(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20231205BHJP
B29C 64/343 20170101ALI20231205BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231205BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231205BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231205BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231205BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/343
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019214120
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功一
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0028646(US,A1)
【文献】特開2019-025772(JP,A)
【文献】特開2017-217911(JP,A)
【文献】特開2020-001368(JP,A)
【文献】特開2009-095740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定する重量測定部と、
前記吐出部および前記重量測定部を制御して、ステージの造形領域に前記造形材料の層を積層して三次元造形物を造形する制御部と、
前記造形領域と異なる領域に設けられるテーブルと、
を備え、
前記重量測定部は、前記吐出部から前記テーブル上に吐出された前記造形材料の重量を測定し、
前記制御部は、
前記テーブル上に前記吐出部から前記造形材料を吐出することによって前記吐出部を清掃する第1清掃処理を行い、前記重量測定部によって測定された、
前記第1清掃処理において前記テーブル上に吐出された前記造形材料の重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御する、
三次元造形装置。
【請求項2】
造形材料を吐出する吐出部と、
前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定する重量測定部と、
前記吐出部および前記重量測定部を制御して、ステージの造形領域に前記造形材料の層を積層して三次元造形物を造形する制御部と、を備え、
前記重量測定部は、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量を測定し、
前記制御部は、
前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量に基づいて前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御し、
前記制御部は、
前記造形領域に前記層を造形するごとに、前記層を構成する前記造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に前記造形材料を吐出させる、
三次元造形装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形領域に前記層を積層するごとに、前記第1清掃処理を行う、
三次元造形装置。
【請求項4】
請求項
2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記層を造形するごとに、前記造形領域と異なる領域に前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を、前記重量測定部によって測定する、
三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記吐出部は、材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部を備え、
前記可塑化部は、スクリューを有し、
前記制御部は、前記スクリューの回転数を制御して前記吐出部から吐出する前記造形材料の量を調整する、
三次元造形装置。
【請求項6】
吐出部から造形材料をステージ上の造形領域に吐出し、前記造形領域に前記造形材料を
積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記造形領域と異なる領域に設けられるテーブル上に前記吐出部から前記造形材料を吐出することによって前記吐出部を清掃する第1清掃処理を行い、
前記吐出部から
前記テーブルに吐出された前記造形材料の重量を測定し、
前記第1清掃処理において
前記テーブル上に吐出された前記造形材料の重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御して、前記三次元造形物を製造する、
三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
吐出部から造形材料をステージ上の造形領域に吐出し、前記造形領域に前記造形材料の層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量を測定し、
前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御して三次元造形物を製造し、
前記造形領域に前記層を造形するごとに、前記層を構成する前記造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に前記造形材料を吐出させる、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、立体造形物の製造装置に関して、造形ステージ上に溶媒および硬化性液体材料を含む液体を付与して成膜し、造形ステージにおいて膜の質量を測定し、膜の質量変化に応じて液体の付与量を調整する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、ステージ上に成膜された膜の質量変化に応じて液体の付与量を調整することによって、膜中の溶媒量を調整し、立体造形物として造形される膜の造形精度を向上させている。しかしながら、三次元造形装置においては、ノズル詰まりや造形環境などによって、そもそも意図した量の材料を吐出できていない場合がある。意図した量の材料を吐出できていない場合、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等によって、造形精度に影響が及ぶ可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、造形材料を吐出する吐出部と、前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定する重量測定部と、前記吐出部および前記重量測定部を制御して、ステージの造形領域に前記造形材料の層を積層して三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記重量測定部を制御して前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定し、前記重量測定部によって測定された重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本実施形態における吐出部の概略構成を示す説明図である。
【
図3】フラットスクリューの溝形成面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図4】バレルのスクリュー対向面側の構成を示す上面図である。
【
図5】第1実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。
【
図6】第2実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。
【
図8】第3実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。
【
図9】第3実施形態における三次元造形処理を説明する模式図である。
【
図10】第4実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。
【
図11】第5実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図12】第6実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。本実施形態における三次元造形装置100は、吐出部200と、ステージ300と、移動機構400と、重量測定部500と、制御部700とを備える。三次元造形装置100は、制御部700の制御下で、吐出部200から、ステージ300に向かって造形材料を吐出しつつ、移動機構400によって、吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させることによって、ステージ300上に所望の形状の三次元造形物を造形する。なお、吐出部200の詳細な構成については後述する。
【0008】
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向を両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0009】
移動機構400は、吐出部200とステージ300とのそれぞれを移動させることによって、吐出部200とステージ300との三次元的な相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、吐出部200を移動させる第1移動機構410と、ステージ300を移動させる第2移動機構420とによって構成されている。第1移動機構410は、吐出部200をX方向とY方向との2軸方向に移動可能に構成されている。第2移動機構420は、ステージ300をZ方向に移動可能に構成されている。第1移動機構410および第2移動機構420は、それぞれを駆動する各モーターの駆動力によって移動する。各モーターは、制御部700の制御下で駆動する。なお、他の実施形態では、吐出部200を移動させずに、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させることによって、吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。また、ステージ300を移動させずに、吐出部200をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させることによって、吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。なお、ステージ300に対する吐出部200の相対的な位置の変化を、吐出部200の移動と呼ぶこともある。
【0010】
本実施形態では、重量測定部500は、ステージ300の下方に設けられ、ステージ300の下方からステージ300を支持している。重量測定部500は、第2移動機構420によるステージ300の移動に伴って、Z方向に移動する。重量測定部500は、ステージ300上の造形材料の重量を測定する。
【0011】
本実施形態の重量測定部500は、重量センサー510と、断熱部520と、支持部530と、を備える。支持部530は、第2移動機構420に接続されるとともに、重量センサー510を下方から支持する。支持部530は、ネジ511を備える。ユーザーは、例えば、支持部530の上方に位置する重量センサー510やステージ300がXY平面に対して傾いている場合、ネジ511を回転させることによって傾きを補正することができる。重量センサー510は、ロードセル方式の重量センサーであり、ステージ300上の造形材料の重量を測定する。断熱部520は、重量センサー510とステージ300とを接続する。断熱部520はステージ300を下方から支持するとともに、ステージ300から重量センサー510への伝熱を抑制する。他の実施形態では、重量センサー510はロードセル方式以外の重量センサーであってもよい。例えば、電磁力平衡式であってもよいし、金属音叉式であってもよい。
【0012】
制御部700は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部700は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。尚、制御部700は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態における吐出部200の概略構成を示す説明図である。本実施形態における吐出部200は、材料供給部20と、可塑化部30と、ノズル65とを、備えている。
【0014】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成された樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。なお、材料の詳細については後述する。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50とを、備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させ、流動性を有するペースト状の造形材料を生成し、生成した造形材料をノズル65に供給する。なお、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現する「可塑化」をも意味する。
【0016】
スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容するための筐体である。スクリューケース31の下面には、バレル50が固定されており、スクリューケース31とバレル50とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー40が収容されている。スクリューケース31の上面には、駆動モーター32が固定されている。駆動モーター32の回転軸は、フラットスクリュー40の上面41側に接続されている。
【0017】
駆動モーター32は、制御部700の制御下で駆動される。駆動モーター32が制御されることによって、フラットスクリュー40の回転数が制御される。フラットスクリュー40の回転数が制御されることによって、吐出部200から吐出される造形材料の量が調整される。具体的には、フラットスクリュー40の回転数が増加した場合、吐出部200から吐出される造形材料の量は増加する。フラットスクリュー40の回転数が減少した場合、吐出部200から吐出される造形材料の量は減少する。
【0018】
フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸RXがZ方向に平行になるように、スクリューケース31内に配置されている。駆動モーター32が発生させるトルクによって、フラットスクリュー40は、スクリューケース31内にて、中心軸RXを中心に回転する。フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向における上面41とは反対側に、溝部45が形成された溝形成面42を有している。なお、フラットスクリュー40の溝形成面42側の具体的な構成については後述する。
【0019】
バレル50は、フラットスクリュー40の下方に配置されている。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50には、フラットスクリュー40の中心軸RX上に、ノズル65に連通する連通孔56が設けられている。バレル50には、フラットスクリュー40の溝部45に対向する位置にヒーター58が内蔵されている。ヒーター58の温度は、制御部700によって制御される。なお、バレル50のスクリュー対向面52側の具体的な構成については後述する。
【0020】
ノズル65は、バレル50の下方に配置されている。ノズル65と、バレル50に設けられた連通孔56との間には、ノズル65と連通孔56を連通させる流路である供給流路61が設けられている。可塑化部30によって生成された造形材料は、連通孔56と供給流路61とを介して、ノズル65へと供給される。
【0021】
ノズル65には、ノズル流路68と、ノズル孔69とが設けられている。ノズル流路68は、ノズル65内に設けられた流路である。ノズル流路68は、供給流路61に接続されている。ノズル孔69は、ノズル流路68の大気に連通する側の端部に設けられた流路断面が縮小された部分である。供給流路61からノズル流路68に供給された造形材料は、ノズル孔69から吐出される。本実施形態では、ノズル孔69の開口形状は円形である。なお、ノズル孔69の開口形状は円形に限られず、例えば、四角形や、四角形以外の多角形であってもよい。
【0022】
図3は、フラットスクリュー40の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。
図3には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。
図2を参照して説明したように、溝形成面42には、溝部45が設けられている。
【0023】
フラットスクリュー40の溝形成面42の中央部47は、溝部45の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部47は、
図2に示されているバレル50の連通孔56に対向する。中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0024】
フラットスクリュー40の溝部45は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部45は、中央部47から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部45は、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、溝部45の側壁部を構成し、各溝部45に沿って延びている凸条部46が設けられている。
【0025】
溝部45は、フラットスクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0026】
図3には、3つの溝部45と、3つの凸条部46と、を有するフラットスクリュー40の例が示されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部45や凸条部46の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部45が設けられていてもよい。また、溝部45の数に合わせて任意の数の凸条部46が設けられてもよい。
【0027】
図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料導入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0028】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、ノズル65に連通する連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、造形材料を効率良く連通孔56へと到達させるために、バレル50には案内溝54が形成されていると好ましいが、案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0029】
図5は、本実施形態における、三次元造形物の製造方法を実現する三次元造形処理を示す工程図である。三次元造形処理は、三次元造形装置100に設けられた操作パネルや、三次元造形装置100に接続されたコンピューターに対して、ユーザーによる所定の開始操作が行われた場合に、制御部700によって実行される。三次元造形処理が実行されることによって、三次元造形装置100による三次元造形物の造形が開始される。制御部700は、三次元造形処理において、吐出部200および重量測定部500を制御して、ステージ300の造形領域に造形材料の層を積層して、三次元造形物を造形する。なお、三次元造形処理のことを、単に造形処理と呼ぶこともある。
【0030】
ステップS110にて、制御部700は、形状データを取得する。制御部700は、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USBメモリー等の記録媒体から、三次元CADソフトや三次元CGソフトを用いて作成された三次元造形物の形状を表す形状データを読み込む。
【0031】
ステップS120にて、制御部700は、造形データを生成する。制御部700は、形状データ上の三次元造形物を所定の厚みの層に分割して、造形データを生成する。
【0032】
ステップS130にて、制御部700は、吐出部200および移動機構400を制御することによって、ステージ300上に造形材料の層を積層する。具体的には、制御部700は、造形データに従って、移動機構400を適宜制御して吐出部200を移動させながら、フラットスクリュー40の回転数を制御してノズル65から吐出される造形材料の量を調整しつつ、ノズル65からステージ300の造形領域に向かって造形材料を吐出させ、造形材料の層を積層する。なお、造形領域とは、ステージ300上のうち、三次元造形物が造形される領域のことを指す。
【0033】
ステップS140にて、制御部700は、重量測定部500を制御して、ステップS130において造形領域に吐出された造形材料の重量である第1重量を測定する。本実施形態では、制御部700は、1つのパス分を造形するごとに、重量測定部500によって、第1重量を測定する。なお、パスとは、吐出部200が連続的に造形材料を吐出しながら移動する経路である。また、他の実施形態では、1つのパス分を造形するごとに第1重量を測定しなくてもよい。例えば、三次元造形物の1層分や、複数の層分を造形するごとに第1重量を測定してもよいし、所定の時間ごとに第1重量を測定してもよい。
【0034】
ステップS150にて、制御部700は、造形材料の重量が適正であるか否か判断する。具体的には、制御部700は、第1重量に基づいて、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断する。本実施形態では、制御部700は、第1重量と、ステップS110で取得する形状データから計算される第2重量と、を比較する。制御部700は、第1重量と第2重量とが一致する場合に造形材料の重量が適正であると判断し、第1重量と第2重量とが一致しない場合に、造形材料の重量が適正でないと判断する。すなわち、本実施形態では、「予め定められた量」は、第2重量分の造形材料の量であると言うこともできる。なお、第2重量としては、例えば、形状データ上の三次元造形物の体積に造形材料の密度を乗じて得られる重量を用いることができる。本実施形態では、制御部700は、1つのパスごとに造形材料の重量を測定するため、第2重量として、形状データ上の三次元造形物のうち当該パスに対応する部分の重量を計算する。また、「一致」とは、予め定められた誤差範囲内で、複数の値が一致することを指す。
【0035】
制御部700は、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断した結果を、記録してもよい。例えば、あるパスにおいて、第2重量に対して第1重量が不足している場合、当該パスにおける空隙の有無として記録してもよい。また、パスごとの第2重量に対する第1重量の比を、造形密度として記録してもよい。ユーザーは、例えば、これらの記録に基づいて、完成した三次元造形物の造形精度を評価してもよい。
【0036】
ステップS150において、造形材料の重量が適正でないと判断された場合、ステップ
ステップS160にて、制御部700は、可塑化部30に設けられたフラットスクリュー40の回転数を調整する。例えば、第1重量が第2重量より少ない場合、制御部700はフラットスクリュー40の回転数を増加させるよう、駆動モーター32を制御する。その後、制御部700は、ステップS130に戻り、ステップS160の処理に基づいてフラットスクリュー40の回転数を制御しながら、造形材料を積層する。
【0037】
ステップS150において、造形材料の重量が適正であると判断された場合、ステップS170にて、制御部700は、三次元造形物が完成したか否かを判断する。制御部700は、三次元造形物が完成したと判断した場合、三次元造形処理を終了させる。三次元造形物が完成していないと判断された場合、制御部700は、ステップS130に戻り、造形材料の積層を継続させる。制御部700は、三次元造形物が完成するまで上記のステップS130からステップS170までの処理を繰り返すことによって、三次元造形物を完成させる。
【0038】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置によれば、制御部700は、重量測定部500によって測定される重量に基づいて、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断し、予め定められた量の造形材料が吐出されていないと判断した場合、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されるように吐出部200を制御する。そのため、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、制御部700は、吐出部200から造形領域に造形材料を吐出させつつ、造形領域に吐出された造形材料の重量を重量測定部500によって測定し、予め定められた量の造形材料が吐出されていないと判断した場合、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されるように吐出部200を制御しながら、造形領域に吐出部200から造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する。これによって、予め定められた量の造形材料が吐出されているかが繰り返し判断されるため、三次元造形物の造形精度がより向上する。
【0040】
また、本実施形態では、制御部700は、三次元造形物の形状を表す形状データから計算される重量と、重量測定部500によって測定される重量と、を比較して、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断する。そのため、形状データ上の三次元造形物と実際に造形される三次元造形物との間で生じる差違を小さくできる。
【0041】
また、本実施形態では、制御部700は、可塑化部30に設けられたフラットスクリュー40の回転数を制御して吐出部200から吐出する造形材料の量を調整する。そのため、簡易な構成で、吐出部200から吐出される造形材料の量を調節することができる。
【0042】
ここで、上述した三次元造形装置100において用いられる三次元造形物の材料について説明する。三次元造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0043】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。
【0044】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0045】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル65から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0046】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル65から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂を用いる場合、ノズル65からの吐出時には約200℃であることが望ましい。
【0047】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、材料MRとして可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0048】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ300上に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0049】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0050】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0051】
その他に、材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0052】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態における三次元造形装置100bの概略構成を示す説明図である。三次元造形装置100bは、第1実施形態の三次元造形装置100と異なり、造形領域と異なる領域にテーブル350を備える。また、移動機構400bや重量測定部500bの構成の一部が、第1実施形態とは異なる。なお、三次元造形装置100bの特に説明しない部分については、第1実施形態と同様の構成である。
【0053】
テーブル350は、XY平面に沿った方向に広がる平板形状を有する。本実施形態では、テーブル350は、吐出部200と対向可能であり、ステージ300と重ならない位置に配置されている。テーブル350上には、後述する第1清掃処理において、吐出部200から造形材料が吐出される。なお、テーブル350は、テーブル350上に造形材料を留めることができれば他の形状であってもよく、例えば、+Z方向が開口した箱状であってもよい。
【0054】
第1実施形態の重量測定部500は、ステージ300の下方からステージ300を支持し、ステージ300上の造形材料の重量を測定する。これに対して、第2実施形態の重量測定部500bは、テーブル350の下方からテーブル350を支持し、テーブル350上の造形材料の重量を測定する。すなわち、本実施形態では、重量測定部500bは、ステージ300上の造形材料の重量を測定しない。また、重量測定部500bは、ロードセル方式の重量センサーで構成されており、断熱部520や支持部530を備えていない。
【0055】
第2実施形態の第2移動機構420bは、ステージ300に加え、テーブル350をもZ方向に移動可能に構成されている。ステージ300とテーブル350とは、1つのモーターの駆動力によって同時に移動する。他の実施形態では、重量測定部500bは、ステージ300上の造形材料とテーブル350上の造形材料の両方を測定可能に構成されていてもよい。また、第2移動機構420bは、ステージ300とテーブル350とをそれぞれ独立して移動可能に構成されていてもよい。
【0056】
図7は、第2実施形態における、三次元造形物の製造方法を実現する三次元造形物の造形処理を示す工程図である。なお、ステップS210からステップS230までの工程は、
図5に示した第1実施形態におけるステップS110からステップS130までの工程と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
ステップS240にて、制御部700は、三次元造形物の1層分が完成したか否かを判断する。制御部700は、1層分が完成していないと判断した場合、再びステップS230に戻り、造形材料の積層を継続させる。
【0058】
ステップS240において、三次元造形物の1層分が完成したと判断された場合、ステップS250にて、制御部700は、三次元造形物が完成したか否かを判断する。制御部700は、三次元造形物が完成したと判断した場合、三次元造形処理を終了させる。
【0059】
ステップS250において、三次元造形物が完成していないと判断された場合、ステップS260にて、制御部700は、第1清掃処理を実行する。具体的には、制御部700は、まず、移動機構400を制御することによって、吐出部200をテーブル350の上方に位置させる。その後、制御部700は、テーブル350に向かって吐出部200から造形材料を吐出させ、吐出部200内を清掃する。第1清掃処理において、制御部700は、吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されるように、吐出部200を制御する。なお、第1清掃処理とは、三次元造形処理の前や三次元造形処理中の予め定められた期間において、制御部700がテーブル350上に吐出部200から造形材料を吐出させることによって、吐出部200を清掃する処理のことを指す。
【0060】
ステップS270にて、制御部700は、重量測定部500bによって、ステップS260の第1清掃処理においてテーブル350上に吐出された造形材料の重量を測定する。
【0061】
ステップS280にて、制御部700は、造形材料の重量が適正であるか否か判断する。制御部700は、ステップS270において重量測定部500bによって測定される造形材料の第3重量が、第1清掃処理において吐出部200から吐出されると想定される造形材料の第4重量と一致する場合、造形材料の重量が適正であると判断し、第3重量と第4重量とが一致しない場合に、造形材料の重量が適正でないと判断する。制御部700は、造形材料の重量が適正であると判断した場合、ステップS230に戻り、造形材料の積層を継続させる。
【0062】
ステップS280において、造形材料の重量が適正でないと判断された場合、制御部700は、可塑化部30に設けられたフラットスクリュー40の回転数を調整する。例えば、第3重量が第4重量より少ない場合、制御部700はフラットスクリュー40の回転数を増加させるよう、駆動モーター32を制御する。その後、制御部700は、ステップS230に戻り、ステップS280の処理に基づいてフラットスクリュー40の回転数を制御しながら、造形材料を積層する。
【0063】
なお、ステップS260からステップS290までの処理は、繰り返し実行されてもよい。例えば、吐出部200内を効果的に清掃するために、ステップS260からステップS290までの処理を、2回以上繰り返してもよい。
【0064】
以上で説明した第2実施形態の三次元造形装置100bによっても、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。特に、本実施形態では、造形領域と異なる領域に吐出された造形材料の重量に基づいて、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否か判断し、造形領域で吐出部200から予め定められた量の造形材料が吐出されるように吐出部200を制御することができる。
【0065】
また、本実施形態では、制御部700は、第1清掃処理において、テーブル350上に吐出された造形材料の重量に基づいて、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断する。そのため、吐出部200を清掃しつつ、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0066】
また、本実施形態では、制御部700は、造形領域に三次元造形物の層を積層するごとに、第1清掃処理を行う。そのため、層を積層するごとに吐出部200を清掃し、かつ、層を積層するごとに予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0067】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態における、三次元造形物の製造方法を実現する三次元造形物の造形処理を示す工程図である。なお、第3実施形態における三次元造形装置100の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、ステップS310からステップS350までの工程は、
図7に示した第2実施形態におけるステップS210からステップS250までの工程と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
図9は、第3実施形態における三次元造形処理を説明する模式図である。
図9には、ステージ300の造形領域に三次元造形物OAが造形され、ステージ300のうち造形領域とは異なる領域に非造形物OBが造形されている途中の様子が示されている。ステップS350において、三次元造形物OAが完成していないと判断した場合、ステップS360にて、制御部700は非造形物OBを形成する。
【0069】
具体的には、制御部700は、ステップS360では、三次元造形物OAの層を構成する造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、造形領域と異なる領域に吐出部200から造形材料を吐出させ、造形領域と異なる領域に非造形物OBを形成する。これによって、三次元造形物OAの固化していない層の上に造形材料が吐出されることが抑制されるため、三次元造形物OAの造形精度を高めることができる。さらに、三次元造形物OAが固化するまでの間も、吐出部200から造形材料が吐出されるため、吐出部200内での造形材料の滞留が抑制される。なお、「固化」とは、吐出部200から吐出された造形材料が流動性を失うことを指す。本実施形態では、造形材料は、冷えることによって可塑性を失って固化する。
【0070】
図9を用いて、ステップS360の詳細を説明する。
図9には、5層目A5の積層が完了した三次元造形物OAと、5層目B5の積層が行われている途中の非造形物OBが示されている。このとき、三次元造形物OAの5層目A5を構成する造形材料は、固化している途中である。すなわち、非造形物OBの5層目B5は、三次元造形物OAの5層目A5が固化する期間の間に形成されている。なお、非造形物OBの1層目から4層目までについても、三次元造形物OAの1層目から4層目までがそれぞれ固化する期間の間に形成されている。また、三次元造形物OAの6層目以降を造形する場合も、非造形物OBの6層目以降が同様に形成される。
【0071】
本実施形態では、制御部700は、ステップS360において、予め定められた形状の非造形物OBを形成する。そのため、制御部700は、非造形物OBの一層分や非造形物OBの全部を形成するのに要すると想定される造形材料の重量を算出することができる。具体的には、非造形物OBは、造形中の三次元造形物OAと略等しい高さを有する略四角柱形状に形成される。造形材料を積層して略柱状に形成された非造形物OBのことを、プライムピラーと呼ぶこともある。なお。非造形物OBは他の形状であってもよい。例えば、略円柱状のプライムピラーであってもよいし、略柱状でなくてもよい。
【0072】
ステップS370にて、制御部700は、重量測定部500によって、ステップS360において造形領域とは異なる領域に吐出された造形材料の重量を測定する。
【0073】
ステップS380にて、制御部700は、造形材料の重量が適正であるか否か判断する。本実施形態では、制御部700は、ステップS370において重量測定部500bによって測定される造形材料の第5重量が、ステップS360において吐出部200から吐出されると想定される造形材料の第6重量と一致する場合、造形材料の重量が適正であると判断し、第5重量と第6重量とが一致しない場合に、造形材料の重量が適正でないと判断する。制御部700は、造形材料の重量が適正であると判断した場合、ステップS330に戻り、造形材料の積層を継続させる。
【0074】
ステップS380において、造形材料の重量が適正でないと判断した場合、制御部700は、可塑化部30に設けられたフラットスクリュー40の回転数を調整する。例えば、第5重量が第6重量より少ない場合、制御部700はフラットスクリュー40の回転数を増加させるよう、駆動モーター32を制御する。その後、制御部700は、ステップS330に戻り、ステップS380の処理に基づいてフラットスクリュー40の回転数を制御しながら、造形材料を積層する。
【0075】
なお、ステップS350において三次元造形物OAが完成していないと判断された場合に、ステップS360からステップS390の処理が繰り返し実行されてもよい。例えば、制御部700は、ステップS360において非造形物OBの1層分を形成する間に、ステップS370からステップS390までを繰り返すことによって、非造形物OBを形成しつつ、吐出部200から吐出される造形材料の量を調整することができる。
【0076】
以上で説明した第3実施形態の三次元造形装置100によっても、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。特に、本実施形態では、三次元造形物OAの層を構成する造形材料を固化させている間に吐出部200から吐出される造形材料の重量に基づいて、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0077】
また、本実施形態では、三次元造形物OAの層を造形するごとに、造形領域と異なる領域に吐出部200から吐出された造形材料の重量を、重量測定部500によって測定する。そのため、層を積層するごとに予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0078】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態における、三次元造形物の製造方法を実現する三次元造形物の造形処理を示す工程図である。なお、第4実施形態における三次元造形装置100の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、ステップS410からステップS450までの工程は、
図5に示した第1実施形態におけるステップS110からステップS150までの工程と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
ステップS450において、造形材料の重量が適正でないと判断した場合、ステップS460にて、制御部700は、造形材料の重量が不足しているか否かを判断する。「造形材料の重量が不足している」状態とは、吐出部200から吐出された造形材料の量が、予め定められた量より少ない状態を指す。具体的には、制御部700は、ステップS440において重量測定部500によって測定された造形材料の第1重量が、形状データから計算される第2重量を下回る場合に、造形材料の重量が不足していると判断する。
【0080】
ステップS460において、造形材料の重量が不足していないと判断された場合、ステップS470にて、制御部700は、可塑化部30に設けられたフラットスクリュー40の回転数を調整する。この場合、本実施形態では、第1重量が第2重量より多いため、制御部700はフラットスクリュー40の回転数を減少させるよう、駆動モーター32を制御する。その後、制御部700は、ステップS430に戻り、ステップS470の処理に基づいてフラットスクリュー40の回転数を制御しながら、造形材料を積層する。
【0081】
ステップS460において、造形材料の重量が不足していると判断された場合、ステップS480にて、制御部700は、第2清掃処理を実行する。具体的には、制御部700は、まず、移動機構400を制御することによって、吐出部200を、ステージ300のうち造形領域と異なる領域の上方に位置させる。その後、制御部700は、造形領域と異なる領域に向かって吐出部200から造形材料を吐出させ、吐出部200内を清掃する。なお、第2清掃処理とは、制御部700が、造形材料の量が予め定められた量より少ないと判断した場合に、造形材料とは異なる領域に吐出部200から造形材料を吐出させることによって、吐出部200を清掃する処理のことを指す。その後、制御部700は、ステップS430に戻り、造形材料を積層する。
【0082】
以上で説明した第4実施形態の三次元造形装置100によっても、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。特に、本実施形態では、吐出部200から吐出された造形材料の量が予め定められた量より少ないと判断された場合に、第2清掃処理が実行される。これによって、吐出部200内に滞留している造形材料を吐出部200外へと排出させ、吐出部200から吐出される造形材料の量を、予め定められた量に近付くように増加させることができる。
【0083】
E.第5実施形態:
図11は、第5実施形態における三次元造形装置100eの概略構成を示す説明図である。三次元造形装置100eは、第1実施形態の三次元造形装置100とは異なり、線幅測定部550を備える。
【0084】
線幅測定部550は、吐出部200から吐出された造形材料の線幅を測定する。本実施形態では、線幅測定部550は、吐出部200eのうち、バレル50の下方に設けられている。線幅測定部550はレーザー発振部とレーザー受光部を備える。線幅測定部550は、ステージ300上の造形領域に吐出された造形材料に向けてレーザーを照射し、照射したレーザーを受光することによって、造形材料の線幅を測定する。なお、造形材料の線幅とは、ノズル孔69から吐出される造形材料の、吐出部200eの走査方向と交わる方向における長さである。吐出部200の走査方向とは、吐出部200eが造形材料を吐出しながら移動する方向のことを指す。具体的には、線幅測定部550は、造形材料にレーザーを照射しながら、照射したレーザーを走査方向と交わる方向に走査させることによって、造形材料の線幅を測定する。
【0085】
制御部700は、例えば、重量測定部500による重量測定後に線幅測定部550による線幅測定を行うことによって、三次元造形物の状態を空間的に検知し、三次元造形物の造形精度を更に向上させることができる。他の実施形態では、制御部700は、三次元造形処理中の所定の時期に、所定回数、線幅測定を行い、測定ごとに線幅測定の結果を記録してもよい。この場合、ユーザーは、例えば、完成した三次元造形物の造形精度を、記録された線幅に基づいて評価してもよい。また、造形中の三次元造形物に生じている空隙や、造形密度を記録してもよい。
【0086】
以上で説明した第5実施形態の三次元造形装置100eによっても、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。特に、本実施形態では、線幅測定部550によって造形材料の線幅を測定することで、三次元造形物の造形精度を更に向上させることができる。
【0087】
F.第6実施形態:
図12は、第6実施形態における三次元造形物の造形処理を示す工程図である。なお、第6実施形態における三次元造形装置100の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、ステップS510からステップS530までの工程は、
図5に示した第1実施形態におけるステップS110からステップS130までの工程と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
ステップS540にて、制御部700は、三次元造形物が完成したか否かを判断する。制御部700は、三次元造形物が完成していないと判断した場合、ステップS530に戻り、造形材料の積層を継続させる。
【0089】
ステップS540において、三次元造形物が完成したと判断された場合、ステップS550にて、制御部700は、ステージ300の造形領域に吐出された造形材料の第7重量を、重量測定部500によって測定する。すなわち、ステップS540において、第7重量として、完成した三次元造形物の重量が測定される。
【0090】
ステップS560にて、制御部700は、重量が適正であるか否かを判断する。本実施形態では、制御部700は、第7重量と、ステップS510で取得するデータから計算される第8重量とを、比較する。制御部700は、第7重量と第8重量とが一致する場合に造形材料の重量が適正であると判断し、第7重量と第8重量とが一致しない場合に、造形材料の重量が適正でないと判断する。すなわち、本実施形態では、「予め定められた量」は、第8重量分の造形材料の量であると言うこともできる。第8重量としては、形状データ上の三次元造形物の体積に造形材料の密度を乗じて得られる重量を用いることができる。本実施形態では、形状データ上の三次元造形物を完成させる際に、吐出されると想定される造形材料の重量を計算する。制御部700は、ステップS560において、重量が適正であると判断した場合、三次元造形処理を終了させる。
【0091】
ステップS560において、重量が適正でないと判断された場合、ステップS570にて、制御部700は形状データを修正する。具体的には、制御部700は、第7重量および第8重量に基づいて形状データを修正する。例えば、制御部700は、第7重量に対する第8重量の比を算出し、修正前の形状データに含まれる三次元造形物の高さデータに算出した比を乗じ、形状データに含まれる三次元造形物の高さデータを修正する。これによって、修正された形状データが生成される。その後、制御部700は、三次元造形処理を終了させる。
【0092】
制御部700は、三次元造形処理の終了後、当該三次元造形処理で造形する三次元造形物と同じ三次元造形物を造形するための三次元造形処理を新たに開始した場合、修正された形状データを用いることができる。すなわち、制御部700は、修正された形状データに基づいて、修正された造形データを生成し、修正された造形データに基づいて、吐出部200を制御して三次元造形物を造形できる。これによって、造形される三次元造形物の精度を向上させることができる。なお、修正された造形データは、造形データの一部を修正することによって生成されたデータであってもよいし、修正された形状データに基づいて新たに生成されたデータであってもよい。
【0093】
以上で説明した第6実施形態の三次元造形装置100によっても、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。特に、本実施形態では、修正された形状データに基づいて生成された、修正された造形データに基づいて吐出部200を制御することで、簡易な制御によって、造形精度を向上させることができる。
【0094】
なお、三次元造形処理の終了後、当該三次元造形処理で造形する三次元造形物と異なる、新たな三次元造形物を造形するための三次元造形処理を新たに開始してもよい。この場合、例えば、ステップS510で、制御部700は、当該三次元造形処理で造形する三次元造形物の形状データに加え、新たな三次元造形処理で造形する三次元造形物の形状データを取得する。さらに、ステップS570において、制御部700は、例えば、第7重量に対する第8重量の比を算出し、新たな三次元造形物の修正前の形状データに含まれる高さデータに算出した比を乗じ、形状データに含まれる高さデータを修正する。これによって、新たな三次元造形物の形状データが、第7重量および第8重量に基づいて修正される。その後、制御部700は、修正された形状データに基づいて生成された、修正された造形データに基づいて吐出部200を制御することで、簡易な制御によって、新たな三次元造形物の造形精度を向上させることができる。なお、制御部700は、新たな三次元造形物の形状データをステップS510で取得せず、例えば、ステップS570で形状データを修正する直前に取得してもよい。
【0095】
また、例えば、第1実施形態のように、三次元造形物を造形する間に造形領域に吐出された造形材料の重量を重量測定部500によって測定する形態であっても、第1重量および第2重量に基づいて、形状データを修正することができる。例えば、制御部700は、第1重量に対する第2重量の比を算出し、修正前の形状データに含まれる三次元造形物の高さデータに算出した比を乗じ、形状データに含まれる三次元造形物の高さデータを修正する。これによって、修正された形状データが生成される。その後、制御部700は、修正された造形データに基づいて吐出部200を制御して、造形材料を積層させることによって、三次元造形物を造形する。このように、制御部700が形状データを修正しつつ、三次元造形物を造形する場合であっても、三次元造形物の造形精度を向上させることができる。
【0096】
G.他の実施形態:
(G-1)上記実施形態において、制御部700は、重量測定部500によって測定される第1重量と、形状データから計算される第2重量と、を比較して、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断している。これに対して、例えば、制御部700は、第1重量と、造形データから計算される重量と、を比較して、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断してもよい。
【0097】
(G-2)上記実施形態において、制御部700は、造形データを生成している。これに対して、制御部700は、造形データを生成しなくてもよい。この場合、制御部700は、形状データを取得しなくてもよい。例えば、スライサーソフトが形状データを読み込み、形状データに基づいて造形データを生成してもよい。更に、制御部700とは別体に備えられたデータ処理装置が形状データを取得し、造形データを生成してもよい。この場合、制御部700は、スライサーソフトやデータ処理装置によって生成された造形データを取得する。
【0098】
(G-3)上記実施形態において、制御部700は、三次元造形物の層を積層するごとに、第1清掃処理を行っている。これに対して、制御部700は、例えば、三次元造形処理を開始する前に第1清掃処理を行ってもよい。
【0099】
(G-4)上記実施形態において、制御部700は、三次元造形物の1層分を積層するごとに、非造形物OBの重量を、重量測定部500によって測定している。これに対して、三次元造形物OAの1層分を積層するごとに、非造形物OBの重量を測定しなくてもよい。例えば、三次元造形物OAの層を2層分積層するごとに、非造形物OBの重量を測定してもよい。この場合、制御部700は、三次元造形物OAの1層分を積層するごとに非造形物OBの1層分を形成する一方で、非造形物OBを2層形成するごとに非造形物OBの重量を測定する。
【0100】
(G-5)上記実施形態において、制御部700は、非造形物OBをステージ300上のうちの造形領域と異なる領域に形成している。これに対して、第2実施形態のテーブル350のように、ステージ300以外の領域に非造形物OBを形成し、その領域に吐出された造形材料の重量を重量測定部500によって測定してもよい。
【0101】
(G-6)上記実施形態において、可塑化部30は、フラットスクリュー40を備えている。これに対して、可塑化部30は、フラットスクリュー40を備えることなく、他のスクリューを備えていてもよい。例えば、可塑化部30は、インラインスクリューを備えていてもよい。
【0102】
(G-7)上記実施形態において、三次元造形装置100は、可塑化部30を備えている。これに対して、三次元造形装置100は、可塑化部30を備えていなくてもよい。例えば、三次元造形装置100は、造形材料としての液体を、液滴を制御しながら、ステージ上に吐出して積層する、インクジェット方式の装置であってもよい。この場合、制御部700は、例えば、液滴を制御する圧電体を制御することによって、吐出する液滴のドットサイズを変更し、吐出する造形材料の量を制御してもよい。また、この場合、造形材料は、例えば、液体中に含まれる水分の蒸発や揮発成分の揮発によって、固化する。
【0103】
(G-8)上記実施形態において、線幅測定部550は、造形領域に吐出された造形材料の線幅を測定する。これに対して、線幅測定部550は、造形領域とは異なる領域に吐出された造形材料の線幅を測定してもよい。例えば、ステージ300のうち造形領域とは異なる領域に吐出された造形材料の線幅が測定されてもよい。また、第2実施形態のように、上部に造形材料を留められるテーブル350が設けられている場合、テーブル350上に吐出された造形材料の線幅が測定されてもよい。
【0104】
(G-9)上記実施形態において、線幅測定部550は、吐出部200eから吐出された造形材料の線幅をレーザーによって測定している。これに対して、線幅測定部550は、例えば、画像を撮影するカメラを備える測定器であってもよい。この場合、例えば、線幅測定部550は、撮影した画像を解析することによって、造形材料の線幅を測定してもよい。
【0105】
H.他の形態:
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態によって実現することができる。例えば、本開示は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0106】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。造形材料を吐出する吐出部と、前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定する重量測定部と、前記吐出部および前記重量測定部を制御して、ステージの造形領域に前記造形材料の層を積層して三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記重量測定部を制御して前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を測定し、前記重量測定部によって測定される重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御する。
このような形態によれば、造形物中の空隙の生成や、吐出される材料の線幅の増大等を抑制し、造形精度を向上させることができる。
【0107】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形領域に前記吐出部から前記造形材料を吐出させつつ、前記造形領域に吐出された前記造形材料の重量を前記重量測定部によって測定し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御しながら、前記造形領域に前記吐出部から前記造形材料を吐出させて前記三次元造形物を造形してもよい。このような形態によれば、予め定められた量の造形材料が吐出されているかが繰り返し判断されるため、三次元造形物の造形精度がより向上する。
【0108】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記重量測定部は、前記吐出部から前記造形領域に吐出された前記造形材料の重量を測定し、前記制御部は、前記三次元造形物の形状を表す形状データから計算される重量と、前記重量測定部によって測定される重量と、を比較して、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断してもよい。このような形態によれば、形状データ上の三次元造形物と実際に造形される三次元造形物との間で生じる差違を小さくできる。
【0109】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記形状データから生成される造形データに基づいて前記吐出部を制御し、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されていないと判断した場合、前記重量測定部によって測定される重量および前記形状データから計算される重量に基づいて前記形状データを修正し、修正した前記形状データに基づいて前記造形データを修正し、修正された前記造形データに基づいて前記吐出部から前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されるように前記吐出部を制御してもよい。このような形態によれば、簡易な制御によって、造形精度を向上させることができる。
【0110】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記重量測定部は、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量を測定し、前記制御部は、前記造形領域と異なる領域に前記吐出部から前記造形材料を吐出させ、前記造形領域と異なる領域に吐出された前記造形材料の重量に基づいて、前記吐出部から予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断してもよい。このような形態によれば、造形領域と異なる領域で予め定められた量の造形材料が吐出されているか否か判断し、造形領域で予め定められた量の造形材料が吐出されるように吐出部を制御することができる。
【0111】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記造形領域と異なる領域にテーブルを備え、前記重量測定部は、前記吐出部から前記テーブル上に吐出された前記造形材料の重量を測定し、前記制御部は、前記テーブル上に前記吐出部から前記造形材料を吐出することによって前記吐出部を清掃する第1清掃処理を行い、前記第1清掃処理において、前記テーブル上に吐出された前記造形材料の重量に基づいて、前記予め定められた量の前記造形材料が吐出されているか否かを判断してもよい。このような形態によれば、吐出部を清掃しつつ、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0112】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形領域に前記層を積層するごとに、前記第1清掃処理を行ってもよい。このような形態によれば、層を積層するごとに吐出部を清掃し、かつ、層を積層するごとに予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0113】
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形領域に前記層を造形するごとに、前記層を構成する前記造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に前記造形材料を吐出させてもよい。このような形態によれば、層を構成する造形材料を固化させている間に吐出部から吐出される造形材料の重量に基づいて、予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0114】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記層を造形するごとに、前記造形領域と異なる領域に前記吐出部から吐出された前記造形材料の重量を、前記重量測定部によって測定してもよい。このような形態によれば、層を積層するごとに予め定められた量の造形材料が吐出されているか否かを判断することができる。
【0115】
(10)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記吐出部から吐出された前記造形材料の量が前記予め定められた量より少ないと判断した場合、前記吐出部から前記造形領域と異なる領域に前記造形材料を吐出することによって前記吐出部を清掃する第2清掃処理を行ってもよい。このような形態によれば、吐出部内に滞留している造形材料を吐出部外へと排出させ、吐出部から吐出される造形材料の量を、予め定められた量に近付くように増加させることができる。
【0116】
(11)上記形態の三次元造形装置において、前記吐出部は、材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部を備え、前記可塑化部は、スクリューを有し、前記制御部は、前記スクリューの回転数を制御して前記吐出部から吐出する前記造形材料の量を調整してもよい。このような形態によれば、簡易な構成で、吐出部200から吐出される造形材料の量を調節することができる。
【0117】
(12)上記形態の三次元造形装置において、吐出された前記造形材料の線幅を測定する線幅測定部を有していてもよい。このような形態によれば、三次元造形物の造形精度を更に向上させることができる。
【0118】
本開示は、上述した三次元造形装置に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、三次元造形物の製造方法や、三次元造形装置の制御方法、三次元造形物を造形するためのコンピュータープログラム、コンピュータープログラムを記録した一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0119】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…上面、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、61…供給流路、65…ノズル、68…ノズル流路、69…ノズル孔、100,100b,100e…三次元造形装置、200,200e…吐出部、300…ステージ、350…テーブル、400,400b…移動機構、410…第1移動機構、420,420b…第2移動機構、500,500b…重量測定部、510…重量センサー、511…ネジ、520…断熱部、530…支持部、550…線幅測定部、700…制御部