(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光書き込み装置、画像形成装置および光量検出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20231205BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20231205BHJP
G03G 15/043 20060101ALI20231205BHJP
H04N 1/036 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/447 101Q
B41J2/45
G03G15/043
H04N1/036
(21)【出願番号】P 2019212432
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 昂紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】横田 壮太郎
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214681(JP,A)
【文献】特開2010-046900(JP,A)
【文献】特開2006-278403(JP,A)
【文献】特開2003-270564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/043
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置であって、
複数の有機EL素子と、
前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光を前記感光体の外周面上に集光する、複数のマイクロレンズと、
前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、
前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、
前記受光素子ごとに、前記有機EL素子を前記発光順序にしたがって順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出部と、
前記光量検出部が受光素子に検出させた光量に応じて有機EL素子ごとに光量補正を行う光量補正部と、
前記受光素子ごとに、前記光量検出部が当該受光素子に検出させた光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新部と、を備える
ことを特徴とする光書き込み装置。
【請求項2】
出荷前に、前記有機EL素子を順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる出荷前検出部と、
前記受光素子ごとに、前記出荷前検出部が当該受光素子に検出させた光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、発光順序として前記記憶部に記憶させる初期設定部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光書き込み装置。
【請求項3】
感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置であって、
複数の有機EL素子と、
前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光を前記感光体の外周面上に集光する、複数のマイクロレンズと、
前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、
前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、
前記受光素子ごとに、前記有機EL素子を前記発光順序にしたがって順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出部と、
前記光量検出部が受光素子に検出させた光量に応じて有機EL素子ごとに光量補正を行う光量補正部と、
前記受光素子ごとに、前記光量検出部による補正後の有機EL素子ごとの出射光量に、当該有機EL素子ごとの当該受光素子への入射効率を乗算して得られた入射光量が単調に増加または減少する当該有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新部と、を備える
ことを特徴とする光書き込み装置。
【請求項4】
出荷前に、前記受光素子ごとに、前記有機EL素子に対応するマイクロレンズのレンズ効率の逆数に、当該有機EL素子ごとの当該受光素子への入射効率を乗算して、当該算出値が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、発光順序として前記記憶部に記憶させる初期設定部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の光書き込み装置。
【請求項5】
感光体と、
前記感光体表面を一様に帯電させる帯電装置と、
請求項1から4のいずれかに記載の光書き込み装置と、を備え、
前記一様に帯電した感光体表面に、前記光書き込み装置の出射光を照射して、静電潜像を形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光
を感光体の外周面上に集光する複数のマイクロレンズと、前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、を有し、
前記感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置が使用する光量検出方法であって、
前記受光素子ごとに、前記記憶部に記憶されている順番で、前記有機EL素子を順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出ステップと、
前記受光素子ごとに、前記光量検出ステップにおいて当該受光素子が検出した光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新ステップと、を含む
ことを特徴とする光量検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光書き込み装置、画像形成装置および光量検出方法に関し、特に、発光素子の光量検出に要する時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一様に帯電させた感光体表面を露光して静電潜像を形成するために、光書き込み装置を備えている。光書き込み装置には、LD(Laser Diode)の出射光を偏向走査する光走査型や、半導体LED(Light Emitting Diode)や有機EL(Electro-Luminescence。OLED: Organic LEDともいう。)を多数配列したライン光学型などが知られている。
【0003】
光書き込み装置では、LDやLED、OLEDといった光学素子どうしで露光量を揃えることが、高画質を達成するうえで重要となる。例えば、OLEDは経年劣化や温度特性に起因して光量のバラツキが発生し、画像品質が劣化し得る。
【0004】
このような問題に対して、例えば、発光素子ごとの温度特性のバラツキに起因する光量バラツキを補正するために、受光素子を用いて発光素子ごとに光量を検出し、この検出結果に応じて発光素子毎に光量を制御する技術が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。このような技術を適用すれば、OLEDを用いた光書き込み装置においても、光量バラツキを補正し、画質を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OLEDは出射光量が少なく、受光素子の検出信号が微弱であるため、検出信号を増幅する必要がある。しかしながら、検出信号を増幅すると、検出波形に波形なまりが生じる。従って、光量補正に十分な精度で光量を検出するためには、波形なまりが治まるのを待たなければならないので、光量検出に時間がかかってしまう。
【0007】
光量検出から光量補正までの処理を、いわゆる紙間において実施する場合に、処理に時間がかかり過ぎると、紙間が長くなってしまうので、印刷速度が低下してしまう、という問題がある。
【0008】
また、装置の小型化、低コスト化の観点からすれば、受光素子の個数をできるだけ少なくするのが望ましいが、光量検出は個々のOLEDについて順番に行うため、1つの受光素子で光量検出を行うOLEDの個数が多くなると、やはり検出時間が長くなるので、同様の問題が懸念される。
【0009】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、OLED等の発光素子の光量を短時間で検出することができる光書き込み装置、画像形成装置および光量検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る光書き込み装置は、感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置であって、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光を前記感光体の外周面上に集光する、複数のマイクロレンズと、前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、前記受光素子ごとに、前記有機EL素子を前記発光順序にしたがって順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出部と、前記光量検出部が受光素子に検出させた光量に応じて有機EL素子ごとに光量補正を行う光量補正部と、前記受光素子ごとに、前記光量検出部が当該受光素子に検出させた光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この場合において、出荷前に、前記有機EL素子を順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる出荷前検出部と、前記受光素子ごとに、前記出荷前検出部が当該受光素子に検出させた光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、発光順序として前記記憶部に記憶させる初期設定部と、を備えてもよい。
【0012】
また、本開示の別の一形態に係る光書き込み装置は、感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置であって、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光を前記感光体の外周面上に集光する、複数のマイクロレンズと、前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、前記受光素子ごとに、前記有機EL素子を前記発光順序にしたがって順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出部と、前記光量検出部が受光素子に検出させた光量に応じて有機EL素子ごとに光量補正を行う光量補正部と、前記受光素子ごとに、前記光量検出部による補正後の有機EL素子ごとの出射光量に、当該有機EL素子ごとの当該受光素子への入射効率を乗算して得られた入射光量が単調に増加または減少する当該有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合において、出荷前に、前記受光素子ごとに、前記有機EL素子に対応するマイクロレンズのレンズ効率の逆数に、当該有機EL素子ごとの当該受光素子への入射効率を乗算して、当該算出値が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、発光順序として前記記憶部に記憶させる初期設定部を備えてもよい。
【0014】
また、本開示の一形態に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体表面を一様に帯電させる帯電装置と、本開示の一形態に係る光書き込み装置と、を備え、前記一様に帯電した感光体表面に、前記光書き込み装置の出射光を照射して、静電潜像を形成してもよい。
【0015】
また、本開示の一形態に係る光量検出方法は、複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を2以上の有機EL素子からなる複数の有機EL素子群に分けた場合に、各有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する各有機EL素子の出射光を感光体の外周面上に集光する複数のマイクロレンズと、前記複数の有機EL素子群に対応して設けられ、当該有機EL素子群に属する有機EL素子ごとに光量を検出する複数の受光素子と、前記受光素子ごとに、当該受光素子が光量を検出する有機EL素子の発光順序を記憶する記憶部と、を有し、前記感光体を露光して静電潜像を形成する光書き込み装置が使用する光量検出方法であって、前記受光素子ごとに、前記記憶部に記憶されている順番で、前記有機EL素子を順次発光させて、前記受光素子に光量を検出させる光量検出ステップと、前記受光素子ごとに、前記光量検出ステップにおいて当該受光素子が検出した光量が単調に増加または減少する有機EL素子の順序を、次の発光順序として前記記憶部に記憶させる更新ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このようにすれば、前記検出光量が単調に増加または減少すると推定される順序で、発光素子を発光させるので、発光素子の光量検出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
【
図2】光書き込み装置100の主要な光学構成を示す図である。
【
図3】G1レンズ211の主要な構成を示す平面図である。
【
図4】絞り213の主要な構成を示す平面図である。
【
図5】発光基板200の主要な構成を示す平面図である。
【
図6】(a)は発光素子510の出射光量に対する受光素子203の入射光量であるPD入射効率を説明する図であり、(b)は感光体ドラム101の外周面における露光量(PD面上光量)を発光素子510どうしで揃えた場合における、発光素子510毎の発光光量と、発光素子510毎の受光素子203の入射光量(PD入射光量)を説明するグラフである。
【
図7】制御部150の主要な構成を示すブロック図である。
【
図8】光書き込み装置100の主要な制御構成を示すブロック図である。
【
図9】(a)は増幅器803によって増幅された受光素子203の検出電位の変遷を例示するグラフであり、(b)は順番テーブル805における順番で発光素子510を点灯した場合における受光素子203の入射光量を例示するグラフである。
【
図10】光書き込み装置100の光量補正動作を説明するフローチャートである。
【
図11】本開示の変形例に係る順番テーブル805における順番で発光素子510を点灯した場合における受光素子203の入射光量を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る光書き込み装置、画像形成装置および光量検出方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置1は、所謂タンデム方式のカラープリンターであって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)各色のトナー像を形成する作像部110Y、110M、110C及び110Kを備えている。作像部110Y、110M、110C及び110Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kを有している。
【0020】
感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの周囲には外周面に沿って順に帯電装置102Y、102M、102C及び102K、光書き込み装置100Y、100M、100C及び100K、現像装置103Y、103M、103C及び103K、1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104K及びクリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kが配設されている。
【0021】
帯電装置102Y、102M、102C及び102Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を一様に帯電させる。光書き込み装置100Y、100M、100C及び100Kは、いわゆるOLED-PH(Organic Light Emitting Diode - Print Head)であって、感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を露光して静電潜像を形成する。
【0022】
現像装置103Y、103M、103C及び103KはYMCK各色のトナーを供給して静電潜像を現像し、YMCK各色のトナー像を形成する。1次転写ローラー104Y、104M、104C及び104Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kが担持するトナー像を中間転写ベルト106へ静電転写する(1次転写)。
【0023】
クリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kは、1次転写後に感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面上に残留する電荷を除電すると共に残留トナーを除去する。なお、以下において、作像部110Y、110M、110C及び110Kに共通する構成について説明する際にはYMCKの文字を省略する。
【0024】
中間転写ベルト106は、無端状のベルトであって、2次転写ローラー対107及び従動ローラー108、109に張架されており、矢印B方向に回転走行する。この回転走行に合わせて1次転写することによって、YMCK各色のトナー像が互いに重ね合わされカラートナー像が形成される。中間転写ベルト106はカラートナー像を担持した状態で回転走行することによって、カラートナー像を2次転写ローラー対107の2次転写ニップまで搬送する。
【0025】
2次転写ローラー対107を構成する2つのローラーは互いに圧接されることによって2次転写ニップを形成する。これらのローラー間には2次転写電圧が印加されている。中間転写ベルト106によるカラートナー像の搬送にタイミングを合わせて給紙トレイ120から記録シートSが供給されると、2次転写ニップにおいてカラートナー像が記録シートSに静電転写される(2次転写)。
【0026】
記録シートSは、カラートナー像を担持した状態で定着装置130まで搬送され、カラートナー像を熱定着された後、排紙トレイ140上へ排出される。
【0027】
画像形成装置1は、更に制御部150を備えている。制御部150は、PC(Personal Computer)等の外部装置から印刷ジョブを受け付けると、画像形成装置1の動作を制御して画像形成を実行させる。
【0028】
また、検出部160は、中間転写ベルト106が担持するYMCK各色のモノクロトナー像を検出する。検出部160としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサーを用いることができるが、他のセンサーを用いてもよい。
[2]光書き込み装置100の構成
次に、光書き込み装置100の構成について説明する。
【0029】
図2に示すように、光書き込み装置100は、発光基板200とマイクロレンズアレイ210とを不図示のホルダーで支持したものである。ホルダーは、ゴミが入らないように、発光基板200とマイクロレンズアレイ210とを覆っている。また、光書き込み装置100と画像形成装置1の各部とを接続するためのケーブル等についても図示が省略されている。
【0030】
マイクロレンズアレイ210は、G1レンズ211、G2レンズ212および絞り213を備えており、2枚玉のテレセントリック光学系になっている。G1レンズ211はガラス基板211bと樹脂製のマイクロレンズ211lとからなり、G2レンズ212はガラス基板212bと樹脂製のマイクロレンズ212lとからなっている。絞り213は不透明かつ平板な部材であって、光軸方向からの平面視においてマイクロレンズ211l、212lに対応する位置に貫通孔213hが設けられている。
【0031】
G1レンズ211は発光基板200の出射光を平行化し、絞り213は平行化された光の通過範囲を制限し、G2レンズ212は平行光を感光体ドラム101の外周面上に集光する。なお、G1レンズ211はガラス基板211bの両面にマイクロレンズ211lが形成されているのに対して、G2レンズ212はガラス基板212bのG1レンズ211に対向する主面にのみマイクロレンズ212lが形成されている。
【0032】
図3に示すように、G1レンズ211は主走査方向に長尺になっている。光軸方向からの平面視において、マイクロレンズ211lは主走査方向に沿って千鳥状に配列されている。本実施の形態においては、3個の結像レンズから構成された結像レンズ列301が主走査方向に沿って配設されている。マイクロレンズ211lの外径R1は数μmから数mmまでの範囲内である。G2レンズ212は光軸方向からの平面視においてG1レンズ211と同様の構成を備えている。
【0033】
図4に示すように、絞り213もまた主走査方向に長尺になっており、光軸方向からの平面視において、マイクロレンズ211l、212lに対応する位置に貫通孔213hが設けられている。このため、貫通孔列213hもまた千鳥配列になっている。貫通孔213hの外径はマイクロレンズ211lの外径よりも小さい。
【0034】
発光基板200は、ガラス基板202上に発光素子群201と当該発光素子群201の出射光を発光素子ごとに受光する受光素子203とを形成したものである。
図5に示すように、発光基板200もまた主走査方向に長尺になっており、光軸方向からの平面視において、マイクロレンズ211l、212lおよび貫通孔213hに対応する位置に発光素子群201が設けられている。すなわち、光軸方向からの平面視において、発光素子群201が主走査方向に沿って千鳥状に配列されている。
【0035】
発光素子群201はそれぞれ複数の発光素子510を千鳥配置したものである。発光素子510としてはOLEDを用いる。発光素子群201と受光素子203と組はどちらもマイクロレンズ211l、212lおよび貫通孔213hと1対1に対応しており、発光素子群201の出射光は、対応するマイクロレンズ211l、212lおよび貫通孔213hを経由して、感光体ドラム101の外周面上に発光素子510ごとに集光される。
【0036】
図6(a)に示すように、発光素子510と光学素子(マイクロレンズ211l、212lおよび貫通孔213h)並びに感光体ドラム101との位置関係は固定されているため、発光素子510毎の光学素子の集光力もまた固定されている。感光体ドラム101の外周面上での露光量のバラツキを無くすためには、発光素子510はそれぞれ光学素子の集光力に応じた光量で発光する必要がある(
図6(b))。
【0037】
また、発光素子510毎に受光素子203との位置関係が異なっているため、発光素子510の出射光量に対する受光素子203への入射する光量の割合であるPD(Photo Detector)入射効率もまた発光素子510毎に異なる。従って、発光素子510の光量検出の際には、受光素子203の検出光量とPD入射効率とを併せて考慮する必要がある(
図6(b))。
[3]制御部150の構成
次に、制御部150の構成について説明する。
【0038】
図6に示すように、制御部150は、CPU(Central Processing Unit)601、ROM(Read Only Memory)602およびRAM(Random Access Memory)603等を備えており、画像形成装置1に電源が投入されると、CPU601はROM602からブートプログラムを読み出して起動し、RAM603を作業用の記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)604から読み出したOS(Operating System)や制御プログラムを実行する。
【0039】
CPU601は、更にNIC(Network Interface Card)605を用いて、LAN607に接続されているパーソナル・コンピューター(PC: Personal Computer)等の外部装置から印刷ジョブを受け付けると、作像部110Y、110M、110Cおよび110Kや定着装置130等を制御して記録シートS上に画像を形成する。
【0040】
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)606は、光書き込み装置100に対する制御を行う。光書き込み装置100は、ドライバーIC(Integrated Circuit)610を備えている。ドライバーIC610は、ASICからの制御信号を受け付けると、発光素子510の点消灯など、光書き込み装置100の動作を制御する。
[4]光書き込み装置100の構成
次に、光書き込み装置100の構成について説明する。
【0041】
図8に示すように、光書き込み装置100にはドライバーIC610が搭載されている。ドライバー610の制御部801はASIC606から画像データを受け付けると、当該画像データから発光素子510毎のVIDEO信号を生成して、定電流源802に入力する。定電流源802が、VIDEO信号に応じた電流量の駆動電流を発光素子510に供給すると、当該駆動電流に応じた光量で発光素子510が発光する。
【0042】
発光素子510の光量検出時には、同じ光学素子(マイクロレンズ211l、212lおよび貫通孔213h)に対応する複数の発光素子510が順番に点灯し、受光素子203が発光素子510毎に光量を検出する。受光素子203の検出信号は、増幅器803によって増幅され、制御部801に入力される。このため、検出信号にはなまりが発生する。
【0043】
例えば、
図9(a)に示すように、受光素子203の検出信号が新たな受光量を検出する前の電位(以下、「検出前電位」という。)から検出後の電位(以下、「検出後電位」という。)に移行する際には、検出前電位から検出後電位に近づくに連れて、電位の変化速度が漸減するため、電位が検出後電位に収束するのに時間がかかる。
【0044】
また、検出前電位と検出後電位との電位差が大きいほど、検出前電位から検出後電位まで移行するのに要する時間が長くなる。このため、検出前電位よりも検出後電位の方が高くなったり、低くなったりを繰り返すと、電位の移行時間の総和が大きくなるので、光量検出に要する時間が長くなってしまう。
【0045】
これに対して、本実施の形態では、記憶部804に光量検出時に発光素子510を点灯させる順番を設定した順番テーブル805が記憶させており、この順番は、
図9(b)に示すように、次回の光量検出時に、受光素子203の受光素子203の入射光量(PD入射光量)の降順になると推定される順序になっている。このようにすれば、順番テーブル805で設定された順番において隣り合う発光素子510どうしで受光素子203の入射光量の差が小さくなると期待されるので、受光素子203の検出電位の差が小さくなり、検出電位の移行時間を短縮することができる。
【0046】
なお、制御部801は、受光素子203の検出電位が安定した時点で、発光中の発光素子210を消灯し、次の発光素子210を点灯する。
[5]光書き込み装置100の動作
次に、光書き込み装置100の動作について説明する。
【0047】
図10に示すように、光書き込み装置100は、紙間になると(S1001:YES)、記憶部804から順番テーブル805を読み出すとともに(S1002)、発光素子510の点灯順位を表す作業用変数iの値を1に初期化する(S1003)。
【0048】
次に、光書き込み装置100は、順番テーブル805を参照して、点灯順位がi番目の発光素子を特定し、点灯する(S1004)。その後、i番目の発光素子の出射光を受光した受光素子203の出力を増幅器803が増幅した検出電位を繰り返し参照して(S1005)、検出電位が安定したら(S1006:YES)、当該検出電位を記録して(S1007)、i番目の発光素子510を消灯する(S1008)。
【0049】
その後、点灯順位iが発光素子数N未満である場合には(S1009:YES)、点灯順位iの値を1だけ増加させて、ステップS1004に進み、上記の処理を繰り返す。また、点灯順位iが発光素子数Nに達した場合には(S1009:NO)、発光素子510毎に記録しておいた検出電位を読み出して、当該発光素子510の駆動電流量を補正する(S1010)。
【0050】
例えば、発光素子510毎の検出電位から発光素子510毎に受光素子203に入射した光量を求め、当該入射光量をPD入射効率で除算して発光素子510毎の出射光量を求める。次に、発光素子510毎の出射光量に発光素子510毎のレンズ効率を乗算して発光素子510毎の露光量を求めて、発光素子510どうしで共通の露光量の目標値と比較し、当該発光素子510の駆動電流量を補正する。
【0051】
なお、発光素子510毎にレンズ効率を記憶して、発光素子510毎に出射光量から露光量を算出するのに代えて、発光素子510毎に予め出射光量の目標値を記憶しておいてもよい。
【0052】
また、発光素子510毎に記録しておいた検出電位を読み出して、当該検出電位の降順になるように、順番テーブル805の順番を設定し直して(S1011)、ステップS1001へ進み、上記の処理を繰り返す。画像形成装置1の使い方が一定の傾向を有している場合には、次回の光量検出時にも今回の検出するであろう光量と同様の大小関係を有する光量が検出される可能性が高いと推定される。
【0053】
従って、今回の検出光量の降順を順番テーブル805の順番に設定すれば、順番テーブル805における順番において前後する発光素子510どうしで検出電位の差が小さくなるので、発光素子510の光量検出に要する時間を最小化することができる。
[6]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(6-1)上記実施の形態においては、発光素子510ごとの検出電位が低くなる順番になるように、順番テーブル805を設定する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて
図11に示すように、発光素子510ごとの検出電位が高くなる順番になるように、順番テーブル805を設定してもよい。このようにしても、順番テーブル805における順番において前後する発光素子510どうしで検出電位の差が小さくなるので、発光素子510の光量検出に要する時間を最小化することができる。
(6-2)上記実施の形態においては、ステップS1011において、発光素子510毎の検出電位の順に順番テーブル805の順番を設定し直す場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0054】
例えば、ステップS1010において補正後の駆動電流量から予測される発光素子510毎の出射光量にPD入射効率を乗算して受光素子203への入射光量を算出し、当該入射光量の順に順番テーブル805の順番を設定し直してもよい。
(6-3)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、光書き込み装置100の出荷前に、発光素子510を順次発光させて、受光素子203に入射光量を検出させ、受光素子203による検出光量の降順または昇順で、発光素子510の番号を順番テーブル805に記憶させてもよい。
【0055】
また、受光素子203に入射光量を検出させる代わりに、発光素子510毎のレンズ効率の逆数に、発光素子510毎のPD入射効率を乗算した値を算出して、当該算出値の降順または昇順で、発光素子510の番号を順番テーブル805に記憶させてもよい。
(6-4)本開示は、光書き込み装置100の制御部701が使用する方法であるとしてもよい。
(6-5)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、タンデム方式以外のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。
【0056】
また、スキャナーを備えたコピー装置や、ファクシミリ通信機能を備えたファクシミリ装置に本開示を適用してもよいし、これらの機能を兼ね備えた複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)に本開示を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示に係る光書き込み装置および画像形成装置は、発光素子の光量補正のための光量検出を短時間が完了することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0058】
1………画像形成装置
100…光書き込み装置100
203…受光素子
510…発光素子
803…増幅器
805…順番テーブル