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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 9/08 20060101AFI20231205BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20231205BHJP
【FI】
G04C9/08 Z
G04G21/00 304S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000694
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021110563
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】三谷 敏寛
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-317490(JP,A)
【文献】特開2014-48148(JP,A)
【文献】実開昭56-12883(JP,U)
【文献】特開2008-191049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 9/08
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻をカウントする時刻計時部と、
前記時刻を表示する時刻表示部と、
ユーザーが操作するりゅうずと、
前記りゅうずを第1位置に引き出す第1操作を検出すると、前記時刻表示部の動作は停止させ、前記カウントは継続させる時刻修正待機モードに移行し、
前記第1位置に引き出した前記りゅうずを回す第2操作を検出すると、前記時刻の修正を行うことができる時刻修正モードに移行する修正制御部と、
を備え
前記修正制御部は、前記時刻修正待機モードにおいて、前記時刻修正モードに移行せずに前記時刻修正待機モードを解除する操作を検出すると、前記時刻表示部で表示される時刻を、前記カウントされた時刻に修正する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
前記時刻表示部は、時針、分針および秒針を備え、
前記修正制御部は、前記時刻修正モードに移行した際に、前記秒針は0秒位置に移動させ、前記分針は正分位置に停止させる
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子時計において、
前記修正制御部は、
前記第2操作による単位時間当たりのりゅうずの回転量が判定値未満の場合は、前記時刻表示部の分表示を1分単位で修正し、
前記回転量が前記判定値以上の場合は、前記分表示の連続修正を開始し、次にりゅうずの回転を検出した時点で、前記連続修正を終了する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記りゅうずは、少なくとも前記第1位置および第2位置に引き出し可能に構成され、
前記修正制御部は、前記りゅうずが前記第2位置に引き出された場合は、前記時刻表示部で表示される前記時刻の時差を修正する時差修正モードに移行する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項5】
請求項4に記載の電子時計において、
ユーザーが操作するボタンをさらに備え、
前記修正制御部は、前記りゅうずが前記第2位置に引き出された状態で、前記ボタンで第3操作が行われたことを検出すると、前記時刻表示部で表示される日を修正する日修正モードに移行する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記時刻計時部は、前記時刻をカウントする時刻カウンターを備え、
前記修正制御部は、前記時刻修正モードを終了した場合に、前記時刻カウンターの値を、前記時刻表示部に表示された時刻に更新する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項7】
時刻をカウントする時刻計時部と、
前記時刻を表示する時刻表示部と、
ユーザーが操作するりゅうずと、
前記りゅうずを第1位置に引き出す第1操作を検出すると、前記時刻表示部の動作は停止させ、前記カウントは継続させる時刻修正待機モードに移行し、
前記第1位置に引き出した前記りゅうずを回す第2操作を検出すると、前記時刻の修正を行うことができる時刻修正モードに移行する修正制御部と、
を備え、
前記時刻計時部は、前記時刻をカウントする時刻カウンターを備え、
前記修正制御部は、前記時刻修正モードを終了した場合に、前記時刻カウンターの値を、前記時刻表示部に表示された時刻に更新する
ことを特徴とする電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作による時刻修正機能を備える電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたように、電子カウンターと指針を一致させる必要のある電波修正時計は、りゅうずやプッシュボタン等の外部操作部材と電気的なスイッチを組み合わせて、指針を早送りして針合わせを行う電子りゅうず機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-151567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子りゅうず機構では、りゅうずを2段引き位置に引き出すと、秒針を早送りして0秒の位置で停止し、秒分の時刻修正モードに移行するため、直ちに時刻修正を行うことができる。しかし、ユーザーが間違ってりゅうずを2段位置に引き出した場合、その時点で内部時刻カウントが停止するため、内部時刻が正確な時刻ではなくなってしまう。このため、誤操作で時刻修正モードに移行した場合でも、内部時刻が現在時刻とずれてしまい、時刻修正操作を行わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電子時計は、時刻をカウントする時刻計時部と、前記時刻を表示する時刻表示部と、ユーザーが操作するりゅうずと、前記りゅうずを第1位置に引き出す第1操作を検出すると、前記時刻表示部の動作は停止させ、前記カウントは継続させる時刻修正待機モードに移行し、前記第1位置に引き出した前記りゅうずを回す第2操作を検出すると、前記時刻の修正を行うことができる時刻修正モードに移行する修正制御部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の電子時計を示す正面図である。
図2】実施形態のムーブメントの構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電子時計1を図面に基づいて説明する。
電子時計1は、図1に示すように、ケース2と、ケース2内に配置された文字板3と、文字板3の平面中心位置に設けられた3本の指針軸にそれぞれ取り付けられた時針4、分針5、秒針6と、日車7と、りゅうず8と、ボタン9とを備える。
【0008】
図2は、電子時計1の構成を示すブロック図である。電子時計1は、時刻情報を含む電波を受信する受信部20と、外部操作部30と、電力供給部40と、時刻表示部50と、制御回路部60とを備えて構成されている。
【0009】
受信部20は、電波を受けるアンテナ21と、コンデンサー等で構成されてアンテナ21で受信する電波に同調させる同調回路部22と、アンテナ21で受信した情報を処理する受信回路部23とを備えて構成されている。
アンテナ21は、標準電波の受信に利用されるバーアンテナ等が利用できる。同調回路部22は、制御部70から出力される周波数切替え制御信号により、アンテナ21で受信する電波の周波数を切り替えるように構成されている。これにより、例えば、複数種類の周波数の長波標準電波を切り替えて受信することができるように構成されている。
受信回路部23は、アンテナ21によって受信された長波標準電波信号を処理して時刻データを出力する。
受信部20は、予め設定されたスケジュールや外部操作部30による強制受信操作等によって、制御部70から出力される受信制御信号に基づいて時刻情報の受信を開始する。
【0010】
外部操作部30は、りゅうず8と、ボタン9とを備えて構成され、りゅうず8、ボタン9が操作されると検出信号を制御回路部60に出力する。
外部操作部30は、具体的には、りゅうず8が0段位置、1段位置、2段位置のいずれの位置に引き出されているかと、りゅうず8の回転方向および回転量と、ボタン9の押し操作とを検出し、それらの検出信号を出力する。なお、本実施形態では、外部操作部30は、りゅうず8を120度回転する毎に、回転検出信号を出力する。このため、りゅうず8の回転量は、回転検出信号の出力数で検出できる。なお、回転検出信号を出力する角度は120度毎に限らず、180度毎などでもよく、りゅうず8の径などによって設定すればよい。
【0011】
電力供給部40は、自動巻発電機や太陽電池(ソーラー発電機)等によって構成された発電装置41と、発電装置41で発電された電力を蓄電する二次電源42とを備えて構成されている。なお、電力供給部40としては、一次電池を用いてもよい。
【0012】
時刻表示部50は、時針4、分針5、秒針6、日車7と、駆動回路51と、モーター52とを備えて構成される。
駆動回路51は、第1駆動回路511と、第2駆動回路512と、第3駆動回路513とを備えている。
モーター52は、第1モーター521と、第2モーター522と、第3モーター523とを備えている。
第1駆動回路511は、第1モーター521のコイルに駆動電流を供給し、第1モーター521を駆動する。第1モーター521は、図示略の輪列を介して、分針5および時針4を運針する。
第2駆動回路512は、第2モーター522のコイルに駆動電流を供給し、第2モーター522を駆動する。第2モーター522は、図示略の輪列を介して、秒針6を運針する。
第3駆動回路513は、第3モーター523のコイルに駆動電流を供給し、第3モーター523を駆動する。第3モーター523は、図示略の輪列を介して、日車7を回転する。
【0013】
制御回路部60は、発振回路61と、デコード部62と、時刻カウンター63と、針位置カウンター64と、制御部70とを備える。
発振回路61は、水晶振動子610を発振させ、水晶振動子610から入力される信号を分周して得られるクロック信号を制御部70に出力する。
デコード部62は、受信回路部23から入力されるTCO信号、つまりタイムコードをデコードして、当該TCO信号に含まれる日付情報および時刻情報等を有する時刻データを取得する。そして、デコード部62は、取得した時刻データを制御部70に出力する。
【0014】
時刻カウンター63は、通常は、発振回路61から制御部70に入力されたクロック信号に応じて現在の時刻データに更新される。また、受信部20の受信処理によって時刻データを取得した場合には、取得した時刻データに更新される。このため、時刻カウンター63は、電子時計1の内部時刻をカウントする時刻計時部である。
時刻カウンター63は、少なくとも、秒、分、時、日の各時刻データをカウントするカウンターを備える。さらに、標準電波には、1月1日からの通算日、曜や年の情報も含まれているので、通算日、曜、年の各時刻データをカウントするカウンターを備えていてもよい。
【0015】
針位置カウンター64は、時針4、分針5、秒針6、日車7の指示位置を示すカウンターを備える。秒針6の指示位置を示すカウンターは、秒針6の運針に連動してカウント値が更新される。このため、針位置カウンター64のカウント値によって、秒針6の位置を示すことができる。同様に、時針4、分針5、日車7の指示位置を示すカウンターも、時針4、分針5、日車7の運針に連動してカウント値が更新され、このカウント値によって、時針4、分針5、日車7の位置を示すことができる。
【0016】
制御部70は、駆動制御部71と、受信制御部72と、修正制御部73とを備える。
駆動制御部71は、時刻表示部50の駆動を制御し、現在時刻を表示する。すなわち、駆動制御部71は、発振回路61から入力されるクロック信号に応じて時刻カウンター63を更新し、時刻カウンター63の更新に連動して駆動信号を駆動回路51に出力し、針位置カウンター64を更新する。これにより、例えば、秒針6は1秒毎に運針され、分針5および時針4は1分毎に運針され、日車7は24時間毎に回転される。
【0017】
受信制御部72は、予め設定された定時受信時刻になった場合や、ボタン9で所定の強制受信操作が行われた場合に、受信部20を駆動して標準電波の受信処理を実行する。そして、受信制御部72は、現在の時刻データを取得できた場合は、時刻カウンター63を更新し、針位置カウンター64の値が時刻カウンター63に一致するまで、駆動回路51およびモーター52を駆動し、連動して針位置カウンター64を更新する。これにより、時針4、分針5、秒針6、日車7は、現在時刻を指示する位置まで早送りされ、時刻表示部50で表示される時刻が修正される。
なお、本実施形態では、受信制御部72は、りゅうず8が0段位置にある状態で、ボタン9を3秒以上長押しされたことを検出した場合に、強制受信操作が行われたと判定し、受信部20を駆動する。
また、受信制御部72は、りゅうず8が0段位置にある状態で、ボタン9が押し離しされた場合、つまりボタン9が3秒未満押された場合は、秒針6を移動して受信結果を表示する。すなわち、受信制御部72は、直近の受信処理に成功して時刻データを取得できている場合は、「Y」と表記された8秒位置に秒針6を移動し、受信処理に失敗した場合は、「N」と表記された52秒位置に秒針6を移動する。「Y」は、「YES」の略であり、「N」は「NO」の略である。
【0018】
修正制御部73は、外部操作部30の操作に応じて時刻表示部50の表示を手動修正する制御を実行する。以下、りゅうず8を1段位置に引き出した状態での修正制御と、2段位置に引き出した状態での修正制御とを説明する。
【0019】
[りゅうず1段位置:時差修正モード]
修正制御部73は、ユーザーがりゅうず8を1段位置に引き出したことを検出した場合は、時差修正モードに移行する。時差修正モードは、りゅうず8の回転方向および回転量によって、時刻表示部50で表示されている時刻を1時間単位で修正するモードである。
すなわち、りゅうず8を正転方向である第1方向R1に回転して、外部操作部30から回転検出信号が出力されると、修正制御部73は、表示時刻を+1時間、つまり時針4を1時間進める。一方、りゅうず8を逆転方向である第2方向R2に回転して、外部操作部30から回転検出信号が出力されると、修正制御部73は、表示時刻を-1時間、つまり時針4を1時間戻す。
したがって、修正制御部73は、時差修正モードでは、りゅうず8の回転方向と、回転量つまり回転検出信号の出力数に応じて、表示時刻を1時間単位で修正でき、異なるタイムゾーンの時刻を表示するための時差修正を行うことができる。
なお、本実施形態では、第1モーター521は、時針4および分針5を連動して運針する。このため、時針4を1時間進めたり戻す場合、分針5は時計回りまたは反時計回りに60分つまり1周運針する。
【0020】
[りゅうず1段位置:日修正モード]
修正制御部73は、ユーザーがりゅうず8を1段位置に引き出したことを検出した状態つまり時差修正モードの状態で、ボタン9を長押し、具体的には3秒以上押して第3操作が行われたことを検出すると、時差修正モードから日修正モードに移行する。日修正モードは、りゅうず8の回転方向および単位時間当たりの回転量によって、時刻表示部50の日車7で表示されている日を1日単位または連続して修正するモードである。
修正制御部73は、りゅうず8の単位時間当たりの回転量が判定値未満の場合に、日車7を1日毎に移動して日を1日単位で修正する単修正処理を実行し、前記回転量が判定値以上の場合に、日車7を連続して移動する連続修正処理を実行する。
ここで、単位時間は、例えば0.5秒や1秒等であり、りゅうず8のサイズなどに応じて設定すればよい。回転量は、前述の通り、りゅうず8を120度回転する毎に出力される回転検出信号の数である。判定値は、本実施形態では「2」である。このため、修正制御部73は、単位時間当たりの回転量つまり回転検出信号数が「1」であれば単修正処理を実行し、「2」以上であれば連続修正処理を実行する。
【0021】
修正制御部73は、りゅうず8が、正転方向つまり第1方向R1に、単位時間当たりの回転量「1」で回転されたことを検出した場合、日表示を+1日、つまり日車7を1日進める。また、修正制御部73は、りゅうず8が、逆転方向つまり第2方向R2に、単位時間当たりの回転量「1」で回転されたことを検出した場合、日表示を-1日、つまり日車7を1日戻す。
【0022】
修正制御部73は、りゅうず8が、正転方向に、単位時間当たりの回転量「2」以上で回転されたことを検出した場合、日表示を進める方向に日車7を連続して回転する。また、りゅうず8が、逆転方向に、単位時間当たりの回転量「2」以上で回転されたことを検出した場合、日表示を戻す方向に日車7を連続して回転する。
修正制御部73は、日車7が連続して回転されている状態で、りゅうず8が回転されたことを検出すると、日車7を停止する。
したがって、修正制御部73は、りゅうず8の回転方向および単位時間当たりの回転量に応じて、日表示を1日単位あるいは連続して修正でき、日表示を容易に修正できる。
【0023】
[りゅうず2段位置:時刻修正待機モード]
修正制御部73は、ユーザーがりゅうず8を2段位置に引き出すと、時刻修正待機モードに移行する。時刻修正待機モードでは、修正制御部73は、第1モーター521および第2モーター522を停止して時針4、分針5および秒針6を現在の指示位置で停止させ、時刻計時部である時刻カウンター63で計時している内部時刻のカウントは継続する。
例えば、図3のS100に示すように、りゅうず8が0段位置に位置し、時針4、分針5、秒針6、日車7が通常時刻を表示している状態から、図3のS110に示すように、ユーザーがりゅうず8を0段位置から2段位置に引き出す操作を行ったことを検出すると、修正制御部73は、時刻修正待機モードに移行する。時刻修正待機モードでは、修正制御部73は、時針4、分針5および秒針6を現在の指示位置で停止し、時刻カウンター63のカウントは継続する。なお、日車7は、時刻カウンター63でカウントされている内部時刻に連動して回転する。
このため、本実施形態では、りゅうず8の第1位置は2段位置であり、第2位置は1段位置であり、りゅうず8を第1位置に引き出す第1操作とは、りゅうず8を2段位置に引き出す操作である。
【0024】
修正制御部73は、時刻修正待機モードにおいて、ユーザーがりゅうず8を正転または逆転方向に回転すると、後述する時刻修正モードに移行する。したがって、第1位置に引き出したりゅうず8を回す第2操作とは、2段位置に引き出したりゅうず8を、正転方向または逆転方向に回すことを意味する。
また、修正制御部73は、時刻修正待機モードにおいて、ユーザーがりゅうず8を回転することなく、りゅうず8を0段位置あるいは1段位置に押し込んで、時刻修正待機モードを解除すると、カウントを継続している時刻カウンター63の値に針位置カウンター64の値が一致するまで、時針4、分針5、秒針6を運針する。これにより、時刻修正待機モードにおいて、停止していた時針4、分針5、秒針6は、時刻カウンター63がカウントしている内部時刻つまり現在時刻に修正される。
【0025】
[りゅうず2段位置:時刻修正モード]
時刻修正モードでは、修正制御部73は、まず、図3のS120に示すように、秒針6を0秒位置に移動させて停止させ、分針5は正分位置に停止させる。したがって、分針5が1分毎に運針する場合は、現在の指示位置で停止する。また、分針5が20秒毎や30秒毎に運針する場合であり、1~59分の目盛の間にある場合は、次の目盛位置、つまり正分位置に移動して停止する。
分針5、秒針6が停止すると、修正制御部73は、りゅうず8の回転方向および単位時間当たりの回転量によって、時刻表示部50で表示されている時刻を1分単位で修正する単修正処理、または、連続して修正する連続修正処理を実行する。
すなわち、りゅうず8を正転方向に、単位時間当たりの回転量「1」つまり判定値未満で回転した場合、修正制御部73は、第1駆動回路511によって第1モーター521を駆動し、図3のS130に示すように、分針5および針位置カウンター64を+1分進める。一方、りゅうず8を逆転方向に、単位時間当たりの回転量「1」で回転した場合、修正制御部73は、分針5および針位置カウンター64を-1分戻す。なお、時針4は、分針5に連動して運針し、針位置カウンター64の時カウンターも連動して更新される。秒針6は、0秒位置に停止した状態に維持される。
また、りゅうず8を正転方向に、単位時間当たりの回転量「2」以上つまり判定値以上で回転した場合、修正制御部73は、分針5を進める方向に連続して運針する。一方、りゅうず8を逆転方向に、単位時間当たりの回転量「2」以上で回転した場合、修正制御部73は、分針5を戻す方向に連続して回転する。時針4は、分針5に連動して運針する。これらの場合も、修正制御部73は、針位置カウンター64を、時針4、分針5の運針に連動して更新する。
分針5が連続して運針されている状態で、りゅうず8を回転すると、修正制御部73は分針5の連続送りを停止する。図3のS140は、分針5を15秒早送りした位置で停止させた操作時の運針状態を示す。
したがって、修正制御部73は、時刻修正モードでは、りゅうず8の回転方向および回転量に応じて、分針5を1分単位あるいは連続して修正し、時針4は分針5に連動して修正し、針位置カウンター64は時針4、分針5の運針に連動して更新する。
【0026】
修正制御部73は、時刻修正モードにおいて、ユーザーがりゅうず8を0段位置あるいは1段位置に押し込んで、時刻修正モードを解除すると、時刻カウンター63を表示時刻の値に更新する。すなわち、修正制御部73は、時刻カウンター63の秒カウンターは0秒とし、分カウンターおよび時カウンターは、針位置カウンター64の分カウンターおよび時カウンターの値、つまり現在の分針5、時針4が指示する時刻に更新する。したがって、ユーザーは、時報等に合わせて、りゅうず8を押し込むことで、時刻表示部50の表示時刻を現在時刻に合わせることができ、同時に時刻カウンター63の値も現在時刻に合わせることができる。
【0027】
[りゅうず2段位置:基準位置合わせ]
修正制御部73は、前述した時刻修正待機モードにおいて、ユーザーがボタン9を押し離しすると、基準位置合わせモードに移行する。
修正制御部73は、基準位置合わせモードに移行すると、まず、日車7の基準位置合わせを行うモードに移行する。このため、ユーザーがりゅうず8を回転操作すると、日修正モードと同じく、回転方向および単位時間当たりの回転量に応じて、日車7が正転方向または逆転方向に、1ステップ毎または連続して回転する。これにより、ユーザーは、日車7を基準位置である「1」が表示される位置まで回転する。
ユーザーが、ボタン9を押し離しすると、修正制御部73は、日車7の基準位置合わせモードを終了し、時針4および分針5の基準位置合わせを行うモードに移行する。
【0028】
修正制御部73は、時針4および分針5の基準位置合わせを行うモードに移行すると、針位置検出機構を用いた自動の針位置検出処理を実行する。針位置検出機構は、光センサー等を用いた従来から公知の機構が利用できる。
修正制御部73は、まず、秒針6の針位置検出処理を実行し、針位置検出機構によって秒針6が基準位置である0秒位置に移動したことを検出すると、秒針6を0秒位置に停止する。次に、修正制御部73は、時針4および分針5の針位置検出処理を実行し、針位置検出機構によって時針4および分針5が基準位置である0時0分位置に移動したことを検出すると、時針4および分針5を0時0分位置に停止する。このため、時針4、分針5、秒針6、日車7による時刻表示は、1日0時0分0秒となる。
そして、りゅうず8を0段位置や1段位置に押し込むと、修正制御部73は、基準位置合わせモードを解除し、針位置カウンター64を基準位置のデータ、つまり「1日0時0分0秒」のデータにリセットする。これにより、時刻表示部50の表示時刻と、針位置カウンター64のカウント値が一致する。
【0029】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、時刻をカウントする時刻計時部である時刻カウンター63と、時刻を表示する時刻表示部50と、ユーザーが操作するりゅうず8と、修正制御部73とを備え、修正制御部73は、りゅうず8を第1位置である2段位置に引き出す第1操作を検出すると、時刻表示部50の動作は停止させ、時刻カウンター63のカウントは継続させる時刻修正待機モードに移行し、第1位置である2段位置に引き出したりゅうず8を回す第2操作を検出すると、時刻の修正を行うことができる時刻修正モードに移行する。
このため、ユーザーが間違ってりゅうず8を2段位置に引き出しても、修正制御部73は、時刻カウンター63のカウントを継続する。したがって、時刻修正モードに移行することなく、りゅうず8を2段位置以外、例えば、0段位置あるいは1段位置に押し込んで、時刻修正待機モードを解除すれば、時刻カウンター63で正確な内部時刻のカウントを継続しているので、針位置カウンター64が時刻カウンター63に一致するまで、時針4、分針5、秒針6を早送りで移動することができ、正確な現在時刻の表示に戻すことができる。
したがって、誤操作でりゅうず8を2段位置に引き出して時刻修正待機モードに移行しても、内部時刻が現在時刻とずれることがないので、りゅうず8を0段位置などに戻すだけで時刻表示部50の表示を正確な現在時刻表示に戻すことができ、時刻修正操作を不要にできる。
【0030】
ユーザーは、りゅうず8を2段位置に引き出して回すことで表示時刻を修正できるので、直感的に操作でき、操作性を向上できる。
修正制御部73は、2段位置に引き出されて時刻修正待機モードに移行した状態から、りゅうず8が回転されたことを検出すると、時刻修正モードへの移行と、+1分等の時刻修正とを同時に実行する。このため、例えば、りゅうず8を2段位置に引き出してからボタン9を押して時刻修正モードに移行し、時刻修正モードにおいてりゅうず8を回して時刻修正を行う場合に比べて、時刻修正モードへの移行のみを行う操作が不要となり、操作性を向上できる。特に、りゅうず8の引き出し操作および回転操作のみで時刻修正を行うことができるので、操作体系をシンプルにできる。
電子時計1では、ボタン9は1つだけ設ければよいので、複数のボタンを設ける場合に比べて、電子時計1のデザインをスタイリッシュにできる。その上、ボタン9を1つに減らせるので、複数のボタンを設ける場合に比べて、電子時計1のコストを低減できる。
【0031】
修正制御部73は、時刻修正モードに移行した際に、時刻修正待機モード時に移行した時点でその場所で停止していた秒針6を0秒位置に移動させ、分針5を正分位置に停止させている。
このため、ユーザーは、時刻修正待機モードから時刻修正モードに移行したことを容易に認識することができる。
【0032】
修正制御部73は、2段位置に引き出したりゅうず8を回転する第2操作による単位時間当たりのりゅうず8の回転量が判定値未満の場合は、時刻計時部である時刻カウンター63でカウントする時刻の分を1分単位で修正し、回転量が判定値以上の場合は、時刻の分の連続修正を開始し、次にりゅうず8の回転を検出した時点で、連続修正を終了している。
このため、ユーザーは、りゅうず8の単位時間当たりの回転量を変更するだけで、分針5を1分単位で細かく修正する場合と、分針5を連続して修正する場合とを、容易に使い分けることができ、修正作業性を向上できる。
【0033】
電子時計1は、ユーザーが操作するボタン9をさらに備え、りゅうず8は、少なくとも1段位置および2段位置に引き出し可能に構成され、第1位置は前記2段位置であり、修正制御部73は、りゅうず8が1段位置に引き出された場合は、時刻表示部50で表示される時刻の時差を修正する時差修正モードに移行する。
このため、ユーザーは、時刻表示部50で表示される時刻を、異なるタイムゾーンの時刻に容易に修正できる。また、りゅうず8の引き出し位置が1段位置であれば時差修正を行うことができ、2段位置であれば現時刻修正を行うことができるので、ユーザーはりゅうず8の引き出し位置のみで、時差修正および現時刻修正の操作を使い分けることができ、利便性を向上できる。
【0034】
電子時計1は、ユーザーが操作するボタン9をさらに備え、りゅうず8は、少なくとも1段位置および2段位置に引き出し可能に構成され、第1位置は、前記2段位置であり、修正制御部73は、りゅうず8が1段位置に引き出された状態で、ボタン9で第3操作である長押し操作が行われたことを検出すると、時刻表示部50で表示される日を修正する日修正モードに移行する。
このため、ユーザーは、日車7で表示される日を、日修正モードに移行した後、りゅうず8を回転操作するだけで容易に修正することができる。
【0035】
時刻計時部は、時刻をカウントする時刻カウンター63を備え、修正制御部73は、時刻修正モードを終了した場合に、時刻カウンター63の値を、時刻表示部50に表示された時刻に更新する。
このため、時刻修正モードにおいて、時刻表示部50で表示される時刻を修正することで、時刻カウンター63でカウントしている内部時刻を表示時刻に更新でき、時報などに合わせてりゅうず8を0段位置や1段位置に押し込んで時刻修正モードを終了するだけで、内部時刻および表示時刻を容易に現在時刻に修正することができる。
【0036】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、文字板3と複数の指針を用いて時刻を表示させるアナログ式の時刻表示部50を有する電子時計を例示したが、電子時計は、アナログ式の時刻表示部50のみを備えるものに限定されない。例えば、電子時計は、液晶表示部等を用いて時刻等を表示させるデジタル式の時刻表示部を備えるものでもよいし、デジタル式およびアナログ式の時刻表示部の両方を備えて構成してもよい。なお、デジタル式の時刻表示部で表示される時刻は、数字で表示してもよいし、画像表示の指針で表示してもよい。また、デジタル式の時刻表示部のみを備えて構成する場合、例えば、ユーザーにより時刻修正待機モードに移行した際には時刻表示が更新されない状態で表示を継続させ、さらには点滅表示にすることで時刻表示の動作停止としてもよい。この構成により、ユーザーは時刻修正待機モードに移行したことをデジタル式の時刻表示部を介して容易に認識することができる。
【0037】
前記実施形態では、修正制御部73は、時刻修正モードに移行した際に、秒針6を0秒位置に移動し、分針5を正分位置に停止させていたが、移動先はこれらの位置に限定されない。例えば、秒針6を0秒位置あるいは30秒位置のいずれか近い位置に移動してもよい。また、時刻修正モードに移行した際に、修正制御部73は、時針4、分針5、秒針6を時刻修正待機モードで停止した位置に維持してもよい。
【0038】
前記実施形態では、受信部20は、標準電波を受信していたが、受信部20で受信する信号はこれに限られない。例えば、GPS、ガリレオ、GLONASS、Beidouなどの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)や、静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)や、準天頂衛星等の特定の地域のみで検索できる地域的衛星測位システム(RNSS)などの各衛星から送信される衛星信号を受信してもよい。
また、受信部は、例えば、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、Wi-Fi(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、LPWA(Low Power Wide Area)等の他の電波を受信するものでもよい。
【0039】
[まとめ]
本開示の電子時計は、時刻をカウントする時刻計時部と、前記時刻を表示する時刻表示部と、ユーザーが操作するりゅうずと、前記りゅうずを第1位置に引き出す第1操作を検出すると、前記時刻表示部の動作は停止させ、前記カウントは継続させる時刻修正待機モードに移行し、前記第1位置に引き出した前記りゅうずを回す第2操作を検出すると、前記時刻の修正を行うことができる時刻修正モードに移行する修正制御部と、を備えることを特徴とする。
本開示の電子時計によれば、誤操作でりゅうずを第1位置に引き出して時刻修正待機モードに移行しても、内部時刻が現在時刻とずれることがないので、りゅうずを第1位置以外に戻すことなどで時刻修正待機モードを解除すれば、時刻表示部の表示を正確な現在時刻表示に戻すことができ、時刻修正操作を不要にできる。
【0040】
前記電子時計において、前記時刻表示部は、時針、分針および秒針を備え、前記修正制御部は、前記時刻修正モードに移行した際に、前記秒針は0秒位置に移動させ、前記分針は正分位置に停止させる。
本開示の電子時計によれば、ユーザーは、時刻修正待機モードから時刻修正モードに移行したことを容易に認識することができる。
【0041】
前記電子時計において、前記修正制御部は、前記第2操作による単位時間当たりのりゅうずの回転量が判定値未満の場合は、前記時刻表示部の分表示を1分単位で修正し、前記回転量が前記判定値以上の場合は、前記分表示の連続修正を開始し、次にりゅうずの回転を検出した時点で、前記連続修正を終了する。
本開示の電子時計によれば、ユーザーは、りゅうずの単位時間当たりの回転量を変更するだけで、分表示を1分単位で細かく修正する場合と、分表示を連続して修正する場合とを、容易に使い分けることができ、修正作業性を向上できる。
【0042】
前記電子時計において、前記りゅうずは、少なくとも前記第1位置および第2位置に引き出し可能に構成され、前記修正制御部は、前記りゅうずが前記第2位置に引き出された場合は、前記時刻表示部で表示される前記時刻の時差を修正する時差修正モードに移行する。
本開示の電子時計によれば、ユーザーは、時差修正モードによって、時刻表示部で表示される時刻を、異なるタイムゾーンの時刻に容易に修正できる。また、りゅうずの引き出し位置が第2位置であれば時差修正を行うことができ、第1位置であれば現時刻修正を行うことができるので、ユーザーはりゅうずの引き出し位置のみで、時差修正および現時刻修正の操作を使い分けることができ、利便性を向上できる。
【0043】
前記電子時計において、ユーザーが操作するボタンをさらに備え、前記修正制御部は、前記りゅうずが前記第2位置に引き出された状態で、前記ボタンで第3操作が行われたことを検出すると、前記時刻表示部で表示される日を修正する日修正モードに移行する。
本開示の電子時計によれば、ユーザーは、時刻表示部で表示される日を、日修正モードに移行した後、りゅうずを回転操作するだけで容易に修正することができる。
【0044】
前記電子時計において、前記時刻計時部は、前記時刻をカウントする時刻カウンターを備え、前記修正制御部は、前記時刻修正モードを終了した場合に、前記時刻カウンターの値を、前記時刻表示部に表示された時刻に更新する。
本開示の電子時計によれば、時刻修正モードにおいて、時刻表示部で表示される時刻を修正することで、時刻カウンターでカウントしている内部時刻を表示時刻に更新でき、時報などに合わせてりゅうずを押し込んで時刻修正モードを終了するだけで、内部時刻および表示時刻を容易に現在時刻に修正することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…電子時計、2…ケース、3…文字板、4…時針、5…分針、6…秒針、7…日車、8…りゅうず、9…ボタン、20…受信部、21…アンテナ、22…同調回路部、23…受信回路部、30…外部操作部、40…電力供給部、41…発電装置、42…二次電源、50…時刻表示部、51…駆動回路、511…第1駆動回路、512…第2駆動回路、513…第3駆動回路、52…モーター、521…第1モーター、522…第2モーター、523…第3モーター、60…制御回路部、61…発振回路、610…水晶振動子、62…デコード部、63…時刻カウンター、64…針位置カウンター、70…制御部、71…駆動制御部、72…受信制御部、73…修正制御部、R1…第1方向、R2…第2方向。
図1
図2
図3