(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】インクジェット用インク及びインクジェット用インクの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20231205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09D11/328
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2019205496
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】駒田 良太郎
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251568(JP,A)
【文献】特開2004-107481(JP,A)
【文献】特開平07-196965(JP,A)
【文献】特開2018-177876(JP,A)
【文献】特開2015-093897(JP,A)
【文献】特開平11-021489(JP,A)
【文献】特開2010-173082(JP,A)
【文献】特開2017-088678(JP,A)
【文献】特開昭60-038482(JP,A)
【文献】特開平10-259337(JP,A)
【文献】特開2012-172106(JP,A)
【文献】特開平10-273610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0204162(US,A1)
【文献】特開2004-300224(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/328
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、複合体粒子と
、界面活性剤とを含有し、
前記複合体粒子は、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂と、塩基性染料との複合体の粒子であり、
前記ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下であり、
前記ポリエステル樹脂は、前記スルホン酸基を有する多価カルボン酸由来の第1繰り返し単位と、前記スルホン酸基を有さない多価カルボン酸由来の第2繰り返し単位と、多価アルコール由来の第3繰り返し単位とを有し、前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の総量に対する、前記第1繰り返し単位の含有率は、1.5mol%以上20.0mol%以下であり、
前記塩基性染料の質量に対する、前記ポリエステル樹脂の質量比率は、1.0以上10.0以下であ
り、
前記界面活性剤は、HLB値が10.0以上15.0以下であるノニオン界面活性剤と、アニオン界面活性剤とを含む、インクジェット用インク。
【請求項2】
前記複合体粒子において、前記塩基性染料と、前記ポリエステル樹脂が有する前記スルホン酸基とは、イオン結合により結合している、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記第1繰り返し単位は、5-ナトリウムスルホイソフタル酸由来の繰り返し単位、及び4-スルホフタル酸由来の繰り返し単位のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記第2繰り返し単位は、テレフタル酸由来の繰り返し単位、及びイソフタル酸由来の繰り返し単位を含み、ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位を含まない、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記第2繰り返し単位は、テレフタル酸由来の繰り返し単位、イソフタル酸由来の繰り返し単位、及びナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位を含み、
前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の総量に対する、前記ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率は、0.0mol%より大きく10.0mol%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記第3繰り返し単位は、エチレングリコール由来の繰り返し単位、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物由来の繰り返し単位を含み、ジエチレングリコール由来の繰り返し単位を含まない、請求項1~5の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2500以上30000以下である、請求項1~6の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
第1添加剤を更に含有し、前記第1添加剤は、水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基のうちの少なくとも1つと加熱により反応可能な化合物である、請求項1~
7の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
前記第1添加剤は、ブロックイソシアネート、オキサゾリン基を有するポリマー、ポリカルボジイミド、又はエポキシ基を有する化合物である、請求項
8に記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
第2添加剤を更に含有し、前記第2添加剤は、ベンゾトリアゾール構造を含む紫外線吸収剤、又はヒドロキシフェニルトリアジン構造を含む紫外線吸収剤である、請求項1~
9の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項11】
10質量%の濃度で前記複合体粒子を水に分散させたときの分散液の導電率は、30μS/cm以下である、請求項1~
10の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項12】
スルホン酸基を有するポリエステル樹脂を調製するポリエステル樹脂調製工程と、
前記ポリエステル樹脂と塩基性染料との複合体の粒子である複合体粒子を調製する複合体粒子調製工程と、
水性媒体と
、前記複合体粒子と
、HLB値が10.0以上15.0以下であるノニオン界面活性剤と、アニオン界面活性剤とを混合する混合工程と
を含み、
前記ポリエステル樹脂調製工程において、前記スルホン酸基を有する多価カルボン酸である第1モノマーと、前記スルホン酸基を有さない多価カルボン酸である第2モノマーと、多価アルコールである第3モノマーとを縮合重合させることにより、前記ポリエステル樹脂が得られ、
前記ポリエステル樹脂調製工程において、前記第1モノマー及び前記第2モノマーの総量に対して、1.5mol%以上20.0mol%以下の量の前記第1モノマーが添加され、
前記ポリエステル樹脂調製工程で得られる前記ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下であり、
前記複合体粒子調製工程において、前記塩基性染料の質量に対して1.0以上10.0以下の質量比率の前記ポリエステル樹脂が添加される、インクジェット用インクの製造方法。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂調製工程において、前記第1モノマー及び前記第2モノマーの総質量に対して、3質量%以上25質量%以下の質量の前記第1モノマーが添加される、請求項
12に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【請求項14】
前記複合体粒子調製工程において、前記ポリエステル樹脂と前記塩基性染料とを混合することにより前記複合体粒子を得た後、10質量%の濃度で前記複合体粒子を水に分散させたときの分散液の導電率が30μS/cm以下となるまで、前記複合体粒子が洗浄される、請求項
12又は13に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク及びインクジェット用インクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の記録ヘッドから、インクジェット用インクを吐出して、記録媒体に画像を印刷する。例えば、特許文献1に記載のインクジェット用インクは、エチレン性不飽和スルホン酸又はその塩とその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体粒子を、塩基性染料で染色したポリマー粒子を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のインクジェット用インクは、画像、特に、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を印刷する点で、不十分であることが、本発明者の検討により判明した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を、印刷可能なインクジェット用インクを提供することである。また、本発明の別の目的は、このようなインクジェット用インクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット用インクは、水性媒体と、複合体粒子とを含有する。前記複合体粒子は、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂と、塩基性染料との複合体の粒子である。前記ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下である。前記ポリエステル樹脂は、前記スルホン酸基を有する多価カルボン酸由来の第1繰り返し単位と、前記スルホン酸基を有さない多価カルボン酸由来の第2繰り返し単位と、多価アルコール由来の第3繰り返し単位とを有する。前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の総量に対する、前記第1繰り返し単位の含有率は、1.5mol%以上20.0mol%以下である。前記塩基性染料の質量に対する、前記ポリエステル樹脂の質量比率は、1.0以上10.0以下である。
【0007】
本発明に係るインクジェット用インクの製造方法は、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂を調製するポリエステル樹脂調製工程と、前記ポリエステル樹脂と塩基性染料との複合体の粒子である複合体粒子を調製する複合体粒子調製工程と、水性媒体と前記複合体粒子とを混合する混合工程とを含む。前記ポリエステル樹脂調製工程において、前記スルホン酸基を有する多価カルボン酸である第1モノマーと、前記スルホン酸基を有さない多価カルボン酸である第2モノマーと、多価アルコールである第3モノマーとを縮合重合させることにより、前記ポリエステル樹脂が得られる。前記ポリエステル樹脂調製工程において、前記第1モノマー及び前記第2モノマーの総量に対して、1.5mol%以上20.0mol%以下の量の前記第1モノマーが添加される。前記ポリエステル樹脂調製工程で得られる前記ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下である。前記複合体粒子調製工程において、前記塩基性染料の質量に対して1.0以上10.0以下の質量比率の前記ポリエステル樹脂が添加される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインクジェット用インク、及び本発明に係る製造方法により製造されたインクジェット用インクによれば、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を、記録媒体に印刷することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[インクジェット用インク]
本実施形態のインクジェット用インク(以下、インクと記載する)について説明する。本実施形態のインクは、例えば、インクジェット記録装置を用いて布のような繊維製品に画像を印刷するための、デジタル捺染用のインクとして使用できる。デジタル捺染は、スクリーン印刷及びロータリースクリーン印刷と比較して、糊剤を除く工程が不要であるといった利点、及び染色排水を低減できるといった利点を有する。
【0010】
本実施形態のインクは、水性媒体と、複合体粒子とを含有する。本実施形態のインクは、水性媒体を含有する水性インクである。インクが複合体粒子を含有することで、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を印刷することができる。以下、複合体粒子と、水性媒体とについて、説明する。
【0011】
<複合体粒子>
複合体粒子は、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂と、塩基性染料との複合体の粒子である。複合体粒子において、塩基性染料と、ポリエステル樹脂が有するスルホン酸基とは、例えば、イオン結合により結合している。塩基性染料は塩基性基を有し、水性媒体中でこの塩基性基はカチオン基となる。塩基性染料が有する塩基性基(例えば、アミノ基)から形成されたカチオン基(例えば、-NH4
+)と、ポリエステル樹脂が有するスルホン酸基から形成されたアニオン基(-SO3
-)とが、イオン結合により結合する。このようなイオン結合により、塩基性染料と、ポリエステル樹脂が有するスルホン酸基とが、強固に結合して複合体化する。
【0012】
インクが複合体粒子を含有することで、次の利点が得られる。複合体粒子を含有するインクが記録媒体(例えば、ポリエステル布及び綿布のような繊維製品)に着弾して熱処理される際に、記録媒体上で、ポリエステル樹脂の塑性変形に伴い、複合体粒子も塑性変形する。塑性変形された複合体粒子が記録媒体の表面に広がるため、少量のインクを用いた場合であっても、高い画像濃度を有する画像を印刷することができる。また、記録媒体の繊維に沿って毛細管現象により広がる染料の滲みとは異なり、複合体粒子の塑性変形により染色面積が広がるため、複合体粒子を含有するインクを用いて印刷された画像が鮮明となる。また、記録媒体に複合体粒子を含有するインクが着弾した際に、複合体粒子に含有されるポリエステル樹脂を介して、記録媒体と複合体粒子とが接着するため、画像の摩擦堅牢度が向上する。
【0013】
(樹脂/染料比率)
塩基性染料の質量に対する、ポリエステル樹脂の質量比率は、1.0以上10.0以下である。以下、「塩基性染料の質量に対する、ポリエステル樹脂の質量比率」を、「樹脂/染料比率」と記載することがある。
【0014】
樹脂/染料比率が1.0未満であると、ポリエステル樹脂の量が少なくなるため、記録媒体に複合体粒子を含有するインクが着弾した際に、記録媒体と複合体粒子とが接着し難く、摩擦堅牢度が低下する。また、樹脂/染料比率が1.0未満であると、塩基性染料の量が多くなるため、塩基性染料がポリエステル樹脂に導入され難く、複合体粒子の調製が困難となる。
【0015】
一方、樹脂/染料比率が10.0を超えると、塩基性染料の量が少なくなるため、印刷される画像の濃度が低下し、濃淡ムラのような画像不良が発生する。また、樹脂/染料比率が10.0を超えると、ポリエステル樹脂の量が多くなるため、複合体粒子を含有するインクを用いて記録媒体に印刷された画像に、ポリエステル樹脂に起因するごわつきが発生し、触感(例えば、ふくらみ難さ及びこし)が低下する。また、樹脂/染料比率が10.0を超えると、ポリエステル樹脂の量が多くなるため、複合体粒子を含有するインクを用いて記録媒体に印刷された画像に、ポリエステル樹脂に起因するぬめりが発生し、触感が低下する。また、樹脂/染料比率が10.0を超えると、摩擦堅牢度も低下する。
【0016】
画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を印刷するために、樹脂/染料比率は、1.0以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましい。
【0017】
樹脂/染料比率は、複合体粒子を調製する際のポリエステル樹脂の添加量と塩基性染料の添加量とを変更することにより、変更できる。
【0018】
(所定導電率)
10質量%の濃度で複合体粒子を水に分散させたときの分散液の導電率は、30μS/cm以下であることが好ましい。以下、「10質量%の濃度で複合体粒子を水に分散させたときの分散液の導電率」を、「所定導電率」と記載することがある。複合体粒子の所定導電率は、複合体粒子を構成する塩基性染料に含有される対イオンの量を示す指標となる。複合体粒子の所定導電率が低い程、塩基性染料に含有される対イオンの量が少ない。
【0019】
塩基性染料は塩析によって製造されることが多いため、塩基性染料は対イオン(例えば、Cl-、SO4
-、PO4
-、及びCO3
-)を含有することが多い。対イオンによって、水中で染料が安定化する。しかし、インクに対イオンが含有されていると、対イオンから無機塩不純物(例えば、NaCl、Na2SO4、Na2PO4、及びCaCO3)が発生することがある。そして、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドのノズル内に、発生した無機塩不純物が付着して、ノズル詰まり、及びノズルからのインクの吐出ヨレが引き起こされることがある。
【0020】
複合体粒子の所定導電率が30μS/cm以下である場合、塩基性染料に含有される対イオンが所望値以下の量まで減少している。このため、無機塩不純物の発生量が減少して、ノズル詰まり、及びノズルからのインクの吐出ヨレを抑制できる。その結果、これらに起因する画像スジのような画像不良の発生を抑制できる。
【0021】
ノズル詰まり、及びノズルからのインクの吐出ヨレを抑制するためには、複合体粒子の所定導電率は、15μS/cm以下であることが好ましく、10μS/cm以下であることがより好ましい。複合体粒子の所定導電率の下限は特に限定されないが、複合体粒子の所定導電率は、例えば、0μS/cm以上である。
【0022】
複合体粒子の所定導電率を調整する方法の一例として、水(例えば、イオン交換水)による複合体粒子の洗浄処理が挙げられる。洗浄処理を行う回数が多くなる程、複合体粒子の所定導電率は低くなる。洗浄処理の詳細は、後述の[インクの製造方法]、及び後述の実施例に記載の<複合体粒子(C-a)の調製>において説明する。また、複合体粒子の所定導電率を調整する方法の別の例として、遠心分離機を用いて複合体粒子を脱水する方法が挙げられる。また、複合体粒子の所定導電率を調整する方法の更に別の例として、限外濾過膜、逆浸透膜、又はイオン交換樹脂を用いて、複合体粒子を精製する方法が挙げられる。複合体粒子の所定導電率は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0023】
複合体粒子の含有率は、インクの質量に対して、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
(複合体粒子を構成するポリエステル樹脂)
複合体粒子を構成するポリエステル樹脂は、スルホン酸基を有する。ポリエステル樹脂がスルホン酸基を有することで、塩基性基(例えば、アミノ基)を有する塩基性染料と強固に複合体化される。複合体粒子中のポリエステル樹脂が有するスルホン酸基は、塩の状態で存在してもよい。
【0025】
ポリエステル樹脂は、第1繰り返し単位と、第2繰り返し単位と、第3繰り返し単位とを有する。第1繰り返し単位は、スルホン酸基を有する多価カルボン酸由来の繰り返し単位である。第2繰り返し単位は、スルホン酸基を有さない多価カルボン酸由来の繰り返し単位である。第3繰り返し単位は、多価アルコール由来の繰り返し単位である。
【0026】
ポリエステル樹脂は、第1モノマーと、第2モノマーと、第3モノマーとを縮合重合することにより得られる。つまり、ポリエステル樹脂は、第1モノマーと、第2モノマーと、第3モノマーとの縮合重合物である。第1モノマーは、スルホン酸基を有する多価カルボン酸である。第2モノマーは、スルホン酸基を有さない多価カルボン酸である。第3モノマーは、多価アルコールである。縮合重合によって、第1モノマー、第2モノマー、及び第3モノマーから、各々、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、及び第3繰り返し単位が形成される。つまり、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、及び第3繰り返し単位は、各々、第1モノマー由来の繰り返し単位、第2モノマー由来の繰り返し単位、及び第3モノマー由来の繰り返し単位である。
【0027】
第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の総量(総物質量)に対する、第1繰り返し単位の含有率は、1.5mol%以上20.0mol%以下である。以下、「第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の総量に対する、第1繰り返し単位の含有率」を、「第1繰り返し単位率」と記載することがある。
【0028】
第1繰り返し単位が有するスルホン酸基によって、ポリエステル樹脂に水溶性が付与される。第1繰り返し単位率が1.5mol%未満であると、スルホン酸基の数が少なくなり、ポリエステル樹脂の水溶性が低下し、複合体粒子の調製が困難となる。また、第1繰り返し単位率が1.5mol%未満であると、ポリエステル樹脂の水性媒体に対する相溶性が低下し、インクにおいて、ポリエステル樹脂を含有する複合体粒子の分散性が低下する。
【0029】
一方、第1繰り返し単位率が20.0mol%を超えると、ポリエステル樹脂の水に対する溶解性が高くなり過ぎる。このため、複合体粒子を含有するインクを用いて印刷された画像の耐水性が低下し、摩擦堅牢度(特に、湿潤試験で測定される摩擦堅牢度)が低下する。
【0030】
画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を印刷するためには、第1繰り返し単位率は、5.0mol%以上20.0mol%以下であることが好ましく、5.0mol%以上15.0mol%以下であることがより好ましい。
【0031】
第1繰り返し単位率は、例えば、ポリエステル樹脂を縮合重合する際の、第1モノマーの添加量と第2モノマーの添加量とを変更することにより、変更できる。第1繰り返し単位率は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)を用いてポリエステル樹脂を分析し、第1繰り返し単位に特徴的なピークと第2繰り返し単位に特徴的なピークとの比率を得ることにより測定できる。
【0032】
第1繰り返し単位を形成するための第1モノマーとしては、例えば、スルホン酸基を有する2価カルボン酸が挙げられる。スルホン酸基を有する2価カルボン酸としては、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸、並びにこれらの塩が挙げられる。このような塩としては、例えば、アルカリ金属塩(より具体的には、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩等)、マグネシウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0033】
第1モノマーは、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸の塩、4-スルホフタル酸、及び4-スルホフタル酸の塩のうちの少なくとも1つであることが好ましい。また、5-スルホイソフタル酸由来の繰り返し単位、5-スルホイソフタル酸の塩由来の繰り返し単位、4-スルホフタル酸由来の繰り返し単位、及び4-スルホフタル酸の塩由来の繰り返し単位のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0034】
第1モノマーは、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(5-スルホイソフタル酸ナトリウムとも呼ばれる)、及び4-スルホフタル酸のうちの少なくとも1つであることがより好ましい。また、第1繰り返し単位は、5-ナトリウムスルホイソフタル酸由来の繰り返し単位、及び4-スルホフタル酸由来の繰り返し単位のうちの少なくとも1つを含むことがより好ましい。なお、5-ナトリウムスルホイソフタル酸由来の繰り返し単位は、下記化学式(1A)で表される。4-スルホフタル酸由来の繰り返し単位は、下記化学式(1B)で表される。
【0035】
【0036】
第2繰り返し単位を形成するための第2モノマーとしては、例えば、スルホン酸基を有さない芳香族2価カルボン酸、スルホン酸基を有さない脂肪族2価カルボン酸、スルホン酸基を有さない脂環式2価カルボン酸、及びスルホン酸基を有さない3価以上のカルボン酸が挙げられる。スルホン酸基を有さない芳香族2価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5-ナフタレンジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸)、ジフェン酸、及びフェニレンジアクリル酸が挙げられる。スルホン酸基を有さない脂肪族2価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、及びシトラコン酸が挙げられる。スルホン酸基を有さない脂環式2価カルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。スルホン酸基を有さない3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸が挙げられる。
【0037】
第2モノマーとしては、スルホン酸基を有さない芳香族2価カルボン酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、又はナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0038】
なお、テレフタル酸由来の繰り返し単位は、下記化学式(2A)で表される。イソフタル酸由来の繰り返し単位は、下記化学式(2B)で表される。ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位は、下記化学式(2C)で表されることが好ましく、化学式(2D)で表されることがより好ましい。
【0039】
【0040】
【0041】
ポリエステル樹脂のガラス転移点を70℃以下に調整し、ポリエステル樹脂の数平均分子量を30000以下に調整するために、第2モノマーは、テレフタル酸、及びイソフタル酸を含み、ナフタレンジカルボン酸を含まないことが好ましい。同じ理由から、第2繰り返し単位は、テレフタル酸由来の繰り返し単位、及びイソフタル酸由来の繰り返し単位を含み、ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位を含まないことが好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂のガラス転移点を70℃以下に調整し、ポリエステル樹脂の数平均分子量を30000以下に調整するために、第2モノマーは、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸を含み、第1モノマー及び第2モノマーの総量に対する、ナフタレンジカルボン酸の含有率は、0.0mol%より大きく10.0mol%以下であることも好ましい。同じ理由から、第2繰り返し単位は、テレフタル酸由来の繰り返し単位、イソフタル酸由来の繰り返し単位、及びナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位を含み、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の総量に対する、ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率は、0.0mol%より大きく10.0mol%以下であることも好ましい。
【0043】
第3繰り返し単位を形成するための第3モノマーとしては、例えば、脂肪族多価アルコール、脂環式多価アルコール、芳香族多価アルコール及びその他の多価アルコールが挙げられる。脂肪族多価アルコールは、2価の脂肪族アルコール、又は3価以上の脂肪族アルコールである。2価の脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジプロピレングリコール、2,2,4ートリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、及びペンタエルスリトールが挙げられる。脂環式多価アルコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及び水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、及び1,4-フェニレングリコールのエチレンオキサイドが挙げられる。その他の多価アルコールとしては、ε-カプロラクトンのようなラクトン類を開環重合することにより得られる、ラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0044】
第3モノマーとしては、脂肪族多価アルコール、又は芳香族多価アルコールが好ましい。脂肪族多価アルコールとしては、2価の脂肪族アルコールが好ましく、エチレングリコール、又はジエチレングリコールがより好ましい。芳香族多価アルコールとしては、ビスフェノールA、又はビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物がより好ましく、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が更に好ましい。なお、第3繰り返し単位であるビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物由来の繰り返し単位の好適な例は、下記一般式(3A)で表される。
【0045】
【0046】
一般式(3A)中、Rは各々直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基を表し、mは0以上の整数を表し、nは0以上の整数を表し、m及びnの和は2以上6以下である。Rは、各々、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数2以上4以下のアルキレン基を表すことが好ましく、エチレン基又はプロピレン基を表すことがより好ましく、プロピレン基を表すことが更に好ましい。m及びnの和は2であることが好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂のガラス転移点を40℃以上に調整し、ポリエステル樹脂の数平均分子量を2500以上に調整するためには、第3モノマーは、エチレングリコール、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物を含み、ジエチレングリコールを含まないことが好ましい。同じ理由から、第3繰り返し単位は、エチレングリコール由来の繰り返し単位、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物由来の繰り返し単位を含み、ジエチレングリコール由来の繰り返し単位を含まないことが好ましい。なお、同じ理由から、第3モノマーは、ポリエチレングリコールを含まないことが好ましく、第3繰り返し単位は、ポリエチレングリコール由来の繰り返し単位を含まないことが好ましい。なお、エチレングリコール由来の繰り返し単位は、下記化学式(3B)で表される。ジエチレングリコール由来の繰り返し単位は、下記化学式(3C)で表される。
【0048】
【0049】
ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下である。ポリエステル樹脂がこのようなガラス転移点を有する場合、複合体粒子を含有するインクが記録媒体に着弾して熱処理される際に、記録媒体上で複合体粒子が好適に塑性変形する。塑性変形された複合体粒子が記録媒体の表面に広がるため、少量のインクを用いた場合であっても、高い画像濃度を有する画像を印刷することができる。なお、複合体粒子の塑性変形率は、印刷に使用する前のインク中の複合体粒子の直径に対して、2倍以上であることが好ましい。
【0050】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移点が40℃未満であると、室温環境下において、ポリエステル樹脂が多少軟化することがある。このため、複合体粒子を含有するインクを用いて記録媒体に印刷された画像に、ポリエステル樹脂に起因するぬめりが発生し、触感が低下する。また、ポリエステル樹脂のガラス転移点が40℃未満であると、印刷された画像に画像不良が発生することがある。
【0051】
一方、ポリエステル樹脂のガラス転移点が70℃を超えると、ポリエステル樹脂の硬度が高まる。このため、複合体粒子を含有するインクを用いて記録媒体に印刷された画像に、ポリエステル樹脂に起因するごわつきが発生し、触感(例えば、ふくらみ難さ及びこし)が低下する。
【0052】
ポリエステル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点を有するが、明確な融点を有していない。
【0053】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2500以上30000以下であることが好ましく、4000以上30000以下であることがより好ましく、10000以上30000以下であることが更に好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が2500以上であると、印刷された画像を構成するインク膜の強度が向上する。ポリエステル樹脂の数平均分子量が30000以下であると、複合体粒子の調製時に、ポリエステル樹脂を含有する液の粘度が高くなり過ぎないため、ポリエステル樹脂と塩基性染料とを均一に複合体化することができる。
【0054】
塩基性染料と複合体化し易いことから、ポリエステル樹脂は、線状ポリマーであることが好ましい。ただし、ポリエステル樹脂は、インク中での分散安定性に寄与する官能基を有する架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0055】
(複合体粒子を構成する塩基性染料)
塩基性染料は、直接染料及び酸性染料と比較して、印刷された画像の滲みが抑制でき、画像の耐水性にも優れる。既に述べたように、塩基性染料は、塩基性基を有する。水性媒体中でこの塩基性基(例えば、アミノ基)は、カチオン基(例えば、-NH4
+)となる。塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックイエロー(1、2、3、4、11、13、14、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、及び73)、C.I.ベーシックオレンジ(2、21、22、及び26)、C.I.ベーシックレッド(1、2、12、13、14、15、18、22、23、24、27、29、35、36、39、46、51、69、70、73、及び82)、C.I.ベーシックバイオレット(1、3、7、10、11、15、16、20、21、及び27)、C.I.ベーシックブルー(1、3、5、7、9、21、26、41、45、47、54、65、69、75、77、105、117、129、及び147)、C.I.ベーシックグリーン(1、及び4)、及びC.I.ベーシックブラウン1が挙げられる。
【0056】
塩基性染料の含有率は、インクの質量に対して、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0057】
<水性媒体>
水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体に含有される極性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、及びメチルエチルケトンが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが一層好ましい。水性媒体は、水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましい。
【0058】
水性媒体の含有率は、インクの質量に対して、5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。水性媒体の含有率がこのような範囲内の値であると、適切な粘度を有するインクを得ることができる。
【0059】
<第1添加剤>
インクは、必要に応じて、第1添加剤を更に含有することが好ましい。第1添加剤は、水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基のうちの少なくとも1つと加熱により反応可能な化合物である。加熱による反応は、例えば、画像印刷後の熱処理によって引き起こされる。第1添加剤は、例えば、印刷された画像の堅牢度を向上させる堅牢度向上剤として機能する。
【0060】
ここで、複合体粒子に含有されるポリエステル樹脂は、スルホン酸基に加えて、カルボキシ基を有している。ポリエステル樹脂が有するカルボキシ基の一部は、塩基性染料とイオン結合により結合する。しかし、ポリエステル樹脂が有するカルボキシ基の一部は、塩基性染料とイオン結合により結合することなく、複合体粒子内に残存する。以下、「複合体粒子内に残存したポリエステル樹脂が有するカルボキシ基」を、「残存カルボキシ基」と記載することがある。
【0061】
インクが第1添加剤を含有する場合、画像の印刷後の熱処理によって、次の3つの反応が引き起こされる。1つ目の反応は、複合体粒子内のポリエステル樹脂が有する残存カルボキシ基と、第1添加剤との反応である。2つ目の反応は、複合体粒子内の塩基性染料が有するアミノ基と、第1添加剤との反応である。3つ目の反応は、記録媒体の表面に存在する水酸基及びカルボキシ基と、第1添加剤との反応である。これらの3つの反応によって、ポリエステル樹脂が有する残存カルボキシ基と、塩基性染料が有するアミノ基とが、第1添加剤を介して結合する。このようにして、1つの複合体粒子内におけるポリエステ樹脂と塩基性染料との結合が強固となる。また、1つの複合体粒子内におけるポリエステ樹脂と別の複合体粒子内の塩基性染料との結合が強固となる。更に、これらの3つの反応によって、複合体粒子内の残存カルボキシ基及びアミノ基と、記録媒体の表面に存在する水酸基及びカルボキシ基とが、第1添加剤を介して結合する。このようにして、複合体粒子と記録媒体との結合が強固となる。これらの結果、印刷された画像の摩擦堅牢度を更に向上できる。
【0062】
上記画像印刷後の熱処理について、説明する。記録媒体が繊維製品である場合、熱処理の温度は、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。また、熱処理の温度は、100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。このような熱処理温度であると、繊維製品の触感が損なわれ難い。熱処理としては、例えば、プレス熱処理、及びスチーム加熱処理が挙げられる。なお、印刷された画像の堅牢度を向上させるために、印刷された画像に、金属イオン処理、酸処理、又はアルカリ処理が施されてもよい。
【0063】
第1添加剤としては、例えば、ブロックイソシアネート、オキサゾリン基を有するポリマー、ポリカルボジイミド、及びエポキシ基を有する化合物(例えば、1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)プロパン-2-オール)が挙げられる。
【0064】
第1添加剤の含有率は、インクの質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0065】
<第2添加剤>
インクは、必要に応じて、第2添加剤を更に含有することが好ましい。第2添加剤は、紫外線吸収剤、又は酸化防止剤である。第2添加剤を含有するインクを用いることで、耐光性及び耐熱性に優れた画像を印刷できる。また、インクが第2添加剤を含有することで、印刷された画像の触感が向上する。
【0066】
第2添加剤としては、例えば、サリチレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール構造を含む紫外線吸収剤)、及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(ヒドロキシフェニルトリアジン構造を含む紫外線吸収剤)が挙げられる。サリチレート系化合物としては、例えば、フェニルサリチレート、モノグリコールサリチレート、及びt-ブチルフェニルサリチレートが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-アルコキシベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾトリアゾール構造を含む紫外線吸収剤としては、例えば、2(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’-ヒドロキシ-5’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラハイドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジタ-シャルアミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’-ヒドロキシ-3’-タ-シャルブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’-ヒドロキシ-3’-タ-シャルブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールが挙げられる。なお、上記以外の第2添加剤として、レゾルシノールモノベンゾエート、2’-エチルヘキシル-2-シアノ-3-フェニルシンナメート、又はビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケートを使用することもできる。
【0067】
第2添加剤は、ベンゾトリアゾール構造を含む紫外線吸収剤、又はヒドロキシフェニルトリアジン構造を含む紫外線吸収剤であることが好ましい。第2添加剤の含有率は、インクの質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0068】
<界面活性剤>
インクは、必要に応じて、界面活性剤を更に含有することが好ましい。インクが界面活性剤を含有することで、記録媒体に対する濡れ性に優れるインクが得られる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。インクは、1種の界面活性剤のみを含有してもよく、2種以上(例えば、2種、又は3種)の界面活性剤を含有してもよい。
【0069】
界面活性剤は、ノニオン界面活性剤を少なくとも含むことが好ましい。インクがノニオン界面活性剤を含有することで、複合体粒子の分散安定性に優れたインクを得ることができる。
【0070】
複合体粒子の分散安定性に優れたインクを得るために、界面活性剤は、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が10.0以上15.0以下であるノニオン界面活性剤を含むことがより好ましい。HLB値が10.0以上15.0以下であるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、及びポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。
【0071】
複合体粒子の分散安定性に優れたインクを得るために、界面活性剤は、HLB値が10.0以上15.0以下であるノニオン界面活性剤に加えて、HLB値が6.0以上10.0未満であるノニオン界面活性剤を更に含むことが一層好ましい。HLB値が6.0以上10.0未満であるノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール構造を有する界面活性剤(より具体的には、アセチレンジオールエチレンオキサイド付加物)が挙げられる。
【0072】
界面活性剤のHLB値は、例えば、グリフィン法により式「HLB値=20×(親水部の式量の総和)/分子量」から算出される。
【0073】
複合体粒子の分散安定性に優れたインクを得るために、界面活性剤は、ノニオン界面活性剤に加えて、アニオン界面活性剤を更に含むことが好ましい。アニオン界面活性剤としては、例えば、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0074】
界面活性剤の含有率は、インクの質量に対して、0.01質量%以上0.50質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の含有率がこのような範囲内であると、複合体粒子の分散安定性に優れたインクが得られる。また、界面活性剤の含有率が0.50質量%以下であると、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドのノズル内で、インクから気泡が発生し難く、ノズルからインクを安定的に吐出できる。なお、インクに2種以上の界面活性剤が含有される場合、界面活性剤の含有率は、2種以上の界面活性剤の合計含有率を意味する。
【0075】
<保湿剤>
インクは、必要に応じて、保湿剤を含有してもよい。インクが保湿剤を含有すれば、インクからの液体成分の揮発を抑制できる。保湿剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール類、アルキレングリコール類、及びグリセリンが挙げられる。ポリアルキレングリコール類としては、例えば、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールが挙げられる。アルキレングリコール類としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール(即ち、1,3-プロパンジオール)、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3-ブタンジオール、及び1,5-ペンタンジオールが挙げられる。保湿剤は、アルキレングリコール類及びグリセリンのうちの少なくとも1つであることが好ましく、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びグリセリンのうちの少なくとも1つであることがより好ましい。保湿剤の含有率は、インクの質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0076】
<その他の成分>
インクは、必要に応じて、既に述べた成分以外の成分(より具体的には、粘度調整剤、溶解安定剤、及び浸透剤等)を更に含有してもよい。なお、インクは、顔料を含有しないことが好ましい。顔料の粒子径は比較的大きいため、画像が印刷された記録媒体のごわつき、及び摩擦堅牢度の低下が引き起こされ易いからである。なお、インクを用いて記録媒体に画像を印刷する前に、記録媒体に前処理を実施してもよい。前処理を実施することで、印刷される画像のにじみが抑制され、発色性及び鮮明度が高い画像を印刷することができる。
【0077】
[インクの製造方法]
本実施形態のインクを製造する方法は、例えば、ポリエステル樹脂調製工程、複合体粒子調製工程、及び混合工程を含む。
【0078】
<ポリエステル樹脂調製工程>
ポリエステル樹脂調製工程において、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂を調製する。詳しくは、ポリエステル樹脂調製工程において、第1モノマーと、第2モノマーと、第3モノマーとを縮合重合させることにより、ポリエステル樹脂が得られる。
【0079】
ポリエステル樹脂調製工程において、第1モノマー及び第2モノマーの総量(総物質量)に対して、1.5mol%以上20.0mol%以下の量(物質量)の第1モノマーが添加される。以下、「第1モノマー及び第2モノマーの総量に対する、第1モノマーの量の百分率」を、「第1モノマー率」と記載することがある。第1モノマー率がこのような範囲内であることで、第1繰り返し単位率を1.5mol%以上20.0mol%以下に調整することができる。画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を印刷するためには、第1モノマー率は、5.0mol%以上20.0mol%以下であることが好ましく、5.0mol%以上15.0mol%以下であることがより好ましい。
【0080】
ポリエステル樹脂調製工程において、第1モノマー及び第2モノマーの総質量に対して、3質量%以上25質量%以下の質量の第1モノマーが添加されることが好ましく、3質量%以上20質量%以下の質量の第1モノマーが添加されることがより好ましい。ポリエステル樹脂調製工程で得られるポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上70℃以下である。
【0081】
縮合重合は、公知の方法のより実施することができる。縮合重合させる方法としては、例えば、真空重合法、減圧重合法、及び酸クロライド法が挙げられる。減圧重合法は、真空重合法と比較して、分子量が低いポリエステル樹脂が得られ易い。
【0082】
以下、縮合重合させる方法の一例について、説明する。第1モノマーと、第2モノマーと、第3モノマーとを、触媒の存在下、所定圧力に減圧しながら、攪拌する。このようにして、第1モノマーと、第2モノマーと、第3モノマーとを縮合重合させる。触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、及び三酸化アンチモンが挙げられる。所定圧力は、1mmHg以上10mmHg以下であることが好ましい。縮合重合させる温度は、130℃以上250℃以下であることが好ましい。縮合重合させる時間は、例えば、0.5時間以上10時間以上であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。
【0083】
<複合体粒子調製工程>
複合体粒子調製工程において、ポリエステル樹脂と塩基性染料との複合体の粒子である複合体粒子を調製する。複合体粒子調製工程において、塩基性染料の質量に対して1.0以上10.0以下の質量比率のポリエステル樹脂が添加される。このような質量比率でポリエステル樹脂が添加されることにより、樹脂/染料比率を1.0以上10.0以下に調整できる。
【0084】
次いで、ポリエステル樹脂と塩基性染料とを混合することにより、複合体粒子が得られる。複合体粒子を調製する方法の一例を説明する。まず、ポリエステル樹脂を水性媒体に溶解させてポリエステル樹脂溶液を得る。また、塩基性染料を水性媒体に溶解させて塩基性染料溶液を得る。得られたポリエステル樹脂溶液と、塩基性染料溶液とを混合することにより、ポリエステル樹脂と塩基性染料とが複合体化して、複合体粒子が調製される。ポリエステル樹脂溶液に、塩基性染料溶液を滴下しながら混合することが好ましい。混合する際の温度は、40℃以上90℃以下であることが好ましい。混合する速度は、100rpm以上500rpm以下であることが好ましく、200rpm以上400rpm以下であることがより好ましい。混合する時間は、5分以上1時間以下であることが好ましい。
【0085】
なお、塩基性染料がポリエステル樹脂に導入されたか否かは、次の方法により確認できる。即ち、塩基性染料溶液とポリエステル樹脂溶液とを混合して複合体粒子を形成した後、複合体粒子を含有する液を採取する。遠心分離機を用いて、15000rpmの回転速度で、30分間、液を遠心分離する。遠心分離後、上澄み液を回収する。分光光度計(例えば、日立製作所製)を用いて、吸光度法により、上澄み液に含有される塩基性染料を定量する。上澄み液に含有される塩基性染料の量が、ポリエステル樹脂に導入されなかった塩基性染料の量に相当する。
【0086】
複合体粒子を調製する方法の別の例を説明する。まず、ポリエステル樹脂及び塩基性染料を水性媒体に加熱溶解させて溶液を得る。得られた溶液を、水層に噴霧する。噴霧された溶液が水面に到達した際に、複合体粒子が形成される。
【0087】
複合体粒子を調製する方法の更に別の例を説明する。まず、ポリエステル樹脂を水性媒体に溶解させてポリエステル樹脂溶液を得る。また、塩基性染料を水性媒体に溶解させて塩基性染料溶液を得る。塩基性染料溶液のpHを4程度に調整する。得られたポリエステル樹脂溶液に、pHが4程度に調整された塩基性染料溶液を添加することにより、ポリエステル樹脂と塩基性染料とが複合体化して、複合体粒子が調製される。
【0088】
複合体粒子の調製後、複合体粒子の所定導電率が30μS/cm以下となるまで、水(例えば、イオン交換水)を用いて、複合体粒子が洗浄されることが好ましい。複合体粒子の洗浄処理としては、例えば、上記混合により得られた複合体粒子を水(例えば、イオン交換水)に分散させた後に、複合体粒子を濾取する洗浄処理が挙げられる。例えば、洗浄処理を行う回数が多くなる程、複合体粒子の所定導電率は低くなる。
【0089】
<混合工程>
混合工程において、水性媒体と前記複合体粒子とを混合する。混合には、例えば、攪拌機が使用される。なお、必要に応じて添加されるインク成分(より具体的には、第1添加剤、第2添加剤、界面活性剤、保湿剤、及びその他の成分のうちの少なくとも1つ)を更に添加して、混合してもよい。得られた混合液を、必要に応じて濾過する。その結果、本実施形態のインクが製造される。以上、本実施形態のインクの製造方法について説明した。
【実施例】
【0090】
次に、本発明の実施例を説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
【0091】
[ポリエステル樹脂調製工程]
まず、ポリエステル樹脂A~I(以下、それぞれを、樹脂A~Iと記載する)を調製した。樹脂A~Dの組成を表1に、樹脂E~Iの組成を表2に示す。なお、樹脂A~Dは、実施例に係るインクに含有させるための複合体粒子の調製に使用した。樹脂E~Iは、比較例に係るインクに含有させるための複合体粒子の調製に使用した。
【0092】
【0093】
【0094】
表1及び表2中の各用語の意味は、次のとおりである。「Tg」は、ガラス転移点を意味する。「ビスフェノールA PO付加物」は、ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物を意味する。「質量」は、添加された該当するモノマーの質量(単位:g)を意味する。「物質量」は、表3に示すモル質量の値を用いて、添加された該当するモノマーの質量を、物質量(単位:mol)に換算した値である。換算方法については、表3を参照して後述する。
【0095】
「第1モノマー率」は、第1モノマー及び第2モノマーの添加量の合計に対する、第1モノマーの添加量の百分率(単位:mol%)を意味する。第1モノマー率は、式「第1モノマー率=100×[(5-ナトリウムスルホイソフタル酸の物質量)+(4-スルホフタル酸の物質量)]/[(5-ナトリウムスルホイソフタル酸の物質量)+(4-スルホフタル酸の物質量)+(テレフタル酸の物質量)+(イソフタル酸の物質量)+(ナフタレンジカルボン酸の物質量)]」から算出した。
【0096】
縮合重合反応前のモノマーの物質量と、縮合重合反応後の対応する繰り返し単位の物質量とは、同一である。このため、「第1モノマー率」は、「第1繰り返し単位率」に相当する。
【0097】
「ナフタレンジカルボン酸率」は、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計に対する、ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率(単位:mol%)を意味する。縮合重合反応前のモノマーの物質量と、縮合重合反応後の対応する繰り返し単位の物質量とは、同一である。このため、ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率は、式「ナフタレンジカルボン酸由来の繰り返し単位の含有率(単位:mol%)=第1モノマー及び第2モノマーの添加量の合計に対するナフタレンジカルボン酸の添加量の百分率(単位:mol%)=100×(ナフタレンジカルボン酸の物質量)/[(5-ナトリウムスルホイソフタル酸の物質量)+(4-スルホフタル酸の物質量)+(テレフタル酸の物質量)+(イソフタル酸の物質量)+(ナフタレンジカルボン酸の物質量)]」から算出した。以上、表1及び表2中の各用語の意味について説明した。
【0098】
以下、表3を参照して、添加された該当するモノマーの質量を、物質量に換算する方法について説明する。表3に、モノマーのモル質量(単位:g/mol)を示す。添加されたモノマーの物質量は、式「(モノマーの物質量)=(添加されたモノマーの質量)/(モノマーのモル質量)」から算出した。なお、モル質量は、分子量に相当する。
【0099】
【0100】
<樹脂Aの調製>
分留管、窒素導入管、温度計、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを準備した。このフラスコに、テレフタル酸(50g)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(3g)、エチレングリコール(30g)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(70g)、及び触媒である酢酸亜鉛(0.1g)を入れた。2時間かけて130℃から170℃までフラスコ内容物を昇温させた。次いで、フラスコ内に、イソフタル酸(47g)、及び三酸化アンチモン(0.1g)を添加した。2時間かけて170℃から200℃までフラスコ内容物を昇温させた。次いで、200℃から250℃までフラスコ内容物を徐々に昇温させながら、常圧から5mmHgまでフラスコ内を徐々に減圧させた。250℃且つ5mmHgの条件で、1時間、フラスコ内容物を縮合重合反応させて、樹脂Aを得た。樹脂Aのガラス転移点を、表1に示す。なお、樹脂Aは、ガラス転移点を有していたが、明確な融点を有しておらず、非結晶性ポリエステル樹脂であることが確認された。
【0101】
<樹脂B~Iの調製>
表1及び表2に示す種類及び添加量のモノマーを使用したこと以外は、樹脂Aの調製と同じ方法で、樹脂B~Iの各々を調製した。樹脂B~Iのガラス転移点を、表1及び表2に示す。なお、樹脂B~Iは何れも、ガラス転移点を有していたが、明確な融点を有しておらず、非結晶性ポリエステル樹脂であることが確認された。
【0102】
[複合体粒子調製工程]
次に、複合体粒子(C-a)~(C-l)を調製した。複合体粒子(C-a)~(C-l)の組成を、表4に示す。なお、複合体粒子(C-a)~(C-e)は、実施例に係るインクに含有される分散液の調製に使用した。複合体粒子(C-f)~(C-l)は、比較例に係るインクに含有される分散液の調製に使用した。
【0103】
【0104】
表4中の各用語の意味を説明する。「部」は、質量部を意味する。「染料」は「塩基性染料」を意味する。「B.Y.28」、「B.R.29」、及び「B.B.41」は、以下に示すとおりであり、何れも塩基性染料である。
B.Y.28:C.I.ベーシックイエロー28
B.R.29:C.I.ベーシックレッド29
B.B.41:C.I.ベーシックブルー41
【0105】
「樹脂/染料」は、樹脂/染料比率を意味する。「導電率」は、所定導電率(単位:μS/cm)を意味する。所定導電率の測定方法は、後述の<所定導電率の測定方法>で説明する。以上、表4中の各用語の意味を説明した。
【0106】
<複合体粒子(C-a)の調製>
3口フラスコに、樹脂A(15質量部)、及び水(200質量部)を入れた。温度80℃且つ攪拌速度300rpmで30分間フラスコ内容物を攪拌して、水に樹脂Aを溶解させた。このようにして、樹脂Aの水溶液S1を得た。
【0107】
別の3口フラスコに、塩基性染料であるC.I.ベーシックイエロー28(2質量部)、水(150質量部)、及び10%酢酸水溶液(0.1質量部)を入れた。温度65℃且つ攪拌速度300rpmで30分間フラスコ内容物を攪拌して、塩基性染料の水溶液S2を得た。
【0108】
樹脂Aの水溶液S1を攪拌しながら、水溶液S1に、塩基性染料の水溶液S2を滴下した。滴下時の水溶液S1の攪拌速度は300rpmであった。また、水溶液S2の滴下速度は、0.15L/時であった。滴下終了後、60分間フラスコ内容物を攪拌した。このようにして、樹脂AとC.I.ベーシックイエロー28との複合体の粒子である複合体粒子(C-a)の分散液を得た。ブフナーロートを用いてウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)を濾取した。
【0109】
次に、ウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)を、洗浄した。詳しくは、ウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)をイオン交換水に再分散させた後に、ブフナーロートを用いてウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)を濾取する洗浄処理を行った。後述する<所定導電率の測定方法>により測定される複合体粒子(C-a)の所定導電率が表4に示す値となるまで、洗浄処理を繰り返した。
【0110】
洗浄処理後、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、ウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)を乾燥させた。コートマイザーの乾燥条件は、熱風温度45℃且つブロアー風量2m3/分であった。このようにして、複合体粒子(C-a)を得た。
【0111】
<複合体粒子(C-b)~(C-e)及び(C-g)~(C-k)の調製>
表4に示す種類及び量の樹脂を使用したこと、表4に示す種類及び量の塩基性染料を使用したこと、及び所定導電率が表4に示す値となるように洗浄処理を繰り返したこと以外は、複合体粒子(C-a)の調製と同じ方法で、複合体粒子(C-b)~(C-e)及び(C-g)~(C-k)の各々を調製した。
【0112】
<複合体粒子(C-f)の調製の試み>
樹脂A(15g)を樹脂A(1g)に変更したこと、即ち、樹脂/染料比率を0.5に変更したこと以外は、複合体粒子(C-a)の調製と同じ方法で、複合体粒子(C-f)の調製を試みた。しかし、複合体粒子の形状は形成されたものの、一部の塩基性染料が複合体粒子中に導入されず水溶液中に残留したため、樹脂/染料比率が0.5である複合体粒子(C-f)を調製することができなかった。このため、複合体粒子(C-f)については、下記[複合体粒子の分散液の調製]以降の調製作業を実施しなかった。
【0113】
<複合体粒子(C-l)の調製の試み>
樹脂Aを樹脂Eに変更したこと以外は、複合体粒子(C-a)の調製と同じ方法で、複合体粒子(C-l)の調製を試みた。しかし、樹脂Eが水に溶解しなかったことから、均一に複合体化することができず、複合体粒子(C-l)を調製することができなかった。このため、複合体粒子(C-l)については、下記[複合体粒子の分散液の調製]以降の調製作業を実施しなかった。
【0114】
[複合体粒子の分散液の調製]
次に、複合体粒子の分散液(D-1)~(D-14)(以下、それぞれを、分散液(D-1)~(D-14)と記載する)を調製した。分散液(D-1)~(D-14)の組成を、表5に示す。なお、分散液(D-1)~(D-9)は、実施例に係るインクの調製に使用した。分散液(D-10)~(D-14)は、比較例に係るインクの調製に使用した。
【0115】
【0116】
表5中の「部」は、質量部を意味する。表5中の「DBS」は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを意味する。表5に示す界面活性剤の詳細について、表6に示す。なお、「エマルゲン」及び「ニューコール」は登録商標である。
【0117】
【0118】
<分散液(D-1)の調製>
3口フラスコに、複合体粒子(C-a)(10質量部)、及びメチルエチルケトン(70質量部)を入れ、60℃で30分間攪拌した。次いで、フラスコ内に、エマルゲン106(0.5質量部)を添加した。0.3L/時の滴下速度で、10%ジイソプロピルアミン水溶液(10質量部)を滴下した。次いで、0.3L/時の滴下速度で、水(180質量部)を滴下した。滴下終了後、フラスコ内容物を2時間攪拌した。攪拌後にフラスコ内の液を冷却し、液を取り出した。エバポレータを用いて、温度53℃で30分間、フラスコから取り出された液を減圧留去し、液からメチルエチルケトンを除去した。このようにして、複合体粒子(C-a)の分散液(D-1)を得た。
【0119】
<分散液(D-2)~(D-14)の調製>
表5に示す種類の複合体粒子を使用したこと、及び表5に示す種類及び量の界面活性剤を使用したこと以外は、分散液(D-1)の調製と同じ方法で、分散液(D-2)~(D-14)の各々を調製した。
【0120】
[インクの調製]
次に、実施例に係るインク(I-A1)~(I-A16)、並びに比較例に係るインク(I-B1)~(I-B5)を調製した。インク(I-A1)~(I-A16)、及び(I-B1)~(I-B5)の各々の組成を、表7に示す。なお、インク(I-A1)及びインク(I-A4)の組成は互いに同じであるが、後述の[評価方法]における布前処理の実施の有無が異なることから、説明の便宜上、互いに異なるインク番号を付した。
【0121】
【0122】
表7中の各用語の意味を説明する。「-」は、該当する成分が添加されていないことを意味する。「布前処理」の「あり」は、後述の<布の前処理>に記載の前処理を実施したことを意味し、「なし」は実施していないことを意味する。「印刷後熱処理温度」は、後述の<印刷後の熱処理>に記載の熱処理おける加熱温度を意味する。
【0123】
表7に示す添加剤の詳細は、以下のとおりである。
ADD-1:ベンゾトリアゾール構造を含む紫外線吸収剤、BASF社製「Tinuvin(登録商標)9945-DW」、有効成分濃度45質量%
ADD-2:ヒドロキシフェニルトリアジン構造を含む紫外線吸収剤、BASF社製「Tinuvin(登録商標)477-DW」、有効成分濃度20質量%
ADD-3:ブロックイソシアネート、明成化学工業株式会社製「メイカネートCX」
ADD-4:オキサゾリン基含有ポリマー、株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)K-2030」、有効成分濃度40質量%
ADD-5:ポリカルボジイミド樹脂、日清紡ケミカル株式会社製「V-02」、有効成分濃度40質量%
ADD-6:1,3-ビス(オキシラニルメトキシ)プロパン-2-オール、ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-313」
以上、表7中の各用語の意味を説明した。
【0124】
<インク(I-A1)の調製>
分散液(D-1)(5g)、グリセリン(0.044g)、プロピレングリコール(0.044g)、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)440」、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、HLB値:8)(0.028g)、及びイオン交換水(0.439g)を、攪拌機を用いて、20℃で15分間攪拌し、液を得た。メンブランフィルター(平均孔径:1.0μm)を用いて、得られた液を濾過し、インク(I-A1)を得た。
【0125】
<インク(I-A4)の調製>
既に述べたように、インク(I-A1)及びインク(I-A4)の組成は互いに同じであることから、得られたインク(I-A1)を、インク(I-A4)としても使用した。
【0126】
<インク(I-A5)、(I-A11)~(I-A16)、及び(I-B1)~(I-B5)の調製>
表7に示す種類の分散液を使用したこと以外は、インク(I-A1)の調製と同じ方法で、インク(I-A5)、(I-A11)~(I-A16)、及び(I-B1)~(I-B5)の各々を得た。
【0127】
<インク(I-A2)~(I-A3)、及び(I-A6)~(I-A10)の調製>
表7に示す種類の分散液を使用したこと、及び表7に示す量及び種類の添加剤を更に添加したこと以外は、インク(I-A1)の調製と同じ方法で、インク(I-A2)~(I-A3)、及び(I-A6)~(I-A10)の各々を得た。
【0128】
[測定方法]
<ガラス転移点の測定方法>
樹脂A~Iのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて、JIS(日本産業規格)K7121-2012に従って、測定した。
【0129】
<数平均分子量の測定方法>
樹脂A~Iの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定試料の調製条件、及びGPC測定条件は、以下に示すとおりであった。
(測定試料の調製条件)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
溶液濃度:3.0mg/mL
前処理:孔径0.45μmのフィルターによる濾過
注入量:100μL
(GPC測定条件)
装置:HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel GMHXL-L(東ソー株式会社製)
カラム本数:2本(直列接続)
カラム温度:40℃
キャリア溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
キャリア流速:1mL/分
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線:標準ポリスチレンを用いて作製された検量線
【0130】
<所定導電率の測定方法>
複合体粒子(C-a)の所定導電率を、以下に示す方法で測定した。所定導電率の測定環境は、温度25℃及び相対湿度60%RHの環境であった。上記<複合体粒子(C-a)の調製>において実施された洗浄処理により得られたウェットケーキ状の複合体粒子(C-a)を、固形分濃度が10質量%(即ち、複合体粒子濃度が10質量%)になるように、イオン交換水で希釈し、測定液を得た。超音波分散機(超音波工業株式会社製「ウルトラソニックミニウェルダーP128」)を用いて、5分間、測定液に分散処理を施した。分散処理後、ポータブル導電率メーター(株式会社堀場製作所製「D-74」)を用いて、測定液の導電率を測定した。
【0131】
複合体粒子(C-a)を、複合体粒子(C-b)~(C-e)及び(C-g)~(C-k)の各々に変更したこと以外は、複合体粒子(C-a)の所定導電率の測定と同じ方法で、複合体粒子(C-b)~(C-e)及び(C-g)~(C-k)の各々の所定導電率を測定した。なお、複合体粒子(C-f)及び(C-l)については、既に述べたように所望の複合体粒子が調製できなかったため、所定導電率の測定は行わなかった。
【0132】
[評価方法]
評価対象であるインク(I-A1)~(I-A16)、及び(I-B1)~(I-B5)を用いて、布へ画像を印刷し、印刷された画像を評価した。詳しくは、インク(I-A1)~(I-A16)、及び(I-B1)~(I-B5)を用いて、以下に示すように、インクジェット記録装置による布への印刷、及び印刷後の熱処理を実施した。また、インク(I-A4)については、布への印刷の前に、以下に示すように、布の前処理を実施した。
【0133】
<インクジェット記録装置による布への印刷>
インクジェット記録装置(インクジェットプリンター、セイコーエプソン株式会社製「カラリオプリンターPX-045A」)を用いて、印刷を実施した。評価対象であるインクを、各インクの色に対応するインクカートリッジに充填し、インクカートリッジをインクジェット記録装置にセットした。次いで、インクジェット記録装置を用いて、1枚の布(ポリエステル布、帝人株式会社製「トロピカル」)に、画像(印字率100%のソリッド画像)を印刷した。画像が印刷された布を、20℃で12時間、乾燥させた。
【0134】
<印刷後の熱処理>
プレス機(アサヒ繊維機械工業株式会社製「卓上自動平プレス機AF-54TEN型」)を用いて、表7に示す温度、圧力0.20N/cm2、且つ処理時間60秒の条件で、画像が印刷された布に熱処理を実施した。熱処理後の布を、評価布とした。
【0135】
<布の前処理>
インク(I-A4)を用いる場合にのみ、印刷前に、布の前処理を実施した。詳しくは、パディング法により、以下に示す組成の前処理液を、布に塗布した。次いで、乾燥率が50%となるように、布を乾燥させて、前処理された布を得た。なお、乾燥率は、パディング法により前処理液を塗布した後の布の質量を乾燥率0%時の質量とし、パディング法により前処理液を塗布する前の布の質量を乾燥率100%時の質量として、算出した。
(前処理液の組成)
ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル株式会社製「PAA(登録商標)-HCL-3A」):50質量部
グリセリン:80質量部
1,2-ヘキサンジオール:20質量部
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK348」):10質量部
水:840質量部
【0136】
<画像評価>
上記<印刷後の熱処理>で得られた評価布に対して、ルーペ観察、及び目視観察を実施した。そして、評価布の画像における画像不良の有無を確認した。画像不良として、画像スジ、及び濃淡ムラを確認した。なお、画像スジは、ノズル詰まり及びノズルからのインクの吐出ヨレによって引き起こされる。画像不良の有無の確認結果から、下記基準に従って、評価布の画像を評価した。画像の評価結果を、表8に示す。
(画像の評価基準)
評価5:ルーペ観察及び目視観察の何れにおいても、画像不良が確認されない。
評価4:ルーペ観察では画像不良が若干確認されるが、目視観察では画像不良が確認されない。
評価3:ルーペ観察では画像不良が明確に確認されるが、目視観察では画像不良が確認されない。
評価2:ルーペ観察では画像不良が明確に確認され、目視観察では画像不良が若干確認される。
評価1:目視観察及びルーペ観察の何れにおいても、画像不良が明確に確認される。
【0137】
<摩擦堅牢度の評価>
JIS(日本産業規格)L-0849(摩擦に対する染色堅牢度試験方法)に記載の学振形・湿潤試験法に従って、上記<印刷後の熱処理>で得られた評価布の摩擦堅牢度を測定した。摩擦堅牢度の判定基準として、JIS L-0849で引用されるJIS L-0801(染色堅牢度試験方法通則)の箇条10(染色堅牢度の判定)に記載の「変退色の判定基準」を採用した。この判定基準は、1級、1~2級(即ち、1級超2級未満)、2級、2~3級(即ち、2級超3級未満)、3級、3~4級(即ち、3級超4級未満)、4級、4~5級(即ち、4級超5級未満)、及び5級の変退色等級によって判定される基準である。変退色等級の数値が大きい程(5級に近づく程)、摩擦堅牢度が優れていることを示す。評価布の摩擦堅牢度の評価結果を、表8に示す。
【0138】
<触感評価>
上記<印刷後の熱処理>で得られた評価布を手で触ることにより、評価布の触感を評価した。触感として、評価布のこし、ぬめり、及びふくらみが難さの3項目を、各々、A(良好)、B(普通)、及びC(不良)の3段階で評価した。なお、評価布のふくらみが小さい程、ふくらみ難さの項目が良好であると評価した。そして、下記基準に従って、評価布の触感を評価した。評価布の触感の評価結果を、表8に示す。
(触感の評価基準)
評価5:3項目の評価において、A評価が3つある。
評価4:3項目の評価において、A評価が2つある。3項目の評価において、C評価がない。
評価3:3項目の評価において、A評価が1つある。3項目の評価において、C評価がない。
評価2:3項目の評価において、A評価がない。3項目の評価において、C評価が1つ又は2つある。
評価1:3項目の評価において、A評価がない。3項目の評価において、C評価が3つある。
【0139】
【0140】
表7及び表5に示されるように、インク(I-A1)~(I-A16)の各々は、複合体粒子(より具体的には、複合体粒子(C-a)~(C-e))を含有していた。表4に示されるように、複合体粒子(C-a)~(C-e)の各々は、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂(より具体的には、樹脂A~Dのうちの1つ)と、塩基性染料との複合体の粒子であった。表1の「Tg」欄に示すように、樹脂A~Dの各々のガラス転移点は、40℃以上70℃以下であった。表1に示すように、樹脂A~Dの各々は、第1モノマー由来の第1繰り返し単位と、第2モノマー由来の第2繰り返し単位と、第3モノマー由来の第3繰り返し単位とを有していた。表1の「第1繰り返し単位率」欄に示すように、樹脂A~Dの各々において、第1繰り返し単位率は、1.5mol%以上20.0mol%以下であった。表4の「樹脂/染料」欄に示すように、複合体粒子(C-a)~(C-e)の各々において、樹脂/染料比率は、1.0以上10.0以下であった。
【0141】
表8に示されるように、インク(I-A1)~(I-A16)の各々を用いて画像が印刷された評価布に関し、画像評価は3以上であり、摩擦堅牢度は3級以上であり、触感評価は3以上であった。よって、インク(I-A1)~(I-A16)の各々を用いた場合、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を、印刷することができた。
【0142】
一方、表7及び表5に示されるように、インク(I-B1)は、複合体粒子(C-k)を含有していた。表4に示されるように、複合体粒子(C-k)は、樹脂Iを含有していた。表2の「第1繰り返し単位率」欄に示すように、樹脂Iの第1繰り返し単位率は、20.0mol%を超えていた。そのため、表8に示されるように、インク(I-B1)を用いて画像が印刷された場合、摩擦堅牢度は1級超2級未満であり、摩擦堅牢度が劣っていた。
【0143】
表7及び表5に示されるように、インク(I-B2)は、複合体粒子(C-g)を含有していた。表4の「樹脂/染料」欄に示すように、複合体粒子(C-g)において、樹脂/染料比率は、10.0を超えていた。そのため、表8に示されるように、インク(I-B2)を用いて画像が印刷された場合、画像評価は2であり、摩擦堅牢度は2級であり、触感評価は2であった。インク(I-B2)を用いて画像が印刷された場合、画像不良の発生を抑制できず、画像の摩擦堅牢度が劣り、触感の良い画像を印刷できなかった。
【0144】
表7及び表5に示されるように、インク(I-B3)は、複合体粒子(C-h)を含有していた。表4に示されるように、複合体粒子(C-h)は、樹脂Fを含有していた。表2の「Tg」欄に示すように、樹脂Fのガラス転移点は、40℃未満であった。そのため、表8に示されるように、インク(I-B3)を用いて画像が印刷された場合、触感評価は2であり、触感の良い画像を印刷できなかった。
【0145】
表7及び表5に示されるように、インク(I-B4)は、複合体粒子(C-i)を含有していた。表4に示されるように、複合体粒子(C-i)は、樹脂Gを含有していた。表2の「Tg」欄に示すように、樹脂Gのガラス転移点は、70℃を超えていた。そのため、表8に示されるように、インク(I-B4)を用いて画像が印刷された場合、触感評価は2であり、触感の良い画像を印刷できなかった。
【0146】
表7及び表5に示されるように、インク(I-B5)は、複合体粒子(C-j)を含有していた。表4に示されるように、複合体粒子(C-j)は、樹脂Hを含有していた。表2の「Tg」欄に示すように、樹脂Hのガラス転移点は、40℃未満であった。そのため、表8に示されるように、インク(I-B5)を用いて画像が印刷された場合、画像評価は2であり、触感評価は2であった。よって、インク(I-B5)を用いて画像が印刷された場合、画像不良の発生を抑制できず、触感の良い画像を印刷できなかった。
【0147】
表2に示すように、樹脂Eは、第1モノマー由来の第1繰り返し単位を有していなかった。そのため、樹脂Eが水に溶解せず、表4に示すように、複合体粒子(C-l)を調製することができなかった。
【0148】
以上のことから、本発明に係るインクは、画像不良が少なく摩擦堅牢度に優れ且つ触感の良い画像を、印刷できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明に係るインクは、例えば、インクジェットプリンターを用いて、布のような記録媒体に画像を印刷するために利用できる。