゲートに脆弱な部分を形成できる。
【0022】
そして、パッケージに残るゲートを打ち抜き部で打ち抜くための第2の姿勢を、ランナーを打ち抜いた後のパッケージに取らせることにより、パッケージにゲート残部が生じることを抑止できる。
【0023】
また、パッケージが第2の姿勢を取った状態で、パッケージに残るゲートを打ち抜くので、パッケージのゲート以外の部分が損傷することを抑止できる。
【0024】
(6)本発明における前記姿勢設定部は、前記パッケージ載置部に対して所定の角度で傾斜した第1の姿勢を前記パッケージに取らせる構成としてもよい。
【0025】
この場合は、パッケージ載置部に対して所定の角度で傾斜した第1の姿勢をパッケージに取らせることにより、ゲートにクラックを形成することができる。
【0026】
(7)本発明における前記姿勢設定部は、前記打ち抜き部から遠い方の前記パッケージの端部が、前記パッケージ載置部と離れるように前記パッケージを傾斜させる構成としてもよい。
【0027】
(8)本発明における前記姿勢設定部は、前記パッケージ載置部と略平行な第2の姿勢を前記パッケージに取らせる構成としてもよい。
【0028】
この場合は、パッケージ載置部と略平行な第2の姿勢をパッケージに取らせることにより、パッケージの側面が、カルとランナー及びゲートを打ち抜く方向と略平行になる。これにより、精度よくゲートを打ち抜くことが可能になり、パッケージの側面の損傷やゲート残部を抑止できる。
【0029】
(9)本発明における前記姿勢設定部は、前記パッケージを前記パッケージ載置部に押し付ける方向へ弾性体を介して押圧するクランパーと、前記パッケージを前記クランパーが押圧する方向とは逆向きに押圧して、前記第1の姿勢を前記パッケージに取らせるワークレシーバとを備える構成としてもよい。
【0030】
この場合は、パッケージをパッケージ載置部に押し付ける方向へ弾性体を介して押圧するクランパーを備えることにより、パッケージ載置部に載置されたパッケージをクランパーによって押圧することができる。
【0031】
また、このときクランパーは、弾性体の付勢によってパッケージに対し所定の押圧力を維持しながら押圧する。これにより、クランパーは、パッケージを必要以上の強い力で押圧することがなく、パッケージの損傷を抑止できる。
【0032】
更に、パッケージをクランパーが押圧する方向とは逆向きに押圧して、第1の姿勢をパッケージに取らせるワークレシーバを備えることにより、ゲートにクラックを形成することができる。
【0033】
(10)本発明における前記姿勢設定部は、前記パッケージを前記パッケージ載置部に押し付ける方向へ弾性体を介して押圧するクランパーと、前記パッケージ載置部に対向する前記パッケージの面を沿わせて、前記パッケージを傾斜させる角度設定部とを備える構成としてもよい。
【0034】
この場合は、パッケージをパッケージ載置部に押し付ける方向へ弾性体を介して押圧するクランパーを備えることにより、パッケージ載置部に載置されたパッケージをクランパーによって押圧することができる。
【0035】
また、このときクランパーは、弾性体の付勢によってパッケージに対し所定の押圧力を維持しながら押圧する。これにより、クランパーは、パッケージを必要以上の強い力で押圧することがなく、パッケージの損傷を抑止できる。
【0036】
また、パッケージ載置部に対向するパッケージの面を沿わせて、パッケージを傾斜させる角度設定部を備えることにより、クランパーで押圧されたパッケージは、角度設定部に沿うように傾斜し、パッケージ載置部に対して所定の角度で傾斜した第1の姿勢をパッケージに取らせることができ、ゲートにクラックを形成することができる。
【0037】
(11)本発明における前記クランパーの先端面は、前記パッケージの前記第1の姿勢の傾斜と同じ方向に所定の角度で傾斜させてある構成としてもよい。
【0038】
この場合は、クランパーの先端面は、パッケージの第1の姿勢の傾斜と同じ方向に所定の角度で傾斜させてあることにより、クランパーで押圧されたパッケージは、クランパーの先端面に沿う方向に傾斜しやすくなり、第1の姿勢を取りやすくなる。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、基材に半導体素子を載置した樹脂封止成形品から不要樹脂であるカルとランナー及びゲートを除去する際に、パッケージにゲート残部が生じることを抑止することができるゲートブレイク方法及びゲートブレイク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係るゲートブレイク装置の第1実施形態を示す断面説明図である。
【
図2】下ブレイク盤を示し、
図1のA-A矢視説明図である。
【
図4】ゲートブレイク装置を使用したゲートブレイクにおいて、(a)樹脂封止成形品をセットする工程、(b)パッケージを押圧する工程を示す説明図である。
【
図5】ゲートブレイク工程において、(a)パッケージの傾斜を設定する工程、(b)ランナーを打ち抜く工程を示す説明図である。
【
図6】ゲートブレイク工程において、(a)パッケージを水平に設定する工程、(b)ゲートを打ち抜く工程を示す説明図である。
【
図7】本発明に係るゲートブレイク装置の変形例を使用し、(a)樹脂封止成形品をセットする工程、(b)パッケージの傾斜を設定する工程を示す説明図である。
【
図8】ゲートブレイク工程において、(a)ランナーを打ち抜く工程、(b)パッケージの水平を設定する工程とゲートを打ち抜く工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1乃至
図4を主に参照して、本発明に係るゲートブレイク装置の第1実施形態を更に詳細に説明する。
【0042】
なお、以下の説明において、場所又は方向の説明をする際の「前後」の表現については、各正面視説明図(
図1、
図4乃至
図8)の紙厚み方向において、紙表方を「前」、紙裏方を「後」として説明する。
【0043】
また、「上下」の表現については、同図の紙面における奥方を「上」とし、紙面における手前方を「下」として説明する。更に、「左右」の表現については、同図の紙面における左方を「左」とし、紙面における右方を「右」として説明する。
【0044】
ゲートブレイク装置Gは、半導体パッケージを製造する樹脂封止装置(図示省略)において、金型を備える成形ユニット(図示省略)を使用して行われる樹脂封止成形品8を成形する工程の後工程に配置されるもので、下ブレイク盤1と上ブレイク盤2を備えている(
図1参照)。
【0045】
(樹脂封止成形品8)
ここで、
図2及び
図3を参照して、ゲートブレイク装置Gにより行われるゲートブレイクの対象となる樹脂封止成形品8について説明する。なお、
図1では下ブレイク盤1に載置されている樹脂封止成形品8を想像線で表している。
【0046】
樹脂封止成形品8は、所要の間隔をおいて、複数のカル81とランナー82で繋がれて並設された、基材である二枚のリードフレーム80を有している。各リードフレーム80は、前後方向に長い略四角形状である(
図2、
図3参照)。
【0047】
各カル81は、前後方向へ所定の間隔で複数配列されている。各カル81に繋がるランナー82は、後述する保持台盤10に設けられた切欠溝89を通り、各リードフレーム80の下面を左右方向の略中央部まで伸びて、更に左右へ分岐している。(
図2、
図3参照)なお、切欠溝89は、下ブレイク盤1の後述する排出口12に通じている(
図3参照)。
【0048】
また、各リードフレーム80には、半導体素子を樹脂封止した平面視で略四角形のパッケージ83が、各ランナー82の分岐した各先端にゲート84(
図3、
図4参照)を介し繋がった状態で多数設けられている(
図2、
図3参照)。
【0049】
各切欠溝89を通っているランナー82は、切欠溝89の縁部と所定の隙間(符号省略)を以て通されている。これにより、後述するランナーパンチ24によってランナー82を打ち抜く際に、ランナー82が保持台盤10に対して干渉せずに、リードフレーム80から分離できるようにしている(
図3参照)。
【0050】
また、保持台盤10において、載置されたリードフレーム80に設けられている各パッケージ83の四箇所の角部近傍には、平面視で略楕円形状の通し穴15が表裏面を貫通して設けてある。各通し穴15は、後述するパッケージガイド27を通すための穴である。
【0051】
(下ブレイク盤1)
下ブレイク盤1は、図示していないスライドガイドに沿って移動可能な保持台盤10を備えている。保持台盤10は、各パッケージ83を収容して樹脂封止成形品8を保持することができる多数のパッケージ載置部11を有している(
図1、
図3、
図4参照)。
【0052】
また、保持台盤10の左右方向の中央部には、カル81とランナー82を打ち抜いて下方へ落とすための排出口12が各ランナー82に対応して形成されている。なお、パッケージ載置部11は、保持台盤10において排出口12の左右に前後方向へ二列ずつ設けられている(
図2参照)。
【0053】
各パッケージ載置部11は、パッケージ83の形状に合わせた、底部110が平坦な凹部である。パッケージ載置部11の深さは、パッケージ83の厚さの約1/2であり、パッケージ83が収まったときに、リードフレーム80と保持台盤10の上面との間に若干の間隙が設けられるように設定されている。これにより、パッケージ83の下面(符号省略)が各パッケージ載置部11の底部110に接面して安定する利点がある。
【0054】
パッケージ載置部11の
図3、
図4で左端部は、上部がやや広がって下部が垂直な壁部111となっており、その反対(右方)には、垂直な壁部114が設けられている(
図4参照)。また、壁部111と壁部114の間隔は、パッケージ83の左右方向の幅よりやや広くなるように設定されている。
【0055】
なお、上記のように排出口12の左右に前後方向へ二列ずつ配列されているパッケージ載置部11は、隣接する二列の左右方向において、互いに他の列のパッケージ載置部11に対して線対称構造となるよう形成されている(参考:
図2)。
【0056】
各パッケージ載置部11の底部110において、左方の壁部111の近傍、かつ前後方向の中央部には、円孔である案内孔112が上下面を貫通して垂直に設けてある(
図4参照)。案内孔112には、丸棒状で先端が半球形状に仕上げてあるワークレシーバ13が進退摺動可能に通してある(
図1、
図4参照)。
【0057】
各ワークレシーバ13は、保持台盤10の下面に配置されたエアシリンダー130により駆動されて進退動をし、パッケージ載置部11の底部110に対向するパッケージ83の下面を押圧する。詳しくは、ワークレシーバ13の先端は、壁部111に近い方のパッケージ83の下面を、上方(後述する製品クランパー21が押圧する方向とは逆向き)に押圧する。
【0058】
また、保持台盤10の上面において各パッケージ載置部11の左右方向の中央部、かつ前後方向に近接して、上部がやや尖ったガイドピン14が垂直に立設されている。各ガイドピン14は、樹脂封止成形品8を保持台盤10にセットするときに、各パッケージ83をパッケージ載置部11へ案内するものである(
図3、
図4参照)。
【0059】
(上ブレイク盤2)
上ブレイク盤2は、上記下ブレイク盤1の上方に配してあり、押圧盤20を有している。上ブレイク盤2は、押圧盤20に取付具201を介し複数設けてある連結部材202を介し、図示を省略した昇降操作部に連結して、水平を維持しながら昇降操作が可能である。
【0060】
押圧盤20の下面には、下ブレイク盤1の各パッケージ載置部11に対応して、製品クランパー21が設けてある。各製品クランパー21は、押圧盤20の下面に下方へ突出して設けられた製品クランパーガイド22に、下方へ進退摺動可能、かつ所定の突出位置で停止するようにして収容されている。なお、各製品クランパー21の先端は、パッケージ83の上面を下方に押圧し、前述した各ワークレシーバ13と共に姿勢設定部を構成する(
図1、
図4参照)。
【0061】
ここで、左右方向において、ワークレシーバ13がパッケージ83を上方に押圧する位置は、製品クランパー21がパッケージ83を下方に押圧する位置から左方にずれた位置としており、このことによって、パッケージ載置部11に対して所定の角度で傾斜した姿勢(後述する第1の姿勢)をパッケージ83に取らせることができる(
図3、
図4、
図5参照)。
【0062】
製品クランパー21の先端面210は、パッケージ83が、後述する第1の姿勢の傾斜と同じ方向に所定の角度で傾斜させてある。これにより、パッケージ83は、製品クランパー21の先端面210に沿う方向に傾斜しやすくなり、第1の姿勢を取りやすくなる。
【0063】
なお、先端面210の角度は、パッケージ83が第1の姿勢で傾斜する角度と同じでもよいし、異なっていてもよい(
図4参照)。また、パッケージ83の第1の姿勢は、その姿勢によってゲートにクラックを好適に形成することができれば、その形態を特に限定するものではない。
【0064】
そして、各製品クランパー21は、コイルバネ211により下方へ向け付勢されている。これにより、各製品クランパー21は、常態においては製品クランパーガイド22の先端から最大限突出して停止している(
図1、
図4参照)。
【0065】
また、押圧盤20の下面の左右に二列ずつ前後方向へ製品クランパーガイド22が設けられ、二列の製品クランパーガイド22の左右方向の中間部には、保持台盤10にセットされた樹脂封止成形品8の各ランナー82を打ち抜くためのランナーパンチ24が設けられている(
図1参照)。
【0066】
各ランナーパンチ24は、丸棒状で、下方へ突出しており、かつ先端が揃うように垂直方向に同じ長さで設けてある。ランナーパンチ24は、押圧盤20の下面の左右に前後方向へ一列ずつ設けてある(
図1参照)。
【0067】
また、各製品クランパーガイド22には、ゲート84を打ち抜くゲートパンチ26と、ゲート84を打ち抜く際に、パッケージ83の左右方向の位置決めをするパッケージガイド27が設けてある。すなわち、ゲートパンチ26とパッケージガイド27は、上ブレイク盤2の下降動作に伴って作動する(
図1、
図3、
図4参照)。
【0068】
ゲートパンチ26は、製品クランパーガイド22の外周部において、ランナーパンチ24に近い方の一箇所に設けてある。ゲートパンチ26は、横断面形状が四角形で、製品クランパー21に近い方の下部の角部に切断刃260を有している(
図3、
図4参照)。
【0069】
ゲートパンチ26の切断刃260は、平面視で、保持台盤10にセットされた樹脂封止成形品8のパッケージ83のゲート84と同じところに、パッケージ83の右方の側面830との間に若干の間隙を設けて位置させてある。
【0070】
パッケージガイド27は、製品クランパーガイド22の外周方向の四箇所に設けられている。パッケージガイド27は、横断面形状が四角形で、パッケージ載置部11に収容されたパッケージ83の左右の側面830、831に高さを合わせたときに、側面830、831との間に若干の間隙が設けられるようにしてある(
図3、
図4参照)。
【0071】
なお、各パッケージガイド27の先部には、パッケージ83に近い方に先部が窄まるように傾斜させた案内面(符号省略)が形成されており、パッケージガイド27の下降によるパッケージ83の左右の位置決めを円滑に行うことができるようにしている。
【0072】
また、押圧盤20の左右方向の中央部には、カルプッシャー28が下方へ向けて垂直に固定されている。カルプッシャー28は、ランナーパンチ24でランナー82を打ち抜く際に、ランナーパンチ24と共に下降してカル81を下方へ押し下げるものである。
【0073】
(作用)
ここで、ゲートブレイク装置Gを使用して樹脂封止成形品8のゲートブレイクを行う場合の作用を説明する。なお、
図4乃至
図8においては、便宜上、リードフレーム80の図示を省略している。
【0074】
〔1〕樹脂封止成形品8のセット
成形ユニットで成形された樹脂封止成形品8は、図示しないアンローダーにより搬送され、ゲートブレイク装置Gの、受け取り位置に水平状態で停止している下ブレイク盤1の所定の位置に載置される。
【0075】
具体的には、樹脂封止成形品8は保持台盤10に水平にセットされ、このとき、各パッケージ83はパッケージ載置部11に収容される。また、このとき、樹脂封止成形品8の各ランナー82は、上ブレイク盤2のランナーパンチ24の下方に対応して位置している(
図1、
図2、
図3、
図4(a)参照)。
【0076】
〔2〕製品クランパー21によるパッケージ83の押圧
上ブレイク盤2が鉛直方向に下降し、各製品クランパー21の先端が各パッケージ83の上面をやや押圧するように当接し、上ブレイク盤2は停止する(
図4(b)参照)。
【0077】
このとき、各製品クランパー21は、コイルバネ211の付勢力によって、パッケージ83に対する所定の押圧力を維持しながら、下方への突出長さがやや縮小している。これにより、各製品クランパー21は、各パッケージ83を必要以上の強い力で押圧することがなく、パッケージ83が損傷することを抑止できる。
【0078】
〔3〕ワークレシーバ13によるパッケージ83の傾斜設定
各製品クランパー21で各パッケージ83を押圧した状態で、各エアシリンダー130が作動し、各ワークレシーバ13が上昇して案内孔112から突出する。そして、各ワークレシーバ13の先端は、左右方向において、製品クランパー21が押圧する位置とは左方へずれた位置を、製品クランパー21の押圧する方向とは逆向きに押圧し、各パッケージ83のランナー82から遠い方の端部が押し上げられる(
図1、
図5(a)参照)。
【0079】
これにより、各パッケージ83が所定の角度で傾斜し、第1の姿勢を取る(
図5(a)参照)。このとき、例えばゲート84とランナー82の境界部が屈曲してクラック(符号省略)が形成され、ゲート84に脆弱な部分を形成することができる。なお、パッケージ83の第1の姿勢を取ったときの水平に対する角度は、適宜設定されるもので、特に限定はされない。
【0080】
また、製品クランパー21の先端面210は、パッケージ83が第1の姿勢である時の傾斜と同じ方向に所定の角度で傾斜させてあり、パッケージ83は、傾斜するときに、製品クランパー21の先端面210に沿う方向に傾斜しやすくなり、第1の姿勢を取りやすくなる。つまり、製品クランパー21とワークレシーバ13でパッケージ83を損傷させることを抑止できる。
【0081】
〔4〕ランナーパンチ24によるランナー82の打ち抜き
上ブレイク盤2が鉛直方向に下降し、ランナーパンチ24がランナー82を押圧してランナー82を打ち抜く。これと同時に、クラックを境に、ゲート84からランナー82が分離する。同時に、カルプッシャー28が、カル81を下方へ押し下げるので、ランナー82とカル81は、排出口12を通って自重で落下する(
図1、
図5(b)参照)。
【0082】
このとき、分離したランナー82の先端部は、ランナー82を打ち抜く方向へ移動するが、パッケージ83の側面830が、ランナー82を打ち抜く方向に進むにつれてランナー82から離れるように、すなわちランナー82の先端部の移動軌跡から徐々に離れるように傾斜しているので、ランナー82の先端部がパッケージ83の側面830に接触せず、側面830が損傷することを抑止できる。
【0083】
〔5〕ワークレシーバ13と製品クランパー21によるパッケージ83の水平設定
各エアシリンダー130が作動し、各ワークレシーバ13の先端が案内孔112の中に入るまで下降する。これにより、各パッケージ83が各製品クランパー21に押されて底部110に接して水平状態に戻り、上記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢を取る(
図6(a)参照)。
【0084】
このとき、各パッケージガイド27も下降しており、各パッケージ83の垂直になった左右の側面830、831を挟むように、側面830、831との間に若干の間隙を設けて位置している。これにより、各パッケージガイド27によって、各パッケージ83の左右の位置決めが行われる。
【0085】
〔6〕ゲートパンチ26によるゲート84の除去
上ブレイク盤2が、製品クランパー21の付勢力に抗して鉛直方向に下降することで、各パッケージガイド27と共に各ゲートパンチ26も下降する。このとき、切断刃260はパッケージ83の右の側面830に沿って下降して、ゲート残部であるゲート84を打ち抜く(
図6(b)参照)。
【0086】
このとき、パッケージ83の右方の側面830と、各ゲートパンチ26を打ち抜く方向とが平行になるので、精度よくゲート84を打ち抜くことが可能になる。
【0087】
本発明に係るゲートブレイク装置Gの変形例を説明する。
本変形例では、パッケージ載置部11aの水平な底部110aに続き、左右に隣り合う他のパッケージ載置部(符号省略)の方向へ下り傾斜した角度設定面113が設けてある。角度設定面113は、後述する第1製品クランパー23及び第2製品クランパー23aと共に角度設定部を構成する。
【0088】
クランパーは、ゲート84側が第1製品クランパー23、ゲート84と反対側が第2製品クランパー23aである。第1製品クランパー23と第2製品クランパー23aは、製品クランパーガイド25に対して下方へ進退摺動可能、かつ所定の突出位置で停止するようにして収容されている。
【0089】
第1製品クランパー23と第2製品クランパー23aは、左右に並設され、それぞれバネ(図示省略)で下方へ付勢され、常態においては製品クランパーガイド25の先端から最大限突出して停止している(
図7(a)参照)。
【0090】
また、第1製品クランパー23と第2製品クランパー23aの突出長さは、右の第1製品クランパー23の方がやや長く設定されている。そして、第1製品クランパー23と第2製品クランパー23aを付勢するバネの付勢力は、左の第2製品クランパー23aの方をやや強く設定している。
【0091】
(作用)
ゲートブレイク装置Gの変形例の作用を説明する。なお、以下の説明では、上記ゲートブレイク装置Gと共通する部分について詳細な説明は一部省略し、主に異なる部分について説明する。
【0092】
〔1〕樹脂封止成形品8のセット
樹脂封止成形品8を保持台盤10に水平にセットする(
図7(a)参照)。
【0093】
〔2〕第1製品クランパー23によるパッケージ83の傾斜設定
上ブレイク盤2が下降し、長く突出している右の第1製品クランパー23の先端がパッケージ83の上面のゲート84側を押圧する。
【0094】
これにより、パッケージ83が下面を角度設定面113に沿わせて止まり、所定の角度で傾斜して、第1の姿勢を取る。同時に、ゲート84にクラックが形成される。なお、このとき、左のクランパー23aは、まだパッケージ83に触れていない(
図7(b)参照)。
【0095】
〔3〕ランナーパンチ24によるランナー82の打ち抜き
上ブレイク盤2が下降し、ランナーパンチ24がランナー82を押圧してランナー82を打ち抜く。これと同時にランナー82がクラックを境にゲート84から分離し、ランナー82とカル81は自重で落下する(
図8(a)参照)。このとき、ランナー82の先端はパッケージ83の側面830に接触しないので、側面830が損傷することを抑止できる。
【0096】
〔4〕第2製品クランパー23aによるパッケージ83の水平設定
上ブレイク盤2が下降し、第2製品クランパー23aの先端がパッケージ83の上面の左寄りを押圧し始める。このとき、右の第1製品クランパー23の付勢力の方が第2製品クランパー23aより弱いため、パッケージ83は左の方が下がり、水平に戻って第1の姿勢とは異なる第2の姿勢を取る(
図8(b)参照)。
【0097】
〔5〕ゲート84の除去
上ブレイク盤2が、第1製品クランパー23と第2製品クランパー23aの付勢力に抗して、更に下降し、ゲートパンチ26の切断刃260によってゲート残部(符号省略)が打ち抜かれる(想像線で図示:
図8(b)参照)。このとき、パッケージ83の側面830と、各ゲートパンチ26を打ち抜く方向とが平行になるので、精度よくゲート84を打ち抜くことが可能になり、側面830の損傷やゲート残部を抑止できる。
【0098】
なお、上記実施の形態及び変形例では、第1の姿勢がゲート84を下方向へ折り曲げる態様である場合を示したが、これに限定せず、例えば逆に上方向へ折り曲げる態様としてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態及び変形例では、第2の姿勢が水平である場合を示したが、これに限定せず、例えばゲートが繋がるパッケージの側面を打ち抜く方向と略平行とする等、その姿勢とすることによってパッケージに生じるゲート残部を好適に除去できれば、必ずしも水平でなくてもよい。
【0100】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
G ゲートブレイク装置
1 下ブレイク盤
10 保持台盤
11 パッケージ載置部
110 底部
111 壁部
112 案内孔
114 壁部
12 排出口
13 ワークレシーバ
130 エアシリンダー
14 ガイドピン
15 通し穴
2 上ブレイク盤
20 押圧盤
201 取付具
202 連結部材
21 製品クランパー
210 先端面
211 コイルバネ
22 製品クランパーガイド
24 ランナーパンチ
26 ゲートパンチ
260 切断刃
27 パッケージガイド
28 カルプッシャー
8 樹脂封止成形品
80 リードフレーム
81 カル
82 ランナー
83 パッケージ
830、831 側面
84 ゲート
89 切欠溝
11a パッケージ載置部
110a 底部
113 角度設定面
23 第1製品クランパー
23a 第2製品クランパー
25 製品クランパーガイド