(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置及び感光体クリーナーへのトナーの供給方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231205BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
(21)【出願番号】P 2019153135
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】村上 勇介
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212770(JP,A)
【文献】特開平05-341610(JP,A)
【文献】特開平02-044388(JP,A)
【文献】特開2004-109492(JP,A)
【文献】特開2014-119620(JP,A)
【文献】特開2007-047553(JP,A)
【文献】特開2019-133088(JP,A)
【文献】特開2003-215998(JP,A)
【文献】特開2003-241570(JP,A)
【文献】特開2011-081094(JP,A)
【文献】特開2003-029477(JP,A)
【文献】特開2002-156843(JP,A)
【文献】特開平10-177330(JP,A)
【文献】特開2004-093770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
転写部と、
前記感光体の表面に残留する残留トナーを除去する感光体クリーナーと、
前記感光体の表面にトナーパッチを形成するパッチ形成手段と、
を備え、
前記トナーパッチが前記転写部を通過するときに、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することにより、トナーパッチのトナーを前記感光体クリーナーに供給する画像形成装置において、
前記パッチ形成手段は、印刷される複数のシートにおける各紙間でトナーパッチを形成するとともに、形成するトナーパッチの量を
、紙間の前後のシートの基準位置間を回転する感光体回転距離に基づいて紙間毎に決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記感光体回転距離とは、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した距離であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
印字モードに基づいて今回のシートと次のシートのピッチを決定する決定手段を備え、
前記感光体回転距離とは、印字モードから決まるピッチに対して今回のシートの基準位置から次のシートの基準位置まで回転すると想定される距離であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準位置とは、シートの先端位置、シートの後端位置、パッチ形成開始位置、パッチ形成終了位置のいずれかであることを特徴とする、請求項
1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
今回のシート
の基準位置から次のシート
の基準位置まで回転した感光体回転距離から決まるトナーパッチ量に対して、前回のシート
の基準位置から今回のシート
の基準位置まで回転した感光体回転距離に基づきトナーパッチ量を補正することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナーパッチ量の補正とは、前回のシート
の基準位置から今回のシート
の基準位置まで回転した感光体回転距離から求まるトナーパッチ量に対して、前の紙間で形成したトナーパッチ量が不足している分を加算することである請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
基準距離に応じて供給する基準トナーパッチ量を有し、
前記パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量は、「感光体回転距離」と「基準距離」から求まる係数を「基準トナーパッチ量」に乗算することにより決定することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
基準トナーパッチ量は、環境、感光体の累積回転距離、色の少なくともいずれかから決定されることを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量は、トナーパッチの長さ、トナーパッチの濃度のうち少なくとも一方を用いてコントロールすることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
決定されたトナーパッチ量を今回の紙間で形成できない場合は、形成できない分を未実施トナーパッチ量として記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
決定したトナー量を今回の紙間で形成できない場合とは、少なくとも紙間の長さと、感光体速度、1次転写応答時間、パッチ形成手段の応答時間、から決まる紙間内で形成できる上限パッチ長よりも、決定したトナーパッチ長が長い場合であることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
決定したトナー量を今回の紙間で形成できない場合とは、感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナーパッチ量よりも、決定したトナーパッチ量が多い場合であることを特徴とする、請求項10または11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
決定したトナーパッチ量に対して、未実施パッチ量を加算してトナーパッチ量を再決定することを特徴とする、請求項10~12のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項14】
トナーパッチ量決定後に次用紙到達が遅くなるようなウェイト要因が発生した場合は、ウェイト要因の種類に応じて次用紙到達までのトナーパッチ量を切り替えることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
ウェイト時間が想定できるウェイト要因が発生した場合は、ウェイト時間で延長される感光体回転距離で必要なトナーパッチ量を加算してトナーパッチを形成することを特徴とする、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
画像形成部の立下げの際に未実施パッチ量がゼロでない場合は、最終画像の形成後に未実施パッチ量分のトナーパッチを形成することを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項17】
感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量よりも未実施パッチ量が多い場合は、感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量をトナーパッチとして形成し、形成できなかった分を未実施パッチ量として記憶しておくことを特徴とする、請求項10~16のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項18】
未実施パッチ量が所定以上になった場合は、紙間を通常の紙間よりも広げてプリントを行うことを特徴とする、請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
プリントが中断した場合は、決定しているトナーパッチ量のうち、まだ形成出来ていないトナーパッチ量を未実施パッチ長に加算することを特徴とする、請求項10~18のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項20】
未実施パッチ長は不揮発メモリに保存することを特徴とする、請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
感光体上にトナー像を形成するためにレーザーを照射するレーザー照射手段を備え、
パッチ形成手段は、レーザー照射手段によりレーザーを照射させることによりトナーパッチを形成することを特徴とする、請求項1~20のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項22】
パッチ形成手段で形成されたトナーパッチが、転写部を通過する際、転写部の電圧をトナーパッチが転写されないパッチ出力に制御することで、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することを特徴とする、請求項1~21のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項23】
パッチ形成手段は、画像間もしくは最終画像の下流の非画像部にトナーパッチを形成することを特徴とする、請求項1~22のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項24】
感光体と、
転写部と、
前記感光体の表面に残留する残留トナーを除去する感光体クリーナーと、
を備えた画像形成装置が、
印刷される複数のシートにおける各紙間でトナーパッチを形成するとともに、形成するトナーパッチの量を
、紙間の前後のシートの基準位置間を回転する感光体回転距離に基づいて紙間毎に決定するステップと、
決定された量のトナーパッチを前記感光体の表面に形成するステップと、
前記トナーパッチが前記転写部を通過するときに、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することにより、トナーパッチのトナーを前記感光体クリーナーに供給するステップと、
を実施することを特徴とする感光体クリーナーへのトナーの供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの機能を備えた多機能デジタル複合機であるMFP(Multi function Peripheral)等の画像形成装置、特に電子写真方式の画像形成装置、および感光体クリーナーへのトナーの供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体へトナーを付着して現像した後、シートとしての用紙へ転写し、その後、感光体の表面に残留する残留トナーを、感光体クリーナーに備えられた感光体ブレードによって掻き落として除去している。
【0003】
しかし、感光体ブレード上のトナーが少なくなってくると、ブレードが損傷したり、クリーニング性悪化による副走査方向の筋状の画像ノイズ(FD筋)が発生する、といった課題が発生する。
【0004】
そのため従来は、低カバレッジのプリントが所定枚数継続した時はプリントの立下げ時や像間で、感光体にトナーパッチを形成することにより、トナーに含まれる滑剤を感光体クリーナーに供給し上記課題を解決していた。
【0005】
近年、環境対応や画質向上のため画像形成装置のトナーのチタニアレス化や小径化を図る傾向があるが、チタニアレス化によるかぶりトナーの減少や、小径化による転写効率の向上により、感光体クリーナーへ到達するトナーが慢性的に不足してしまう。そのため用紙一枚毎にトナーパッチを感光体クリーナーに供給する必要が発生している。
【0006】
感光体クリーナーは、感光体の回転方向における転写部の下流に配置されているため、感光体に形成したトナーパッチを、転写部で用紙に転写されることなく確実に感光体クリーナーへ供給するための制御が必要となる。
【0007】
特許文献1には、紙間の長さ/1次転写の応答時間/感光体速度に基づいて、トナーパッチの長さを決定することで、その紙間内で形成できるだけのトナーパッチを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、感光体ブレードへ供給する必要があるトナー量は、用紙先端から次用紙先端までの感光体の回転距離で決まっており、特許文献1に記載の技術では、その時に形成できるトナーパッチ長の最大長を形成しているいるだけで、トナー量が不足しもしくは必要量以上のトナーを供給している可能性がある。またウェイト(待ち)要因(例えば画像処理遅れ、給紙口切り替え、クリーニング、定着温調など)が発生して想定よりも紙間が広がった場合も、その分の感光体回転距離に対応したトナー量を供給する必要があるが、画像処理や定着温調などのウェイト時間をあらかじめ予測することは難しく、適切なトナーパッチ量を形成出来ない。
【0010】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、ウェイト要因等が発生して紙間が想定よりも開いた場合でも、真に必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる画像形成装置、及び感光体クリーナーへのトナーの供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)感光体と、転写部と、前記感光体の表面に残留する残留トナーを除去する感光体クリーナーと、前記感光体の表面にトナーパッチを形成するパッチ形成手段と、を備え、前記トナーパッチが前記転写部を通過するときに、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することにより、トナーパッチのトナーを前記感光体クリーナーに供給する画像形成装置において、前記パッチ形成手段は、印刷される複数のシートにおける各紙間でトナーパッチを形成するとともに、形成するトナーパッチの量を、紙間の前後のシートの基準位置間を回転する感光体回転距離に基づいて紙間毎に決定することを特徴とする画像形成装置。
(2)前記感光体回転距離とは、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した距離であることを特徴とする、前項1に記載の画像形成装置。
(3)印字モードに基づいて今回のシートと次のシートのピッチを決定する決定手段を備え、前記感光体回転距離とは、印字モードから決まるピッチに対して今回のシートの基準位置から次のシートの基準位置まで回転すると想定される距離であることを特徴とする、前項1または2に記載の画像形成装置。
(4)前記基準位置とは、シートの先端位置、シートの後端位置、パッチ形成開始位置、パッチ形成終了位置のいずれかであることを特徴とする、前項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
(5)今回のシートの基準位置から次のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離から決まるトナーパッチ量に対して、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離に基づきトナーパッチ量を補正することを特徴とする、前項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
(6)トナーパッチ量の補正とは、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離から求まるトナーパッチ量に対して、前の紙間で形成したトナーパッチ量が不足している分を加算することである前項5に記載の画像形成装置。
(7)基準距離に応じて供給する基準トナーパッチ量を有し、前記パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量は、「感光体回転距離」と「基準距離」から求まる係数を「基準トナーパッチ量」に乗算することにより決定することを特徴とする、前項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
(8)基準トナーパッチ量は、環境、感光体の累積回転距離、色の少なくともいずれかから決定されることを特徴とする、前項7に記載の画像形成装置。
(9)前記パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量は、トナーパッチの長さ、トナーパッチの濃度のうち少なくとも一方を用いてコントロールすることを特徴とする、前項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
(10)決定されたトナーパッチ量を今回の紙間で形成できない場合は、形成できない分を未実施トナーパッチ量として記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする、前項1~9のいずれかに記載の画像形成装置。
(11)決定したトナー量を今回の紙間で形成できない場合とは、少なくとも紙間の長さと、感光体速度、1次転写応答時間、パッチ形成手段の応答時間、から決まる紙間内で形成できる上限パッチ長よりも、決定したトナーパッチ長が長い場合であることを特徴とする、前項10に記載の画像形成装置。
(12)決定したトナー量を今回の紙間で形成できない場合とは、感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナーパッチ量よりも、決定したトナーパッチ量が多い場合であることを特徴とする、前項10または11に記載の画像形成装置。
(13)決定したトナーパッチ量に対して、未実施パッチ量を加算してトナーパッチ量を再決定することを特徴とする、前項10~12のいずれかに記載の画像形成装置。
(14)トナーパッチ量決定後に次用紙到達が遅くなるようなウェイト要因が発生した場合は、ウェイト要因の種類に応じて次用紙到達までのトナーパッチ量を切り替えることを特徴とする、前項1~13のいずれかに記載の画像形成装置。
(15)ウェイト時間が想定できるウェイト要因が発生した場合は、ウェイト時間で延長される感光体回転距離で必要なトナーパッチ量を加算してトナーパッチを形成することを特徴とする、前項14に記載の画像形成装置。
(16)画像形成部の立下げの際に未実施パッチ量がゼロでない場合は、最終画像の形成後に未実施パッチ量分のトナーパッチを形成することを特徴とする、前項1~15のいずれかに記載の画像形成装置。
(17)感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量よりも未実施パッチ量が多い場合は、感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量をトナーパッチとして形成し、形成できなかった分を未実施パッチ量として記憶しておくことを特徴とする、前項10~16のいずれかに記載の画像形成装置。
(18)未実施パッチ量が所定以上になった場合は、紙間を通常の紙間よりも広げてプリントを行うことを特徴とする、前項17に記載の画像形成装置。
(19)プリントが中断した場合は、決定しているトナーパッチ量のうち、まだ形成出来ていないトナーパッチ量を未実施パッチ長に加算することを特徴とする、前項10~18のいずれかに記載の画像形成装置。
(20)未実施パッチ長は不揮発メモリに保存することを特徴とする、前項19に記載の画像形成装置。
(21)感光体上にトナー像を形成するためにレーザーを照射するレーザー照射手段を備え、パッチ形成手段は、レーザー照射手段によりレーザーを照射させることによりトナーパッチを形成することを特徴とする、前項1~20のいずれかに記載の画像形成装置。
(22)パッチ形成手段で形成されたトナーパッチが、転写部を通過する際、転写部の電圧をトナーパッチが転写されないパッチ出力に制御することで、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することを特徴とする、前項1~21のいずれかに記載の画像形成装置。
(23)パッチ形成手段は、画像間もしくは最終画像の下流の非画像部にトナーパッチを形成することを特徴とする、前項1~22のいずれかに記載の画像形成装置。
(24)感光体と、転写部と、前記感光体の表面に残留する残留トナーを除去する感光体クリーナーと、を備えた画像形成装置が、印刷される複数のシートにおける各紙間でトナーパッチを形成するとともに、形成するトナーパッチの量を、紙間の前後のシートの基準位置間を回転する感光体回転距離に基づいて紙間毎に決定するステップと、決定された量のトナーパッチを前記感光体の表面に形成するステップと、前記トナーパッチが前記転写部を通過するときに、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することにより、トナーパッチのトナーを前記感光体クリーナーに供給するステップと、を実施することを特徴とする感光体クリーナーへのトナーの供給方法。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、印刷される複数のシートにおける各紙間で形成されるトナーパッチが転写部を通過するときに、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することにより、トナーパッチのトナーを感光体クリーナーに供給する場合に、形成するトナーパッチの量を、紙間の前後のシートの基準位置間を回転する感光体回転距離に基づいて紙間毎に決定するから、ウェイト要因等が発生して紙間が想定よりも開いた場合でも、感光体回転距離に応じた最適な量のトナーパッチを形成でき、真に必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した距離に応じた最適な量のトナーパッチを形成できる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、印字モードから決まるピッチに対して今回のシートの基準位置から次のシートの基準位置まで回転すると想定される距離に応じた最適な量のトナーパッチを形成できる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、基準位置は、シートの先端位置、シートの後端位置、パッチ形成開始位置、パッチ形成終了位置のいずれかであるから、基準位置を明確に規定できる。
【0016】
前項(5)に記載の発明によれば、今回のシートの基準位置から次のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離から決まるトナーパッチ量に対して、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離に基づきトナーパッチ量を補正するから、今回のシートから次のシートまでの距離から決まるトナーパッチ量を、感光体クリーナーに確実に供給できる。
【0017】
前項(6)に記載の発明によれば、前回のシートの基準位置から今回のシートの基準位置まで回転した感光体回転距離から求まるトナーパッチ量に対して、前の紙間で形成したトナーパッチ量が不足している分を加算することで、補正が行われる。
【0018】
前項(7)に記載の発明によれば、パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量を、「感光体回転距離」と「基準距離」から求まる係数を「基準トナーパッチ量」に乗算することにより、容易に決定することができる。
【0019】
前項(8)に記載の発明によれば、基準トナーパッチ量は、環境、感光体の累積回転距離、色の少なくともいずれかから決定される。
【0020】
前項(9)に記載の発明によれば、パッチ形成手段で形成されるトナーパッチ量を、トナーパッチの長さ、トナーパッチの濃度のうち少なくとも一方を用いてコントロールすることができる。
【0021】
前項(10)に記載の発明によれば、決定されたトナーパッチ量を今回の紙間で形成できない場合は、形成できない分を未実施トナーパッチ量として記憶するから、後で未実施量のトナーパッチを形成でき、必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【0022】
前項(11)に記載の発明によれば、少なくとも紙間の長さと、感光体速度、1次転応答時間、パッチ形成手段の応答時間、から決まる紙間内で形成できる上限パッチ長よりも、決定したトナーパッチ長が長い場合は、今回の紙間で形成できない分が未実施トナーパッチ量として記憶される。
【0023】
前項(12)に記載の発明によれば、感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナーパッチ量よりも、決定したトナーパッチ量が多い場合は、今回の紙間で形成できない分が未実施トナーパッチ量として記憶される。
【0024】
前項(13)に記載の発明によれば、決定したトナーパッチ量に対して、未実施パッチ量を加算してトナーパッチ量を再決定するから、必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【0025】
前項(14)に記載の発明によれば、トナーパッチ量決定後に次用紙到達が遅くなるようなウェイト要因が発生しても、ウェイト要因の種類に応じて次用紙到達までのトナーパッチ量を切り替えるから、必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【0026】
前項(15)に記載の発明によれば、ウェイト時間が想定できるウェイト要因が発生した場合は、ウェイト時間で延長される感光体回転距離で必要なトナーパッチ量を加算してトナーパッチが形成される。
【0027】
前項(16)に記載の発明によれば、画像形成部の立下げの際に未実施パッチ量がゼロでない場合は、最終画像の形成後に未実施パッチ量分のトナーパッチを形成するから、必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【0028】
前項(17)に記載の発明によれば、感光体クリーナーにおける感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量よりも未実施パッチ量が多い場合は、感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回あたりに形成できるトナー量をトナーパッチとして形成し、形成できなかった分を未実施パッチ量として記憶しておくから、形成できなかった分を未実施パッチ量を後で形成することができ、必要なトナーパッチ量を感光体クリーナーに供給することができる。
【0029】
前項(18)に記載の発明によれば、未実施パッチ量が所定以上になった場合は、紙間を通常の紙間よりも広げてプリントを行うから、未実施パッチ量のトナーパッチを形成することが可能となる。
【0030】
前項(19)に記載の発明によれば、プリントが中断した場合は、決定しているトナーパッチ量のうち、まだ形成出来ていないトナーパッチ量が未実施パッチ長に加算される。
【0031】
前項(20)に記載の発明によれば、未実施パッチ長は不揮発メモリに保存されるから、未実施パッチ長が存在するまま画像形成装置の電源がオフになっても、その後にオンになった後で、未実施パッチ長を形成することができる。
【0032】
前項(21)に記載の発明によれば、レーザー光の照射によってトナーパッチが形成される。
【0033】
前項(22)に記載の発明によれば、パッチ形成手段で形成されたトナーパッチが、転写部を通過する際、転写部の電圧をトナーパッチが転写されないパッチ出力に制御することで、トナーパッチの転写を阻止してトナーパッチを感光体の表面に保持することができる。
【0034】
前項(23)に記載の発明によれば、画像間もしくは最終画像の下流の非画像部にトナーパッチが形成される。
【0035】
前項(24)に記載の発明によれば、ウェイト要因等が発生して紙間が想定よりも開いた場合でも、感光体回転距離に応じた最適な量のトナーパッチを形成でき、真に必要なトナー量を確実に感光体クリーナーに供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】画像形成装置の印字制御に関する電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】各感光体ドラムの周辺の構成を拡大して模式的に示す図である。
【
図5】レーザー光の照射により露光することによりトナーパッチを形成する場合のタイミングチャートである。
【
図6】かぶりマージンを切り替えることによりトナーパッチを形成する場合のタイミングチャートである。
【
図7】トナー画像間の領域において、現像バイアスを印字出力からパッチ出力に切り替えることで、かぶりマージンを切り替え、トナー画像間にトナーパッチを形成するときのタイミングチャートである。
【
図8】中間転写ベルトを感光体ドラムから離間させて、トナーパッチの中間転写ベルトへの転写を阻止する場合を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】複数のトナー画像を順に感光体ドラムの表面に形成する場合のタイミングチャートである。
【
図10】環境と色に応じて基準トナーパッチ量を決定するテーブルの一例を示す図である。
【
図11】環境と感光体ドラムの累積駆動距離に応じて、感光体ブレードのクリーニング性能から求まる1回に形成できるトナーパッチ量の上限を決定するテーブルの一例を示す図である。
【
図12】片面ピッチの決定テーブル例を示す図である。
【
図13】フィニッシャ(FNS)ピッチの説明図である。
【
図14】両面1周ピッチ決定テーブルの例を示す図である。
【
図15】(A)~(C)は両面1周起因ピッチの説明図である。
【
図16】ウェイト時間が想定できるウェイトが発生した場合のトナーパッチ量の決定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図17】ウェイト時間が想定できないウェイトが発生した場合のトナーパッチ量の決定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図18】画像形成後に立下げが入ることが事前にわかっている場合のトナーパッチ量の決定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図19】画像形成後に立下げが入ることが事前にわからない場合のトナーパッチ量の決定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【
図20】PPM制御を実施する未実施パッチ量の閾値を、環境と感光体ドラムの累積駆動距離に応じて変更したテーブルを示す図である。
【
図21】生産性を落とす割合が例示されたPPM決定テーブルを示す図である。
【
図22】感光体ドラムへのトナーパッチの形成処理を含むプリントジョブを画像形成装置が実行する際の動作を示すフローチャートである。
【
図23】
図22のステップS3のトナーパッチ量算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図22のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図25】
図22のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理の他の処理例を示すフローチャートである。
【
図26】
図22のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理のさらに他の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図である。この例では、画像形成装置1として多機能デジタル複合機である前述のMFPが用いられている。
【0039】
図1において、この画像形成装置1は、装置本体1Aの下部に給紙部20が、中央部に画像形成部10が、上部に自動原稿送り装置を備えた原稿を読み取るための画像読取装置90が、画像読取装置90の下方に排紙部60が、それぞれ配置されて構成されている。給紙部20から排紙部60に渡っては給紙部20から繰り出されたシートとしての用紙Pを上方へ搬送する媒体搬送路22が形成されている。
【0040】
画像形成部10は、装置本体1Aの上下方向の略中央に配置された駆動ローラ16及び従動ローラ15と、これら駆動および従動ローラ16,15間に水平に掛設されて矢印方向へ走行する中間転写ベルト14と、この走行方向に沿って配置されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の作像ユニットである感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kとを備えている。
【0041】
各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kで作成されたトナー画像を重ね合わせて転写ベルト14に転写し、媒体搬送路22を搬送されてくる用紙Pに対して転写ベルト14の搬送端(図中右端)で転写ローラ(転送手段に相当)17により2次転写を行い、用紙Sを定着ユニット30に送給してトナー画像の定着を行うようになっている。
【0042】
定着ユニット30はこの実施形態では、図示しないヒーターを備えた加熱ローラ31と、この加熱ローラ31に接触状態で配置された加圧ローラ32を備えており、加熱ローラ31と加圧ローラ32の間に形成されたニップ部に用紙Pを通過させて加熱加圧し、用紙Pにトナー像を定着させるようになっている。
【0043】
各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kは、静電複写方式により作像するもので、それらの周囲に配設された帯電器と、現像器11Y,11M,11C,11Kと、感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kと、転写器等とを備えている。また、4個のレーザーダイオード、ポリゴンミラー、および走査レンズ等を有するプリントヘッド41ならびに4つの反射ミラー42等を備えた露光部40の各レーザーダイオードにより、帯電器により帯電された各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kの表面が露光され、該表面に静電潜像が形成されるようになっている。
【0044】
また、各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kの現像器11Y,11M,11C,11Kにトナーを補給する補給機構として、トナーカートリッジ70Y,70M,70C,70Kおよびサブホッパ80Y,80M,80C,80Kが前記感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kの上方位置に配置されている。
【0045】
なお、
図1中、符号50はキー部や表示部を備えた操作パネル部である。
【0046】
給紙部20は1段又は複数段(
図1の例では2段)の給紙カセット21を備えており、印刷時には、各給紙カセット21に収容された用紙Pを引き出し、搬送路22に沿って設けられた1組あるいは複数組の搬送ローラによって2次転写ローラ17による2次転写位置まで搬送するようになっている。なお、画像形成装置1には手差しトレイが備えられていても良い。
【0047】
図2は、画像形成装置1の印字制御に関する電気的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、MFPコントローラ100、エンジン制御部110、前述した露光部40、高圧部120、イレーサ部130等を備えている。
【0048】
MFPコントローラ100は、MFP1の全体を統括的に制御するものであり、エンジン制御部110は、MFPコントローラ100と協働しながら印刷エンジンである露光部40、高圧部120、イレーサ部130を制御するものであり、制御処理を行うエンジン制御CPU111や、図示は省略したが、エンジン制御CPU111の動作プログラム等が格納されたROM、エンジン制御CPU111が動作する際の作業領域となるRAM等を備えている。
【0049】
露光部40は、前述したように、帯電器により帯電された各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kの表面を露光し、該表面に静電潜像を形成するためのものであり、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kを露光するレーザー41を備えている。
【0050】
高圧部120は、感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kに高電圧を印加するブロックであり、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kを帯電するための帯電器を含む帯電部121、露光された各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kを現像するための現像器11Y,11M,11C,11Kを含む現像部122、現像された各感光体ドラム13Y,13M,13C,13K上のトナー像を中間転写ベルト14に転写するための転写器を含む転写部123を備えている。帯電部121、現像部122、転写部123の各電圧は前述のエンジン制御部110によって制御される。
【0051】
イレーサ部130は、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kの表面を除電する。
【0052】
なお、露光部40のレーザー41、高圧部120の帯電部121、現像部122、転写部123およびイレーサ部130は、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13K毎に備えられているが、一括して各符号で示す。
【0053】
図3は、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kの周辺の構成を拡大して模式的に示す図である。なお、特に区別する必要がある場合を除き、各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kを一括して感光体ドラム13とするが、いずれの感光体ドラム13においても同じ構成である。
【0054】
感光体ドラム13は矢印で示す時計方向に回転するが、感光体ドラム13の周辺には回転上流側から、帯電部121、レーザー41を有する露光部40、現像部122、転写部123、イレーサ部130、感光体クリーナー(以下、単にクリーナーとも記す)200がそれぞれ配置されている。転写部123は、中間転写ベルト14を挟んで感光体ドラム13に対向して配置されている。
【0055】
クリーナー200は感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去する役割を果たし、感光体ドラム13の表面の残留トナーを掻き取る感光体ブレード201を備えている。この感光体ブレード201へのトナー供給が少なくなってくると、ブレードが損傷したり、クリーニング性悪化による副走査方向の筋状の画像ノイズ(FD筋)が発生する。
【0056】
そこで、印刷時の紙間つまり用紙と次の用紙との間において、感光体ブレード201へトナーを供給するためのトナーパッチを感光体ドラム13に形成するが、この実施形態では、所定期間に駆動した感光体ドラム13の回転距離に基づいて、トナーパッチの量を決定し、決定された量のトナーパッチを形成して、感光体ブレード201にトナーを供給できるように制御している。このような制御について、以下に説明する。
[トナーパッチの形成方法]
まず、各用紙に転写されるトナー画像間(像間)において、感光体ドラム13にトナーパッチを形成する方法について説明する。
【0057】
図4はトナーパッチのイメージ図であり、縦軸は主走査幅、横軸は時間を示す。感光体ドラム13の表面には、用紙に転写されるトナー画像が、所定間隔で順次形成されていき、トナー画像と次のトナー画像との間の位置、換言すれば用紙と次の用紙の間(紙間)において、主走査方向の全幅にわたってトナーパッチTPが形成される。
【0058】
感光体ドラム13の表面へのトナーパッチTPの形成方法の一つとして、レーザー41からのレーザー光の照射により露光する方法を挙げることができる。この場合のタイミングチャートを
図5に示す。
【0059】
プリント時にトナー画像を作成するためにレーザー41が駆動されるが、像間のトナーパッチ形成位置においても、エンジン制御部110によりレーザー41がエンジン制御部110により駆動され、レーザー光が強制発光される。トナーパッチTPの形成のためのレーザー発光は、MFPコントローラ100からの画像情報に基づく発光であってもよい。
【0060】
一方、転写部123の電圧である一次転写バイアスは、トナー画像の形成領域では印字出力となって、トナー画像を中間転写ベルト14に一次転写する。トナーパッチ形成領域では、一次転写バイアスは、形成したトナーパッチTPが中間転写ベルト14に転写されない電圧であるバッチ出力に切り替えられる。
図5の例では、パッチ出力は電圧遮断(OFF)に設定されているが、印字出力よりも絶対値として低いか、トナーと同じバイアスのいずれかであっても良い。一次転写バイアスがパッチ出力に切り替えられることで、トナーパッチTPが転写部123を通過しても、トナーパッチは中間転写ベルト14に転写されることはなく、そのまま感光体クリーナー200の感光体ブレード201に供給される。
【0061】
感光体ドラム13の表面へのトナーパッチTPの形成方法の他の一つとして、かぶりマージンを切り替える方法を挙げることができる。この場合のタイミングチャートを
図6に示す。
【0062】
かぶりマージンを切り替えるには、現像部122の現像バイアスと帯電部121の帯電バイアスの差分を切り替える。
図6の例では、トナー画像間の領域において、帯電バイアスを印字出力からパッチ出力に切り替えることで、現像バイアスとの間に差分を生じさせ、トナー画像間にトナーパッチTPを形成する。一次転写バイアスは、
図5と同様に、トナーパッチ形成領域において、形成したトナーパッチTPが中間転写ベルト14に転写されない電圧であるバッチ出力に切り替えられる。これにより、トナーパッチが転写部123を通過しても、トナーパッチは中間転写ベルト14に転写されることはなく、そのまま感光体クリーナー200の感光体ブレード201に供給される。
【0063】
図7は、トナー画像間の領域において、現像バイアスを印字出力からパッチ出力に切り替えることで、かぶりマージンを切り替え、トナー画像間にトナーパッチTPを形成するときのタイミングチャートである。この場合も、一次転写バイアスは、
図5と同様に、トナーパッチ形成領域において、形成したトナーパッチTPが中間転写ベルト14に転写されない電圧であるバッチ出力に切り替えられる。
【0064】
図8は、中間転写ベルト14が感光体ドラム13に対して接離可能に構成されている場合に、一次転写バイアスの切り替えではなく、中間転写ベルト14を感光体ドラム13から離間させて、トナーパッチTPの中間転写ベルト14への転写を阻止する場合を説明するためのタイミングチャートである。
【0065】
すなわち、トナー画像については、中間転写ベルト14を感光体ドラム13に圧接させて、トナー画像を中間転写ベルト14へ転写させる。しかし、トナーパッチTPについては、中間転写ベルト14を感光体ドラム13から離間させ、トナーパッチTPの中間転写ベルト14への転写を阻止する。これにより、トナーパッチTPが転写部123を通過しても、トナーパッチTPは中間転写ベルト14に転写されることはなく、そのまま感光体クリーナー200の感光体ブレード201に供給される。なお、
図8では、かぶりマージンの切り替えによりトナーパッチを形成している。
[トナーパッチ量の決定]
次に、トナー画像間に形成するトナーパッチ量の決定方法について、
図9を参照して説明する。
図9は中間転写ベルト14に一時転写された後、用紙に二次転写される複数のトナー画像(図では単に画像と記している)を、順に感光体ドラム13の表面に形成する場合のタイミングチャートを示している。
【0066】
図9(A)は、前後のトナー画像間(紙間)の実際のピッチが想定ピッチとほぼ同じ状態である場合である。通常はこのピッチが確保されている。想定ピッチは、エンジン制御部110による想定ピッチ算出制御にて決定される。
【0067】
図9(B)は、像間制御、定着、搬送、画像処理遅れなどによるウェイトが発生し、前後のトナー画像間の実際のピッチが、想定ピッチとウェイト部分の合計となっており、通常のピッチよりも長くなっている状態である。
【0068】
各トナー画像の後にトナーパッチを形成する。なお、以下の説明では、トナーパッチを便宜的にトナーパッチの副走査方向の長さであるパッチ長で評価するが、「上限パッチ長」以外はパッチ量(=パッチ長×パッチ濃度)で評価しても同じであり、パッチ長はパッチ量と置き換えられる。
(1)必要パッチ長(図では単にパッチ長と記している)aについて
次用紙との想定ピッチからこの紙の後に形成すべき必要パッチ長aを決定する。たとえば、基準用紙(例;A4横(A4Y))のピッチで必要となる基準パッチ長を基準に、パッチ長を以下の式から決定する。
必要パッチ長a=基準パッチ長×想定ピッチ/基準用紙のピッチ
また、基準距離(例:1mm)で必要となる基準パッチ長を基準に、パッチ長を以下の式で決定しても良い。
必要パッチ長a=基準パッチ長×想定ピッチ/基準距離
(2)上限パッチ長(図では単に上限と記している)bについて
次用紙との想定ピッチからこの紙の後方に形成できるパッチ長の上限を決定する。上限パッチ長bは想定ピッチ、用紙の副走査方向の長さである用紙FD長、一時転写バイアス、現像バイアス、帯電バイアス等のHV(高電圧)切り替え応答時間、感光体周速から以下の式で計算する。
紙間=想定ピッチ-用紙FD長
上限パッチ長b=紙間-(HV切り替え時間×感光体周速)
(3)不足パッチ長cについて
図9(B)のように、前後のトナー画像間の実際のピッチが通常のピッチよりも長くなると、その分、感光体ドラム13の回転距離が長くなる。この実施形態では、回転距離に応じてトナーパッチ量を変更し、回転距離が長くなるほどトナーパッチ量を大きくしている。
図9(B)のピッチが長くなった分のトナーピッチを、
図9(C)に示す次のピッチで追加補正している。
【0069】
つまり、前用紙でトナーパッチを形成した際の感光体累積回転距離と現在の感光体累積回転距離の差分から、実際に前用紙で必要だったパッチ長を以下の式により求める。なお、感光体ドラム13の回転距離は、前回用紙の基準位置から今回用紙の基準位置まで回転した距離であり、基準位置としては、用紙の先端位置、用紙の後端位置、パッチ形成開始位置、パッチ形成終了位置のいずれかを挙げることができる。感光体累積回転距離は回転距離の累積値である。
実際に必要だったパッチ長=基準パッチ長×感光体回転距離差分/基準距離
なお、上式において、「基準距離」ではなく、(1)必要パッチ長aについての項目でも説明したような「基準用紙のピッチ」を用いて計算しても良い。そして、以下の式から不足パッチ長を求める。
不足パッチ長c=実際に必要だったパッチ長-前回形成したパッチ長
(4)実パッチ長hについて
図9(C)の領域では、必要パッチ長aと不足パッチ長cを形成するが、必要パッチ長aと不足パッチ長cの合計が上限パッチ長bを超える場合がある。この場合は、上限パッチ長bを超える部分は、
図9(D)のように、未実施パッチ長dとして次用紙以降に形成されることになる。
【0070】
このように、必要パッチ長aと上限パッチ長bと不足パッチ長cと未実施パッチ長dから実際に打つ実パッチ長hを決定する。
(I)まず、上限パッチ長b≧必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d、の場合ついて説明する。
【0071】
感光体ブレード201のクリーニング性能から決まるパッチ量の上限をLpmaxとする。
◇Lpmax ≧必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d、の場合は、
実パッチ長h=必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d
であり、未実施パッチ長d=0となる。
◇Lpmax <必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d、の場合は、
実パッチ長h=Lpmax
であり、
未実施パッチ長d=必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d-Lpmax
となる。
(II)次に、上限パッチ長b<必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d、の場合について説明する。
◇Lpmax ≧上限パッチ長b、の場合は、
実パッチ長h=上限パッチ長b
であり、
未実施パッチ長d=(必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d)-上限パッチ長b
となる。
◇Lpmax <上限パッチ長b、の場合は、
実パッチ長h=Lpmax
であり、
未実施パッチ長d=必要パッチ長a+不足パッチ長c+未実施パッチ長d-Lpmax
となる。
【0072】
上記で求めた未実施パッチ長dは不揮発メモリに記憶する。そうすることで、プリント中に電源がOFFされた場合も、次回のプリントで不足しているトナーパッチを形成することが出来る。
【0073】
また、上記計算をした後に、用紙ジャムやトラブル等でトナーパッチを形成出来なかった場合は、実パッチ長hを未実施パッチ長dに加算する。そうすることで、次回のプリントで不足しているトナーパッチを形成することが出来る。
【0074】
次に、基準トナーパッチ量の決定方法について説明する。
【0075】
基準トナーパッチ量は、環境、感光体ドラム13の累積駆動距離、色の少なくともいずれかを考慮して決定する。副走査方向の筋(FD筋)が発生しやすい環境では多めにトナー供給を行う。
【0076】
図10に、環境と色に応じて基準トナーパッチ量を決定するテーブルの一例を示す。
図10に示す環境ステップは、温度及び湿度が高くなるほどステップ数が大きくなり、温度及び湿度が低くなるほどステップ数が小さくなっている。
図11及び
図20のテーブルにおいても同様である。
【0077】
図10の例では、各色ともに、環境ステップが1から増加するにつれて、基準トナーパッチ量は減少している。このような基準トナーパッチ量から、必要パッチ長(a)の計算に必要な基準パッチ長を換算する。なお、環境、感光体ドラム13の累積回転距離、色にかかわらず、基準トナーパッチ量を固定値としても良い。
【0078】
次に、感光体ブレード201のクリーニング性能から求まる1回に形成できるトナーパッチ量の上限(Lpmax)について説明する。
【0079】
1回に形成できるトナーパッチ量の上限は、環境、感光体ドラム13の累積回転距離、色、直近のプリント画像のカバレッジ、の少なくともいずれかを考慮して決定する。感光体ブレード201のクリーニング性能が落ちて、すり抜けやめくれが発生する可能性が高い場合は少なめに設定する。
【0080】
図11に、環境と感光体ドラム13の累積回転距離に応じて、感光体ブレード201のクリーニング性能から求まる1回に形成できるトナーパッチ量の上限を決定するテーブルの一例を示す。
図11の例では、感光体ドラム13の累積回転距離が同じであれば、環境ステップが1から増加するにつれて、基準トナーパッチ量は減少し、環境ステップが同じであれば、感光体ドラム13の累積回転距離が増えるにつれて、基準トナーパッチ量は減少している。なお、環境、感光体ドラム13の累積回転距離、色、直近のプリント画像のカバレッジにかかわらず、トナーパッチ量の上限を固定値としても良い。
【0081】
次に、供給するトナーパッチ量からパッチ長とトナー濃度への変換について説明する。
【0082】
以下の基本式をもとに、トナーパッチ長やトナー濃度を変更することで必要なトナーパッチ長をコントロールする。
トナーパッチ量[g] = トナーパッチ長[mm] × トナー濃度[g/mm2]
トナー濃度を固定値にして、トナーパッチ長のみでコントロールしても良いし、あるいは、トナーパッチ長を固定値にして、トナー濃度のみでコントロールをしても問題ない。
【0083】
次に、想定ピッチの算出制御について説明する。
【0084】
次用紙との片面起因ピッチ、フィニッシャ(FNS)ピッチ、両面1周起因ピッチのうち最も大きいピッチを想定ピッチとする。
(1)片面起因ピッチ
印字モードから決定する片面ピッチに対してPPMを考慮し、以下の式で決定する。
片面起因ピッチ=印字モード(カラーモード/用紙FD長/速度/給紙口)から決定される片面ピッチ÷PPM
ここで、PPMは定着やトナー要因で一律生産性を落とす制御であり、単位は%である。片面ピッチの決定テーブル例を
図12に示す。
図12の例では、FD方向の用紙サイズが同じであれば、速度が遅くなるほど片面起因ピッチは大きくなり、速度が同じであれば、FD方向の用紙サイズが大きくなるほど片面起因ピッチは大きくなっている。
(2)フィニッシャ(FNS)ピッチ
図13に示すように、次用紙が、後処理を行うフィニッシャへ排出される場合にのみ、以下の式で計算する。それ以外は0とする。
フィニッシャ(FNS)ピッチ=FNSウェイト時間-前用紙ピッチ
前用紙ピッチは、前FNS用紙と自用紙のピッチである。また、FNSウェイト時間は、後処理を実施するのに必要な時間に基づいて決定する。後処理には、ステープル、パンチ、折り、製本等がある。
(3)両面1周起因ピッチ
両面1周起因ピッチは、次用紙と対となる表面の用紙の両面1周ピッチから自用紙までのピッチを合算して引いたものである。次用紙が裏面用紙の場合のみ計算し、それ以外は0とする。
【0085】
両面1周ピッチは印字モード(カラーモード/用紙FD長/速度/給紙口/内蔵枚数)から決定する。両面1周ピッチの例を
図14に示す。
【0086】
図15(A)のように、n枚目用紙(表)の次にn枚目用紙(裏)を印字する1枚内蔵の場合は、両面1周起因ピッチは両面1周ピッチとなる。
【0087】
図15(B)のように、n枚目用紙(表)、n-1枚目用紙(裏)とn+1枚目用紙(表)(自用紙)、n枚目用紙(裏)と、2枚内蔵交互に印字する場合、両面1周起因ピッチは、両面1周ピッチから自用紙までの2つのピッチを差し引いた値となる。
【0088】
図15(C)のように、n枚目用紙(表)、n-2枚目用紙(裏)、n+1枚目用紙(表)、n-1枚目用紙(裏)、n+2枚目用紙(表)(自用紙)、n枚目用紙(裏)と、3枚内蔵交互に印字する場合、両面1周起因ピッチは、両面1周ピッチから自用紙までの4つのピッチを差し引いた値となる。
【0089】
なお、求めた結果が負の値になった場合(3枚内蔵の場合)は、両面1周起因ピッチは0とする。
【0090】
このように、この実施形態では、形成するトナーパッチの量を所定期間に駆動した感光体ドラム13の回転距離に基づいて決定するから、ウェイト要因等が発生して紙間が想定よりも開いた場合でも、その分必要となる量のトナーパッチが追加して形成される。このため、感光体回転距離に応じた最適な量のトナーパッチを形成でき、真に必要なトナー量を確実に感光体クリーナー200の感光体ブレード201に供給できる。
【0091】
しかも、前回用紙から今回用紙までの距離に基づき決定される必要なトナーパッチ量を、前回用紙から今回用紙までの間に形成できず、不足パッチ量や未実施パッチ量が生じた場合は、今回用紙から次用紙までの距離から決まるトナーパッチ量に、前回の不足パッチ量を加算して補正し、あるいはさらにその次の用紙の後で補正されるから、総合的に観た場合、トナー量を不足無く感光体クリーナー200の感光体ブレード201に供給できる。
[ウェイト時間が想定できるウェイトが発生した場合のトナーパッチ量の決定]
ウェイト時間が想定できるウェイトが発生した場合は、ウェイト時間で延長される感光体回転距離に合わせてウェイトパッチ量を算出し、形成するトナーパッチ量に加算する。ウェイト時間が想定できるウェイトの例としては、カラーモード切替、給紙口切り替え、2次転写クリーニング、定着器の加熱部と加圧部の圧離ウェイト等がある。想定できるウェイト時間にばらつきがある場合は、最低限想定されるウェイト時間からウェイトパッチ量を求める。
【0092】
図16(A)に示すように、想定ピッチに対する必要パッチ長aと、前回の紙間で不足していた不足パッチ長cや未実施パッチ長dのほか、ウェイト時間に対応するウェイトパッチ長fを形成する。すなわち、形成されるトナーパッチ長は、
トナーパッチ長=必要ピッチ長a+前回不足パッチ長c+未実施パッチ長d+ウェイトパッチ長f
となる。
【0093】
ウェイトパッチ長fは、ウェイト時間で延長される感光体ドラム13の回転距離に相当するトナーパッチ量であり、
図9の必要パッチ長aの計算と同様に、
ウェイトパッチ長f=基準パッチ長×ウェイト時間に相当するピッチ/基準用紙のピッチ、
または
ウェイトパッチ長f=基準パッチ長×ウェイト時間に相当するピッチ/基準距離
で計算すれば良い。
【0094】
次画像形成時に前画像形成時からの感光体回転距離を算出し、ウェイト時間が想定よりも長かった場合は、
図16(B)に示すように、次画像の後に形成するトナーパッチに不足パッチ長cとして加算する。
【0095】
このように、ウェイト時間が想定できるウェイトが発生しても、その距離に応じた量のウェイトパッチ長fが形成され、真に必要なトナー量が感光体ブレード201に供給される。
[ウェイト時間が想定できないウェイトが発生した場合のトナーパッチ量の決定]
ウェイト時間が想定できないウェイトが発生した場合は、
図17(A)に示すように、ウェイトが所定時間経過ごとに、その際の感光体回転距離に相当するウェイトパッチ長fを形成する。ウェイト時間が想定できないウェイトとしては、画像準備待ちウェイトなどがある。
【0096】
形成するウェイトパッチ長fは、
ウェイトパッチ長f=基準パッチ長×所定時間に相当するピッチ/基準用紙のピッチ、
または
ウェイトパッチ長f=基準パッチ長×所定時間に相当するピッチ/基準距離
で計算すれば良い。
【0097】
次画像形成時に前画像形成時からの感光体ドラム13の回転距離を算出し、形成した総パッチ量と実際に必要だったパッチ量の差分を、
図17(B)に示すように、次画像の後に形成するトナーパッチに不足パッチ長cとして加算する。
【0098】
このように、ウェイト時間が想定できないウェイトが発生しても、所定距離毎にトナーパッチが形成されるから、必要なトナー量を感光体ブレード201に供給することができる。
[動作終了時のトナーパッチ形成]
プリントジョブの終了等による画像形成部の立下げの際に、未実施パッチが残っている場合は、未実施パッチとして記憶している量のトナーパッチを最終画像の形成後に形成する。画像形成部の立下げは、画像が二次転写ローラ17を超えたタイミングで、感光体ドラム13に画像が存在しないときに行われる。具体的には、ジョブ終了の場合、次用紙と次用紙の速度が異なる場合、次用紙と次用紙の解像度が異なる場合等に行われる。
【0099】
ジョブの終了による場合は、次のジョブがいつ投入されるかわからないため、立下げが入ることは事前にわからない。次用紙と次用紙の速度が異なる場合や、次用紙と次用紙の解像度が異なる場合は、立下げが入ることは事前にわかる。
【0100】
画像形成後に立下げが入ることが事前にわかっている場合は、
図18に示すように、立下げ前の最終画像の後に形成する通常の必要パッチ長aに未実施パッチdを加算する。
【0101】
一方、画像形成後に立下げが入ることが事前にわからない場合は、
図19に示すように、立下げ前の最終画像の後に形成する通常の必要パッチ長aの形成後の立下げ開始時に、未実施パッチdを形成する。
【0102】
このように、画像形成部の立下げの際の未実施パッチに応じて、トナーパッチが形成されるから、不足していたトナー文を感光体ブレード201に供給することができる。
[PPM制御の実施]
未実施パッチが所定量たまった場合はPPM制御を実施する。前述したように、PPM制御とは、通常の生産性に対して所定の割合生産性を落とす制御のことである。たとえば、通常生産性が100枚/分の場合、PPM制御で90%にした場合は90枚/分となる。これにより紙間を一律に広げ、1画像当たりに感光体ブレード201に供給できるパッチ量を増やすことができ、未実施パッチを少しずつ解消することができる。
【0103】
PPM制御を実施する未実施パッチ量は、環境、感光体ドラム13の累積回転距離、色、直近のカバレッジの少なくともいずれかに応じてその閾値を変更する。感光体ブレード201上のトナーが少ないと想定される場合や、FD筋が発生しやすい環境では早めにPPM制御を実施する。
【0104】
図20に、PPM制御を実施する未実施パッチ量の閾値を、環境と感光体ドラム13の累積回転距離に応じて変更した例を示す。
図19では、環境ステップが大きいほど、また感光体ドラム13の累積回転距離が大きいほど、閾値は小さい値に設定されている。なお、閾値は、環境、感光体ドラム13の累積回転距離、色、直近のカバレッジにかかわらず、固定値に設定しても良い。
【0105】
また、PPM制御において、生産性を落とす割合は未実施パッチ量の残量に応じて決定するのが良い。未実施パッチが大量にたまっている最中はFD筋が発生するリスクが高いため多めに生産性を落とす。
【0106】
図21に、生産性を落とす割合が例示されたPPM決定テーブルを示す。生産性を落とす割合は、未実施パッチ量にかかわらず固定値に設定しても良い。
[フローチャート]
図22は、感光体ドラム13へのトナーパッチTPの形成処理を含むプリントジョブを画像形成装置1が実行する際の動作を示すフローチャートである。
【0107】
ステップS1では、プリントの開始かどうかを判断し、開始でなければ(ステップS1でNO)、ステップS1にとどまりプリントの開始を待つ。
【0108】
プリントの開始であれば(ステップS1でYES)、ステップS2で、トナーパッチ形成タイミングかどうかを判断する。トナーパッチ形成タイミングでなければ(ステップS2でNO)、トナーパッチ形成タイミングになるまで待つ。トナーパッチ形成タイミングになると(ステップS2でYES)、ステップS3で、トナーパッチ量算出処理を実施する。トナーパッチ量算出処理については後述する。
【0109】
次にステップS4で未実施パッチ量からPPMを決定したのち、ステップS5でトナーパッチ処理を実施してトナーパッチを形成する。トナーパッチ処理については後述する。
【0110】
次いでステップS6で、ウェイト時間が想定できないウェイトが発生したかどうかを判断する。発生していなければ(ステップS6でNO)、ステップS10に進む。発生していると(ステップS6でYES)、ステップS7で、所定時間が経過したかどうかを調べる。所定時間が経過すると(ステップS7でYES)、ステップS8でトナーパッチ処理を実施したのち、ステップS9に進む。ステップS7で所定時間が経過していない場合も(ステップS7でNO)、ステップS9に進む。
【0111】
ステップS9では、ウェイトが終了したかどうかを判断し、終了していなければ(ステップS9でNO)、ステップS7に戻る。これにより、所定時間が経過する毎に、トナーパッチが形成される。ステップS9で、ウェイトが終了であれば(ステップS9でYES)、ステップS10に進む。
【0112】
ステップS10では、画像形成部の立下げかどうかを判断する。立下げでなければ(ステップS10でNO)、ステップS2に戻る。立下げであれば(ステップS10でYES)、ステップS11で、未実施パッチが有るかどうかを判断する。未実施パッチがあれば(ステップS11でYES)、ステップS12で、立下げ時にトナーパッチを形成する制御を行った後、処理を終了する。未実施パッチがなければ(ステップS11でNO)、処理を終了する。
【0113】
図23は、
図22のステップS3のトナーパッチ量算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0114】
ステップS301で、次用紙との想定ピッチから必要パッチ量aを算出したのち、ステップS302で、次用紙との想定ピッチから上限パッチ量bを算出する。次いでステップS303で、前回形成したパッチ量と、前用紙と今回用紙のピッチから、不足パッチ量cを算出する。
【0115】
ステップS304では未実施パッチ量dを読み出し、ステップS305では、感光体ブレード201の性能から求まるパッチ量の上限e(Lpmax)を決定する。
【0116】
次に、ステップS306では、ウェイト時間が想定できるウェイトが発生したかどうかを判断する。発生していれば(ステップS306でYES)、ステップS307で、ウェイトパッチ量fをウェイト時間に基づいて算出した後、ステップS309に進む。ウェイト時間が想定できるウェイトが発生していなければ(ステップS306でNO)、ステップS308で、ウェイトパッチ量fをゼロにセットした後、ステップS309に進む。
【0117】
ステップS309ではb≧a+c+d+fかどうかを調べ、b≧a+c+d+fであれば(ステップS309でYES)、ステップS310で、e≧a+c+d+fかどうかを調べる。e≧a+c+d+fであれば(ステップS310でYES)、ステップS311で、パッチ量=a+c+d+f、未実施パッチ量=0としたのち、ステップS316に進む。e≧a+c+d+fなければ(ステップS310でNO)、ステップS312で、パッチ量=e、未実施パッチ量=a+c+d+f-eとしたのち、ステップS316に進む。
【0118】
ステップS309で、b≧a+c+d+fでなければ(ステップS309でNO)、ステップS313で、e≧a+c+d+fかどうかを調べる。e≧a+c+d+fであれば(ステップS313でYES)、ステップS314で、パッチ量=b、未実施パッチ量=a+c+d+f-bとしたのち、ステップS316に進む。e≧a+c+d+fなければ(ステップS313でNO)、ステップS315で、パッチ量=e、未実施パッチ量=a+c+d+f-eとしたのち、ステップS316に進む。
【0119】
ステップS316では、未実施パッチ量をメモリに保存して、ステップ3のトナーパッチ量算出処理を終了する。
【0120】
図24は、
図22のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理の一例を示すフローチャートである。この例は、レーザー光の照射によりトナーパッチTPを形成する場合を示す。
【0121】
ステップS51で、トナーパッチ用のレーザー光量を決定したのち、ステップS52で、強制発光を開始する。次いでステップS53で、狙いのパッチ長のトナーパッチを形成したかどうかを調べ、形成していなければ(ステップS53でNO)、狙いのパッチ長となるまでトナーパッチの形成を継続する。狙いのパッチ長のトナーパッチが形成されると(ステップS53でYES)、ステップS54で強制発光を終了する。
【0122】
次にステップS55で、パッチが一次転写部123に到達したかどうかを調べ、到達していなければ(ステップS55でNO)、到達するまで待つ。到達すると(ステップS55でYES)、ステップS56で、一次転写バイアスを印字出力からOFFへ切り替える。
【0123】
次にステップS57で、パッチが一次転写部123を抜けたかどうかを判断する。抜けていなければ(ステップS57でNO)、抜けるまで待つ。抜けると(ステップS57でYES)、ステップS58で、一次転写バイアスをパッチ出力から印字出力に戻す。
【0124】
図24は、
図21のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理の他の処理例を示すフローチャートである。この例は、帯電出力(帯電バイアス)の調整によりトナーパッチを形成する場合を示す。
【0125】
ステップS501で、トナーパッチ用のかぶりマージンを決定したのち、ステップS502で、帯電出力をパッチ出力に切り替える。次いでステップS503で、狙いのパッチ長のトナーパッチを形成したかどうかを調べ、形成していなければ(ステップS503でNO)、狙いのパッチ長となるまでトナーパッチの形成を継続する。狙いのパッチ長のトナーパッチが形成されると(ステップS503でYES)、ステップS504で帯電出力を印字出力に戻す。
【0126】
次にステップS505で、パッチが一次転写部123に到達したかどうかを調べ、到達していなければ(ステップS505でNO)、到達するまで待つ。到達すると(ステップS505でYES)、ステップS506で、一次転写バイアスを印字出力からOFFへ切り替える。
【0127】
次にステップS507で、パッチが一次転写部123を抜けたかどうかを判断する。抜けていなければ(ステップS507でNO)、抜けるまで待つ。抜けると(ステップS507でYES)、ステップS508で、一次転写バイアスをパッチ出力から印字出力に戻す。
【0128】
図25は、
図21のステップS5およびステップS8のトナーパッチ処理のさらに他の処理例を示すフローチャートである。この例は、現像出力(現像バイアス)の調整によりトナーパッチを形成する場合を示す。
【0129】
ステップS511で、トナーパッチ用のかぶりマージンを決定したのち、ステップS512で、現像出力をパッチ出力に切り替える。次いでステップS513で、狙いのパッチ長のトナーパッチを形成したかどうかを調べ、形成していなければ(ステップS513でNO)、狙いのパッチ長となるまでトナーパッチの形成を継続する。狙いのパッチ長のトナーパッチが形成されると(ステップS513でYES)、ステップS514で現像出力を印字出力に戻す。
【0130】
次にステップS515で、パッチが一次転写部123に到達したかどうかを調べ、到達していなければ(ステップS515でNO)、到達するまで待つ。到達すると(ステップS515でYES)、ステップS516で、一次転写バイアスを印字出力からOFFへ切り替える。
【0131】
次にステップS517で、パッチが一次転写部123を抜けたかどうかを判断する。抜けていなければ(ステップS517でNO)、抜けるまで待つ。抜けると(ステップS517でYES)、ステップS518で、一次転写バイアスをパッチ出力から印字出力に戻す。
【符号の説明】
【0132】
1 画像形成装置
13(13Y,13M,13C,13K) 感光体ドラム
14 中間転写ベルト
41 レーザー
100 MFPコントローラ
110 エンジン制御部
120 高圧制御部
121 帯電部
122 現像部
123 転写部
130 イレーサ
200 感光体クリーナー
201 感光体ブレード
TP トナーパッチ
a 必要パッチ長
b 上限パッチ長
c 不足パッチ長
d 未実施パッチ長
f ウェイトパッチ長