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  • 特許-透析システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20231205BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61M1/36 121
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020023507
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126392
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 悦孝
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144721(JP,A)
【文献】特開2014-184108(JP,A)
【文献】特開平8-252309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の透析装置と、
前記複数の透析装置にて使用された透析液からなる使用済透析液を一時的に貯え、溢水管が接続された使用済透析液用タンクと、
前記使用済透析液用タンクに接続され、前記使用済透析液用タンクに貯えられた前記使用済透析液を排出させる排液ポンプと、
前記透析液が流れる透析液流路を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
酸性溶液およびアルカリ性溶液のいずれか一方を選択的に供給し、前記使用済透析液用タンクから排出された洗浄排液を中和する中和装置とを備え、
前記使用済透析液用タンクが水平方向に延在するパイプ状の外形を有し、
前記洗浄液供給部が前記洗浄液を供給している際は、前記排液ポンプは、前記溢水管から前記洗浄排液が流出した時点から設定時間経過後に稼働し、前記使用済透析液用タンク内に貯えられている前記洗浄排液の液面高さが閾値まで下降した時点で停止する、一連の間欠運転を行なう、透析システム。
【請求項2】
前記中和装置は、前記排液ポンプを介して前記使用済透析液用タンクと接続されている、請求項1に記載の透析システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記使用済透析液用タンクの排液ポンプ側に接続されている配管の内周面の上端である、請求項2に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
透析システムを開示した先行文献として、特開2015-144721号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された透析システムは、使用済透析液を一時的に貯える使用済透析液用タンクを備えている。使用済透析液用タンクに貯えられた使用済透析液は、第2熱交換器にて原水と熱交換して冷却された後、排出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-144721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透析システムにおいて、透析液流路を洗浄した洗浄排液は、中和装置において中和処理された後、下水道などに排出されなければならない。透析液流路を洗浄した洗浄排液は、透析液流路に付着した蛋白成分などを含むため、泡立った状態で流動している。洗浄排液をポンプで圧送して排出するためには、洗浄排液をタンクに一定量以上貯える必要がある。低背のタンクを用いた場合、ポンプが洗浄排液中の泡を吸い込んでキャビテーションが発生することがある。この場合、洗浄排液を安定して中和処理して排出することができない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、低背のタンクを用いつつ洗浄排液を安定して中和処理して排出することができる透析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく透析システムは、複数の透析装置と、使用済透析液用タンクと、排液ポンプと、洗浄液供給部と、中和装置とを備える。使用済透析液用タンクは、複数の透析装置にて使用された透析液からなる使用済透析液を一時的に貯え、溢水管が接続されている。排液ポンプは、使用済透析液用タンクに接続され、使用済透析液用タンクに貯えられた使用済透析液を排出させる。洗浄液供給部は、透析液が流れる透析液流路を洗浄する洗浄液を供給する。中和装置は、酸性溶液およびアルカリ性溶液のいずれか一方を選択的に供給し、使用済透析液用タンクから排出された洗浄排液を中和する。使用済透析液用タンクは、水平方向に延在するパイプ状の外形を有している。洗浄液供給部が洗浄液を供給している際は、排液ポンプは、溢水管から洗浄排液が流出した時点から設定時間経過後に稼働し、使用済透析液用タンク内に貯えられている洗浄排液の液面高さが閾値まで下降した時点で停止する、一連の間欠運転を行なう。
【0007】
本発明の一形態においては、中和装置は、排液ポンプを介して使用済透析液用タンクと接続されている。
【0008】
本発明の一形態においては、上記閾値は、使用済透析液用タンクの排液ポンプ側に接続されている配管の内周面の上端である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透析システムにおいて、低背のタンクを用いつつ洗浄排液を安定して中和処理して排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る透析システムの構成を示す系統図である。
図2】本発明の一実施形態に係る透析システムが備える使用済透析液用タンクの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る透析システムについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る透析システムの構成を示す系統図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る透析システム1は、原水111を供給する原水供給部110と、逆浸透膜を有し、原水111を、逆浸透膜を透過した逆浸透水141と、逆浸透膜を透過せずに不純物が濃縮された濃縮水142とに分離する逆浸透装置140と、逆浸透水141を一時的に貯える逆浸透水用タンク150とを備える。
【0013】
透析システム1は、逆浸透水用タンク150から送り出された逆浸透水141が調製されてなる透析液211を供給する透析液供給装置210と、透析液供給装置210から透析液211の供給を受ける複数の透析装置と、透析装置にて使用された透析液211からなる使用済透析液22を一時的に貯え、溢水管が接続された使用済透析液用タンクとをさらに備える。
【0014】
透析システム1は、原水供給部110から供給された原水111と逆浸透装置140から排出された濃縮水142とを熱交換させる第1熱交換器120と、第1熱交換器120を通過した原水111と使用済透析液用タンクから排出された使用済透析液22とを熱交換させる第2熱交換器130とをさらに備える。
【0015】
透析システム1は、透析液が流れる透析液流路を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給部270と、使用済透析液用タンクに酸性溶液31およびアルカリ性溶液32のいずれか一方を選択的に供給し、使用済透析液用タンクに貯えられている洗浄排液を中和する中和装置170とをさらに備える。
【0016】
本実施形態においては、複数の透析装置は、3つのグループに分かれて配置されている。すなわち、複数の透析装置を各々含む、第1透析装置グループ220と第2透析装置グループ221と第3透析装置グループ222とが構成されている。
【0017】
第1透析装置グループ220から排出された使用済透析液22は、第1使用済透析液用タンク230に集められて一時的に貯えられる。第2透析装置グループ221から排出された使用済透析液22は、第2使用済透析液用タンク231に集められて一時的に貯えられる。第3透析装置グループ222から排出された使用済透析液22は、第3使用済透析液用タンク232に集められて一時的に貯えられる。
【0018】
第1使用済透析液用タンク230には、第1溢水管260および第1ポンプ250が接続されている。第2使用済透析液用タンク231には、第2溢水管261および第2ポンプ251が接続されている。第3使用済透析液用タンク232には、第3溢水管262および第3ポンプ252が接続されている。
【0019】
第1使用済透析液用タンク230、第2使用済透析液用タンク231および第3使用済透析液用タンク232の各々は、第4使用済透析液用タンク233に接続されている。上記のように、本実施形態においては、使用済透析液用タンクが複数設けられている。なお、使用済透析液用タンクとして、第4使用済透析液用タンク233のみが設けられていてもよい。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る透析システムが備える使用済透析液用タンクの構成を示す縦断面図である。なお、以下の説明においては、第4使用済透析液用タンク233について説明するが、第1使用済透析液用タンク230、第2使用済透析液用タンク231および第3使用済透析液用タンク232の各々も同様の構成を有している。
【0021】
図2に示すように、第4使用済透析液用タンク233は、水平方向に延在するパイプ状の外形を有している。本実施形態においては、第4使用済透析液用タンク233は、略円筒状の形状を有している。ただし、第4使用済透析液用タンク233の形状は、略円筒状に限られず、たとえば、横断面矩形状の筒状であってもよい。
【0022】
第4使用済透析液用タンク233には、第4溢水管263および第4ポンプ253が接続されている。第4ポンプ253は、配管240を通じて第4使用済透析液用タンク233と接続されている。配管240は、第4使用済透析液用タンク233の下部に接続されている。第4ポンプ253は、第4使用済透析液用タンク233に貯えられた使用済透析液を排出させる。
【0023】
上記のように、第4使用済透析液用タンク233には第4溢水管263が接続されており、透析室の床面2から第4使用済透析液用タンク233内の使用済透析液22の液面までの液面高さhが上限高さHとなるように設定されている。液面高さhは、たとえば、30cmである。第4使用済透析液用タンク233の第4ポンプ253側に接続されている配管240の内周面の上端241の位置が、下限高さLとなるように設定されている。
【0024】
本実施形態においては、第4使用済透析液用タンク233内にて使用済透析液22の液面が上限高さHに達した状態において、100Lの使用済透析液22が貯液されている。第1使用済透析液用タンク230内にて使用済透析液22の液面が上限高さHに達した状態において、36Lの使用済透析液22が貯液されている。第2使用済透析液用タンク231内にて使用済透析液22の液面が上限高さHに達した状態において、50Lの使用済透析液22が貯液されている。第3使用済透析液用タンク232内にて使用済透析液22の液面が上限高さHに達した状態において、36Lの使用済透析液22が貯液されている。
【0025】
上記のように使用済透析液用タンクが水平方向に延在するパイプ状の外形を有していることにより、必要な容量を確保しつつ使用済透析液用タンクを低背化できる。これにより、使用済透析液用タンクを透析装置と干渉しないように透析室20の床面2に沿うように配置することができ、透析室20内における透析装置の配置の自由度を高く維持できる。
【0026】
また、本実施形態に係る透析システムにおいては複数の使用済透析液用タンクを備えているため、必要な容量を確保しつつ各使用済透析液用タンクをさらに低背化および小型化することができる。複数の使用済透析液用タンクをそれぞれ透析室20の別の場所に配置することにより、透析室20内における透析装置の配置の自由度をさらに高くすることができる。
【0027】
原水供給部110と第1熱交換器120と第2熱交換器130と逆浸透装置140と逆浸透水用タンク150と中和装置170は、機械室10に配置されている。透析液供給装置210と全ての透析装置と全ての使用済透析液用タンクと洗浄液供給部270とは、透析室20に配置されている。
【0028】
洗浄液供給部270は、互いに液性の異なる洗浄液を選択的に供給可能に構成されている。具体的には、洗浄液供給部270は、酸洗浄およびアルカリ洗浄に用いられる洗浄液を選択的に供給可能に構成されている。なお、洗浄液供給部270は、酸洗浄およびアルカリ洗浄に用いられるいずれか一方の洗浄液のみを供給可能に構成されていてもよい。なお、本実施形態においては、洗浄液供給部270は、透析液供給装置210に接続されているが、これに限られず、透析液供給装置210または透析装置の各々に設けられていてもよい。すなわち、透析液供給装置210および透析装置の各々が、洗浄液供給部270を有していてもよい。
【0029】
酸洗浄に用いられる洗浄液としては、たとえば、酢酸水溶液、過酢酸水溶液またはクエン酸水溶液などがある。アルカリ洗浄に用いられる洗浄液としては、たとえば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液がある。透析液流路を流れた洗浄液は、洗浄排液33となって第4使用済透析液用タンク233に貯えられる。
【0030】
中和装置170は、酸性溶液31を供給する酸性溶液供給部171、アルカリ性溶液32を供給するアルカリ性溶液供給部172、および、中和槽173を含む。酸性溶液供給部171は、第5ポンプ185を介して中和槽173と接続されている。アルカリ性溶液供給部172は、第6ポンプ186を介して中和槽173と接続されている。
【0031】
中和装置170は、第4ポンプ253および第2熱交換器130を介して第4使用済透析液用タンク233と接続されている。具体的には、中和槽173の流入口は、第4ポンプ253および第2熱交換器130を介して第4使用済透析液用タンク233と接続されている。中和槽173の流出口は、下水道9に接続されている。
【0032】
原水供給部110と第1熱交換器120と第2熱交換器130と逆浸透装置140と逆浸透水用タンク150と中和装置170とは、機械室10に配置されている。透析液供給装置210と全ての透析装置と全ての使用済透析液用タンクと洗浄液供給部270とは、透析室20に配置されている。
【0033】
次に、透析システム1における一連の動作について説明する。原水供給部110から供給された、たとえば水道水からなる原水111は、第1熱交換器120、第2熱交換器130および逆浸透装置140に順に送られる。逆浸透装置140に送られた原水111は、逆浸透膜に沿って流れることにより、逆浸透膜を透過した逆浸透水141と逆浸透膜を透過せずに不純物が濃縮された濃縮水142とに分離される。
【0034】
逆浸透装置140にて生成された逆浸透水141は、逆浸透水用タンク150に送られて一時的に貯えられる。逆浸透装置140にて生成された濃縮水142は、第1熱交換器120に送られて、原水111と熱交換して冷却された後、排出される。すなわち、第1熱交換器120の第1配管121を通過する原水111は、第1熱交換器120の第2配管122を通過する濃縮水142と熱交換して加熱される。
【0035】
逆浸透水用タンク150に貯えられた逆浸透水141は、透析液供給装置210に送られて、透析液211に調製される。透析液供給装置210にて調製された透析液211は、第1透析装置グループ220、第2透析装置グループ221および第3透析装置グループ222の各々に含まれる透析装置に供給される。
【0036】
第1透析装置グループ220に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第1使用済透析液用タンク230に一時的に貯えられる。第1使用済透析液用タンク230に貯えられた使用済透析液22の一部は、第1ポンプ250によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第1使用済透析液用タンク230内の使用済透析液22の液面の高さが上限高さを超えた場合は、上限高さを超えた分の使用済透析液22が第1溢水管260から排出される。
【0037】
第2透析装置グループ221に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第2使用済透析液用タンク231に一時的に貯えられる。第2使用済透析液用タンク231に貯えられた使用済透析液22の一部は、第2ポンプ251によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第2使用済透析液用タンク231内の使用済透析液22の液面の高さが上限高さを超えた場合は、上限高さを超えた分の使用済透析液22が第2溢水管261から排出される。
【0038】
第3透析装置グループ222に含まれる透析装置から排出される使用済透析液22は、第3使用済透析液用タンク232に一時的に貯えられる。第3使用済透析液用タンク232に貯えられた使用済透析液22の一部は、第3ポンプ252によって加圧されて第4使用済透析液用タンク233に送られる。第3使用済透析液用タンク232内の使用済透析液22の液面の高さが上限高さを超えた場合は、上限高さを超えた分の使用済透析液22が第3溢水管262から排出される。
【0039】
第4使用済透析液用タンク233に送られた使用済透析液22は、一時的に貯えられる。第4使用済透析液用タンク233内の使用済透析液22の液面の高さが上限高さを超えた場合は、上限高さを超えた分の使用済透析液22が第4溢水管263から排出される。
【0040】
第4使用済透析液用タンク233に一時的に貯えられた使用済透析液22は、第4ポンプ253によって加圧されて第2熱交換器130に送られ、原水111と熱交換して冷却された後、中和槽173を通過して下水道9に排出される。すなわち、第2熱交換器130の第1配管131を通過する原水111は、第2熱交換器130の第2配管132を通過する使用済透析液22と熱交換して加熱される。
【0041】
複数の透析装置による透析治療終了後、洗浄液供給部270から洗浄液が透析液流路に供給される。酸洗浄する場合は、洗浄液供給部270から、酢酸水溶液、過酢酸水溶液またはクエン酸水溶液などが洗浄液として供給される。酸洗浄液は、透析液流路内に付着した炭酸塩などと反応して洗浄排液33となる。アルカリ洗浄する場合は、洗浄液供給部270から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が洗浄液として供給される。アルカリ洗浄液は、透析液流路内に付着した蛋白成分およびケイ素含有成分などと反応して洗浄排液33となる。
【0042】
第4使用済透析液用タンク233に送られた洗浄排液33は、一時的に貯えられる。洗浄液供給部270が洗浄液を供給している際は、第4ポンプ253は、第4溢水管263から洗浄排液33が流出した時点から設定時間経過後に稼働し、第4使用済透析液用タンク233内に貯えられている洗浄排液33の液面高さが閾値である下限高さLまで下降した時点で停止する、一連の間欠運転を繰り返し行なう。上記設定時間は、第4使用済透析液用タンク233に流入する洗浄排液33の流量によって適宜設定され、たとえば、30秒である。上記閾値は、下限高さLに限られず、下限高さLと上限高さHとの間に設定されていてもよい。
【0043】
第4溢水管263から洗浄排液33が流出した時点から設定時間経過するまでの間、洗浄排液33に含まれている泡が洗浄排液33とともに第4溢水管263から排出される。第4ポンプ253が上記設定時間経過後に稼働することにより、第4使用済透析液用タンク233から泡が除去された洗浄排液33が配管240を通じて中和槽173に送られる。
【0044】
中和槽173に貯えられた洗浄排液33が酸性である場合、アルカリ性溶液供給部172から供給されたアルカリ性溶液32が第6ポンプ186によって加圧されて中和槽173に送られる。中和槽173に貯えられた洗浄排液33がアルカリ性である場合、酸性溶液供給部171から供給された酸性溶液31が第5ポンプ185によって加圧されて中和槽173に送られる。このように、中和装置170においては、中和槽173に酸性溶液31およびアルカリ性溶液32のいずれか一方を選択的に供給する。中和槽173にて中和された洗浄排液33は、下水道9に排出される。
【0045】
本実施形態に係る透析システム1においては、第4使用済透析液用タンク233に送られた洗浄排液33は、一時的に貯えられる。洗浄液供給部270が洗浄液を供給している際は、第4ポンプ253は、第4溢水管263から洗浄排液33が流出した時点から設定時間経過後に稼働し、第4使用済透析液用タンク233内に貯えられている洗浄排液33の液面高さが閾値である下限高さLまで下降した時点で停止する、一連の間欠運転を行なう。これにより、洗浄排液33に含まれている泡を第4溢水管263から排出するとともに、泡が除去された洗浄排液33を中和槽173に送り、泡が第4ポンプ253に吸い込まれることを抑制することができる。その結果、洗浄排液33を、第4ポンプ253によって安定して中和槽173に送液し、中和処理して排出することができる。よって、低背の第4使用済透析液用タンク233を用いつつ洗浄排液33を安定して中和処理して排出することができる。
【0046】
第1ポンプ250、第2ポンプ251および第3ポンプ252の各々も、第4ポンプ253と同様の間欠運転をしてもよい。これにより、第4使用済透析液用タンク233に流入する洗浄排液33に泡が含まれにくくすることができる。
【0047】
本実施形態に係る透析システム1においては、中和装置170は、第4ポンプ253および第2熱交換器130を介して第4使用済透析液用タンク233と接続されている。これにより、第4使用済透析液用タンク233から中和槽173を経ずに第2熱交換器130に使用済透析液22を送ることができるため、第2熱交換器130での熱交換効率が中和槽173を設けたことにより低下することを抑制することができる。
【0048】
本実施形態に係る透析システム1においては、上記閾値は、第4使用済透析液用タンク233の第4ポンプ253側に接続されている配管240の内周面の上端241である。これにより、第4ポンプ253による第4使用済透析液用タンク233からの洗浄排液33の送液時間を長く確保しつつ、泡が第4ポンプ253に吸い込まれることを抑制することができる。その結果、洗浄排液33の中和処理に必要な時間を短縮しつつ、安定して洗浄排液33を中和処理することができる。
【0049】
本実施形態に係る透析システム1においては、原水供給部110、逆浸透装置140、逆浸透水用タンク150および透析液供給装置210を備えていたが、透析システム1は、必ずしも原水供給部110、逆浸透装置140、逆浸透水用タンク150および透析液供給装置210を備えていなくてもよい。この場合、複数の透析装置の各々は、個別に透析液を調製する。また、本実施形態に係る透析システム1においては、第1熱交換器120および第2熱交換器130を備えていたが、透析システム1は、必ずしも第1熱交換器120および第2熱交換器130を備えていなくてもよい。
【0050】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 透析システム、2 床面、9 下水道、10 機械室、20 透析室、22 使用済透析液、31 酸性溶液、32 アルカリ性溶液、33 洗浄排液、110 原水供給部、111 原水、120 第1熱交換器、121,131 第1配管、122,132 第2配管、130 第2熱交換器、140 逆浸透装置、141 逆浸透水、142 濃縮水、150 逆浸透水用タンク、170 中和装置、171 酸性溶液供給部、172 アルカリ性溶液供給部、173 中和槽、185 第5ポンプ、186 第6ポンプ、210 透析液供給装置、211 透析液、220 第1透析装置グループ、221 第2透析装置グループ、222 第3透析装置グループ、230 第1使用済透析液用タンク、231 第2使用済透析液用タンク、232 第3使用済透析液用タンク、233 第4使用済透析液用タンク、240 配管、241 上端、250 第1ポンプ、251 第2ポンプ、252 第3ポンプ、253 第4ポンプ、260 第1溢水管、261 第2溢水管、262 第3溢水管、263 第4溢水管、270 洗浄液供給部。
図1
図2