(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】超音波デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2020008954
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
(72)【発明者】
【氏名】清瀬 摂内
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023554(JP,A)
【文献】国際公開第2019/133644(WO,A1)
【文献】特開2014-146884(JP,A)
【文献】特開2012-142648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、前記振動板に設けられる振動素子と、前記振動素子と電気的に接続する第1
電極と、を有する素子基板と、
前記素子基板と対向する位置に設けられ、前記第1電極と対向する位置に前記第1電極
と接続する第2電極を有する保護基板と、
貫通孔を有し前記素子基板と対向する貫通孔基板と
、
前記保護基板を配置する実装面を有する容器と、を備え、
前記振動素子は、前記素子基板と前記保護基板との対向方向から見て、前記貫通孔とオ
ーバーラップする位置に設けられ、且つ、前記素子基板と前記保護基板と接合部材とで囲
まれ、
前記第2電極は、前記保護基板における前記実装面との接合面とは反対側の面に設けら
れていることを特徴とする超音波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波デバイスにおいて、
前記対向方向から見て前記素子基板よりも前記保護基板のほうが大きいことを特徴とす
る超音波デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波デバイスにおいて、
前記容器は、前記第2電極と配線により接続される第3電極を有し、
前記第2電極の前記配線が接続される第2電極配線接続面と、前記第3電極の前記配線
が接続される第3電極配線接続面とは、ともに、前記実装面が向く方向に向いていること
を特徴とする超音波デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、
前記貫通孔に格子状部材か設けられていることを特徴とする超音波デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、
前記貫通孔を複数有することを特徴とする超音波デバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、
前記貫通孔に樹脂部材か設けられていることを特徴とする超音波デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波デバイスにおいて、
前記樹脂部材は、音響レンズであることを特徴とする超音波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な超音波デバイスが使用されている。このような超音波デバイスの一例として、例えば、特許文献1には、送信手段から送信され被検出体にて反射された超音波を受信部で受信し、受信部で受信した超音波の振動が伝達される第1の伝達部材と、第1の伝達部材に伝達された超音波の振動を伝達する第2の伝達部材と、を備える超音波センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の超音波センサは、受信素子である振動素子の保護、すなわち、信頼性の向上の観点から上記のような構成となっている。しかしながら、特許文献1の超音波センサは、第1の伝達部材及び第2の伝達部材と、超音波の振動を伝達する部材を設けているので、超音波の振動を伝達することに伴う振動の損失が大きく精度が低下する場合があった。また、特許文献1の超音波センサは、構成が複雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の超音波デバイスは、振動板と、前記振動板に設けられる振動素子と、前記振動素子と電気的に接続する第1電極と、を有する素子基板と、前記素子基板と対向する位置に設けられ、前記第1電極と対向する位置に前記第1電極と接続する第2電極を有する保護基板と、貫通孔を有し前記素子基板と対向する貫通孔基板と、前記保護基板を配置する実装面を有する容器と、を備え、前記振動素子は、前記素子基板と前記保護基板との対向方向から見て前記貫通孔とオーバーラップする位置に設けられ、且つ、前記素子基板と前記保護基板と接合部材とで囲まれ、前記第2電極は、前記保護基板における前記実装面との接合面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の超音波デバイスの一例としての実施例1の超音波センサーを表す概略図。
【
図2】
図1の超音波センサーにおける送信受信部の貫通孔形成面側からの概略斜視図。
【
図3】
図1の超音波センサーにおける送信受信部の第3電極形成面側からの概略斜視図。
【
図5】
図1の超音波センサーにおける振動素子を表す概略底面図。
【
図6】
図4の送信受信部の超音波センサー内での取り付け状態を表す概略図。
【
図7】実施例2の超音波センサーにおける送信受信部の第3電極形成面側からの概略斜視図。
【
図8】実施例2の超音波センサーにおける送信受信部の断面図。
【
図9】実施例3の超音波センサーにおける送信受信部の貫通孔形成面側からの概略斜視図。
【
図11】実施例4の超音波センサーにおける送信受信部の貫通孔形成面側からの概略斜視図。
【
図13】実施例5の超音波センサーにおける送信受信部の貫通孔形成面側からの概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の超音波デバイスは、振動板と、前記振動板に設けられる振動素子と、前記振動素子と電気的に接続する第1電極と、を有する素子基板と、前記素子基板と対向する位置に設けられ、前記第1電極と対向する位置に前記第1電極と接続する第2電極を有する保護基板と、貫通孔を有し前記素子基板と対向する貫通孔基板と、前記保護基板を配置する実装面を有する容器と、を備え、前記振動素子は、前記素子基板と前記保護基板との対向方向から見て前記貫通孔とオーバーラップする位置に設けられ、且つ、前記素子基板と前記保護基板と接合部材とで囲まれ、前記第2電極は、前記保護基板における前記実装面との接合面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、振動素子が素子基板と保護基板と接合部材とで囲まれる位置に設けられることで振動素子を保護することができる。また、振動素子が超音波の出入り口となる貫通孔とオーバーラップする位置に設けられることで、超音波を効率よく送受信することができ、精度の低下を抑制できる。さらに、保護基板を容器の実装面で接合させることで振動板の振動に伴う保護基板の振動を抑制できる。保護基板の振動を抑制することで、保護基板の振動に伴う保護基板の損傷や、保護基板の振動が振動素子に伝わることでの精度の低下を、抑制できる。また、第2電極が保護基板における実装面との接合面とは反対側の面に設けられていることで、第1電極との接合が容易となり構成を簡単にすることができる。すなわち、本態様によれば、超音波デバイスの信頼性を高くするとともに、構成を複雑化させることなく精度低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の超音波デバイスは、前記第1の態様において、前記対向方向から見て前記素子基板よりも前記保護基板のほうが大きいことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、保護基板を大きくすることができるので、保護基板自体の強度的な信頼性を向上することができるとともに、大きな保護基板で素子基板を保護でき、素子基板の信頼性も向上することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の超音波デバイスは、前記第1または第2の態様において、前記容器は、前記第2電極と配線により接続される第3電極を有し、前記第2電極の前記配線が接続される第2電極配線接続面と、前記第3電極の前記配線が接続される第3電極配線接続面とは、ともに、前記実装面が向く方向に向いていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、保護基板に設けられる第2電極配線接続面の向きと容器に設けられる第3電極配線接続面の向きとが、ともに、実装面が向く方向に揃っている。このため、容器への保護基板の実装が容易となり、実装不良を減らせることで、超音波デバイスの信頼性を高くすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様の超音波デバイスは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記貫通孔に格子状部材か設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、貫通孔に格子状部材か設けられているので、貫通孔から異物が侵入することを抑制できる。貫通孔から異物が侵入することを抑制することで、異物による装置内部の損傷や電気的接続不良などを抑制でき、超音波デバイスの信頼性を高くすることができる。
【0015】
本発明の第5の態様の超音波デバイスは、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記貫通孔を複数有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、貫通孔を複数有するので、1つあたりの貫通孔の開口径を小さくでき、貫通孔から異物が侵入することを抑制できる。また、貫通孔の形状や開口径に応じて変化する超音波の指向性、送信方向、焦点距離などを容易に調整することが可能になる。
【0017】
本発明の第6の態様の超音波デバイスは、前記第1から第5のいずれか1つの態様において、前記貫通孔に樹脂部材か設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、貫通孔に樹脂部材か設けられている。このため、例えば、生体中や水中など、空気を介さずに超音波を対象物に向けて送信する場合などにおいて、対象物に超音波が達するまでの間の超音波の損失を抑制でき、精度を高くすることができる。
【0019】
本発明の第7の態様の超音波デバイスは、前記第6の態様において、前記樹脂部材は、音響レンズであることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、樹脂部材は、音響レンズである。このため、超音波を効率的に収束させることができ、精度を高くすることができる。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
[実施例1]
最初に、本発明の超音波デバイスの一例としての実施例1の超音波センサー1について
図1から
図6を参照して説明する。
【0022】
超音波センサー1は、
図1で表されるように、超音波を送信方向D1に送信し、対象物Oで反射されることで受信方向D2に移動してきた超音波を受信する、送信受信部100を備えている。なお、送信受信部100の詳細は後述するが、送信受信部100は、
図4で表されるように、振動素子124を備えている。送信受信部100は、振動素子124として、超音波を送信する送信素子と、送信素子から送信された超音波を受信する受信素子と、を備えているが、送信素子と受信素子とは、同様の構成である。
【0023】
また、送信受信部100から送信された超音波を受信するまでの時間を計測するタイマー200を備えている。超音波センサー1は、タイマー200により計測された時間に基づいて、超音波センサー1から対象物Oまでの距離Loを計測することが可能である。
【0024】
次に、送信受信部100の具体的な構成を説明する。
図2から
図4などで表されるように、送信受信部100は、容器10を備えている。
図2及び
図4などで表されるように、容器10の貫通孔形成面10Aが設けられる貫通孔基板110には、貫通孔11が設けられている。また、
図3及び
図4などで表されるように、容器10の第3電極形成面形成面10Bには、第3電極190が設けられている。
図4においては、略平板状の送信受信部100を水平面に置いた場合、
図4で表される状態を平面図としている。そして、
図2から
図6などにおいては、略平板状の送信受信部100を水平面に置いた場合、図中のX軸方向は水平方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともにX軸方向と直交する方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。Z軸方向は、後述する素子基板150と保護基板160とが対向する対向方向であるとともに超音波の送信方向D1及び受信方向D2に沿う方向である。
【0025】
図4で表されるように、送信受信部100は、複数の振動素子124と、振動素子124が設けられる振動板140と、振動素子124と電気的に接続する第1電極170と、を有する素子基板150を備えている。なお、
図4では、図がわかりやすいように振動素子124を3つ表しているが、本実施例の送信受信部100における実際の振動素子124の数はもっと多い。しかしながら、振動素子124の数に特に限定はない。素子基板150のZ軸方向における振動素子124とオーバーラップする位置には、超音波の送信及び受信の精度を高くするため、孔部151が設けられている。
【0026】
また、
図4で表されるように、送信受信部100は、Z軸方向において素子基板と対向する位置に、保護基板160が設けられている。保護基板160は、
図4で表されるように、Z軸方向において第1電極170と対向する位置に設けられるとともに第1電極170と直接接触して接続する第2電極180を有している。
【0027】
保護基板160は、
図4で表されるように、容器10の一部を構成する貫通孔基板110における貫通孔11と対向する実装面10Cに対して樹脂製の接着剤12で接合されている。このように、保護基板160を容器10の実装面10Cで接合させることで振動板140の振動に伴う保護基板160の振動を抑制できる。保護基板160の振動を抑制することで、保護基板160の振動に伴う保護基板160の損傷や、保護基板160の振動が振動素子124に伝わることでの精度の低下を、抑制できる。なお、本実施例においては、保護基板160は、実装面10Cに対して接合面160Aの全体が接着剤12で接着されて接合されているが、このような構成に限定されない。実装面10Cに対して接合面160Aの一部のみが接着剤12などで接着されて接合されていてもよいし、接着剤12を用いる以外の方法で接合面160Aが実装面10Cに対して接合されていてもよい。
【0028】
ここで、
図4で表されるように、振動素子124は、素子基板150と保護基板160との対向方向であるZ軸方向に沿う方向から見て貫通孔11とオーバーラップする位置に設けられている。このように、振動素子124が超音波の出入り口となる貫通孔11とオーバーラップする位置に設けられることで、超音波を効率よく送受信することができ、精度の低下を抑制できる。
【0029】
そして、振動素子124は、素子基板150と、保護基板160と、樹脂製の接着剤12などの接合部材と、で接合されている。別の表現をすると、振動素子124が形成されている振動素子形成空間Saが、素子基板150と、保護基板160と、樹脂製の接着剤12などの接合部材と、で密閉されている。このように、振動素子124が素子基板150と保護基板160と接合部材とで囲まれる位置に設けられることで振動素子124を保護することができる。
【0030】
また、
図4で表されるように、第2電極180は、保護基板160における実装面10Cとの接合面160Aとは反対側の面160Bに設けられている。このように、第2電極180が保護基板160における実装面10Cとの接合面160Aとは反対側の面160Bに設けられていることで、第1電極170との接合が容易となり構成を簡単にすることができる。すなわち、本態様の送信受信部100を有する超音波センサー1は、超音波デバイスとしての信頼性が高く、構成を複雑化させることなく精度低下を抑制している。
【0031】
また、
図4で表されるように、X軸方向及びY軸方向に沿う水平方向において、素子基板150よりも保護基板160のほうが大きい。別の表現をすると、超音波センサー1は、Z軸方向に沿う方向から見て素子基板150よりも保護基板160のほうが大きい。このように、保護基板160を大きくすることで、保護基板160自体の強度的な信頼性を向上することができるとともに、大きな保護基板160で素子基板150を保護でき、素子基板150の信頼性も向上することができる。
【0032】
また、
図3及び
図4で表されるように、容器10には、第3電極190が設けられている。そして、
図4で表されるように、第3電極190は、第2電極180と配線191により接続され、第2電極180の配線191が接続される第2電極配線接続面180aと、第3電極190の配線191が接続される第3電極配線接続面190aとは、ともに、実装面10Cが向く方向である
図4中の上向き(送信方向D1)に向いている。すなわち、保護基板160に設けられる第2電極配線接続面180aの向きと容器10に設けられる第3電極配線接続面の向きとが、ともに、実装面10Cが向く方向に揃っている。このため、このような構成とすることで、貫通孔形成面10A側から実装面10C側に向けての容器10への保護基板160の実装が容易となり、同じ側を向く面同士を配線191で接続できることで電気的な接続不良を容易に抑制できる。したがって、実装不良を減らせることで、超音波デバイスの信頼性を高くすることができる。
【0033】
ここで、本実施例の送信受信部100は、一部の振動素子124を受信素子として使用し、残りの振動素子124を送信素子として使用している。そして、上記のように、いずれの振動素子124も同じ構成である。すなわち、各々の送信素子が同じ構成、各々の受信素子が同じ構成、というだけでなく、各々の送信素子と各々の受信素子も同じ構成である。ただし、このような構成に限定されず、例えば、各々の送信素子及び各々の受信素子を異なる構成としてもよいし、送信素子と受信素子とを分けることなく各々の振動素子124を送信素子及び受信素子として使用する構成としてもよい。
【0034】
以下に、本実施例の振動素子124について
図5を用いて説明する。
図5で表されるように、振動素子124は、下層電極123と圧電体層122と上層電極121とがZ軸方向に沿って重ねられることで形成されている。下層電極123は、Y軸方向に沿って延びており、X軸方向において複数設けられている。上層電極121は、X軸方向に沿って延びており、Y軸方向において複数設けられている。圧電体層122は、X軸方向とY軸方向とにおいてマトリクス状に設けられている。
【0035】
下層電極123や上層電極121は、導電性を有するものであれば、その材料は制限されない。下層電極123や上層電極121の材料としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ステンレス鋼等の金属材料、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の酸化スズ系導電材料、酸化亜鉛系導電材料、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、ニッケル酸ランタン(LaNiO3)、元素ドープチタン酸ストロンチウム等の酸化物導電材料や、導電性ポリマー等を用いることができる。
【0036】
圧電体層122は、代表的には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のペロブスカイト構造(ABO3型構造)の複合酸化物を用いることができる。これによれば、圧電素子である振動素子124の変位量を確保しやすくなる。
【0037】
また、圧電体層122は、鉛を含まないペロブスカイト構造(ABO3型構造)の複合酸化物を用いることもできる。これによれば、環境への負荷が少ない非鉛系材料を用いて超音波センサー1を実現できる。
【0038】
このような非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス(BFO;BiFeO3)を含むBFO系材料が挙げられる。BFOでは、AサイトにBiが位置し、Bサイトに鉄(Fe)が位置している。BFOに、他の元素が添加されていてもよい。例えば、KNNに、鉄酸マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、クロム(Cr)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユーロビウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0039】
また、非鉛系圧電材料の他の例として、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN;KNaNbO3)を含むKNN系材料が挙げられる。KNNに、他の元素が添加されていてもよい。たとえば、KNNに、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、及びユーロビウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0040】
ペロブスカイト構造の複合酸化物には、欠損・過剰により化学量論の組成からずれたものや、元素の一部が他の元素に置換されたものも含まれる。すなわち、ペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合、酸素欠損等による不可避な組成のずれは勿論、元素の一部置換等も許容される。
【0041】
次に、
図6を用いて送信受信部100が中継基板300に接続された状態の構成例について説明する。中継基板300は、電源400と電気的に接続されている。そして、第3電極190は、はんだ13により中継基板300に電気的に接続されている。
図6で表されるように、第3電極190である本実施例の第3電極190Aは、容器10の第3電極形成面形成面10B側の先端が平坦となっている。このため、本実施例の送信受信部100は、はんだ13により簡単かつしっかりと中継基板300に対して電気的に接続することができる。ただし、第3電極190は、本実施例の第3電極190Aのような構成に限定されない。以下に、第3電極190の構成が異なる実施例2の超音波センサー1について説明する。
【0042】
[実施例2]
ここで、実施例2の超音波センサー1について、
図7及び
図8を参照して説明する。なお、
図7は実施例1の超音波センサー1における
図3に対応する図であり、
図8は実施例1の超音波センサー1における
図4に対応する図である。また、
図7及び
図8において上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の超音波センサー1は、上記で説明した実施例1の超音波センサー1と同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。具体的には、本実施例の超音波センサー1は、送信受信部100の第3電極190の構成以外は、実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。
【0043】
図3及び
図4などで表されるように、実施例1の超音波センサー1における第3電極190Aは、容器10の第3電極形成面形成面10B側の先端が平坦となっていた。一方、
図7及び
図8で表されるように、本実施例の超音波センサー1における第3電極190Bは、容器10の第3電極形成面形成面10B側の先端が凸状となっている。例えば、中継基板300に第3電極190Bと係合する導電性の凹部などを設けることで、はんだ13などの他部材を用いることなく、送信受信部100を中継基板300に対して簡単に着脱することができる。
【0044】
[実施例3]
次に、実施例3の超音波センサー1について、
図9及び
図10を参照して説明する。なお、
図9は実施例1の超音波センサー1における
図2に対応する図であり、
図10は実施例1の超音波センサー1における
図4に対応する図である。また、
図9及び
図10において上記実施例1及び実施例2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の超音波センサー1は、上記で説明した実施例1の超音波センサー1と同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。具体的には、本実施例の超音波センサー1は、送信受信部100に金属製のメッシュ部材14を有していること以外は、実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。
【0045】
図9及び
図10で表されるように、本実施例の超音波センサー1における送信受信部100は、金属製のメッシュ部材14を有している。そして、金属製のメッシュ部材14により、貫通孔11が容器10の内部側から覆われている。別の表現をすると、本実施例の超音波センサー1は、貫通孔11に格子状部材か設けられている。このように、貫通孔11に格子状部材か設けられていることで、貫通孔11から異物が侵入することを抑制できる。そして、貫通孔11から異物が侵入することを抑制することで、異物による送信受信部100内部の損傷や電気的接続不良などを抑制でき、超音波デバイスの信頼性を高くすることができる。
【0046】
なお、本実施例の格子状部材は、上記のように、金属製のメッシュ部材14である。しかしながら、格子状部材は金属製のメッシュ部材14に限定されない。格子状部材として金属製以外の素材のメッシュ部材を使用してもよいし、メッシュ部材以外のものを使用してもよい。
【0047】
[実施例4]
次に、実施例4の超音波センサー1について、
図11及び
図12を参照して説明する。なお、
図11は実施例1の超音波センサー1における
図2に対応する図であり、
図12は実施例1の超音波センサー1における
図4に対応する図である。また、
図11及び
図12において上記実施例1から実施例3と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の超音波センサー1は、上記で説明した実施例1の超音波センサー1と同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。具体的には、本実施例の超音波センサー1は、送信受信部100の貫通孔11の形状及び貫通孔11に樹脂製の音響レンズ15を有していること以外は、実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。
【0048】
図11及び
図12で表されるように、本実施例の超音波センサー1における送信受信部100は、Z軸方向に沿って見る平面視において矩形の貫通孔11を有し、貫通孔11に樹脂部材である音響レンズ15か設けられている。このように、貫通孔11に樹脂部材か設けられていることで、例えば、生体中や水中など、空気を介さずに超音波を対象物Oに向けて送信する場合などにおいて、対象物Oに超音波が達するまでの間の超音波の損失を抑制でき、精度を高くすることができる。また、貫通孔11を覆うことで、貫通孔11から異物が侵入することを抑制できる。
【0049】
また、貫通孔11に設けられる樹脂部材は、音響レンズである。このため、本実施例の超音波センサー1は、超音波を効率的に収束させることができ、精度を高くすることができている。
【0050】
[実施例5]
次に、実施例5の超音波センサー1について、
図13及び
図14を参照して説明する。なお、
図13は実施例1の超音波センサー1における
図2に対応する図であり、
図14は実施例1の超音波センサー1における
図4に対応する図である。また、
図13及び
図14において上記実施例1から実施例4と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の超音波センサー1は、上記で説明した実施例1の超音波センサー1と同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。具体的には、本実施例の超音波センサー1は、送信受信部100の貫通孔11の数及び大きさ以外は、実施例1の超音波センサー1と同様の構成をしている。
【0051】
図13及び
図14で表されるように、本実施例の超音波センサー1における送信受信部100は、貫通孔11を複数有している。このように、貫通孔11を複数有することで、1つあたりの貫通孔11の開口径を小さくでき、貫通孔11から異物が侵入することを抑制できる。また、貫通孔11を複数有することで、貫通孔11の形状や開口径に応じて変化する超音波の指向性、送信方向、焦点距離などを容易に調整することが可能になる。例えば、開口径を小さくすることで貫通孔11からの焦点距離を短くすることができる。
【0052】
なお、本実施例の超音波センサー1における貫通孔11は、
図13で表されるように、貫通孔11a、貫通孔11b、貫通孔11c、貫通孔11d、貫通孔11e、貫通孔11f、貫通孔11g、貫通孔11h、貫通孔11i、と9つ設けられている。貫通孔11aは不図示の孔部151aとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11bは不図示の孔部151bとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11cは不図示の孔部151cとZ軸方向において対向する位置に設けられている。貫通孔11dは
図14で表されるように孔部151dとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11eは
図14で表されるように孔部151eとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11fは
図14で表されるように孔部151fとZ軸方向において対向する位置に設けられている。貫通孔11gは不図示の孔部151gとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11hは不図示の孔部151hとZ軸方向において対向する位置に設けられ、貫通孔11iは不図示の孔部151iとZ軸方向において対向する位置に設けられている。
【0053】
図14では、貫通孔11と、振動素子124と対向する孔部151とが、1対1でZ軸方向において対向するように形成されているが、このような構成に限定されない。例えば、Z軸方向において貫通孔11と対向する位置に複数の振動素子124及び孔部151があってもよい。
【0054】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…超音波センサー(超音波デバイス)、10…容器、10A…貫通孔形成面、
10B…第3電極形成面形成面、10C…実装面、11…貫通孔、11a…貫通孔、
11b…貫通孔、11c…貫通孔、11d…貫通孔、11e…貫通孔、
11f…貫通孔、11g…貫通孔、11h…貫通孔、11i…貫通孔、
12…接着剤(接合部材)、13…はんだ、14…メッシュ部材(格子状部材)、
15…音響レンズ(樹脂部材)、100…送信受信部、110…貫通孔基板、
121…上層電極、122…圧電体層、123…下層電極、124…振動素子、
140…振動板、150…素子基板、151…孔部、151b…孔部、
151d…孔部、151e…孔部、160…保護基板、160A…接合面、
160B…接合面160Aとは反対側の面、170…第1電極、180…第2電極、
180a…第2電極配線接続面、190…第3電極、190A…第3電極、
190B…第3電極、190a…第3電極配線接続面、191…配線、
200…タイマー、300…中継基板、400…電源、O…対象物、
Sa…振動素子形成空間