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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20231205BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/20 535
G03G21/00 370
G03G21/00 312
G03G21/16 104
G03G15/08 229
G03G15/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019231474
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099443
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】田尻 文威
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012212(JP,A)
【文献】特開2016-014817(JP,A)
【文献】特開2017-116585(JP,A)
【文献】特開2011-242518(JP,A)
【文献】特開2019-179121(JP,A)
【文献】特開2017-125969(JP,A)
【文献】特開2019-113702(JP,A)
【文献】特開平09-179368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0034567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/14
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/16
G03G 15/08
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに現像剤像を形成する画像形成部と、
シートに現像剤像を定着させる定着装置と、
制御部と、を備え、
前記定着装置は、
ローラを有する第1定着部材と、
前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材と、
前記ニップ部のニップ圧を、シートに現像剤像を定着させる際に設定される第1ニップ圧と、前記定着装置が停止している際に設定される第2ニップ圧であって、前記第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更可能な圧力変更機構と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第1データに展開する第1展開処理と、
第1シートに対し、前記第1データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第1画像形成処理と、
第1シートに対し、前記第1データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第1定着処理と、
第2画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第2データに展開する第2展開処理と、
前記第1シートの次に搬送される第2シートに対し、前記第2データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第2画像形成処理と、
第2シートに対し、前記第2データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第2定着処理と、
前記圧力変更機構を制御して前記ニップ部の圧力を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に変更するニップ圧低下処理と、
前記圧力変更機構を制御して前記ニップ部の圧力を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に変更するニップ圧増加処理と、を実行可能であり、
前記第1定着処理の終了から第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了した場合には、前記ニップ圧低下処理を実行せずに、前記第2画像形成処理を実行し、
前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1所定時間の経過後に前記ニップ圧低下処理を実行し、前記第2展開処理が完了した後に前記ニップ圧増加処理を実行してから、前記第2画像形成処理を実行し、
感光体と、
前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、
前記現像ローラの状態を、前記現像ローラが前記感光体に圧接した圧接状態と、前記現像ローラが前記感光体から離間した離間状態とに切り替える切替機構と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記切替機構を制御して前記現像ローラの状態を前記圧接状態から前記離間状態に切り替える現像離間処理と、
前記切替機構を制御して前記現像ローラの状態を前記離間状態から前記圧接状態に切り替える現像圧接処理と、を実行可能であり、
前記第1画像形成処理中の所定のタイミングまでに前記第2展開処理が完了していない場合には、前記現像離間処理を実行し、
前記現像離間処理の実行後に前記ニップ圧低下処理を実行した場合には、前記第2展開処理が完了した後、前記ニップ圧増加処理を実行してから、前記現像圧接処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像ローラを駆動する現像モータと、
前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達される第1伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達されない第1切断状態とに切替可能な現像クラッチと、
前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達される第2伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達されない第2切断状態とに切替可能な圧力変更クラッチと、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記感光体上の現像剤を回収可能なクリーニング部材と、
前記感光体に接触する無端状の転写ベルトと、
前記転写ベルト上の現像剤を回収するベルトクリーナと、を備え、
前記制御部は、
前記クリーニング部材上の現像剤を前記感光体および前記転写ベルトを介して前記ベルトクリーナで回収するクリーニング処理を実行可能であり、
前記第1定着処理の終了から、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間の間に、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1定着処理の終了から前記第2所定時間の経過後に前記クリーニング処理を開始し、
前記クリーニング処理の開始後であって、且つ、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間に前記第2展開処理が完了していない場合には、前記ニップ圧低下処理を前記クリーニング処理と並行して実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1所定時間をT1、前記第2所定時間をT2、前記ニップ圧低下処理にかかる時間をTn、前記クリーニング処理にかかる時間をTcとした場合、次式
T1=T2+Tc-Tn
を満たすことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ニップ圧低下処理の実行中に、前記第2展開処理が完了した場合には、前記ニップ圧低下処理の終了後に前記ニップ圧増加処理を連続して実行することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
シートに現像剤像を形成する画像形成部と、
シートに現像剤像を定着させる定着装置と、
制御部と、を備え、
前記定着装置は、
ローラを有する第1定着部材と、
前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材と、
前記ニップ部のニップ圧を、シートに現像剤像を定着させる際に設定される第1ニップ圧と、前記定着装置が停止している際に設定される第2ニップ圧であって、前記第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更可能な圧力変更機構と、を備え、
前記制御部は、
第1画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第1データに展開する第1展開処理と、
第1シートに対し、前記第1データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第1画像形成処理と、
第1シートに対し、前記第1データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第1定着処理と、
第2画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第2データに展開する第2展開処理と、
前記第1シートの次に搬送される第2シートに対し、前記第2データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第2画像形成処理と、
第2シートに対し、前記第2データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第2定着処理と、
前記ニップ部の圧力を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に変更するニップ圧低下処理と、
前記ニップ部の圧力を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に変更するニップ圧増加処理と、を実行可能であり、
前記第1定着処理の終了から第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了した場合には、前記ニップ圧低下処理を実行せずに、前記第2画像形成処理を実行し、
前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1所定時間の経過後に前記ニップ圧低下処理を実行し、前記第2展開処理が完了した後に前記ニップ圧増加処理を実行してから、前記第2画像形成処理を実行し、
感光体と、
前記感光体上の現像剤を回収可能なクリーニング部材と、
前記感光体に接触する無端状の転写ベルトと、
前記転写ベルト上の現像剤を回収するベルトクリーナと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記クリーニング部材上の現像剤を前記感光体および前記転写ベルトを介して前記ベルトクリーナで回収するクリーニング処理を実行可能であり、
前記第1定着処理の終了から、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間の間に、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1定着処理の終了から前記第2所定時間の経過後に前記クリーニング処理を開始し、
前記クリーニング処理の開始後であって、且つ、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間に前記第2展開処理が完了していない場合には、前記ニップ圧低下処理を前記クリーニング処理と並行して実行し、
前記画像形成部は、
現像剤を撹拌する撹拌部材を備え、
前記制御部は、
前記第1画像形成処理および前記第2画像形成処理を実行する前に、前記撹拌部材を回転させる準備処理を実行可能であり、
前記クリーニング処理の開始後であって、且つ、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の経過前に前記第2展開処理が完了したと判定した場合には、前記ニップ圧低下処理を実行せずに、前記第2画像形成処理を実行するための前記準備処理を、前記クリーニング処理と並行して実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、
前記現像ローラを駆動する現像モータと、
前記現像ローラの状態を、前記現像ローラが前記感光体に圧接した圧接状態と、前記現像ローラが前記感光体から離間した離間状態とに切り替える切替機構と、
前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達される第1伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達されない第1切断状態とに切替可能な現像クラッチと、
前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達される第2伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達されない第2切断状態とに切替可能な圧力変更クラッチと、をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記圧力変更機構は、
前記ニップ圧が前記第1ニップ圧となる第1位置と、前記ニップ圧が前記第2ニップ圧となる第2位置との間で回動可能なカムであって、前記現像モータの正回転によって前記第2位置から前記第1位置に向けて回動し、前記現像モータの逆回転によって前記第1位置から前記第2位置に向けて回動するカムを備え、
前記制御部は、
印字中において、前記現像モータを正回転させ、
前記ニップ圧低下処理を実行する場合には、前記現像クラッチが前記第1切断状態となる状態で前記現像モータを逆回転させた後、前記圧力変更クラッチを前記第2伝達状態にすることで、前記カムを前記第1位置から前記第2位置に回動させ、
逆回転時の前記現像モータの回転速度を、印字中の回転速度よりも小さくすることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2定着部材は、
前記第1定着部材との間でニップ部を形成するベルトと、
前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む上流パッドと、
前記上流パッドに対してシートの搬送方向の下流側に配置され、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む下流パッドと、を備え、
前記ニップ圧が前記第1ニップ圧の場合には、前記上流パッドおよび前記下流パッドの両方と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、
前記ニップ圧が前記第2ニップ圧の場合には、前記上流パッドと前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、前記下流パッドと前記第1定着部材との間では前記ベルトを挟まないことを特徴とする請求項から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ニップ部は、前記ローラと前記ベルトの間に形成されることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2ニップ圧は、前記圧力変更機構で変更するニップ圧の範囲のうち最小のニップ圧であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ローラを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第2定着部材は、前記カムの回転に伴って、ニップ位置と、前記ニップ位置よりも前記ローラから離れたニップリリース位置との間で移動することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに現像剤像を定着させる定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置として、ベルトおよびベルトの内側に配置されるヒータおよびニップ板を備える加熱体と、ニップ板との間でベルトを挟む加圧ローラとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、加熱体の位置を、加熱体が加圧ローラに圧接した圧接位置と、加熱体が加圧ローラから離れた離間位置との間で、切り替えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-66508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置では、受信した印字データを画像形成装置で使用可能なデータに展開する展開処理を実行している。複数枚のシートに連続印字する場合においては、所定のシートに対する展開処理が終了していない場合には、展開処理を待つ時間が生じ、この間、シートの印字を行うことができないため、印字とは異なる他の処理(クリーニング処理等)を実行する場合がある。
【0005】
前述した構成の定着装置を備える画像形成装置では、他の処理として、加熱体の位置を圧接位置から離間位置へ切り替える処理を、展開処理を待つ時間の間に行うことが考えられる。しかしながら、展開処理の完了後に連続印字を再度実行する場合には、加熱体の位置を離間位置から圧接位置に切り替える時間が必要になり、その分、連続印字を完了するまでの時間が長くなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、連続印字中に展開処理を待つ時間が生じた場合において、連続印字の開始から完了までにかかる時間が長くなりすぎるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、シートに現像剤像を形成する画像形成部と、シートに現像剤像を定着させる定着装置と、制御部と、を備える。
前記定着装置は、ローラを有する第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材と、前記ニップ部のニップ圧を、シートに現像剤像を定着させる際に設定される第1ニップ圧と、前記定着装置が停止している際に設定される第2ニップ圧であって、前記第1ニップ圧よりも小さい第2ニップ圧とに変更可能な圧力変更機構と、を備える。
前記制御部は、第1画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第1データに展開する第1展開処理と、第1シートに対し、前記第1データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第1画像形成処理と、第1シートに対し、前記第1データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第1定着処理と、第2画像データを前記画像形成部での現像剤像の形成に使用される第2データに展開する第2展開処理と、前記第1シートの次に搬送される第2シートに対し、前記第2データに基づいて前記画像形成部に現像剤像を形成させる第2画像形成処理と、第2シートに対し、前記第2データに基づき形成された現像剤像を前記定着装置によって定着させる第2定着処理と、前記ニップ部の圧力を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に変更するニップ圧低下処理と、前記ニップ部の圧力を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に変更するニップ圧増加処理と、を実行可能であり、前記第1定着処理の終了から第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了した場合には、前記ニップ圧低下処理を実行せずに、前記第2画像形成処理を実行し、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間において、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1所定時間の経過後に前記ニップ圧低下処理を実行し、前記第2展開処理が完了した後に前記ニップ圧増加処理を実行してから、前記第2画像形成処理を実行する。
【0008】
この構成によれば、第1定着処理の終了から第1所定時間以内に第2展開処理が完了していれば、ニップ圧低下処理を実行せずに第2画像形成処理を実行するので、第2画像形成処理の開始タイミングを早めることができる。そのため、連続印字中に展開処理を待つ時間が生じた場合において、連続印字の開始から完了までにかかる時間が長くなりすぎるのを抑制することができる。
【0009】
また、前記画像形成装置は、感光体と、前記感光体上の現像剤を回収可能なクリーニング部材と、前記感光体に接触する無端状の転写ベルトと、前記転写ベルト上の現像剤を回収するベルトクリーナと、を備え、前記制御部は、前記クリーニング部材上の現像剤を前記感光体および前記転写ベルトを介して前記ベルトクリーナで回収するクリーニング処理を実行可能であり、前記第1定着処理の終了から、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間の間に、前記第2展開処理が完了していない場合には、前記第1定着処理の終了から前記第2所定時間の経過後に前記クリーニング処理を開始し、前記クリーニング処理の開始後であって、且つ、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の間に前記第2展開処理が完了していない場合には、前記ニップ圧低下処理を前記クリーニング処理と並行して実行してもよい。
【0010】
これによれば、ニップ圧低下処理をクリーニング処理と並行して実行するので、例えばクリーニング処理の後にニップ圧低下処理を実行する形態と比べ、第2画像形成処理の開始タイミングを早めることができる。
【0011】
また、前記第1所定時間をT1、前記第2所定時間をT2、前記ニップ圧低下処理にかかる時間をTn、前記クリーニング処理にかかる時間をTcとした場合、次式
T1=T2+Tc-Tn
を満たすように各時間を設定してもよい。
【0012】
第1所定時間T1、第2所定時間T2、ニップ圧低下処理にかかる時間Tn、クリーニング処理にかかる時間Tcの関係を、「T1=T2+Tc-Tn」とすることで、ニップ圧低下処理の終了時刻とクリーニング処理の終了時刻を一致させることができるので、例えばニップ圧低下処理の終了時刻がクリーニング処理の終了時刻よりも遅い形態に比べ、クリーニング処理の終了後の処理を迅速に行うことができる。また、例えばニップ圧低下処理の終了時刻がクリーニング処理の終了時刻よりも早い形態に比べ、第1所定時間T1の長さを大きくすることができるので、ニップ圧低下処理の開始タイミングを遅らせることができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記ニップ圧低下処理の実行中に、前記第2展開処理が完了した場合には、前記ニップ圧低下処理の終了後に前記ニップ圧増加処理を連続して実行してもよい。
【0014】
これによれば、ニップ圧低下処理の実行中に第2展開処理が完了した場合には、ニップ圧低下処理の終了後にニップ圧増加処理を連続して実行するので、例えばニップ低下処理の終了から時間を空けてニップ圧増加処理を実行する形態と比べ、第2画像形成処理の開始タイミングを早めることができる。
【0015】
また、前記画像形成部は、現像剤を撹拌する撹拌部材を備え、前記制御部は、前記第1画像形成処理および前記第2画像形成処理を実行する前に、前記撹拌部材を回転させる準備処理を実行可能であり、前記クリーニング処理の開始後であって、且つ、前記第1定着処理の終了から前記第1所定時間の経過前に前記第2展開処理が完了したと判定した場合には、前記ニップ圧低下処理を実行せずに、前記第2画像形成処理を実行するための前記準備処理を、前記クリーニング処理と並行して実行してもよい。
【0016】
クリーニング処理の開始後であって、且つ、第1定着処理の終了から第1所定時間の経過前に第2展開処理が完了した場合には、準備処理をクリーニング処理と並行して実行するので、例えば、クリーニング処理の後に準備処理を実行する形態と比べ、第2画像形成処理の開始タイミングを早めることができる。
【0017】
また、前記画像形成装置は、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記現像ローラを駆動する現像モータと、前記現像ローラの状態を、前記現像ローラが前記感光体に圧接した圧接状態と、前記現像ローラが前記感光体から離間した離間状態とに切り替える切替機構と、前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達される第1伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記切替機構に伝達されない第1切断状態とに切替可能な現像クラッチと、前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達される第2伝達状態と、前記現像モータの駆動力が前記圧力変更機構に伝達されない第2切断状態とに切替可能な圧力変更クラッチと、をさらに備えていてもよい。
【0018】
これによれば、現像モータの駆動力を現像ローラの圧接・離間とニップ圧の変更とに利用するので、コストの低下を図ることができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記現像ローラの状態を前記圧接状態から前記離間状態に切り替える現像離間処理と、前記現像ローラの状態を前記離間状態から前記圧接状態に切り替える現像圧接処理と、を実行可能であり、前記第1画像形成処理中の所定のタイミングまでに前記第2展開処理が完了していない場合には、前記現像離間処理を実行し、前記現像離間処理の実行後に前記ニップ圧低下処理を実行した場合には、前記第2展開処理が完了した後、前記ニップ圧増加処理を実行してから、前記現像圧接処理を実行してもよい。
【0020】
また、前記圧力変更機構は、前記ニップ圧が前記第1ニップ圧となる第1位置と、前記ニップ圧が前記第2ニップ圧となる第2位置との間で回動可能なカムであって、前記現像モータの正回転によって前記第2位置から前記第1位置に向けて回動し、前記現像モータの逆回転によって前記第1位置から前記第2位置に向けて回動するカムを備え、前記制御部は、印字中において、前記現像モータを正回転させ、前記ニップ圧低下処理を実行する場合には、前記現像クラッチが前記第1切断状態となる状態で前記現像モータを逆回転させた後、前記圧力変更クラッチを前記第2伝達状態にすることで、前記カムを前記第1位置から前記第2位置に回動させ、逆回転時の前記現像モータの回転速度を、印字中の回転速度よりも小さくしてもよい。
【0021】
これによれば、逆回転時の現像モータの回転速度を印字中の回転速度よりも小さくするので、カムを駆動する際に発生する音を低減することができる。
【0022】
また、前記第2定着部材は、前記第1定着部材との間でニップ部を形成するベルトと、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む上流パッドと、前記上流パッドに対してシートの搬送方向の下流側に配置され、前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟む下流パッドと、を備え、前記ニップ圧が前記第1ニップ圧の場合には、前記上流パッドおよび前記下流パッドの両方と前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、前記ニップ圧が前記第2ニップ圧の場合には、前記上流パッドと前記第1定着部材との間で前記ベルトを挟み、前記下流パッドと前記第1定着部材との間では前記ベルトを挟まないように構成されていてもよい。
【0023】
また、前記ニップ部は、前記ローラと前記ベルトの間に形成されていてもよい。
【0024】
また、前記第2ニップ圧は、前記圧力変更機構で変更するニップ圧の範囲のうち最小のニップ圧であってもよい。
【0025】
これによれば、ベルトと、ベルトを第1定着部材とは反対側から支える部材(例えばパッド)との摺接によるベルトのダメージを抑制することができる。
【0026】
また、前記画像形成装置は、前記ローラを加熱するヒータをさらに備えていてもよい。
【0027】
また、前記第2定着部材は、前記カムの回転に伴って、ニップ位置と、前記ニップ位置よりも前記ローラから離れたニップリリース位置との間で移動するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、連続印字中に展開処理を待つ時間が生じた場合において、連続印字の開始から完了までにかかる時間が長くなりすぎるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
図2】定着装置を示す断面図である。
図3】ベルトの内側に配置される各部材を示す分解斜視図である。
図4】圧力変更機構を示す斜視図である。
図5】ニップ圧が最大ニップ圧であるときの、圧力変更機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
図6】ニップ圧が最小ニップ圧であるときの、圧力変更機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
図7】各種センサと、制御部と、制御部の制御対象との関係を示す図である。
図8】制御部の動作を示すフローチャートである。
図9】第2展開処理の完了タイミングに応じた処理を示す図であり、第1画像形成処理の終了から第1所定時間が経過する前に第2展開処理が完了した3つの例を示す図(a)~(c)である。
図10】第2展開処理の完了タイミングに応じた処理を示す図であり、第1画像形成処理の終了から第1所定時間が経過した後に第2展開処理が完了した2つの例を示す図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体2内に、シートSを供給する供給部20と、シートSにトナー像を形成する画像形成部30と、シートSにトナー像を定着させる定着装置80と、画像が形成されたシートSを排出する排出部90と、制御部100とを備えている。
【0031】
本体筐体2の上部には、開口部2Aが形成されており、この開口部2Aは、本体筐体2に回動可能に支持されるアッパーカバー3で開閉される。アッパーカバー3の上面は、本体筐体2から排出されたシートSを蓄積する排出トレイ4となっており、下面にはLEDユニット40を保持する複数のLED取付部材5が設けられている。
【0032】
供給部20は、本体筐体2内の下部に設けられ、本体筐体2に着脱可能な供給トレイ21と、供給トレイ21からシートSを画像形成部30へ搬送する供給機構22とを備えている。供給機構22は、ピックアップローラ23、分離ローラ24、分離パッド25およびレジストレーションローラ26を備えている。
【0033】
供給部20では、供給トレイ21内のシートSがピックアップローラ23によって送り出される。次いで、シートSは、分離ローラ24および分離パッド25によって、一枚ずつに分離される。その後、レジストレーションローラ26は、シートSの先端の位置を揃えた後、画像形成部30に向けてシートSを搬送する。詳しくは、レジストレーションローラ26は、搬送されてきたシートSに対して停止した状態で接触してシートSの先端の位置を揃え、回転を開始することでシートSを送り出す。
【0034】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、ベルトクリーナ10とを備えている。
【0035】
LEDユニット40は、LED取付部材5に対して揺動可能に連結されており、本体筐体2に設けられる位置決め部材によって適宜位置決めされて支持されている。
【0036】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー3と供給部20との間で前後方向に並んで配置されている。プロセスカートリッジ50は、感光体の一例としての感光ドラム51、帯電器52、現像ローラ53、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容室54、クリーニング部材の一例としてのクリーニングローラ55、撹拌部材の一例としてのアジテータ56などを備えて構成されている。
【0037】
プロセスカートリッジ50は、ブラック用、イエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各色のトナーが入った50K,50Y,50M,50Cの符号で示すものがシートSの搬送方向上流からこの順で並んで配置されている。なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した感光ドラム51、現像ローラ53、クリーニングローラ55などを特定する場合には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのそれぞれに対応させて、K、Y、M、Cの記号を付することとする。
【0038】
感光ドラム51は、トナーを担持可能な部材である。詳しくは、感光ドラム51の表面のうちLEDユニット40で露光された部分が、トナーを担持する。感光ドラム51は、複数のプロセスカートリッジ50のそれぞれに設けられている。感光ドラム51は、シートSの搬送方向に沿って一列に配列されている。
【0039】
現像ローラ53は、トナーを担持するローラである。現像ローラ53は、感光ドラム51に接触して感光ドラム51上の静電潜像にトナーを供給するように構成されている。
【0040】
現像ローラ53は、後述する切替機構SW(図7参照)を制御部100により制御することで、感光ドラム51に対して近接・離間可能となっている。具体的に、カラーモードにおいては、すべての現像ローラ53K,53Y,53M,53Cが、それぞれ対応する感光ドラム51K,51Y,51M,51Cに接触して各感光ドラム51K,51Y,51M,51Cにトナーを供給するようになっている。また、モノクロモードにおいては、ブラック用の現像ローラ53Kのみが感光ドラム51Kに接触し、その他の3色の現像ローラ53Y,53M,53Cは、対応する感光ドラム51Y,51M,51Cから離間するようになっている。さらに、後述するクリーニング処理においては、すべての現像ローラ53K,53Y,53M,53Cは、それぞれ対応する感光ドラム51K,51Y,51M,51Cから離間するようになっている。
【0041】
クリーニングローラ55は、感光ドラム51上のトナーを回収可能な部材である。クリーニングローラ55は、各感光ドラム51に対応するように各感光ドラム51に隣接して1つずつ設けられている。
【0042】
転写ユニット70は、供給部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、転写ベルト73と、転写ローラ74とを備えている。
【0043】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間に無端状の転写ベルト73が張設されている。転写ベルト73は、シートSを搬送するための部材である。転写ベルト73の外周面は、感光ドラム51に接触している。転写ベルト73の内側には、転写ローラ74が、各感光ドラム51に対向して4つ配置されている。
【0044】
転写ローラ74は、感光ドラム51との間で転写ベルト73を挟んでいる。シートSは、転写ベルト73と感光ドラム51によって搬送される。
【0045】
ベルトクリーナ10は、転写ベルト73に摺接して、転写ベルト73上に付着したトナー等を回収する装置であり、転写ベルト73の下方に配置されている。具体的に、ベルトクリーナ10は、摺接ローラ11と、回収ローラ12と、ブレード13と、廃トナー収容器14とを備えている。
【0046】
摺接ローラ11は、転写ベルト73の外周面に接触するように配置されている。摺接ローラ11は、バックアップローラ15との間で転写ベルト73を挟んでいる。摺接ローラ11は、転写ベルト73上の付着物を回収している。
【0047】
回収ローラ12は、摺接ローラ11に摺接するローラであり、摺接ローラ11上に付着した付着物を回収している。そして、回収ローラ12上の付着物は、回収ローラ12に摺接するように配置されたブレード13によって削り取られて、廃トナー収容器14内に入り込むようになっている。
【0048】
定着装置80は、第1定着部材81と、第2定着部材82とを備えている。なお、定着装置80の構造については、後で詳述する。
【0049】
このように構成される画像形成部30では、まず、感光ドラム51の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、LEDユニット40で露光される。これにより、感光ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に現像ローラ53よりトナーが供給されることで、感光ドラム51上にトナー像が担持される。
【0050】
転写ベルト73上に供給されたシートSが感光ドラム51と転写ベルト73の内側に配置される転写ローラ74との間を通過することで、感光ドラム51上に形成されたトナー像がシートS上に転写される。そして、シートSが第1定着部材81と第2定着部材82との間を通過することで、シートS上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0051】
排出部90は、排出側搬送経路91と、複数の搬送ローラ92とを備えている。トナー像が熱定着されたシートSは、搬送ローラ92によって排出側搬送経路91を搬送され、本体筐体2の外部に排出されて排出トレイ4に蓄積される。
【0052】
図2に示すように、定着装置80は、ヒータ110と、第1定着部材81と、第2定着部材82と、後述する圧力変更機構300(図4参照)とを備えている。第2定着部材82は、後述する圧力変更機構300によって第1定着部材81に向けて付勢されている。なお、以下の説明では、第2定着部材82を第1定着部材81に付勢する方向を、「所定方向」と称する。本実施形態では、所定方向は、後述する幅方向および移動方向と直交する方向であり、第1定着部材81と第2定着部材82が向かい合う方向である。
【0053】
第1定着部材81は、回転可能なローラ120を有する。第2定着部材82は、第1定着部材81との間でニップ部NPを形成する部材である。第2定着部材82は、ベルト130と、ニップ形成部材Nと、ホルダ140と、ステイ200と、ベルトガイドGと、摺動シート150とを備えている。なお、以下の説明では、ベルト130の幅方向を単に「幅方向」という。幅方向は、ローラ120の回転軸線が延びる方向、つまりローラ120の軸方向である。幅方向は、所定方向に直交している。
【0054】
ヒータ110は、ハロゲンランプであり、通電によって発光するとともに発熱し、輻射熱によってローラ120を加熱する。ヒータ110は、ローラ120の回転軸線に沿ってローラ120の内側を通るように配置されている。
【0055】
ローラ120は、幅方向に長い筒状のローラであり、ヒータ110によって加熱される。ローラ120は、金属などからなる素管121と、素管121の外周面を覆う弾性層122とを有している。弾性層122は、シリコンゴムなどのゴムからなる。ローラ120は、後述するサイドフレーム83(図4参照)に回転可能に支持されており、本体筐体2内に設けられた定着モータM2(図7参照)から駆動力が入力されることで図2の反時計回りに回転駆動する。
【0056】
ベルト130は、長尺筒状の部材であり、可撓性を有している。ベルト130は、第1定着部材81、詳しくはローラ120との間でニップ部NPを形成している。図示は省略するが、ベルト130は、金属や樹脂などからなる基材と、基材の外周面を覆う離型層とを有している。ベルト130は、ローラ120が回転したときにローラ120またはシートSとの摩擦によって図2の時計回りに従動回転する。ベルト130の内周面131には、グリスなどの潤滑剤が付けられている。ベルト130の内側には、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150が配置されている。
【0057】
つまり、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150は、ベルト130に覆われている。
【0058】
図2および図3に示すように、ニップ形成部材Nは、ローラ120との間でベルト130を挟んでニップ部NPを形成する部材である。ニップ形成部材Nは、上流ニップ形成部材N1と、下流ニップ形成部材N2とを備えている。
【0059】
上流ニップ形成部材N1は、上流パッドP1と、上流固定板B1とを有している。
上流パッドP1は、直方体状の部材である。上流パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。上流パッドP1は、ローラ120との間でベルト130を挟んで上流ニップ部NP1を形成する。
【0060】
なお、以下の説明では、上流ニップ部NP1および後で詳述するニップ部NPにおけるベルト130の移動方向を単に「移動方向」という。なお、本実施形態において、移動方向は、ローラ120の外周面に沿った方向であるが、この方向は、おおよそ所定方向と幅方向に直交する方向に沿った方向であるため、所定方向と幅方向に直交する方向として図示することとする。なお、移動方向は、ニップ部NPでのシートSの搬送方向と同じ方向である。
【0061】
上流パッドP1は、上流固定板B1のローラ120側の面に固定されている。上流固定板B1は、上流パッドP1よりも硬い部材、例えば金属などからなる。
【0062】
下流ニップ形成部材N2は、上流ニップ形成部材N1に対して移動方向の下流側に間隔を空けて配置されている。下流ニップ形成部材N2は、下流パッドP2と、下流固定板B2とを有している。
【0063】
下流パッドP2は、直方体状の部材である。下流パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。下流パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んで下流ニップ部NP2を形成する。下流パッドP2は、ベルト130の回転方向において、上流パッドP1から離れている。
【0064】
このため、上流ニップ部NP1と下流ニップ部NP2との間には、第2定着部材82からの圧力が直接作用しない中間ニップ部NP3が存在する。この中間ニップ部NP3では、ベルト130はローラ120に接触するものの、ローラ120との間でベルト130を挟む部材が存在しないため、圧力はほとんど加わらない。従って、シートSは、ローラ120によって加熱されつつ、ほぼ加圧されることなく中間ニップ部NP3を通過する。本実施形態では、上流ニップ部NP1の上流端から下流ニップ部NP2の下流端までの領域、即ち、ベルト130の外周面とローラ120とが接触する全ての領域をニップ部NPと称する。つまり、本実施形態では、ニップ部NPは、上流パッドP1および下流パッドP2からの押圧力が加わらない部分を含む。
【0065】
下流パッドP2は、下流固定板B2のローラ120側の面に固定されている。下流固定板B2は、下流パッドP2よりも硬い部材、例えば金属などからなる。
【0066】
なお、上流パッドP1の硬さは、ローラ120の弾性層122の硬さよりも大きい。また、下流パッドP2の硬さは、上流パッドP1の硬さよりも大きい。
【0067】
ここで、硬さとは、ISO7619-1に規定されているデュロメータ硬さのことである。デュロメータ硬さは、規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、上流パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、下流パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0068】
ホルダ140は、ニップ形成部材Nを保持する部材である。ホルダ140は、耐熱性を有する樹脂などからなる。ホルダ140は、ホルダ本体141と、2つの係合部142,143とを有している。
【0069】
ホルダ本体141は、ニップ形成部材Nを保持する部位である。ホルダ本体141の大部分は、幅方向において、ベルト130の範囲内に配置されている。ホルダ本体141は、ステイ200で支持されている。
【0070】
各係合部142,143は、ホルダ本体141の幅方向の各端部から延出している。各係合部142,143は、幅方向において、ベルト130の範囲外に配置されている。各係合部142,143は、後述する第1ステイ210の幅方向の各端部に係合する。
【0071】
ステイ200は、ホルダ140に対してニップ形成部材Nと反対側に位置してホルダ140を支持する部材である。ステイ200は、第1ステイ210と、連結部材CMによって第1ステイ210に連結される第2ステイ220とを備えている。
【0072】
第1ステイ210は、ホルダ140のホルダ本体141を支持する部材である。第1ステイ210は、金属などからなる。第1ステイ210は、ベース部211と、ヘミング加工により曲げられたヘミング曲げ部HBとを有している。
【0073】
ベース部211は、ホルダ140側の一端部に、ホルダ140のホルダ本体141に接触する接触面Ftを有している。接触面Ftは、所定方向と垂直な平面である。
【0074】
ベース部211は、幅方向の両端部に、後述する圧力変更機構300(図4参照)から力を受ける荷重入力部211Aをそれぞれ有している。荷重入力部211Aは、所定方向においてニップ形成部材Nとは反対側に開口する凹部であり、所定方向においてベース部211のニップ形成部材Nとは反対側の端部に形成されている。
【0075】
荷重入力部211Aには、樹脂などからなる緩衝部材BFが取り付けられている。緩衝部材BFは、金属製のベース部211と、後述する金属製のアーム310(図4参照)とが擦れ合うのを抑制するための部材である。緩衝部材BFは、荷重入力部211Aに嵌合する嵌合部BF1と、ベース部211の幅方向の端部に対して移動方向の上流側と下流側に配置される一対の脚部BF2とを有している。
【0076】
ベルトガイドGは、ベルト130の内周面131をガイドする部材である。ベルトガイドGは、耐熱性を有する樹脂などからなる。ベルトガイドGは、上流ガイドG1と、下流ガイドG2とを有している。
【0077】
摺動シート150は、各パッドP1,P2とベルト130との摩擦抵抗を低減するための矩形のシートである。摺動シート150は、ニップ部NPにおいて、ベルト130の内周面131と各パッドP1,P2との間で挟まれている。摺動シート150は、弾性変形可能な材料からなる。なお、摺動シート150の材料は、どのようなものであってもよいが、本実施形態では、ポリイミドを含有した樹脂シートを採用している。
【0078】
図2に示すように、上流ガイドG1、下流ガイドG2および第1ステイ210は、ネジSCによって共締めされている。
【0079】
図4に示すように、定着装置80は、フレームFLと、圧力変更機構300とをさらに備えている。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームであり、金属などからなる。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82に対して幅方向の両側に配置されるサイドフレーム83およびブラケット84と、各サイドフレーム83に接続される接続フレーム85とを備えている。
【0080】
サイドフレーム83は、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームである。サイドフレーム83は、後述する第1バネ320の一端部と係合するバネ係合部83Aを有している。
【0081】
ブラケット84は、第2定着部材82を所定方向に移動可能に支持する部材であり、サイドフレーム83に固定されている。詳しくは、ブラケット84は、第1ステイ210の端部をホルダ140の係合部143を介して所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aを有している。第1長孔84Aは、所定方向に長い長孔である。
【0082】
圧力変更機構300は、ニップ部NPのニップ圧を変更する機構である。図4および図5(a)に示すように、圧力変更機構300は、アーム310と、第1バネ320と、第2バネ330と、カム340とを備えている。アーム310、第1バネ320、第2バネ330およびカム340は、フレームFLの幅方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。
【0083】
アーム310は、緩衝部材BFを介して第1ステイ210を押圧するための部材である。アーム310は、第2定着部材82を支持するとともに、サイドフレーム83に回動可能に支持されている。
【0084】
アーム310は、アーム本体311と、カムフォロア350とを有している。アーム本体311は、金属などからなるL形状の板状部材である。
【0085】
アーム本体311は、サイドフレーム83に回動可能に支持される一端部311Aと、第1バネ320が連結される他端部311Bと、第2定着部材82を支持する係合穴311Cとを有している。係合穴311Cは、一端部311Aと他端部311Bの間に配置され、緩衝部材BFと係合している。
【0086】
また、アーム本体311は、カム340に向けて延びるガイド突起312をさらに有している。ガイド突起312は、他端部311Bから係合穴311Cに向かう方向において、他端部311Bと係合穴311Cの間に配置されている。
【0087】
カムフォロア350は、アーム本体311のガイド突起312に対して移動可能に取り付けられており、カム340に接触可能となっている。カムフォロア350は、樹脂などからなり、ガイド突起312に嵌合される筒状部351と、筒状部351の一端に設けられる接触部352と、筒状部351の他端に設けられるフランジ部353とを有している。
【0088】
筒状部351は、ガイド突起312によって、当該ガイド突起312の延びる方向に移動可能に支持されている。接触部352は、筒状部351のカム340側の端部の開口を塞ぐ壁であり、カム340とガイド突起312の先端の間に配置されている。フランジ部353は、筒状部351の他端から、カムフォロア350の移動方向に直交する方向に突出している。
【0089】
そして、筒状部351とアーム本体311の間には、第2バネ330が配置されている。これにより、アーム本体311は、第1バネ320によって付勢されるとともに、第2バネ330によって付勢可能となっている。
【0090】
第1バネ320は、第2定着部材82に対して第1付勢力を付与するバネである。詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第1付勢力を付与している。
【0091】
より詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311、緩衝部材BF、第1ステイ210およびホルダ140を介して、上流パッドP1および下流パッドP2をローラ120に向けて付勢している。第1バネ320は、金属などからなる引張コイルバネであり、一端がサイドフレーム83のバネ係合部83Aに連結され、他端がアーム本体311の他端部311Bに連結されている。
【0092】
第2バネ330は、第2定着部材82に対して第1付勢力とは逆向きの第2付勢力を付与可能なバネである。詳しくは、第2バネ330は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第2付勢力を付与可能となっている。第2バネ330は、金属などからなる圧縮コイルバネであり、圧縮コイルバネで囲まれる空間内にガイド突起312が挿入された状態で、筒状部351とアーム本体311の間に配置されている。
【0093】
カム340は、第2バネ330の伸縮状態を、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与されない第1伸縮状態と、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与される第2伸縮状態と、第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態とに変更可能とする部材である。カム340は、図5(a)に示す第1カム位置と、第1カム位置よりも図示時計回りに約90度回動した位置である中間カム位置(図示略)と、図6(a)に示す第2カム位置との間で回動可能となるように、サイドフレーム83に支持されている。
【0094】
カム340は、樹脂などからなり、第1部位341と、第2部位342と、第3部位343とを有している。第1部位341、第2部位342および第3部位343は、カム340の外周面上に位置している。
【0095】
第1部位341は、カム340が第1カム位置に位置するときに、カムフォロア350に最も近い部位である。図5(a)に示すように、カム340が第1カム位置に位置するときに、第1部位341は、カムフォロア350から離れている。
【0096】
第2部位342は、カム340が中間カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第2部位342は、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約90度回動した際にカムフォロア350と接触する部位である。第2部位342からカム340の回動中心までの距離は、第1部位341からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0097】
第3部位343は、カム340が第2カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第3部位343は、図6(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約270度回動した際、言い換えると、中間カム位置から図示時計回りに約180度回動した際に、カムフォロア350と接触する部位である。第3部位343からカム340の回動中心までの距離は、第2部位342からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0098】
カム340が第1カム位置に位置するときには、カム340がカムフォロア350から離れていることにより、第2バネ330の伸縮状態は第1伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、図5(a)に示す第1姿勢となっている。
【0099】
詳しくは、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、カム340がカムフォロア350から離れているため、第2バネ330の第2付勢力は、アーム本体311を介して第2定着部材82に付与されず、第1バネ320の第1付勢力のみがアーム本体311を介して第2定着部材82に付与されている。このように第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されていないときには、ニップ圧は、最大ニップ圧となる。
【0100】
カム340は、図5(a)に示す第1カム位置から中間カム位置に回動すると、カムフォロア350と接触して、カムフォロア350をアーム本体311に対して所定量移動させる。これにより、カム340が中間カム位置に位置するときには、第2バネ330の伸縮状態は、第1伸縮状態よりも変形した第2伸縮状態となる。
【0101】
カム340が中間カム位置に位置するときには、カム340でカムフォロア350が支持されるため、第2バネ330の第2付勢力がアーム本体311を介して第2定着部材82に第1付勢力とは逆向きに付与される。そのため、第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されているときには、ニップ圧が最大ニップ圧よりも小さい中間ニップ圧となる。
【0102】
なお、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第2伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、前述した第1姿勢のままとなっている。ここで、下流パッドP2は、ローラ120に対して押し付けられている状態、即ち、下流パッドP2に対して荷重が加わっている状態では、その荷重の大小に関わらず、ほぼ変形しない。そして、下流パッドP2がほぼ変形しないため、下流パッドP2を支持するステイ200、さらにはステイ200を支持するアーム310の姿勢も、荷重の大小によらずほぼ一定に保たれる。また、上流パッドP1の位置は、下流パッドP2の位置で決まるため、下流パッドP2がほぼ変形せず、その位置も変形しない状態では、上流パッドP1の位置も変わらない。従って、強ニップ(最大ニップ圧)と弱ニップ(中間ニップ圧)では、どちらの場合でも全ニップ幅(上流ニップ部NP1の入口から下流ニップ部NP2の出口までの長さ)は変わらず、アーム310の姿勢もほぼ一定に保たれる。
なお、下流パッドP2が変形しない理由は、下流パッドP2の硬度が上流パッドP1およびローラ120の弾性層122の硬度よりも十分に高いためである。より詳しくは、下流パッドP2は、下流ニップ部NP2で要求される最大ニップ圧(強ニップ時の下流ニップ圧)から最小ニップ圧(弱ニップ時の下流ニップ圧)までの範囲に収まるニップ圧ではほぼ変形しない程度の硬度を有しているためである。
言い換えると、下流ニップで要求される最大ニップ圧と最小ニップ圧は、下流パッドP2がほぼ変形しない程度の大きさに設定されている。
ここで、「下流パッドP2がほぼ変形しない」とは下流パッドP2によって形成される下流ニップ部NP2のニップ幅(ベルト移動方向のニップの長さ及び位置)の変形量が、画質や用紙の搬送に影響を及ぼさない程度に、下流パッドP2が変形することを含む(下流ニップ幅の変形量がゼロではない)。
【0103】
このように第2バネ330の伸縮状態が第1伸縮状態および第2伸縮状態のいずれの状態であっても、アーム本体311の姿勢が第1姿勢となるため、ニップ圧が最大ニップ圧であるときと中間ニップ圧であるときの両方の状態において、上流パッドP1および下流パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んでいる。詳しくは、各状態において、ローラ120に対する第2定着部材82の位置が略同じ位置であるため、各状態でのニップ部NPの幅(移動方向の長さ)が略同じ大きさとなっている。
【0104】
ここで、最大ニップ圧または中間ニップ圧は、印字時、詳しくはシートSにトナー像を定着させる際に設定される第1ニップ圧である。例えば、シートSの厚さが第1厚さである場合に最大ニップ圧が設定され、シートSの厚さが第1厚さよりも大きい第2厚さである場合に中間ニップ圧が設定される。
【0105】
また、第1カム位置または中間カム位置は、ニップ圧が最大ニップ圧または中間ニップ圧、つまり第1ニップ圧になる第1位置である。また、第2カム位置は、ニップ圧が最小ニップ圧、つまり第2ニップ圧になる第2位置である。
【0106】
カム340は、中間カム位置から図6(a)に示す第2カム位置に回動する場合には、カムフォロア350をアーム本体311に対してさらに移動させた後、カムフォロア350を介してアーム本体311を押圧する。これにより、第2バネ330の伸縮状態が第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態となるとともに、アーム本体311が第1姿勢から当該第1姿勢と異なる第2姿勢に回動する。
【0107】
詳しくは、カム340を中間カム位置から第2カム位置に回動させていく過程における最初の段階では、カムフォロア350の接触部352がガイド突起312の先端に近づくように、カムフォロア350がアーム本体311に対して移動する。接触部352がガイド突起312の先端に接触すると、第2バネ330の伸縮状態が第3伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第3伸縮状態にしているときには、カムフォロア350の一部である接触部352がカム340とガイド突起312の間に挟まれる。言い換えると、接触部352はカム340に接触するとともに、ガイド突起312とも接触する。その後、カム340をさらに回動させると、カム340が接触部352を介してガイド突起312を押圧するので、アーム本体311が第1バネ320の付勢力に抗して第1姿勢から第2姿勢に回動する。
【0108】
これにより、アーム本体311が第2姿勢であるときには、第2定着部材82は、アーム本体311が第1姿勢であるときの位置(図5(b)の位置)よりもローラ120から離れた位置(図6(b)の位置)に配置される。以下の説明では、アーム本体311が第1姿勢であるときの第2定着部材82の位置を、「ニップ位置」とも称し、アーム本体311が第2姿勢であるときの第2定着部材82の位置を、「ニップリリース位置」とも称する。第2定着部材82は、カム340の回転に伴って、ニップ位置と、ニップ位置よりもローラ120から離れたニップリリース位置との間で移動する。
【0109】
このように第2定着部材82のローラ120に対する位置が変わることで、カム340が第2カム位置に位置してアーム本体311が第2姿勢であるときには、図6(b)に示すように、ニップ部NPの幅が第1姿勢のときよりも小さくなるとともに、ニップ圧が中間ニップ圧よりも小さな最小ニップ圧となる。つまり、カム340によってアーム310の姿勢が変わるため、ニップ圧及びニップ幅が変わるようになっている。詳しくは、アーム310が第2姿勢であるときには、上流パッドP1とローラ120との間でのみベルト130が挟まれ、下流パッドP2とローラ120との間ではベルト130が挟まれないようになっている。これにより、アーム310が第2姿勢であるときには、上流ニップ圧と上流ニップ幅が小さくなり、下流ニップ圧は無くなる。
【0110】
ここで、最小ニップ圧は、印字を行っていない非印字時、詳しくは、定着装置80(後述する定着モータM2)が停止している際に設定される第2ニップ圧である。また、最小ニップ圧は、圧力変更機構300で変更するニップ圧の範囲のうち最小のニップ圧であり、前述した最大ニップ圧は、圧力変更機構300で変更するニップ圧の範囲のうち最大のニップ圧である。
【0111】
なお、本実施形態では、ニップ圧が第2ニップ圧であるときにおいて、上流パッドP1がローラ120との間でベルト130を挟んでいるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ニップ圧が第2ニップ圧であるときにおいて、上流パッドP1がローラ120との間でベルト130を挟まなくてもよい。なお、この場合、第2ニップ圧は0となる。
【0112】
図7に示すように、カラープリンタ1は、現像モータM1と、定着モータM2と、現像クラッチC1と、切替機構SWと、圧力変更クラッチC2と、シートセンサSE1と、定着シートセンサSE2と、位置センサSE3とをさらに備えている。
【0113】
現像モータM1は、主に、各現像ローラ53を回転駆動するためのモータであり、正逆回転可能に構成されている。本実施形態では、印字時における現像モータM1の回転方向を、正方向とする。現像モータM1と各現像ローラ53は、図示せぬギヤとクラッチを介して連結されている。現像モータM1は、現像クラッチC1と図示せぬギヤを介して切替機構SWに連結されている。現像モータM1は、圧力変更クラッチC2と図示せぬギヤを介して圧力変更機構300のカム340に連結されている。
【0114】
定着モータM2は、第1定着部材81を回転駆動するためのモータである。
【0115】
現像クラッチC1は、例えば電磁クラッチである。現像クラッチC1は、現像モータM1の駆動力が切替機構SWに伝達される第1伝達状態と、現像モータM1の駆動力が切替機構SWに伝達されない第1切断状態とに切替可能となっている。
【0116】
切替機構SWは、現像ローラ53の状態を、現像ローラ53が感光ドラム51に圧接した圧接状態と、現像ローラ53が感光ドラム51から離間した離間状態とに切り替えるための機構である。切替機構SWは、現像ローラ53の状態が離間状態であり、且つ、現像モータM1が正回転している場合に、現像クラッチC1が第1伝達状態になると、現像ローラ53の状態を離間状態から圧接状態に切り替える。また、切替機構SWは、現像ローラ53の状態が圧接状態であり、且つ、現像モータM1が正回転している場合に、現像クラッチC1が第1伝達状態になると、現像ローラ53の状態を圧接状態から離間状態に切り替える。
【0117】
圧力変更クラッチC2は、例えば電磁クラッチである。圧力変更クラッチC2は、現像モータM1の駆動力が圧力変更機構300のカム340に伝達される第2伝達状態と、現像モータM1の駆動力が圧力変更機構300のカム340に伝達されない第2切断状態とに切替可能となっている。カム340は、第2カム位置に位置し、且つ、現像モータM1が正回転している場合に、圧力変更クラッチC2が第2伝達状態になると、図6に示す第2カム位置から図5に示す第1カム位置に向けて図示反時計回りに回動する。また、カム340は、第1カム位置に位置し、且つ、現像モータM1が逆回転している場合に、圧力変更クラッチC2が第2伝達状態になると、図5に示す第1カム位置から図6に示す第2カム位置に向けて図示時計回りに回動する。
【0118】
シートセンサSE1および定着シートセンサSE2は、シートSの有無を検出するセンサである。各シートセンサSE1,SE2は、例えば、搬送されるシートSに押されて揺動する揺動レバーと、揺動レバーの揺動を検知する光センサとを備えている。本実施形態では、シートSの通過中、つまりシートSによって揺動レバーが倒されているときには、シートセンサSE1,SE2がONになっているものとする。シートSの非通過中、つまりシートSによって揺動レバーが倒されていないときには、シートセンサSE1,SE2がOFFになっているものとする。なお、揺動レバーの姿勢と、シートセンサSE1,SE2のON・OFFの関係は、逆であってもよい。
【0119】
本明細書において、「所定の事象を検出するセンサ」とは、制御部100によって所定の事象を判定するための信号を出力するセンサを意味する。例えば、前述した「シートSの有無を検出するセンサ」とは、制御部100によってシートSの有無を判定するための信号を出力するセンサを意味する。
【0120】
本実施形態では、制御部100は、シートセンサSE1,SE2がONになっている場合には、シートセンサSE1,SE2の位置にシートSが有ると判定する。また、制御部100は、シートセンサSE1,SE2がOFFになっている場合には、シートセンサSE1,SE2の位置にシートSが無いと判定する。
【0121】
シートセンサSE1は、シートSの搬送方向において定着装置80の上流に配置されている。詳しくは、シートセンサSE1は、シートSの搬送方向において、レジストレーションローラ26よりも下流、且つ、画像形成部30よりも上流に配置されている。
【0122】
定着シートセンサSE2は、定着装置80内のシートSの有無を検出するセンサである。定着シートセンサSE2は、定着装置80に設けられている。定着シートセンサSE2は、シートSの搬送方向において、ニップ部NPの下流に配置されている。
【0123】
位置センサSE3は、第2定着部材82の位置を検出するセンサである。詳しくは、位置センサSE3は、ニップリリース位置の近くに配置され、第2定着部材82がニップリリース位置近傍に近づいたときに、第2定着部材82を検出する。位置センサSE3は、例えば、図5(a)に示すように、アーム本体311の揺動を検出することが可能な位置に配置される。なお、位置センサSE3は、第2定着部材82の移動に連動する部材を検出可能な位置であればどのような位置に配置してもよい。
【0124】
位置センサSE3は、例えば、発光部と受光部を有する光センサとすることができる。そして、図5(a)に示すように、第2定着部材82がニップ位置(アーム本体311が第1姿勢)に位置するときには、発光部から出射された光は、アーム本体311に遮られず、受光部で受光される。また、図6(a)に示すように、第2定着部材82がニップリリース位置(アーム本体311が第2姿勢)に位置するときには、発光部から出射された光は、アーム本体311に遮られ、受光部で受光されない。このように位置センサSE3を構成することで、第2定着部材82がニップリリース位置近傍に近づいたことを位置センサSE3で検出することが可能となっている。
【0125】
制御部100は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、ASICおよび入出力回路などを備えている。制御部100は、外部のコンピュータから出力されてくる印字指令と、各センサSE1~SE3から出力されてくる信号と、ROM等に記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、各種処理を実行する。制御部100は、展開処理と、印字処理と、準備処理と、ニップ圧低下処理と、ニップ圧増加処理と、判定処理と、クリーニング処理と、現像離間処理と、現像圧接処理とを実行可能となっている。
【0126】
展開処理は、画像データを画像形成部30でのトナー像の形成に使用されるデータ、詳しくは感光ドラム51を露光するためのデータに展開する処理である。詳しくは、展開処理は、複数枚のシートSを連続して印字する場合には、シートSごとに実行される処理である。制御部100は、所定のシートSに対して印字処理を実行する前に、所定のシートSに印字すべき画像データに対して展開処理を実行し、展開処理が完了した後に、所定のシートSに対する印字処理を実行する。また、制御部100は、所定のシートSに対応した画像データに対する展開処理の完了後に、所定のシートSの次に搬送するシートSに対応した画像データに対する展開処理を連続して開始する。以下の説明では、第1シートSH1(例えば、1枚目のシートS)に対し、第1シートSH1に対応した第1画像データを画像形成部30でのトナー像の形成に使用される第1データに展開する展開処理を、「第1展開処理」とも称し、第1シートSH1の次に搬送される第2シートSH2(例えば、2枚目のシートS)に対し、第2シートSH2に対応した第2画像データを画像形成部30でのトナー像の形成に使用される第2データに展開する展開処理を、「第2展開処理」とも称する。つまり、制御部100は、複数枚のシートSを連続して印字する際には、第1展開処理と第2展開処理を繰り返し実行している。
【0127】
印字処理は、シートSに印字を行う処理である。印字処理は、画像形成処理と、定着処理とを有している。印字処理では、画像形成処理の後、定着処理が実行される。印字処理は、画像形成処理の開始によって開始され、定着処理の終了によって終了する。
【0128】
画像形成処理は、シートSに対し、展開したデータに基づいて画像形成部30にトナー像を形成させる処理である。詳しくは、画像形成処理は、複数枚のシートSを連続して印字する場合には、シートSごとに実行される処理である。画像形成処理は、所定のシートSが感光ドラム51に到達するタイミングに合わせて各LEDユニット40による露光を実行し、感光ドラム51に形成したトナー像を所定のシートSに転写させる処理である。画像形成処理は、所定のシートSの供給開始から所定時間後に実行する露光の開始により開始され、所定のシートSへのトナー像の転写の完了により終了する。なお、以下の説明では、第1シートSH1(例えば、1枚目のシートS)にトナー像を形成する画像形成処理を、「第1画像形成処理」とも称し、第1シートSH1の次に搬送される第2シートSH2(例えば、2枚目のシートS)にトナー像を形成する画像形成処理を、「第2画像形成処理」とも称する。
【0129】
定着処理は、シートSに対し、展開したデータに基づき形成されたトナー像を定着装置80によって定着させる処理である。詳しくは、定着処理は、ニップ部NPの温度が定着に適した温度に維持されるようにヒータ110を制御する処理と、定着モータM2によって第1定着部材81を所定の回転速度で回転させる処理と、ニップ圧を第1ニップ圧に維持する処理と、を含む。所定のシートに対する定着処理は、少なくとも所定のシートがニップ部NPを通過している間、実行される。本実施形態では、所定のシートに対する定着処理は、所定のシートSの先端がニップ部NPに到達するタイミングで開始されたものとする。また、所定のシートに対する定着処理は、所定のシートSの後端が定着シートセンサSE2を通り抜けたタイミングで終了したものとする。すなわち、「定着処理の終了」とは、所定のシートSの後端が定着シートセンサSE2を通り抜けたタイミングを意味する。なお、以下の説明では、第1シートSH1(例えば、1枚目のシートS)に対して第1データに基づき形成されたトナー像を定着させる定着処理を、「第1定着処理」とも称し、第1シートSH1の次に搬送される第2シートSH2(例えば、2枚目のシートS)に対して第2データに基づき形成されたトナー像を定着させる定着処理を、「第2定着処理」とも称する。
【0130】
画像形成処理および定着処理を有する印字処理は、所定のシートの供給開始に基づいて実行される露光の開始により開始され、所定のシートSが定着シートセンサSE2を通り抜けたタイミングで終了する。なお、以下の説明では、第1シートSH1に対して行う印字処理を、「第1印字処理」とも称し、第2シートSH2に対して行う印字処理を、「第2印字処理」とも称する。制御部100は、複数枚のシートSを連続して印字する際には、第1印字処理と第2印字処理を繰り返し実行している。
【0131】
準備処理は、第1画像形成処理および第2画像形成処理を実行する前に、画像形成部30および定着装置80を動作させる処理である。具体的に、制御部100は、準備処理において、プロセスカートリッジ50内のトナーを撹拌させるためにアジテータ56等を回転させる処理と、帯電器52により感光ドラム51を帯電させる処理と、ニップ部NPの温度が定着に適した定着温度になるようにヒータ110を制御する処理と、第1定着部材81等を回転させる処理を実行する。
【0132】
制御部100は、印字指令を受けてから1枚目のシートSの供給を開始するまでの間に、必ず準備処理を実行する。また、制御部100は、2枚目以降のシートSの供給を開始する場合には、展開処理の進捗状況などに応じて、準備処理を選択的に実行する。なお、印字指令を受けた後、最初に実行する準備処理においては、後述する現像圧接処理およびニップ圧増加処理も実行する。以下の説明では、最初に実行する準備処理を、「初回準備処理」とも称する。
【0133】
ニップ圧低下処理は、ニップ部NPの圧力を最大ニップ圧または中間ニップ圧から最小ニップ圧に変更する処理である。具体的に、制御部100は、ニップ圧低下処理において、現像クラッチC1が第1切断状態となる状態で現像モータM1を逆回転させた後、圧力変更クラッチC2を第2伝達状態にすることで、第1カム位置または中間カム位置に位置するカム340を、第2カム位置に回動させる。また、制御部100は、逆回転時の現像モータM1の回転速度を、印字中の回転速度よりも小さくする。なお、制御部100は、印字中においては、現像モータM1を正回転させる。
【0134】
ニップ圧増加処理は、ニップ部NPの圧力を最小ニップ圧から中間ニップ圧または最大ニップ圧に変更する処理である。具体的に、制御部100は、ニップ圧増加処理において、現像クラッチC1が第1切断状態となる状態で現像モータM1を正回転させた後、圧力変更クラッチC2を第2伝達状態にすることで、第2カム位置に位置するカム340を、中間カム位置または第1カム位置に回動させる。また、制御部100は、ニップ圧増加処理において、現像モータM1の回転速度を、印字中の回転速度よりも小さくする。
【0135】
クリーニング処理は、クリーニングローラ55上のトナーを感光ドラム51および転写ベルト73を介してベルトクリーナ10で回収する処理である。具体的に、制御部100は、クリーニング処理において、クリーニングローラ55にトナーと同極性の電圧を印加し、転写ローラ74および摺接ローラ11にトナーとは逆極性の電圧を印加する。これにより、クリーニングローラ55上のトナーが、感光ドラム51に移動した後、転写ベルト73に移動し、ベルトクリーナ10で回収される。
【0136】
現像離間処理は、現像ローラ53の状態を圧接状態から離間状態に切り替える処理である。具体的に、制御部100は、現像ローラ53の状態が圧接状態であり、且つ、現像モータM1が正回転している場合に、現像クラッチC1を第1伝達状態にすることで、現像ローラ53を圧接状態から離間状態に切り替える。
【0137】
現像圧接処理は、現像ローラ53の状態を離間状態から圧接状態に切り替える処理である。具体的に、制御部100は、現像ローラ53の状態が離間状態であり、且つ、現像モータM1が正回転している場合に、現像クラッチC1を第1伝達状態にすることで、現像ローラ53を離間状態から圧接状態に切り替える。
【0138】
判定処理は、第1印字処理(第1定着処理)の終了よりも前に開始された第2展開処理が完了したか否かを判定する処理である。制御部100は、判定処理での判定結果と、判定したタイミングとに応じて、各種処理を実行する。
【0139】
具体的に、制御部100は、第1印字処理(第1定着処理)の終了から第1所定時間T1の間において、第2展開処理が完了したと判定した場合には、ニップ圧低下処理を実行せずに、第2印字処理(第2画像形成処理)を実行する。制御部100は、第1印字処理(第1定着処理)の終了から第1所定時間T1の間において、第2展開処理が完了していないと判定した場合には、第1所定時間T1の経過後にニップ圧低下処理を実行し、第2展開処理が完了した後にニップ圧増加処理を実行してから、第2印字処理(第2画像形成処理)を実行する。
【0140】
制御部100は、第1印字処理の終了から、第1所定時間T1よりも短い第2所定時間T2の間に、第2展開処理が完了していないと判定した場合には、第1印字処理の終了から第2所定時間T2の経過後にクリーニング処理を開始する。制御部100は、クリーニング処理の開始後であって、且つ、第1印字処理の終了から第1所定時間T1の間に第2展開処理が完了していないと判定した場合には、ニップ圧低下処理をクリーニング処理と並行して実行する。
【0141】
本実施形態では、第1所定時間T1と第2所定時間T2の関係は、以下の式(1)で示す関係となっている(図10(b)も参照)。
T1=T2+Tc-Tn
Tn:ニップ圧低下処理にかかる時間
Tc:クリーニング処理にかかる時間
【0142】
制御部100は、ニップ圧低下処理の実行中に、第2展開処理が完了したと判定した場合には、ニップ圧低下処理の終了後にニップ圧増加処理を連続して実行する。制御部100は、クリーニング処理の開始後であって、且つ、第1印字処理の終了から第1所定時間T1の経過前に第2展開処理が完了したと判定した場合には、ニップ圧低下処理を実行せずに、第2画像形成処理を実行するための準備処理を、クリーニング処理と並行して実行する。
【0143】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。制御部100は、印字指令を受けると、図8に示す処理を実行する。
【0144】
図8に示す処理において、制御部100は、まず、初回準備処理を実行する(S1)。ここで、非印字時においては、各現像ローラ53は離間状態となっており、ニップ部NPのニップ圧は最小ニップ圧となっている。制御部100は、初回準備処理において、ヒータ110および帯電器52をONにし、第1定着部材81、現像ローラ53、感光ドラム51、アジテータ56等を回転させる処理の他、現像圧接処理およびニップ圧増加処理を実行する。
【0145】
ステップS1の後、制御部100は、1枚目のシートSに対して印字処理を開始する(S2)。詳しくは、制御部100は、印字処理の前にシートSの供給を開始し、シートSの供給開始を基準にして印字処理を開始する。ステップS2の後、制御部100は、シートセンサSE1がONからOFFに切り替わったか否かを判定することで、シートSの後端がシートセンサSE1を通過したか否かを判定する(S3)。
【0146】
なお、シートSの後端がシートセンサSE1を通過したときには、シートSへのトナー像の転写が略完了しているため、シートSの後端がシートセンサSE1を通過してから一定時間の経過後に、ステップS2で開始した印字処理は終了する。また、現在の印字処理の終了後に連続して次の印字処理を行わない場合には、制御部100は、ヒータ110をOFFにする。
【0147】
ステップS3においてシートセンサSE1がONからOFFに切り替わったと判定した場合には(Yes)、制御部100は、次ページがあるか否か、詳しくは次ページのシートSに対する画像データがあるか否かを判定する(S4)。なお、以下の説明では、便宜上、「シートセンサSE1がONからOFFに切り替わった」ことを、単に、「シートセンサSE1がOFFになった」とも称する。
【0148】
ステップS4において次ページがないと判定した場合には(No)、制御部100は、現像離間処理やニップ圧低下処理などの後処理を行って、本処理を終了する。ステップS4において次ページがあると判定した場合には(Yes)、制御部100は、シートセンサSE1がOFFになる前において、次ページに対する画像データの展開処理が完了しているか否かを判定する(S5)。ステップS5において次ページの展開処理が完了していると判定した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS2の処理に戻って、前回のステップS2で開始した印字処理の終了後に連続して、次ページに対する印字処理を開始する(図9(a)参照)。
【0149】
ステップS5において次ページの展開処理が完了していないと判定した場合には(No)、制御部100は、現像離間処理を実行する(S6)。ステップS6の後、制御部100は、現像離間処理の実行中において、次ページの展開処理が完了しているか否かを判定する(S7)。
【0150】
現像離間処理の実行中において次ページの展開処理が完了していると判定した場合には(S7:Yes)、制御部100は、現像圧接処理を開始した後(S17)、ステップS2の処理に戻って、次ページに対する印字処理を開始する。詳しくは、制御部100は、現像圧接処理が完了する前に、次ページに対する印字処理を開始する(図9(b)参照)。
【0151】
ここで、現像圧接処理は、感光ドラム51のうちLEDユニット40によって露光された部分が現像ローラ53に対応した位置に到達するまでの間に、完了していればよい。
【0152】
現像離間処理の実行中において次ページの展開処理が完了していないと判定した場合には(S7:No)、制御部100は、所定の待機時間の間、待機する(S8)。ここで、ステップS8の待機処理は、次ページの印字処理を実行する前に、クリーニング処理をなるべく実行しないようにするための処理である。なお、待機処理はなくてもよい。
【0153】
ステップS8の後、制御部100は、待機処理中において、次ページの展開処理が完了しているか否かを判定する(S9)。ステップS9において次ページの展開処理が完了していると判定した場合には(Yes)、制御部100は、次ページに対する準備処理と現像圧接処理とを実行し(S18)、ステップS2の処理に戻って、次ページに対する印字処理を開始する。なお、制御部100は、次ページに対する準備処理において、ヒータ110をONにして、ニップ部NPの温度を定着温度まで上昇させる。
【0154】
待機処理中において次ページの展開処理が完了していないと判定した場合には(S9:No)、制御部100は、クリーニング処理を開始する(S10)。ステップS10の後、制御部100は、クリーニング処理中において、次ページの展開処理が完了したか否かを判定する(S11)。
【0155】
クリーニング処理中において次ページの展開処理が完了したと判定した場合には(S11:Yes)、制御部100は、クリーニング処理と並行してステップS18の処理を実行する(図9(c)参照)。
【0156】
クリーニング処理中において次ページの展開処理が完了していないと判定した場合には(S11:No)、制御部100は、第1印字処理が終了してから、詳しくは定着シートセンサSE2がONからOFFに切り替わってから、第1所定時間T1が経過したか否かを判定する(S12)。つまり、ステップS10~S12において、制御部100は、クリーニング処理中であって、かつ、第1印字処理の終了から第1所定時間T1が経過する前に、次ページの展開処理が完了したか否かを判定している。
【0157】
ステップS12において第1所定時間T1が経過していないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS11の処理に戻る。ステップS12において第1所定時間T1が経過したと判定した場合には(Yes)、制御部100は、ニップ圧低下処理をクリーニング処理と並行して実行する(S13、図10(a)参照)。
【0158】
ステップS13の後、制御部100は、ニップ圧低下処理中において、次ページの展開処理が完了しているか否かを判定する(S14)。ニップ圧低下処理中において次ページの展開処理が完了していると判定した場合には(S14:Yes)、制御部100は、ニップ圧増加処理を実行した後(S19)、ステップS18の処理に移行する(図10(a)参照)。
【0159】
ニップ圧低下処理中において次ページの展開処理が完了していないと判定した場合には(S14:No)、制御部100は、感光ドラム51、現像ローラ53、第1定着部材81などの各部材の駆動を停止し、ヒータ110への通電を停止し、帯電器52への電圧印加を停止する全停止処理を実行する(S15)。
【0160】
ステップS15の後、制御部100は、全停止処理中において、次ページの展開処理が完了したか否かを繰り返し判定する(S16)。全停止処理中において次ページの展開処理が完了したと判定した場合には(S16:Yes)、制御部100は、ステップS19の処理に移行する(図10(b)参照)。
【0161】
次に、制御部100の動作の代表的な例について図9および図10を参照して説明する。図9および図10では、印字指令を受けてから最初に印字する1枚目のシートSである第1シートSH1と、第1シートSH1の次に搬送される2枚目のシートSである第2シートSH2とに対して、各処理を実行する例を図示している。なお、3枚目以降のシートSについても、略同様の処理が行われる。
【0162】
図9(a)に示すように、制御部100は、印字指令を受けると(時刻t1)、第1展開処理を開始するとともに、初回準備処理を開始する。初回準備処理中において第1展開処理が完了すると(時刻t2)、制御部100は、第2展開処理を開始する。その後、初回準備処理が完了すると(時刻t3)、制御部100は、第1印字処理を開始する。
【0163】
なお、初回準備処理は、ニップ部NPの温度が定着温度付近まで上昇したときに終了することが可能であるが、制御部100は、ニップ部NPの温度が定着温度付近まで上昇したときに第1展開処理が完了していない場合には、初回準備処理を継続して行う。そのため、第1印字処理は、常に初回準備処理の後に連続して実行される。
【0164】
第1印字処理中においてシートセンサSE1がOFFになる時刻t5よりも前に、第2展開処理が完了すると(時刻t4)、制御部100は、第1印字処理の終了後に連続して第2印字処理を実行する(時刻t6)。
【0165】
図9(b)に示すように、シートセンサSE1がOFFになっても、第2展開処理が完了していない場合には、制御部100は、現像離間処理を開始する(時刻t11)。現像離間処理中において第2展開処理が完了した場合には(時刻t12)、制御部100は、現像離間処理の終了後に連続して、現像圧接処理を開始する(時刻t13)。その後、制御部100は、現像圧接処理の実行中における所定のタイミングで(時刻t14)、第2印字処理を実行する。
【0166】
図9(c)に示すように、現像離間処理中に第2展開処理が完了しなかった場合には、制御部100は、現像離間処理の終了後に連続して待機処理を実行する(時刻t21)。待機処理中に第2展開処理が完了しなかった場合には、制御部100は、待機処理の終了後に連続してクリーニング処理を開始する(時刻t22)。
【0167】
クリーニング処理中であって、且つ、第1印字処理の終了から第1所定時間T1が経過する前に、第2展開処理が完了すると(時刻t23)、制御部100は、クリーニング処理中に準備処理を開始する(時刻t24)。その後、制御部100は、クリーニング処理および準備処理の実行中に現像圧接処理を開始する(時刻t25)。そして、クリーニング処理の終了後であって、且つ、現像圧接処理の実行中に、制御部100は、第2印字処理を開始する(時刻t26)。
【0168】
図10(a)に示すように、第1印字処理の終了から第1所定時間T1が経過しても、第2展開処理が完了していない場合には、制御部100は、クリーニング処理と並行してニップ圧低下処理を実行する(時刻t31)。ニップ圧低下処理中において第2展開処理が完了すると(時刻t32)、制御部100は、ニップ圧低下処理およびクリーニング処理の終了後に連続してニップ圧増加処理を実行する(時刻t33)。ニップ圧増加処理が終了すると(時刻t34)、制御部100は、準備処理、現像圧接処理および第2画像形成処理を順次実行する。
【0169】
図10(b)に示すように、ニップ圧低下処理中に第2展開処理が完了しなかった場合には、ニップ圧低下処理およびクリーニング処理の終了後に連続して全停止処理を実行する(時刻t41)。全停止処理中に第2展開処理が完了すると(時刻t42)、図10(a)と同じ順序でニップ圧増加処理、準備処理、現像圧接処理および第2画像形成処理を実行する。
【0170】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1印字処理の終了から第1所定時間T1以内に第2展開処理が完了していれば、ニップ圧低下処理を実行せずに第2印字処理を実行するので、第2印字処理の開始タイミングを早めることができる。そのため、連続印字中に展開処理を待つ時間が生じた場合において、連続印字の開始から完了までにかかる時間が長くなりすぎるのを抑制することができる。
【0171】
ニップ圧低下処理をクリーニング処理と並行して実行するので、例えばクリーニング処理の後にニップ圧低下処理を実行する形態と比べ、第2印字処理の開始タイミングを早めることができる。
【0172】
第1所定時間T1、第2所定時間T2、ニップ圧低下処理にかかる時間Tn、クリーニング処理にかかる時間Tcの関係を、「T1=T2+Tc-Tn」とすることで、ニップ圧低下処理の終了時刻とクリーニング処理の終了時刻を一致させることができるので、例えばニップ圧低下処理の終了時刻がクリーニング処理の終了時刻よりも遅い形態に比べ、クリーニング処理の終了後の処理を迅速に行うことができる。また、例えばニップ圧低下処理の終了時刻がクリーニング処理の終了時刻よりも早い形態に比べ、第1所定時間T1の長さを大きくすることができるので、ニップ圧低下処理の開始タイミングを遅らせることができる。
【0173】
ニップ圧低下処理の実行中に第2展開処理が完了した場合には、ニップ圧低下処理の終了後にニップ圧増加処理を連続して実行するので、例えばニップ低下処理の終了から時間を空けてニップ圧増加処理を実行する形態と比べ、第2印字処理の開始タイミングを早めることができる。
【0174】
クリーニング処理の開始後であって、且つ、第1印字処理の終了から第1所定時間T1の経過前に第2展開処理が完了した場合には、準備処理をクリーニング処理と並行して実行するので、例えば、クリーニング処理の後に準備処理を実行する形態と比べ、第2印字処理の開始タイミングを早めることができる。
【0175】
現像モータM1の駆動力を現像ローラ53の圧接・離間とニップ圧の変更とに利用するので、コストの低下を図ることができる。
【0176】
逆回転時の現像モータM1の回転速度を印字中の回転速度よりも小さくするので、カムを駆動する際に発生する音を低減することができる。
【0177】
第2ニップ圧を、圧力変更機構300で変更するニップ圧の範囲のうち最小のニップ圧としたので、ニップ圧を第2ニップ圧にしているときにおいて、第1定着部材81に従動回転するベルト130と、ベルト130を第1定着部材81とは反対側から支えるニップ形成部材Nとが摺接して摩耗するのを抑制することができる。
【0178】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0179】
前記実施形態では、クリーニング部材としてクリーニングローラ55を例示したが、本発明はこれに限定されず、クリーニング部材は、例えば板状のブレードなどであってもよい。
【0180】
画像形成部は、前記実施形態の画像形成部30に限らず、例えば、レーザ光を出射する露光装置を備えたものであってもよい。
【0181】
前記実施形態では、圧力変更機構300が、ニップ部NPのニップ圧を、最大ニップ圧と、中間ニップ圧と、最小ニップ圧とに変更するように構成されていたが、本発明はこれに限定されず、圧力変更機構は、ニップ部のニップ圧を少なくとも第1ニップ圧と第2ニップ圧とに変更可能であればよい。つまり、圧力変更機構は、ニップ圧を2つ、または、4つ以上の圧力値に変更可能に構成されていてもよい。
【0182】
圧力変更機構は、前記実施形態のような構造に限らず、例えば、図5(a)に示す構造からカムフォロア350および第2バネ330を取り除いた構造としてもよい。つまり、カム340がアーム本体311に接触可能な構造としてもよい。
【0183】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロのプリンタ、複写機、複合機などに本発明を適用してもよい。
【0184】
前記実施形態では、ヒータとしてハロゲンランプを例示したが、ヒータは、例えばカーボンヒータなどであってもよい。
【0185】
前記実施形態では、第1定着部材として、ヒータ110を内蔵した円筒状のローラを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒータによって内周面が加熱される無端状のベルトであってもよい。また、ヒータを第1定着部材の外部に配置し、第1定着部材の外周面を加熱する外部加熱方式や、IH(Induction Heating)方式でもよい。また、第2定着部材にヒータを設け、第2定着部材の外周面に接触する第1定着部材を間接的に加熱してもよい。また、第1定着部材と第2定着部材がそれぞれヒータを内蔵していてもよい。第2定着部材は、シャフトと、シャフトの周囲に形成されたゴム層とを有する加圧ローラなどであってもよい。
【0186】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0187】
1 カラープリンタ
30 画像形成部
80 定着装置
81 第1定着部材
82 第2定着部材
100 制御部
120 ローラ
300 圧力変更機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10