(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両用開口部のシール構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/33 20160101AFI20231205BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20231205BHJP
B60J 7/02 20060101ALI20231205BHJP
B60J 10/82 20160101ALN20231205BHJP
【FI】
B60J10/33
B60J10/21
B60J7/02 Z
B60J10/82
(21)【出願番号】P 2019234610
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荘司 章寿
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-502488(JP,A)
【文献】特開2008-100555(JP,A)
【文献】特開2015-063207(JP,A)
【文献】特開平11-078542(JP,A)
【文献】特開平05-085164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J10/00-10/90
B60R13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する車体と前記開口部を閉鎖する閉鎖体とを備える車両に適用され、
前記開口部の開口縁に沿って延びるフランジと、
前記フランジが差し込まれる保持溝を有し、前記車体と前記閉鎖体との間に生じる隙間を塞ぐウェザストリップと、を備え、
前記フランジの先端は、前記フランジの延設方向に対して複数の切り欠きを有し、
前記ウェザストリップは、前記保持溝を挟んで対向する内壁及び外壁と、前記複数の切り欠きに対応する位置で前記内壁及び前記外壁を接続する複数の接続壁と、を有
しており、
前記接続壁は前記各切り欠きに対応する位置に2つ設けられており、前記複数の切り欠きにはそれぞれ2つの前記接続壁が配置されている
車両用開口部のシール構造。
【請求項2】
前記フランジにおいて隣り合う前記切り欠きの間の部分を突片としたとき、前記フランジの延設方向において、前記切り欠きの幅は前記突片の幅よりも長くなっている
請求項1に記載の車両用開口部のシール構造。
【請求項3】
前記ウェザストリップは、前記切り欠きに配置されている前記接続壁の部分の前記切り欠きの幅方向と直交する断面視において、前記外壁が前記内壁よりも長くなっている
請求項1又は請求項2に記載の車両用開口部のシール構造。
【請求項4】
前記フランジは、直線状をなす第1直線部及び第2直線部と、円弧状をなすとともに第1直線部及び第2直線部を接続する湾曲部と、を有し、
前記湾曲部は、前記複数の切り欠きを有する
請求項1
~請求項3の何れか一項に記載の車両用開口部のシール構造。
【請求項5】
前記フランジは、樹脂からなる
請求項1
~請求項
4の何れか一項に記載の車両用開口部のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開口部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体の開口部の周縁に沿って形成されるフランジ部と、フランジ部に取り付けられるウェザストリップと、を備える車両用開口部のシール構造が記載されている。ウェザストリップには、ウェザストリップの長手方向と直交する断面形状が略U字状をなす金属製のインサートが埋設されている。そして、ウェザストリップのインサートがフランジ部を挟み込むことにより、ウェザストリップのフランジ部に対する姿勢が安定化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシール構造は、ウェザストリップにインサートを埋設しているため、構造を単純化する点で改善の余地が残されている。本発明の目的は、簡易な構成でフランジに対するウェザストリップの姿勢を安定化できる車両用開口部のシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用開口部のシール構造は、開口部を有する車体と前記開口部を閉鎖する閉鎖体とを備える車両に適用され、前記開口部の開口縁に沿って延びるフランジと、前記フランジが差し込まれる保持溝を有し、前記車体と前記閉鎖体との間に生じる隙間を塞ぐウェザストリップと、を備え、前記フランジの先端は、前記フランジの延設方向に対して複数の切り欠きを有し、前記ウェザストリップは、前記保持溝を挟んで対向する内壁及び外壁と、前記複数の切り欠きに対応する位置で前記内壁及び前記外壁を接続する複数の接続壁と、を有する。
【0006】
上記構成の車両用開口部のシール構造は、フランジにウェザストリップを取り付けた状態において、フランジの切り欠きが形成される部位にウェザストリップの接続壁が位置する。このため、ウェザストリップに荷重が作用したときに、ウェザストリップがフランジに対して相対的に変位しにくい。こうして、車両用開口部のシール構造は、簡易な構成でフランジに対するウェザストリップの姿勢を安定化できる。
【0007】
上記車両用開口部のシール構造において、前記フランジは、直線状をなす第1直線部及び第2直線部と、円弧状をなすとともに第1直線部及び第2直線部を接続する湾曲部と、を有し、前記湾曲部は、前記複数の切り欠きを有することが好ましい。
【0008】
ウェザストリップにおいて、湾曲部に装着される部位は、第1直線部及び第2直線部に装着される部位よりも多方向からの荷重が作用しやすく、フランジに対する姿勢が不安定となりやすい。この点、上記構成の車両用開口部のシール構造は、湾曲部が切り欠きを有するため、ウェザストリップの湾曲部に装着される部位の姿勢が不安定となることを抑制できる。
【0009】
車両用開口部のシール構造において、前記フランジは、樹脂からなることが好ましい。
上記構成の車両用開口部のシール構造は、例えば、フランジを樹脂成形することにより、複数の切り欠きを容易に形成できる。
【発明の効果】
【0010】
車両用開口部のシール構造は、簡易な構成でフランジに対するウェザストリップの姿勢を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るシール構造が適用される車両の平面図。
【
図2】上記車両が備えるサンルーフユニットの部分分解斜視図。
【
図3】上記サンルーフユニットのウェザストリップの部分底面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る車両用開口部のシール構造(以下、「シール構造」という。)が適用される車両について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両10は、ルーフ21を有する車体20と、ルーフ21に配置されるサンルーフユニット30と、を備える。以降の説明では、車両10の幅方向に延びる軸をX軸で示し、車両10の前後方向に延びる軸をY軸で示し、車両10の上下方向に延びる軸をZ軸で示す。幅方向、前後方向及び上下方向は、互いに直交している。
【0013】
ルーフ21は、前後方向を長手方向とし幅方向を短手方向とする略矩形状をなしている。ルーフ21は、幅方向に対して湾曲していてもよいし、前後方向に対して湾曲していてもよい。ルーフ21は、「開口部」の一例としてのルーフ開口部22を有する。ルーフ開口部22は、ルーフ21の大部分にわたって設けられる。ルーフ開口部22は、ルーフ21と同様に、前後方向を長手方向とし幅方向を短手方向とする略矩形状をなしている。
【0014】
サンルーフユニット30は、幅方向に延びるフロントフレーム31及びリアフレーム32と、サンルーフユニット30の前部を構成するフロントハウジング40と、サンルーフユニット30の後部を構成するリアハウジング50と、前後方向に延びる一対のサイドフレーム60と、を備える。また、サンルーフユニット30は、可動式の可動パネル70と、固定式の固定パネル80と、車体20と可動パネル70及び固定パネル80との隙間を塞ぐウェザストリップ100と、を備える。
【0015】
フロントフレーム31及びリアフレーム32は、ルーフ開口部22の前端及び後端に沿ってそれぞれ延びる。フロントフレーム31及びリアフレーム32は、例えば、金属材料からなる押出成形物である。
【0016】
フロントハウジング40及びリアハウジング50は、ルーフ開口部22の前端及び後端に沿ってそれぞれ延びる。フロントハウジング40及びリアハウジング50は、例えば、樹脂材料からなる射出成形物である。
【0017】
図2に示すように、リアハウジング50は、上方に向かって延びるリアフランジ51を有する。リアフランジ51は、幅方向に延びる直線部52と、幅方向における外方に向かうにつれて前方に進むように湾曲する一対の湾曲部53と、を有する。一対の湾曲部53は、直線部52の幅方向における両端からそれぞれ延びる。リアハウジング50の上方からの平面視において、直線部52は直線状をなし、湾曲部53は円弧状をなしている。こうして、リアフランジ51は、ルーフ開口部22に沿って延びる。
【0018】
湾曲部53の先端は、リアフランジ51の延びる方向に並ぶ複数の切り欠き54を含む。切り欠き54は、湾曲部53の径方向から見たとき、略矩形状をなしている。湾曲部53において、隣り合う切り欠き54の間の部分を突片55としたとき、湾曲部53の周方向において、切り欠き54の幅は突片55の幅よりも長くなっている。図示を省略するが、フロントハウジング40は、リアハウジング50のリアフランジ51と同等のフロントフランジを有する。
【0019】
図1に示すように、一対のサイドフレーム60は、ルーフ開口部22の両側端に沿ってそれぞれ延びる。サイドフレーム60は、例えば、金属材料からなる押出成形物である。一対のサイドフレーム60は、フロントフレーム31の両端部及びリアフレーム32の両端部をそれぞれ接続する。
図2に示すように、サイドフレーム60は、上方に向かって延びるサイドフランジ61を有する。サイドフランジ61は、サイドフレーム60の長手方向、言い換えれば、ルーフ開口部22に沿って延びる。
【0020】
サイドフランジ61は、前後方向に延びる直線部62を有する。サイドフレーム60がリアハウジング50に連結されるとき、サイドフレーム60のサイドフランジ61は、リアハウジング50のリアフランジ51の湾曲部53と接続される。詳しくは、サイドフランジ61の直線部62は、リアフランジ51の直線部52と、リアフランジ51の湾曲部53を介して接続される。こうした点で、本実施形態では、リアハウジング50の直線部52が「第1直線部」の一例に相当し、サイドフレーム60の直線部62が「第2直線部」の一例に相当する。なお、サイドフレーム60のサイドフランジ61及びリアハウジング50のリアフランジ51が接続される状況では、サイドフランジ61の端面及びリアフランジ51の端面が必ずしも接している必要はない。つまり、サイドフランジ61及びリアフランジ51の接続態様には、サイドフランジ61及びリアフランジ51の間に僅かに隙間が生じる場合を含むとする。
【0021】
本実施形態では、幅方向における両側において、フロントハウジング40のフロントフランジの両端と一対のサイドフレーム60のサイドフランジ61とがそれぞれ接続される。また、幅方向における両側において、リアハウジング50のリアフランジ51の両端と一対のサイドフレーム60のサイドフランジ61とがそれぞれ接続される。以降の説明では、フロントフランジ、リアフランジ51及び一対のサイドフランジ61を含んで単に「フランジ90」ともいう。また、本実施形態では、フランジ90とウェザストリップ100とを含んで「シール構造」の一例が構成される。
【0022】
図1に示すように、可動パネル70は、フロントハウジング40及び一対のサイドフレーム60によって区画される第1開口部221を開閉する。例えば、可動パネル70は、一対のサイドフレーム60に沿って移動する機能部品によって、第1開口部221を開閉する。可動パネル70の後端には、固定パネル80の前端との間に生じる隙間を塞ぐウェザストリップが装着されることが好ましい。一方、固定パネル80は、リアハウジング50及び一対のサイドフレーム60によって区画される第2開口部222を閉鎖する。つまり、固定パネル80は、リアハウジング50及び一対のサイドフレーム60に固定される。本実施形態において、可動パネル70及び固定パネル80は、「閉鎖体」の一例に相当する。また、第1開口部221は前側の開口部であり、第2開口部222は、後側の開口部である。
【0023】
次に、
図1,
図3~
図6を参照して、ウェザストリップ100について説明する。なお、
図4~
図6は、
図3に示す矢視線に基づく断面図であるが、説明理解の容易のために紙面と直交する軸を中心に180度回転させて図示している。
【0024】
図1に示すように、ウェザストリップ100は、ルーフ開口部22の形状に応じた四角枠状をなしている。また、ウェザストリップ100は、4つの隅角が円弧状に湾曲している。以降の説明では、ウェザストリップ100の4つの隅角のうちの1つの隅角に着目して説明する。
【0025】
図3に示すように、ウェザストリップ100は、周方向にわたって、フランジ90が差し込まれる保持溝101を有する。また、ウェザストリップ100は、幅方向に延びる第1部分110と、前後方向に延びる第2部分120と、隣り合う第1部分110及び第2部分120を接続する第3部分130と、を有する。第1部分110は、フロントフランジの直線部及びリアフランジ51の直線部52に取り付けられる部位であり、第2部分120は、サイドフランジ61に差し込まれる部位であり、第3部分130は、フロントフランジの湾曲部及びリアフランジ51の湾曲部53に取り付けられる部位である。
【0026】
図3及び
図4に示すように、ウェザストリップ100の第1部分110は、固定パネル80に接する内側シール部111と、車体20に接する外側シール部112と、フランジ90の内面に接する内壁113と、フランジ90の外面に接する外壁114と、内壁113及び外壁114を接続する底壁115と、を有する。同様に、ウェザストリップ100の第2部分120は、固定パネル80に接する内側シール部121と、車体20に接する外側シール部122と、フランジ90の内面に接する内壁123と、フランジ90の外面に接する外壁124と、内壁123及び外壁124を接続する底壁125と、を有する。
【0027】
図4に示すように、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120において、内側シール部111,121及び外側シール部112,122は、長手方向と直交する断面形状が略C字状をなしている。長手方向と直交する断面視において、内側シール部111,121は、内壁113,123との間に空間を隔てた状態で内壁113,123の先端及び底壁115,125に接続し、外側シール部112,122は、外壁114,124との間に空間を隔てた状態で外壁114,124の先端及び底壁115,125に接続している。こうして、内側シール部111,121及び外側シール部112,122は、外力に対して柔軟に変形できるように構成される。
【0028】
内壁113,123及び外壁114,124は、保持溝101を挟んで対向している。内壁113,123及び外壁114,124の間隔は、フランジ90の厚みよりも狭いことが好ましい。底壁115,125は、内壁113,123及び外壁114,124の基端同士を接続する。底壁115,125は、内壁113,123及び外壁114,124とともに保持溝101に面している。
【0029】
ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120において、内側シール部111,121及び外側シール部112,122は、車体20と固定パネル80との隙間を塞ぐ部分である。このため、内側シール部111,121及び外側シール部112,122は、柔軟に変形できるように、弾性率が相対的に低いことが好ましい。一方、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120において、内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125は、フランジ90に対して取り付く部分である。このため、内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125は、フランジ90に対するウェザストリップ100の姿勢を保持できるように、弾性率が相対的に高いことが好ましい。つまり、内側シール部111,121及び外側シール部112,122の弾性率は、内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125の弾性率よりも小さい。
【0030】
なお、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120は、耐候性及び耐水性の良好な樹脂又はゴムなどのエラストマーからなることが好ましい。例えば、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120において、内側シール部111,121及び外側シール部112,122を気孔を含むEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)により構成し、内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125を気孔を含まないEPDMにより構成してもよい。この場合、内側シール部111,121及び外側シール部112,122が多孔質部材、つまりスポンジ状となることで、内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125よりも弾性率が低くなる。ただし、ウェザストリップ100の機能上、内側シール部111,121及び外側シール部112,122は、液体を通さない程度の気孔率であるとする。また、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120は、直線状をなす点で、内側シール部111,121及び外側シール部112,122と内壁113,123、外壁114,124及び底壁115,125とを異なる材質としても押出成形が容易である。
【0031】
図3、
図5及び
図6に示すように、ウェザストリップ100の第3部分130は、固定パネル80に接する内側シール部131と、車体20に接する外側シール部132と、を備える。また、第3部分130は、フランジ90の内面に接する内壁133と、フランジ90の外面に接する外壁134と、内壁133及び外壁134を接続する底壁135と、内壁133及び外壁134を接続する複数の接続壁136と、を有する。
【0032】
図5及び
図6に示すように、ウェザストリップ100の第3部分130において、内側シール部131及び外側シール部132は、長手方向と直交する断面形状が略円弧状をなしている。長手方向と直交する断面視において、内側シール部131は、内壁133との間に空間を隔てた状態で底壁135に接続し、外側シール部132は、外壁134との間に空間を隔てた状態で底壁135に接続している。こうして、内側シール部131及び外側シール部132は、外力に対して柔軟に変形できるように構成される。
【0033】
内壁133及び外壁134は、平板状をなしている。内壁133及び外壁134は、保持溝101を挟んで対向している。内壁133及び外壁134の間隔は、フランジ90の厚みよりも狭いことが好ましい。
外壁134は、
内壁133よりも長くなっている。底壁135は、内壁133及び外壁134の基端同士を接続する。
図6に示すように、底壁135は、内壁133及び外壁134とともに保持溝101に面している。
図3及び
図5に示すように、接続壁136は、底壁135から内壁133及び外壁134の先端に向かって延び、内壁133及び外壁134を接続する。このため、接続壁136のある部分では、接続壁136のない部分よりも保持溝101が浅くなる。
【0034】
図3に示すように、接続壁136は、リアフランジ51の湾曲部53の1つの切り欠き54に対応する位置に、対をなすように2つ設けられる。一対の接続壁136は、第3部分130の長手方向に間隔をあけて配置される。このため、一対の接続壁136の間には、隙間が設けられる。
【0035】
ウェザストリップ100の第3部分130は、湾曲している点で、押出成形が困難である。特に、本実施形態のウェザストリップ100の第3部分130は、可動パネル70及び固定パネル80の面積を大きくすべく、曲率半径が小さくなっている点で、押出成形がより困難である。このため、ウェザストリップ100の第3部分130は、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120と異なり、金型内に原材料を配置したり射出したりして成形する必要がある。したがって、ウェザストリップ100の第3部分130は、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120と異なり、全部位が同じ材質からなることが好ましい。
【0036】
ここで、ウェザストリップ100の第3部分130において、全部位の弾性率を高くすると、内側シール部131及び外側シール部132が柔軟に変形できなくなる点で、シール性が低下し得る。このため、ウェザストリップ100の第3部分130の弾性率は低いことが好ましい。詳しくは、ウェザストリップ100の第3部分130の弾性率は、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120における内側シール及び外側シールと同等の弾性率であることが好ましい。つまり、ウェザストリップ100の第3部分130の材質は、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120における内側シール部111,121及び外側シール部112,122の材質と同等であることが好ましい。
【0037】
続いて、ウェザストリップ100の製造方法の一例について説明する。
ウェザストリップ100の製造方法は、第1部分110及び第2部分120を個別に押出成形する第1成形工程と、第1部分110の端部及び第2部分120の端部を配置した金型内で第3部分130を成形する第2成形工程と、を備える。第2成形工程により、第1部分110及び第2部分120が第3部分130で接続される。ウェザストリップ100の製造方法は、ウェザストリップ100の材質によっては、第2成形工程の後に、第1部分110、第2部分120及び第3部分130を硬化させる第3成形工程をさらに備える。ウェザストリップ100の材質がEPDMである場合、第3成形工程として、架橋のための加熱が行われる。
【0038】
本実施形態の作用について説明する。
図7は、ウェザストリップ100がフランジ90に装着された状態であって、ウェザストリップ100が車体20と固定パネル80との間に生じる隙間を塞いでいる状態を示している。
【0039】
ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120は、弾性率の高い内壁113及び外壁114がフランジ90を挟むため、第1部分110及び第2部分120のフランジ90に対する姿勢が安定する。つまり、固定パネル80の組み付け時及びサンルーフユニット30の車体20に対する組み付け時に、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120に荷重が作用しても、フランジ90に対して第1部分110及び第2部分120が相対的に変位しにくい。つまり、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120は、車体20と固定パネル80との間に生じる隙間を適切に塞ぐことができる。
【0040】
これに対し、
図8及び
図9に示すように、ウェザストリップ100の第3部分130は、内壁133及び外壁134でフランジ90を挟むのに加え、フランジ90の切り欠き54に一対の接続壁136が配置される。このため、ウェザストリップ100の第3部分130の弾性率が、ウェザストリップ100の第1部分110及び第2部分120における内側シール部111及び外側シール部112と同等の弾性率であったとしても、第3部分130のフランジ90に対する姿勢が安定する。詳しくは、固定パネル80の組み付け時に、固定パネル80が第3部分130の内側シール部131を下方に押したとしても、フランジ90に対して内側シール部131が相対的に変位しにくい。例えば、内側シール部131が第3部分130の長手方向に延びる軸線回りに回転変位しにくい。また、サンルーフユニット30の車体20に対する下方からの組み付け時に、車体20が第2部分120の外側シール部132を下方に押したとしても、フランジ90に対して外側シール部132が相対的に変位しにくい。例えば、外側シール部132が第3部分130の長手方向に延びる軸線回りに回転変位しにくい。こうして、ウェザストリップ100の第3部分130は、車体20と固定パネル80との間に生じる隙間を適切に塞ぐことができる。
【0041】
本実施形態の効果について説明する。
(1)フランジ90にウェザストリップ100を取り付けた状態において、ウェザストリップ100の接続壁136は、フランジ90の切り欠き54が形成される部位に位置する。このため、ウェザストリップ100に荷重が作用しても、ウェザストリップ100がフランジ90に対して相対的に変位しにくい。こうして、シール構造は、簡易な構成でフランジ90に対するウェザストリップ100の姿勢を安定化できる。
【0042】
(2)ウェザストリップ100において、フランジ90の湾曲部53に装着される第3部分130は、フランジ90の直線部52に装着される第1部分110及び第2部分120よりも多方向からの荷重が作用しやすく、フランジ90に対する姿勢が不安定となりやすい。この点、シール構造は、湾曲部53が切り欠き54を有するため、ウェザストリップ100の湾曲部53に装着される第2部分120の姿勢が不安定となることを抑制できる。
【0043】
(3)フロントハウジング40及びリアハウジング50を樹脂成形することにより、複数の切り欠き54を容易に形成できる。また、ウェザストリップ100の第3部分130を単一材料により成形する点で、ウェザストリップ100の構造が単純化される。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図10に示すように、固定パネル80Aは、ガラスなどからなるパネル本体81と、パネル本体81の周縁を被覆する被覆部82と、を備えてもよい。この場合、被覆部82は、ルーフ開口部22の開口縁に沿って延びるパネルフランジ83(90)を備え、リアハウジング50Aは、リアフランジ51を備えないことが好ましい。固定パネル80Aのパネルフランジ83には、ウェザストリップ100が装着される。このように、フランジ90は、車体20と固定パネル80,80Aの間にウェザストリップ100を配置することができるのであれば、車体20側の構成としてもよいし、固定パネル80A側の構成としてもよい。
【0045】
・フランジ90の形状及びウェザストリップ100の形状は、適宜に変更することが可能である。
・フランジ90の切り欠き54の数及びウェザストリップ100の接続壁136の数は、適宜に変更することが可能である。例えば、1つの切り欠き54に対し、1つの接続壁136を対応付けてもよい。
【0046】
・切り欠き54は、フランジ90の直線部52に設けてもよい。この場合、ウェザストリップ100において、フランジ90の直線部52の切り欠き54に対応する部位に接続壁136が設けられることになる。
【0047】
・シール構造は、ルーフ開口部22とは異なる「開口部」に適用してもよい。例えば、シール構造は、「閉鎖体」の一例としてのサイドドア及びバックドアに開閉される「開口部」の一例としてのドア開口部に適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…車両
20…車体
22…ルーフ開口部(開口部の一例)
50…リアハウジング
51…リアフランジ
52…直線部(第1直線部の一例)
53…湾曲部
54…切り欠き
60…サイドフレーム
61…サイドフランジ
62…直線部(第2直線部の一例)
70…(閉鎖体の一例)
80…(閉鎖体の一例)
90…フランジ
100…ウェザストリップ
101…保持溝
133…内壁
134…外壁
136…接続壁