(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231205BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20231205BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231205BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 655A
(21)【出願番号】P 2019204195
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101706(JP,A)
【文献】特開2013-089836(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049815(WO,A1)
【文献】特開2015-141919(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155783(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型を有する電流拡散領域と、
前記電流拡散領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記電流拡散領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有するソース領域と、
を有し、
前記第1主面には、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記電流拡散領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されるゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜をさらに有し、
前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域をさらに有し、
前記電流拡散領域は、
前記側面に接し、第1実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第1領域と、
前記側面との間に前記第1領域を挟み、第2実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第2領域と、
を有し、
前記第1実効濃度は、前記第2実効濃度よりも低く、
前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、
前記電界緩和領域は、前記電流拡散領域と前記ボディ領域と前記側面とが互いに接する第1位置よりも前記ゲートトレンチから離間する側に側端面を有し、
前記第1領域と前記第2領域との境界面は、前記第1位置と前記側端面との間に位置し、
前記ドリフト領域は、前記電流拡散領域と前記電界緩和領域との間に設けられ、第3実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第3領域を有し、
前記第2実効濃度は、前記第3実効濃度よりも高
い炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型を有する電流拡散領域と、
前記電流拡散領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記電流拡散領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有するソース領域と、
を有し、
前記第1主面には、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記電流拡散領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されるゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜をさらに有し、
前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域をさらに有し、
前記電流拡散領域は、
前記側面に接し、第1実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第1領域と、
前記側面との間に前記第1領域を挟み、第2実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第2領域と、
を有し、
前記第1実効濃度は、前記第2実効濃度よりも低く、
前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、
前記電界緩和領域は、前記電流拡散領域と前記ボディ領域と前記側面とが互いに接する第1位置よりも前記ゲートトレンチから離間する側に側端面を有し、
前記第1領域と前記第2領域との境界面は、前記第1位置と前記側端面との間に位置し、
前記ドリフト領域は、前記電流拡散領域と前記電界緩和領域との間に設けられ、第3実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第3領域を有し、
前記第1実効濃度は、前記第3実効濃度よりも高
い炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1実効濃度をn1(cm
-3)、前記第2実効濃度をn2(cm
-3)、前記第3実効濃度をn3(cm
-3)、前記第2主面に対して垂直な方向において、前記電流拡散領域の下端面と前記電界緩和領域の上端面との間の距離をH1(μm)、炭化珪素の比誘電率をε
sic(F/m)、真空誘電率をε
0(F/m)、炭化珪素の拡散電位をV
d(V)、電気素量をq(C)としたとき、次の関係が成り立つ請求項
1または請求項
2に記載の炭化珪素半導体装置。
8(ε
sicε
0V
d/qH1
2)<n3<n1<n2 式(1)
【請求項4】
前記第2実効濃度は、前記第1実効濃度の5倍以上20倍以下である請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記電界緩和領域の上端面は、前記ゲートトレンチの前記底面を含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含む請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、ゲートトレンチの下方に電界シールド領域が設けられ、ベース領域とドリフト領域との間に電流拡散層が設けられたトレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電流拡散層が設けられた炭化珪素半導体装置では、オン抵抗と短絡電流とがトレードオフの関係にある。すなわち、オン抵抗を低くしようとすると、短絡電流が大きくなり、短絡電流を小さくしようとすると、オン抵抗が高くなる。
【0005】
そこで、本開示は、オン抵抗および短絡電流の両方を低減することができる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一観点によれば、炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備える。前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型を有する電流拡散領域と、前記電流拡散領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記電流拡散領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有するソース領域と、を有する。前記第1主面には、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記電流拡散領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されるゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜をさらに有し、前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域をさらに有する。前記電流拡散領域は、前記側面に接し、第1実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第1領域と、前記側面との間に前記第1領域を挟み、第2実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第2領域と、を有し、前記第1実効濃度は、前記第2実効濃度よりも低い。前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記電界緩和領域は、前記電流拡散領域と前記ボディ領域と前記側面とが互いに接する第1位置よりも前記ゲートトレンチから離間する側に側端面を有し、前記第1領域と前記第2領域との境界面は、前記第1位置と前記側端面との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、オン抵抗および短絡電流の両方を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図2C】
図2Cは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図2D】
図2Dは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図2E】
図2Eは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図2F】
図2Fは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図2G】
図2Gは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図2H】
図2Hは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図2I】
図2Iは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図2J】
図2Jは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図2K】
図2Kは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図2L】
図2Lは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図2M】
図2Mは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図2N】
図2Nは、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図3A】
図3Aは、第1参考例に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、第2参考例に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態、第1参考例および第2参考例の特性を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型を有する電流拡散領域と、前記電流拡散領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記電流拡散領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有するソース領域と、を有し、前記第1主面には、前記ソース領域、前記ボディ領域および前記電流拡散領域を貫通して前記ドリフト領域に至る側面と、前記側面と連なる底面とにより規定されるゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜をさらに有し、前記炭化珪素基板は、前記底面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2導電型を有する電界緩和領域をさらに有し、前記電流拡散領域は、前記側面に接し、第1実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第1領域と、前記側面との間に前記第1領域を挟み、第2実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第2領域と、を有し、前記第1実効濃度は、前記第2実効濃度よりも低く、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記電界緩和領域は、前記電流拡散領域と前記ボディ領域と前記側面とが互いに接する第1位置よりも前記ゲートトレンチから離間する側に側端面を有し、前記第1領域と前記第2領域との境界面は、前記第1位置と前記側端面との間に位置する。
【0012】
ゲートトレンチの底面と第2主面との間に電界緩和領域が設けられ、電界緩和領域は、第1主面に垂直な方向から平面視したときに、第1位置よりもゲートトレンチから離間する側に側端面を有する。従って、底面の近傍での電界集中を緩和し、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を抑制することができる。また、ソース電極とドレイン電極との間で、ボディ領域と電流拡散領域とのpn接合により生成される空乏層と、電界緩和領域と第3領域とのpn接合により生成される空乏層との間の狭窄領域を電流が流れる。電流拡散領域が設けられているため、狭窄領域のオン抵抗を低減することができる。また、第1実効濃度が第2実効濃度よりも低く、第1主面に垂直な方向から平面視したときに、第1領域と第2領域との間の境界面が第1位置と側端面との間に位置している。このため、短絡電流を低減することもできる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記ドリフト領域は、前記電流拡散領域と前記電界緩和領域との間に設けられ、第3実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第3領域を有し、前記第2実効濃度は、前記第3実効濃度よりも高くてもよい。第2実効濃度が第3実効濃度よりも高いことで、より確実にオン抵抗を低減することができる。
【0014】
〔3〕 〔1〕において、前記ドリフト領域は、前記電流拡散領域と前記電界緩和領域との間に設けられ、第3実効濃度で前記第1導電型の不純物を含有する第3領域を有し、前記第1実効濃度は、前記第3実効濃度よりも高くてもよい。第1実効濃度が第3実効濃度よりも高いことで、より確実にオン抵抗を低減することができる。
【0015】
〔4〕 〔2〕または〔3〕において、前記第1実効濃度をn1(cm-3)、前記第2実効濃度をn2(cm-3)、前記第3実効濃度をn3(cm-3)、前記第2主面に対して垂直な方向において、前記電流拡散領域の下端面と前記電界緩和領域の上端面との間の距離をH1(μm)、炭化珪素の比誘電率をεsic(F/m)、真空誘電率をε0(F/m)、炭化珪素の拡散電位をVd(V)、電気素量をq(C)としたとき、次の式(1)の関係が成り立ってもよい。式(1)の関係が成り立つことで、安定して優れたオン抵抗および短絡電流を得ることができる。
【0016】
8(εsicε0Vd/qH12)<n3<n1<n2 式(1)
【0017】
〔5〕 〔1〕~〔4〕において、前記第2実効濃度は、前記第1実効濃度の5倍以上20倍以下であってもよい。第2実効濃度が第1実効濃度の5倍以上20倍以下であることで、安定して優れたオン抵抗および短絡電流を得ることができる。
【0018】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記電界緩和領域の上端面は、前記ゲートトレンチの前記底面を含んでもよい。電界緩和領域の上端面がゲートトレンチの底面を含むことで、より優れた耐圧を得ることができる。
【0019】
〔7〕 〔1〕~〔6〕において、前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含んでもよい。側面が{0-33-8}面を含むことで、ゲートトレンチの側面において良好な移動度が得られ、チャネル抵抗を低減することができる。
【0020】
[本開示の実施形態]
本開示の実施形態は、いわゆる縦型のMOSFET(炭化珪素半導体装置)に関する。
図1は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70と、バリアメタル膜84と、パッシベーション膜85とを主に有している。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。炭化珪素基板10の第1主面1の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
【0022】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、たとえば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、たとえば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0023】
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、電流拡散領域14と、ボディ領域12と、ソース領域13と、電界緩和領域16と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0024】
ドリフト領域11は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は、たとえば第3領域11Cと、第4領域11Dと、第5領域11Eとを主に有している。
【0025】
電流拡散領域14はドリフト領域11上に設けられている。電流拡散領域14は、たとえばリンなどのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。電流拡散領域14は、たとえば第1領域14Aと、第2領域14Bとを主に有している。
【0026】
ボディ領域12は電流拡散領域14上に設けられている。ボディ領域12は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度は、5×1017cm-3以上である。短チャネル効果(パンチスルー)は、pn接合領域からチャネル領域内に空乏層が広がってチャネル領域全体が空乏層になることによって発生し得る。ボディ領域12におけるp型不純物の実効濃度を高くすることによって、チャネル領域に形成される空乏層の広がりを低減することができる。ボディ領域12の厚さは、たとえば0.7μmよりも小さくてもよい。ボディ領域12のp型不純物の実効濃度は、たとえば1×1018cm-3程度である。
【0027】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、たとえば窒素またはリンなどのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成する。ソース領域13のn型不純物の実効濃度は、ボディ領域12のp型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。ソース領域13のn型不純物の実効濃度は、たとえば1×1019cm-3程度である。
【0028】
コンタクト領域18は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する。コンタクト領域18のp型不純物の実効濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の実効濃度よりも高い。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18のp型不純物の実効濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0029】
第1主面1には、側面3と底面4とにより規定されるゲートトレンチ5が設けられている。側面3は、ソース領域13、ボディ領域12、電流拡散領域14およびドリフト領域11を貫通して電界緩和領域16に至る。底面4は、側面3と連なる。底面4は、電界緩和領域16に位置する。底面4は、たとえば第2主面2と平行な平面である。底面4を含む平面に対する側面3の角度θ1は、たとえば45°以上65°以下である。角度θ1は、たとえば50°以上であってもよい。角度θ1は、たとえば60°以下であってもよい。側面3は、好ましくは、{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。ゲートトレンチ5は、たとえば第1主面1と平行な方向に沿ってストライプ状に伸長している。ゲートトレンチ5は、ハニカム状に伸長していてもよいし、アイランド状に点在していてもよい。
【0030】
電界緩和領域16は、たとえばAlなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する。電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。電界緩和領域16の上端面は、たとえばゲートトレンチ5の底面4を含む。電界緩和領域16の上端面の一部は、電流拡散領域14の下端面の一部に対向している。電界緩和領域16は、ソース電極60に電気的に接続されていてもよい。電界緩和領域16のp型不純物の実効濃度p1は、たとえば5×1017cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0031】
ドリフト領域11の第3領域11Cは、電流拡散領域14と電界緩和領域16とに挟まれている。第3領域11Cは、電流拡散領域14および電界緩和領域16の各々と接している。第3領域11Cは、電流拡散領域14よりも第2主面2側にある。第3領域11Cは、電界緩和領域16よりも第1主面1側にある。第3領域11Cのn型不純物の第3実効濃度n3は、たとえば5×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。
【0032】
第4領域11Dは、第3領域11Cよりも第2主面2側にある。第4領域11Dは、第3領域11Cと連なっている。第4領域11Dは、第2主面2と平行な方向において電界緩和領域16と接している。第4領域11Dと電界緩和領域16とは、第2主面2と平行な同一平面に位置していてもよい。第4領域11Dのn型不純物の実効濃度は、第3実効濃度n3よりも高くてもよい。第4領域11Dのn型不純物の実効濃度は、たとえば5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。
【0033】
第5領域11Eは、第4領域11Dよりも第2主面2側にある。第5領域11Eは、第4領域11Dと連なっている。第5領域11Eは、電界緩和領域16と接している。第5領域11Eは、電界緩和領域16よりも第2主面2側にある。第5領域11Eは、第4領域11Dと炭化珪素単結晶基板50とに挟まれていてもよい。第5領域11Eは、炭化珪素単結晶基板50に連なっていてもよい。第5領域11Eのn型不純物の実効濃度は、第4領域11Dのn型不純物の実効濃度よりも低くてもよい。第5領域11Eのn型不純物の実効濃度は、たとえば5×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。
【0034】
電流拡散領域14の第1領域14Aは、第2主面2に対して垂直な方向において、ボディ領域12と第3領域11Cとに挟まれている。第1領域14Aは、ボディ領域12および第3領域11Cの各々と接している。第1領域14Aは、ボディ領域12よりも第2主面2側にある。第1領域14Aは、第3領域11Cよりも第1主面1側にある。第1領域14Aは、側面3にも接している。第1領域14Aのn型不純物の第1実効濃度n1は、たとえば5×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。第1実効濃度n1は、第3実効濃度n3よりも高くてもよく、第3実効濃度n3と等しくてもよい。
【0035】
第2領域14Bは、側面3との間に第1領域14Aを挟む。つまり、第1領域14Aは、第1主面1と平行な方向において、側面3と第2領域14Bとに挟まれている。第2領域14Bは、第1領域14Aよりもゲートトレンチ5から離間する側にある。第2領域14Bは、ボディ領域12、第3領域11Cおよび第1領域14Aの各々と接している。第2領域14Bは、ボディ領域12よりも第2主面2側にある。第2領域14Bは、第3領域11Cよりも第1主面1側にある。第2領域14Bのn型不純物の第2実効濃度n2は、たとえば5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。第1実効濃度n1は、第2実効濃度n2よりも低い。また、第2実効濃度n2は、第3実効濃度n3よりも高くてもよい。
【0036】
図1に示されるように、電界緩和領域16は、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、電流拡散領域14とボディ領域12と側面3とが互いに接する第1位置91よりもゲートトレンチ5から離間する側に側端面92を有する。また、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1領域14Aと第2領域14Bとの境界面93は、第1位置91と側端面92との間に位置する。別の観点からいえば、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、境界面93は、第1位置91よりもゲートトレンチ5から離間する側に位置し、側端面92は、境界面93よりもゲートトレンチ5から離間する側に位置する。たとえば、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、2つの側面3上の2つの第1位置91の間の距離W1は、2つの境界面93の間の距離W2よりも小さくてもよく、距離W2は、2つの側端面92の間の幅W3よりも小さくてもよい。第1位置Aは、ボディ領域12と電流拡散領域14との境界面54と、ゲートトレンチ5の側面3との接点である。
【0037】
第2主面2に対して垂直な方向において、電流拡散領域14の下端面と電界緩和領域16の上端面との間の距離H1(μm)は、式(1)で表される関係を満たすことが好ましい。この関係が満たされることで、安定して優れたオン抵抗および短絡電流を得ることができる。ここで、εsicは炭化珪素の比誘電率(F/m)であり、ε0は真空誘電率(F/m)であり、Vdは炭化珪素の拡散電位(V)であり、qは電気素量(C)である。
【0038】
8(εsicε0Vd/qH12)<n3<n1<n2 式(1)
【0039】
ゲート絶縁膜81は、たとえば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4において電界緩和領域16と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12、第1領域14Aおよび第3領域11Cの各々と接している。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0040】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に設けられている。ゲート電極82は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82の一部は、第1主面1上に配置されていてもよい。
【0041】
層間絶縁膜83は、ゲート電極82およびゲート絶縁膜81に接して設けられている。層間絶縁膜83は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを電気的に絶縁している。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に設けられていてもよい。
【0042】
バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83の上面および側面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆う。バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81の各々と接している。バリアメタル膜84は、たとえば窒化チタン(TiN)を含む材料から構成されている。
【0043】
ソース電極60は、第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接していてもよい。コンタクト電極61は、たとえばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13とオーミック接合している。コンタクト電極61は、コンタクト領域18とオーミック接合していてもよい。ソース配線62は、バリアメタル膜84の上面および側面と、コンタクト電極61の上面とを覆う。ソース配線62は、バリアメタル膜84およびコンタクト電極61の各々と接している。ソース配線62は、たとえばAlを含む材料から構成されている。
【0044】
パッシベーション膜85は、ソース配線62の上面を覆う。パッシベーション膜85は、ソース配線62と接している。パッシベーション膜85は、たとえばポリイミドを含む材料から構成されている。
【0045】
ドレイン電極70は、第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、たとえばNiSiを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0046】
第2主面2に対して垂直な方向において、電界緩和領域16の上端面が底面4から離間していてもよい。この場合、たとえば、底面4がドリフト領域11に位置してもよく、側面3が、ソース領域13、ボディ領域12および電流拡散領域14を貫通してドリフト領域11に至ってもよい。たとえば、電界緩和領域16の上端面と底面4との間に、第3領域11Cがあってもよい。
【0047】
炭化珪素単結晶基板50と第5領域11Eとの間に、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有するバッファ層が設けられていてもよい。バッファ層のn型不純物の実効濃度は、第5領域11Eのn型不純物の実効濃度よりも高くてもよい。
【0048】
次に、実施形態に係るMOSFET100の製造方法について説明する。
図2A~
図2Nは、実施形態に係るMOSFET100の製造方法を示す断面図である。
【0049】
まず、
図2Aに示されるように、炭化珪素単結晶基板50を準備する工程が実施される。たとえば昇華法によって製造された炭化珪素インゴット(図示せず)がスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板50が準備される。炭化珪素単結晶基板50上にバッファ層(図示せず)が形成されてもよい。バッファ層は、たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素(H
2)を用いた化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により形成することができる。バッファ層のエピタキシャル成長の際に、たとえば窒素などのn型不純物がバッファ層に導入されてもよい。
【0050】
次に、同じく
図2Aに示されるように、第1エピタキシャル層21を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、炭化珪素単結晶基板50上に第1エピタキシャル層21が形成される。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第1エピタキシャル層21に導入される。第1エピタキシャル層21は、n型の導電型を有する。第1エピタキシャル層21のn型不純物の実効濃度は、バッファ層のn型不純物の実効濃度よりも低くてもよい。
【0051】
次に、
図2Bに示されるように、電界緩和領域16を形成する工程が実施される。たとえば、電界緩和領域16が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第1エピタキシャル層21に注入される。これにより、電界緩和領域16が形成される。
【0052】
次に、
図2Cに示されるように、第4領域11Dを形成する工程が実施される。たとえば、第4領域11Dが形成される領域、つまり第2主面2と平行な方向において電界緩和領域16の側方の領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、窒素などのn型を付与可能なn型不純物イオンが第1エピタキシャル層21に対して注入される。これにより、第4領域11Dが形成される。第1エピタキシャル層21のうち、電界緩和領域16より炭化珪素単結晶基板50側の部分と、第4領域11Dより炭化珪素単結晶基板50側の部分とが第5領域11Eとなる。第4領域11Dのn型不純物の実効濃度は、第5領域11Eのn型不純物の実効濃度よりも高くなる。
【0053】
次に、
図2Dに示されるように、第2エピタキシャル層22を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、第1エピタキシャル層21上に第2エピタキシャル層22が形成される。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第2エピタキシャル層22に導入される。第2エピタキシャル層22は、n型の導電型を有する。第2エピタキシャル層22の厚さは、たとえば0.8μm以上1.2μm以下である。たとえば、第2エピタキシャル層22のn型不純物の実効濃度は、第4領域11Dのn型不純物の実効濃度よりも低くする。
【0054】
次に、
図2Eに示されるように、ボディ領域12を形成する工程が実施される。たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第2エピタキシャル層22の表面全体に対して注入される。これにより、ボディ領域12が形成される。
【0055】
次に、同じく
図2Eに示されるように、ソース領域13を形成する工程が実施される。たとえば、リンなどのn型を付与可能なn型不純物イオンが第2エピタキシャル層22の表面全体に対して注入される。これにより、ソース領域13が形成される。
【0056】
次に、
図2Fに示されるように、電流拡散領域14を形成する工程が実施される。たとえば、リンなどのn型を付与可能なn型不純物イオンが第2エピタキシャル層22の表面全体に対してボディ領域12より深く注入される。次に、第2領域14Bが形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、リンなどのn型を付与可能なn型不純物イオンが第2エピタキシャル層22に対してボディ領域12より深く注入される。これにより、第2領域14Bが形成される。n型不純物イオンがボディ領域12より深く注入された領域のうち、第2領域14Bの残部が第1領域14Aとなる。第1領域14Aおよび第2領域14Bはボディ領域12に接するように形成される。
【0057】
第2エピタキシャル層22のうち、電流拡散領域14より第1エピタキシャル層21側の部分が第3領域11Cとなる。たとえば、第3領域11Cのn型不純物の第3実効濃度n3は、第4領域11Dのn型不純物の実効濃度よりも低くなる。
【0058】
次に、
図2Gに示されるように、コンタクト領域18を形成する工程が実施される。たとえば、コンタクト領域18が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンがソース領域13およびボディ領域12に注入される。これにより、ボディ領域12と接するコンタクト領域18が形成される。
【0059】
次に、炭化珪素基板10に注入された不純物イオンを活性化するために活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0060】
次に、
図2Hに示されるように、ゲートトレンチ5を形成する工程が実施される。たとえば、ソース領域13およびコンタクト領域18から構成される第1主面1上に、ゲートトレンチ5が形成される位置上に開口を有するマスク層(図示せず)が形成される。マスク層を用いて、ソース領域13の一部と、ボディ領域12の一部と、電流拡散領域14の一部と、ドリフト領域11の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとして六フッ化硫黄(SF
6)またはSF
6と酸素(O
2)との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、ゲートトレンチ5が形成されるべき領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底部とを有する凹部(図示せず)が形成される。
【0061】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第1主面1上にマスク層が形成された状態で、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、塩素(Cl2)、三塩化ホウ素(BCl3)、SF6または四フッ化炭素(CF4)を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
【0062】
上記熱エッチングにより、炭化珪素基板10の第1主面1にゲートトレンチ5が形成される。ゲートトレンチ5は、側面3と、底面4とにより規定される。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡散領域14と、ドリフト領域11とにより構成される。底面4は、電界緩和領域16により構成される。側面3と、底面4を含む平面との間の角度θ1は、たとえば45°以上65°以下である。次に、マスク層が第1主面1から除去される。
【0063】
次に、
図2Iに示されるように、ゲート絶縁膜81を形成する工程が実施される。たとえば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡散領域14と、ドリフト領域11と、電界緩和領域16と、コンタクト領域18とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素基板10が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、第1主面1と、側面3および底面4に接するゲート絶縁膜81が形成される。
【0064】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板10に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板10が、たとえば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0065】
NOアニール後、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、たとえば上記NOアニールの加熱温度以上である。Arアニールの時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
【0066】
次に、
図2Jに示されるように、ゲート電極82を形成する工程が実施される。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、たとえば減圧CVD(Low Pressure - Chemical Vapor Deposition:LP-CVD)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡散領域14と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
【0067】
次に、
図2Kに示されるように、層間絶縁膜83を形成する工程が実施される。具体的には、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接するように層間絶縁膜83が形成される。層間絶縁膜83は、たとえば、CVD法により形成される。層間絶縁膜83は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に形成されてもよい。
【0068】
次に、
図2Lに示されるように、バリアメタル膜84、コンタクト電極61およびドレイン電極70を形成する工程が実施される。たとえば、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81に開口部が形成されるようにエッチングが行われることにより、当該開口部にソース領域13およびコンタクト領域18が層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出する。次に、層間絶縁膜の上面及び側面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆うバリアメタル膜84が形成される。バリアメタル膜84は、たとえばTiNを含む材料から構成される。バリアメタル膜84は、たとえばスパッタリング法による成膜および反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)より形成される。次に、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域18に接するコンタクト電極61用の金属膜(図示せず)が形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、たとえばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、たとえばNiを含む材料から構成される。次に、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50に接するドレイン電極70用の金属膜(図示せず)が形成される。ドレイン電極70用の金属膜は、たとえばスパッタリング法により形成される。ドレイン電極70用の金属膜は、たとえばNiを含む材料から構成される。
【0069】
次に、合金化アニールが実施される。コンタクト電極61用の金属膜およびドレイン電極70用の金属膜が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、コンタクト電極61用の金属膜の少なくとも一部およびドレイン電極70用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13とオーミック接合するコンタクト電極61と、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合するドレイン電極70とが形成される。コンタクト電極61は、コンタクト領域18とオーミック接合してもよい。コンタクト電極61が、Tiと、Alと、Siとを含む材料から構成されてもよい。ドレイン電極70が、Tiと、Alと、Siとを含む材料から構成されてもよい。
【0070】
次に、
図2Mに示されるように、ソース配線62を形成する工程が実施される。具体的には、コンタクト電極61およびバリアメタル膜84を覆うソース配線62が形成される。ソース配線62は、たとえばスパッタリング法による成膜およびRIEにより形成される。ソース配線62は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成される。このようにして、コンタクト電極61とソース配線62とを有するソース電極60が形成される。
【0071】
次に、
図2Nに示されるように、パッシベーション膜85を形成する工程が実施される。具体的には、ソース配線62を覆うパッシベーション膜85が形成される。パッシベーション膜85は、たとえばポリイミドを含む材料から構成される。パッシベーション膜85は、たとえば塗布法により形成される。
【0072】
このようにして、実施形態に係るMOSFET100が完成する。
【0073】
次に、本実施形態に係るMOSFETの作用効果について説明する。
【0074】
本実施形態に係るMOSFET100では、底面4と第2主面2との間に電界緩和領域16が設けられ、電界緩和領域16は、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1位置91よりもゲートトレンチ5から離間する側に側端面92を有する。従って、底面4の近傍での電界集中を緩和し、ゲート絶縁膜81の絶縁破壊を抑制することができる。
【0075】
ソース電極60とドレイン電極70との間で、ボディ領域12と電流拡散領域14とのpn接合により生成される空乏層と、電界緩和領域16と第3領域11Cとのpn接合により生成される空乏層との間の狭窄領域を電流が流れる。本実施形態では、電流拡散領域14が設けられているため、狭窄領域のオン抵抗を低減することができる。また、第1領域14Aに含まれるn型不純物の第1実効濃度n1は、第2領域14Bに含まれるn型不純物の第2実効濃度n2よりも低く、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1領域14Aと第2領域14Bとの間の境界面93が第1位置91と側端面92との間に位置している。このため、短絡電流を低減することもできる。
【0076】
このように、本実施形態によれば、オン抵抗および短絡電流の両方を低減することができる。つまり、本実施形態によれば、オン抵抗の低減および短絡電流の低減を両立することができる。そして、短絡電流の低減により優れた短絡耐量を得ることができる。
【0077】
第2実効濃度n2が第3実効濃度n3より高いことで、より確実にオン抵抗を低減することができる。また、第1実効濃度n1が第3実効濃度n3より高いことで、より確実にオン抵抗を低減することができる。
【0078】
第2実効濃度n2は、第1実効濃度n1の5倍以上20倍以下であることが好ましい。第2実効濃度n2が第1実効濃度n1の5倍未満であると、第2実効濃度n2が高すぎるか、第1実効濃度n1が低すぎるおそれがある。第2実効濃度n2が高すぎるときには、優れた短絡電流が得にくく、第1実効濃度n1が低すぎるときには、優れたオン抵抗が得にくい。第2実効濃度n2が第1実効濃度n1の20倍超であると、第2実効濃度n2が低すぎるか、第1実効濃度n1が高すぎるおそれがある。第2実効濃度n2が低すぎるときには、優れたオン抵抗が得にくく、第1実効濃度n1が高すぎるときには、優れた短絡電流が得にくい。従って、第2実効濃度n2は、第1実効濃度n1の5倍以上20倍以下であることが好ましく、第1実効濃度n1の10倍以上15倍以下であることがより好ましい。
【0079】
電界緩和領域16の上端面がゲートトレンチ5の底面4を含むことで、ゲート絶縁膜81の絶縁破壊をより抑制することができ、より優れた耐圧を得ることができる。
【0080】
ゲートトレンチ5の側面3が{0-33-8}面を含むことで、チャネルに優れた移動度を得ることができ、チャネル抵抗を低減することができる。
【0081】
ここで、参考例と比較しながら本実施形態の効果について更に説明する。
図3Aは、第1参考例に係るMOSFET(炭化珪素半導体装置)の構成を示す断面図である。
図3Bは、第2参考例に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【0082】
図3Aに示されるように、第1参考例に係るMOSFET201は、電流拡散領域14が設けられていない点で実施形態に係るMOSFET100と相違する。MOSFET201では、ドリフト領域11の第3領域11Cが、ボディ領域12と電界緩和領域16とに挟まれている。第3領域11Cは、ボディ領域12および電界緩和領域16の各々と接している。MOSFET201の第3領域11Cの厚さは、MOSFET100の第3領域11Cの厚さと電流拡散領域14の厚さとの和に等しい。他の構成はMOSFET100の構成と同様である。
【0083】
図3Bに示されるように、第2参考例に係るMOSFET202は、電流拡散領域14が第2領域14Bのみから構成される点で実施形態に係るMOSFET100と相違する。MOSFET202では、電流拡散領域14の第2領域14Bが側面3にも接している。他の構成はMOSFET100の構成と同様である。
【0084】
図4は、実施形態、第1参考例および第2参考例の特性を示す図である。
図4の横軸はオン抵抗を示し、
図4の縦軸は短絡電流を示す。
図4に示されるように、第1参考例では、短絡電流が18A/mm程度であるが、オン抵抗が4.8mΩ・cm
2程度と高い。また、第2参考例では、オン抵抗が1.8mΩ・cm
2程度であるが、短絡電流が53A/mm程度と高い。一方、実施形態のオン抵抗は2.2mΩ・cm
2程度であり、短絡電流は32A/mm程度である。つまり、実施形態のオン抵抗は第1参考例のオン抵抗の1/2以下であり、実施形態の短絡電流は第2参考例の短絡電流の2/3以下である。このように、実施形態によれば、オン抵抗の低減および短絡電流の低減を両立することができる。
【0085】
なお、電界緩和領域16は、ゲートトレンチ5が形成された後に形成されてもよい。たとえば、ゲートトレンチ5が形成された後に、ゲートトレンチ5の底部近傍で第1エピタキシャル層21にp型不純物イオンが注入されてもよい。また、電流拡散領域14は、ボディ領域12が形成される前に形成されてもよい。たとえば、ボディ領域12が形成される前に、第2エピタキシャル層22にn型不純物イオンが注入されて第1領域14Aおよび第2領域14Bが形成されてもよい。
【0086】
[変形例]
次に、実施形態の変形例について説明する。変形例は、主にゲートトレンチの形状の点で実施形態と相違する。
図5は、実施形態の変形例に係るMOSFET(炭化珪素半導体装置)の構成を示す断面図である。
【0087】
図5に示されるように、変形例に係るMOSFET300では、ゲートトレンチ5が垂直トレンチである。つまり、底面4を含む平面に対する側面3の角度θ1は、90°であってもよい。この場合、2つの側面3上の2つの第1位置91の間の距離W1は、第2主面2に平行な方向において、ゲートトレンチ5の底面4の幅や、ゲートトレンチ5の開口部の幅とほぼ同じである。他の構成は実施形態と同様である。
【0088】
このような変形例によっても実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
上記実施形態および参考例では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。上記実施形態および参考例では、炭化珪素半導体装置としてMOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)などであってもよい。上記各不純物領域におけるp型不純物の実効濃度およびn型不純物の実効濃度は、たとえば走査型静電容量顕微鏡(Scanning Capacitance Microscope:SCM)法または二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)法などにより測定可能である。p型領域とn型領域との境界面(つまりpn接合界面)の位置は、たとえばSCM法またはSIMS法などにより特定することができる。電流拡散領域中の多数キャリアの実効濃度の分布は、実効濃度を測定せずとも、たとえば電流拡散領域とボディ領域とのpn接合により生成される空乏層の厚さの分布に基づいて特定することができる。空乏層の厚さは、たとえばSCM法またはSIMS法などにより特定することができる。
【0090】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
11C 第3領域
11D 第4領域
11E 第5領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
14 電流拡散領域
14A 第1領域
14B 第2領域
16 電界緩和領域
18 コンタクト領域
21 第1エピタキシャル層
22 第2エピタキシャル層
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
54 境界面
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
84 バリアメタル膜
85 パッシベーション膜
91 第1位置
92 側端面
93 境界面
100、201、202、300 炭化珪素半導体装置(MOSFET)
H1、W1、W2、W3 距離
θ1 角度