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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231205BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019227685
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097505
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162541(JP,A)
【文献】特開平7-335149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を収容している複数の半導体モジュールと複数の冷却器が積層されている積層ユニットと、
第1ストッパと第2ストッパが立設しており前記第1ストッパと前記第2ストッパの間に前記積層ユニットが配置されるベース板と、
前記第1ストッパと前記積層ユニットの間に嵌挿されており、前記第2ストッパに向けて前記積層ユニットを付勢する弾性部材と、
前記第1ストッパと前記弾性部材の間に嵌挿されるスペーサと、
を備えており、
前記第1ストッパは、前記スペーサが嵌合する溝を備えており、
前記スペーサは、第1距離を隔てて平行に配置されている一対の第1当接面と、前記第1距離と異なる第2距離を隔てて平行に配置されている一対の第2当接面と、前記第1距離および前記第2距離の双方と異なる第3距離を隔てて平行に配置されている一対の第3当接面と、
を備えており、
前記第1当接面の法線方向からみたときの前記スペーサの幅、前記第2当接面の法線方向からみたときの前記スペーサの幅と、前記第3当接面の法線方向からみたときの前記スペーサの幅が等しく、
前記第1当接面と前記第2当接面と前記第3当接面のいずれかが前記第1ストッパの前記溝の底面に接している、電力変換器。
【請求項2】
前記スペーサは六角柱であり、その一端に、前記第1当接面と前記第2当接面と前記第3当接面のいずれもから突出するヘッドを備えており、当該ヘッドが前記第1ストッパの先端面に当接する、請求項に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、複数の半導体モジュールと複数の冷却器が積層されている積層ユニットを備える電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体モジュールと複数の冷却器が積層されている積層ユニットを備える電力変換器が知られている。特許文献1に開示された電力変換器では、積層ユニットは、弾性部材によって積層方向に沿って付勢されている。積層方向とは、複数の半導体モジュールと複数の冷却器の積層方向を意味する。
【0003】
積層ユニットと弾性部材は、ベース板に立設された2個のストッパ(第1ストッパと第2ストッパ)の間に挟まれる。説明の便宜上、弾性部材が配置される側のストッパを第1ストッパと称する。半導体モジュールや冷却器の厚みのばらつき、弾性部材の形状や弾性係数のばらつきにより、積層ユニットが弾性部材から受ける圧力がばらつく。そこで、特許文献1の電力変換器では、第1ストッパと弾性部材の間にスペーサを挟み込む。積層方向の長さの異なる複数タイプのスペーサを準備し、積層ユニットが受ける圧力が所定の圧力範囲内になるように、積層ユニット(あるいは弾性部材)のばらつきに応じて適切なスペーサを選択して挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-162541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層ユニット(あるいは弾性部材)のばらつきに応じて長さの異なるスペーサをいくつも準備するのはコストが嵩む。本明細書は、積層方向の長さの異なるスペーサの数を少なくすることのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する電力変換器では、第1ストッパと第2ストッパの間に積層ユニットが挟まれており、第1ストッパと積層ユニットの間に弾性部材とスペーサが挟まれている。第1ストッパは、スペーサが嵌合する溝を備えている。スペーサは、第1距離を隔てて平行に配置されている一対の第1当接面と、第1距離と異なる第2距離を隔てて平行に配置されている一対の第2当接面を備えている。第1当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅と、第2当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅が等しく、第1当接面と第2当接面の一方が第1ストッパの溝の底面に接している。
【0007】
スペーサの一対の第1当接面の一方が第1ストッパの溝の底面に当接するとき、他方の第1当接面は弾性部材に当接し、スペーサは、弾性部材を第1ストッパから第1距離だけ遠ざける第1スペーサとして機能する。スペーサの一対の第2当接面の一方が溝の底面に当接するとき、他方の第2当接面が弾性部材に当接し、スペーサは、弾性部材を第1ストッパから第2距離だけ遠ざける第2スペーサとして機能する。1個のスペーサで2種類の長さを選択することができる。しかも、第1当接面と第2当接面のいずれからも法線方向からみたときのスペーサの幅が同じである。第1当接面と第2当接面のどちらを用いる場合もスペーサは第1ストッパの溝に嵌合し、スペーサの位置が定まる。
【0008】
上記したスペーサの典型は直方体である。直方体は、縦、横、奥行きの3通りの長さの辺を有しており、横をスペーサの幅と定義したとき、直方体のスペーサは、縦の方向を積層方向に一致させて第1ストッパと弾性体の間に入れたときと、奥行き方向を積層方向に一致させて第1ストッパと弾性体の間に入れたときで、スペーサとしての長さを異ならしめることができる。
【0009】
スペーサを六角柱とすることで、3種類の長さから選択可能なスペーサを実現することができる。そのようなスペーサは次の特徴を有している。スペーサは、第1距離および第2距離の双方と異なる第3距離を隔てて平行に配置されている一対の第3当接面を備える。第3当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅は、第1当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅に等しい。すなわち、第3当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅は、第2当接面の法線方向からみたときのスペーサの幅にも等しい。スペーサの第1当接面と第2当接面と第3当接面のいずれかが第1ストッパの溝の底面に接する。
【0010】
六角柱の場合、スペーサの一対の第3当接面の一方が第1ストッパの溝の底面に当接するとき、他方の第3当接面は弾性部材に当接し、スペーサは、弾性部材を第1ストッパから第3距離だけ遠ざける第3スペーサとして機能する。1個のスペーサを、3タイプのスペーサ(すなわち、第1/第2/第3スペーサ)として用いることができる。いずれのタイプを選択する場合も、当接面の法線方向からみたときの幅が同じであるので、第1ストッパの溝に嵌合し、スペーサの位置が定まる。
【0011】
スペーサが六角柱である場合、六角柱の軸線方向の一端に、第1当接面と第2当接面と第3当接面のいずれもから突出するヘッドを備えているとよい。スペーサを第1ストッパの溝にセットする際、ヘッドが第1ストッパの先端面に当接し、スペーサ挿入方向の位置が定まる。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)は第1実施例の電力変換器の平面図である。図1(B)は第1実施例の電力変換器の側面図である。
図2】スペーサの斜視図である。
図3図3(A)は、第1面を第1ストッパに当てた場合の第1ストッパ周辺の拡大平面図である。図4(B)は、第2面を第1ストッパに当てた場合の第1ストッパ周辺の拡大平面図である。
図4】第2実施例の電力変換器の第1ストッパ周辺を拡大した斜視図である。
図5】第2実施例の電力変換器のスペーサの断面図である。
図6図6(A)-(C)はそれぞれ、第1面-第3面のそれぞれを第1ストッパに当接させたときの第1ストッパと圧縮バネの間の距離を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)図1図3を参照して第1実施例の電力変換器2を説明する。図1(A)に電力変換器2の平面図を示し、図1(B)に電力変換器2の側面図を示す。電力変換器2は、電気自動車に搭載され、メインバッテリの直流電力を走行用モータの駆動に適した交流電力に変換する装置である。
【0015】
電力変換器2は、積層ユニット10を備えている、図1には、積層ユニット10と、それを支持するベース板3のみを示してあり、それら以外の部品の図示は省略した。ベース板3は、電力変換器2の筐体の一部であってもよい。
【0016】
積層ユニット10は、複数の半導体モジュール11と複数の冷却器12が1個ずつ交互に積層されたデバイスである。図1では、図中の両端の半導体モジュールにのみ符号11を付し、残りの半導体モジュールには符号は省略した。同様に、図1では、両端の冷却器にのみ符号12を付し、残りの冷却器には符号を省略した。説明の都合上、図中の右端の冷却器12を符号12aで表し、左端の冷却器12を符号12bで表す。図1の座標系におけるX方向が、複数の半導体モジュール11と複数の冷却器12の積層方向に相当する。以下では、複数の半導体モジュール11と複数の冷却器12の積層方向を単純に「積層方向」と称する。
【0017】
それぞれの半導体モジュール11に、電力変換器2の主要部品である2個の電力変換用のパワートランジスタ19(半導体素子)が埋設されている。半導体モジュール11の本体は樹脂製のパッケージであり、その中に2個のパワートランジスタ19が埋設されている。2個のパワートランジスタ19はパッケージの内部で直列に接続されている。パワートランジスタ19の直列接続の高電位側と低電位側と中点のそれぞれに導通している3個の端子がパッケージの外へと延びているが、それらの図示も省略した。それぞれのパワートランジスタ19のゲート電極などに導通している制御端子も図示を省略した。
【0018】
積層ユニット10の説明に戻る。複数の冷却器12は扁平であり、その幅広面を対向させるように平行に並んでいる。隣り合う2個の冷却器12の間に半導体モジュール11が挟まれている。冷却器12は、内部に冷媒流路が設けられている。隣り合う2個の冷却器12は、2個の連結パイプ13a、13bで連結されている。図1では、左端の連結パイプにのみ符号13a、13bを付し、残りの連結パイプには符号を省略した。左端の冷却器12bには冷媒供給管14aと冷媒排出管14bが設けられている。
【0019】
冷媒供給管14aと冷媒排出管14bは、不図示の冷媒循環装置に連結されている。冷媒供給管14aを通じて供給される冷媒は、一方の連結パイプ13aを介して全ての冷却器12に分配される。冷媒は冷却器12の内部を通過する間に隣り合う半導体モジュール11から熱を吸収する。熱を吸収した冷媒は他方の連結パイプ13bと冷媒排出管14bを通じて冷媒循環装置に戻る。
【0020】
積層ユニット10は、ベース板3に支持される。ベース板3には一対の第1ストッパ4と、1個の第2ストッパ5が設けられている。先に述べたように、ベース板3は積層ユニット10を収容する筐体の一部であってもよく、その場合、筐体の壁が第1ストッパ4(および/または第2ストッパ5)を兼ねていてもよい。積層ユニット10は、積層方向が第1ストッパ4と第2ストッパ5の並び方向に一致するように、それらの間に配置される。なお、積層方向を示す図中の座標系のX方向が第1ストッパ4と第2ストッパ5の並び方向にも相当する。図中の座標系のY方向は、一対の第1ストッパ4の並び方向に相当する。
【0021】
積層方向の一端の冷却器12aと第1ストッパ4との間に圧縮バネ6が配置される。圧縮バネ6は、積層ユニット10を第2ストッパ5に向けて付勢する。別言すれば、圧縮バネ6は、積層ユニット10を積層方向に加圧する。圧縮バネ6の加圧力により、隣り合う半導体モジュール11と冷却器12が密着し、半導体モジュール11に対する冷却能力が向上する。圧縮バネ6は、鋼製の板バネである。板バネの冷却器12aと接する側には、補強板が添えられていてもよい。
【0022】
第1ストッパ4には、積層ユニット10に対向する面に溝4aが設けられており、スペーサ20が溝4aに嵌合する。理解を助けるため、図1(A)では、一対の第1ストッパ4のうち、図中の上側の第1ストッパに嵌合するスペーサ20にはグレーのハッチングを施してある。また、ストッパ図中の下側の第1ストッパ4に嵌合するスペーサ20aを仮想線で描いてあり、溝4aが図示されている。
【0023】
電力変換器2の量産に際して積層ユニット10に加えられる圧力がばらつくと、半導体モジュール11に対する冷却性能がばらつくことになる。製造過程において、圧縮バネ6によって積層ユニット10に加えられる圧力が所定の範囲に納まるように、圧縮バネ6と第1ストッパ4の間にスペーサ20が挟まれる。電力変換器2の製造ラインには長さの異なるいくつかのスペーサが用意されており、積層ユニット10に加えられる圧力が所定の範囲に納まるように、適切な長さのスペーサが選択される。スペーサの長さの種類と同数のスペーサを用意するのはコストが嵩む。第1実施例の電力変換器2で採用されるスペーサ20は、単独で2通りの長さのスペーサとして利用することができる。次に、スペーサ20について説明する。
【0024】
図2に、スペーサ20の斜視図を示す。スペーサ20は直方体であり、図中の座標系のX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの辺の長さがL1、W、L2である。長さL1と長さL2は異なっている。直方体のスペーサ20の一対の平行な面を第1面21と称し、別の一対の平行な面を第2面22と称し、残りの一対の平行な面を第3面23と称する。図中の座標系のY方向におけるスペーサ20の長さWをスペーサ20の幅と定義する。別言すれば、第1面21の法線方向(X方向)からみたときのスペーサ20の幅は、第2面22の法線方向(Z方向)からみたときのスペーサ20の幅に等しく、長さWである。
【0025】
第1面21を積層方向に向けてスペーサ20を第1ストッパ4と圧縮バネ6の間にセットしたときの平面図を図3(A)に示す。第2面22を積層方向に向けてスペーサ20を第1ストッパ4と圧縮バネ6の間にセットしたときの平面図を図3(B)に示す。図3(A)、(B)は、一対の第1ストッパ4の一方のみの周辺を示した拡大図である。一対の第1ストッパ4の他方の周辺の構造は図3(A)、(B)と同じである。図3においても、理解を助けるためにスペーサ20にはグレーのハッチングを施してある。
【0026】
なお、図3(A)に示すように、圧縮バネ6には、端部6bよりも積層方向でスペーサ20に近い支点6aを有している。スペーサ20は支点6aに当接する。第1ストッパ4と圧縮バネ6の間にスペーサ20を挿入する際、所定の治具で圧縮バネ6の端部6bを積層ユニット10に向けて押し縮め、スペーサ20を入れる隙間を確保する。スペーサ20を入れた後に治具を外してスペーサ20と積層ユニット10の間で圧縮バネ6が保持されるようにする。
【0027】
図3(A)に示すように、一対の第1面21(21a、21b)の一方(第1面21a)が第1ストッパ4の溝4aの底面4bに接している。このとき、一対の第1面21(21a、21b)の他方(第1面21b)は、圧縮バネ6に接する。圧縮バネ6の支点6aと第1ストッパ4の溝4aの底面4bとの間には距離L1が確保される。すなわち、スペーサ20は、長さL1のスペーサとして機能する。
【0028】
スペーサ20は、第3面23が、一対の第1ストッパ4の並び方向(図中のY方向)を向く姿勢で圧縮バネ6と第1ストッパ4の間に配置される。溝4aの幅はスペーサ20の一対の第3面23の間の長さW(図2参照)に等しい。それゆえ、第1面21を積層方向に向け、第3面23を第1ストッパ4の並び方向に向けたスペーサ20は、溝4aに隙間なく嵌合する。スペーサ20が溝4aに嵌合することで、スペーサ20のY方向の位置が定まる。
【0029】
図3(B)では、一対の第2面22(22a、22b)の一方(第2面22a)が第1ストッパ4の溝4aの底面4bに接している。このとき、一対の第2面22(22a、22b)の他方(第2面22b)は、圧縮バネ6に接する。圧縮バネ6の支点6aと第1ストッパ4の溝4aの底面4bとの間には距離L2が確保される。すなわち、スペーサ20は、長さL2のスペーサとして機能する。
【0030】
図3(B)の場合も、スペーサ20は、第3面23が、一対の第1ストッパ4の並び方向(図中のY方向)を向く姿勢で圧縮バネ6と第1ストッパ4の間に配置される。それゆえ、第2面22を積層方向に向け、第3面23を第1ストッパ4の並び方向に向けたスペーサ20は、溝4aに隙間なく嵌合する。図3(B)の場合も、スペーサ20が溝4aに嵌合することで、スペーサ20のY方向の位置が定まる。
【0031】
以上の通り、直方体のスペーサ20は、第1面21を積層方向に向けて圧縮バネ6と第1ストッパ4の間にセットされる場合と、第2面22を積層方向に向けてセットされる場合で、異なる長さのスペーサとして機能する。どちらの長さのスペーサとして用いる場合でも、スペーサ20は第1ストッパ4に設けられた溝4aに隙間なく嵌合し、スペーサ20のY方向の位置が定まる。なお、スペーサ20と溝4aの間には隙間が無い方が好ましいが、隙間があってもよい。
【0032】
(第2実施例)次に、図4図6を参照して第2実施例の電力変換器2aを説明する。図4は、電力変換器2aにおける第1ストッパ4の周辺を拡大した斜視図である。第2実施例の電力変換器2aは、スペーサ120の形状を除いて第1実施例の電力変換器2と同じ構造を有している。それゆえ、スペーサ120の構造以外は説明を省略する。
【0033】
スペーサ120は六角柱形状の本体121と、本体121の柱軸方向(Z方向)の一端(上端)に設けられたヘッド122を備えている。図5に、本体121を柱軸に交差する平面でカットした断面を示す。
【0034】
六角柱状の本体121は、6個の側面を有している。6個の側面は、一対の平行な第1面21、一対の平行な第2面22、および、一対の平行な第3面で構成される。一対の第1面21の間の距離L1と、一対の第2面22の間の距離L2と、一対の第3面の間の距離L3は、相互に相違する。また、第1面21の法線方向からみたときの本体121の幅W1と、第2面22の法線方向からみたときの本体121の幅W2と、第3面23の法線方向からみたときの本体121の幅W3は、等しく幅Wである。
【0035】
図4に戻って説明を続ける。スペーサ120は、第1面21、第2面22、および、第3面23のいずれかが第1ストッパ4の溝4aの底面4bに当接するように配置される。なお、溝4aの幅は長さWであり、第1面21、第2面22、および、第3面23のいずれを底面4bに当接させた場合であっても本体121は図中の座標系のY方向には隙間なく溝4aに嵌合する。この構造により、第1面21、第2面22、および、第3面23のいずれを底面4bに当接させた場合であってもスペーサ120はY方向の位置が正確に定まる。
【0036】
また、ヘッド122は、六角柱状の本体121の柱軸線方向の一端に位置しており、本体121の第1面21、第2面22、第3面23のいずれからも法線方向に突出している。第1面21、第2面22、および、第3面23のいずれを底面4bに当接させた場合であっても、スペーサ120を図中の座標系の-Z方向に沿って溝4aに差し込むと、ヘッド122が第1ストッパ4の先端面4cに当接し、スペーサ120のZ方向の位置が正確に定まる。
【0037】
図6(A)-(C)に、本体121の第1面21/第2面22/第3面23のそれぞれを第1ストッパ4の溝4aの底面4bに当接させてスペーサ120を圧縮バネ6と第1ストッパ4の間にセットしたときの拡大平面図を示す。図6では、積層ユニットの図示は省略した。
【0038】
図6(A)の場合、一対の第1面21(21a、21b)の一方(第1面21a)が第1ストッパ4の溝4aの底面4bに接している。このとき、一対の第1面21(21a、21b)の他方(第1面21b)は、圧縮バネ6に接する。圧縮バネ6の支点6aと第1ストッパ4の溝4aの底面4bとの間には距離L1が確保される。すなわち、スペーサ120は、長さL1のスペーサとして機能する。また、先に述べたように、第1面21の法線方向からみたときの本体121の幅W1は溝4aの幅Wに等しいため、本体121は、溝4aに隙間なく嵌合する。スペーサ120のY方向の位置が正確に定まる。
【0039】
図6(B)の場合、一対の第2面22(22a、22b)の一方(第2面22a)が第1ストッパ4の溝4aの底面4bに接している。このとき、一対の第2面22(22a、22b)の他方(第2面22b)は、圧縮バネ6に接する。圧縮バネ6の支点6aと第1ストッパ4の溝4aの底面4bとの間には距離L2が確保される。すなわち、スペーサ120は、長さL2のスペーサとして機能する。また、先に述べたように、第2面22の法線方向からみたときの本体121の幅W2は溝4aの幅Wに等しいため、本体121は、溝4aに隙間なく嵌合する。スペーサ120のY方向の位置が正確に定まる。
【0040】
図6(C)の場合、一対の第3面23(23a、23b)の一方(第3面23a)が第1ストッパ4の溝4aの底面4bに接している。このとき、一対の第3面23(23a、23b)の他方(第3面23b)は、圧縮バネ6に接する。圧縮バネ6の支点6aと第1ストッパ4の溝4aの底面4bとの間には距離L3が確保される。すなわち、スペーサ120は、長さL3のスペーサとして機能する。また、先に述べたように、第3面23の法線方向からみたときの本体121の幅W3は溝4aの幅Wに等しいため、本体121は、溝4aに隙間なく嵌合する。スペーサ120のY方向の位置が正確に定まる。
【0041】
上記したように、1個のスペーサ120は、第1面21を積層方向に向けて圧縮バネ6と第1ストッパ4の間にセットされる場合と、第2面22を積層方向に向けてセットされる場合と、第3面23を積層方向に向けてセットされる場合とで、異なる長さのスペーサとして機能する。3タイプの長さのスペーサを1個で実現することで、長さの異なるスペーサを準備するのに要するコストを抑えることができる。
【0042】
いずれの長さのスペーサとして用いる場合でも、スペーサ120は第1ストッパ4に設けられた溝4aに隙間なく嵌合し、Y方向の位置が正確に定まる。なお、スペーサ120と溝4aの間に隙間があってもよい。また、ヘッド122が第1ストッパ4の先端面4c(図4参照)に当接することで、スペーサ120のZ方向の位置も正確に定まる。
【0043】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。第1面21が第1当接面に相当し、第2面22が第2当接面に相当する。第3面23が第3当接面に相当する。ヘッド122が六角柱状の本体121の一端に設けられた突起の一例に相当する。圧縮バネ6が弾性体の一例に相当する。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
2、2a:電力変換器 3:ベース板 4:第1ストッパ 4a:溝 4b:底面 4c:先端面 5:第2ストッパ 6:圧縮バネ 10:積層ユニット 11:半導体モジュール 12、12a、12b:冷却器 19:パワートランジスタ 20、20a、120:スペーサ 21、21a、21b:第1面 22、22a、22b:第2面 23、23a、23b:第3面 121:本体 122:ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6