(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】開口部の高さの測定方法及びロータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20231205BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20231205BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02K15/02 A
H01F41/02 B
H01F41/00 D
(21)【出願番号】P 2020007228
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 治夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065739(JP,A)
【文献】特開平07-201616(JP,A)
【文献】特開2018-163094(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077830(WO,A1)
【文献】特開2017-005807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00- 15/02
H02K 15/04- 15/16
H01F 41/02
H01F 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが挿入されるシャフト孔と、前記シャフト孔の内面に開口する開口部を有する冷媒流路とを備えたロータコアにおいて、前記ロータコアの軸方向における一方側の面から前記開口部までの高さを測定する測定方法であって、
前記開口部に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を前記冷媒流路の内面に接触させる接触工程と、
前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する検知工程と、
検知された前記棒状部材の位置に基づいて、前記ロータコアの軸方向における前記一方側の面から前記開口部までの高さを算出する算出工程と、を備え
、
前記棒状部材は、前記シャフト孔の径方向に突出した棒状の突出部と、前記突出部の先端に設けられた接触部と、を有し、前記接触部が前記冷媒流路の内面に接触した状態では、前記突出部が前記開口部の開口縁に接触しないように構成されており、
前記接触工程では、前記接触部が前記冷媒流路内に保持された状態から前記棒状部材を前記ロータコアの軸方向における一方側に移動させ、前記棒状部材を、前記冷媒流路の内面において前記開口部の開口縁よりも奥方の位置のみに接触させる、開口部の高さの測定方法。
【請求項2】
シャフトが挿入されるシャフト孔と、前記シャフト孔の内面に開口する開口部を有する冷媒流路とを備えたロータコアにおいて、前記ロータコアの軸方向における一方側の面から前記開口部までの高さを測定する測定方法であって、
前記開口部に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を前記冷媒流路の内面に接触させる接触工程と、
前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する検知工程と、
検知された前記棒状部材の位置に基づいて、前記ロータコアの軸方向における前記一方側の面から前記開口部までの高さを算出する算出工程と、を備え、
前記棒状部材は第1部材に設けられ、前記第1部材は前記ロータコアの軸方向に沿って移動する第2部材に分離可能に接触しており、
前記検知工程では、前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触して前記第1部材が軸方向における一方側に移動することが規制され、移動が規制された前記第1部材から前記第2部材が分離したことを検出して、前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する
、開口部の高さの測定方法。
【請求項3】
シャフトが挿入されるシャフト孔と、前記シャフト孔の内面に開口する開口部を有する冷媒流路とを備えたロータコアを製造する製造方法であって、
複数の電磁鋼板を積層して、前記ロータコアを形成するロータコア形成工程と、
前記ロータコアの軸方向における一方側の面から前記開口部までの高さを測定する測定工程と、を備え、
前記測定工程は、
前記開口部に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を前記冷媒流路の内面に接触させる接触工程と、
前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する検知工程と、
検知された前記棒状部材の位置に基づいて、前記ロータコアの軸方向における前記一方側の面から前記開口部までの高さを算出する算出工程と、を含み、
前記棒状部材は、前記シャフト孔の径方向に突出した棒状の突出部と、前記突出部の先端に設けられた接触部と、を有し、前記接触部が前記冷媒流路の内面に接触した状態では、前記突出部が前記開口部の開口縁に接触しないように構成されており、
前記接触工程では、前記接触部が前記冷媒流路内に保持された状態から前記棒状部材を前記ロータコアの軸方向における一方側に移動させ、前記棒状部材を、前記冷媒流路の内面において前記開口部の開口縁よりも奥方の位置のみに接触させ、
前記測定工程において測定した前記一方側の面から前記開口部までの高さを前記ロータコア形成工程にフィードバックして、積層する前記電磁鋼板の枚数を調整する調整工程を更に備えるロータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開口部の高さの測定方法及びロータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷媒が流れる冷却用流路が内部に形成されたロータの検査方法が開示されている。この検査方法では、冷却用流路の径方向流路の開口部の前方位置(対向位置)に、投光部を配置し、冷却用流路の積層方向流路の開口部に、受光部を配置し、投光部から投光された光を受光部で受光して、冷却用流路の貫通状態を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シャフトに対して径方向流路の開口部の位置がズレると、ロータコアの内部に冷媒を十分に流通させることができないおそれがある。このため、冷却用流路における径方向流路の開口部の高さを正確に測定する技術が求められている。
【0005】
冷却用流路における径方向流路の開口部はシャフト孔の内面に開口しており、シャフト孔内の限られた空間において開口部の高さを正確に測ることが困難である。さらに、ロータコアは開口部の開口縁にバリを生じている場合があり、バリの影響によって開口部の高さが精度よく測ることが難しい。
【0006】
本開示は、シャフト孔内の限られた空間においても精度よく開口部の高さを測定できる開口部の高さの測定方法及びロータコアの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の開口部の高さの測定方法は、シャフトが挿入されるシャフト孔と、前記シャフト孔の内面に開口する開口部を有する冷媒流路とを備えたロータコアにおいて、前記ロータコアの軸方向における一方側の面から前記開口部までの高さを測定する測定方法であって、前記開口部に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を前記冷媒流路の内面に接触させる接触工程と、前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する検知工程と、検知された前記棒状部材の位置に基づいて、前記ロータコアの軸方向における前記一方側の面から前記開口部までの高さを算出する算出工程と、を備える。
【0008】
本開示のロータコアの製造方法は、シャフトが挿入されるシャフト孔と、前記シャフト孔の内面に開口する開口部を有する冷媒流路とを備えたロータコアを製造する製造方法であって、複数の電磁鋼板を積層して、前記ロータコアを形成するロータコア形成工程と、前記ロータコアの軸方向における一方側の面から前記開口部までの高さを測定する測定工程と、を備え、前記測定工程は、前記開口部に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を前記冷媒流路の内面に接触させる接触工程と、前記棒状部材が前記冷媒流路の内面に接触した位置を検知する検知工程と、検知された前記棒状部材の位置に基づいて、前記ロータコアの軸方向における前記一方側の面から前記開口部までの高さを算出する算出工程と、を含み、前記測定工程において測定した前記一方側の面から前記開口部までの高さを前記ロータコア形成工程にフィードバックして、積層する前記電磁鋼板の枚数を調整する調整工程を更に備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、シャフト孔内の限られた空間においても精度よく開口部の高さを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1におけるロータコアを模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、測定工程における検査装置の動作を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、棒状部材が冷媒流路の内面に接触する前の状態を表す説明図である。
【
図5】
図5は、棒状部材が冷媒流路の内面に接触する過程を表す説明図である。
【
図6】
図6は、棒状部材が冷媒流路の内面に接触した後の状態を表す説明図である。
【
図7】
図7は、第1部材と第2部材が再度接触した様子を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本実施形態は、
図1に示すロータコア20の製造に本発明を適用したものである。
【0012】
ロータコア20は、
図1及び
図2に示すように、複数の電磁鋼板31が積層された積層体からなるロータコア本体30を備えている。ロータコア本体30の積層方向両側には、エンドプレート21,21が溶接されている。ロータコア本体30は、全体としては円筒状をなす。ロータコア本体30は、複数のブロック32が積層され、接着、溶着等の手段によって互いに固着されている。複数のブロック32の各々は、複数の電磁鋼板31が積層され、互いに組み付けられている。
図2では、説明の便宜のために、電磁鋼板31の厚さ及び枚数を変更して模式的に描いている。
【0013】
ロータコア本体30は、シャフト孔33と、マグネット孔34とを有している。シャフト孔33は、ロータコア本体30の中心に貫通して設けられている。シャフト孔33には、シャフト23が挿入される。
図1に示すように、マグネット孔34は、シャフト孔33の周囲に複数設けられている。複数のマグネット孔34の各々には、マグネット材26が封止される。マグネット材26は、四角柱状の永久磁石からなる。
【0014】
シャフト23は、円筒状をなし、ロータコア20の回転中心軸を構成する。シャフト23の内部には、冷却油等の冷媒が流通するシャフト側冷媒流路24が形成されている。シャフト23の外周面には、シャフト側冷媒流路24のシャフト側開口部25が周方向に間隔をあけて複数形成されている(
図2参照)。シャフト側開口部25は、シャフト側冷媒流路24からの冷却油をロータコア本体30に供給するための供給口である。
【0015】
ロータコア20の内部には、
図2に示すように、冷媒が流れる冷媒流路35が形成されている。冷媒流路35は、シャフト孔33の内面33Aに開口する内側開口部(開口部)36と、ロータコア20の上面20A及び下面20Bにそれぞれ開口する外側開口部37,37と、を有している。内側開口部36は、シャフト孔33における軸方向中央部付近に設けられている。内側開口部36は、シャフト23のシャフト側開口部25と連通して、ロータコア20の内部に冷媒を導入する導入口である。外側開口部37,37は、ロータコア20の外部に向けて開口して、ロータコア20の内部から冷媒を排出する排出口である。冷媒流路35は、平面に見て異なった形状の孔を有する電磁鋼板31を積層することで形成される。
【0016】
冷媒流路35は、内側流路35A、分岐流路35B,35B、外側流路35Cを有している。内側流路35Aは、内側開口部36からシャフト孔33の径方向外側に向けて延びている。分岐流路35B,35Bは、内側流路35Aの外側において上下に分岐して、シャフト孔33の径方向外側に向けて屈曲しつつ延びている。外側流路35Cは、分岐流路35B,35Bの外側から外側開口部37までシャフト孔33の軸方向に延びている。冷媒流路35は、複数のシャフト側開口部25の各々に対応して複数設けられている。複数の冷媒流路35において外側流路35Cは、互いに隣接する一対のマグネット材26に近接して、それぞれ設けられている(
図1参照)。ロータコア20は、このような冷媒流路35を備えることによって、ロータの回転に伴ってマグネット材26が高温になることを抑制できる。
【0017】
次に、ロータコア20の製造方法について説明する。ロータコア20は、プレス装置、検査装置50、および制御装置などを備える製造ラインで製造される。プレス装置は、送り出される母材を多段階にプレスして、ロータコア20を構成する電磁鋼板31を打ち抜く。プレス装置、検査装置50等の各種装置は、制御装置によって制御される。制御装置は、プログラムに従って演算処理を行うCPUや製造プログラムなどの各種動作プログラムを格納したROMや作業領域などを有するRAMなどのメモリ等を備えている。
【0018】
検査装置50は、
図3に示すように、載置台51と、ベース部材53と、内側開口部36の高さを測定するための測定ユニット60と、を備えている。載置台51の上面にはロータコア20が載置される。載置台51には、
図4に示すように、測定ユニット60が収容される収容空間52が設けられている。収容空間52は、載置台51に載置されたロータコア20のシャフト孔33と連通する形態で設けられている。
【0019】
ベース部材53は、載置台51の上方に設置されている。ベース部材53は、載置台51に載置されたロータコア20の上面20Aよりも上方に退避した待機位置と、待機位置から下方に変位した下降位置と、の間を移動可能に構成されている。ベース部材53は、下降位置において、自身と載置台51との間でロータコア20を挟んで荷重を付与する。ベース部材53と載置台51は、ロータコア20の積層方向に沿って荷重を付与する一対の加圧部材を構成する。
【0020】
測定ユニット60は、載置台51の収容空間52に収容された待機位置と、待機位置から上昇してシャフト孔33内に進入した上昇位置と、の間を移動可能に構成されている。測定ユニット60の上昇位置では、シャフト孔33の径方向について、棒状部材61の先端が内側開口部36の手前に位置する。測定ユニット60は、棒状部材61の先端が内側開口部36の手前に位置する上昇位置と、棒状部材61の先端が内側開口部36の奥方に位置する測定位置と、の間を移動可能に構成されている。
【0021】
測定ユニット60は、
図4及び
図6に示すように、棒状部材61を有する第1部材62と、第1部材62と分離可能に接触している第2部材63と、第1部材62と第2部材63の接触及び分離を検知するセンサ65と、を有している。第1部材62は相対的に上方に配置され、第2部材63は相対的に下方に配置される。第1部材62及び第2部材63は、上下に延びた軸部64によって連結され(
図6参照)、軸部64の軸方向に沿って互いに近接する方向及び離間する方向に移動可能に構成されている。これに対して、第1部材62は、第2部材63に対する回動変位が規制されている。第1部材62と第2部材63は、互いに向けて付勢されており、外力が作用していない状態では接触状態が保持される。外力が作用していない状態では、第1部材62は、第2部材63の移動に伴って従動する。センサ65は、例えば近接センサとされ、第1部材62と第2部材63の接触及び分離を検出する。
【0022】
棒状部材61は、
図4及び
図5に示すように、第1部材62からシャフト孔33の径方向(水平方向)に突出した棒状の突出部61Aと、突出部61Aの先端に設けられた接触部61Bと、を有している。棒状部材61としては、三次元測定用プローブとして用いられるスタイラスと称される部材を用いることができる。突出部61Aは、内側開口部36に挿入された接触部61Bを、冷媒流路35における内側流路35A内に保持可能な長さ寸法を有する。接触部61Bは、突出部61Aより大径の球状であり、内側開口部36にクリアランスを有して挿入可能な大きさに設けられている。接触部61Bの表面は、内側流路35Aの内面35Sに点接触する。棒状部材61は、内側流路35Aの内面35Sにおいて、内側開口部36の開口縁よりも奥方の位置に接触するように構成されている。
【0023】
ロータコア20の製造方法は、ロータコア20を形成するロータコア形成工程と、内側開口部36の高さを測定する測定工程と、積層する電磁鋼板31の枚数を調整する調整工程と、を備える。ロータコア形成工程は、複数の電磁鋼板31の積層体にマグネット材26を封止する封止工程、マグネット材26が封止された積層体にエンドプレート21,21を溶接する溶接工程等を更に備える。測定工程は、ロータコア20の下面(軸方向における一方側の面)20Bから内側開口部36までの高さを測定する測定方法を行う工程である。ロータコア20の軸方向における一方側の面は、ロータコア20の底面とも称される。
【0024】
なお、ロータコア20の製造方法において、測定工程は、ロータコア形成工程の後に行われてもよく、また、ロータコア形成工程の途中において行われてもよい。ロータコア形成工程の途中において測定工程を行う一例として、エンドプレート21,21を溶接する溶接工程の前に測定工程を行う場合には、棒状部材61が冷媒流路35の内面35Sに接触した状態で、ロータコア本体30の下面に対する棒状部材61の位置を検知し、エンドプレート21の厚さを加算することによって、ロータコア20の下面20Bに対する棒状部材61の位置を間接的に検知してもよい。以下の説明では、ロータコア形成工程の後に測定工程を行う場合について具体的に説明する。
【0025】
ロータコア形成工程では、プレス装置を用いて、母材から複数の電磁鋼板31を打ち抜き、複数の電磁鋼板31が積層されたブロック32を形成する。1のブロック32を構成する複数の電磁鋼板31の各々には、所謂ダボ加工により積層方向の一方に向けて突出する形態である結合部(不図示)が設けられている。互いに隣り合う電磁鋼板31は、結合部同士が凹凸の関係により、かしめられることで互いに結合されている。またブロック32の積層方向における一端には、上記結合部を有しない電磁鋼板31が配置されている。このため、ブロック32における一端側の電磁鋼板31は、自身の一端側に隣接した電磁鋼板31とは結合されない。プレス装置は、制御装置によって所定枚数の電磁鋼板31毎に結合部を有しない電磁鋼板31を打ち抜く制御が行われることで、所定の高さに積層されたブロック32を形成する。
【0026】
ロータコア形成工程では、複数のブロック32を積層してブロック積層体を形成する。複数のブロック32を積層する際には、ロータコア20の積層高さの寸法精度を向上するために、ブロック32を所定角度だけ回転させて積層する、所謂転積を行ってもよい。ブロック積層体は、封止工程等を経てロータコア本体30に形成される。ロータコア本体30は溶接工程等を経て、ロータコア20に形成される。
【0027】
測定工程(内側開口部36の高さの測定方法)は、内側開口部36に棒状部材61を挿入し、棒状部材61を内側流路35Aの内面35Sに接触させる接触工程と、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置を検知する検知工程と、検知された棒状部材61の位置に基づいて、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36までの高さを算出する算出工程と、を備える。測定工程は、接触工程の前に、ロータコア20の軸方向に沿って荷重を付与する加圧工程を更に備える。測定工程は、検査装置50を用いて行われる。加圧工程が行われる前には、検査装置50においてベース部材53及び測定ユニット60は待機位置に位置している。載置台51にロータコア20が載置されると、加圧工程が開始される。
【0028】
加圧工程では、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、ベース部材53が待機位置から下降位置に移動して、載置台51とベース部材53の間でロータコア20に積層方向に沿って荷重が付与される。ロータコア20に積層方向に沿って荷重が付与された状態では、電磁鋼板31のわずかな曲がりや、積層された電磁鋼板31間のわずかな隙間が解消され、荷重が付与されていない状態に比して、内側開口部36の高さを精度よく測定することができる。加圧工程では、内側開口部36の高さの測定と同時に、ロータコア20に荷重を付与した状態でロータコア20の積層高さを測定してもよい。
【0029】
接触工程では、
図3(B)及び(C)に示すように、第2部材63が上昇して、測定ユニット60が待機位置から上昇位置に変位する。次に、
図3(C)に示すように、第2部材63がシャフト孔33の径方向に移動して、測定ユニット60が上昇位置から
図4に示す測定位置に変位する。この過程で、棒状部材61は内側開口部36に挿入され、接触部61Bが内側流路35A内に保持される。この状態から第2部材63が下降すると、
図5に示すように、第2部材63に従動して第1部材62が下降し、棒状部材61の接触部61Bが内側流路35Aの内面35Sにおける下側の部位に接触する。内側流路35Aの内面35Sにおける下側の部位は、一の電磁鋼板31の板面で構成されており、電磁鋼板31を打ち抜く際にバリを生じない領域である。一方、内側開口部36の開口縁は、複数の電磁鋼板31の端面が組み合わされて構成されており、電磁鋼板31を打ち抜く際にバリを生じ得る領域である。
図5では、内側開口部36の開口縁に、略三角形状のバリを模式的に描いている。棒状部材61は、接触部61Bが内側流路35Aの内面35Sに接触した状態では、突出部61Aが内側開口部36の開口縁に接触しないように構成されている。つまり、棒状部材61は、内側流路35Aの内面35Sにおいて、内側開口部36の開口縁よりも奥方の位置のみに接触する。接触部61Bが内側流路35Aの内面35Sに接触した後にも第2部材63が下降して、検知工程が開始される。
【0030】
検知工程は、
図6に示すように、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触して第1部材62が下方(軸方向における一方側)に移動することが規制され、移動が規制された第1部材62から第2部材63が分離したことを検出して、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置を検知する。具体的には、接触部61Bが内側流路35Aの内面35Sに接触した状態では、内側流路35Aが第1部材62に対するストッパーとなり、第1部材62がそれ以上下降することが制限される。この際、第1部材62は第2部材63に対する回動変位が規制されているから、接触部61Bを軸として回動しない。このため、接触部61Bが内側流路35Aの内面35Sに接触すると、第1部材62の位置が自ずと定まる。この状態から、第2部材63が更に下降すると、第1部材62から第2部材63が分離し、センサ65が第1部材62と第2部材63の分離を検出する。センサ65が第1部材62と第2部材63の分離を検出した位置が、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置として検知される。
【0031】
センサ65が第1部材62と第2部材63の分離を検出した後、第2部材63は上昇を開始する。
図7に示すように、第2部材63が上昇して第1部材62に接触すると、センサ65は第1部材62と第2部材63の接触を検出する。第1部材62と第2部材63の接触が検出された後に、測定ユニット60は測定位置から上昇位置まで後退する(
図3(E)参照)。後退した測定ユニット60は、上昇位置から待機位置に下降し、収容空間52に収容される(
図3(F)参照)。以上により、一連の接触工程及び検知工程が完了する。
【0032】
算出工程では、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置と、予め記録された載置台51の上面の位置に基づいて、ロータコア20の軸方向における下面20Bから内側開口部36までの高さを算出する。算出工程は制御装置に設けられた演算部によって行うことができる。演算部は、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置を、上下方向において内側開口部36の開口縁において下側の縁部の位置として取得する。また、演算部は、載置台51の上面の位置を、ロータコア20の下面20Bの位置として取得する。そして、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置と、載置台51の上面の位置の差分値を算出し、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36の下側縁部までの高さを求める。内側開口部36の高さとして、内側開口部36の中心までの高さを求めたい場合には、上述のように算出したロータコア20の下面20Bから内側開口部36の下側縁部までの高さに、内側開口部36の下側縁部から内側開口部36までの高さを加算して求めることができる。
【0033】
調整工程では、測定工程において測定した下面20Bから内側開口部36までの高さをロータコア形成工程にフィードバックして、積層する電磁鋼板31の枚数を調整する。例えば、制御装置は、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36までの高さが所定の高さより小さい場合には、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36までに積層される電磁鋼板31の枚数を、電磁鋼板31の厚さに応じて増加させるような制御を実行する。制御装置は、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36までの高さが所定の高さより大きい場合には、ロータコア20の下面20Bから内側開口部36までに積層される電磁鋼板31の枚数を、電磁鋼板31の厚さに応じて減少させるような制御を実行する。以上により、ロータコア20の製造が完了する。
【0034】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態における内側開口部36の高さの測定方法によれば、内側開口部36の開口縁におけるバリの影響が少ない内側流路35Aの内面35Sに棒状部材61を接触させ、棒状部材61の位置に基づいて内側開口部36の高さを算出することができる。このため、シャフト孔33内の限られた空間においても精度よく内側開口部36の高さを測定することができる。
【0035】
シャフト孔33内の限られた空間においても精度よく内側開口部36の高さを測定できる理由について、さらに具体的に説明する。開口部の位置を検知する方法として、例えば、光電センサ、レーザセンサ、画像判別センサ等の非接触型の検知方法を採用することが考えられる。しかし、光電センサ、レーザセンサ等を採用した場合、ロータコア20において内側開口部36の開口縁にバリを生じた場合に、バリが光やレーザを遮蔽して内側開口部36の高さを正確に測定することができないおそれがある。これに対して、本実施形態では、仮に開口縁にバリを生じた場合であっても、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置を検知するから、バリの影響が少ない。また、画像判別センサを採用した場合、シャフト孔33内の限られた空間において、レンズと内側開口部36との間に十分な焦点距離を確保することが難しく、鮮明な画像を取得しにくい。これに対して、本実施形態では、棒状部材61を内側開口部36の挿入できればよく、レンズと内側開口部36との間の焦点距離のような空間上の制約が少ない。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、ロータコア20の内側開口部36の高さを、迅速に精度よく測定することができる。このため、例えば、ロータコア20の全数について内側開口部36の高さの測定をすることが可能となる。この結果、ロータコア20の一部のみを抜き取り検査する場合に比べて内側開口部36の高さが不良となる製品を確実に取り除くことができ、ロータコア20の内側開口部36の高さの精度が担保される。そして、内側開口部36を介してシャフト側冷媒流路24とロータコア20の冷媒流路35を連通させて、ロータコア20の内部に確実に冷媒を流通させることができる。
【0037】
本実施形態の検知工程では、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触して第1部材62が下方に移動することが規制され、移動が規制された第1部材62から第2部材63が分離したことを検出して、棒状部材61が内側流路35Aの内面35Sに接触した位置を検知する。このため、ロータコア20の下面20Bに対する棒状部材61の位置を迅速に精度よく検知することができる。
【0038】
本実施形態におけるロータコア20の製造方法では、測定工程において測定した下面20Bから内側開口部36までの高さをロータコア形成工程にフィードバックして、積層する電磁鋼板31の枚数を調整する調整工程を更に備える。このような調整工程を備えることで、内側開口部36の高さが不良として廃棄されるロータコア20を低減して、効率よく寸法精度の高いロータコア20を製造することができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ロータコアの下面から内側開口部までの高さを測定したが、ロータコアの上面から内側開口部までの高さを測定してもよく、下面と上面の双方から内側開口部までの高さを測定してもよい。また、測定工程において、ロータコアは軸方向を上下方向とは異なる方向に沿わせて配置されてもよい。
(2)上記実施形態では、ロータコアに荷重を付与した状態でロータコアの内側開口部までの高さを測定したが、ロータコアに荷重を付与しない自然状態において、ロータコアの内側開口部までの高さを測定してもよい。
(3)上記実施形態以外にも、棒状部材が冷媒流路の内面に接触した位置を検知する手段は、適宜変更可能である。
(4)調整工程を備えておらず、ロータコアの内側開口部の高さが不良である製品を判定する工程のみを備えていてもよい。
(5)ロータコアの構成は、適宜変更可能である。冷媒流路の形状、数、大きさも適宜変更可能である。
(6)検査装置の構成は、ロータコアの構成に応じて適宜変更可能である。棒状部材の形状、大きさも、冷媒流路の構成に応じて適宜変更可能である。例えば、検査装置は、棒状部材のみをシャフト孔に進入させ、第1部材の棒状部材以外の部分がシャフト孔の外部に配置される構成であってもよい。
【0040】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0041】
20…ロータコア
20B…下面(軸方向における一方側の面)
23…シャフト
24…シャフト側冷媒流路
31…電磁鋼板
33…シャフト孔
33A…内面
35…冷媒流路
35S…内面
36…内側開口部(開口部)
61…棒状部材
62…第1部材
63…第2部材