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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20231205BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20231205BHJP
   A61K 31/745 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/78 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20231205BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/31
A61K8/9789
A61K31/745
A61K31/78
A61K36/61
A61P17/16
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020004139
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109859
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】中村 久
(72)【発明者】
【氏名】志津田 有成
(72)【発明者】
【氏名】河原塚 悠
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177364(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147992(WO,A1)
【文献】特開2002-322076(JP,A)
【文献】特開2001-329482(JP,A)
【文献】Eye Cream, MINTEL GNPD [ONLINE], 2016.04,[検索日 2023.04.25],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.3794553)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/31
A61K 8/9789
A61K 31/745
A61K 31/78
A61K 36/61
A61P 17/16
A61Q 19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均分子量が800~3000の炭化水素油を0.5質量%~10質量%、
(b)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体を0.005質量%~0.5質量%、および、
(c)フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)より得られるユーカリ抽出物を有効成分として0.001質量%~0.1質量%含有する、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布する用途に用いられる皮膚外用剤。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記成分(a)は水添ポリイソブテンである、請求項1に記載の、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布する用途に用いられる皮膚外用剤。
【請求項3】
前記成分(b)は(2-メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)-(ブチル-メタクリレート)ランダム共重合体である、請求項1または2に記載の、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布する用途に用いられる皮膚外用剤。
【請求項4】
前記成分(c)はユーカリ抽出液である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布する用途に用いられる皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が到来した日本では、介護用のおむつが必要な高齢者が増えてきている。高齢者の皮膚は水分保持能やバリア機能が低下する傾向にあり、皮膚に何かしらのトラブルを抱えている場合がある。特におむつ着用時には蒸れやすく、かゆみなどの皮膚トラブルが起きることがあり、QOL(Quality of life)低下の一因になる。健やかな皮膚が維持されるには皮膚の水分量を適切に保つ必要があるため、水分、保湿剤、油剤および植物エキスなどの機能成分が含まれる皮膚外用剤が用いられる。例えば特許文献1は、スタックホウシア科(Stackhousiaceae)に分類される植物の抽出物を含む皮膚外用剤が、保湿性に優れ、肌荒れの改善や予防効果に優れていることを開示している。しかし、引用文献1の皮膚外用剤は、保湿性や肌荒れには有効であるものの、おむつ着用時における対策は不十分だった。
特許文献2は、植物抽出液、有機酸、水を含むことを特徴とする清浄・清拭用及び化粧水用液剤組成物を開示しており、容易に皮膚を清浄および清拭できることで、排泄物等に起因する炎症や、皮膚のかさかさ感の防止が図られている。しかし特許文献2の組成物は、洗浄・清拭による対策は図られているものの、皮膚との摩擦による悪影響があるなど十分でなかった。
おむつ着用時には、着用部周辺の皮膚は蒸れやすく、摩擦により皮膚の状態が悪化しやすい環境にある。しかしながら、おむつ着用部周辺の皮膚に従来の皮膚外用剤を塗布しても、優れた保湿性を与え、おむつ着用時に皮膚トラブルを抑えつつ、滑らかな皮膚に整えることでおむつと皮膚との摩擦を低減することは十分に達成できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-123659号公報
【文献】特開2000-226324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布することで、優れた保湿性を与え、皮膚トラブルを起こしにくく、おむつと皮膚との摩擦が低減できる皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、後述の成分(a)~(c)を特定の割合で配合することで上記課題を解決することを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の通りである。
(a)平均分子量が800~3000の炭化水素油を0.5質量%~10質量%、
(b)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体を0.005質量%~0.5質量%、および、
(c)フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)より得られるユーカリ抽出物を、有効成分として0.001質量%~0.1質量%含有する皮膚外用剤。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布することで、優れた保湿性を与え、皮膚トラブルを起こしにくく、皮膚とおむつとの摩擦が低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の皮膚外用剤は、下記成分(a)、成分(b)、成分(c)を含有する。以下、各成分について説明する。
(a)平均分子量が800~3000の炭化水素油
(b)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む共重合体
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0016】
(c)フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)より得られるユーカリ抽出物
【0017】
〔成分(a)〕
本発明に用いられる成分(a)は、平均分子量が800~3000の炭化水素油であり、炭化水素化合物の混合物であって、その平均分子量が800~3000のものだけでなく、分子量が800~3000である単独の炭化水素化合物も含まれる。例えば、平均分子量が800~3000のポリブテン、平均分子量が800~3000の水添ポリイソブテン等が挙げられ、好ましくは平均分子量が800~3000の水添ポリイソブテンである。
炭化水素油の平均分子量は、好ましくは900~2900であり、より好ましくは1000~2800である。平均分子量が低すぎると、保湿性、皮膚トラブル改善効果および皮膚との摩擦低減効果が不十分となることがあり、平均分子量(又は分子量)が高すぎると、べたつき感が生じるため、皮膚との摩擦低減効果が悪化することがある。なお、炭化水素油の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリエチレングリコール換算で求めた数平均分子量である。
炭化水素油は、市販の製品を用いることもできる。例えば、平均分子量が800~3000の水添ポリイソブテンとしては、登録商標パールリーム18(平均分子量:1000)、登録商標パールリーム24(平均分子量:1350)、登録商標パールリーム46(平均分子量:2650)(いずれも日油株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、成分(a)の含有量は、皮膚外用剤中に、0.5~10質量%であり、1~8質量%が好ましく、さらに2~4質量%がより好ましい。成分(a)の含有量が0.5質量%を下回ると、保湿性、皮膚トラブル改善効果および皮膚との摩擦低減効果が不十分となる。一方、成分(a)の含有量が10質量%を超える場合は、べたつき感が生じてしまい、皮膚との摩擦低減効果が低下する。
【0018】
〔成分(b)〕
本発明に用いられる成分(b)は、下記の式(1)および式(2)で表される構成単位を含む共重合体である。
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0021】
【化6】
【0022】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0023】
上記式(1)で示される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
また、上記式(2)で示される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数4~18の直鎖または分岐のアルキル基であり、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等が例示される。なかでも、ブチル、ドデシル、オクタデシル等の直鎖アルキル基が好ましく、ブチル基またはオクタデシル基(別名ステアリル基)がより好ましい。
なお、上記アルキル基の炭素数が小さ過ぎる場合には、本発明の効果を低減せしめる場合がある。また上記アルキル基の炭素数が大き過ぎる場合には、水や水性溶媒への溶解が困難になる場合がある。
【0024】
式(1)で示される構成単位の量をn1、および、式(2)で示される構成単位の量をn2としたときに、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位の共重合体中におけるそれぞれの含有量の比(n1:n2)は、モル比にて10:1~1:5であり、好ましくは7:1~1:4であり、より好ましくは5:1~1:3である。式(1)で示される構成単位の含有量に対する式(2)で示される構成単位の含有量の比(n2/n1)(モル比)が0.1未満である場合には、おむつかぶれ改善効果やおむつ交換のしやすさが低下するおそれがある。一方、前記比が5を超えると、保湿性や皮膚トラブル改善効果が低下するおそれがある。
【0025】
成分(b)である共重合体の重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、さらに好ましくは50,000~800,000である。共重合体の重量平均分子量が10,000未満である場合には、保湿性、皮膚トラブル改善効果、皮膚との摩擦低減効果を損なう可能性があり、一方、共重合体の重量平均分子量が1,000,000を超える場合には、取り扱いが困難となるおそれがある。なお、共重合体Bの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0026】
共重合体の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
共重合体が上記式(1)または式(2)で示される構成単位以外の構成単位を含む場合には、共重合体中における他の構成単位の含有量は40モル%以下であり、好ましくは20モル%以下である。
【0027】
共重合体は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(メタ)アクリル酸アルキル、ならびに必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて製造することができる。
その際の各単量体の仕込み量比は、成分(b)である共重合体中における各構成単位の含有量比に相当する比とすればよい。本発明の皮膚外用剤には、成分(b)である共重合体を1種のみ単独で、または2種以上を組み合わせて含有させることができる。
共重合体は、上記した重合方法により製造して用いることもできるが、「リピジュア(登録商標)-B」、「リピジュア(登録商標)-PMB」、「リピジュア(登録商標)-NR」(日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
【0028】
本発明において、成分(b)の含有量は、皮膚外用剤中に、0.005~0.5質量%であり、0.01~0.4質量%が好ましく、さらに0.02~0.3質量%がより好ましい。成分(b)の含有率が0.005質量%を下回ると、保湿性、皮膚トラブル改善効果、皮膚との摩擦低減効果が不十分となることがあり、0.5質量%を超える場合は、配合量に見合った効果が得られない。
【0029】
〔成分(c)〕
本発明に用いられる成分(c)は、ユーカリ抽出物であり、フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)およびその近縁種よりなる群から選ばれる少なくとも一つのユーカリ属植物から得られるものである。
ユーカリ抽出液の製造に用いる植物体の部位としては、葉が好ましく、特に萌芽から3年以内の枝につく幼葉が保湿性、皮膚トラブル改善効果および皮膚との摩擦低減効果の面でより好ましい。幼葉は、対生で、卵形であり、白い粉を吹いたような表面をしている。一方、成葉は、互生で、披針形であり、全縁(葉の縁がなめらか)である。したがって、ユーカリプタス・グロブラスおよびその近縁種の幼葉と成葉は外見上、明確に区別が可能である。
ユーカリプタス・グロブラスおよびその近縁種の葉を原料として溶媒抽出することによって、本発明で用いられるユーカリ抽出液が得られる。ユーカリ抽出液を得るために溶媒抽出する際は、生葉をそのままで溶媒抽出しても良いが、抽出効率を考えると、生細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に溶媒抽出を行うことが好ましい。
抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、エチルメチルケトン等のケトンなどの極性有機溶媒を用いることができる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いても良い。これら溶媒のうち1種を単独で使用しても良く、また2種以上の混合物を使用しても良い。
これら溶媒のなかでも、水、エタノール、プレピレングリコール、1,3-ブチレングリコールから選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することが好ましく、より好ましくはエタノールと水の混合物である。
【0030】
成分(c)としては、上記溶媒抽出により得られたユーカリ抽出液を、そのままでも本発明の皮膚外用剤に含有させることができ、また得られたユーカリ抽出液に様々な処理を行なったものを本発明の皮膚外用剤に含有させることができる。例えば、抽出液を希釈した希釈液;抽出液を濃縮、乾固または凍結乾燥して得られた濃縮液、ペーストまたは粉末;得られた濃縮液、ペースト、粉末を水や有機極性溶媒で希釈あるいは溶解した希釈液、溶液;あるいは効果を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行った精製物;カラムクロマトグラフィ等による分画処理を行った処理物などを本発明の皮膚外用剤に含有させることができる。また、ユーカリ抽出物をリポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0031】
成分(c)の含有量は、皮膚外用剤中に、ユーカリ抽出物を有効成分(ユーカリ抽出液の乾燥残留物の質量に換算した値)として0.001~0.1質量%であり、好ましくは0.01~0.08質量%、より好ましくは0.02~0.06質量%である。成分(c)の含有量が有効成分として0.0001質量%未満であると、保湿性、皮膚トラブル改善効果、皮膚との摩擦低減効果が低下するおそれがあり、また、1質量%を超えると、配合に見合った効果が得られない。
本発明における乾燥残留物とは、通常、抽出液を105℃で乾燥するか、または減圧乾固して溶媒を除去したときの残留物である溶質をいう。なお、抽出溶媒が不揮発性である場合には、ガスクロマトグラフィ、高速クロマトグラフィなどにより溶媒量を定量した値から、溶質量を算出し、乾燥残留物量とみなすことができる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記の成分(a)~成分(c)以外の他の成分を含有させることができる。他の成分は外用剤や化粧料等に常用されるものであり、例えば、エタノールなどの低級アルコール、プロピレングリコールなどのジオール類、糖アルコールおよび糖アルコール誘導体、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤、糖類、界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、アルギニンなどのアミノ酸、色素、香料などが挙げられ、本発明の性能を損なわない範囲で配合することができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤の剤型としては特に制限されず、ローション剤や乳液等の液剤であってもよく、クリーム、ジェルなど半固形状であってもよく、皮膚に塗布可能な剤型であればその他の剤型であってもよい。
【実施例
【0034】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1~7、比較例1~3〕
実施例1~7および比較例1~3の皮膚外用剤を調製し、得られた各皮膚外用剤について評価を行った。実施例1~7の組成および評価結果を表1に示し、比較例1~3の組成および評価結果を表2に示す。
【0035】
<皮膚外用剤の調製>
実施例1~7については各成分を表1に示す配合割合(質量%)で配合し、また、比較例1~3については各成分を表2に示す配合割合(質量%)で配合し、以下の方法により皮膚外用剤を調製した。
すなわち、油相として成分(a)および共通成分3~11、水相として共通成分1、2、12をそれぞれ混合し、75℃~80℃に加熱し、ホモミキサーを用いて混合した後に、40℃以下に冷却し、さらに成分(b)および成分(c)を混合して皮膚外用剤を得た。成分(c)であるユーカリ抽出液の含有量は有効成分の質量として示す。
表1中の成分は次のとおりである。
・成分(a):日油株式会社製、パールリーム24(登録商標)
水添ポリイソブテン、平均分子量1350
・成分(b):日油株式会社製、リピジュア(登録商標)-PMB(Ph10)
(2-メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)-(ブチル-メタクリレート)ランダム共重合体、
式(1)の単位(2-メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)の含有量(n1)と式(1)の単位(ブチル-メタクリレート)の含有量(n2)のモル比(n1:n2)が4:1、重量平均分子量が約60万、
・成分(c):日油株式会社製、ユーカリエキスBG(製品名)
ユーカリ抽出液(有効成分:1.0質量%)
・共通成分:表3に示す各成分(配合比率を質量部で示す。)
【0036】
<評価方法>
(1)保湿性の評価
医療・介護施設などに入所し、おむつを使用することがある60歳から80歳の男女20人をパネラーとした。パネラーは敏感肌でかゆみなどの皮膚トラブルが起きやすいことを申告した方に限定した。パネラーは、皮膚外用剤3gをおむつ装着部周辺の皮膚に十分に馴染ませて1時間後に、保湿性について下記のように判定し、採点を行った。
2点:保湿感を十分に感じる場合。
1点:保湿感をやや感じる場合。
0点:保湿感を感じない場合。
パネラー20名の合計点を求めて、下記の基準で評価した。表に評価結果と合計点を表示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0037】
(2)皮膚トラブル改善効果の評価
医療・介護施設などに入所し、おむつを使用することがある60歳から80歳の男女20人をパネラーとした。パネラーは敏感肌でかゆみなどの皮膚トラブルが起きやすいことを申告した方に限定した。パネラーは、皮膚外用剤3gを毎日一回おむつ装着部周辺の皮膚に十分に馴染ませた。パネラーは、連続使用して7日目、おむつかぶれ改善効果について下記のように判定し、採点を行った。
2点:かゆみが優位に改善したと感じる場合。
1点:かゆみがやや改善したと感じる場合。
0点:かゆみがあまり変わらないと感じる場合。
パネラー20名の合計点を求めて、下記の基準で評価した。表に評価結果と合計点を表示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0038】
(3)皮膚との摩擦低減効果の評価
医療・介護施設などに入所し、おむつを使用することがある60歳から80歳の男女20人をパネラーとした。パネラーは敏感肌でかゆみなどの皮膚トラブルが起きやすいことを申告した方に限定した。パネラーは、皮膚外用剤3gを毎日一回おむつ装着部周辺の皮膚に十分に馴染ませた。パネラーは、連続使用して7日目、皮膚との摩擦低減効果について下記のように判定し、採点を行った。
2点:皮膚が滑らかになりおむつとの摩擦が低減したと感じた場合。
1点:皮膚が滑らかになりおむつとの摩擦がやや低減したと感じた場合。
0点:おむつとの摩擦が変わらないと感じた場合。
パネラー20名の合計点を求めて、下記の基準で評価した。表に評価結果と合計点を表示した。
◎:合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満かつ0点の評価をしたパネラーがいない。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
×:合計点が20点未満である。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
<評価結果>
表1に示されるように、実施例1~7の各皮膚外用剤は、保湿性の向上および皮膚トラブル改善効果に優れ、皮膚とおむつとの摩擦が低減する皮膚外用剤と評価された。
一方、表2に示されるように、比較例1~3の皮膚外用剤については、以下のとおり、すべての評価項目おいて十分な有効性の認められたものは見られなかった。
例えば成分(a)を含有していない比較例1の皮膚外用剤は、皮膚トラブル改善効果および皮膚との摩擦低減効果が不十分であると評価された。
成分(b)を含有していない比較例2の皮膚外用剤は、保湿性および皮膚との摩擦低減効果が不十分であると評価された。
成分(c)を含有していない比較例3の皮膚外用剤は、皮膚トラブル改善効果および皮膚との摩擦低減効果が不十分であると評価された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上、詳述したように、本発明の皮膚外用剤を、おむつ着用部周辺の皮膚に塗布することで、優れた保湿性を与え、皮膚トラブルを起こしにくく、おむつと皮膚との摩擦が低減できるため、介護用のおむつが必要な高齢者にとっては、おむつ着用部周辺の皮膚の健康状態を維持または改善するために、好適に用いることができる。