(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】クリーニング装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231205BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020005827
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩本 憲俊
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197611(JP,A)
【文献】特開2003-021995(JP,A)
【文献】特開2017-090830(JP,A)
【文献】特開平11-095634(JP,A)
【文献】特開平05-224563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/14-13/16
15/02
15/14-15/16
21/00
21/04
21/10-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体表面を清掃するクリーニング装置であって、
弾性を有するブレードと、
ブレードを支持する揺動可能な支持部材と、
ブレードに付勢力を付与して、回転体表面にカウンター当接させる付勢手段と、
支持部材の揺動支点がなす支点角αからブレードの回転体に対する当接角βを差し引いた角度差γと、ブレードの当接状態との適切な対応関係を記憶する記憶手段と、
ブレードの当接状態
の指標値として、環境温度、環境湿度、ブレードと前記回転体との摺擦距離、前記回転体の駆動トルクのうち、少なくとも1つを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出したブレードの
当接状態
の指標値に対応して記憶手段が記憶している適切な角度差を参照し、ブレードを姿勢制御する制御手段と、を備え、
前記支点角は、ブレードの当接点における回転体の接線と、当接点と支持部材の揺動支点を結ぶ直線とがなす角度である
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として環境温度を検出し、
記憶手段は、環境温度が高いほど、角度差が大きくなるように対応関係を記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として環境湿度を検出し、
記憶手段は、環境湿度が高いほど、角度差が大きくなるように対応関係を記憶する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として、ブレードと回転体との摺擦距離を検出し、
記憶手段は、摺擦距離が長いほど、角度差が小さくなるように対応関係を記憶する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項5】
検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として回転
体の駆動トルクを検出し、
記憶手段は、駆動トルクが大きいほど、角度差が小さくなるように対応関係を記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
制御手段は、支持部材の揺動支点を変位させることによって、ブレードを姿勢制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
制御手段は、カムを用いて、支持部材の揺動支点を変位させる
ことを特徴とする請求項6に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
制御手段は、付勢手段のブレードに対する付勢力を変更することによって、ブレードを姿勢制御する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項9】
制御手段は、カムを用いて、支持部材に取着されたバネの長さを変更することによって、前記付勢力を変更する
ことを特徴とする請求項8に記載のクリーニング装置。
【請求項10】
制御手段は、当接角が所定の範囲内に収まるように、ブレードを姿勢制御する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項11】
制御手段は、ブレードの回転体に対する当接圧が所定の範囲内に収まるように、ブレードを姿勢制御する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項12】
制御手段は、回転体が停止している場合に、ブレードを姿勢制御する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のクリーニング装置を備え、
前記回転体に付着したトナーを清掃する
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、特に、像担持回転体上のトナー像を転写した後に当該像担持回転体上に残留するトナーを清掃するクリーニングブレードを長寿命化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、トナー像を転写元の像担持回転体から被転写体へ静電転写する転写プロセスを実行する。転写プロセス後に、転写元にトナーが残留していると、次の画像形成の際に画像品質が低下する。このような残留トナーを除去するため、クリーニングブレードが広く用いられている。クリーニングブレードは、像担持回転体に対して所定の当接圧でカウンター当接されるのが一般的である。
【0003】
クリーニングブレードは、長期間に亘って使用すると、像担持回転体との摺擦によって摩耗し、像担持回転体との当接状態が変化して、クリーニング不良が発生する。
【0004】
このような問題に対して、例えば、画像形成装置の印刷枚数に応じて、クリーニングブレードの先端と、像担持回転体としての中間転写ベルトの表面とがなすエッジ角を変更する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような技術を採用すれば、長期間に亘って良好なクリーニング性能を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-090830号公報
【文献】特開2013-025180号公報
【文献】特開平11-095634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クリーニングブレードとしては、ウレタンエラストマー等の樹脂からなるものがあり、高いクリーニング性能を安価に実現できることから広く使用されている。この樹脂製のクリーニングブレードを用いる場合には、ブレードの先端面が広範囲に欠けて、クリーニング性能が著しく損なわれる破断が、長寿命化を図る上で問題になる。
【0007】
しかしながら、上記の従来技術はステンレス鋼などの金属製であり、破断が生じないクリーニングブレードを想定したものである。従って、従来技術の構成において、クリーニングブレードを単純に樹脂製に置き換えただけでは、クリーニングブレードの破損による寿命の短縮を有効に防止することが必ずしも容易でない。
【0008】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、クリーニングブレードの破損を防止することによって長寿命化したクリーニング装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るクリーニング装置は、回転体表面を清掃するクリーニング装置であって、弾性を有するブレードと、ブレードを支持する揺動可能な支持部材と、ブレードに付勢力を付与して、回転体表面にカウンター当接させる付勢手段と、支持部材の揺動支点がなす支点角αからブレードの回転体に対する当接角βを差し引いた角度差γと、ブレードの当接状態との適切な対応関係を記憶する記憶手段と、ブレードの当接状態の指標値として、環境温度、環境湿度、ブレードと前記回転体との摺擦距離、前記回転体の駆動トルクのうち、少なくとも1つを検出する検出手段と、前記検出手段により検出したブレードの当接状態の指標値に対応して記憶手段が記憶している適切な角度差を参照し、ブレードを姿勢制御する制御手段と、を備え、前記支点角は、ブレードの当接点における回転体の接線と、当接点と支持部材の揺動支点を結ぶ直線とがなす角度であることを特徴とする。
【0010】
この場合において、検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として環境温度を検出し、記憶手段は、環境温度が高いほど、角度差が大きくなるように対応関係を記憶してもよい。
【0011】
また、検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として環境湿度を検出し、記憶手段は、環境湿度が高いほど、角度差が大きくなるように対応関係を記憶してもよい。また、検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として、ブレードと回転体との摺擦距離を検出し、記憶手段は、摺擦距離が長いほど、角度差が小さくなるように対応関係を記憶してもよい。また、検出手段は、ブレードの当接状態の指標値として回転体の駆動トルクを検出し、記憶手段は、駆動トルクが大きいほど、角度差が小さくなるように対応関係を記憶してもよい。
【0012】
また、制御手段は、支持部材の揺動支点を変位させることによって、ブレードを姿勢制御してもよい。また、制御手段は、カムを用いて、支持部材の揺動支点を変位させてもよい。また、制御手段は、付勢手段のブレードに対する付勢力を変更することによって、ブレードを姿勢制御してもよい。また、制御手段は、カムを用いて、支持部材に取着されたバネの長さを変更することによって、前記付勢力を変更してもよい。
【0013】
また、制御手段は、当接角が所定の範囲内に収まるように、ブレードを姿勢制御してもよい。また、制御手段は、ブレードの回転体に対する当接圧が所定の範囲内に収まるように、ブレードを姿勢制御してもよい。また、制御手段は、回転体が停止している場合に、ブレードを姿勢制御してもよい。
【0014】
本開示の一形態に係る画像形成装置は、本開示の一形態に係るクリーニング装置を備え前記回転体に付着したトナーを清掃することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
バネ圧接タイプのクリーニング装置は、回転体との摺擦によるブレードの当接部の揺動し易さが、支点角αによって異なる。支点角αが大きい場合には、摺擦力の揺動方向成分が大きくなるので、当接部が揺動して当接角βが小さくなって、ブレードが破損し難くなる。一方、支点角αが小さい場合には、摺擦力の揺動方向成分が小さいので、当接部が揺動し難く当接角βが大きくなって、クリーニング性能が向上する。この傾向は、回転体の駆動を停止した状態での当接角βにも関係しており、角度差γと、揺動時のブレードの歪み変化量とは負の相関関係を有している。
【0016】
従って、ブレードが破損し易い状態である場合には角度差γが大きくなるようにブレードを姿勢制御すれば破損を防止することができる。また、クリーニング性能が低下し得る状態である場合には角度差γを小さくなるようにブレードを姿勢制御すれば、クリーニング性能の低下を防止することができる。従って、ブレードの破損を防止しながら、長期間に亘ってクリーニング性能を維持することができるので、ブレードの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置1の主要な構成を示す図である。
【
図2】クリーニング装置100の主要な構成を示す図である。
【
図4】クリーニング装置100において、支点位置とバネ位置とを設定するための構成を示す図である。
【
図5】クリーニング装置100において、支点位置とバネ位置とを設定するための構成を示す図である。
【
図6】制御部123の主要な構成を示すブロック図である。
【
図7】制御部123による支点位置とバネ位置との制御動作を表したフローチャートである。
【
図8】(a)は機内温度の温度範囲と機内湿度の湿度範囲との組み合わせに角度差γを対応付ける条件-設定テーブルを例示する表であり、(b)は角度差γに支点位置およびバネ位置を対応付ける支点-バネ位置テーブルを例示する表である。
【
図9】支点102の位置によるクリーニングブレード101のエッジ部の揺動方向の変化を説明する図である。
【
図10】支点角αと当接角βとの角度差γとクリーニングブレード101の歪み変化量との相関関係を表した散布図である。
【
図11】(a)クリーニングブレード101の破断を説明する図であり、(b)はクリーニングブレード101に対する機内温度および機内湿度の高低による効果を説明する図であり、(c)はクリーニングブレード101に対する中間転写ベルト115の走行距離の長短による効果を説明する図である。
【
図12】中間転写ベルト115の走行距離に角度差γを対応付ける条件-設定テーブルを例示する表である。
【
図13】環境条件に角度差γを対応付ける条件-設定テーブルを例示する表である。
【
図14】中間転写ベルト115の駆動トルクの範囲に角度差γを対応付ける条件-設定テーブルを例示する表である。
【
図15】従来技術に係る定荷重方式のクリーニング装置の構成を例示する図である。
【
図16】実施例1~4および比較例1~3についての評価結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置1の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置1の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンターであっって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のトナー像を形成する作像部110Y、110M、110C、110Kを備えている。作像部110Y、110M、110C、110Kはいずれも同様の構成を備えており、感光体ドラム111を矢印A方向に回転させながら、帯電装置112を用いて感光体ドラム111の外周面を一様に帯電させた後、不図示の露光装置を用いて画像データに応じて変調されたレーザー光113を照射して、静電潜像を形成する。
【0020】
現像装置114は、現像ローラーを矢印B方向に回転させながら、YMCK各色のトナーを供給して、静電潜像を現像し、トナー像を形成する。中間転写ベルト115は、無端状のベルトであって、矢印C方向に周回走行する。一次転写ローラー116は、一次転写バイアスが印加されており、感光体ドラム111の外周面上のトナー像を、中間転写ベルト115の外周面上へ静電転写する(一次転写)。
【0021】
クリーニングブレード117は、ウレタンエラストマー等の弾性を有する樹脂からなっており、一次転写後に感光体ドラム111の外周面上に残留するトナーを掻き取って廃棄する。滑材塗布装置118は、感光体ドラム111の外周面上に滑材を塗布する。これによって、感光体ドラム111の外周面が他の部材と摺擦することによって摩耗することが軽減される。滑材は、一次転写の際に感光体ドラム111の外周面が中間転写ベルト115に圧接すると、中間転写ベルト115の外周面へ移動して、付着する。
【0022】
YMCK各色のトナー像は、中間転写ベルト115の外周面上で互いに重なり合うように一次転写され、カラートナー像が形成される。中間転写ベルト115は、一次転写ローラー116の他、駆動ローラー119やクリーニング部対向ローラー107等に掛け回されている。駆動ローラー119には中間転写ベルト115を挟んで二次転写ローラー120が圧接されており、この圧接によって二次転写ニップが形成される。
【0023】
中間転写ベルト115の周回走行によってカラートナー像が二次転写ニップへ搬送されるのにタイミングを合わせて、記録シートがシート搬送経路121に沿って二次転写ニップへ搬送される。二次転写ローラー120には二次転写バイアスが印加されており、中間転写ベルト115の外周面上から記録シートへカラートナー像が静電転写される(二次転写)。その後、記録シートは定着装置122によってカラートナー像を熱定着され、装置外へ排出される。
【0024】
クリーニング装置100は、二次転写後に中間転写ベルト115の外周面上に残留するトナーを回収して廃棄する。制御部123は、印刷ジョブを受け付けると、印刷ジョブに応じた画像形成処理を実行させるために、画像形成装置1の動作を監視したり制御したりする。なお、画像形成装置1の構成が上記の構成に限定されないのは言うまでもなく、他の構成を採用してもよい。
[2]クリーニング装置100の構成
次に、クリーニング装置100の構成について説明する。
【0025】
クリーニング装置100は、いわゆるバネ圧接タイプのクリーニング装置である。
図2に示すように、クリーニング装置100は、弾性を有するクリーニングブレード101を中間転写ベルト115の外周面上に当接させることによって、中間転写ベルト115の外周面上に付着している残留トナーを掻き取る。本実施の形態において、中間転写ベルト115はポリイミドに導電材を添加した材料からなり、クリーニングブレード101はポリウレタンやNBR(Nitrile Butadiene Rubber)等のソリッドゴムからなるゴムブレードである。なお、中間転写ベルト115やクリーニングブレード101の材料がこれらに限定されないのは言うまでもなく、他の材料を用いてもよい。
【0026】
クリーニングブレード101は、揺動軸(以下、「支点」という。)102を揺動中心として矢印D方向に揺動する支持板金103の一端に取着されており、支持板金103と共に揺動することができる。支持板金103の他端にはバネ104が取着されている。バネ104の弾性復元力によって、支持板金103のバネ104を取着した端部が矢印E方向へ付勢されると、支持板金103が揺動し、この弾性復元力に応じた当接力で、クリーニングブレード101のエッジ部分が中間転写ベルト115の外周面に当接される。
【0027】
支点102は、制御部123の制御によって、支点移動範囲201の範囲内で矢印F方向に変位することができる。支点102が変位後の位置に回転可能に固定されると、支持板金103は当該変位後の位置を中心として揺動する。クリーニングブレード101が掻き取った残留トナーはクリーニングユニット105内に落下した後、搬送スクリュー106によって廃トナーボトル(図示省略)内へ搬送される。
【0028】
なお、
図2においては、クリーニングブレード101が中間転写ベルト115を挟んでクリーニング部対向ローラー107に圧接される位置において、中間転写ベルト115の外周面上に当接する場合が例示されているが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、中間転写ベルト115を挟んで他の部材に圧接されない位置で中間転写ベルト115の外周面上に当接してもよい。また、クリーニング部で用いられている部品の材料は特に限定されるものではない。構成についても上記内容に限定されるものではなく、トナー極性を調整するローラーやトナーを貯留するローラーを用いてもよい。
【0029】
以下においては、
図3に示すように、クリーニングブレード101が中間転写ベルト115に当接する位置301を「接触点」といい、接触点301における中間転写ベルト115の接線L1と、接触点301と支点102を結ぶ直線L2とがなす角度を支点角αというものとする。また、接触点301におけるクリーニングブレード101の接線L3と接線L1とがなす角度を当接角βといい、支点角αから当接角βを減算した角度を角度差γ(=α-β)という。
[3]支点102を変位させるための機構
次に、クリーニングブレード101の中間転写ベルト115に対する当接姿勢を制御するために、支点102を変位させるための機構について説明する。
【0030】
図4に示すように、支持板金103は支点位置決め部401を備えている。支点位置決め部401は支持板金103を曲げ加工して形成してもよいし、支持板金103本体に別部材を組み合わせてもよい。
【0031】
支点位置決め部401には、支点移動範囲201の範囲内で支点102を案内するためのガイド溝402が形成されており、ガイド溝402には支点102の案内方向Fに沿って小径部403と大径部404とが交互に設けられている。支点102は小径部403を経由して大径部404から別の大径部404へ案内される。
【0032】
図5に示すように、支点(揺動軸)102は主走査方向(中間転写ベルト115の幅方向)に長尺の回転体である。支点102には小径部501が設けられており、小径部501の外径はガイド溝402の小径部403の内径よりも小さくなっている。一方、支点102は小径部501よりも外径が大きい大径部502も有しており、大径部502の外径はガイド溝402の小径部403の内径よりも大きい。
【0033】
大径部502の外径はガイド溝402の大径部404の内径よりも小さくなっており、ガイド溝402の大径部404に遊嵌することができる。支点102がいずれかの大径部404に遊嵌した状態で、当該支点102を揺動中心として支持板金103が揺動し、クリーニングブレード101のエッジ部分を中間転写ベルト115の外周面に当接させる。
【0034】
支点102をどの大径部404に遊嵌するかによって、支点角αを調整することができる。また、バネ104は一端が支持板金103の端部に固定されており、他端がバネ取付部材405に固定されている。バネ取付部材移動機構505は、バネ取付部材405に当接するカムと、当該カムに向かってバネ取付部材405を付勢する不図示の付勢部材とを備えており、カムを回転させることによってバネ取付部材405をホーム位置Phから最遠位置Prまで矢印G方向に変位させる。
【0035】
バネ取付部材405を変位させることによって、支持板金103に作用するバネ104の弾性復元力を調整することができる。本実施の形態においては、バネ取付部材405がホーム位置Phにある場合、バネ104が自然長となって弾性復元力が発生しない。一方、バネ取付部材405が最遠位置Prにある場合には、バネ104の弾性復元力がもっとも大きくなる。
【0036】
支点角αが同じであっても、バネ取付部材405を変位させてバネ104の弾性復元力を大きくすれば、クリーニングブレード101の当接圧を大きくすることができる。逆に、バネ104の弾性復元力を小さくすれば、クリーニングブレード101の当接圧を小さくすることができる。
【0037】
支点長手方向移動機構503は、支点102の一端に当接したカムと、当該カムに向かって支点102を付勢する付勢部材(図示省略)とを有しており、カムを回転させることによって、支点102を主走査方向に変位させる。これによって、支点102の小径部501を、主走査方向における支点位置決め部401のところまで移動させることができる。
【0038】
支点位置移動機構504は、支点102の小径部501を、主走査方向における支点位置決め部401のところにある状態であって、かつ、バネ取付部材405をホーム位置Phにあり、バネ104の弾性復元力が支点位置決め部401に作用していない状態で、支点102を矢印F方向に沿って移動させることによって、支点102が支点位置決め部401の所望の大径部404内にまで移動させる。
【0039】
次に、支点長手方向移動機構503を用いて、支点102の大径部502を主走査方向における支点位置決め部401まで変位させると、支点102の大径部502が支点位置決め部401の大径部404に遊嵌する。この状態で、バネ取付部材移動機構505を用いて、バネ取付部材405をホーム位置Phから最遠位置Prへ向かって変位させると、変位量に応じてバネ104の弾性復元力が支点位置決め部401に作用して、クリーニングブレード101のエッジ部が中間転写ベルト115の外周面に当接する。
【0040】
なお、支点102の位置を変更する機構やクリーニングブレード101のエッジ部が中間転写ベルト115の外周面に当接する際の当接圧を変更する機構が上記の機構に限定されないのは言うまでもなく、他の機構を用いて支点102の位置を変更してもよい。また、上記では支点102の位置を段階的に変更する場合を例にとって説明したが、連続的に変更してもよい。支点102を移動させる構成についても、クランクやクラッチ、ギヤ等を用いてもよいことは言うまでもない。
[4]支点102を変位させるための制御構成と動作
次に、支点102を変位させるための制御構成と動作について説明する。
【0041】
図6に示すように、制御部123は、CPU(Central Processing Unit)601やROM(Read Only Memory)602、RAM(Random Access Memory)603等を備えており、CPU601は、リセット信号を入力されると、ROM602からブートプログラムを読み出して起動し、RAM603を作業用記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)604から読み出したOS(Operating System)や制御プログラムを実行する。
【0042】
HDD604には、中間転写ベルト駆動機構606による中間転写ベルト115の駆動履歴として、新たなクリーニングブレード101の使用を開始してからの中間転写ベルト115の走行距離情報611が記録されている。走行距離情報611は、中間転写ベルト駆動機構606を用いて中間転写ベルト115を周回走行させるたびに更新される。中間転写ベルト115の走行距離は、中間転写ベルト115とクリーニングブレード101との摺擦距離に一致する。
【0043】
また、HDD604には、環境条件と角度差γとを対応付ける条件-設定テーブル612が中間転写ベルト115の走行距離に対応して複数個記憶されている。環境条件と中間転写ベルト115の走行距離とはどちらもクリーニングブレード101の中間転写ベルト115に対する圧接状態や摩耗状態などのクリーニングブレード101の状態を指標している。また、角度差γと支点位置Fおよびバネ位置Sとを対応付ける支点-バネ位置テーブル613もHDD604に記憶されている。制御部123は、NIC(Network Interface Card)605を用いて外部の装置と通信し、印刷ジョブを受け付けることができる。
【0044】
制御部123は、制御プログラムを実行することによって、支点長手方向移動機構503や支点位置移動機構504、バネ取付部材移動機構505、中間転写ベルト駆動機構606の動作を制御することができる。また、制御部123は、環境センサー124の出力信号を参照して、画像形成装置1の機内温度や機内湿度を取得する。
【0045】
制御部123は、支点102の位置を制御する際には、
図7に示すように、まず、現在の設定条件を参照する(S701)。本実施の形態において設定条件とは、支点位置Fとバネ位置Sである。支点位置Fとは、支点102が、支点位置決め部401のどの大径部404に遊嵌しているかである。バネ位置Sとは、バネ取付部材405のホーム位置Phからの変位量である。
【0046】
次に、制御部123は、環境センサー124の出力信号を参照して、現在の機内温度および機内湿度を取得する(S702)。また、HDD604に記憶されている中間転写ベルト115の走行距離情報611を参照して(S703)、走行距離情報611に対応する条件-設定テーブル612を参照し、現在の機内温度および機内湿度に対応する角度差γを特定する(S704)。
【0047】
条件-設定テーブル612は、機内温度の範囲と機内湿度の範囲との組み合わせに角度差γを対応付けるテーブルである。
図8(a)の例では、機内温度の範囲を10度未満、10度以上30度未満および30度以上の3つに分けるとともに、機内湿度の範囲を20%未満、20%以上80%未満および80%以上の3つに分けて、3×3=9通りの組み合わせのそれぞれに対して角度差γが対応付けられている。
【0048】
また、条件-設定テーブル612は、中間転写ベルト115の走行距離情報611が示す走行距離の範囲に応じて複数個が記憶されている。本実施の形態においては、中間転写ベルト115の走行距離を0km以上10km未満、10km以上40km未満、40km以上50km未満および50km以上の4つの距離範囲に分けて、距離範囲ごとに条件-設定テーブル612をHDD604に記憶している。
図8(a)には、40km以上50km未満の距離範囲に対応する条件-設定テーブル612が例示されている。
【0049】
更に、支点-バネ位置テーブル613を参照して、ステップS704で特定した角度差γに対応する支点位置Fnewおよびバネ位置Snewを特定する(S705)。支点-バネ位置テーブル613は、
図8(b)に例示するように、角度差γ毎に支点位置Fとバネ位置Sとを記憶するテーブルである。新たに特定した支点位置Fnewおよびバネ位置Snewと、現在の支点位置Fおよびバネ位置Sとを比較して、両者が一致している場合には、設定変更は不要であると判断して(S706:NO)、処理を終了する。
【0050】
支点位置Fnewが現在の支点位置Fと異なっている場合またはバネ位置Snewが現在のバネ位置Sと異なっている場合には、設定変更が必要であると判断して(S706:YES)、新たな支点位置Fnewへ支点102を移動させるとともに(S707)、新たなバネ位置Snewへバネ取付部材405を移動させる。
【0051】
この場合において、制御部123は、まずバネ取付部材移動機構505を制御して、バネ取付部材405をホーム位置Phまで移動させる。次に、支点長手方向移動機構503を制御して、支点102をその長手方向へ移動させ、小径部501を支点位置決め部401のところまで移動させる。更に、支点位置移動機構504を制御して、支点102を支点位置Fnewまで移動させる。
【0052】
制御部123は、再び支点長手方向移動機構503を制御して、支点102をその長手方向へ移動させ、大径部502を支点位置決め部401のところまで移動させて、支点位置決め部401の大径部404に遊嵌させる。その後、制御部123は、バネ取付部材移動機構505を制御して、バネ取付部材405をホーム位置Phからバネ位置Snewまで移動させる。
【0053】
このようにすれば、支点角αと当接角βとの角度差γが環境条件に適した角度になる。
【0054】
なお、画像形成処理を実行している最中に支点102およびバネ取付部材405の位置を変更すると画像の品質に影響を与える恐れがあるので、画像形成処理を実行していないときに支点102およびバネ取付部材405の位置を変更するのが望ましく、画像形成処理を実行している間は支点102およびバネ取付部材405の位置が固定されているのが望ましい。
[5]クリーニングブレード101の特性
次に、クリーニングブレード101の特性について説明する。
(5-1)支点角αとクリーニングブレード101の挙動
支点角αとクリーニングブレード101の挙動との関係について説明する。
【0055】
図9に示すように、支点角αの支点102を中心として、支持板金103を矢印H方向に揺動させると、クリーニングブレード101のエッジ部は矢印I方向に揺動して、当接点301で中間転写ベルト115に当接する。この場合には、エッジ部の揺動方向(矢印I方向)と、当接点301における中間転写ベルト115の走行方向(接線L1方向)とがなす角度が大きい。
【0056】
このため、中間転写ベルト115との摺擦によってクリーニングブレード101のエッジ部に作用する摩擦力は、エッジ部の揺動方向の成分が小さいので、中間転写ベルト115がクリーニングブレード101を矢印I方向に揺動させる力が弱く、中間転写ベルト115の作用によってクリーニングブレード101が揺動する角度が小さい。
【0057】
クリーニングブレード101は、揺動角度が小さければ撓み量も小さくなるので、中間転写ベルト115に対して立つ、言い換えると当接角βが大きくなる。
【0058】
一方、同じ当接点301でクリーニングブレード101のエッジ部が中間転写ベルト115に当接する場合であっても、支点角αよりも大きい支点角α´の支点102´を中心として、支持板金103を矢印H´方向に揺動させると、クリーニングブレード101のエッジ部は矢印I´方向に揺動する。このため、エッジ部の揺動方向と、当接点301における中間転写ベルト115の走行方向(接線L1方向)とがなす角度は、支点102を揺動中心とする場合よりも小さい。
【0059】
中間転写ベルト115との摺擦によってクリーニングブレード101のエッジ部に作用する摩擦力は、エッジ部の揺動方向の成分が大きいので、中間転写ベルト115がクリーニングブレード101を矢印I´方向に揺動させる力が弱く、中間転写ベルト115の作用によってクリーニングブレード101が揺動する角度が大きくなる。
【0060】
クリーニングブレード101は、揺動角度が大きければ撓み量も大きくなるので、中間転写ベルト115に対して寝る、言い換えると当接角βが小さくなる。
【0061】
このように、支点角αが異なるとクリーニングブレード101の挙動が変化する。そこで、支点角αと当接角βとの角度差γを変化させてクリーニングブレード101の歪み量を測定したところ、
図10に示す散布図のような結果を得た。なお、クリーニングブレード101の歪み量はクリーニングブレード101に歪みゲージを貼付することによって測定した。
【0062】
図10において、横軸は角度差γを表し、縦軸は歪み変化量を表している。歪み変化量とは、中間転写ベルト115を周回走行させていない状態におけるクリーニングブレード101の歪み量を基準歪み量として、中間転写ベルト115を周回走行させながら、支点角αを変えて測定したクリーニングブレード101の歪み量から当該基準歪み量を差し引いた歪み量である。
【0063】
図10に示すように、歪み変化量は角度差γと負の相関関係があることが分かった。すなわち、角度差γが大きくなるほど、クリーニングブレード101の歪み変化量が小さくなるので、当接角βが小さくなり、中間転写ベルト115に対して寝る。一方、角度差γが小さくなるほど、クリーニングブレード101の歪み変化量が大きくなるので、当接角βが大きくなり、中間転写ベルト115に対して立つ。
【0064】
角度差γと歪み変化量とが
図10に例示するような負の相関関係を有することは、クリーニングブレードの構成や材料に関わらず同じであるものの、具体的な角度差γや歪み変化量の数値は、クリーニングブレードの自由長や厚み等といったクリーニングブレードの構成や材料によって異なり得る。また、中間転写ベルトを周回走行させた場合のクリーニングブレードの引き込み量によって異なり得るため、中間転写ベルトやクリーニングブレードの表面状態によっても具体的な数値が異なる可能性がある。
図8に例示するような条件-設定テーブル612を用いれば、具体的な数値の違いに関係なく、適切な角度差γを特定することができる。
【0065】
適切な角度差γを得るための当接角βは必ずしも一定ではなく、クリーニングブレードの構成や材料などによって異なり得るため、例えば、支点-バネ位置テーブルを用いて角度差γに応じた支点位置とバネ位置とを特定する等、角度差γに応じて適切な支点位置・ブレード設置位置・当接圧の条件と当接角の関係を記憶しておく必要がある。
【0066】
なお、
図9では、クリーニングブレード101の当接点301は変えずに支点102のみを移動させる場合を例にとって説明したが、支点102の移動に伴って当接点301が変化する場合であっても、クリーニングブレード101の挙動は同様である。
(5-2)クリーニングブレード101の破断
クリーニングブレード101の破断1101は、
図11(a)に示すように、クリーニングブレード101の先端面1102において主走査方向に沿って発生し、クリーニングブレード101の全幅にわたる損傷である。破断1101は一旦発生すると速やかに進展し、クリーニング性能を著しく低下させるため、破断を防止することがクリーニング性能を維持する上で重要である。
【0067】
クリーニングブレード101は、温度が低いほど固くなり、温度が高いほど粘りを有する傾向があり、また、湿度が高いほどクリーニングブレード101と中間転写ベルト115との間の摩擦係数が大きくなる傾向があるため、
図11(b)に示すように、低温、低湿の場合には、中間転写ベルト115にあまり引き込まれないが、高温高湿の場合には中間転写ベルト115による引き込み量が大きくなるため、破断が発生し易くなる。
【0068】
このため、
図8(a)の条件-設定テーブル612に例示するように、高温高湿の場合に角度差γを大きくして、クリーニングブレード101を中間転写ベルト115に対して寝かさせれば、引き込み量を抑えることができるので、破断の発生を防止することができる。
【0069】
一方、低温低湿の場合には、破断は発生し難いものの、クリーニングブレード101の硬度や弾性が変化したり、トナーの静電付着力が強まったりすることによって、クリーニング性能が低下する場合がある。このため、
図8(a)の条件-設定テーブル612に例示するように、低温低湿の場合に角度差γを小さくして、クリーニングブレード101を中間転写ベルト115に対して立たせれば、クリーニングブレード101のエッジ部の中間転写ベルト115に対する当接圧が大きくなるので、クリーニング性能の低下を抑制することができる。
【0070】
また、
図11(c)に示すように、クリーニングブレード101は、中間転写ベルト115との摺擦によって摩耗し、中間転写ベルト115の走行距離が長くなるほど大きく摩耗する。摩耗が進むと、クリーニングブレード101と中間転写ベルト115との接触面積が大きくなって、単位面積当たりの当接力が低下するため、破損を生じ難くなる。一方、摩耗が進んでいない使用初期においては、クリーニングブレード101と中間転写ベルト115との接触面積が小さく、単位面積当たりの当接力が大きいため、破断が発生し易くなる。
【0071】
このような問題に対しては、
図12の条件-設定テーブル1201に例示するように、中間転写ベルト115の走行距離が少ない使用初期においては、角度差γを大きくすることによって、クリーニングブレード101を中間転写ベルト115に対して寝かせれば、クリーニングブレード101のエッジ部と中間転写ベルト115との当接圧を低減することができるので、当接圧の集中による破断を抑制することができる。
【0072】
一方、中間転写ベルト115の走行距離が長くなり、クリーニングブレード101のエッジ部が摩耗してきたら、
図12の条件-設定テーブル1201に例示するように、角度差γを小さくして、クリーニングブレード101を中間転写ベルト115に対して立たせれば、エッジ部と中間転写ベルト115との当接圧が大きくなるので、摩耗に起因するクリーニング性能の低下を補って、十分なクリーニング性能を得ることができる。
【0073】
なお、走行距離に代えて、例えばプリント枚数など、他の指標を用いてクリーニングブレード101の摩耗の程度を推定しても同様の効果を得ることができる。
[6]性能評価
本実施の形態に係る画像形成装置1のクリーニング性能を評価する実験を行ったので、その結果について説明する。評価対象は、以下に詳述する実施例1~4と比較例1~3である。
(6-1)実施例1
実施例1は、上記実施の形態に係る画像形成装置1を用いた実施例であって、中間転写ベルト115の走行距離に関わらず、環境条件のみを考慮して、
図8(a)に例示する条件-設定テーブル612を用いて角度差γを制御する。
(6-2)実施例2
実施例2は、上記実施の形態に係る画像形成装置1を用いた実施例であって、環境条件に関わらず、中間転写ベルト115の走行距離のみを考慮して、
図12に例示する条件-設定テーブル1201を用いて角度差γを制御する。
(6-3)実施例3
実施例3は、上記実施の形態に係る画像形成装置1を用いた実施例であって、環境条件と中間転写ベルト115の走行距離の両方を考慮して、
図13に例示する条件-設定テーブル1301を用いて角度差γを制御する。
(6-4)実施例4
実施例4は、上記実施の形態に係る画像形成装置1において、制御部123が中間転写ベルト駆動機構606を用いて、中間転写ベルト606を周回走行させる駆動ローラー119の駆動トルクを検出し、検出した駆動トルクに応じて角度差γを設定する実施例である。駆動トルクは、クリーニングブレード101の中間転写ベルト115に対する圧接状態や摩耗状態などのクリーニングブレード101の状態を指標する。
【0074】
図14に例示するように、駆動トルクと角度差γとを対応付ける条件-設定テーブルを用いて、駆動トルクが大きいほど角度差γを大きくして、クリーニングブレード101の破損を防止し、駆動トルクが小さいほど角度差γを小さくして、クリーニング性能を確保する。
(6-5)比較例1
比較例1は、
図15に例示するような、クリーニングブレード1501を中間転写ベルト1507にカウンター当接させるリーディング方式を採用し、バネ等の弾性体1504を利用してクリーニングブレード1501の中間転写ベルト1507に対する当接圧を発生させる定荷重方式のクリーニング装置15を備えた画像形成装置である。
(6-6)比較例2
比較例2は、比較例1の画像形成装置において、環境条件または中間転写ベルトの走行距離に応じてクリーニングブレードの当接角を変更する比較例である。比較例2では、クリーニングブレードの支点を移動させることなく、クリーニングブレードに加わる負荷が大きい場合には当接角を小さくして、クリーニングブレードの破損を防止する一方、クリーニングブレードに加わる負荷が小さい場合には当接角を大きくして、クリーニング性能を確保する。
(6-7)比較例3
比較例3は、特許文献2に記載されている画像形成装置であって、クリーニングブレードを支持する支持板金の支点(揺動軸)が固定されておらず、画像形成時にクリーニングブレードに加わる負荷の大きさに応じて支点が移動する。
(6-8)評価方法
実施例1~4および比較例1~3に対して2つの評価を実施した。
【0075】
第1の評価は、クリーニングブレードに対して負荷を加えても破損せずに十分なクリーニング性能を発揮するかを評価する負荷試験であり、クリーニング性とクリーニングブレード破損の2つを評価項目とする。第2の評価は、クリーニングブレードが摩耗したときなどのクリーニングに不利な条件において、十分なクリーニング性能を発揮するかを評価する耐久試験である。
【0076】
どの評価項目についても、◎:OKレベルを超える十分な品質、〇:OKレベル、△:OKレベルに足りない、×:NGレベルの4段階評価を行った。
【0077】
実験機として、コニカミノルタ社製Accurio Press C3080を用い、実施例と比較例を同じ条件で評価した。
【0078】
第1の評価については、クリーニングブレードに負荷のかかる条件であるため、品質バラツキの上限側とし、当接圧35N/m、当接角16°とした。環境については、高温高湿環境(30℃80%)で評価を行った。また、各ユニットは新品の状態で評価を行った。
【0079】
第2の評価については、クリーニング性が低下する条件であるため、品質バラツキの下限側とし、当接圧20N/m、当接角8°とした。環境については、低温低湿環境(10℃20%)で評価を行った。また、各ユニットはライフ末期の状態とし、クリーニングブレードは摩耗した状態で評価を行った。
【0080】
比較例2は当接角を調整するタイプであるため、当接角を所望の方向へ2°調整可能とし、実施例1~4と比較例1、3は当接角を変更しないこととした。
(6-9)評価結果
評価結果は、
図16の評価結果表1601に示す通りである。
【0081】
比較例1は、環境条件や中間転写ベルトの走行距離に応じた調整を行わないため、第1および第2の評価のどちらの評価項目もすべてNGレベル(×)であった。
【0082】
比較例2においては、クリーニングブレードに加わる負荷に応じて当接角を調整するものの、当接圧は調整しないため、第1評価ではエッジ部に破損がみられ(△)、クリーニング性も低下していた(△)。第2評価でも摩耗したブレードで低圧条件では当接角を大きくしてもクリーニング不良が発生した(△)。
【0083】
比較例3は、第1の評価については、負荷がかかったときに支点を移動して負荷を分散させるため、エッジの破損はなく良好であった(〇)。しかし、負荷を分散しているため、クリーニング性が低下し、クリーニング不良が発生した(△)。第2評価については、負荷がかかったときに分散させるシステムであり、クリーニング性が低下しても調整は行わないため、クリーニング不良が発生した(×)。
【0084】
実施例1~4については、すべての評価項目でOKレベル以上であった(◎または〇)。
【0085】
実施例1は、環境条件に応じて調整を行うため、第1の評価では駆動時にクリーニングブレードに負荷が加わらないように支点の位置を移動させることで、評価はOKレベルを超える十分な品質となった(◎)。第2の評価についても、環境条件に応じてクリーニングしやすい方向に支点の位置を移動させるため、評価はOKレベルとなった(〇)。
【0086】
実施例2は、中間転写ベルトの走行距離に応じて調整を行うため、第1の評価については、使用初期の摩耗していないクリーニングブレードに加わる負荷が大きくなり過ぎないようにすることで、評価はOKレベルとなった(〇)。第2の評価については、中間転写ベルトの走行距離が長い場合には駆動時にクリーニングブレード101が立つようにして、十分なクリーニング性を確保するため、OKレベルを超える十分な品質との評価となった(◎)。
【0087】
実施例3は、実施例1と2の組み合わせであるため、すべての評価項目でOKレベルを超える十分な品質と評価された(◎)。
【0088】
実施例4は、クリーニングブレード101に加わる負荷の大きさを中間転写ベルト115の駆動トルクを用いて監視し、当該駆動トルクに応じて直ちに角度差γを調整するので、クリーニングブレード101の破損がまったく発生せず、OKレベルを超える十分な品質との評価になった(◎)。クリーニング性については第1および第2の評価のいずれについてもOKレベルであった(〇)。
[7]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(7-1)
図8(a)の条件-設定テーブル612においては、機内温度の範囲を10度未満、10度以上30度未満および30度以上の3つに分けるとともに、機内湿度の範囲を20%未満、20%以上80%未満および80%以上の3つに分ける場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、クリーニングブレード101の特性に応じた範囲を採用するのが望ましい。
【0089】
クリーニングブレード101は高温高湿であるほど粘りが高くなり中間転写ベルト115に引き込まれて破損し易くなる。温度や湿度によるクリーニングブレード101の特性の変化が大きい場合には、機内温度や機内湿度の範囲を細かく分割して、クリーニングブレード101の特性に応じた適切な角度差γを対応付けるのが望ましい。
【0090】
また、中間転写ベルト115の走行距離が0km以上10km未満、10km以上40km未満、40km以上50km未満および50km以上の4つの距離範囲に対応して条件-設定テーブル612を4つ設ける場合を例にとって説明したが、中間転写ベルト115の走行距離の範囲は上記範囲以外の範囲であってもよいし、条件-設定テーブルの個数もまた4個以外の個数であってもよい。
(7-2)上記実施の形態においては、角度差γに応じて支点位置とバネ位置との両方を調整する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、支点位置のみを調整してもよいし、クリーニングブレード101のエッジ部の中間転写ベルト115に対する当接圧のみを調整してもよい。また、他の条件を調整してもよい、角度差γを適切な大きさにすることができさえすれば、その手段は上記実施の形態に限定されない。
(7-3)上記実施の形態において、バネ取付部材移動機構505がカムを用いてバネ位置を調整する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、クランクやクラッチ、ギヤ等をカム以外の機構を採用してもよいことは言うまでもない。
(7-4)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、クリーニングブレード101が中間転写ベルト115に当接する際の当接角βは、小さ過ぎるとクリーニングブレード101が中間転写ベルト115に対して腹当りになって、クリーニングブレード101のエッジ部に当接圧が作用しなくなり、クリーニング不良が発生する。また、当接角βが大き過ぎると、クリーニングブレード101が捲れたり、エッジが破損したりする恐れがある。
【0091】
このため、支点角αの大きさに関係なく、当接角βが所定の範囲内になるように、調整するのが望ましい。当接角βの範囲は、例えば、8°以上18°以下としてもよく、クリーニング不良やクリーニングブレード101の破損が発生しない範囲で適宜設定するのが好適である。
(7-5)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、クリーニングブレード101が中間転写ベルト115に当接する際の当接圧は、小さ過ぎるとクリーニングブレード101のエッジ部に圧力がかからないのでクリーニング不良が発生する。一方、当接圧が大き過ぎると、クリーニングブレード101が捲れたり、エッジ部が破損したりする恐れがある。
【0092】
このため、当接圧が所定の範囲内になるように、調整するのが望ましい。当接圧の範囲は、例えば、15N/m以上35N/m以下としてもよく、クリーニング不良やクリーニングブレード101の破損が発生しない範囲で適宜設定するのが好適である。
(7-6)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム型のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム型以外のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。また、スキャナーを備えた複写装置や、ファクシミリ通信機能を備えたファクシミリ装置といった単機能機であってもよいし、これらの機能を兼ね備えた複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であってもよい。
【0093】
また、清掃の対象も中間転写ベルト115に限定されないのは言うまでもなく、感光体ドラム111等、中間転写ベルト115以外の回転体を清掃してもよい。
【0094】
清掃の対象となる回転体にクリーニングブレードをカウンター当接させるリーディング方式を採用し、更に支点を揺動中心として揺動可能に支持されているクリーニングブレードを付勢して当該回転体に当接させるクリーニング装置および当該クリーニング装置を備えた画像形成装置であれば、本開示を適用することによって上述の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示に係るクリーニング装置および画像形成装置は、トナー像を転写した後に転写元に残留するトナーを清掃するクリーニングブレードを長寿命化した装置として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1…………………画像形成装置
100……………クリーニング装置
101、117…クリーニングブレード
102……………支点(揺動軸)
103……………支持板金
104……………バネ
105……………クリーニングユニット
106……………搬送スクリュー
107……………クリーニング対向ローラー
111……………感光体ドラム
112……………帯電装置
114……………現像装置
115……………中間転写ベルト
116……………一次転写ローラー
118……………滑剤塗布装置
119……………駆動ローラー
120……………二次転写ローラー
122……………定着装置
123……………制御部
124……………環境センサー
201……………支点移動範囲
301……………クリーニングブレード101と中間転写ベルト115との接触点
401……………支点位置決め部
405……………バネ取付部材
503……………支点軸長手方向移動機構
504……………支点軸位置移動機構
505……………バネ取付位置移動機構