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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】回路装置、電気光学装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20231205BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231205BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611C
G09G3/20 612U
G09G3/20 623B
G09G3/20 623F
G09G3/20 623R
G09G3/20 631V
H03K17/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019169183
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021047273
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森田 晶
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90881(JP,A)
【文献】特開2008-76596(JP,A)
【文献】特開2019-101084(JP,A)
【文献】特開平6-349294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0026622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0252358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスファーゲートを有するスイッチ回路と、
レジスターを有し、前記スイッチ回路を制御する制御回路と、
演算増幅器を有し、前記トランスファーゲートの出力ノードの信号が入力されるアンプ回路と、
前記演算増幅器の出力端子又は入力端子に出力される前記トランスファーゲートのフィードスルーノイズを判定する判定回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記判定回路の判定結果に基づいて、前記レジスターにフィードスルーノイズ低減の設定情報を記憶させ、
前記レジスターに記憶された前記設定情報に基づいて前記トランスファーゲートに対するフィードスルーノイズ低減制御を前記スイッチ回路に対して行うことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記スイッチ回路は、
前記出力ノードに接続され、前記出力ノードからの電荷排出又は前記出力ノードへの電荷注入を行う電荷補償回路を有し、
前記制御回路は、
前記フィードスルーノイズ低減制御として、前記電荷補償回路に対する制御を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回路装置において、
前記トランスファーゲートは、
入力ノードと前記出力ノードの間に並列接続されるP型トランジスター及びN型トランジスターを有し、前記入力ノードに入力信号が入力され、
前記電荷補償回路は、
前記レジスターに記憶された前記設定情報に基づいて、前記トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて前記入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、前記電荷排出を行い、前記トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて前記入力信号の電圧が前記第1電圧範囲より低い第2電圧範囲であるとき、前記電荷注入を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1に記載の回路装置において、
前記トランスファーゲートは、
入力ノードと前記出力ノードの間に並列接続されるP型トランジスター及びN型トランジスターを有し、前記入力ノードに入力信号が入力され、
前記制御回路は、
前記フィードスルーノイズ低減制御として、前記N型トランジスターのサイズに対する前記P型トランジスターのサイズの比であるトランジスターサイズ比の制御を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路装置において、
前記制御回路は、
前記トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて前記入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、前記N型トランジスターのサイズに対する前記P型トランジスターのサイズの比である前記トランジスターサイズ比を前記設定情報に基づく第1値とするように、前記N型トランジスターのサイズ、または、前記P型トランジスターのサイズを制御し、前記トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて前記入力信号の電圧が前記第1電圧範囲より低い第2電圧範囲であるとき、前記トランジスターサイズ比を前記設定情報に基づく前記第1値より大きい第2値とするように、前記N型トランジスターのサイズ、または、前記P型トランジスターのサイズを制御することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記判定回路は、
前記演算増幅器の前記出力端子又は前記入力端子と、判定ノードとの間に設けられるDCカット用キャパシターと、
前記判定ノードをバイアス電圧に設定するバイアス回路と、
前記判定ノードの電圧と、前記バイアス電圧より高い第1判定電圧とを比較する第1比較回路と、
前記判定ノードの電圧と、前記バイアス電圧より低い第2判定電圧とを比較する第2比較回路と、
を有することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記アンプ回路は、基準電圧を基準として前記出力ノードの信号を反転増幅する反転増幅回路であり、
前記判定回路は、
前記演算増幅器の前記入力端子のノードである判定ノードの電圧と、前記基準電圧より高い第1判定電圧とを比較する第1比較回路と、
前記判定ノードの電圧と、前記基準電圧より低い第2判定電圧とを比較する第2比較回路と、
を有することを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
入力データに基づいて前記トランスファーゲートの入力ノードに入力信号を出力する出力回路を含み、
前記制御回路は、
前記入力データと前記判定結果に基づいて、前記レジスターにフィードスルーノイズ低減の前記設定情報を記憶させ、
前記レジスターに記憶された前記設定情報に基づいて前記トランスファーゲートに対する前記フィードスルーノイズ低減制御を前記スイッチ回路に対して行うことを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回路装置において、
前記入力データをD/A変換したD/A変換電圧を、前記出力ノードに出力するD/A変換回路を含み、
前記トランスファーゲートがオンであるとき、前記出力回路が前記入力信号を前記入力ノードに出力することで、前記入力信号に対応した出力信号が前記出力ノードに出力され、
前記トランスファーゲートがオンからオフになった後、前記D/A変換回路が前記D/A変換電圧を前記出力ノードに出力することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記アンプ回路は、
電気光学パネルを駆動することを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記演算増幅器の前記出力端子又は前記入力端子と、前記判定回路との間に設けられる判定用スイッチを含み、
前記アンプ回路は、電気光学パネルを駆動し、
前記判定用スイッチは、
前記判定回路が前記フィードスルーノイズを判定するときオンになり、前記アンプ回路が前記電気光学パネルを駆動するときオフになることを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項11に記載の回路装置において
記制御回路は、
前記アンプ回路が前記電気光学パネルを駆動するとき、前記レジスターに記憶された前記設定情報に基づいて前記スイッチ回路を制御することを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記電気光学パネルと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスターを用いたスイッチにおいて、スイッチがオフになる際にフィードスルーノイズが発生することが知られている。トランジスターのゲート電圧が変化した際に、トランジスターの寄生容量を介してトランジスターのソース又はドレインに対して電荷排出又は電荷注入が発生することで、フィードスルーノイズが発生する。このフィードスルーノイズは、トランジスターを用いたスイッチを含む様々な回路において発生する可能性があり、その回路における信号精度に影響する。
【0003】
特許文献1には、トランジスターを用いたスイッチを含む表示ドライバーが開示されている。特許文献1の表示ドライバーは、D/A変換回路とアンプ回路とスイッチとキャパシター駆動回路とキャパシター回路とを含む。D/A変換回路は階調データをD/A変換してアンプ回路の入力ノードにD/A変換電圧を出力し、アンプ回路は、D/A変換電圧に基づいて電気光学パネルを駆動する。この駆動の前に、アンプ回路の入力ノードとキャパシター回路との間に設けられたスイッチが所定期間オンになる。そして、キャパシター駆動回路が、階調データに基づく電圧をキャパシター回路へ出力することで、キャパシター回路とアンプ回路の入力ノードの寄生容量との間で電荷再分配が生じる。この電荷再分配によって、アンプ回路の入力ノードがD/A変換電圧付近までアシスト駆動され、その後にD/A変換回路がD/A変換電圧を出力することで、アンプ回路の入力ノードが高速にD/A変換電圧に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-90881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスターを用いたスイッチとして、P型トランジスターとN型トランジスターを並列接続したトランスファーゲートが知られている。スイッチがオフになるとき、P型トランジスターのゲート電圧はローレベルからハイレベルとなり、N型トランジスターのゲート電圧はハイレベルからローレベルとなる。このため、両トランジスターのトランジスターサイズ、即ち両トランジスターの寄生容量を揃えておくことで、フィードスルーノイズが打ち消し合うと考えられる。
【0006】
しかしながら、トランジスターのソース電圧及びドレイン電圧に応じてソース-基板間及びドレイン-基板間の寄生容量が変動し、この変動の特性はP型トランジスターとN型トランジスターで逆になっている。このため、スイッチへの入力電圧が高い場合には、P型トランジスターの寄生容量の方が大きく、スイッチへの入力電圧が低い場合には、N型トランジスターの寄生容量の方が大きくなる。このため、P型トランジスター及びN型トランジスターのフィードスルーノイズが打ち消し合わず、スイッチへの入力電圧が高い場合には電荷注入が生じ、スイッチへの入力電圧が低い場合には電荷排出が生じるという課題がある。
【0007】
例えば特許文献1では、スイッチの入力電圧は、D/A変換回路が出力するD/A変換電圧とほぼ同じである。D/A変換回路が出力する電圧は階調データに応じて変化するので、その変化に応じてスイッチのフィードスルーノイズも変化する。このようなフィードスルーノイズがアンプ回路の出力に影響し、結果として画素の書き込み電圧に影響を与えることで、表示品質に影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、トランスファーゲートを有するスイッチ回路と、前記スイッチ回路を制御する制御回路と、前記トランスファーゲートの出力ノードの信号が入力されるアンプ回路と、前記演算増幅器の出力端子又は入力端子に出力される前記トランスファーゲートのフィードスルーノイズを判定する判定回路と、を含み、前記制御回路は、前記判定回路の判定結果に基づいて、前記フィードスルーノイズを低減するフィードスルーノイズ低減制御を前記スイッチ回路に対して行う回路装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回路装置の第1構成例。
図2】回路装置の第1構成例の動作を説明する波形図。
図3】P型トランジスターの電圧容量特性と、N型トランジスターの電圧容量特性。
図4】トランスファーゲートから発生するフィードスルーノイズのシミュレーション波形。
図5】回路装置の第2構成例。
図6】判定回路の動作を説明する波形図。
図7】判定回路の動作を説明する波形図。
図8】キャリブレーションの手順を示すフローチャート。
図9】回路装置の第3構成例。
図10】スイッチ回路の第1構成例。
図11】スイッチ回路の第1構成例における動作を説明する波形図。
図12】スイッチ回路の第1構成例における動作を説明する波形図。
図13】スイッチ回路の第2構成例。
図14】スイッチ回路の第2構成例における動作を説明する波形図。
図15】スイッチ回路の第2構成例における動作を説明する波形図。
図16】スイッチ回路の第3構成例。
図17】スイッチ回路の第3構成例における動作を説明する波形図。
図18】スイッチ回路の第3構成例における動作を説明する波形図。
図19】スイッチ回路の第4構成例。
図20】スイッチ回路の第4構成例における動作を説明する波形図。
図21】回路装置の第4構成例。
図22】電気光学装置の構成例。
図23】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.回路装置
図1は、スイッチ回路45を含む回路装置100の第1構成例である。回路装置100は、制御回路35とスイッチ回路45と判定回路55と基準電圧生成回路60とD/A変換回路70とアンプ回路80と出力回路85とスイッチSWMONとスイッチSWAMを含む。スイッチ回路45はトランスファーゲート15を含む。なお、ここではスイッチ回路45を表示ドライバーに用いた例を説明するが、スイッチ回路45の適用対象はこれに限定されない。例えば、後述するサンプルホールド回路にスイッチ回路45を適用できる。
【0012】
回路装置100は、IC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置100は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。
【0013】
制御回路35は、トランスファーゲート15のオンオフを制御する。また、後述するように制御回路35はスイッチ回路45に対してフィードスルーノイズ低減制御を行う。また制御回路35は、D/A変換回路70と出力回路85に表示データGD[9:0]を出力する。表示データGD[9:0]を入力データとも呼ぶ。ここではD/A変換回路70と出力回路85に同じデータが入力されるものとするが、D/A変換回路70に入力されるデータと出力回路85に入力されるデータとは異なっていてもよい。即ち、D/A変換回路70が出力する電圧と、出力回路85が出力する電圧とが、ほぼ同じになるようなデータとなっていればよい。
【0014】
出力回路85は、表示データGD[9:0]に基づいて、表示データGD[9:0]に対応したデータ電圧をアンプ回路80の入力ノードに出力する。出力回路85が出力する信号は、トランスファーゲート15の入力ノードNINに対する入力信号であり、その入力信号がトランスファーゲート15を通過してスイッチ回路45の出力ノードNOUTに出力信号として出力される。この出力信号の電圧が、出力回路85がアンプ回路80の入力ノードに出力するデータ電圧に相当する。出力回路85は、キャパシター回路82と、キャパシター駆動回路84とを含む。
【0015】
キャパシター回路82は、キャパシターCS1~CS10を含む。キャパシター駆動回路84は、駆動回路DS1~DS10を含む。以下、iを1以上10以下の整数とする。
【0016】
キャパシターCSiの一端は、キャパシター駆動用ノードNDSiに接続され、キャパシターCSiの他端はスイッチ回路45の入力ノードNINに接続される。キャパシターCS1~CS10は、2の累乗で重み付けされた容量値を有している。具体的には、キャパシターCSiの容量値は2(i-1)×CS1である。この式で、CS1はキャパシターCS1の容量値を示している。
【0017】
駆動回路DSiの入力ノードには、表示データGD[9:0]のビットGD[i]が入力される。駆動回路DSiは、ビットGD[i]が第1論理レベルの場合に第1電圧レベルを出力し、ビットGD[i]が第2論理レベルの場合に第2電圧レベルを出力する。例えば、第1論理レベルはローレベルであり、第2論理レベルはハイレベルであり、第1電圧レベルは低電位側電源VSSの電圧、第2電圧レベルは高電位側電源VDDの電圧である。駆動回路DSiは、入力された論理レベルを駆動回路DSiの出力電圧レベルにレベルシフトするレベルシフターと、そのレベルシフターの出力をバッファリングするバッファー回路とで構成される。
【0018】
トランスファーゲート15は、入力ノードNINと出力ノードNOUTとの間に並列接続されたP型トランジスター及びN型トランジスターである。トランスファーゲート15がオンした場合には入力ノードNINと出力ノードNOUTが接続される。なお、詳細については後述するが、スイッチ回路45は図10図13図16図19に示すような種々の構成をとり得る。図10図13の構成例ではスイッチ回路45が更に電荷補償回路25を含む。
【0019】
基準電圧生成回路60は、階調データの各値に対応する基準電圧を生成する回路である。例えば、10ビットの表示データGD[9:0]に対応して1024階調の基準電圧VR1~VR1024を生成する。
【0020】
具体的には、基準電圧生成回路60は、高電位側電源VDDと低電位側電源VSSの間に直列接続された抵抗RD1~RF1024を含む。そして、抵抗RD1~RF1024のタップから、電圧分割により得られた基準電圧VR1~VR1024を出力する。VR512はコモン電圧に相当する。アンプ回路80が非反転アンプ回路である場合、負極性駆動期間においてVR1~VR512が用いられ、正極性駆動期間においてVR512~VR1024が用いられる。
【0021】
D/A変換回路70は、基準電圧VR1~VR1024の中から、表示データGD[9:0]に対応する基準電圧を選択し、選択した基準電圧を電圧AMIとして出力ノードNOUTに出力する。電圧AMIはアンプ回路80の入力電圧である。
【0022】
具体的には、D/A変換回路70は、基準電圧VR1~VR1024が一端に供給されるスイッチSWD1~SWD1024を含む。スイッチSWD1~SWD1024の他端は共通接続されている。スイッチSWD1~SWD1024のうち、いずれか1つが表示データGD[9:0]に対応してオンになり、そのスイッチに供給される基準電圧が電圧AMIとして出力される。例えば、D/A変換回路70は不図示のデコーダーを有し、デコーダーが表示データGD[9:0]をデコードすることでスイッチSWD1~SWD1024のオンオフ制御信号を生成する。
【0023】
アンプ回路80は、D/A変換回路70からの電圧AMIを増幅し、その増幅した電圧を、スイッチSWAMを介してデータ電圧出力端子TVQへ出力する。アンプ回路80は、演算増幅器AMVDを含む。
【0024】
アンプ回路80は、ボルテージフォロア回路である。即ち、演算増幅器AMVDの反転入力端子と出力端子が接続され、演算増幅器AMVDの非反転入力端子にトランスファーゲート15の出力ノードNOUTが接続される。演算増幅器AMVDの非反転入力端子がボルテージフォロア回路の入力となり、そのボルテージフォロアの入力には、D/A変換回路70からの電圧AMIが入力される。なお、アンプ回路80は、図9で後述するような反転増幅回路であってもよい。この場合、アンプ回路80は、コモン電圧を基準にD/A変換回路70の出力電圧を反転するが、後述するスイッチ回路45の構成及び動作はボルテージフォロア回路の場合と同様である。以下、アンプ回路80がボルテージフォロア回路である場合を例に説明する。
【0025】
スイッチSWAMは、演算増幅器AMVDの出力とデータ電圧出力ノードNVQを接続又は遮断する。スイッチSWAMは、トランジスターで構成される。スイッチSWAMのオンオフ制御信号は、制御回路35から供給される。
【0026】
なお、判定回路55及びスイッチSWMONは、フィードスルーノイズ低減のキャリブレーションに用いられる。判定回路55及びスイッチSWMONについては後述する。
【0027】
図2は、回路装置100の第1構成例の動作を説明する波形図である。図2には、アンプ回路80が1画素に1つのデータ電圧を書き込む際の波形図を示す。
【0028】
アシスト期間TASにおいて、トランスファーゲート15がオンであり、スイッチSWAMがオフであり、D/A変換回路70のスイッチSWD1~SWD1024がオフである。アンプ回路80の入力ノードには寄生容量があるが、アシスト期間TASにおいて出力回路85が、その寄生容量を充電する。即ち、キャパシター駆動回路84がキャパシター回路82を駆動することで、トランスファーゲート15を介してキャパシター回路82と寄生容量の間で電荷再分配が行われ、その電荷再分配によってアンプ回路80の入力ノードの電圧AMIが、表示データGD[9:0]に対応する電圧に近づく。アシスト期間TASの終了時にトランスファーゲート15がオフになる。
【0029】
アシスト期間TASの後、駆動期間TDRにおいて、トランスファーゲート15がオフであり、スイッチSWAMがオンであり、D/A変換回路70のスイッチSWD1~SWD1024のいずれかが表示データGD[9:0]に基づいてオンになる。これにより、D/A変換回路70が、表示データGD[9:0]に対応する電圧を出力ノードNOUTに出力し、アンプ回路80が、その電圧をバッファリングしてデータ電圧出力ノードNVQに出力する。
【0030】
以上のように、D/A変換回路70がD/A変換電圧を出力する前に、出力回路85がアシスト駆動を行うことで、アンプ回路80の入力ノードの電圧がD/A変換電圧とほぼ同じ電圧となる。これにより、D/A変換回路70がD/A変換電圧を出力し始めてからアンプ回路80の入力ノードの電圧AMIが所望の電圧となるまでの時間が短縮されるので、高速な画素駆動が可能となる。
【0031】
本実施形態では、制御回路35がスイッチ回路45を制御することで、トランスファーゲート15が発生するフィードスルーノイズを低減する。まず、このフィードスルーノイズ低減を行わなかった場合の課題を説明する。
【0032】
画素に正確なデータ電圧を書き込むためには、駆動期間TDRの終了時において電圧AMIが正確な電圧となっている必要がある。駆動期間TDRの開始時には、アシスト駆動によってアンプ回路80の入力ノードがほぼ表示データGD[9:0]に対応する電圧となっているが、トランスファーゲートがオフする際のフィードスルーノイズ等によって電圧誤差が生じる。この誤差がある状態から、駆動期間TDRにおいてD/A変換回路70が電圧を収束することによって、アンプ回路80の入力ノードが、表示データGD[9:0]に対応する電圧に漸近する。
【0033】
しかしながら、表示パネルの高精細化、又は表示の高フレームレート化によって、1画素の駆動期間は短縮される傾向にある。このため、フィードスルーノイズ等による誤差が大きいと駆動期間TDR内に誤差を十分に収束させることができず、表示品質が低下してしまう。また表示の階調表現を高めるために表示データのビット数を増加させた場合、小さな電圧誤差が表示ムラを生じる。例えば、図1では表示データが10ビットであるが、階調表現を高めるために12ビットの表示データを用いたとする。この場合、駆動の電圧振幅を10Vとすると、1階調が2.5mVとなり、数mV程度の電圧誤差が残るだけで表示品質が低下する。
【0034】
以上のような理由から、アシスト期間TASの終了時においてトランスファーゲートがオフする際のフィードスルーノイズが大きいと、表示品質の低下につながるという課題がある。図3図4を用いて、トランスファーゲートが発生するフィードスルーノイズについて説明する。
【0035】
図3に、P型トランジスターの電圧容量特性PCHと、N型トランジスターの電圧容量特性NCHとを示す。横軸は、基板電圧を基準とするソース電圧又はドレイン電圧であり、縦軸は、ソース-基板間又はドレイン-基板間の容量値である。図3において、P型トランジスターとN型トランジスターのサイズは同じである。
【0036】
N型トランジスターの基板はP型であり、例えばグランド電圧に設定されている。ソース電圧が基板電圧から遠ざかるほど、即ちソース電圧が高くなるほど、基板とソースの間の空乏層が広がる。このため、N型トランジスターの電圧容量特性NCHにおいて、ソース電圧が低いほど容量値が大きくなり、ソース電圧が高いほど容量値が小さくなる。ドレインについても同様である。
【0037】
P型トランジスターの基板はN型であり、例えば電源電圧に設定されている。ソース電圧が基板電圧から遠ざかるほど、即ちソース電圧が低くなるほど、基板とソースの間の空乏層が広がる。このため、P型トランジスターの電圧容量特性PCHにおいて、ソース電圧が低いほど容量値が小さくなり、ソース電圧が高いほど容量値が大きくなる。ドレインについても同様である。
【0038】
以上のことから、P型トランジスターとN型トランジスターのサイズが同じであったとしても、P型トランジスターの寄生容量とN型トランジスターの寄生容量には差分CDIFが生じる。この差分CDIFはソース電圧及びドレイン電圧に応じて変化する。このため、P型トランジスターとN型トランジスターを組み合わせたトランスファーゲートにおいて、フィードスルーノイズの影響が電圧に応じて変化する。
【0039】
具体的には、トランスファーゲートへの入力信号の電圧が電源電圧に近いときには、P型トランジスターの寄生容量の方が大きいので、トランスファーゲートがオフする際にP型トランジスターが出力する正電荷の影響の方が大きくなる。これは、トランスファーゲートの出力ノードから見て電荷注入となる。電荷注入とは、正電荷がノードに注入されることである。一方、トランスファーゲートへの入力信号の電圧がグランド電圧に近いときには、N型トランジスターの寄生容量の方が大きいので、トランスファーゲートがオフする際にN型トランジスターが出力する負電荷の影響の方が大きくなる。これは、トランスファーゲートの出力ノードから見て電荷排出となる。電荷排出とは、正電荷がノードから排出されることである。
【0040】
図4は、本実施形態のフィードスルーノイズ低減処理を行わない場合において、トランスファーゲートから発生するフィードスルーノイズのシミュレーション波形である。P型トランジスターとN型トランジスターのサイズは同一である。図4には、トランスファーゲートへの入力信号の電圧が12.5V、10V、7.5V、5V、2.5Vのときの出力ノードの信号波形を示す。例えば、図1の表示ドライバーにおいて、7.5Vがコモン電圧であり、7.5V~12.5Vが正極性駆動の電圧であり、7.5V~2.5Vが負極性駆動の電圧である。
【0041】
以下、トランスファーゲートがオンからオフになるときのフィードスルーノイズに着目する。トランスファーゲートがオンからオフになるとき、P型トランジスターのゲート電圧はローレベルからハイレベルとなるので、P型トランジスターは出力ノードに電荷を注入する。一方、N型トランジスターのゲート電圧はハイレベルからローレベルとなるので、N型トランジスターは出力ノードから電荷を排出する。
【0042】
入力信号の電圧が12.5V、10V、7.5Vのとき、P型トランジスターの寄生容量がN型トランジスターの寄生容量より大きいため、P型トランジスターが出力ノードに注入する電荷量の方が、N型トランジスターが出力ノードから排出する電荷量よりも多くなる。このため、トランスファーゲート全体として電荷注入となる。入力信号の電圧が5Vのとき、P型トランジスターが出力ノードに注入する電荷量と、N型トランジスターが出力ノードから排出する電荷量とが、ほぼ釣り合うため、フィードスルーノイズは小さくなる。入力信号の電圧が2.5Vのとき、N型トランジスターの寄生容量がP型トランジスターの寄生容量より大きいため、N型トランジスターが出力ノードから排出する電荷量の方が、P型トランジスターが出力ノードに注入する電荷量よりも多くなる。このため、トランスファーゲート全体として電荷排出となる。
【0043】
なお、図1のような表示ドライバーにおいて、駆動電圧が比較的高い電気光学パネルを駆動する場合には、駆動回路に高耐圧プロセスを用いる。高耐圧プロセスのトランジスターでは、耐圧を高めるために、基板とソース及びドレインとの間の空乏層を広くしてある。このため高耐圧トランジスターは、低耐圧トランジスターに比べて、ソース及びドレインの電圧変化に対する寄生容量の変動が大きい。即ち、高耐圧トランジスターによるトランスファーゲートでは、上記フィードスルーノイズが更に大きくなる。
【0044】
以上のように、トランスファーゲートにおいて入力信号の電圧に依存したフィードスルーノイズが発生するという課題がある。即ち、入力信号の電圧に応じてフィードスルーノイズの電荷量が変化すると共に、電荷排出と電荷注入が入れ替わるという課題がある。以下、このような課題を解決できる本実施形態について説明する。
【0045】
2.キャリブレーション
本実施形態では、制御回路35がスイッチ回路45を制御することで、トランスファーゲート15が発生するフィードスルーノイズを低減する。詳細については後述するが、図10図13の構成例ではスイッチ回路45が更に電荷補償回路25を含む。そして、電荷補償回路25が電荷補償によりフィードスルーノイズを低減する。また図16図19の構成例では、制御回路35がトランスファーゲート15のトランジスターサイズ比を制御することで、フィードスルーノイズを低減する。
【0046】
本実施形態の回路装置100は、フィードスルーノイズを適切に低減できるように、スイッチ回路45の動作をキャリブレーションする。以下、このキャリブレーション手法について説明する。
【0047】
図5は、回路装置100の第2構成例である。回路装置100は、制御回路35とスイッチ回路45と判定回路55とD/A変換回路70とアンプ回路80と出力回路85とスイッチSWAMとスイッチSWMONとを含む。SWMONを判定用スイッチとも呼ぶ。なお図5では基準電圧生成回路60の図示を省略している。なお、既に説明した構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
【0048】
アンプ回路80は、演算増幅器AMVDにより構成されたボルテージフォロア回路である。スイッチSWMONは、演算増幅器AMVDの出力端子と判定回路55の入力ノードNMINとの間に接続される。スイッチSWMONはトランジスターで構成されたスイッチである。
【0049】
判定回路55は、演算増幅器AMVDの出力端子に出力されるトランスファーゲート15のフィードスルーノイズを判定する。即ち、トランスファーゲート15が発生したフィードスルーノイズは、演算増幅器AMVDの非反転入力端子から演算増幅器AMVDを通過して演算増幅器AMVDの出力端子に出力される。この出力端子に出力されたフィードスルーノイズは、演算増幅器AMVDの周波数特性等の影響を受けた信号となっている。演算増幅器AMVDの出力側においてフィードスルーノイズの影響を低減できればよいので、判定回路55は、演算増幅器AMVDの出力側においてフィードスルーノイズを判定する。
【0050】
制御回路35は、判定回路55の判定結果に基づいて、フィードスルーノイズを低減するノイズ低減制御をスイッチ回路45に対して行う。具体的には、制御回路35は、判定結果に基づいてレジスター36にフィードスルーノイズ低減の設定情報を記憶させる。そして、回路装置100の通常動作時、即ち回路装置100が電気光学パネルを駆動するとき、制御回路35は、レジスター36に記憶された設定情報に基づいてトランスファーゲート15に対するフィードスルーノイズ低減制御を行う。フィードスルーノイズ低減制御については図10図20で後述する通りである。
【0051】
本実施形態によれば、トランスファーゲート15の入力信号の電圧に応じて変動するフィードスルーノイズを、判定回路55が判定できる。そして、制御回路35が判定結果に基づいてフィードスルーノイズ低減制御を行うことで、トランスファーゲート15の入力信号の電圧に応じて変動するフィードスルーノイズを適切に低減できる。
【0052】
以下、判定回路55の詳細を説明する。判定回路55は、DCカット用キャパシターであるキャパシターCDCと、バイアス回路56と、第1比較回路であるコンパレーター51と、第2比較回路であるコンパレーター52とを含む。
【0053】
キャパシターCDCは、判定回路55の入力ノードNMINと判定ノードNMONとの間に設けられる。即ち、キャパシターCDCの一端は入力ノードNMINに接続され、他端は判定ノードNMONに接続される。
【0054】
バイアス回路56は、判定ノードNMONをバイアス電圧VBIに設定する。バイアス回路56は、バイアス電圧VBIのノードと判定ノードNMONとの間に接続される抵抗RBIを含む。判定ノードNMONには、抵抗RBIを介してバイアス電圧VBIが入力される。
【0055】
コンパレーター51は、判定ノードNMONの電圧VMONと判定電圧VRAとを比較し、その結果を出力信号QCAとして出力する。判定電圧VRAは第1判定電圧であり、バイアス電圧VBIより所定幅ΔVだけ高い。コンパレーター52は、判定ノードNMONの電圧VMONと判定電圧VRBとを比較し、その結果を出力信号QCBとして出力する。判定電圧VRBは第2判定電圧であり、バイアス電圧VBIより所定幅ΔVだけ低い。2×ΔVは、フィードスルーノイズの許容振幅に相当する電圧幅である。例えばΔV=10mVであるが、これに限定されない。
【0056】
図6図7は判定回路55の動作を説明する波形図である。図6図7に示す電圧VMONの波形は、トランスファーゲート15がオンからオフになったときのフィードスルーノイズの波形である。
【0057】
図6には、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第1電圧範囲に属するとき、即ち、トランスファーゲート15が出力ノードNOUTに電荷を注入するときの波形を示す。電圧VMONはキャパシターCDCによりDCカットされると共に、バイアス電圧VBIにバイアスされているので、電圧VMONにおけるフィードスルーノイズは、バイアス電圧VBIを中心とするAC成分のみとなる。このAC成分の大きさをコンパレーター51、52により検出する。
【0058】
図6の例では、電圧VMONが判定電圧VRAを超えた後、判定電圧VRBを下回っている。電圧VMONが判定電圧VRAを超えているときコンパレーター51の出力信号QCAがハイレベルになり、電圧VMONが判定電圧VRBを下回っているときコンパレーター52の出力信号QCBがハイレベルになる。フィードスルーノイズによる電圧VMONの変動は、最初の正方向への変動であり、その後の負方向の変動は演算増幅器AMVDの過渡応答等による変動である。このため、制御回路35は、先にハイレベルとなるコンパレーター51の出力信号QCAに基づいてキャリブレーションを行う。
【0059】
図7には、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第2電圧範囲に属するとき、即ち、トランスファーゲート15が出力ノードNOUTから電荷を排出するときの波形を示す。
【0060】
図7の例では、電圧VMONが判定電圧VRBを下回った後、判定電圧VRAを超えている。電圧VMONが判定電圧VRBを下回っているときコンパレーター52の出力信号QCBがハイレベルになり、電圧VMONが判定電圧VRBを超えているときコンパレーター51の出力信号QCAがハイレベルになる。制御回路35は、先にハイレベルとなるコンパレーター52の出力信号QCBに基づいてキャリブレーションを行う。
【0061】
図8は、キャリブレーションの手順を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS1において、制御回路35はスイッチSWMONをオンにする。ステップS2において、制御回路35はトランスファーゲート15の入力信号の電圧を設定する。即ち、制御回路35は、フィードスルーノイズを測定したい電圧に対応した表示データGD[9:0]をD/A変換回路70と出力回路85に出力する。例えば第1電圧範囲が7.5V~12.5Vであるとき、その中央値である10Vに対応した表示データGD[9:0]を制御回路35が出力する。
【0063】
ステップS3において、制御回路35は、スイッチ回路45の設定を行う。即ち、制御回路35は、フィードスルーノイズ低減の設定情報をレジスター36に書き込むことで、スイッチ回路45の動作状態を、ある1つの動作状態に設定する。例えば図10の構成例に本キャリブレーション手法を適用する場合、制御回路35は、電荷補償においてオンオフさせるトランジスターと、そのトランジスターをオンからオフとオフからオンのいずれの方向に切り替えるかと、を指定する。或いは図13の構成例に本キャリブレーション手法を適用する場合、制御回路35は、電荷補償においてキャパシターを駆動する駆動回路と、その駆動回路がキャパシターの他端をローレベルからハイレベルとハイレベルからローレベルのいずれの方向に変化させるかと、を指定する。或いは図16図19の構成例に本キャリブレーション手法を適用する場合、制御回路35は、トランスファーゲート15を構成するサブトランジスター群のうちオンオフさせるトランジスターを指定する。
【0064】
ステップS4において、判定回路55がフィードスルーノイズを判定する。即ち、制御回路35がD/A変換回路70、出力回路85及びスイッチ回路45を動作させることで、トランスファーゲート15がオフするときのフィードスルーノイズを発生させる。このフィードスルーノイズによる電圧VMONの変動を判定回路55が判定し、その結果である出力信号QCA、QCBを出力する。
【0065】
ステップS5において、制御回路35は、ステップS4の判定動作で出力信号QCA又はQCBがハイレベルになったか否かを判断する。制御回路35は、出力信号QCA又はQCBがハイレベルになった場合、ステップS3に戻る。ステップS3では、前回の動作状態とは異なる動作状態にトランスファーゲート15を設定する。そして判定回路55が再びステップS4の判定動作を行う。ステップS5において、出力信号QCA又はQCBがハイレベルにならなかった場合、ステップS6において、制御回路35は、そのときのフィードスルーノイズ低減の設定情報をレジスター36に保持させる。
【0066】
ステップS7において、制御回路35は、全ての電圧範囲についてキャリブレーションを行ったか否かを判断する。キャリブレーションを行っていない電圧範囲がある場合、制御回路35はステップS2に戻り、次の入力信号の電圧を設定し、ステップS3~S6を再び実行する。ステップS7において、全ての電圧範囲についてキャリブレーションを行ったと判断された場合、制御回路35はスイッチSWMONをオフし、キャリブレーションを終了する。
【0067】
以上のキャリブレーションが実行されることで、コンパレーター51、52の出力信号QCA、QCBがいずれもハイレベルにならない設定情報がレジスター36に記憶される。制御回路35が、この設定情報に基づいてスイッチ回路45を制御することで、トランスファーゲート15がオフするときのフィードスルーノイズによる電圧変動がΔV以下に低減される。
【0068】
なお、判定回路55を含む回路装置100の構成は図5に限定されず、以下のような種々の変形実施が可能である。
【0069】
例えば、判定回路55は、演算増幅器AMVDの入力端子に出力されるトランスファーゲート15のフィードスルーノイズを判定してもよい。即ち、スイッチSWMONが、演算増幅器AMVDの入力端子と判定回路55の入力ノードNMINとの間に接続されてもよい。
【0070】
或いは、アンプ回路80は反転増幅回路であってもよい。反転増幅回路の構成例は図9で説明する。スイッチSWMONは、反転増幅回路であるアンプ回路80の出力ノード又は入力ノードと、判定回路55の入力ノードNMINとの間に接続されてもよい。この場合、アンプ回路80の出力ノードは演算増幅器AMVDの出力端子であり、アンプ回路80の入力ノードはトランスファーゲート15の出力ノードNOUTである。
【0071】
或いは、図9に示す回路装置100の第3構成例のように、DCカット用キャパシターであるキャパシターCDCが省略され、演算増幅器AMVDの入力端子と判定回路55の入力ノードNMINとの間にスイッチSWMONが接続されてもよい。
【0072】
具体的には、アンプ回路80は演算増幅器AMVDと抵抗RI、RFとを含む。抵抗RIの一端はトランスファーゲート15の出力ノードNOUTに接続され、他端は演算増幅器AMVDの反転入力端子に接続される。抵抗RFの一端は演算増幅器AMVDの反転入力端子に接続され、他端は演算増幅器AMVDの出力端子に接続される。演算増幅器AMVDの非反転入力端子には基準電圧VCが入力される。基準電圧VCは、電気光学パネルを駆動する際のコモン電圧に相当する。
【0073】
判定回路55は、コンパレーター51、52を含む。図9では、判定回路55の入力ノードNMINが判定ノードとなる。即ち、コンパレーター51は、入力ノードNMINの電圧VMONと判定電圧VRAとを比較し、コンパレーター51は、入力ノードNMINの電圧VMONと判定電圧VRBとを比較する。演算増幅器AMVDの反転入力端子はバーチャルショートにより基準電圧VCとなる。このため、電圧VMONにおけるフィードスルーノイズは、基準電圧VCを中心とするAC成分のみとなる。このAC成分の大きさをコンパレーター51、52により検出する。
【0074】
キャリブレーション手法は図6図8で説明した手法と同様である。即ち、図6図7においてバイアス電圧VBIを基準電圧VCに置き換えることで、図9における波形図となる。判定電圧VRAは基準電圧VCよりΔVだけ高く、判定電圧VRBは基準電圧VCよりΔVだけ低い。キャリブレーションの手順は図8に示す手順と同様である。
【0075】
3.スイッチ回路の第1、第2構成例
以下、上記キャリブレーションの結果を用いてフィードスルーノイズを低減する構成及び動作を説明する。
【0076】
図10は、スイッチ回路45の第1構成例である。スイッチ回路45は、トランスファーゲート15と電荷補償回路25とを含む。
【0077】
トランスファーゲート15は、入力ノードNINと出力ノードNOUTの間に並列接続されるP型トランジスターTGP及びN型トランジスターTGNを有する。即ち、P型トランジスターTGPのソース及びドレインの一方と、N型トランジスターTGNのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続される。P型トランジスターTGPのソース及びドレインの他方と、N型トランジスターTGNのソース及びドレインの他方が出力ノードNOUTに接続される。トランスファーゲート15の入力ノードNINに入力信号が入力される。トランスファーゲート15がオンのとき、トランスファーゲート15は入力信号を通過させて出力ノードNOUTに出力信号を出力する。P型トランジスターTGPとN型トランジスターTGNのゲートサイズは、例えば同一であるが、これに限定されない。
【0078】
電荷補償回路25は、出力ノードNOUTに接続される。電荷補償回路25は、出力ノードNOUTからの電荷排出、又は出力ノードNOUTへの電荷注入を行う。具体的には、電荷補償回路25は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、電荷排出を行う。電荷補償回路25は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲より低い第2電圧範囲であるとき、電荷注入を行う。
【0079】
第1電圧範囲とは、例えば図4の例において5Vより高い電圧範囲5V~12.5Vである。即ち第1電圧範囲は、トランスファーゲート15がオフする際に出力ノードNOUTに電荷を注入する電圧範囲である。また第2電圧範囲とは、例えば図4の例において5Vより低い電圧範囲5V~2.5Vである。即ち第2電圧範囲は、トランスファーゲート15がオフする際に出力ノードNOUTから電荷を排出する電圧範囲である。なお、第1電圧範囲と第2電圧範囲は任意に設定されてよい。例えば、コモン電圧7.5Vより高い7.5V~12.5Vを第1電圧範囲とし、コモン電圧7.5Vより低い7.5V~2.5Vを第2電圧範囲としてもよい。
【0080】
本実施形態によれば、入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、電荷補償回路25が電荷排出を行うことで、トランスファーゲート15の電荷注入によるフィードスルーノイズを低減できる。また入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、電荷補償回路25が電荷注入を行うことで、トランスファーゲート15の電荷排出によるフィードスルーノイズを低減できる。これにより、入力信号の電圧に依存したフィードスルーノイズを低減できる。
【0081】
第1構成例における電荷補償回路25の詳細構成を説明する。電荷補償回路25は、トランジスター群を含む。トランジスター群は、P型トランジスター群であるP型トランジスターPT1~PTaと、N型トランジスター群であるN型トランジスターNT1~NTbと、で構成される。a、bは2以上の整数である。P型トランジスターPT1~PTaのソース及びドレインと、N型トランジスターNT1~NTbのソース及びドレインは、トランスファーゲート15の出力ノードNOUTに接続される。例えば、P型トランジスターPT1~PTaのゲートサイズは同一であってもよいし、或いは互いに異なっていてもよい。例えばP型トランジスターPT1~PTaのゲートサイズはバイナリーに重み付けされてもよいし、或いはP型トランジスターPT1~PTaのゲートサイズは所定ステップずつ増加してもよい。どのようなゲートサイズを採用するかは、電荷補償の制御手法と、電荷補償の分解能に応じて設定すればよい。N型トランジスターNT1~NTbのゲートサイズも同様である。なお、図10には電荷補償回路25がP型トランジスター群及びN型トランジスター群を含む場合を図示するが、電荷補償回路25はP型トランジスター群及びN型トランジスター群の一方のみを含んでもよい。
【0082】
制御回路35は、トランスファーゲート15と電荷補償回路25を制御する。具体的には、制御回路35は、制御信号STGPをP型トランジスターTGPに出力し、制御信号STGNをN型トランジスターTGNに出力することで、トランスファーゲート15のオンオフを制御する。また制御回路35は、電荷補償の設定情報を記憶するレジスター36を含む。設定情報は、電荷補償においてオンオフさせるトランジスターを指定する情報と、そのトランジスターをオンからオフとオフからオンのいずれの方向に切り替えるかを指定する情報である。制御回路35は、レジスター36に記憶された設定情報に基づいて電荷補償回路25のトランジスター群に制御信号群を出力することで、電荷補償回路25を制御する。即ち、制御回路35は、制御信号SPT1~SPTaをP型トランジスターPT1~PTaのゲートに出力し、制御信号SNT1~SNTbをN型トランジスターNT1~NTbのゲートに出力する。
【0083】
制御回路35は、入力信号の電圧が属する電圧範囲を、出力回路85に出力される表示データGD[9:0]に基づいて判断する。出力回路85は、表示データGD[9:0]に対応した電圧をトランスファーゲート15の入力ノードNINに出力するので、制御回路35は、表示データGD[9:0]から入力信号の電圧を判断できる。
【0084】
制御回路35は、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、トランスファーゲート15をオフするタイミングにおいて、制御信号SPT1~SPTa、SNT1~SNTbのうち1又は複数をハイレベルからローレベルにする。即ち、制御回路35は、電荷補償回路25のP型トランジスター群のうち1又は複数のP型トランジスターをオンからオフにする、又は電荷補償回路25のN型トランジスター群のうち1又は複数のN型トランジスターをオフからオンにする。これにより、電荷補償回路25が出力ノードNOUTから電荷を排出する。
【0085】
一方、制御回路35は、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、トランスファーゲート15をオフするタイミングにおいて、制御信号SPT1~SPTa、SNT1~SNTbのうち1又は複数をローレベルからハイレベルにする。即ち、制御回路35は、電荷補償回路25のP型トランジスター群のうち1又は複数のP型トランジスターをオフからオンにする、又は電荷補償回路25のN型トランジスター群のうち1又は複数のN型トランジスターをオンからオフにする。これにより、電荷補償回路25が出力ノードNOUTに電荷を注入する。
【0086】
なお、1又は複数の制御信号をハイレベルからローレベルにする制御と、1又は複数の制御信号をローレベルからハイレベルにする制御とが、混在してもよい。即ち、トランジスター群全体として電荷排出又は電荷注入となるように、トランジスター群のオンオフが制御されていればよい。以下、具体的な制御例を説明する。
【0087】
図11図12は、スイッチ回路45の第1構成例における動作を説明する波形図である。ここでは第1電圧範囲を7.5V~12.5Vとし、第2電圧範囲を7.5V~2.5Vとし、a=b=2とし、トランジスターPT1、PT2、NT1、NT2のトランジスターサイズが同一であるとする。例えば、P型トランジスターPT1、PT2の合計トランジスターサイズは、トランスファーゲート15のP型トランジスターTGPのトランジスターサイズに対して約半分である。また、N型トランジスターNT1、NT2の合計トランジスターサイズは、トランスファーゲート15のN型トランジスターTGNのトランジスターサイズに対して約半分である。
【0088】
図11には、第1構成例においてトランスファーゲート15の入力信号の電圧が第1電圧範囲であるときの波形例を示す。制御回路35は、制御信号STGP、STGNによりトランスファーゲート15をオンからオフにするとき、P型トランジスターPT1、PT2の制御信号SPT1、SPT2をハイレベルからローレベルにし、N型トランジスターNT1の制御信号SNT1をローレベルからハイレベルにする。N型トランジスターNT2の制御信号SNT2の論理レベルは変化しない。このようにすれば、P型トランジスターPT1、PT2が出力ノードNOUTから排出する電荷量が、N型トランジスターNT1が出力ノードNOUTに注入する電荷量よりも多くなるので、全体として電荷排出となる。
【0089】
図12には、第1構成例においてトランスファーゲート15の入力信号の電圧が第2電圧範囲であるときの波形例を示す。制御回路35は、制御信号STGP、STGNによりトランスファーゲート15をオンからオフにするとき、P型トランジスターPT1の制御信号SPT1をハイレベルからローレベルにし、N型トランジスターNT1、NT2の制御信号SNT1、SNT2をローレベルからハイレベルにする。N型トランジスターNT2の制御信号SNT2の論理レベルは変化しない。このようにすれば、N型トランジスターNT1、NT2が出力ノードNOUTに注入する電荷量が、P型トランジスターPT1が出力ノードNOUTから排出する電荷量よりも多くなるので、全体として電荷注入となる。
【0090】
図13は、スイッチ回路45の第2構成例である。スイッチ回路45は、トランスファーゲート15と電荷補償回路25とを含む。トランスファーゲート15の構成は第1構成例と同じである。
【0091】
電荷補償回路25は、キャパシター群であるキャパシターCC1~CCtと、駆動回路群である駆動回路DRC1~DRCtと、を含む。tは2以上の整数である。
【0092】
キャパシターCC1~CCtの一端はトランスファーゲート15の出力ノードNOUTに接続される。キャパシターCC1~CCtの他端は駆動回路DRC1~DRCtの出力ノードに接続される。キャパシターCC1~CCtは例えばMIMキャパシターである。キャパシターCC1~CCtの容量値は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えばキャパシターCC1~CCtの容量値はバイナリーに重み付けされてもよいし、或いはキャパシターCC1~CCtの容量値は所定ステップずつ増加してもよい。どのような容量値を採用するかは、電荷補償の制御手法と、電荷補償の分解能に応じて設定すればよい。
【0093】
駆動回路DRC1~DRCtの入力ノードには、制御回路35から制御信号DC1~DCtが入力される。駆動回路DRC1~DRCtは、制御信号DC1~DCtに基づいてキャパシターCC1~CCtの他端を駆動する。例えば制御回路35が制御信号DC1をハイレベルからローレベルにしたとき、駆動回路DRC1はキャパシターCC1の他端を第1電圧から第2電圧に変化させ、制御回路35が制御信号DC1をローレベルからハイレベルにしたとき、駆動回路DRC1はキャパシターCC1の他端を第2電圧から第1電圧に変化させる。第1電圧は例えば電源電圧である。第2電圧は第1電圧より低く、例えばグランド電圧である。駆動回路DRC2~DRCtも同様に動作する。
【0094】
なお、キャパシターCC1~CCtの一端とトランスファーゲート15の出力ノードNOUTとの間に、更にキャパシターが設けられてもよい。このような直列キャパシターを設けることで、駆動回路DRC1~DRCtがキャパシターCC1~CCtの他端を駆動したときに出力ノードNOUTから排出、又は出力ノードNOUTに注入される電荷量が小さくなる。これにより、フィードスルーノイズ低減の分解能を向上できる。
【0095】
図14図15は、スイッチ回路45の第2構成例における動作を説明する波形図である。ここではt=2とする。また駆動回路DRC1、DRC2が出力する第1電圧、第2電圧を、それぞれハイレベル、ローレベルとも呼ぶ。
【0096】
図14には、第2構成例においてトランスファーゲート15の入力信号の電圧が第1電圧範囲であるときの波形例を示す。駆動回路DRC1、DRC2は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて、キャパシターCC1、CC2のうち1又は複数のキャパシターの他端の電圧をハイレベルからローレベルに変化させる。これにより、電荷補償回路25がトランスファーゲート15の出力ノードNOUTから電荷を排出する。図14の波形例では、制御回路35が制御信号DC1、DC2をハイレベルからローレベルに変化させ、駆動回路DRC1、DRC2がキャパシターCC1、CC2の他端の電圧をハイレベルからローレベルに変化させる。
【0097】
図15には、第2構成例においてトランスファーゲート15の入力信号の電圧が第2電圧範囲であるときの波形例を示す。駆動回路DRC1、DRC2は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて、キャパシターCC1、CC2のうち1又は複数のキャパシターの他端の電圧をローレベルからハイレベルに変化させる。これにより、電荷補償回路25がトランスファーゲート15の出力ノードNOUTに電荷を注入する。図15の波形例では、制御回路35が制御信号DC1をローレベルからハイレベルに変化させ、駆動回路DRC1がキャパシターCC1の他端の電圧をローレベルからハイレベルに変化させる。
【0098】
なお、第1構成例と同様に、1又は複数の制御信号をハイレベルからローレベルにする制御と、1又は複数の制御信号をローレベルからハイレベルにする制御とが、混在してもよい。即ち、電荷補償回路25全体として電荷排出又は電荷注入となるように、駆動回路群によるキャパシター群の駆動が制御されていればよい。例えばキャパシターCC1の容量値が5fFであり、キャパシターCC2の容量値が7fFであるとする。この場合に、駆動回路DRC1がキャパシターCC1の他端をローレベルからハイレベルに駆動し、駆動回路DRC2がキャパシターCC2の他端をハイレベルからローレベルに駆動すると、電荷補償回路25全体としては2fFに対応した電荷排出となる。
【0099】
また第2構成例において、レジスター36は電荷補償の設定情報を記憶する。設定情報は、電荷補償においてキャパシターを駆動する駆動回路を指定する情報と、その駆動回路がキャパシターの他端をローレベルからハイレベルとハイレベルからローレベルのいずれの方向に変化させるかを指定する情報である。制御回路35は、レジスター36に記憶された設定情報に基づいて駆動回路DRC1~DRCtに制御信号DC1~DCtを出力する。
【0100】
なお、上記では第1、第2電圧範囲を設定した場合を例に説明したが、電圧範囲の設定はこれに限定されず、例えば第1~第4電圧範囲を設定してもよい。高い電圧から第1、第3、第4、第2電圧範囲の順である。第3電圧範囲において電荷補償回路25が排出する電荷量よりも、第1電圧範囲において電荷補償回路25が排出する電荷量の方が多い。また、第4電圧範囲において電荷補償回路25が注入する電荷量よりも、第2電圧範囲において電荷補償回路25が注入する電荷量の方が多い。
【0101】
4.スイッチ回路の第3、第4構成例
図16は、スイッチ回路45の第3構成例である。スイッチ回路45は、トランスファーゲート15を含む。
【0102】
トランスファーゲート15は、入力ノードNINと出力ノードNOUTの間に並列接続されるP型トランジスターTGP及びN型トランジスターTGNを有する。即ち、P型トランジスターTGPのソース及びドレインの一方と、N型トランジスターTGNのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続される。P型トランジスターTGPのソース及びドレインの他方と、N型トランジスターTGNのソース及びドレインの他方が出力ノードNOUTに接続される。トランスファーゲート15の入力ノードNINに入力信号が入力される。トランスファーゲート15がオンのとき、トランスファーゲート15は入力信号を通過させて出力ノードNOUTに出力信号を出力する。
【0103】
制御回路35は、トランスファーゲート15のトランジスターサイズ比を制御する。トランジスターサイズ比は、N型トランジスターTGNのサイズに対するP型トランジスターTGPのサイズの比である。トランジスターサイズとは、トランジスターのゲートサイズのことである。制御回路35は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比を第1値にする制御を行う。制御回路35は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比を第2値にする制御を行う。第2値は第1値より大きい。第2電圧範囲は、第1電圧範囲より低い電圧範囲である。第1、第2電圧範囲の詳細は、上述した通りである。
【0104】
制御回路35は、入力信号の電圧が属する電圧範囲を、出力回路85に出力される表示データGD[9:0]に基づいて判断する。出力回路85は、表示データGD[9:0]に対応した電圧をトランスファーゲート15の入力ノードNINに出力するので、制御回路35は、表示データGD[9:0]から入力信号の電圧を判断できる。
【0105】
本実施形態によれば、入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比が第1値に設定される。「トランジスターサイズ比が第1値に設定される」とは、P型トランジスターのサイズ、又はN型トランジスターのサイズ、又はそれら両方が、第1値に対応したサイズに設定されることである。トランジスターサイズ比が、第2値より小さい第1値に設定されることで、N型トランジスターの寄生容量に対するP型トランジスターの寄生容量の比が小さくなる。これは、図3において、高電圧側における寄生容量の差CDIFを縮小させることに相当する。これにより、トランスファーゲート15が出力ノードNOUTに注入する電荷量が減少する。
【0106】
また本実施形態によれば、入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比が第2値に設定される。トトランジスターサイズ比が、第1値より大きい第2値に設定されることで、N型トランジスターの寄生容量に対するP型トランジスターの寄生容量の比が大きくなる。これは、図3において、低電圧側における寄生容量の差CDIFを縮小させることに相当する。これにより、トランスファーゲート15が出力ノードNOUTから排出する電荷量が減少する。
【0107】
以上のように、本実施形態によれば、入力信号の電圧に依存してトランスファーゲート15が出力ノードNOUTに排出又は注入する電荷量を低減できるので、トランスファーゲート15が発生するフィードスルーノイズが、適切に低減される。
【0108】
第3構成例におけるトランスファーゲート15の詳細構成を説明する。
【0109】
P型トランジスターTGPは、P型サブトランジスター群であるP型サブトランジスターTGP1~TGPrを含む。rは2以上の整数である。P型サブトランジスターTGP1~TGPrは、入力ノードNINと出力ノードNOUTの間に並列接続される。即ち、P型サブトランジスターTGP1~TGPrのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続され、他方が出力ノードNOUTに接続される。
【0110】
N型トランジスターTGNは、N型サブトランジスター群であるN型サブトランジスターTGN1~TGNqを含む。qは2以上の整数である。N型サブトランジスターTGN1~TGNqは、入力ノードNINと出力ノードNOUTの間に並列接続される。即ち、N型サブトランジスターTGN1~TGNqのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続され、他方が出力ノードNOUTに接続される。
【0111】
制御回路35は、P型サブトランジスターTGP1~TGPrのゲートに制御信号STGP1~STGPrを出力することで、P型トランジスターTGPのサイズを制御する。即ち、制御回路35は、トランスファーゲート15をオフする際に、P型サブトランジスターTGP1~TGPrのうち1又は複数のP型サブトランジスターをオンからオフにする。即ち、制御回路35は、オンからオフにするP型サブトランジスターの合計トランジスターサイズを制御している。
【0112】
また制御回路35は、N型サブトランジスターTGN1~TGNqのゲートに制御信号STGN1~STGNqを出力することで、N型トランジスターTGNのサイズを制御する。即ち、制御回路35は、トランスファーゲート15をオフする際に、N型サブトランジスターTGN1~TGNqのうち1又は複数のN型サブトランジスターをオンからオフにする。即ち、制御回路35は、オンからオフにするN型サブトランジスターの合計トランジスターサイズを制御している。
【0113】
制御回路35は、トランスファーゲート15をオフする際に、オンからオフにするP型サブトランジスターの合計トランジスターサイズと、オンからオフにするN型サブトランジスターの合計トランジスターサイズとの比により、トランジスターサイズ比を制御する。
【0114】
制御回路35は、フィードスルーノイズ低減制御の設定情報を記憶するレジスター36を含む。設定情報は、P型サブトランジスター群及びN型サブトランジスター群のうちオンオフさせるサブトランジスターを指定する情報である。制御回路35は、レジスター36に記憶された設定情報に基づいてP型サブトランジスターTGP1~TGPrに制御信号STGP1~STGPrを出力し、N型サブトランジスターTGN1~TGNqに制御信号STGN1~STGNqを出力することで、トランジスターサイズ比を制御する。
【0115】
図17図18は、スイッチ回路45の第3構成例における動作を説明する波形図である。ここでは第1電圧範囲を7.5V~12.5Vとし、第2電圧範囲を7.5V~2.5Vとし、q=r=2とする。
【0116】
第1P型サブトランジスターであるP型サブトランジスターTGP1は、第2P型サブトランジスターであるP型サブトランジスターTGP2よりサイズが大きい。例えば、P型サブトランジスターTGP1とTGP2のゲート長は同じであり、P型サブトランジスターTGP1のゲート幅がP型サブトランジスターTGP2のゲート幅より大きい。
【0117】
第1N型サブトランジスターであるN型サブトランジスターTGN1は、第2N型サブトランジスターであるN型サブトランジスターTGN2よりサイズが大きい。例えば、N型サブトランジスターTGN1とTGN2のゲート長は同じであり、N型サブトランジスターTGN1のゲート幅がN型サブトランジスターTGN2のゲート幅より大きい。例えば、N型サブトランジスターTGN1、TGN2のサイズは、それぞれP型サブトランジスターTGP1、TGP2のサイズと同じである。
【0118】
図17には、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第1電圧範囲であるときの波形例を示す。制御回路35は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて、制御信号STGP1をローレベルからハイレベルにし、制御信号STGN2をハイレベルからローレベルにする。これにより、P型サブトランジスターTGP1及びN型サブトランジスターTGN2がオンからオフになる。P型サブトランジスターTGP2とN型サブトランジスターTGN1のオンオフ状態は変化しない。
【0119】
図18には、トランスファーゲート15の入力信号の電圧が第2電圧範囲であるときの波形例を示す。制御回路35は、トランスファーゲート15がオフするタイミングにおいて、制御信号STGP2をローレベルからハイレベルにし、制御信号STGN1をハイレベルからローレベルにする。これにより、P型サブトランジスターTGP2及びN型サブトランジスターTGN1がオンからオフになる。P型サブトランジスターTGP1とN型サブトランジスターTGN2のオンオフ状態は変化しない。
【0120】
本実施形態によれば、第1電圧範囲では、P型サブトランジスター群のうちサイズが小さい方のP型サブトランジスターTGP1と、N型サブトランジスター群のうちサイズが大きい方のN型サブトランジスターTGN2が、オンからオフになる。これにより、トランジスターサイズ比が第1値となる。一方、第2電圧範囲では、P型サブトランジスター群のうちサイズが大きい方のP型サブトランジスターTGP2と、N型サブトランジスター群のうちサイズが小さい方のN型サブトランジスターTGN1が、オンからオフになる。これにより、トランジスターサイズ比が、第1値より大きい第2値となる。
【0121】
なお、P型サブトランジスター及びN型サブトランジスターのサイズは上記に限定されない。例えば、P型サブトランジスターTGP1~TGPrは同一サイズであってもよいし、N型サブトランジスターTGN1~TGNqは同一サイズであってもよい。この場合、オンオフさせるサブトランジスターの個数によりトランジスターサイズ比が制御される。
【0122】
なお、上記では第1、第2電圧範囲を設定した場合を例に説明したが、電圧範囲の設定はこれに限定されず、例えば第1~第4電圧範囲を設定してもよい。高い電圧から第1、第3、第4、第2電圧範囲の順である。第3電圧範囲におけるトランジスターサイズ比よりも、第1電圧範囲におけるトランジスターサイズ比の方が小さい。また、第4電圧範囲におけるトランジスターサイズ比おりも、第2電圧範囲におけるトランジスターサイズ比の方が大きい。
【0123】
図19は、スイッチ回路45の第4構成例である。スイッチ回路45は、トランスファーゲート15と補助トランスファーゲート16とを含む。トランスファーゲート15の構成は第3構成例と同じである。
【0124】
補助トランスファーゲート16は、P型補助トランジスターSPとN型補助トランジスターSNとを含む。P型補助トランジスターSP及びN型補助トランジスターSNは、トランスファーゲート15と並列接続される。即ち、P型補助トランジスターSPのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続され、他方が出力ノードNOUTに接続される。N型補助トランジスターSNのソース及びドレインの一方が入力ノードNINに接続され、他方が出力ノードNOUTに接続される。
【0125】
補助トランスファーゲート16の合計トランジスターサイズは、トランスファーゲート15の合計トランジスターサイズより小さい。即ち、P型補助トランジスターSPのサイズは、P型サブトランジスターTGP1~TGPrの合計サイズより小さい。N型補助トランジスターSNのサイズは、N型サブトランジスターTGN1~TGNqの合計サイズより小さい。例えば、P型補助トランジスターSPのサイズは、P型サブトランジスターTGP1~TGPrの合計サイズの1/2以下であり、N型補助トランジスターSNのサイズは、N型サブトランジスターTGN1~TGNqの合計サイズの1/2以下である。
【0126】
制御回路35は、補助トランスファーゲート16を制御する。即ち、制御回路35は、制御信号SSPをP型補助トランジスターSPのゲートに出力することで、P型補助トランジスターSPのオンオフを制御する。制御回路35は、制御信号SSNをN型補助トランジスターSNのゲートに出力することで、N型補助トランジスターSNのオンオフを制御する。
【0127】
図20は、スイッチ回路45の第4構成例における動作を説明する波形図である。ここではq=r=2とする。図20では、図17で説明した第1電圧範囲におけるトランスファーゲート15の動作を例に、補助トランスファーゲート16の動作を説明する。但し、第2電圧範囲等においても、補助トランスファーゲート16の動作は同様である。
【0128】
制御回路35は、トランスファーゲート15がオンからオフになった後に、補助トランスファーゲート16をオンからオフにする制御を行う。
【0129】
具体的には、制御回路35は、制御信号STGP1をハイレベルからローレベルにし、制御信号STGN2をローレベルからハイレベルにすることで、P型サブトランジスターTGP1及びN型サブトランジスターTGN2をオフからオンにする。このタイミングにおいて、制御回路35は、制御信号SSPをハイレベルからローレベルにし、制御信号SSNをローレベルからハイレベルにすることで、P型補助トランジスターSP及びN型補助トランジスターSNをオフからオンにする。
【0130】
次に、制御回路35は、制御信号STGP1をローレベルからハイレベルにし、制御信号STGN2をハイレベルからローレベルにすることで、P型サブトランジスターTGP1及びN型サブトランジスターTGN2をオンからオフにする。このタイミングより後のタイミングにおいて、制御回路35は、制御信号SSPをローレベルからハイレベルにし、制御信号SSNをハイレベルからローレベルにすることで、P型補助トランジスターSP及びN型補助トランジスターSNをオンからオフにする。
【0131】
トランスファーゲート15がオフになった後に補助トランスファーゲート16がオフになることで、出力ノードNOUTのフィードスルーノイズを、補助トランスファーゲート16を介して入力ノードNINに逃がすことが可能となる。トランスファーゲート15のトランジスターサイズ比が制御されることでフィードスルーノイズが低減されているが、補助トランスファーゲート16を用いることで、更にフィードスルーノイズを低減できる。
【0132】
また、補助トランスファーゲート16のサイズはトランスファーゲート15のサイズより小さいので、補助トランスファーゲート16が発生するフィードスルーノイズは、トランスファーゲート15が発生するフィードスルーノイズより小さい。このため、補助トランスファーゲート16がオフするとき、フィードスルーノイズの影響は小さい。
【0133】
図1の回路装置100では、トランスファーゲート15の入力ノードNINにキャパシター回路82が接続されており、トランスファーゲート15の出力ノードNOUTにアンプ回路80の入力ノードが接続されている。キャパシター回路82の容量は、アンプ回路80の入力ノードの寄生容量より大きいため、トランスファーゲート15の入力ノードNINの方がフィードスルーノイズによる影響を受けにくい。本実施形態では、補助トランスファーゲート16を遅れてオフすることで、補助トランスファーゲート16を介してフィードスルーノイズをキャパシター回路82に吸収させることが可能であり、出力ノードNOUTのフィードスルーノイズを効果的に低減できる。
【0134】
5.回路装置の第4構成例
以上ではスイッチ回路45を表示ドライバーに適用した場合を例に説明したが、スイッチ回路45は種々の回路装置に適用可能である。その一例として、図21に回路装置100の第4構成例を示す。第4構成例では、スイッチ回路45をサンプルホールド回路に適用している。サンプルホールド回路は、例えばA/D変換回路の入力部、或いはスイッチドキャパシターフィルターの入力部に用いられる。
【0135】
図21に示す回路装置100は、制御回路35とスイッチ回路45と検出回路65とキャパシターCSMPとスイッチSWSMPとを含む。スイッチ回路45はトランスファーゲート15を含む。なお、スイッチ回路45が第1、第2構成例の場合、スイッチ回路45は更に電荷補償回路25を含む。或いは、スイッチ回路45が第4構成例の場合、スイッチ回路45は更に補助トランスファーゲート16を含む。
【0136】
制御回路35は、サンプリング期間においてトランスファーゲート15をオンにし、スイッチSWSMPをオフにする。これにより、トランスファーゲート15の入力ノードNINに入力された入力信号が、トランスファーゲート15の出力ノードNOUTに接続されたキャパシターCSMPにサンプリングされる。制御回路35は、ホールド期間においてトランスファーゲート15をオフにし、スイッチSWSMPをオンにする。これにより、キャパシターCSMPに入力信号がホールドされ、そのホールドされた信号がスイッチSWSMPを介して出力される。
【0137】
制御回路35は、スイッチ回路45に対してフィードスルーノイズ低減制御を行う。このフィードスルーノイズ低減制御についてはスイッチ回路45の第1~第4構成例で説明した通りである。
【0138】
検出回路65は、入力ノードNINに入力された入力信号の電圧が属する電圧範囲を検出する。例えば、検出回路65は、入力信号の電圧と、電圧範囲を検出するための基準電圧とを比較するコンパレーターである。制御回路35は、検出回路65が検出した電圧範囲に応じてトランスファーゲート15に制御信号を出力する。トランスファーゲート15は、その制御信号に基づいてスイッチングする。
【0139】
6.電気光学装置、電子機器
図22は、回路装置100を含む電気光学装置350の構成例である。電気光学装置350は、回路装置100、電気光学パネル200を含む。図22における回路装置100は表示ドライバーである。
【0140】
電気光学パネル200は、例えばアクティブマトリックス型の液晶表示パネルである。例えば回路装置100はフレキシブル基板に実装され、そのフレキシブル基板が電気光学パネル200に接続され、フレキシブル基板に形成された配線によって回路装置100のデータ電圧出力端子と電気光学パネル200のデータ電圧入力端子とが接続される。或いは、回路装置100はリジッド基板に実装され、リジッド基板と電気光学パネル200とがフレキシブル基板により接続され、リジッド基板及びフレキシブル基板に形成された配線によって回路装置100のデータ電圧出力端子と電気光学パネル200のデータ電圧入力端子とが接続されてもよい。
【0141】
図23は、回路装置100を含む電子機器300の構成例である。電子機器300は、処理装置310、表示コントローラー320、回路装置100、電気光学パネル200、記憶部330、通信部340、操作部360を含む。記憶部330は記憶装置又はメモリーとも呼ぶ。通信部340は通信回路又は通信装置とも呼ぶ。操作部360は操作装置とも呼ぶ。図23では回路装置100が表示ドライバーである場合を例に説明するが、電子機器300が含む回路装置100は表示ドライバーに限定されない。例えば、電子機器400は、図21で説明したサンプルホールド回路を含む回路装置100を含んでもよい。
【0142】
電子機器300の具体例としては、例えばプロジェクターやヘッドマウントディスプレイ、携帯情報端末、車載装置、携帯型ゲーム端末、情報処理装置等の、表示装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。車載装置は、例えばメーターパネル、カーナビゲーションシステム等である。
【0143】
操作部360は、ユーザーからの種々の操作を受け付けるユーザーインターフェースである。例えば、ボタンやマウスやキーボード、電気光学パネル200に装着されたタッチパネル等である。通信部340は、画像データや制御データの入出力を行うデータインターフェースである。通信部340は、例えば無線LANや近距離無線通信等の無線通信インターフェース、或いは有線LANやUSB等の有線通信インターフェースである。記憶部330は、例えば通信部340から入力されたデータを記憶したり、或いは、処理装置310のワーキングメモリーとして機能したりする。記憶部330は、例えばRAMやROM等のメモリー、或いはHDD等の磁気記憶装置、或いはCDドライブ、DVDドライブ等の光学記憶装置等である。表示コントローラー320は、通信部340から入力された或いは記憶部330に記憶された画像データを処理して回路装置100に転送する。回路装置100は、表示コントローラー320から転送された画像データに基づいて電気光学パネル200に画像を表示させる。処理装置310は、電子機器300の制御処理及び、種々の信号処理等を行う。処理装置310は、例えばCPUやMPU等のプロセッサー、或いはASIC等である。
【0144】
例えば電子機器300がプロジェクターである場合、電子機器300は更に光源と光学系とを含む。光学系は、例えばレンズ、プリズム、ミラー等である。電気光学パネル200が透過型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル200に入射させ、電気光学パネル200を透過した光をスクリーンに投影させる。電気光学パネル200が反射型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル200に入射させ、電気光学パネル200から反射された光をスクリーンに投影させる。
【0145】
以上に説明した本実施形態の回路装置は、回路装置は、トランスファーゲートを有するスイッチ回路と、スイッチ回路を制御する制御回路と、演算増幅器を有するアンプ回路と、判定回路と、を含む。アンプ回路には、トランスファーゲートの出力ノードの信号が入力される。判定回路は、演算増幅器の出力端子又は入力端子に出力されるトランスファーゲートのフィードスルーノイズを判定する。制御回路は、判定回路の判定結果に基づいて、フィードスルーノイズを低減するフィードスルーノイズ低減制御をスイッチ回路に対して行う。
【0146】
本実施形態によれば、トランスファーゲートの入力信号の電圧に応じて変動するフィードスルーノイズを、判定回路が判定できる。そして、制御回路が判定結果に基づいてフィードスルーノイズ低減制御を行うことで、トランスファーゲートの入力信号の電圧に応じて変動するフィードスルーノイズを適切に低減できる。
【0147】
また本実施形態では、スイッチ回路は電荷補償回路を有してもよい。電荷補償回路は、トランスファーゲートの出力ノードに接続され、トランスファーゲートの出力ノードからの電荷排出又はトランスファーゲートの出力ノードへの電荷注入を行ってもよい。制御回路は、フィードスルーノイズ低減制御として、電荷補償回路に対する制御を行ってもよい。
【0148】
このようにすれば、制御回路が電荷補償回路に対する制御を行い、電荷補償回路が、制御回路による制御に基づいて電荷排出又は電荷注入を行うことで、フィードスルーノイズが低減される。
【0149】
また本実施形態では、トランスファーゲートは、入力ノードと出力ノードの間に並列接続されるP型トランジスター及びN型トランジスターを有してもよい。トランスファーゲートの入力ノードに入力信号が入力されてもよい。電荷補償回路は、制御回路からの制御に基づいて、トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、電荷排出を行ってもよい。電荷補償回路は、トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲より低い第2電圧範囲であるとき、電荷注入を行ってもよい。
【0150】
このようにすれば、入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、電荷補償回路が電荷排出を行うことで、トランスファーゲートの電荷注入によるフィードスルーノイズを低減できる。また入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、電荷補償回路が電荷注入を行うことで、トランスファーゲートの電荷排出によるフィードスルーノイズを低減できる。これにより、入力信号の電圧に依存したフィードスルーノイズを適切に低減できる。
【0151】
また本実施形態では、トランスファーゲートは、入力ノードと出力ノードの間に並列接続されるP型トランジスター及びN型トランジスターを有してもよい。トランスファーゲートの入力ノードに入力信号が入力されてもよい。制御回路は、フィードスルーノイズ低減制御として、N型トランジスターのサイズに対するP型トランジスターのサイズの比であるトランジスターサイズ比の制御を行ってもよい。
【0152】
このようにすれば、制御回路がトランスファーゲートのトランジスターサイズ比の制御を行い、トランスファーゲートが、制御回路により制御されたトランジスターサイズ比でオンオフすることで、フィードスルーノイズが低減される。
【0153】
また本実施形態では、制御回路は、トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、N型トランジスターのサイズに対するP型トランジスターのサイズの比であるトランジスターサイズ比を第1値となるように制御してもよい。制御回路は、トランスファーゲートがオフするタイミングにおいて入力信号の電圧が第1電圧範囲より低い第2電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比を、第1値より大きい第2値にするように制御してもよい。
【0154】
本実施形態によれば、入力信号の電圧が第1電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比が、第2値より小さい第1値に設定されるので、N型トランジスターの寄生容量に対するP型トランジスターの寄生容量の比が小さくなる。これにより、第1電圧範囲においてN型トランジスターとP型トランジスターの寄生容量の差が縮小する。また、入力信号の電圧が第2電圧範囲であるとき、トランジスターサイズ比が、第1値より大きい第2値に設定されるので、N型トランジスターの寄生容量に対するP型トランジスターの寄生容量の比が大きくなる。これにより、第2電圧範囲においてN型トランジスターとP型トランジスターの寄生容量の差が縮小する。以上により、入力信号の電圧に依存してトランスファーゲートが発生するフィードスルーノイズを、入力信号の電圧に応じて適切に低減できる。
【0155】
また本実施形態では、判定回路は、DCカット用キャパシターとバイアス回路と第1比較回路と第2比較回路とを有してもよい。DCカット用キャパシターは、演算増幅器の出力端子又は入力端子と、判定ノードとの間に設けられてもよい。バイアス回路は、判定ノードをバイアス電圧に設定してもよい。第1比較回路は、判定ノードの電圧と、バイアス電圧より高い第1判定電圧とを比較してもよい。第2比較回路は、判定ノードの電圧と、バイアス電圧より低い第2判定電圧とを比較してもよい。
【0156】
アンプ回路の入力ノードには、トランスファーゲートの出力ノードの信号が入力されるので、演算増幅器の出力端子又は入力端子の電圧はフィードスルーノイズにより変動する。この電圧は、DCカット用キャパシターを介して判定ノードに伝わる。そして、判定ノードの電圧と第1、第2判定電圧とが比較されることで、フィードスルーノイズが判定される。
【0157】
また本実施形態では、アンプ回路は、基準電圧を基準として出力ノードの信号を反転増幅する反転増幅回路であってもよい。判定回路は、第1判定回路と第2判定回路とを有してもよい。第1判定回路は、演算増幅器の入力端子のノードである判定ノードの電圧と、基準電圧より高い第1判定電圧とを比較してもよい。第2判定回路は、判定ノードの電圧と、基準電圧より低い第2判定電圧とを比較してもよい。
【0158】
反転増幅回路において、演算増幅器の入力端子はバーチャルショートにより基準電圧となっている。このため、判定ノードにおけるフィードスルーノイズは、基準電圧を中心として変動することになる。これにより、第1、第2判定回路は、基準電圧を基準とする第1、第2判定電圧を用いてフィードスルーノイズを判定できる。
【0159】
また本実施形態では、回路装置は、入力データに基づいてトランスファーゲートの入力ノードに入力信号を出力する出力回路を含んでもよい。制御回路は、入力データと判定結果に基づいて、フィードスルーノイズ低減制御をスイッチ回路に対して行ってもよい。
【0160】
出力回路が入力データに基づいてトランスファーゲートの入力ノードに入力信号を出力するので、入力データは入力信号の電圧に対応したデータとなっている。これにより、制御回路は、入力データに基づいて、入力信号の電圧が属する電圧範囲を判断できる。
【0161】
また本実施形態では、回路装置はD/A変換回路を含んでもよい。D/A変換回路は、入力データをD/A変換したD/A変換電圧を、出力ノードに出力してもよい。トランスファーゲートがオンであるとき、出力回路が入力信号を入力ノードに出力することで、入力信号に対応した出力信号が出力ノードに出力されてもよい。トランスファーゲートがオンからオフになった後、D/A変換回路がD/A変換電圧を出力ノードに出力されてもよい。
【0162】
トランスファーゲートが発生するフィードスルーノイズは、アンプ回路が出力する信号の精度に影響を与える。本実施形態によれば、フィードスルーノイズ低減が行われるので、アンプ回路が出力する信号の精度を向上できる。トランスファーゲートが発生するフィードスルーノイズは、トランスファーゲートがオフになった後にD/A変換回路によって収束される。しかし、D/A変換回路がD/A変換電圧を出力する期間内にフィードスルーノイズを収束しきれない可能性がある。本実施形態によれば、フィードスルーノイズ低減が行われるので、D/A変換回路がD/A変換電圧を出力する期間内にフィードスルーノイズを許容誤差内まで収束できる。
【0163】
また本実施形態では、アンプ回路は、電気光学パネルを駆動してもよい。
【0164】
本実施形態によれば、電荷補償回路がフィードスルーノイズを低減することで、アンプ回路が出力する信号の精度を向上できる。これにより、電気光学パネルを駆動するデータ電圧の精度を向上できるので、表示品質が向上する。
【0165】
また本実施形態では、回路装置は判定用スイッチを含んでもよい。判定用スイッチは、演算増幅器の出力端子又は入力端子と、判定回路との間に設けられてもよい。アンプ回路は、電気光学パネルを駆動してもよい。判定用スイッチは、判定回路がフィードスルーノイズを判定するときオンになり、アンプ回路が電気光学パネルを駆動するときオフになってもよい。
【0166】
このようにすれば、判定回路がフィードスルーノイズを判定するとき判定用スイッチがオンになることで、判定回路がフィードスルーノイズを判定できる。そして、アンプ回路が電気光学パネルを駆動するとき判定用スイッチがオフになることで、アンプ回路の出力ノードから判定回路が切断されるので、アンプ回路が電気光学パネルを駆動するときに判定回路が負荷にならない。
【0167】
また本実施形態では、制御回路は、判定回路の判定結果に基づく設定情報を記憶するレジスターを有してもよい。制御回路は、アンプ回路が電気光学パネルを駆動するとき、レジスターに記憶された設定情報に基づいてスイッチ回路を制御してもよい。
【0168】
このようにすれば、アンプ回路が電気光学パネルを駆動する前に、予め判定回路の判定結果に基づく設定情報をレジスターに記憶させることができる。そして、制御回路は、アンプ回路が電気光学パネルを駆動するとき、レジスターに記憶された設定情報に基づいてスイッチ回路を制御できる。
【0169】
また本実施形態の電気光学装置は、上記に記載の回路装置と、電気光学パネルと、を含む。
【0170】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む。
【0171】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、電気光学装置及び電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0172】
15…トランスファーゲート、16…補助トランスファーゲート、25…電荷補償回路、35…制御回路、36…レジスター、45…スイッチ回路、51…コンパレーター、52…コンパレーター、55…判定回路、56…バイアス回路、60…基準電圧生成回路、65…検出回路、70…D/A変換回路、80…アンプ回路、82…キャパシター回路、84…キャパシター駆動回路、85…出力回路、100…回路装置、200…電気光学パネル、300…電子機器、310…処理装置、320…表示コントローラー、330…記憶部、340…通信部、350…電気光学装置、360…操作部、400…電子機器、AMVD…演算増幅器、CC1~CCt…キャパシター、CDC…キャパシター、CJ…キャパシター、DC1~DCt…制御信号、DRC1~DRCt…駆動回路、GD[9:0]…表示データ、NIN…入力ノード、NMON…判定ノード、NOUT…出力ノード、NT1~NTb…N型トランジスター、PT1~PTa…P型トランジスター、SNT1~SNTb…制御信号、SSN…制御信号、SSP…制御信号、STGN…制御信号、STGN1~STGNq…制御信号、STGP…制御信号、STGP1~STGPr…制御信号、SWMON…スイッチ、TGN…N型トランジスター、TGP…P型トランジスター、TGN1~TGNq…N型サブトランジスター、TGP1~TGPr…P型サブトランジスター、VBI…バイアス電圧、VC…基準電圧、VRA…判定電圧、VRB…判定電圧
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