(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】無線通信機及び無線通信機のバンドスコープ表示方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20231205BHJP
H04B 17/23 20150101ALI20231205BHJP
G01R 23/16 20060101ALI20231205BHJP
G01R 23/173 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04B1/16 C
H04B17/23
G01R23/16 E
G01R23/173 C
G01R23/173 H
(21)【出願番号】P 2019172910
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】松橋 啓一
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036374(JP,A)
【文献】特開2014-036375(JP,A)
【文献】特開平08-184619(JP,A)
【文献】特開2012-042462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 17/23
G01R 23/16
G01R 23/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯域の信号強度を測定するスペクトラム・アナライザと、
前記信号強度の分布を示す周波数スペクトルを表示する表示部と、
前記周波数帯域内の復調する受信信号の周波数を設定する制御部と、
前記制御部に設定された周波数の受信信号を復調する情報用受信部と、を備え、
前記制御部は、
前記情報用受信部が復調した前記受信信号から
通信元、通信先の識別情報を抽出し、
前記表示部の前記周波数スペクトルの表示上における前記受信信号に対応する周波数の位置に関連させて、前記識別情報の表示を
前記表示部に追加する、
無線通信機。
【請求項2】
前記制御部が、前記情報用受信部に設定する周波数は、
前記スペクトラム・アナライザが測定した信号強度が、所定の閾値以上の周波数を設定する、
請求項1に記載の無線通信機。
【請求項3】
周波数と、その周波数に関する所定の情報と、を関連させて記憶する記憶部を備え、
前記制御部が、前記情報用受信部に設定する周波数は、前記スペクトラム・アナライザが測定する所定の周波数帯域の範囲内で、前記記憶部に記憶された周波数を設定する、
請求項1に記載の無線通信機。
【請求項4】
自位置を測位する位置検出部を備え、
前記記憶部が記憶する所定の情報は位置情報を含み、
前記制御部が、前記情報用受信部に設定する周波数は、設定する周波数が対応する位置情報が示す位置と自位置との距離が所定の距離以下である請求項3に記載の無線通信機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記表示部に前記スペクトラム・アナライザが測定した信号強度を色調の変化により、周波数毎に時系列で表示するウォータフォールを表示させ、
前記情報用受信部が復調した受信信号から
前記識別情報を抽出し、前記ウォータフォールの表示上における前記受信信号に対応する周波数の位置に関連させて、前記識別情報の表示を追加する請求項1に記載の無線通信機。
【請求項6】
所定の周波数帯域の周波数の信号強度の分布を示す周波数スペクトルを少なくとも含むバンドスコープを、表示部に表示させる表示ステップと、
前記周波数帯域内の周波数を設定し、前記周波数の受信信号を復調する情報用受信ステップと、
前記受信信号から
通信元、通信先の識別情報を抽出し、
前記表示部の前記周波数スペクトルの表示上における前記受信信号に対応する周波数の位置に関連させて、前記識別情報の表示を
前記表示部に追加する表示追加ステップと、
を含む無線通信機のバンドスコープ表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機及び無線通信機のバンドスコープ表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機の中には、表示部においてバンドスコープを表示するものがある。バンドスコープは、所定の周波数帯域における受信信号の信号強度の分布を、周波数スペクトルによって確認することができるスペクトラム・アナライザである。無線通信機にバンドスコープの表示があると、無線通信機のユーザがバンドプランに定められた周波数帯域の中から通話に使用する周波数を選択する際に、便利である。
【0003】
バンドスコープを表示する無線通信機の中でも、特に、周波数毎の信号強度を時系列で示すウォータフォール形式のバンドスコープを表示する無線通信機では、各周波数の利用状況の履歴を把握できる。この種の無線通信機は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
例えば、半二重通信方式の通信に使用されている周波数では、通話中は信号強度が検出されるが、通話と通話とのインターバルには信号が検出されない。この場合にも、特許文献1に記載の無線通信機のように、ウォータフォール形式のバンドスコープで各周波数の利用状況の履歴を確認できれば、通話に使用されている周波数かどうかを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通話に使用されている周波数であることは判断できるものの、送信元や送信先の特定は出来ないため、通話に使用する周波数を選択するにあたり、改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、通話に使用する周波数の選択の利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の第1の態様に係る無線通信機は、
所定の周波数帯域の信号強度を測定するスペクトラム・アナライザと、
前記信号強度の分布を示す周波数スペクトルを表示する表示部と、
前記周波数帯域内の復調する受信信号の周波数を設定する制御部と、
前記制御部に設定された周波数の受信信号を復調する情報用受信部と、を備え、
前記制御部は、
前記情報用受信部が復調した前記受信信号から識別情報を抽出し、前記周波数スペクトルの表示上における前記受信信号に対応する周波数の位置に関連させて、前記識別情報の表示を追加する。
【0009】
また、上記目的を達成するため本発明の第2の態様に係る無線通信機のバンドスコープ表示方法は、
所定の周波数帯域の信号強度の分布を示す周波数スペクトルを少なくとも含むバンドスコープを、表示部に表示させる表示ステップと、
前記周波数帯域内の周波数を設定し、前記周波数の受信信号を復調する情報用受信ステップと、
前記受信信号から識別情報を抽出し、前記周波数スペクトルの表示上における前記受信信号に対応する周波数の位置に関連させて、前記識別情報の表示を追加する表示追加ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通話に使用する周波数の選択の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信機を示すブロック図である。
【
図3】
図1のタッチパネルに表示されるバンドスコープの一例を示す説明図である。
【
図4】
図1の無線通信機において実行されるバンドスコープ表示方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の制御部がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムを実行することで行うデコード対象決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の制御部がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムを実行することで行うデコード対象決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図1の制御部がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムを実行することで行うデコード処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の制御部がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムを実行することで行う表示追加処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図1の制御部がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムを実行することで行う表示更新処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図3のバンドスコープに中継局のコールサイン、呼称が追加表示された状態を示す説明図である。
【
図11】
図3のバンドスコープのレピータマーカの箇所にコールサイン、呼称を追加表示する中継局を設定する際にユーザが行うタッチパネルのタッチ操作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一あるいは同等の部位、又は構成要素には、同一の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものである。この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置、機能等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る無線通信機100を示すブロック図である。
図1に示す本実施形態の無線通信機100は、アマチュア無線の無線送受信機として使用される。無線通信機100は、全体制御用の制御部10を有している。制御部10はマイクロコンピュータによって構成できる。
【0015】
無線通信機100は、制御部10の他に、アンテナ11、信号強度測定用受信部12、信号強度測定部13及び信号強度記憶部14を有している。また、無線通信機100は、通話用送信部15、マイクロホン16、通話用受信部17、情報用受信部18、スピーカ19、エンコーダ20及び同調つまみ21を有している。さらに、無線通信機100は、液晶駆動部22、タッチパネル23、接触検出部24、操作部25、不揮発性メモリ26及び位置検出部27を有している。
【0016】
アンテナ11は電波を受信し、受信信号を信号強度測定用受信部12、通話用受信部17及び情報用受信部18に供給する。
【0017】
信号強度測定用受信部12は、所定の周波数帯域の範囲内で測定周波数を順次変更して電波を受信し、それぞれの周波数の信号を検波する。周波数帯域は例えば100KHzである。信号強度測定用受信部12が検波したそれぞれの周波数の信号は、信号強度測定部13に供給される。
【0018】
信号強度測定部13は、それぞれの周波数の信号強度を測定する。信号強度測定部13は、例えば、周波数帯域100KHz内の640箇所の周波数における信号強度を測定する。信号強度測定部13で測定された信号強度を示す信号強度データは、信号強度記憶部14に一時的に記憶される。信号強度記憶部14は、最新の信号強度データだけでなく、最新の信号強度データを含めて例えば3秒間の信号強度データを記憶する。信号強度データは制御部10に供給される。
【0019】
信号強度測定用受信部12と、信号強度測定部13と、信号強度記憶部14とは、スペクトラム・アナライザ用受信部SRを構成する。スペクトラム・アナライザ用受信部SRは、無線通信機100の通信では使用しない独立した受信部である。また、スペクトラム・アナライザ用受信部SRは、信号強度測定用の受信信号に対してAD変換を行った後、高速フーリエ変換により、リアルタイムで所定の帯域の信号検出処理を行う受信部であってもよい。
【0020】
スペクトラム・アナライザ用受信部SRは、制御部10及び液晶駆動部22と共に、スペクトラム・アナライザ機能部SAを構成する。スペクトラム・アナライザ機能部SAは、後述するバンドスコープをタッチパネル23の液晶パネル231において表示する。スペクトラム・アナライザ用受信部SRは、スペクトラム・アナライザ機能部SAがバンドスコープを液晶パネル231に表示するために使用される。
【0021】
スペクトラム・アナライザ機能部SAは、通信に用いることができる周波数帯域のどの周波数に他者の送信信号が存在するかを確認するために、無線通信機100に設けられる構成である。スペクトラム・アナライザ機能部SAは、横軸を周波数、縦軸を信号強度とする周波数スペクトルを表示するスペクトラム・アナライザと同等の機能を有している。
【0022】
通話用送信部15は、マイクロホン16からの音声信号を変調してアンテナ11より送信する。即ち、通話用送信部15は、所定の周波数帯域内の周波数を用い通話信号で変調した送信信号を送信する通話用受信部17は、アンテナ11からの受信信号のうち、選択された受信周波数の信号を復調する。
【0023】
情報用受信部18は、アンテナ11からの受信信号の内容に関する情報を取得するために、受信信号のうち信号強度測定用受信部12が受信する所定の周波数帯域の範囲内の指定された周波数の信号を復調する。情報用受信部18が有する受信ユニットは、単数であっても複数であってもよい。受信ユニットが多いほど、所定の周波数帯域内の周波数の信号を短時間でより多く受信することができる。
【0024】
なお、情報用受信部18の受信周波数は、例えば、後述する手順によって制御部10が指定することができる。また、情報用受信部18を独立して設けず、信号を受信していないときの信号強度測定用受信部12が情報用受信部18を兼ねる構成としてもよい。本実施形態では、情報用受信部18が、複数の受信ユニットを有し、信号強度測定用受信部12とは独立して設けられている場合について説明する。
【0025】
また、スペクトラム・アナライザ用受信部SR、通話用受信部17及び情報用受信部18は、コントローラを有する独立のモジュールでそれぞれ構成することができる。この場合、スペクトラム・アナライザ用受信部SR、通話用受信部17及び情報用受信部18の各動作は、それぞれのモジュールに設けたコントローラで個別に制御してもよい。
【0026】
但し、本実施形態では、スペクトラム・アナライザ用受信部SR、通話用受信部17及び情報用受信部18がそれぞれ個別のコントローラを有しておらず、上述した全体制御用の制御部10が各受信部SR,17,18の動作を全て制御するものとして説明する。
【0027】
本実施形態の無線通信機100は、アマチュア無線の通信に対応している。アマチュア無線の通信方式としては、例えば、D-STAR(Digital Smart Technologies for Amateur Radio。登録商標、以下同じ。)を利用することができる。
【0028】
D-STARは、一般社団法人日本アマチュア無線連盟が開発したデジタル通信方式である。D-STARでは、デジタル通信対応の無線通信機100同士の直接通信の他、デジタルレピータと呼ばれる中継局RPを経由した無線通信機100同士の通信を行うことができる。また、D-STARでは、インターネットを介して中継局RP間で中継通信を行うことができる。このため、D-STARを利用したアマチュア無線通信では、従来よりも遠距離間でアマチュア無線通信を行うことができる。
【0029】
デジタル通信に対応した本実施形態の無線通信機100では、例えば、D-STARの場合、他の無線局又は中継局RPとの間で、デジタル無線通信による音声通信及びデータ通信を行うことができる。また、無線通信機100は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の端末機器とUSB(Universal Serial Bus)接続し、端末機器を介して中継局RPとインターネットによる通信を行うことができる。
【0030】
無線通信機100とパーソナルコンピュータとの接続経路の構成、及び、中継局RPとのデジタル無線通信経路の構成は、いずれも
図1における図示を省略している。これらの構成には、従来から公知の構成を一般的な構成を採用することができる。
【0031】
デジタル無線通信による音声通信は、音声通信プロトコルにしたがって行われ、デジタル無線通信によるデータ通信は、データ通信プロトコルにしたがって行われる。また、本発明の無線通信機100は、アナログ無線通信による音声通信及びデータ通信を行うこともできる。アマチュア無線通信で多く用いられるパケット通信は、アナログ無線通信によるデータ通信であり、アナログ通信用のデータ通信プロトコル(例えばAX.25プロトコル)にしたがって行われる。
【0032】
通話用受信部17及び情報用受信部18は、上述した各プロトコルによる信号受信に対応する処理を行う構成をそれぞれ有している。通話用送信部15は、上述した各プロトコルによる信号送信に対応する処理を行う構成を有している。これらの構成は、例えば、各プロトコルによる通信を行うための符号化処理及び復号化処理を行うコーデック(CODEC)を含んでいる。
【0033】
また、各プロトコルにしたがって通話用送信部15が符号化し、変調してアンテナ11経由で送信する信号は、信号の送信元及び送信先の識別情報を含んでいる。通話用受信部17及び情報用受信部18がそれぞれ受信して復調し、復号化した信号も、信号の送信元及び送信先の識別情報を含んでいる。以上の送受信される信号は、音声又はデータと識別情報の他に、一定のデータ量のメッセージを付加してもよい。
【0034】
スピーカ19は、通話用受信部17によって復調された音声を出力する。なお、半二重通信方式で通信する場合、通話用送信部15と通話用受信部17とは、制御部10による制御に基づいて、いずれか一方のみ動作して他方が不動作とされる。
【0035】
無線通信機100が音声信号の送受信に用いる電波モードとしては、種々のモードがある。アナログ無線通信では、AM(Amplitude Modulation)モード、FM(Frequency Modulation)モード、SSB(Single Side Band)モード、CW(Continuous Wave )モード等がある。SSBモードは、USB(Upper Side Band )モードとLSB(Lower Side Band )モードとを含む。また、アナログ無線通信によるデータ通信も可能である。さらに、デジタル通信モードとして、先に示したD-Starに代表されるデジタル無線通信方式も電波モードの一つとしてもよい。
【0036】
アマチュア無線で音声信号の送受信に使用できる周波数帯域は、バンドプランにおいて電波モード毎に規定されている。例えば、7MHz帯のバンドプランでは、7.100000MHz~7.200000MHzが、USBモード又はAMモードを用途とする通信で使用可能と規定されている。
【0037】
無線通信機100のユーザは、回転可能な同調つまみ21を反時計回り又は時計回りに回転させることによって、通話用送信部15における送信周波数又は通話用受信部17における受信周波数を連続的に変更することができる。即ち、同調つまみ21は、通話用受信部17の受信周波数の連続的な変更操作を受け付ける変更操作部を構成している。同調つまみ21の回転方向及び回転量は、エンコーダ20でエンコードされて周波数の増減量に置換される。即ち、エンコーダ20は、変更操作部である同調つまみ21が受け付けた変更操作の内容を、信号として出力する。
【0038】
制御部10は、エンコーダ20からの周波数の増減量に応じた信号を受信する。そして、制御部10は、エンコーダ20からの信号に応じて、通話用送信部15における送信周波数又は通話用受信部17における受信周波数を変更させる。したがって、無線通信機100では、同調つまみ21の回転操作によって通話用送信部15における送信周波数が設定され、また、通話用受信部17における受信周波数が設定される。言い換えると、制御部10は、同調つまみ21の操作内容に応じて、通話用送信部15又は通話用受信部17で通話に使用する送信周波数又は受信周波数を設定する。
【0039】
図2は無線通信機100の外観の一例を示す正面図である。同調つまみ21は、無線通信機100の正面パネルの水平方向における中央付近の下部に配置されている。また、正面パネルの左側中段部には、タッチパネル23が配置されている。タッチパネル23にはバンドスコープが表示される。バンドスコープは、所定の周波数帯域の受信信号強度の分布を周波数スペクトルで示すものである。
【0040】
制御部10には、液晶駆動部22を介してタッチパネル23が接続されている。そこで、後に詳述するように、ユーザがタッチパネル23に触れることによって、通話用受信部17の受信周波数を設定できる構成としてもよい。
【0041】
制御部10は、信号強度記憶部14から供給された信号強度データのうち、最新の信号強度データを液晶駆動部22に供給する。液晶駆動部22は、フレームバッファ220を有する。フレームバッファ220は、ビデオRAMによって構成できる。信号強度記憶部14からの信号強度データは、フレームバッファ220に一旦保持される。
【0042】
また、液晶駆動部22は、タッチパネル23に文字又は図形等を表示させるキャラクタ・ジェネレータを有する。液晶駆動部22は、制御部10の制御によって、125ms毎に、フレームバッファ220に保持された信号強度データからバンドスコープ等の各種の情報の画像を生成し、また、生成した画像を表示するようにタッチパネル23を駆動する。
【0043】
図3はタッチパネル23に表示されるバンドスコープの一例を示す説明図である。
図3に示すバンドスコープ23Bの上段の領域には、周波数スペクトル23Sが表示される。バンドスコープ23Bの下段の領域には、ウォータフォール23Wが表示される。
【0044】
周波数スペクトル23Sは、横軸を周波数、縦軸を信号強度として、信号強度測定部13が測定する100KHzの周波数帯域の受信信号強度の分布を周波数毎に示している。例えば、
図3の周波数スペクトル23Sでは、6.988370MHz~7.088370MHzの周波数帯域について、640箇所の受信信号強度の分布を表示している。以降、タッチパネル上の表示エリアの構成を示す場合は、周波数スペクトル23Sと記載するが、その表示内容は、スペクトル表示と記載する。
【0045】
ウォータフォール23Wは、横軸を周波数、縦軸を受信からの経過時間として、信号強度測定部13が過去に測定した100KHzの周波数帯域の信号強度を、色調の変化により、周波数毎に時系列でそれぞれ示している。
【0046】
本発明では、説明のため、
図3に示すように、ドット状のキャラクタによる信号表示で表し、ドットの有無で信号の有無を示している。以降、タッチパネル上の表示エリアの構成を示す場合は、ウォータフォール23Wと記載するが、その表示内容は、ウォータフォール表示と記載する。
【0047】
ウォータフォール23Wの縦軸は、周波数スペクトル23Sに近い
図3の上方ほど信号の受信時点に近い時点を示し、周波数スペクトル23Sから離れた
図3の下方ほど信号の受信から時間が経過した時点を示している。
【0048】
なお、バンドスコープ23B上では、周波数スペクトル23Sの受信マーカ23RMによって、通話用受信部17の受信周波数が指示される。通話用受信部17の受信周波数とは、通話用受信部17で現在受信されている電波の周波数である。受信マーカ23RMは、タイトルを付けて表示してもよい。このタイトルは、例えば、通話用受信部17の受信周波数であることを表す「R」の文字等とすることができる。
【0049】
また、バンドスコープ23B上では、周波数スペクトル23S及びウォータフォール23Wに跨がるレピータマーカ23RPによって、
図1に示す中継局RPの送信周波数が指示される。中継局RPの送信周波数及び受信周波数、即ち、運用周波数は、後述する不揮発性メモリ26のレピータリスト記憶部263に記憶されたレピータリストに登録されている。
【0050】
タッチパネル23は、液晶パネル231と、液晶パネル231上に配置されたタッチセンサ232とを有する。
【0051】
液晶パネル231は、無線通信機100のメインの表示部として用いることができる。無線通信機100のメインの表示部では、無線通信機100の高機能化により、選択されて運用中の機能に応じて表示内容を切り替えることが一般化している。そこで、スペクトラム・アナライザ機能部SAは、例えば、液晶パネル231において表示可能な機能表示の一つとして、上述したバンドスコープ23Bを液晶パネル231に表示させることができる。
【0052】
液晶パネル231は、表示部の一例である。表示部は、有機ELパネル又は陰極線管等、液晶以外の表示パネルであってもよい。表示デバイスである液晶パネル231は、バンドスコープ23Bを表示する他、無線通信機100による通信に係わる情報を表示する。
【0053】
また、表示部としての液晶パネル231上に配置されたタッチセンサ232には、抵抗膜方式又は静電容量方式等、任意の方式の位置入力用センサを用いることができる。タッチセンサ232は、ユーザの指又はペン状のデバイスによるタッチパネル23の表面の接触操作を検出することができる。タッチパネル23へのタッチ操作により、所定の機能が実行されてもよい。
【0054】
制御部10には、操作部25が接続されている。操作部25は、
図2に示す無線通信機100の正面パネルの左側下部に配置されている。操作部25は、一例として、タッチパネル23の下方に配置された複数のボタン及びつまみを有する。複数のボタンのうち一部のボタンが、モード選択部250を構成している。
【0055】
モード選択部250は、通話用送信部15又は通話用受信部17で使用する送信周波数又は受信周波数の通信方式を選択するために使用される。モード選択部250は、アナログ無線通信の通信方式(変調方式)であるAMモードとSSBモードとFMモード等を選択する選択ボタン251と、先に説明したD-Starに代表されるデジタル無線通信の通信方式を選択する選択ボタン252とを含む。
【0056】
また、信号強度測定用受信部12が受信する信号の周波数帯域が、通話用送信部15又は通話用受信部17の電波モードに合わせて、制御部10の制御によって切り替わるようにしてもよい。
【0057】
制御部10には、さらに、記憶部の一例である不揮発性メモリ26が接続されている。不揮発性メモリ26は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory )である。不揮発性メモリ26は、バンドプラン情報記憶部261と、登録リスト記憶部262と、レピータリスト記憶部263とを有している。不揮発性メモリ26は、周波数とその周波数に関係する所定の情報とを関連させて記憶する記憶部である。
【0058】
バンドプラン情報記憶部261は、バンドプラン情報を記憶する。バンドプラン情報は、各電波モードに対応して、アマチュア無線で使用可能な周波数帯域の境界周波数、即ち、上限及び下限の各周波数を示す情報である。例えば、7MHz帯のバンドプラン情報は、下限周波数が7.100000MHz、上限周波数が7.200000MHzであり、USBモード又はAMモードで使用可能な周波数帯域であること示す情報を含んでいる。
【0059】
バンドプラン情報は、例えば、無線通信機100の製造時に予めバンドプラン情報記憶部261に記憶させておくことができる。バンドプラン情報の内容は、改正等に応じて適宜更新することができる。
【0060】
図3に示すように、バンドスコープ23Bの周波数スペクトル23S上では、バンドプランマーカ23BMによって、バンドプラン情報記憶部261に記憶されている周波数が指示される。
【0061】
なお、バンドプランマーカ23BMは、タイトルを付けて表示してもよい。このタイトルは、例えば、バンドプランの境界周波数であることを表す「T」の文字等とすることができる。
【0062】
図1に示す登録リスト記憶部262は、通話用送信部15又は通話用受信部17で使用する周波数を記憶し、また随時呼び出し可能なメモリチャネルを記憶する。登録リスト記憶部262は、コールサインリストを記憶してもよい。コールサインリストは、他の無線局のコールサインと呼称とを関連付けたテーブルによって構成してもよい。他の無線局は、例えば、頻繁に交信する機会があるためユーザが操作部25のボタン又はつまみの操作によって登録した無線局とすることができる。登録リスト記憶部262は、コールサインリストに、頻繁に交信する機会がある他の無線局が、通常、運用に使用している運用周波数も関連付けたテーブルとして記憶してもよい。
【0063】
レピータリスト記憶部263は、レピータリストを記憶する。レピータリストは、レピータ、即ち、中継局RPの送信周波数を、中継局RPの識別情報と関連付けたテーブルによって構成することができる。
【0064】
レピータリストは、例えば、D-STARの中継局RPの場合、無線通信機100の製造時に予めレピータリスト記憶部263に記憶させておくことができる。また、インターネット上などで公衆に提供されているレピータリストをユーザが入手して、レピータリスト記憶部263に記憶させることもできる。
【0065】
中継局RPの識別情報は、例えば、中継局RPのコールサイン、呼称、位置情報等を含むものとすることができる。中継局RPの位置情報は、例えば、緯度、経度、標高で表されるものとすることができる。
【0066】
なお、
図3に示すレピータマーカ23RPは、タイトルを付けて表示することもできる。このタイトルは、例えば、
図3に示すように、レピータリストの中継局RPの識別情報、即ち、中継局RPのコールサイン又は呼称等とすることができる。中継局RPのコールサインは、中継局RPの送信信号を受信し復調することで得てもよい。中継局RPの呼称は、中継局RPの送信信号を受信し復調して得た中継局RPのコールサインから、
図1に示すレピータリスト記憶部263のレピータリストを利用して得ることができる。
【0067】
ここで、
図3に示す中継局RPの呼称は、レピータマーカ23RPに中継局RPの呼称を付けて表示する態様を理解するための例であり、必ずしも実際の中継局RPの呼称の表示態様を示しているとは限らない。
【0068】
また、レピータマーカ23RPは、レピータマーカ23RPが指示する周波数において情報用受信部18が中継局RPの送信信号を受信しているか否かによって、色を変えてバンドスコープ23B上に表示してもよい。この場合、レピータマーカ23RP自体の表示色を変えてもよく、レピータマーカ23RPのタイトルの表示色を変えてもよい。レピータマーカ23RPの表示色は、例えば、中継局RPの送信信号の受信状態に応じて、制御部10の制御により決定することができる。
【0069】
制御部10には、さらに、位置検出部27が接続されている。位置検出部27は、無線通信機100の設置場所の位置情報を取得する。無線通信機100の位置情報は、例えば、航法衛星システムを利用した位置検出センサを用いて取得することができる。航法衛星システムには、例えば、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System)、地域航法衛星システム(Radio Navigation Satellite System )、あるいは、全地球測位システム(Global Positioning System )を用いることができる。位置検出部27が取得する無線通信機100の位置情報は、例えば、緯度、経度、標高で表されるものとすることができる。
【0070】
以上に説明した本実施形態の無線通信機100では、ユーザは、同調つまみ21の回転操作によって、通話に使用する周波数に通話用受信部17の受信周波数を同調させることができる。このとき、ユーザは、タッチパネル23に表示されるバンドスコープ23Bに表示される各周波数の受信信号強度を参考にして、同調つまみ21を回転操作し目的の周波数に受信周波数を同調させる。
【0071】
ここで、ユーザは、バンドスコープ23Bのスペクトル表示によって、現在の受信信号強度を周波数毎にそれぞれ確認することができる。また、バンドスコープ23Bのウォータフォール23Wの表示によって、過去の受信信号強度を周波数毎に時系列でそれぞれ確認することができる。この2つの表示によって、ユーザは、所定の周波数帯域における通話に使用中の周波数を、半二重通信方式の通信等を含めて把握することができる。
【0072】
但し、通話に使用中の周波数を誰が使っているかは、スペクトル表示及びウォータフォール表示のどちらでも確認することができない。このため、特定の周波数での通話状態を具体的に確認したい場合にユーザは、同調つまみ21の回転操作で通話用受信部17を特定の周波数に同調させて、スピーカ19から流れる音声等で通信内容を実際に確かめてみる必要がある。
【0073】
そこで、本実施形態の無線通信機100では、信号強度測定用受信部12の受信信号のうち、所定の周波数、例えば、信号強度が高い周波数の受信信号について、その信号の送信元の識別情報をバンドスコープ23B上に追加して表示させる構成としている。
【0074】
このような追加表示をバンドスコープ23B上で実現するために、本実施形態の無線通信機100では、バンドスコープ23Bの表示方法が実行される。この表示方法では、バンドスコープ23B上に、受信信号を復調して得られた送信元の識別情報の表示を追加することができる。以下、本実施形態の無線通信機100で実行されるバンドスコープ表示方法の一例を、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0075】
図4に示すように、本実施形態のバンドスコープ表示方法は、表示、情報用受信及び表示追加の各ステップ(ステップS1~S3)を含んでいる。なお、本実施形態の表示方法は、周期的に繰り返し実行することができる。
【0076】
このうち、ステップS1の表示ステップは、信号強度測定用受信部12で受信した所定の周波数帯域における受信信号の、信号強度測定部13が測定した信号強度の分布を、周波数毎に示すバンドスコープ23Bを、液晶パネル231に表示させるステップである。表示ステップは、制御部10が、信号強度測定部13が測定して生成したバンドスコープ23Bを、液晶パネル231に表示させることで、実行することができる。
【0077】
次に、ステップS2の情報用受信ステップは、信号強度測定用受信部12で受信した所定の周波数帯域における受信信号のうち、所定の周波数の受信信号を復調して、受信信号に含まれる送信元の受信信号の識別情報を取得するステップである。情報用受信ステップは、復調の対象とした周波数の受信信号を情報用受信部18が受信して復調し、制御部10が、受信信号に含まれるその信号の送信元の識別情報を取得することで、実行することができる。
【0078】
続いて、ステップS3の表示追加ステップは、液晶パネル231に表示されるバンドスコープ23Bの、情報用受信部18で復調した受信信号の周波数に対応する箇所に、受信信号の復調により得られた受信信号の送信元の識別情報を追加表示するステップである。表示追加ステップは、情報用受信部18が復調し、制御部10が、取得した送信元の識別情報を、液晶パネル231のバンドスコープ23Bの対応する周波数の箇所に追加表示させることで、実行することができる。
【0079】
次に、
図4に示す表示方法の特にステップS2の情報用受信ステップを実行するために、
図1の制御部10がマイクロコンピュータの記憶部に記憶されたプログラムにしたがって実行する処理の手順の一例を、
図5~
図7のフローチャートを参照して説明する。制御部10は、一定周期毎に繰り返して、
図5及び
図7に示す手順、又は、
図6及び
図7に示す手順の処理を実行する。
【0080】
制御部10は、
図5又は
図6に示すデコード対象決定処理を行う。デコード対象決定処理は、前記した情報用受信ステップS2の詳細なフローの一つで、情報用受信部18が受信する周波数を決定する処理であり、デコード対象である識別情報を抽出する周波数を決定する処理でもある。
図5の第1のデコード対象決定処理と、
図6の第2のデコード対象決定処理とは、識別情報を抽出する周波数を決定するロジックが異なる。
【0081】
図5を用いて、制御部10が行う第1のデコード対象決定処理を説明する。第1のデコード対象決定処理は、ステップS101とステップS108との間で繰り返し実行される。
【0082】
まず、ステップS102において、制御部10は、周波数を指定して信号強度測定用受信部12に信号を受信させ、さらに、受信させた信号の信号強度を信号強度測定部13に測定させる。このステップS102は、液晶パネル231にバンドスコープ23Bを表示するために制御部10がスペクトラム・アナライザ用受信部SRに実行させる処理を、兼ねていてもよい。
【0083】
次に、制御部10は、ステップS102で信号強度測定用受信部12に測定させた信号の周波数が、所定の閾値以上であるか否かを確認する(ステップS103)。制御部10は、信号強度が所定の閾値を越えない場合(ステップS103でNO)、信号強度測定部13で測定した周波数にはデコードの対象となる信号が存在しないとして、信号強度測定用受信部12の測定対象の周波数を変更し、測定を繰り返す。制御部10は、ステップS103で、信号強度が所定の閾値以上である場合(ステップS103でYES)、情報用受信部18に、該当する周波数の受信及び復調を行うよう指示する(ステップS104)。
【0084】
情報用受信部18は、該当する周波数の信号が、デコードが可能か否かを判定する(ステップS105)。詳細には、情報用受信部18は、複数の通信プロトコルによる復調を試み、復調可能であれば復調を行って復調したデータを制御部10に伝送する(ステップS105のYES)。復調不能であれば、情報用受信部18は、復調可能な信号ではないと判定し、判定した結果を制御部10に伝送する(ステップS105のNO)。
【0085】
制御部10は、ステップS105にて復調可能とされた信号の復調データを復号化し、識別情報を抽出するデコード処理を行う(ステップS106)。なお、デコード処理に関しての詳細は後述する。制御部10は、情報用受信部18が、復調可能な信号ではないと判定した場合、情報用受信部18にデコード処理を中止させる指示を行う(ステップS107)。ステップS106によるデコード処理実行の終了後、もしくはステップS107によるデコード処理が中止された場合、ステップS108からステップS101を繰り返す。その際、制御部10は、信号強度測定用受信部12の測定対象の周波数を変更し、デコード対象決定処理を繰り返す。
【0086】
次に、
図6を用いて、制御部10が行う第2のデコード対象決定処理を説明する。第2のデコード対象決定処理は、ステップS201とステップS211の間で、繰り返し実行される。
【0087】
制御部10は、位置検出部27より自位置の位置情報を抽出する(ステップS202)。制御部10は、バンドスコープ23Bの周波数範囲内で運用されるレピータをレピータリスト記憶部263から抽出する(ステップS203)。制御部10は、抽出したレピータの位置情報を抽出する(ステップS204)。制御部10は、自位置の位置情報と、抽出したレピータの位置情報とから、レピータまでの距離を算出し、所定の距離以下、所定の距離を越えるかを判定する(ステップS205)。所定の距離は、本実施形態の無線通信機100が自位置から通信が可能な距離を示し、その距離は、求める通信品質により適時設定可能としてもよい。つまり、通信範囲外となることが想定されるレピータの運用周波数は、デコード処理対象の周波数とする意味が無いので、通信範囲内となるレピータの運用周波数のみをデコード対象としている。
【0088】
制御部10は、レピータとの距離が所定の距離を越える場合(ステップS205でNO)、ステップS212からS201に戻り、別のレピータの周波数を抽出する。レピータとの距離が所定の距離以下の場合(ステップS205でYES)、該当するレピータの運用周波数をデコード処理対象の周波数とする。
【0089】
制御部10は、情報用受信部18で受信した信号が、デコードを行うのに十分な信号強度であるか否かを所定の閾値を定め、閾値以上であるか否かを判定する(ステップS207)。制御部10は、情報用受信部18で受信した信号が閾値に満たない場合(ステップS207でNO)、デコード可能な信号は存在しないとして、ステップS212からステップS201に戻り、別のレピータの周波数を抽出する。制御部10は、情報用受信部18で受信した信号が閾値以上の場合(ステップS207でYES)、デコードの開始の指示を行う(ステップS208)。以降のステップS209からステップS211の処理は、
図5の第1のデコード対象決定処理のステップS104からステップS107までの処理と同じなので省略する。
【0090】
なお、
図6の第2のデコード対象決定処理の周波数抽出の手順は、順番を変えてもよい。具体的には、自位置に対するレピータの距離か所定の距離以下の抽出(ステップS205でYES)を先に行ってから、バンドスコープ23Bの周波数範囲内であるか否かによる抽出(ステップS203)を行ってもよい。また、第2のデコード対象決定処理の対象となる周波数は、レピータの運用周波数に限らず、登録リスト記憶部262に記憶された運用周波数から抽出してもよい。
【0091】
また、第1のデコード対象決定処理及び第2のデコード対象決定処理におけるデコード処理が可能かであるかの判定(ステップS105、ステップS209)は、デコード処理前に、デコード処理が可能かであるかの判定を行わなくてもよい。即ち、デコード処理を行ってみてデコードできればデコード処理可であり、デコードできなければデコード処理不可と判定してもよい。
【0092】
さらに、情報用受信部18にて、受信した信号に対して、いずれの通信プロトコルでも同期が確立する信号では無い場合、デコード可能な信号ではないので、これによりデコード可能ではないと判定してもよい。
【0093】
次に、
図7を用いて、
図5及び
図6のデコード対象決定処理において実行するデコード処理の手順を説明する。以下、いずれの通信プロトコルで復調を試みてもデコードできない場合を、デコード可能ではないものとして説明する。
【0094】
制御部10は、通信プロトコル1のデコード処理、即ち、復号化処理を実行し(ステップS301)、デコード処理が成功であったか否かを確認する(ステップS302)。通信プロトコル1のデコード処理については後述する。
【0095】
また、デコード結果が成功であった場合は(ステップS302で成功)、制御部10は、後述するステップS305に処理を移行する。一方、デコード結果が失敗であった場合は(ステップS302で失敗)、制御部10は、通信プロトコル2のデコード処理を実行し(ステップS303)、デコード結果が成功であったか否かを確認する(ステップS304)。通信プロトコル2のデコード処理については後述する。
【0096】
そして、デコード結果が成功であった場合は(ステップS304で成功)、制御部10は、後述するステップS305に処理を移行する。一方、デコード結果が失敗であった場合は(ステップS304で失敗)、制御部10は、デコード処理を終了する。
【0097】
ここで、ステップS301とステップS303とでそれぞれ行われる通信プロトコル1,2のデコード処理では、異なる2つの通信プロトコルにしたがってデコード処理を行う。例えば、D-STARの場合、D-STARの通信プロトコルによりデコード処理を行い、パケット通信の場合、パケット通信で用いられる通信プロトコルによりデコード処理が行われる。これらのデコード処理は、2つに限らず、これ以外の通信プロトコルを含め3つ以上の通信プロトコルに対してデコード処理を行ってもよい。
【0098】
本発明の無線通信機100におけるデコード処理は、識別情報を抽出するのみでよく、情報用受信部18から出力される全てのデータに対してデコードし復号化する必要はないことを特徴とする。よって複数の周波数繰り返しデコード処理を行っても、処理時間が短い。しかし、復号化しても識別情報が得られない場合は、所定の時間を経過した後、そのデコード処理は、「UNKNOWN」(不明)を識別情報として出力してもよく、また、失敗した旨を出力してもよい。
【0099】
次に、
図8及び
図9を用いて、
図4に示す表示方法の特に表示追加ステップS3の詳細を説明する。表示追加ステップS3は、表示追加処理と表示更新処理とを含む。表示追加処理は、バンドスコープ23Bのスペクトル表示上の所定の位置(座標)に、抽出した識別情報を表示もしくは表示させた識別情報を削除する処理である。表示更新処理は、バンドスコープ23Bのウォータフォール表示上の所定の位置(座標)に、スペクトル表示上から削除された識別情報表示を表示し、時間経過とともに表示させた識別情報を移動、表示させた識別情報を削除する処理である。
【0100】
表示追加ステップS3における表示追加処理を、
図8を用いて説明する。表示追加処理は、前記した
図7のデコード処理にて識別情報が抽出された場合(ステップS30
5)の処理であるが、前記したように識別情報が抽出されず「UNKNOWN」といった不明であることを識別情報の代わりに表示してもよい。表示追加処理は、ステップS401とステップS407の間で、繰り返し実行される。
【0101】
まず、制御部10は、識別情報を抽出した際の情報用受信部18に設定した周波数を判定する(ステップS402)。制御部10は、判定した周波数に該当するバンドスコープ23B上の周波数の位置を判定し、バンドスコープ23Bのスペクトル表示上で、前記周波数の位置に基づいて所定の座標に識別情報を表示する(ステップS403)。所定の座標は、スペクトル表示で識別情報を抽出した信号の波形と関連を持たせた位置が望ましい。例えば
図10のコールサイン23CFで示すように、識別情報を抽出した周波数軸のスペクトル表示の上部であれば対応が明確である。
【0102】
本発明の無線通信機100の表示方法は、ステップS401とS407の間で、繰り返し行われる。受信している局つまり識別情報を抽出した送信元の送信が継続している場合は、識別情報の抽出は継続しているものとして、識別情報の表示は継続する。しかし、受信している局の送信が終了した場合には、識別情報は抽出できなくなる。抽出できなくなった識別情報の表示は、リアルタイムの信号強度を表示するスペクトル表示上では該当していた識別情報の信号が確認できなくなるので、表示を維持する必要性がない。その場合、抽出できなくなった識別情報の表示は、消してもよい。そのため、制御部10は、該当する識別情報の抽出が継続しているかを判定する(ステップS404)。制御部10は、該当する識別情報の抽出が継続している場合(ステップS404でYES)、該当する識別情報の表示は継続し、ステップS407を介して、S401に戻る。
【0103】
制御部10は、該当する識別情報の抽出が継続していない場合(ステップS404でNO)、該当する識別情報の表示をスペクトル表示から消す(ステップS405)。制御部10は、消されることになった識別情報を、ウォータフォール表示上で対応する周波数の信号表示に対して所定の座標に表示する(ステップS406)。
【0104】
バンドスコープ23B上のウォータフォール表示は、現時点から所定時間過去までの信号の有無を表している。表示追加処理にて、抽出が検出されなくなった識別情報は、現時点以前では、検出できていた識別情報である。そのため、現時点以前に抽出された識別情報を、ウォータフォール表示にて、表示してもよい。
【0105】
図10は中継局RPの識別情報の表示が追加されたバンドスコープ23Bの一例を示す説明図である。
図10の23RF1で示す周波数は、現時点ではJA?XYZというコールサイン識別情報が抽出され、スペクトル表示上の所定の個所に表示されている。つまり現時点では、JA?XYZによる送信が継続していることを意味している。一方、ウォータフォール表示上では、過去にJJ?KKK、さらに過去に現在送信しているJA?XYZが送信していたことを示している。これらから、JA?XYZとJJ?KKKとが相互に交信を継続している様子がうかがえる。
【0106】
本発明の無線通信機の表示方法では、ウォータフォール表示により、バンドスコープ23Bの周波数帯域内の現時点から所定時間過去の交信の状況を、だれが送信していたか、という情報も含めて確認することができる。しかしウォータフォール表示の信号表示は、上方を現時点とし下方を過去として、刻一刻と表示が移動してき、やがて所定時間以前の信号は表示されなくなる。そのためウォータフォール表示に表示される識別情報も移動させる必要があり、随時更新される必要がある。そのため、制御部10は、
図4の表示追加ステップS3では、さらに表示更新処理を行う。
【0107】
表示更新処理を、
図9を用いて説明する。表示更新処理は、ステップS501とステップS505との間で、繰り返し実行される。まず、
図8の表示追加処理のステップS406で識別情報の抽出が継続していない状態となった識別情報を、ウォータフォール表示上に表示している。制御部10は、この消された識別情報をウォータフォール表示上で表示する所定の座標は、識別情報が該当する周波数の軸上は信号表示と重なってしまうため、使用するユーザが信号との関係性が判断できる範囲でオフセットした座標であることが望ましい。
図10の23CTで示すような吹き出し形状であってもよく、吹き出しの矢印が示す点は、識別情報が抽出できなくなって、ウォータフォール表示上に表示が開始された時点の信号表示が該当する位置を示してもよい。
【0108】
制御部10は、ウォータフォール表示の信号表示は、時間とともに下方に移動するので、該当する識別情報の表示を信号表示と共に移動させる(ステップS502)。詳細には、制御部10は、識別情報が抽出できなくなって、ウォータフォール表示上に表示が開始された時点の信号表示が該当する位置の移動に合わせて、該当する識別情報の表示を移動させる。ウォータフォール表示上に表示が開始された時点の信号表示が該当する位置は、識別情報が示す局が送信を終了した時点を意味し、それ以前は識別情報が示す局が送信を継続していたことを意味する。
【0109】
制御部10は、識別情報が対応するウォータフォール表示の信号表示が、表示範囲内であるか否かを判定する(ステップS503)。ウォータフォール表示の信号表示は時間と共に移動し、所定の表示範囲を超えると、その時点で信号強度測定部が測定した信号強度の表示は消える。識別情報が抽出できなくなって、ウォータフォール表示上に表示が開始された時点の信号表示が該当する位置も時間経過と共に下方に移動し、やがて表示の範囲外となる。制御部10は、識別情報が対応するウォータフォール表示の信号表示が、表示範囲内であると判定した場合(ステップS503でYES)、ステップS505を介してステップS501に戻り、識別情報の表示の移動を継続する。
【0110】
制御部10は、識別情報が対応するウォータフォール表示の信号表示が、表示範囲内ではないと判定した場合(ステップS503でNO)、制御部10は、該当する識別情報の表示を消す(ステップS504)。
【0111】
以上に示した無線通信機100の表示方法により、バンドスコープ23B上に、バンドスコープ23Bの周波数範囲内で、現時点で交信中の局のコールサイン、また過去に交信していた局のコールサインを認識することができる。このため、通話に使用する周波数の選択の利便性を高めることができる。
【0112】
例えば、本発明の無線通信機100は、タッチパネル23によりバンドスコープ23Bを表示しているため、表示された識別情報の位置をタッチすることで、その識別情報が該当する周波数に通話用受信部17の受信周波数を合わせるといった機能を備えてもよい。また、D-STAR方式による交信であることが明らかな場合、識別情報が該当する周波数に通話用受信部17の受信周波数を合わせるだけでなく、識別情報が該当する周波数に通話用送信部15の送信周波数を合わせる機能を備えてもよい。この場合は、送信先として該当する識別情報をセットすると、その識別情報が該当する周波数に通話用送信部15の送信周波数を合わせることができる。このような機能を備えることにより、通話に使用する周波数の選択の利便性を高めることができる。
【0113】
また、本発明の無線通信機100が表示する識別情報は、送信元を表示することとして説明してきたが、その他の識別情報である送信先、中継元、中継先の識別情報であってもよい。さらには、本発明の無線通信機100が表示する識別情報は、タッチパネル23の表示スペースが限られることから、送信元を表示し、先に説明したタッチパネル23上の操作によって、その他の識別情報が表示されるように構成されてもよい。
【0114】
さらにまた、本発明の無線通信機100は、情報用受信部18の機能を、通話用受信部17が兼ねてもよい。ただし、通話用受信部17を交信に使用していない場合に限られる。本発明の無線通信機100は、操作部からの所定の操作により、通話用受信部17が識別情報の抽出を行うように構成されてもよく、識別情報の抽出中は、スピーカからの音声出力をミュートし、タッチパネル表示上に識別情報の抽出中である旨を報知してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 制御部(設定部、表示追加部)
11 アンテナ
12 信号強度測定用受信部
13 信号強度測定部
14 信号強度記憶部
15 通話用送信部
16 マイクロホン
17 通話用受信部
18 情報用受信部
19 スピーカ
20 エンコーダ
21 同調つまみ
22 液晶駆動部
23 タッチパネル
23B バンドスコープ
23BM バンドプランマーカ
23CF 無線局のコールサイン
23CT 送信先のコールサイン
23NA 中継局の呼称
23RF 中継局のコールサイン
23MM メモリ周波数マーカ
23RM 受信マーカ
23RP レピータマーカ
23S 周波数スペクトル
23W ウォータフォール
24 接触検出部(設定部)
25 操作部
26 不揮発性メモリ
27 位置検出部
100 無線通信機
220 フレームバッファ
231 液晶パネル(表示部)
232 タッチセンサ(設定部)
250 モード選択部
251,252 選択ボタン
261 バンドプラン情報記憶部
262 登録リスト記憶部(送信先記憶部)
263 レピータリスト記憶部(中継局記憶部)
RP 中継局
SA スペクトラム・アナライザ機能部
SR スペクトラム・アナライザ用受信部