(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20231205BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231205BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M7/48 M
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019184697
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】久世 直樹
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133869(JP,A)
【文献】特開2015-089185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位電位と中間電位と下位電位との3つのレベルの電位の電力を出力する電力変換装置であって、
前記上位電位と前記中間電位とに接続され、少なくとも1つの上位電位スイッチング素子を含む複数の半導体素子を内部に収納する上位電位半導体モジュールと、
前記中間電位と前記下位電位とに接続され、少なくとも1つの下位電位スイッチング素子を含む前記複数の半導体素子を内部に収納する下位電位半導体モジュールと、
前記上位電位半導体モジュールと前記下位電位半導体モジュールとに接続され、複数の中間スイッチング素子を内部に収納する中間半導体モジュールとを備え、
前記中間半導体モジュールの耐圧が、前記上位電位半導体モジュールの耐圧および前記下位電位半導体モジュールの耐圧よりも大きくなるように構成されて
おり、
前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールの各々は、正側端子、負側端子および出力端子を含み、前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが配置される配置面において垂直な方向から見て、前記中間半導体モジュールの出力端子と、前記下位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが配置されているか、または、前記中間半導体モジュールの正側端子と、前記上位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、前記上位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが配置されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールの各々は、前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが配置される配置面において垂直な方向から見て、前記中間半導体モジュールの出力端子と、前記下位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが直線状に配置されているか、または、前記中間半導体モジュールの正側端子と、前記上位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、前記上位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが直線状に配置されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記中間半導体モジュールの耐圧は、前記中間スイッチング素子がオンからオフにスイッチングした際のサージ電圧よりも大きい、請求項
2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記中間半導体モジュールの耐圧は、前記中間スイッチング素子がオンからオフにスイッチングした際の前記中間スイッチング素子を含む、サージに関わる一巡の経路のインダクタンスに応じて、前記上位電位半導体モジュールの耐圧および前記下位電位半導体モジュールの耐圧よりも大きくなるように選択されている、請求項
3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュール、および、前記中間半導体モジュール
は、前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが配置される配置面に垂直な方向から見て、前記上位電位半導体モジュールの前記正側端子、前記負側端子および前記出力端子、前記中間半導体モジュールの前記正側端子、前記負側端子および前記出力端子、および、前記下位電位半導体モジュールの前記出力端子、前記負側端子および前記正側端子がこの順で、直線上に沿って配置されるように、前記上位電位半導体モジュール、前記下位電位半導体モジュールおよび前記中間半導体モジュールが前記配置面に配置されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上位電位半導体モジュールの前記正側端子に接続される略平板状の正側平板導体と、
前記上位電位半導体モジュールの前記負側端子と、前記下位電位半導体モジュールの前記正側端子とに接続される略平板状の中間平板導体とをさらに備え、
前記正側平板導体は、前記上位電位半導体モジュールの前記正側端子の表面上に配置され、
前記中間平板導体は、前記正側平板導体のうちの、前記配置面とは反対側の表面上に配置されている、請求項
5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記正側平板導体には、正側平板導体孔部が設けられており、
前記中間平板導体は、前記正側平板導体の前記正側平板導体孔部を介して、前記上位電位半導体モジュールの前記負側端子と、前記下位電位半導体モジュールの前記正側端子とに接続されている、請求項
6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記上位電位半導体モジュールの前記出力端子と、前記中間半導体モジュールの前記正側端子とに接続される略平板状の第1接続平板導体と、
前記下位電位半導体モジュールの前記出力端子と、前記中間半導体モジュールの前記負側端子とに接続される略平板状の第2接続平板導体と、
前記下位電位半導体モジュールの前記負側端子に接続される略平板状の負側平板導体とをさらに備え、
前記第1接続平板導体、前記第2接続平板導体および前記負側平板導体は、前記中間平板導体の、前記配置面とは反対側の表面上に互いに隣り合うように配置されている、請求項
6または
7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記正側平板導体には、正側平板導体孔部が設けられているとともに、前記中間平板導体には、中間平板導体孔部が設けられており、
前記第1接続平板導体は、前記正側平板導体孔部および前記中間平板導体孔部を介して、前記上位電位半導体モジュールの前記出力端子と、前記中間半導体モジュールの前記正側端子とに接続され、
前記第2接続平板導体は、前記正側平板導体孔部および前記中間平板導体孔部を介して、前記下位電位半導体モジュールの前記出力端子と、前記中間半導体モジュールの前記負側端子とに接続され、
前記負側平板導体は、前記正側平板導体孔部および前記中間平板導体孔部を介して、前記下位電位半導体モジュールの前記負側端子に接続されている、請求項
8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記正側平板導体と前記中間平板導体とに接続される第1コンデンサと、前記第1コンデンサに直列に接続されるとともに、前記負側平板導体と前記中間平板導体とに接続される第2コンデンサとをさらに備え、
前記正側平板導体は、前記上位電位半導体モジュールの前記正側端子に接続され前記配置面に略水平な第1正側導体部分と、前記第1コンデンサに接続され前記配置面に略垂直な第2正側導体部分とを含む略L字形状を有し、
前記負側平板導体は、前記下位電位半導体モジュールの前記負側端子に接続され前記配置面に略水平な第1負側導体部分と、前記第2コンデンサに接続され前記配置面に略垂直な第2負側導体部分とを含む略L字形状を有し、
前記中間平板導体は、前記上位電位半導体モジュールの前記負側端子と前記下位電位半導体モジュールの前記正側端子とに接続され前記配置面に略水平な第1中間導体部分と、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサに接続され前記配置面に略垂直な第2中間導体部分とを含む略L字形状を有する、請求項
8または
9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1接続平板導体、前記第2接続平板導体、および、前記負側平板導体は、前記配置面に垂直な方向から見て、前記正側平板導体および前記中間平板導体にオーバラップするように配置されている、請求項
8~10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、複数の半導体モジュールを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体モジュールを備える電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されている電力変換装置では、正電端子と負電端子との間に、互いに直列に4つのスイッチング素子(以下、スイッチング素子Q1~Q4とする)が接続されている。また、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点と、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点との間に、互いに直列に2つのスイッチング素子(以下、スイッチング素子Q5およびQ6とする)が接続されている。また、スイッチング素子Q1およびQ2は、1つのモジュール(以下、第1モジュールという)内に収容されている。また、スイッチング素子Q2およびQ3は、1つのモジュール(以下、第2モジュールという)内に収容されている。また、スイッチング素子Q5およびQ6は、1つのモジュール(以下、第3モジュールという)内に収容されている。
【0004】
また、第1モジュールと第2モジュールとの接続点は、中点端子(中間電位)に接続されている。また、第3モジュールに収容されるスイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点は、交流端子に接続されている。これにより、上記特許文献1に開示されている電力変換装置から、3つのレベルの電位(上位電位、中間電位、および、下位電位)の電力が出力される。また、第1~第3モジュールは、互いに同じモジュールから構成されている。つまり、モジュールの耐圧などが互いに等しいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の記載のような3レベルの電位の電力を出力する電力変換装置において、各モジュールに含まれるスイッチング素子のスイッチングに起因して発生するサージ電圧の大きさは、複数のスイッチング素子の間で異なる。具体的には、スイッチング素子がスイッチングした後の回路における、サージ電圧の要因となるインダクタンス(スイッチング素子を含む一巡の経路(閉回路)の長さ)が、複数のスイッチング素子の間で異なる。ここで、上記特許文献1では、第1~第3モジュールが、互いに同じ耐圧を有するモジュールから構成されている。このため、スイッチング素子に印加される最大のサージ電圧に耐え得るように3つのモジュールを選択した場合、3つのモジュールのうち、いずれかのモジュールの耐圧が必要以上に大きくなる(過剰性能となる)という問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、過剰性能となるのを抑制することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電力変換装置は、上位電位と中間電位と下位電位との3つのレベルの電位の電力を出力する電力変換装置であって、上位電位と中間電位とに接続され、少なくとも1つの上位電位スイッチング素子を含む複数の半導体素子を内部に収納する上位電位半導体モジュールと、中間電位と下位電位とに接続され、少なくとも1つの下位電位スイッチング素子を含む複数の半導体素子を内部に収納する下位電位半導体モジュールと、上位電位半導体モジュールと下位電位半導体モジュールとに接続され、複数の中間スイッチング素子を内部に収納する中間半導体モジュールとを備え、中間半導体モジュールの耐圧が、上位電位半導体モジュールの耐圧および下位電位半導体モジュールの耐圧よりも大きくなるように構成されており、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールの各々は、正側端子、負側端子および出力端子を含み、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置される配置面において垂直な方向から見て、中間半導体モジュールの出力端子と、下位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置されているか、または、中間半導体モジュールの正側端子と、上位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、上位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置されている。
【0009】
この発明の一の局面による電力変換装置では、上記のように、中間半導体モジュールの耐圧が、上位電位半導体モジュールの耐圧および下位電位半導体モジュールの耐圧よりも大きくなるように構成されており、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールの各々は、正側端子、負側端子および出力端子を含み、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置される配置面において垂直な方向から見て、中間半導体モジュールの出力端子と、下位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置されているか、または、中間半導体モジュールの正側端子と、上位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、上位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置されている。ここで、中間スイッチング素子をオンからオフにスイッチングした後における、中間スイッチング素子を含む一巡の経路(閉回路)には、中間スイッチング素子に加えて上位電位スイッチング素子(または、下位電位スイッチング素子)が配置されるとともに、中間スイッチング素子と上位電位スイッチング素子(または、下位電位スイッチング素子)とを接続する経路が含まれる。すなわち、一巡の経路に含まれる素子数が比較的多いとともに、一巡の経路の長さが比較的長くなる。このため、中間スイッチング素子をスイッチングした後の一巡の経路のインダクタンスは、上位電位スイッチング素子または下位電位スイッチング素子を含む一巡の経路のインダクタンスよりも大きくなる。その結果、中間スイッチング素子をスイッチングした際に発生するサージ電圧は、上位電位スイッチング素子または下位電位スイッチング素子をオンからオフにスイッチングした際に発生するサージ電圧よりも大きくなる。そこで、上記のように構成することによって、上位電位半導体モジュール、中間半導体モジュール、および、下位電位半導体モジュールの全ての耐圧が比較的大きくされる場合と異なり、電力変換装置が過剰性能となるのを抑制することができる。なお、上位電位スイッチング素子、中間スイッチング素子、および、下位電位スイッチング素子がスイッチングした際の一巡の経路の詳細な説明については後述する。
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールの各々は、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置される配置面において垂直な方向から見て、中間半導体モジュールの出力端子と、下位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが直線状に配置されているか、または、中間半導体モジュールの正側端子と、上位半導体モジュールの出力端子とが、隣り合うように、上位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが直線状に配置されている。
【0010】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、中間半導体モジュールの耐圧は、中間スイッチング素子がオンからオフにスイッチングした際のサージ電圧よりも大きい。このように構成すれば、中間スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するサージによって中間スイッチング素子が破壊されるのを防止することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、中間半導体モジュールの耐圧は、中間スイッチング素子がオンからオフにスイッチングした際の中間スイッチング素子を含む、サージに関わる一巡の経路のインダクタンスに応じて、上位電位半導体モジュールの耐圧および下位電位半導体モジュールの耐圧よりも大きくなるように選択されている。このように構成すれば、中間半導体モジュールの耐圧が一巡の経路のインダクタンスに応じて選定されているので、インダクタンスに対して過度に耐圧が大きい中間半導体モジュールが選択されるのを抑制することができる。その結果、過度に耐圧が大きい中間半導体モジュール(すなわち、大型の中間半導体モジュール)が選択されることに起因して、電力変換装置が大型化するのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュール、および、中間半導体モジュールは、各々、正側端子、負側端子および出力端子を含み、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置される配置面に垂直な方向から見て、上位電位半導体モジュールの正側端子、負側端子および出力端子、中間半導体モジュールの正側端子、負側端子および出力端子、および、下位電位半導体モジュールの出力端子、負側端子および正側端子がこの順で、直線上に沿って配置されるように、上位電位半導体モジュール、下位電位半導体モジュールおよび中間半導体モジュールが配置面に配置されている。このように構成すれば、上位電位半導体モジュールの出力端子と中間半導体モジュールの正側端子との間の距離が比較的小さくなるので、これらの端子同士を接続する導体の長さが長くなるのを抑制することができる。また、中間半導体モジュールの負側端子と下位電位半導体モジュールの出力端子との間の距離が比較的小さくなるので、これらの端子同士を接続する導体の長さが長くなるのを抑制することができる。すなわち、導体の長さが長くなることに起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、上位電位半導体モジュールの正側端子に接続される略平板状の正側平板導体と、上位電位半導体モジュールの負側端子と、下位電位半導体モジュールの正側端子とに接続される略平板状の中間平板導体とをさらに備え、正側平板導体は、上位電位半導体モジュールの正側端子の表面上に配置され、中間平板導体は、正側平板導体のうちの、配置面とは反対側の表面上に配置されている。このように構成すれば、正側平板導体と中間平板導体とが互いに対向するように積層されるので、正側平板導体を流れる電流に起因して生じる磁束と、中間平板導体を流れる電流に起因して生じる磁束とを打ち消し合うことができる。その結果、流れる電流の磁束に起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0014】
上記正側平板導体と中間平板導体とを備える電力変換装置において、好ましくは、正側平板導体には、正側平板導体孔部が設けられており、中間平板導体は、正側平板導体の正側平板導体孔部を介して、上位電位半導体モジュールの負側端子と、下位電位半導体モジュールの正側端子とに接続されている。このように構成すれば、正側平板導体に中間平板導体を積層した場合でも、正側平板導体の正側平板導体孔部を介して、容易に、中間平板導体と、上位電位半導体モジュールの負側端子および下位電位半導体モジュールの正側端子とを接続することができる。
【0015】
上記正側平板導体と中間平板導体とを備える電力変換装置において、好ましくは、上位電位半導体モジュールの出力端子と、中間半導体モジュールの正側端子とに接続される略平板状の第1接続平板導体と、下位電位半導体モジュールの出力端子と、中間半導体モジュールの負側端子とに接続される略平板状の第2接続平板導体と、下位電位半導体モジュールの負側端子に接続される略平板状の負側平板導体とをさらに備え、第1接続平板導体、第2接続平板導体および負側平板導体は、中間平板導体の、配置面とは反対側の表面上に互いに隣り合うように配置されている。このように構成すれば、第1接続平板導体、第2接続平板導体および負側平板導体と、中間平板導体とが、互いに対向するように積層されるので、第1接続平板導体、第2接続平板導体および負側平板導体の各々を流れる電流に起因して生じる磁束と、中間平板導体を流れる電流に起因して生じる磁束とを打ち消し合うことができる。その結果、流れる電流の磁束に起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、正側平板導体には、正側平板導体孔部が設けられているとともに、中間平板導体には、中間平板導体孔部が設けられており、第1接続平板導体は、正側平板導体孔部および中間平板導体孔部を介して、上位電位半導体モジュールの出力端子と、中間半導体モジュールの正側端子とに接続され、第2接続平板導体は、正側平板導体孔部および中間平板導体孔部を介して、下位電位半導体モジュールの出力端子と、中間半導体モジュールの負側端子とに接続され、負側平板導体は、正側平板導体孔部および中間平板導体孔部を介して、下位電位半導体モジュールの負側端子に接続されている。このように構成すれば、第1接続平板導体、第2接続平板導体および負側平板導体が、正側平板導体および中間平板導体に積層された場合でも、正側平板導体孔部および中間平板導体孔部を介して、容易に、各導体と各端子とを接続することができる。
【0017】
上記第1接続平板導体と第2接続平板導体と負側平板導体とを備える電力変換装置において、好ましくは、正側平板導体と中間平板導体とに接続される第1コンデンサと、第1コンデンサに直列に接続されるとともに、負側平板導体と中間平板導体とに接続される第2コンデンサとをさらに備え、正側平板導体は、上位電位半導体モジュールの正側端子に接続され配置面に略水平な第1正側導体部分と、第1コンデンサに接続され配置面に略垂直な第2正側導体部分とを含む略L字形状を有し、負側平板導体は、下位電位半導体モジュールの負側端子に接続され配置面に略水平な第1負側導体部分と、第2コンデンサに接続され配置面に略垂直な第2負側導体部分とを含む略L字形状を有し、中間平板導体は、上位電位半導体モジュールの負側端子と下位電位半導体モジュールの正側端子とに接続され配置面に略水平な第1中間導体部分と、第1コンデンサおよび第2コンデンサに接続され配置面に略垂直な第2中間導体部分とを含む略L字形状を有する。このように構成すれば、正側平板導体と、負側平板導体と、中間平板導体とを積層して互いに磁束を打ち消し合いながら(つまり、インダクタンスを低減しながら)、正側平板導体および中間平板導体と第1コンデンサとを接続し、負側平板導体および中間平板導体と第2コンデンサとを接続することができる。
【0018】
上記第1接続平板導体と第2接続平板導体と負側平板導体とを備える電力変換装置において、好ましくは、第1接続平板導体、第2接続平板導体、および、負側平板導体は、配置面に垂直な方向から見て、正側平板導体および中間平板導体にオーバラップするように配置されている。このように構成すれば、第1接続平板導体、第2接続平板導体、および、負側平板導体が、正側平板導体および中間平板導体にオーバラップするように配置されているので、確実に、各導体を流れる電流に起因して発生する磁束同士を打ち消し合うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、電力変換装置が、過剰性能となるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態による電力変換装置(電力変換部)の回路図である。
【
図2】本実施形態による半導体モジュールの上面図である。
【
図3】スイッチング素子Q1がオンの際の電流が流れる経路を示す図である。
【
図4】スイッチング素子Q1がオンからオフにスイッチングした際の電流が流れる経路を示す図である。
【
図5】スイッチング素子Q3がオンの際の電流が流れる経路を示す図である。
【
図6】スイッチング素子Q3がオンからオフにスイッチングした際の電流が流れる経路を示す図である。
【
図7】本実施形態による電力変換部の斜視図である。
【
図8】本実施形態による電力変換部の上面図である。
【
図9】本実施形態による電力変換部の半導体モジュールを上面から見た図である。
【
図10】本実施形態による電力変換部(導体)の分解斜視図である。
【
図11】本実施形態による正側平板導体の斜視図である。
【
図12】本実施形態による負側平板導体の斜視図である。
【
図13】本実施形態による中間平板導体の斜視図である。
【
図14】本実施形態による第1接続平板導体の斜視図である。
【
図15】本実施形態による第2接続平板導体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1~
図15を参照して、本実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、電力変換装置100は、上位電位Pと中間電位Mと下位電位Nとの3つのレベルの電位の電力を出力するように構成されている。なお、電力変換装置100は、たとえば、PCS(Power Conditioning System)として用いられる。電力変換装置100は、太陽電池により生成された直流電力を、3相の交流電力として出力する。電力変換装置100は、電力変換部10を含む。電力変換部10は、各相(U相、V相およびW相)毎に設けられている。以下、1つの電力変換部10の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、電力変換部10は、互いに直列に接続されるスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3およびスイッチング素子Q4を含む。スイッチング素子Q1~Q4は、上位電位Pと下位電位Nとの間に接続されている。また、スイッチング素子Q1~Q4には、それぞれ、逆並列にダイオードDが接続されている。なお、スイッチング素子Q1~Q4は、たとえば、シリコン(Si)半導体からなるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。また、ダイオードDは、シリコン(Si)半導体からなる。なお、スイッチング素子Q1は、特許請求の範囲の「上位電位スイッチング素子」および「半導体素子」の一例である。また、スイッチング素子Q2およびQ3は、特許請求の範囲の「中間スイッチング素子」の一例である。また、スイッチング素子Q4は、特許請求の範囲の「下位電位スイッチング素子」および「半導体素子」の一例である。
【0025】
また、電力変換部10は、上位電位Pと下位電位Nとの間に、互いに直列に接続されているコンデンサC1およびコンデンサC2を含む。なお、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点は、中間電位Mである。コンデンサC1およびコンデンサC2は、スイッチング素子Q1~Q4に対して電気的に並列に接続されている。なお、コンデンサC1およびコンデンサC2は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1コンデンサ」および「第2コンデンサ」の一例である。
【0026】
また、電力変換部10には、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2の接続点N1と、スイッチング素子Q3およびスイッチング素子Q4の接続点N2とに電気的に接続されるとともに互いに直列に接続されるダイオードD1およびダイオードD2が設けられている。なお、ダイオードD1およびダイオードD2は、クランプダイオードとして機能する。また、ダイオードD1のアノードが、中間電位Mに電気的に接続されている。また、ダイオードD1のカソードが、接続点N1に電気的に接続されている。ダイオードD2のアノードが、接続点N2に電気的に接続されている。また、ダイオードD2のカソードが、中間電位Mに電気的に接続されている。なお、ダイオードD1およびダイオードD2は、特許請求の範囲の「半導体素子」の一例である。
【0027】
電力変換部10には、複数の半導体モジュール20(半導体モジュール20a~20c)が設けられている。半導体モジュール20aは、上位電位Pと、中間電位M(コンデンサC1とコンデンサC2との接続点)とに接続されている。また、半導体モジュール20aは、少なくとも1つのスイッチング素子(具体的には、スイッチング素子Q1)と、ダイオードD1とを内部に収納する。なお、ダイオードD1は、IGBTとIGBTに逆並列に接続されたダイオードDとから構成されたスイッチング素子において、ダイオードDのみが機能されることにより構成されている。すなわち、半導体モジュール20aおよび20cは、同一の構造(2つのスイッチング素子を内部に収容する構造、2in1という。)のモジュールから構成されている。なお、ダイオードD1は、ダイオード単体として、半導体モジュール20aに収容されていてもよい。この場合、半導体モジュール20aおよび20cは、互いに異なる構造のモジュールから構成される。なお、半導体モジュール20a、20bおよび20cは、それぞれ、特許請求の範囲の「上位電位半導体モジュール」、「下位電位半導体モジュール」および「中間半導体モジュール」の一例である。
【0028】
半導体モジュール20bは、中間電位Mと下位電位Nとに接続されている。また、半導体モジュール20bは、少なくとも1つのスイッチング素子(具体的には、スイッチング素子Q4)と、ダイオードD2とを内部に収納する。なお、ダイオードD2は、IGBTとIGBTに逆並列に接続されたダイオードDとから構成されたスイッチング素子において、ダイオードDのみが機能されることにより構成されている。すなわち、半導体モジュール20bおよび20cは、同一の構造(2つのスイッチング素子を内部に収容する構造)のモジュールから構成されている。なお、ダイオードD2は、ダイオード単体として、半導体モジュール20bに収容されていてもよい。この場合、半導体モジュール20bおよび20cは、互いに異なる構造のモジュールから構成される。
【0029】
半導体モジュール20cは、半導体モジュール20aと半導体モジュール20bとに接続されている。また、半導体モジュール20cは、複数のスイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q3を内部に収納する。
【0030】
図2に示すように、半導体モジュール20は、正側端子21と、負側端子22と、出力端子23とを含む。半導体モジュール20の表面において、正側端子21と、負側端子22と、出力端子23とがこの順で、A1方向側からA2方向側に沿って並ぶように配置されている。また、半導体モジュール20は、略直方体形状を有する。また、半導体モジュール20の正側端子21および負側端子22は、それぞれ、コレクタ(C)端子およびエミッタ(E)端子として機能する。また、半導体モジュール20の出力端子23は、半導体モジュール20に含まれる2つのスイッチング素子(たとえば、Q2およびQ3)のうちの一方(Q2)のエミッタ端子でかつ他方(Q3)のコレクタ端子として機能する。
【0031】
次に、スイッチング素子Q1がオンからオフにスイッチングした際と、スイッチング素子Q3がオンからオフにスイッチングした際との電力変換装置100の動作について説明する。
【0032】
図3に示すように、スイッチング素子Q1(および、スイッチング素子Q2)がオンの場合、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、および、コンデンサC1を介する、電流が流れる経路(以下、経路A1という、
図3の太い実線参照)が形成される。次に、
図4に示すように、スイッチング素子Q1がオンからオフにスイッチングされることにより、上記の経路A1を流れていた電流は、スイッチング素子Q2およびダイオードD1を介する経路(還流経路、以下、経路A2という、
図4の太い点線参照)を流れる。また、スイッチング素子Q1がオフにされているので、スイッチング素子Q1、コンデンサC1およびダイオードD1を介する一巡の経路(以下、経路A3という、
図4の太い実線参照)には、電流が流れない一方、経路A3に含まれるインダクタンス(L)により電流を流し続けようとする作用が働く。このため、インダクタンス(L)に起因して、スイッチング素子Q1にサージ電圧Vce1が発生する。サージ電圧Vce1の大きさは、経路A3のインダクタンスに略比例する。
【0033】
図5に示すように、スイッチング素子Q3(および、スイッチング素子Q2)がオンの場合、スイッチング素子Q3、ダイオードD2、および、コンデンサC1を介する、電流が流れる経路(以下、経路B1という、
図5の太い実線参照)が形成される。次に、
図6に示すように、スイッチング素子Q3がオンからオフにスイッチングされることにより、上記の経路B1を流れていた電流は、スイッチング素子Q2およびスイッチング素子Q1を介する経路(還流経路、以下、経路B2という、
図6の太い点線参照)を流れる。また、スイッチング素子Q3がオフにされているので、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、ダイオードD2、および、コンデンサC1およびを介する一巡の経路(以下、経路B3という、
図6の太い実線参照)には、電流が流れない一方、経路B3に含まれるインダクタンス(L)により電流を流し続けようとする作用が働く。このため、インダクタンス(L)に起因して、スイッチング素子Q3にサージ電圧Vce2が発生する。
【0034】
ここで、スイッチング素子Q3がオフされることにより形成される一巡の経路B3の経路長は、スイッチング素子Q1がオフされることにより形成される一巡の経路A3の経路長よりも長くなる。具体的には、経路B3は、経路A3と比較して、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを接続する第1接続平板導体70(
図1参照)と、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4(ダイオードD2)とを接続する第2接続平板導体80(
図1参照)とが余分に付加されている。また、経路B3に存在するスイッチング素子の数は3つ(Q1~Q3)であり、経路A3に存在するスイッチング素子(Q1)の数(1つ)よりも多い。このため、経路B3のインダクタンスは、経路A3のインダクタンスよりも大きくなる。たとえば、経路B3のインダクタンスは、経路A3のインダクタンスに対して、約2.5倍程度大きくなる。その結果、スイッチング素子Q3がオフされることによりスイッチング素子Q3に発生するサージ電圧Vce2は、スイッチング素子Q1がオフされることによりスイッチング素子Q1に発生するサージ電圧Vce1よりも大きくなる。
【0035】
そこで、本実施形態では、電力変換装置100は、半導体モジュール20cの耐圧が、半導体モジュール20aの耐圧、および、半導体モジュール20bの耐圧よりも大きくなるように構成されている。たとえば、半導体モジュール20cの耐圧は、約1700Vであり、半導体モジュール20aの耐圧、および、半導体モジュール20bの耐圧は、約1200Vである。
【0036】
なお、スイッチング素子Q4がオンからオフにスイッチングされた場合の、一巡の経路の長さ(インダクタンス)は、上記経路A3の長さ(インダクタンス)と同様である。また、スイッチング素子Q2がオンからオフにスイッチングされた場合の、一巡の経路の長さ(インダクタンス)は、上記経路B3の長さ(インダクタンス)と同様である。
【0037】
また、本実施形態では、半導体モジュール20cの耐圧は、スイッチング素子Q2またはQ3がオンからオフにスイッチングした際のサージ電圧Vce2(たとえば、1300V程度)よりも大きい。そして、半導体モジュール20cの耐圧は、スイッチング素子Q2またはQ3がオンからオフにスイッチングした際のスイッチング素子Q2またはQ3を含む、サージに関わる一巡の経路B3のインダクタンスに応じて、半導体モジュール20aの耐圧、および、半導体モジュール20bの耐圧よりも大きくなるように選択されている。
【0038】
次に、スイッチング素子Q1~Q4の損失について説明する。半導体モジュール20cの耐圧が、半導体モジュール20aおよび半導体モジュール20bの耐圧よりも大きくされることにより、半導体モジュール20cの導通損失が大きくなる。一方、PCSなどにおいては、力率が1の付近で動作されるため、半導体モジュール20cのスイッチングの回数が少ない。これにより、半導体モジュール20cのスイッチング損失は、小さい。一方、半導体モジュール20aおよび半導体モジュール20bのスイッチング損失は、大きい。これにより、半導体モジュール20cの導通損失が大きくても、半導体モジュール20cの全損失と、半導体モジュール20aおよび半導体モジュール20bの各々の全損失との差は、比較的小さい。すなわち、半導体モジュール20cの耐圧を大きくすることに起因する損失に対する影響は、比較的小さい。
【0039】
次に、電力変換装置100の具体的な構造について説明する。
【0040】
図7および
図8に示すように、電力変換部10は、冷却部30を備えている。冷却部30は、略平板形状の冷却部本体部31と、冷却部本体部31から下方(Z2方向側)に延びる放熱フィン32とを含む。また、複数の半導体モジュール20は、冷却部本体部31の上方(Z1方向側)の表面31a上に配置されている。なお、表面31aは、特許請求の範囲の「配置面」の一例である。
【0041】
本実施形態では、
図9に示すように、冷却部本体部31の表面31aに垂直な方向(Z方向)から見て、半導体モジュール20aの正側端子21、負側端子22および出力端子23、半導体モジュール20cの正側端子21、負側端子22および出力端子23、および、半導体モジュール20bの出力端子23、負側端子22および正側端子21がこの順で、直線L1上に沿って配置されるように、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが表面31aに配置されている。半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cは、各相毎に3並列分設けられている。すなわち、9並列分の電力変換部10が設けられている。そして、9並列分の電力変換部10の半導体モジュール20a~20cは、全て、上記のような順に各端子(正側端子21、負側端子22および出力端子23)が配置されている。なお、直線L1は、X方向に沿っている。
【0042】
また、本実施形態では、
図7、
図8および
図10に示すように、電力変換装置100は、略平板状の正側平板導体40を備えている。正側平板導体40は、半導体モジュール20aの正側端子21に接続されている。また、正側平板導体40は、9並列分の半導体モジュール20aの正側端子21の全てに接続されている。正側平板導体40は、半導体モジュール20aの正側端子21の表面上(直上)に配置されている。また、正側平板導体40は、半導体モジュール20aの正側端子21に、ネジなどにより直接接続されている。また、正側平板導体40は、たとえば、銅バーからなる。また、正側平板導体40は、複数(9並列分)の半導体モジュール20aの各々の正側端子21を亘るように配置されている。
【0043】
また、本実施形態では、電力変換装置100は、略平板状の中間平板導体50を備えている。中間平板導体50は、半導体モジュール20aの負側端子22と、半導体モジュール20bの正側端子21とに接続されている。また、中間平板導体50は、9並列分の、半導体モジュール20aの負側端子22と、半導体モジュール20bの正側端子21とに接続されている。また、中間平板導体50は、たとえば、銅バーからなる。そして、中間平板導体50は、正側平板導体40のうちの、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが配置される表面31aとは反対側(Z1方向側)の表面上に配置されている。また、中間平板導体50は、複数(9並列分)の、半導体モジュール20aの負側端子22と、半導体モジュール20bの正側端子21とを亘るように配置されている。
【0044】
また、正側平板導体40と中間平板導体50との間には、絶縁紙60aが設けられている。これにより、正側平板導体40と中間平板導体50とが、絶縁紙60aによって絶縁される。
【0045】
また、本実施形態では、
図10に示すように、正側平板導体40には、孔部41が設けられている。そして、中間平板導体50は、正側平板導体40の孔部41(および絶縁紙60aの孔部61a)を介して、半導体モジュール20aの負側端子22と、半導体モジュール20bの正側端子21とにネジなどにより接続されている。具体的には、孔部41は、複数設けられている。また、孔部41は、略長方形形状を有する。なお、孔部41は、特許請求の範囲の「正側平板導体孔部」の一例である。
【0046】
また、
図10に示すように、電力変換装置100は、略平板状の第1接続平板導体70を備えている。第1接続平板導体70は、半導体モジュール20aの出力端子23と、半導体モジュール20cの正側端子21とに接続されている。また、第1接続平板導体70は、たとえば、銅バーからなる。また、第1接続平板導体70は、複数(3並列分)の、半導体モジュール20aの出力端子23および半導体モジュール20cの正側端子21を亘るように配置されている。このため、第1接続平板導体70は、3つ設けられている。
【0047】
また、
図10に示すように、電力変換装置100は、略平板状の第2接続平板導体80を備えている。第2接続平板導体80は、半導体モジュール20bの出力端子23と、半導体モジュール20cの負側端子22とに接続されている。また、第2接続平板導体80は、たとえば、銅バーからなる。また、第2接続平板導体80は、複数(3並列分)の、半導体モジュール20bの出力端子23および半導体モジュール20cの負側端子22を亘るように配置されている。このため、第2接続平板導体80は、3つ設けられている。
【0048】
また、
図10に示すように、電力変換装置100は、略平板状の負側平板導体90を備えている。負側平板導体90は、半導体モジュール20bの負側端子22に接続されている。また、負側平板導体90は、たとえば、銅バーからなる。また、負側平板導体90は、複数(9並列分)の半導体モジュール20bの負側端子22を亘るように配置されている。
【0049】
そして、本実施形態では、
図7、
図8および
図10に示すように、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90は、中間平板導体50の、表面31aとは反対側(Z1方向側)の表面上に互いに隣り合うように配置されている。具体的には、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90がこの順で、X1方向側からX2方向側に向かって配置されている。また、第1接続平板導体70と第2接続平板導体80との間、および、第2接続平板導体80と負側平板導体90との間には、各々、隙間が設けられている。また、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90は、互いの高さ位置が略同じになるように、同一平面上に配置されている。
【0050】
また、
図10に示すように、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90と、中間平板導体50との間には、絶縁紙60bが設けられている。これにより、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90と、中間平板導体50が、絶縁紙60bによって絶縁される。また、絶縁紙60bには、孔部61bが設けられている。
【0051】
また、本実施形態では、正側平板導体40には、孔部41が設けられているとともに、中間平板導体50には、孔部51が設けられている。そして、第1接続平板導体70は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51(および、絶縁紙60aの孔部61aと絶縁紙60bの孔部61b)を介して、半導体モジュール20aの出力端子23と、半導体モジュール20cの正側端子21とにネジなどにより接続されている。また、第2接続平板導体80は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51(および、絶縁紙60aの孔部61aと絶縁紙60bの孔部61b)を介して、半導体モジュール20bの出力端子23と、半導体モジュール20cの負側端子22とにネジなどにより接続されている。負側平板導体90は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51(および、絶縁紙60aの孔部61aと絶縁紙60bの孔部61b)を介して、半導体モジュール20bの負側端子22にネジなどにより接続されている。なお、孔部51は、特許請求の範囲の「中間平板導体孔部」の一例である。
【0052】
また、
図7に示すように、コンデンサC1は、正側平板導体40と中間平板導体50とに接続されている。また、コンデンサC2は、コンデンサC1に直列に接続されているとともに、負側平板導体90と中間平板導体50とに接続されている。
【0053】
ここで、本実施形態では、
図11に示すように、正側平板導体40は、表面31aに略水平な第1正側導体部分42と、表面31aに略垂直な第2正側導体部分43とを含む略L字形状を有する。第1正側導体部分42は、半導体モジュール20aの正側端子21に接続されている。また、第2正側導体部分43は、コンデンサC1に接続されている。
【0054】
また、本実施形態では、
図12に示すように、負側平板導体90は、表面31aに略水平な第1負側導体部分92と、表面31aに略垂直な第2負側導体部分93とを含む略L字形状を有する。第1負側導体部分92は、半導体モジュール20bの負側端子22に接続されている。また、第2負側導体部分93は、コンデンサC2に接続されている。
【0055】
また、本実施形態では、
図13に示すように、中間平板導体50は、表面31aに略水平な第1中間導体部分52と、表面31aに略垂直な第2中間導体部分53とを含む略L字形状を有する。第1中間導体部分52は、半導体モジュール20aの負側端子22と半導体モジュール20bの正側端子21とに接続されている。第2中間導体部分53は、コンデンサC1およびコンデンサC2に接続されている。
【0056】
具体的には、
図10に示すように、負側平板導体90の第2負側導体部分93と、中間平板導体50の第2中間導体部分53と、正側平板導体40の第2正側導体部分43とが、X1方向側からX2方向側に向かって積層されている。そして、コンデンサC1の正側端子(図示せず)が、正側平板導体40の第2正側導体部分43にネジなどにより接続されている。また、コンデンサC1の負側端子(図示せず)が、中間平板導体50の第2中間導体部分53にネジなどにより接続されている。また、コンデンサC2の正側端子(図示せず)が、中間平板導体50の第2中間導体部分53にネジなどにより接続されている。また、コンデンサC2の負側端子(図示せず)が、負側平板導体90の第2負側導体部分93にネジなどにより接続されている。
【0057】
また、正側平板導体40の孔部41(
図11参照)、負側平板導体90の孔部91(
図12参照)、中間平板導体50の孔部51(
図13参照)、第1接続平板導体70の孔部71(
図14参照)、および、第2接続平板導体80の孔部81(
図15参照)は、各々、絶縁距離を確保するために設けられている。
【0058】
また、本実施形態では、
図8に示すように、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80、および、負側平板導体90は、表面31aに垂直な方向から見て、正側平板導体40および中間平板導体50にオーバラップするように配置されている。具体的には、第1接続平板導体70の略全面、第2接続平板導体80の略全面、および、負側平板導体90の第1負側導体部分92の略全面が、表面31aに垂直な方向から見て、正側平板導体40の第1正側導体部分42、および中間平板導体50の第1中間導体部分52にオーバラップしている。
【0059】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、上記のように、半導体モジュール20cの耐圧が、半導体モジュール20aおよび半導体モジュール20bの耐圧よりも大きくなるように構成されている。ここで、スイッチング素子Q3(Q2)をオンからオフにスイッチングした後における、スイッチング素子Q3(Q2)を含む一巡の経路(閉回路)には、スイッチング素子Q3(Q2)に加えてスイッチング素子Q1(Q4)が配置されるとともに、スイッチング素子Q3(Q2)とスイッチング素子Q1(Q4)とを接続する経路が含まれる。すなわち、一巡の経路に含まれる素子数が比較的多いとともに、一巡の経路の長さが比較的長くなる。このため、スイッチング素子Q3(Q2)をスイッチングした後の一巡の経路のインダクタンスは、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q4を含む一巡の経路のインダクタンスよりも大きくなる。その結果、スイッチング素子Q3(Q2)をスイッチングした際に発生するサージ電圧は、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q4をオンからオフにスイッチングした際に発生するサージ電圧よりも大きくなる。そこで、上記のように構成することによって、半導体モジュール20a~20cの全ての耐圧が比較的大きくされる場合と異なり、電力変換装置100が過剰性能となるのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、半導体モジュール20cの耐圧は、スイッチング素子Q3(Q2)がオンからオフにスイッチングした際のサージ電圧よりも大きい。これにより、スイッチング素子Q3(Q2)のスイッチングに起因して発生するサージによってスイッチング素子Q3(Q2)が破壊されるのを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、半導体モジュール20cの耐圧は、スイッチング素子Q3(Q2)がオンからオフにスイッチングした際のスイッチング素子Q3(Q2)を含むサージに関わる一巡の経路のインダクタンスに応じて、半導体モジュール20aの耐圧および半導体モジュール20bの耐圧よりも大きくなるように選択されている。これにより、スイッチング素子Q3(Q2)の耐圧が一巡の経路のインダクタンスに応じて選定されているので、インダクタンスに対して過度に耐圧が大きい半導体モジュール20cが選択されるのを抑制することができる。その結果、過度に耐圧が大きい半導体モジュール20c(すなわち、大型の半導体モジュール20c)が選択されることに起因して、電力変換装置100が大型化するのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが配置される表面31aに垂直な方向から見て、半導体モジュール20aの正側端子21、負側端子22および出力端子23、半導体モジュール20cの正側端子21、負側端子22および出力端子23、および、半導体モジュール20bの出力端子23、負側端子22および正側端子21がこの順で、直線L1上に沿って配置されるように、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが表面31aに配置されている。これにより、半導体モジュール20aの出力端子23と半導体モジュール20cの正側端子21との間の距離が比較的小さくなるので、これらの端子同士を接続する導体の長さが長くなるのを抑制することができる。また、半導体モジュール20cの負側端子22と半導体モジュール20bの出力端子23との間の距離が比較的小さくなるので、これらの端子同士を接続する導体の長さが長くなるのを抑制することができる。すなわち、導体の長さが長くなることに起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、正側平板導体40は、半導体モジュール20aの正側端子21の表面上に配置され、中間平板導体50は、正側平板導体40のうちの、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが配置される表面31aとは反対側の表面上に配置されている。これにより、正側平板導体40と中間平板導体50とが互いに対向するように積層されるので、正側平板導体40を流れる電流に起因して生じる磁束と、中間平板導体50を流れる電流に起因して生じる磁束とを打ち消し合うことができる。その結果、流れる電流の磁束に起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、中間平板導体50は、正側平板導体40の孔部41を介して、半導体モジュール20aの負側端子22と、半導体モジュール20bの正側端子21とに接続されている。これにより、正側平板導体40に中間平板導体50を積層した場合でも、正側平板導体40の孔部41を介して、容易に、中間平板導体50と、半導体モジュール20aの負側端子22および半導体モジュール20bの正側端子21とを接続することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90は、中間平板導体50の、表面31aとは反対側の表面上に互いに隣り合うように配置されている。これにより、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90と、中間平板導体50とが、互いに対向するように積層されるので、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90の各々を流れる電流に起因して生じる磁束と、中間平板導体50を流れる電流に起因して生じる磁束とを打ち消し合うことができる。その結果、流れる電流の磁束に起因するインダクタンスの増加を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、第1接続平板導体70は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51を介して、半導体モジュール20aの出力端子23と、半導体モジュール20cの正側端子21とに接続されている。また、第2接続平板導体80は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51を介して、半導体モジュール20bの出力端子23と、半導体モジュール20cの負側端子22とに接続されている。また、負側平板導体90は、正側平板導体40の孔部41および中間平板導体50の孔部51を介して、半導体モジュール20bの負側端子22に接続されている。これにより、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80および負側平板導体90が、正側平板導体40および中間平板導体50に積層された場合でも、孔部41および孔部51を介して、容易に、各導体と各端子とを接続することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、正側平板導体40は、半導体モジュール20aの正側端子21に接続され表面31aに略水平な第1正側導体部分42と、コンデンサC1に接続され表面31aに略垂直な第2正側導体部分43とを含む略L字形状を有する。また、負側平板導体90は、半導体モジュール20bの負側端子22に接続され表面31aに略水平な第1負側導体部分92と、コンデンサC2に接続され表面31aに略垂直な第2負側導体部分93とを含む略L字形状を有する。また、中間平板導体50は、半導体モジュール20aの負側端子22と半導体モジュール20bの正側端子21とに接続され表面31aに略水平な第1中間導体部分52と、コンデンサC1およびコンデンサC2に接続され表面31aに略垂直な第2中間導体部分53とを含む略L字形状を有する。これにより、正側平板導体40と、負側平板導体90と、中間平板導体50とを積層して互いに磁束を打ち消し合いながら(つまり、インダクタンスを低減しながら)、正側平板導体40および中間平板導体50とコンデンサC1とを接続し、負側平板導体90および中間平板導体50とコンデンサC2とを接続することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80、および、負側平板導体90は、表面31aに垂直な方向から見て、正側平板導体40および中間平板導体50にオーバラップするように配置されている。これにより、第1接続平板導体70、第2接続平板導体80、および、負側平板導体90が、正側平板導体40および中間平板導体50にオーバラップするように配置されているので、確実に、各導体を流れる電流に起因して発生する磁束同士を打ち消し合うことができる。
【0070】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、半導体モジュール20a、半導体モジュール20bおよび半導体モジュール20cが、各々、9並列分設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記の半導体モジュールが、9並列の以外の数分設けられていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、電力変換装置がPCSとして用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、PCS以外の電力変換装置にも、本発明を適用することは可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、スイッチング素子がシリコン半導体からなるIGBTであるとともに、ダイオードがシリコン半導体から構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スイッチング素子とダイオードとのうちの少なくとも一方を、ワイドバンドギャップ半導体から構成してもよい。また、スイッチング素子をMOSFETから構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、スイッチング素子Q2およびQ3の耐圧が約1700Vであり、スイッチング素子Q1およびQ4の耐圧が約1200Vである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スイッチング素子Q2およびQ3の耐圧が、スイッチング素子Q1およびQ4の耐圧よりも大きければ、スイッチング素子の耐圧は上記の耐圧に限られない。
【0075】
また、上記実施形態では、Z2方向側からZ1方向側に向かって、正側平板導体、中間平板導体、第1接続平板導体(第2接続平板導体、負側平板導体)がこの順で積層されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記の導体の積層順が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
20a 半導体モジュール(上位電位半導体モジュール)
20b 半導体モジュール(下位電位半導体モジュール)
20c 半導体モジュール(中間半導体モジュール)
31a 表面(配置面)
40 正側平板導体
41 孔部(正側平板導体孔部)
42 第1正側導体部分
43 第2正側導体部分
50 中間平板導体
51 孔部(中間平板導体孔部)
52 第1中間導体部分
53 第2中間導体部分
70 第1接続平板導体
80 第2接続平板導体
90 負側平板導体
92 第1負側導体部分
93 第2負側導体部分
100 電力変換装置
C1 コンデンサ(第1コンデンサ)
C2 コンデンサ(第2コンデンサ)
D1 ダイオード(半導体素子)
D2 ダイオード(半導体素子)
Q1 スイッチング素子(上位電位スイッチング素子、半導体素子)
Q2、Q3 スイッチング素子(中間スイッチング素子)
Q4 スイッチング素子(下位電位スイッチング素子、半導体素子)