(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20231205BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/165 207
B41J2/165 501
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J29/46 Z
B41J29/38 301
(21)【出願番号】P 2019173989
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129956(JP,A)
【文献】特開2012-203425(JP,A)
【文献】特開2015-178179(JP,A)
【文献】特開2009-066849(JP,A)
【文献】特開2018-205528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/46
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、
表示部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから被記録媒体に向けて液体を吐出させることによって、被記録媒体に画像を記録させ、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、
液体の吐出に異常があるか否かを判定す
ることで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、
診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、
前記排出量情報が入力されたときに
、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、
前記排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態において、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた排出量で前記排出動作を行った場合に記録される画像のプレビューを前記表示部に表示させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態において、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた排出量とは異なる排出量で前記排出動作を行った場合に記録される画像のプレビューを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
液体の吐出に異常のあるノズルを回復させずに画像を記録した場合に記録される画像のプレビューを前記表示部に表示させ
ることを特徴とする請求項
1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、
前記液体吐出ヘッドの異常の程度と前記排出動作による液体の排出量との関連付けの情報である関連付け情報を記憶する記憶部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、
液体の吐出に異常があるか否かを判定す
ることで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、
前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報として、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた第1排出量に関する情報
、及び、前記第1排出量と異なる第2排出量に関する情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、
前記排出量情報が入力されたときに
、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、
前記排出量情報として前記第2排出量に関する情報が入力されたときに、前記第2排出量と前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度とに基づいて、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、前記排出量情報が入力されたときに、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させる手動モードと、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じて、前記排出動作における液体の排出量を自動的に決定し、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、決定した排出量の液体を排出させる自動モードと、のいずれかで選択的に、前記排出
手段に前記排出動作を行わせ、
前記制御装置は、
前記自動モードにおいて、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度と前記関連付け情報とに基づいて、前記排出動作における液体の排出量を決定し、
前記手動モードにおいて前記排出量情報が入力されたときに、前記排出量情報に対応する排出量と、前記関連付け情報における、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量とに基づいて、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とする請求項
4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記排出量情報に対応する排出量が、前記関連付け情報における、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量よりも少ない場合には、
前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量を減らすように、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とする請求項
4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
所定時間が経過する毎に、前記排出手段に前記排出動作としての定期排出動作を行わせ、
前記排出量情報に対応する排出量が、前記関連付け情報における、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する液体の排出量よりも少ない場合には、
前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量を、前記定期排出動作で前記異常ノズルを回復させることのできる最小の排出量以上となる範囲で減らすように、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とする請求項
6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記排出量情報に対応する排出量が、前記関連付け情報における、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量よりも多い場合には、
前記液体吐出ヘッドの異常の程度に対応する排出量を増やすように、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とする請求項
4~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
報知部、を備え、
前記制御装置は、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じて、前記液体吐出ヘッドの異常の程度をユーザに報知するための報知信号を前記報知部に出力し、前記報知部の報知に基づく、前記排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となることを特徴とする請求項
4~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、
外部のサーバとの通信を行う通信部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、
液体の吐出に異常があるか否かを判定す
ることで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、
診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、
前記排出量情報が入力されたときに、
前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、
前記排出量情報が入力されたときに、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、前記排出量情報に対応する液体の排出量の情報とを、前記通信部から前記サーバに送信することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記液体吐出装置が使用されている地域の情報をさらに前記通信部から前記サーバに送信することを特徴とする請求項
10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
複数の液体吐出装置と、
前記複数の液体吐出装置と接続されるサーバと、を備え、
各液体吐出装置は、
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、
前記液体吐出ヘッドの異常の程度と前記排出動作による液体の排出量との関連付けの情報である関連付け情報を記憶する記憶部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記少なくとも一部のノズルについて、液体の吐出に異常があるか否かを判定する
ことで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、
診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関連する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、
前記排出量情報が入力されたときに、
前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、
前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、前記排出量情報に対応する液体の排出量の情報と、を前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記複数の液体吐出装置から受信した、前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、液体の排出量の情報とに基づいて、前記複数の液体吐出装置に、前記関連付け情報における前記関連付けを変更するための変更情報を送信し、
各液体吐出装置において、
前記制御装置が、
前記サーバから受信した前記変更情報に基づいて、前記関連付け情報における前記関連付けを変更することを特徴とするシステム。
【請求項13】
各液体吐出装置において、
前記制御装置は、
前記排出量情報が入力されたときに、
前記液体吐出装置が使用されている地域を示す地域情報を、さらに前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記地域情報が同じ複数の前記液体吐出装置から受信した、前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、液体の排出量の情報とに基づいて、前記地域情報に対応する地域で使用される複数の前記液体吐出装置に、前記変更情報を送信することを特徴とする請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記サーバは、
前記複数の液体吐出装置から受信した、前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、液体の排出量の情報と、に基づいて、前記関連付けに関するデータを生成するための機械学習をする学習部をさらに備え、
前記学習部での機械学習の結果に基づいて生成した前記データに基づいて、前記複数の液体吐出装置に前記変更情報を送信することを特徴とする請求項
12又は13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置、及び、液体吐出装置を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ヘッドの複数のノズルの各々について個別に、インクの吐出の有無の検査を行う。そして、インクの吐出がされなかったノズルがあった場合には、メンテナンス動作を実行し、再度上記検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、上記メンテナンス動作において、予め設定された量のインクを排出させる。しかしながら、インクジェットプリンタのユーザには、画質を多少犠牲にしてもインクの排出量を極力抑えたいと考えるユーザ、インクの排出量が多少多くなったとしても画質を確保したいと考えるユーザなど、様々なユーザが存在する。そのため、メンテナンス動作において、一律に予め設定された量のインクを排出させるようにした場合には、上述したようなユーザの嗜好が反映されないものとなることがある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの嗜好に合わせて異常ノズルを回復させるための液体の排出を行うことが可能な液体吐出装置、及び、液体吐出装置を含むシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、表示部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから被記録媒体に向けて液体を吐出させることによって、被記録媒体に画像を記録させ、前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常があるか否かを判定することで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、前記排出量情報が入力されたときに、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、前記排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態において、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた排出量で前記排出動作を行った場合に記録される画像のプレビューを前記表示部に表示させる。
また、本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、前記液体吐出ヘッドの異常の程度と前記排出動作による液体の排出量との関連付けの情報である関連付け情報を記憶する記憶部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常があるか否かを判定することで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報として、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた第1排出量に関する情報、及び、前記第1排出量と異なる第2排出量に関する情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、前記排出量情報が入力されたときに、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、前記排出量情報として前記第2排出量に関する情報が入力されたときに、前記第2排出量と前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度とに基づいて、前記関連付け情報における前記関連付けを変更する。
また、本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、外部のサーバとの通信を行う通信部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常があるか否かを判定することで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、前記排出量情報が入力されたときに、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、前記排出量情報が入力されたときに、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、前記排出量情報に対応する液体の排出量の情報とを、前記通信部から前記サーバに送信する。
【0007】
本発明のシステムは、複数の液体吐出装置と、前記複数の液体吐出装置と接続されるサーバと、を備え、各液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段と、前記液体吐出ヘッドの異常の程度と前記排出動作による液体の排出量との関連付けの情報である関連付け情報を記憶する記憶部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記少なくとも一部のノズルについて、液体の吐出に異常があるか否かを判定することで、前記液体吐出ヘッドの異常の程度を診断し、診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度に応じた、前記排出動作での液体の排出量に関連する情報である排出量情報の入力をユーザから受け付け可能な状態となり、前記排出量情報が入力されたときに、前記排出手段に前記排出動作を行わせて、前記排出量情報に対応する排出量の液体を排出させ、前記診断された前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、前記排出量情報に対応する液体の排出量の情報と、を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記複数の液体吐出装置から受信した、前記液体吐出ヘッドの異常の程度の情報と、液体の排出量の情報とに基づいて、前記複数の液体吐出装置に、前記関連付け情報における前記関連付けを変更するための変更情報を送信し、各液体吐出装置において、前記制御装置が、前記サーバから受信した前記変更情報に基づいて、前記関連付け情報における前記関連付けを変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、関連付け情報における、液体吐出ヘッドの異常の程度と、排出動作による液体の排出量との関連付けを、ユーザの嗜好等に合わせて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】定期パージのための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】(a)はモード選択信号の入力画面を示す図であり、(b)はパージ選択信号の入力画面を示す図である。
【
図8】(a)インクジェットヘッド4の異常の程度とパージ強度とを関連付けた関連付け情報を説明するための図であり、(b)はインクの排出量を減らす場合の一例を示す(a)に対応する図であり、(c)はインク排出量を増やす場合の一例を示す(a)に対応する図である。
【
図9】
図6の記録処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】(a)はサーバで行われる処理の流れを示すフローチャートであり、(b)はサーバから送られてきた変更情報に基づいてプリンタで行われる処理を示すフローチャートである。
【
図11】(a)は変形例1の第2情報を示す図であり、(b)は変形例2の第2情報を示す図であり、
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8(本発明の「排出手段」)などを備えている。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0013】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ14を備えており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ15には、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)が貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
メンテナンスユニット8は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。
【0017】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ61に覆われる。なお、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0018】
吸引ポンプ62はチューブポンプなどであり、キャップ61及び廃液タンク63と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ61によって覆われた状態で吸引ポンプ62を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。インクジェットヘッド4から排出されたインクは廃液タンク63に貯留される。
【0019】
また、本実施形態では、後述する制御装置80の制御により、吸引パージとして、「NORMAL」、「STRONG」、「STRONGEST」の3種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせることができる。ここで、「STRONG」の吸引パージは、「NORMAL」の吸引パージよりもインクの排出量が多く、「STRONGEST」の吸引パージは、「STRONG」の吸引パージよりもインクの排出量が多い。ここで、例えば、インクの排出量が多い吸引パージほど、吸引ポンプ62の駆動時間が長い。あるいは、例えば、インクの排出量が多い吸引パージほど、吸引ポンプ62の回転速度が速い。
【0020】
なお、ここでは、便宜上、キャップ61が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ61が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ61が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0021】
また、
図2に示すように、キャップ61内には、矩形の平面形状を有する検出用電極66が配置されている。検出用電極66は、抵抗69を介して高電圧電源回路67に接続されている。そして、検出用電極66には、高電圧電源回路67により所定の正の電位(例えば300V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極66との間に所定の電位差が生じる。検出用電極66には、判定回路68が接続されている。判定回路68は、検出用電極66から出力された電圧信号の電圧値と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0022】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極66との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、
図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が上昇し、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電圧値V1から上昇して、電圧値V1よりも高い電圧値V2に達する。そして、帯電したインクが検出用電極66に着弾した後、検出用電極66の電圧値が電圧値V2から徐々に低下して電圧値V1に戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66の電圧値が変化する。
【0023】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の電圧値は、電圧値V1からほとんど変化しない。そこで、判定回路68は、これらを区別するために閾値Vt(V1<Vt<V2)が設定されている。そして、判定回路68は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の最大の電圧値と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極66と、高電圧電源回路67と抵抗69と判定回路68とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10がインクが吐出されない異常ノズルであるか否かによって、判定回路68から異なる信号を出力する。
【0024】
また、ここでは、高電圧電源回路67により、検出用電極66に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路67により、検出用電極66に負の電位(例えば-300V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が電圧値V1から低下する。そして、帯電したインクが検出用電極66に着弾した後、検出用電極66の電圧値が徐々に上昇して電圧値V1に戻る。
【0025】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。
図4に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、インクジェットヘッド4、キャリッジモータ86、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ62、高電圧電源回路67などの動作を制御する。
【0026】
また、制御装置80には、判定回路68から異常ノズルであるか否かに応じた信号が入力される。また、プリンタ1は、上述した構成のほかに、表示部89(本発明の「報知部」)と操作部90と通信部91とを備えている。表示部89は、液晶ディスプレイなどであり、制御装置80は、表示部89を制御して、表示部89にプリンタ1の動作に必要な情報を表示させる。操作部90は、ボタン、表示部89に設けられたタッチパネルなどである。ユーザにより操作部90が操作されると、その操作結果に応じた信号が制御装置80に入力される。
【0027】
通信部91は、外部との通信を行うためのものであり、プリンタ1は、通信部91においてインターネットなどのネットワーク99を介して、外部のサーバ98と接続されている。また、本実施形態では、複数のプリンタ1が、ネットワーク99を介してサーバ98に接続されている。そして、ネットワーク99を介して接続された複数のプリンタ1とサーバ98とによってシステム100が形成されている。また、サーバ98は、後述する機械学習を行うための学習部97を備えている。
【0028】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
<定期パージの処理>
プリンタ1では、制御装置80が
図5のフローに沿って処理を行うことで、定期的に吸引パージを行っている。
図5のフローは、例えば、プリンタ1のコンセントが、商用電源に接続されて、プリンタ1に電源供給が開始されたときに開始され、プリンタ1に電源供給がされている間継続する。
【0029】
より詳細に説明すると、プリンタ1に電源投入が行われたときに、制御装置80は、経過時間Tを0にリセットし(S101)、この時点からの経過時間Tが所定時間Taを超えるまで(S102:NO)待機する。そして、経過時間Tが所定時間Taを超えたときに(S102:YES)、制御装置80は、上述の「NORMAL」の吸引パージを行わせるパージ処理を実行し(S103)、S101に戻る。これにより、所定時間Taを経過する毎に定期的に吸引パージ(本発明の「定期メンテナンス動作」)が行われる。ここで、「NORMAL」の吸引パージにおけるインクの排出量は、上記のように定期的に吸引パージを行ったときに異常ノズルを回復させることのできる最小の排出量に設定されている。
【0030】
<記録時の処理>
次に、プリンタ1において、記録用紙Pに記録を行うときの処理について説明する。記録用紙Pに記録を行うときには、制御装置80は、
図6のフローに沿って処理を行う。
図6の処理は、制御装置80に、記録用紙Pへの画像の記録を指示する記録指令が入力されたときに開始される。
【0031】
図6のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、まず、診断処理を実行する(S201)。S201の診断処理では、制御装置80は、キャリッジ2をメンテナンス位置に位置させた状態で、複数のノズル10の各々について、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動させ、このときに判定回路68から出力された信号に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定する異常判定を行う。そして、複数のノズル10の各々についての異常判定の結果に基づいて、インクジェットヘッド4の異常の程度を、例えば「小」、「中」、「大」の3段階で診断する。インクジェットヘッド4の異常の程度の「小」、「中」、「大」は、「中」が「小」よりもインクジェットヘッド4の異常の程度が大きいことを示し、「大」が「中」よりもインクジェットヘッド4の異常の程度が大きいことを示している。また、このとき、例えば、異常ノズルの数が多いときほどインクジェットヘッド4の異常の程度が大きいと診断する。
【0032】
続いて、制御装置80は、S201の診断処理の診断結果に基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する(S202)。異常ノズルがない場合には(S202:NO)、後述するS215の記録処理に進む。
【0033】
異常ノズルがある場合には(S202:YES)、制御装置80は、表示部89に信号を送ることにより、
図7(a)に示すような、モード選択信号の入力画面を表示部89に表示させる(S203)。この画面は、自動モード及び手動モードのどちらのモードでメンテナンスを行うかを選択するための画面であり、モードの選択を促すメッセージと、「AUTO」及び「MANUAL」のボタンE1とを有する。そして、表示部89に
図7(a)の画面が表示されている間、制御装置80は、モードを選択するモード選択信号の入力を受け付け可能となっている。ユーザは、操作部90を操作して、表示部89に表示された当該画面中の、「AUTO」のボタンE1を選択することで自動モードを選択することを示すモード選択信号を制御装置80に入力することができ、「MANUAL」のボタンE1を選択することで手動モードを選択することを示すモード選択信号を制御装置80に入力することができる。
【0034】
そして、制御装置80は、モード選択信号が入力されるまで待機し(S204:NO)、モード選択信号が入力されたときに(S204:YES)、モード選択信号が自動モードを示すものである場合には(S205:YES)、次に説明する関連付け情報に基づいて、自動モードでの吸引パージの種類(インクの排出量)を決定する(S206)。
【0035】
ここで、フラッシュメモリ84(本発明の「記憶部」)には、予め、例えば、
図8(a)に示すような、インクジェットヘッド4の異常の程度(上述の「小」、「中」、「大」)と、吸引パージの種類との関連付けの情報である関連付け情報が記憶されている。
【0036】
S206では、制御装置80は、S201の診断処理での診断結果が示すインクジェットヘッド4の異常の程度と、関連付け情報とに基づいて、自動モードで行う吸引パージの種類を決定する。そして、制御装置80は、パージ処理を実行して、S206で決定した吸引パージを行わせる(S207)。
【0037】
一方、モード選択信号が手動モードを示している場合には(S205:NO)、制御装置80は、表示部89に報知信号を送ることにより、
図7(b)に示すような、パージ選択信号の入力画面を表示部89に表示させる(S208)。この画面は、ユーザに吸引パージの種類を選択させるための画面であり、吸引パージの種類の選択を促すメッセージと、吸引パージを行わなかった場合、及び、「NORMAL」、「STRONG」、「STRONGEST」の吸引パージをそれぞれ行った場合についての、記録指令とともに入力される画像データに対応するプレビューQと、これら4つのプレビューQに対応する「SKIP」、「NORMAL」、「STRONG」、「STRONGEST」の4つのボタンE2とを有する。また、
図7(b)の画面には、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージに対応するプレビューQの上方に位置し、推奨される吸引パージであることを示す「Recommend」のメッセージが表示されている。そして、表示部89に
図7(b)の画面が表示されている間、制御装置80は、吸引パージの種類を選択するパージ選択信号の入力を受け付け可能となっている。なお、本実施形態では、吸引パージの種類によって、吸引パージにおけるインクの排出量が決まるため、吸引パージの種類を選択するパージ選択信号が、吸引パージでのインクの排出量に関する情報であり、本発明の「排出量情報」に相当する。
【0038】
そして、本実施形態では、
図7(b)の画面を表示部89に表示させることで、上記4つのプレビューQにより、ユーザにインクジェットヘッド4の異常の程度を報知することができる。ユーザは、操作部90を操作して、表示部89に表示された、上記3種類の吸引パージを行ったときのプレビューQの下方に表示された「NORMAL」、「STRONG」、「STRONGEST」のいずれかのボタンE2を選択することで、上述の3種類の吸引パージのいずれかを選択することを示すパージ選択信号を制御装置80に入力することができる。また、ユーザは、操作部90を操作して、表示部89に表示された、吸引パージを行わなかった場合のプレビューQの下方に表示された「SKIP」のボタンE2を選択することで吸引パージを行わないことを示すパージ選択信号を制御装置80に入力することができる。
【0039】
そして、制御装置80は、パージ選択信号が入力されるまで待機し(S209:NO)、パージ選択信号が入力されたときに(S209:YES)、制御装置80は、S201の診断処理での診断結果が示すインクジェットヘッド4の異常の程度の情報、パージ選択信号が示す吸引パージの種類の情報、及び、プリンタ1が使用されている使用地域の情報を、通信部91を介して、サーバ98に送信する(S210)。
【0040】
続いて、制御装置80は、パージ選択信号が示す吸引パージが、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージ(
図7(b)の「Recommend」に対応する吸引パージ)と同じである場合には(S211:YES)、そのままS213に進み、ユーザによって選択された吸引パージが、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージと異なる場合には(S211:NO)、関連付け情報を変更してから(S212)、S213に進む。
【0041】
S212では、パージ選択信号が示す吸引パージが、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の少ないものである場合には、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、それぞれ、インクの排出量のより少ないものに(インクの排出量を減らすように)変更する。ただし、現在「NORMAL」に設定されているものについては、吸引パージの種類を変更せずに「NORMAL」のままとする。
【0042】
例えば、現在、関連付け情報が
図8(a)のようなものであり、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージが「STRONG」であり、パージ選択信号が示す吸引パージが「NORMAL」の吸引パージである場合には、
図8(b)に示すように、インクジェットヘッド4の異常の程度が「中」に対応する吸引パージを「STRONG」から「NORMAL」に変更し、インクジェットヘッド4の異常の程度が「大」に対応する吸引パージを「STRONGEST」から「STRONG」に変更する。また、インクジェットヘッド4の異常の程度が「小」に対応する吸引パージについては「NORMAL」のままとする。
【0043】
一方、パージ選択信号が示す吸引パージが、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の多いものである場合には、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、それぞれ、インクの排出量のより多いものに(インクの排出量を増やすように)変更する。ただし、本実施形態では、インクの排出量が最も多い吸引パージが「STRONGEST」であるため、現在「STRONGEST」のものについては、「STRONGEST」のままとする。なお、「STRONGEST」よりも排出量の多い吸引パージを行わせることが可能である場合には、現在「STRONGEST」のものについてもインクの排出量を増やすように、吸引パージの種類を変更してもよい。
【0044】
例えば、現在、関連付け情報が
図8(a)のようなものであり、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージが「STRONG」であり、パージ選択信号が示す吸引パージが「STRONGEST」の吸引パージである場合には、
図8(c)に示すように、インクジェットヘッド4の異常の程度が「小」に対応する吸引パージを「NORMAL」から「STRONG」に変更し、インクジェットヘッド4の異常の程度が「中」に対応する吸引パージを「STRONG」から「STRONGEST」に変更する。また、インクジェットヘッド4の異常の程度が「大」に対応する吸引パージについては「STRONGEST」のままとする。
【0045】
S212では、制御装置80は、「SKIP」が選択されたか否かを判定する。SKIPが選択された場合には(S213:YES)、そのままS215の記録処理に進む。「SKIP」以外(「NORMAL」、「STRONG」、「STRONGEST」のいずれか)が選択された場合には(S213:NO)、制御装置80は、パージ処理を実行して、パージ選択信号が示す吸引パージを行わせてから(S214)、S215の記録処理に進む。
【0046】
S215の記録処理では、制御装置80は、
図9に示すように、まず、給紙処理を実行する(S301)。給紙処理では、制御装置80は、図示しない給紙機構及び搬送モータ87を制御して、記録用紙Pを記録開始位置に供給させる。続いて、制御装置80は、吐出処理を実行する(S302)。吐出処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パスを行わせる。記録用紙Pへの記録が完了していない場合には(S303:NO)、制御装置80は、続いて、搬送処理を実行し(S304)、S302に戻る。S304の搬送処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Pを搬送させる搬送動作を行わせる。これにより、プリンタ1では、記録用紙Pへの記録が完了するまで、記録パスと搬送動作とが交互に行われる。そして、記録用紙Pへの記録が完了したときに(S303:YES)、制御装置80は、排紙処理を実行する(S305)。排紙処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙を排出させる。そして、搬送処理の完了後、
図6のフローに戻り、処理を終了する。
【0047】
<サーバでの処理>
次に、サーバ98での処理について説明する。サーバ98は、ネットワーク99を介してサーバ98と接続された複数のプリンタ1の制御装置80から、上述のS209の処理によって送られてきたときに、受信した情報を学習部97に入力する。そして、サーバ98では、
図10(a)に示すように、学習部97に、複数のプリンタ1から入力された情報を教師データとして機械学習を行わせて、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータを生成する(S401)。
【0048】
S401では、プリンタ1の使用地域毎の、インクジェットヘッド4の異常の程度の情報、及び、ユーザにより選択された吸引パージの種類の情報に基づいて学習部97が機械学習を行うことで、プリンタ1の使用地域毎の、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けを導き出す。そして、プリンタ1の使用地域毎に、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けのデータを生成する。
【0049】
そして、サーバ98は、S401で生成した関連付けのデータに基づいて、プリンタ1の関連付け情報における上記関連付けを変更するための変更情報を、対応する使用地域で使用されている複数のプリンタ1に送信する(S402)。
【0050】
また、ネットワーク99を介してサーバ98に接続された複数のプリンタ1の各々において、制御装置80は、上述のS402により送信された変更情報を受信したときに、
図10(b)に示すように、受信した変更情報に基づいて、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けを変更する(S501)。
【0051】
<効果>
本実施形態では、インクジェットヘッド4の異常の程度を診断する診断処理での診断結果に基づいて自動的に吸引パージの種類を決定して吸引パージを行う自動モードにおける、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けの情報である関連付け情報がフラッシュメモリ84に記憶されている。そして、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージの種類と、ユーザが吸引パージの種類を選択する手動モードで選択された吸引パージの種類とに基づいて、関連付け情報における上記関連付けを変更する。これにより、関連付け情報における上記関連付けをユーザの嗜好に合わせたものに変更することができる。
【0052】
また、本実施形態では、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージが、パージ選択信号が示す吸引パージよりもインクの排出量が少ないものである場合に、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、インクの排出量がより少ないものに変更する。これにより、ユーザが、異常ノズルの回復が完全でなくても吸引パージによるインクの排出を極力抑えたい等の嗜好を有するような場合に、この嗜好に合わせて、インクジェットヘッド4の異常の程度に対する、吸引パージによるインクの排出量を減らすことができる。
【0053】
ただし、本実施形態では、「NORMAL」の吸引パージにおけるインクの排出量が、定期的に行う吸引パージにおいて異常ノズルを回復させることのできる最小の排出量である。そこで、本実施形態では、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージが、パージ選択信号が示す吸引パージよりもインクの排出量が少ないものである場合でも、「NORMAL」の吸引パージについては、吸引パージの種類を変更せずに「NORMAL」のままとする。これにより、ユーザの嗜好に合わせて、インクジェットヘッド4の異常の程度に対する、吸引パージによるインクの排出量を減らしつつも、定期的に行われる吸引パージにおいて異常ノズルを回復させることができる程度の排出量を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態では、S201の診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージが、パージ選択信号が示す吸引パージよりもインクの排出量が多いものである場合に、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、インクの排出量がより多いものに変更する。これにより、ユーザが、吸引パージによるインクの排出が多くなっても異常ノズルを確実に回復させたい等の嗜好を有するような場合に、この嗜好に合わせて、インクジェットヘッド4の異常の程度に対する、吸引パージによるインクの排出量を増やすことができる。
【0055】
また、本実施形態では、診断処理での診断結果が示すインクジェットヘッド4の異常の程度に基づいて、表示部89に報知信号を送信して、吸引パージを行わない場合、及び、各吸引パージを行った場合のそれぞれについて、記録される画像のプレビューQを表示部89に表示させ、ユーザにこれらのプレビューQに基づいて、吸引パージの種類を選択させる。これにより、ユーザが表示部89に表示されたプレビューQに基づいて、自身の嗜好にあった適切な吸引パージの種類を選択することができる。
【0056】
また、本実施形態では、複数のプリンタ1が、ネットワーク99を介してサーバ98に接続されている。そして、各プリンタ1からサーバ98に、インクジェットヘッド4の異常の程度の情報、選択された吸引パージの種類の情報、及び、プリンタ1が使用されている使用地域の情報を送信する。サーバ98では、複数のプリンタ1から送られてきたこれらの情報を教師データとして学習部97において機械学習を行うことにより、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータを生成する。そして、このデータに基づいて、関連付け情報における上記関連付けを変更するための変更情報を複数のプリンタ1に送信する。そして、各プリンタ1では、受信した変更情報に基づいて、関連付け情報における上記関連付けを変更する。これにより、サーバ98に接続された複数のプリンタ1のユーザの嗜好に合わせて、これら複数のプリンタ1の関連付け情報における上記関連付けを変更することができる。
【0057】
また、ユーザの嗜好は、地域によって似た傾向になることがある。本実施形態では、プリンタ1からサーバ98に送られる情報にプリンタ1の使用地域の情報が含まれている。そして、サーバ98では、学習部97による機械学習により、同じ地域で使用されている複数のプリンタ1から送られてきた情報に基づいて、当該地域における、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータを生成する。そして、地域毎の上記データに基づいて、各地域で使用されているプリンタ1に上記変更情報を送信する。これにより、プリンタ1が使用される地域毎のユーザの嗜好に合わせて、プリンタ1の関連付け情報における上記関連付けを変更することができる。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0059】
上述の実施形態では、プリンタ1からサーバ98に送られる情報に、プリンタ1の使用地域の情報が含まれており、サーバ98では、使用地域が同じ複数のプリンタ1から受信した情報に基づいて、学習部97による機械学習によって、使用地域毎のインクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との適切な関連付けのデータを生成する。そして、使用地域毎の上記データに基づいて、地域情報に対応する地域で使用される複数のプリンタ1に変更情報を送信する。しかしながら、これには限られない。例えば、プリンタ1からサーバ98に送られる情報に、プリンタ1の使用地域の情報が含まれていなくてもよい。そして、サーバ98において、プリンタ1の使用地域に関係なく、複数のプリンタ1から受信した情報に基づいて上記データを生成し、このデータに基づいて複数のプリンタ1に変更情報を送信してもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、サーバ98において、受信した情報に基づいて生成した、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータに基づいて、関連付けを変更するための変更情報をプリンタ1に送信したが、これには限られない。例えば、サーバ98において、受信した情報に基づいて上記データを生成し、以後のプリンタ1の製造時に、上記データに基づいて、関連付け情報をフラッシュメモリ84に記憶させてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、サーバ98が学習部97を有し、学習部97が入力された情報に基づいて機械学習を行って、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータを生成したたが、これには限られない。例えば、サーバ98に集まった情報を、人が分析することで、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との最適な関連付けのデータを作成するなどしてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、複数のプリンタ1が、ネットワーク99を介してサーバ98に接続されており、各プリンタ1からサーバ98に情報が送られていたが、これには限られない。プリンタ1からサーバ98への情報の送信、及び、これに対応する、サーバ98からプリンタ1への変更情報の送信は行わなくてもよい。また、この場合には、プリンタ1は、ネットワーク99に接続するための通信部91を有していなくてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、表示部89に、吸引パージを行わなかった場合、及び、各吸引パージを行った場合のそれぞれについて、記録される画像のプレビューQを表示させ、ユーザに吸引パージの種類を選択させたが、これには限られない。例えば、表示部89に吸引パージを行わなかった場合についてのみ、記録される画像のプレビューQを表示させ、ユーザにこのプレビューQに基づいて吸引パージの種類を選択させてもよい。この場合でも、ユーザは、例えば、上記当該プレビューQにおけるドットの抜けが多いときほどインクの排出量の多い吸引パージを選択することができる。
【0064】
また、表示部89に表示させるプレビューQは、記録指令とともに入力される画像データに対応するものであることにも限られない。例えば、フラッシュメモリ84に予めサンプルとなる画像の画像データを記憶させておき、このサンプルとなる画像のプレビューを表示部89に表示させてもよい。
【0065】
さらには、表示部89に、記録される画像のプレビューQを表示させて、インクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知することにも限られない。例えば、表示部89に、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち異常ノズルの割合の情報などを表示させることによってインクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知してもよい。あるいは、例えば、プリンタ1にLEDランプなどを設け、インクジェットヘッド4の異常の程度に応じて、LEDランプを点灯させる、点滅させる、点滅させる間隔を変える、といった発光のさせ方を変えて、インクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知してもよい。あるいは、例えば、プリンタ1にスピーカを設け、インクジェットヘッド4の異常の程度に応じた音を鳴らすことによって、インクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知してもよい。
【0066】
また、プリンタ1に、インクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知するための報知部を設けることにも限られない。例えば、プリンタ1にPCが接続されている場合に、プリンタ1からPCにインクジェットヘッド4の異常の程度を報知するための報知信号を送信し、PCのディスプレイにインクジェットヘッド4の異常の程度をユーザに報知するための画面を表示させるなどしてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、ユーザによって選択された吸引パージが、診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の少ないものである場合、及び、多いものである場合のいずれの場合についても、関連付け情報における上記関連付けを変更したが、これには限られない。
【0068】
例えば、ユーザによって選択された吸引パージが、診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の少ないものである場合、及び、多いものである場合のうち、片方の場合についてのみ、関連付け情報におけるインクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けを変更してもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、「NORMAL」の吸引パージにおけるインクの排出量は、上記のように定期的に吸引パージを行ったときに異常ノズルを回復させることのできる最小の排出量に設定されている。そして、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の異常の程度に関連付ける吸引パージを、インクの排出量がより少ないものに変更する場合において、現在「NORMAL」に設定されているものについては、「NORMAL」のままとしたが、これには限られない。例えば、「NORMAL」よりもインクの排出量の少ない吸引パージを可能とし、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の異常の程度に関連付ける吸引パージを、インクの排出量がより少ないものに変更する場合に、現在「NORMAL」に設定されているものを、「NORMAL」よりもインクの排出量の少ない吸引パージに変更してもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、関連付け情報が、自動モードにおける、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けの情報であったが、これには限られない。例えば、判定回路68からの信号に基づいて異常ノズルであるか否かの判定を行い、その結果に基づいて吸引パージを行う際に、自動モードがなく、常にユーザの選択に応じた吸引パージを行ってもよい。そして、この場合において、例えば、フラッシュメモリ84に、
図8(a)と同様のインクジェットヘッド4の異常の程度と、吸引パージの種類とを関連付けの情報である関連付け情報を記憶させておく。そして、
図7(b)と同様のパージ選択信号の入力画面において、診断処理での診断結果が示すインクジェットヘッド4の異常の程度と、関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージを行った場合のプレビューQに対して「Recommend」を付すようにしてもよい。この場合には、インクジェットヘッド4の異常の程度に応じて適切に、推奨される吸引パージの種類をユーザに報知することができる。
【0071】
また、上述の実施形態では、関連付け情報が示す、診断処理での診断結果が示すインクジェットヘッド4の異常の程度に対応する吸引パージの種類と、パージ選択信号が示す吸引パージの種類とが異なる場合に、関連付け情報における、インクジェットヘッド4の異常の程度と、吸引パージの種類との関連付けを変更したが、これには限られない。
【0072】
例えば、変形例1では、フラッシュメモリ84に、上述の実施形態と同様の、インクジェットヘッド4の異常の程度と吸引パージの種類との関連付けの情報(
図8(a)の情報、以下、第1情報とする)と、
図11(a)に示すような、吸引パージの種類と、吸引パージにおける吸引ポンプ62の駆動時間との関連付けの情報(以下、第2情報とする)とを記憶しておく。ここで、
図11(a)の吸引ポンプ62の駆動時間T1,T2,T3は、T1<T2<T3の大小関係にあり、吸引ポンプ62の駆動時間が長いほど、吸引パージによるインクの排出量が多い。すなわち、
図11(a)における吸引ポンプ62の駆動時間は、吸引パージにおけるインクの排出量に対応する。なお、この場合には、第1情報と第2情報とを合わせたものが、本発明の「関連付け情報」に相当する。
【0073】
そして、診断処理での診断結果と第1情報とに基づいて決定される吸引パージの種類と、パージ選択信号が示す吸引パージの種類とが異なる場合に、第2情報における吸引ポンプ62の駆動時間を変更する。
【0074】
また、変形例1では、第2情報が、吸引パージの種類と、吸引パージにおける吸引ポンプ62の駆動時間との関連付けの情報であったが、これには限られない。例えば、変形例2では、第2情報として、
図11(b)に示すような、吸引パージの種類と、吸引パージにおける吸引ポンプ62の回転速度との関連付けの情報が記憶されている。ここで、
図11(b)の吸引ポンプ62の回転速度U1,U2,U3は、U1<U2<U3の大小関係にあり、吸引ポンプ62の回転速度が速いほど、吸引パージによるインクの排出量が多い。すなわち、
図11(b)における吸引ポンプ62の回転速度は、吸引パージにおけるインクの排出量に対応する。
【0075】
そして、診断処理での診断結果と第1情報とに基づいて決定される吸引パージの種類と、パージ選択信号が示す吸引パージの種類とが異なる場合に、第2情報における吸引ポンプ62の回転速度を変更する。
【0076】
また、第2情報は、吸引パージの種類と、吸引パージにおけるインクの排出量に関連する別のパラメータとの関連付けの情報であり、診断処理での診断結果と第1情報とに基づいて決定される吸引パージの種類と、パージ選択信号が示す吸引パージの種類とが異なる場合に、第2情報における上記パラメータの値を変更してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、パージ選択信号が示す吸引パージが、診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージと異なる場合に、すぐに関連付け情報を変更したが、これには限られない。例えば、パージ選択信号が示す吸引パージが、診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の少ないものであることが所定回数以上連続した場合に、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、それぞれ、インクの排出量のより少ないものに変更してもよい。あるいは、パージ選択信号が示す吸引パージが、診断処理での診断結果と関連付け情報とに基づいて決定される吸引パージよりもインクの排出量の多いものであることが所定回数以上連続した場合に、インクジェットヘッド4の各異常の程度に対応する吸引パージの種類を、それぞれ、インクの排出量のより多いものに変更してもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、排出動作として、インクの排出量の異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせたが、これには限られない。例えば、排出動作として、インクジェットヘッド4を駆動させてノズル10からインクを排出させ、且つ、インクの排出量が異なる複数種類のフラッシングのいずれかを選択的に行わせてもよい。なお、この場合には、例えば、複数種類のフラッシング間で、インクジェットヘッド4の駆動回数を異ならせることによって、インクの排出量を異ならせることができる。また、この場合には、インクジェットヘッド4が、本発明の「液体吐出ヘッド」と「排出手段」とを兼ねることになる。
【0079】
あるいは、例えば、少なくとも1種類の吸引パージと少なくとも1種類のフラッシングとを含む、インクの排出量が異なる複数種類の排出動作のうちのいずれかを選択的に行うように構成してもよい。なお、この場合には、メンテナンスユニット8と、インクジェットヘッド4とをあわせたものが、本発明の「排出手段」に相当する。
【0080】
また、上述の実施形態では、パージとして吸引パージを行ったが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ15とを接続するチューブ13の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ61で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「排出手段」に相当する。
【0081】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ62による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「排出手段」に相当する。
【0082】
また、上述の実施形態では、3種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせることができるようになっているのに対して、ユーザが吸引パージの種類を選択することで、排出量情報としてのパージ選択信号を入力したが、これには限られない。例えば、インクの排出量そのものの情報など、インクの排出量についての別の排出量情報を、ユーザに入力させ、入力された排出量情報が示す排出量のインクを、吸引パージ等の排出動作によってノズル10からインクジェットヘッド4内のインクが排出されるようにしてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させたときの検出用電極66の電圧値に応じて、判定回路68から、異常ノズルであるか否かを示す信号を出力したが、これには限られない。
【0084】
例えば、上下方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧値に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かについての信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサを設け、光センサから、不吐出ノズルであるか否かについての信号を出力してもよい。
【0085】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、不吐出ノズルであるか否かについての信号を出力するようにしてもよい。
【0086】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が不吐出ノズルであるか否かについての信号を出力するようにしてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10からのインクの吐出速度や吐出方向等を検出するための構成を設け、インクの吐出速度や吐出方向等が異常なノズル10を異常ノズルと判定としてもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について異常ノズルであるか否かを判定し、その結果に基づいてインクジェットヘッド4の異常の程度を診断したが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、一部のノズル10についてのみ異常ノズルであるか否かを判定し、その結果に基づいてインクジェットヘッド4の異常の程度を診断してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4が、キャリッジ2に搭載され、走査方向に移動しつつ、複数のノズル10からインクを吐出する、いわゆるシリアル式のヘッドであったが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッドが、走査方向において記録用紙Pの全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドであってもよい。
【0090】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する画像記録装置にも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0091】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
66 検出用電極
67 高電圧電源回路
68 判定回路
69 抵抗
80 制御装置
89 表示部
90 操作部
91 通信部
98 サーバ
100 システム