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特許7396100飛行体の制御方法、飛行体、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】飛行体の制御方法、飛行体、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20060101AFI20231205BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20231205BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231205BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231205BHJP
   H02S 10/20 20140101ALI20231205BHJP
   H02S 10/40 20140101ALI20231205BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C13/18 Z
B64C39/02
H01M10/44 P
H02S10/20
H02S10/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020025431
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130347
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 元信
(72)【発明者】
【氏名】村松 弘将
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0203850(US,A1)
【文献】国際公開第2017/056162(WO,A1)
【文献】特開2013-084389(JP,A)
【文献】特開2012-069496(JP,A)
【文献】特開2019-054490(JP,A)
【文献】特開平10-119896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/24
B64C 13/18
B64C 39/02
H01M 10/44
H02S 10/20
H02S 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる飛行体の制御方法であって、
前記発電装置による発電電力を推定し、
前記飛行体が備えるモータの回転駆動に係る負荷電力を推定し、
推定した発電電力と負荷電力との差異に基づき、前記高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助するか否かを判定する
飛行体の制御方法。
【請求項2】
太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる飛行体の制御方法であって、
前記蓄電装置は、正極活物質がリチウム過剰型であり、
前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助する際に設定した放電レートを取得し、
前記蓄電装置の温度を取得し、
取得した放電レート及び温度に基づき、前記蓄電装置の暖めが必要であるか否かを、放電レートと放電容量との関係を複数の温度別に記憶している関係DBを参照して判定する
飛行体の制御方法。
【請求項3】
前記飛行体を離陸させる前及び/又は前記所定の空域にまで上昇させる間、前記蓄電装置を暖める、請求項1又は2に記載の飛行体の制御方法。
【請求項4】
離陸前に地面を滑走中の前記蓄電装置の放電レートを、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高くする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の飛行体の制御方法。
【請求項5】
前記飛行体は端末装置との間で無線通信を行う無線中継局を備える、請求項1からまでのいずれか1項に記載の飛行体の制御方法。
【請求項6】
前記蓄電装置は、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の飛行体の制御方法。
【請求項7】
太陽電池を有する発電装置と、
蓄電装置と、を備え、
オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、
前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する飛行体であって、
前記発電装置による発電電力を推定し、
前記飛行体が備えるモータの回転駆動に係る負荷電力を推定し、
推定した発電電力と負荷電力との差異に基づき、前記高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助するか否かを判定する
飛行体。
【請求項8】
太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記発電装置による発電電力を推定し、
前記飛行体が備えるモータの回転駆動に係る負荷電力を推定し、
推定した発電電力と負荷電力との差異に基づき、前記高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助するか否かを判定する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
太陽電池を有する発電装置と、
蓄電装置と、を備え、
オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、
前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する飛行体であって、
前記蓄電装置は、正極活物質がリチウム過剰型であり、
前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助する際に設定した放電レートを取得し、
前記蓄電装置の温度を取得し、
取得した放電レート及び温度に基づき、前記蓄電装置の暖めが必要であるか否かを、放電レートと放電容量との関係を複数の温度別に記憶している関係DBを参照して判定する
飛行体。
【請求項10】
太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記蓄電装置は、正極活物質がリチウム過剰型であり、
前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助する際に設定した放電レートを取得し、
前記蓄電装置の温度を取得し、
取得した放電レート及び温度に基づき、前記蓄電装置の暖めが必要であるか否かを、放電レートと放電容量との関係を複数の温度別に記憶している関係DBを参照して判定する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の制御方法、飛行体、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の端末装置で使用されている4G(LTE)等のモバイルネットワークにおいては、端末装置と、電波塔等に設置された基地局との間で無線通信を行っている。
近年、無線中継局を搭載し、例えば高度が11km~50kmである成層圏内の空域を飛行又は滑空するHAPS(High-altitude platform station:成層圏プラットフォーム局)が開発されている(例えば特許文献1を参照)。ソーラープレーン、飛行船、成層圏ジェット等、様々なHAPSが開発されている。HAPSは、そのオペレーション中、成層圏内の例えば高度20kmの位置に滞在する。HAPSにより広範囲の多数の端末装置と同時接続を行うことができ、HAPSと人工衛星、地上局との間で連携を取ることで、高速の通信インフラを構築することができる。災害時においても、安定した通信環境を維持できる。
【0003】
HAPSは太陽電池を有するソーラーパネルと、例えばリチウムイオン二次電池等の蓄電素子を有する蓄電装置とを備えてもよい。HAPSは、成層圏を、昼間はソーラーパネルにより発電された電力により飛行し、夜間は蓄電装置が放電する電力により飛行してもよい。HAPSに備えられる蓄電素子は、大型の飛行体を夜間に飛行させ続けるために、高い放電容量(満充電容量)を有することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-54490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、HAPSは、昼間はソーラーパネルにより発電された電力により飛行するが、日照量が少ない等、ソーラーパネルから十分な出力が得られない場合に、離陸・上昇しようとしても、所望の空域まで到達できない可能性がある。
本発明の目的は、高い信頼性で飛行体を離陸及び/又は上昇させることができる飛行体の制御方法、飛行体、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る飛行体の制御方法は、太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる。
【0007】
本発明の一態様に係る飛行体は、太陽電池を有する発電装置と、蓄電装置と、を備え、オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する。
【0008】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、離陸する地球上の場所を問わず、高い信頼性で飛行体が離陸及び/又は上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】HAPSの外観の斜視図である。
図2】HAPSの構成を示すブロック図である。
図3】蓄電装置の斜視図である。
図4】制御部による離陸・上昇制御の処理の手順を示すフローチャートである。
図5】放電レートと放電容量との関係を示すグラフである。
図6】制御部による離陸・上昇制御の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態の概要)
実施形態に係る飛行体の制御方法は、太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる。
【0012】
発電装置としては、例えば太陽電池を配列したモジュールを複数並べて接続したソーラーパネルを用いてもよい。
蓄電装置としては、例えばリチウムイオン二次電池等の電池セル(蓄電素子)、該電池セルを複数直列及び/又は並列に接続した電池モジュール、複数の電池モジュールを直列に接続したもの(バンク)、又はバンクを並列に接続したものを用いてもよい。
飛行体は、例えばHAPS、eVTOL(electric vertical takeoff and landing aircraft)であってもよいが、これらに限定はされない。飛行体は、発電装置と蓄電装置とを備えて、好ましくは内燃機関を有しない。
【0013】
上記構成によれば、日照量が少ない等、発電装置から十分な出力が得られない場合においても、蓄電装置が放電して電力を補助するので、離陸する地球上の場所を問わず、高い信頼性で飛行体が離陸及び/又は上昇する。離陸時及び/又は上昇時の放電レートが、飛行体がそのオペレーション中(HAPSであれば、通信インフラとして機能している間)に所定の空域を飛行する場合の放電レートより高いことで、離陸・上昇時間が短くなる。離陸・上昇のための蓄電装置の通電時間が短くなって、蓄電装置内の負極上の抵抗成分の生成を抑制することができ、蓄電装置の放電容量(満充電容量)を維持することができる。
【0014】
上述の飛行体の制御方法において、前記飛行体を離陸させる前及び/又は前記所定の空域にまで上昇させる間、前記蓄電装置を暖めてもよい。
【0015】
後述するように、放電レートが高い場合、放電容量の温度依存性が高くなることがある(蓄電装置の温度に依存して放電容量が大きく変化することがある)。
蓄電装置を暖めることにより、放電レートが高い場合の蓄電装置の放電容量を確保することができる。
【0016】
上述の飛行体の制御方法において、離陸前に地面を滑走中の前記蓄電装置の放電レートを、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高くしてもよい。
滑走中とは、地面と飛行体の車輪との間で慣性力又は摩擦力が作用し、かつ飛行体を加速させる間をいう。
【0017】
上述の飛行体の制御方法において、前記飛行体は端末装置との間で無線通信を行う無線中継局を備えてもよい。
【0018】
端末装置は、スマートフォン等の携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータやタブレット等の携帯端末装置、ドローン等が備える通信端末装置等であってもよい。
無線中継局は、前記所定の空域より下方の空域に存在する飛行機の中でユーザが使用する端末装置、又は前記通信端末装置と無線通信を行い、また、地上又は海上の中継局と無線通信を行い、移動通信網のコアネットワークに接続される。
【0019】
飛行体が無線中継局を備えるHAPSである場合、成層圏内の所定の空域まで上昇する必要があるが、離陸時及び/又は上昇時に蓄電装置により電力が補助されるので、前記空域まで高い信頼性で上昇できる。緯度が高い地域など、赤道付近に比べて日照量が少ない地域からでも、HAPSが離陸及び上昇することが可能となる。
【0020】
上述の飛行体の制御方法において、前記蓄電装置は、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含んでもよい。
【0021】
上記構成によれば、高い放電容量を発揮することができる。
【0022】
実施形態に係る飛行体は、太陽電池を有する発電装置と、蓄電装置と、を備え、オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する。
【0023】
上記構成によれば、発電装置から十分な出力が得られない場合においても、蓄電装置が放電して電力を補助するので、離陸する地球上の場所を問わず、高い信頼性で飛行体が離陸及び/又は上昇する。
【0024】
実施形態に係るコンピュータプログラムは、太陽電池を有する発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
(実施形態1)
HAPSを例に、実施形態1を説明する。以下、蓄電装置7による、電力の補助のための放電を補助放電という。
図1はHAPS1の外観の斜視図、図2はHAPS1の構成を示すブロック図である。図2中、制御装置8と各部との接続は省略している。
HAPS1は、翼部2と、複数のプロペラ3と、複数の脚部4と、複数のソーラーパネル5と、蓄電装置7と、制御装置8と、無線中継局9と、第1コンバータ回路11と、第2コンバータ回路12と、切替部13と、インバータ回路14と、車輪15と、温度センサ16と、温調装置17とを備える。プロペラ3はモータ(電動機)10を備える。HAPS1の構成は、この例に限定はされない。蓄電装置7、制御装置8、無線中継局9、第1コンバータ回路11、第2コンバータ回路12、切替部13、インバータ回路14、温度センサ16、及び温調装置17は脚部4内に収容されている。代替的に、これらは翼部2に設けられてもよい。
【0026】
ソーラーパネル5は、例えばシリコン系の太陽電池を複数配列したモジュールを複数並べ、接続してなる。
蓄電装置7は、例えばリチウムイオン二次電池等の電池セル6、電池セル6を複数直列及び/又は並列に接続した電池モジュール、複数の電池モジュールを直列に接続したもの(バンク)、又はバンクを並列に接続したものである。図2においては、蓄電装置の一部をなす電池モジュールを例として示している。
温度センサ16は蓄電装置7の温度を検出し、検出結果を制御装置8へ出力する。
温調装置17は、蓄電装置7を暖めるヒータと、蓄電装置7から放熱させる放熱器とを備えてもよい。
【0027】
制御装置8は、制御部81、記憶部82、入力部83、通信部84、及びモータ駆動部85を備える。
制御部81は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成され、HAPS1の各部の動作を制御する。制御部81は、後述する離陸制御プログラム821を読み出して実行することにより、離陸制御の処理を実行する。ここで、離陸制御の処理とはHAPS1を離陸させ、所定の空域まで上昇させる処理をいう。
【0028】
記憶部82は、離陸制御プログラム821を含む各種のプログラム、履歴DB822、及び関係DB823を記憶している。離陸制御プログラム821は、例えばCD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体80に格納された状態で提供され、制御装置8にインストールすることにより記憶部82に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから離陸制御プログラム821を取得し、記憶部82に記憶させてもよい。
【0029】
履歴DB822は、ソーラーパネル5の発電及び放電の履歴データ、蓄電装置7の充放電の履歴データ、蓄電装置7の温度の履歴データ、気象情報の履歴データ、及びHAPS1の飛行制御の履歴データ等を記憶してもよい。ソーラーパネル5の発電及び放電の履歴とは、ソーラーパネル5の動作履歴であり、使用期間を示す情報、発電に関する情報(電力等)、又は放電に関する情報(電圧、レート等)の履歴を含んでもよい。蓄電装置7の充放電の履歴とは、蓄電装置7の動作履歴であり、使用期間を示す情報、充電又は放電に関する情報(電圧、レート等)の履歴を含んでもよい。
【0030】
温度の履歴とは、温度センサ16が検出した蓄電装置7の温度の履歴であってもよい。
気象情報の履歴とは、気象サーバ20から取得した、取得時点のHAPS1の位置における風速及び風向、並びに日照量等の履歴であってもよい。
飛行制御の履歴とは、モータ10の回転数及び回転時間等の回転駆動を含む、HAPS1の飛行の制御の履歴であってもよい。
【0031】
関係DB823は、日照量とソーラーパネル5の発電電力PPVとの第1関係、気象情報(風速及び風向)とモータ10の回転駆動に係る電力PLOADとの第2関係、蓄電装置7の補助電力PA と放電レートとの第3関係を予め実験により求め、記憶していてもよい。第3関係の放電レートは、HAPS1の成層圏内での滑空時の放電レートより大きくなるように設定していてもよい。
【0032】
入力部83は、ソーラーパネル5、蓄電装置7の電流及び電圧の検出結果、温度センサ16の温度検出結果の入力を受け付ける。図2において電流計及び電圧計は省略している。
通信部84は、無線中継局9等の他の装置との間で通信を行う機能を有し、所要の情報の送受信を行う。
モータ駆動部85は、各プロペラ3の各モータ10の回転駆動を制御する。
【0033】
第1コンバータ回路11は、DC/DCコンバータであり、ソーラーパネル5に接続され、ソーラーパネル5の出力電圧を昇圧して出力する。
第2コンバータ回路12は蓄電装置7に接続されており、蓄電装置7の放電及び充電を行う双方向のDC/DCコンバータである。
インバータ回路14は、DCをACに変換する。即ち切替部13から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。
【0034】
切替部13は、例えば直列に接続された2つのスイッチ131とスイッチ132とを備える。図2において、充放電を制御する制御回路は省略している。スイッチ131及びスイッチ132は、リレーやパワーMOSFET等のスイッチング素子からなる。スイッチ131とスイッチ132との接続点はインバータ回路14に接続されている。スイッチ131の他端、スイッチ132の他端は夫々、第1コンバータ回路11、第2コンバータ回路12に接続されている。
【0035】
インバータ回路14には、無線中継局9、及びモータ10等の負荷が接続されている。
【0036】
ソーラーパネル5から負荷に放電する場合、スイッチ131をオンにして、負荷にソーラーパネル5を接続する。図2においては、スイッチ131がオンであり、ソーラーパネル5から負荷へ電力が供給されている状態を示している。
蓄電装置7から負荷に放電する場合、スイッチ132をオンにして、負荷にソーラーパネル5を接続する。
補助放電時に、ソーラーパネル5及び蓄電装置7から負荷に放電する場合、スイッチ131及びスイッチ132の両方をオンにして、負荷にソーラーパネル5及び蓄電装置7を接続する。
【0037】
無線中継局9は、第1通信部91、第2通信部92、及び第3通信部93を備える。
第1通信部91は、アンテナ、送受共用器、及び増幅器等を有し、飛行機の中でユーザが使用する端末装置30、又はドローンの通信端末装置30等と無線信号の送受信を行う。第2通信部92は、アンテナ、送受共用器、及び増幅器等を有し、地上又は海上の中継局との間で、無線信号の送受信を行う。該中継局を介し無線中継局9は、移動通信網のネットワークNWに接続される。ネットワークNWには端末装置30が接続されている。図2中、地上又は海上の中継局は省略している。第3通信部93は、レーザ光等により人工衛星及び他のHAPSとの間で送受信を行う。無線中継局9の構成は、この例に限定はされない。
モータ10はプロペラ3を回転駆動する。代替的に、モータ10は、図1に示した形態以外の飛行体推進装置や飛行体上昇装置を駆動してもよい。
【0038】
図3は、蓄電装置(電池モジュール)7の例を示す斜視図である。
蓄電装置7は、直方体状のケース71と、ケース71に収容された複数の電池セル6とを備える。
【0039】
例えば電池セル6は、直方体状(プリズマティック)のケース本体61と、蓋板62と、蓋板62に設けられた、正極端子63及び負極端子66と、破裂弁64と、電極体65とを備える。プリズマティックセルに代えて、電池セルはラミネートケースを有する、所謂パウチセルであってもよい。電極体65は正極板、セパレータ、及び負極板を積層してなり、ケース本体61に収容されている。
電極体65は、正極板と負極板とをセパレータを介して扁平状に巻回して得られるものであってもよいし、複数の正極版と負極板をセパレータを介し積層して得られるものであってもよい。
【0040】
正極板は、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である正極基材箔上に活物質層が形成されたものである。負極板は、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はこれらの合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である負極基材箔上に活物質層が形成されたものである。セパレータは、合成樹脂からなる微多孔性のシートである。
【0041】
正極活物質としては、例えば、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi1-x]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β≦1)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層中の正極活物質の含有量は特に限定されないが、その下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。
【0042】
正極の活物質層を形成する正極合剤は、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤としては、例えば、カーボンブラック等の炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。バインダーとしては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
【0043】
負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウム金属を含む。負極活物質がリチウム金属を含むことで活物質質量あたりの放電容量を向上できる。リチウム金属には、リチウム単体の他、リチウム合金が含まれる。リチウム合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金等が挙げられる。リチウム金属を含む負極は、リチウム金属を所定の形状に切断するか、所定の形状に成形することにより製造できる。
【0044】
さらに、負極活物質層は、Na、K、Ca、Fe、Mg、Si、N等の元素を含有してもよい。
上記負極活物質に占めるリチウム金属の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0045】
ケース本体61には、非水電解質が注入されている。非水電解質は、非水溶媒、並びに非水溶媒に溶解している硫黄系環状化合物、フッ素化環状カーボネート、鎖状カーボネート、及び電解質塩を含む。硫黄系環状化合物として、スルトン構造又は環状サルフェート構造を有する化合物等が挙げられる。フッ素化環状カーボネートとして、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。
電池セル6の負極活物質がリチウム金属を含み、正極活物質がリチウム過剰型であってもよい。このような電池セル6によれば、高い放電容量を発揮できる。
【0046】
蓄電装置7の隣り合う電池セル6の正極端子63及び負極端子66がバスバー72により電気的に接続されることで、複数の電池セル6が直列に接続されている。
蓄電装置7の両端の電池セル6の、正極端子63、負極端子66には、電力を取り出すための正極リード74、負極リード73が設けられている。
【0047】
以下、制御部81による、HAPS1の離陸・上昇の制御について説明する。
HAPS1は、斜め上方に向かって地面から離れた後、所定の水平方向の領域内を旋回しながら揚力で浮揚し、空域Aまで上昇する。空域Aとして、例えば高度11km~50kmの成層圏内の空域が挙げられる。中でも高度20kmの空域が好ましい。空域Aまで上昇した後、HAPS1は水平方向の位置Bまで水平移動し、位置Bに滞在する。夜間は、下向きの角度を付けた状態で旋回しながら空域A内を滑空する。
【0048】
本実施形態においては、HAPS1が空域A内をオペレーション中に飛行する場合の放電レートより高い放電レートで蓄電装置7を放電しソーラーパネル5により発電される電力を補助して、HAPS1を離陸させ、上昇させる。HAPS1が空域A内を滑空する場合の放電レートは、0.05CA~0.2CAであってもよい。
【0049】
図4は、制御部81による離陸制御の処理の手順を示すフローチャートである。
制御部81は気象サーバ20から日照量を取得する(S1)。HAPS1に日照量を検出するセンサを設けておき、制御部81は、センサから日照量を取得してもよい。
制御部81は、ソーラーパネル5の発電電力Ppvを推定する(S2)。制御部81は、関係DB823から第1関係を読み出し、取得した日照量に基づいて、Ppvを推定する。
【0050】
制御部81は、気象サーバ20から風速及び風向の気象情報を取得する(S3)。HAPS1に風速計及び風向計を設けておき、制御部81は、風速計及び風向計から風速及び風向を取得してもよい。
制御部81は、PLOADを推定する(S4)。制御部81は、関係DB823から第2関係を読み出し、取得した気象情報に基づいて、PLOADを推定する。
【0051】
制御部81は補助放電が必要であるか否かを判定する(S5)。制御部81は、補助電力PA =PLOAD-Ppvを算出し、PA >0である場合、補助放電が必要であると判定する。制御部81は、補助放電が必要でない場合(S5:NO)、制御部81は、ソーラーパネル5単独の放電を開始し、モータ10を駆動して離陸を開始する(S6)。PA の閾値は0には限定されない。
制御部81は、空域A内の目的位置A1 に到達したか否かを判定する(S7)。制御部81は、目的位置A1 に到達していない場合(S7:NO)、この判定を繰り返す。
制御部81は、目的位置A1 に到達した場合(S7:YES)、離陸制御の処理を終了する。
【0052】
制御部81は、補助放電が必要である場合(S5:YES)、関係DB823から第3関係を読み出し、PAに基づいて、放電レートを設定する(S8)。制御部81は放電レートの設定に際し、蓄電装置7のSOCを考慮してもよい。
【0053】
制御部81は、切替部13のスイッチ131及び132をオンにし、設定した放電レートに基づいて、補助放電を開始し、モータ10を駆動して離陸を開始する(S9)。
制御部81は、目的位置A1 に到達したか否かを判定する(S10)。制御部81は、目的位置A1 に到達していない場合(S10:NO)、この判定を繰り返す。
制御部81は、目的位置A1 に到達した場合(S10:YES)、補助放電を終了し(S11)、離陸制御の処理を終了する。
【0054】
実施形態によれば、日照量が少なく、ソーラーパネル5から十分な出力が得られない場合において、蓄電装置7を放電して電力を補助するので、離陸する地球上の場所を問わず、高い信頼性でHAPS1を離陸させ、空域Aまで上昇させることができる。補助放電の放電レートは、HAPS1が空域Aをオペレーション中に飛行する場合の放電レートより高いので、離陸・上昇時間が短くなる。離陸・上昇のための蓄電装置7の通電時間が短くなって、蓄電装置7内の負極上の抵抗成分の生成量を抑制することができ、蓄電装置7の放電容量(満充電容量)を維持することができる。
【0055】
補助放電の実施の有無は、PA >0であるか否かに基づいて判定する場合に限定されない。補助放電は、日照量が閾値より小さい場合に行ってもよいし、風速が閾値より小さい場合に行ってもよい。補助放電は、日照量が少ないときに行う場合に限定はされない。
補助放電の放電レートは、高度が高くなるに従って変化させてもよい。HAPS1が空域Aをオペレーション中に飛行する場合の放電レートと比較して、離陸・上昇の間の一時的或いは間欠的に補助放電の放電レートを高くするようにしてもよい。滑走してから離陸する飛行体の場合、少なくとも滑走中(地面と車輪15との間で慣性力又は摩擦力が作用し、かつ飛行体を加速させる間)の補助放電の放電レートを、飛行体が所定空域を飛行する場合の放電レートと比較して、高くするようにしてもよい。
制御部81は、Ppv又はPLOADの実測値を取得し、機械学習等により第1関係、第2関係、又は第3関係を修正してもよい。
補助放電は、離陸時、又は上昇時のいずれかのみ行ってもよい。
【0056】
(実施形態2)
実施形態2に係るHAPS1は、HAPS1を離陸させる前、又は目的位置A1 にまで上昇させる間に蓄電装置7を暖めること以外は、実施形態1に係るHAPS1と同様の構成を有する。
実施形態2に係るHAPS1の記憶部82の関係DB823は、放電レートと放電容量(mAh/g)との第4関係を複数の温度別に記憶している。
【0057】
図5は、放電レートと放電容量との関係を示すグラフである。図5の横軸は放電レート(C)、縦軸は放電容量(mAh/g)である。図5において、温度が0℃、5℃、15℃、25℃、及び45℃である場合の放電レートと放電容量との関係を示している。
図5に示すように、放電レートが大きくなるのに従い、温度差に基づく放電容量の差が大きくなることが分かる。電池セル6のように、正極活物質がリチウム過剰型であるとき、他のリチウムイオン二次電池と異なる拡散パスを通るので拡散性が悪くなる。即ち酸化還元反応の速度が遅くなり、温度が低い場合の放電容量の低下量が大きい。
【0058】
図6は、制御部81による離陸制御の処理の手順を示すフローチャートである。
制御部81は気象サーバ20から日照量を取得する(S21)。
制御部81は、ソーラーパネル5の発電電力Ppvを推定する(S22)。制御部81は、関係DB823から第1関係を読み出し、取得した日照量に基づいて、Ppvを推定する。
【0059】
制御部81は、気象サーバ20から風速及び風向の気象情報を取得する(S23)。
制御部81は、PLOADを推定する(S24)。制御部81は、関係DB823から第2関係を読み出し、取得した気象情報に基づいて、PLOADを推定する。
【0060】
制御部81は補助放電が必要であるか否かを判定する(S25)。制御部81は、補助電力PA =PLOAD-Ppv>0である場合、補助放電が必要であると判定する。PA の閾値は0には限定されない。制御部81は、補助放電が必要でない場合(S25:NO)、ソーラーパネル5単独の放電を開始し、離陸を開始する(S26)。
制御部81は、目的位置A1 に到達したか否かを判定する(S27)。制御部81は、目的位置A1 に到達していない場合(S27:NO)、この判定を繰り返す。
制御部81は、目的位置A1 に到達した場合(S27:YES)、離陸制御の処理を終了する。
【0061】
制御部81は、補助放電が必要である場合(S25:YES)、関係DB823から第3関係を読み出し、PA に基づいて、放電レートを設定する(S28)。制御部81は放電レートの設定に際し、蓄電装置7のSOCを考慮してもよい。
【0062】
制御部81は、温度を取得する(S29)。制御部81は、温度センサ16から離陸前の蓄電装置7の温度を取得する。制御部81は、気象サーバ20から、目的位置A1 の温度を取得してもよい。制御部81は、目的位置A1 までの段階的な位置の温度を取得してもよい。
制御部81は、設定した放電レート、及び取得した温度に基づいて、蓄電装置7の暖めが必要であるか否かを判定する(S30)。制御部81は、関係DB823から第4関係を読み出し、放電レート及び取得した温度に基づいて、所望の放電容量(mAh/g)を得るための目標温度を読み取り、暖めが必要であるか否かを判定する。目標温度は内挿計算により求めてもよい。制御部81は、離陸前の蓄電装置7の温度から離陸前に暖めが必要でないと判定した場合においても、目的位置A1 の温度を考慮して暖めが必要であると判定してもよい。制御部81は、暖めが必要でない場合(S30:NO)、処理をS32に進める。
【0063】
制御部81は、暖めが必要である場合(S30:YES)、目標温度に到達するように、温調装置17のヒータにより蓄電装置7の暖めを開始する(S31)。
【0064】
制御部81は、設定した放電レートに基づいて、補助放電を開始し、離陸を開始する(S32)。上述したように、離陸前には暖めが必要でないと判定した場合においても、目的位置A1 に上昇させる間において蓄電装置7を暖めてもよい。制御部81は、目的位置A1 に到達するまでに、高度に応じて複数の目標温度を設定してもよい。
制御部81は、目的位置A1 に到達か否かを判定する(S33)。制御部81は、目的位置A1 に到達していない場合(S33:NO)、この判定を繰り返す。
【0065】
制御部81は、目的位置A1 に到達した場合(S33:YES)、補助放電を終了し(S34)、処理を終了する。制御部81は、蓄電装置7を暖めていた場合、暖めを終了した後、補助放電を終了する。
【0066】
上述したように、電池セル6の放電容量の温度依存性は高い。離陸時は放電レートを高くし、上空では気温は低くなるので、放電容量は低くなる。蓄電装置7を暖めることにより、放電容量を所望の容量まで引き上げることができる。離陸する場所の気温を問わず、HAPS1が高い信頼性で、離陸及び/又は上昇することができる。
【0067】
前記実施の形態は、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
発電装置は、太陽電池を有するものに限定はされない。発電装置は、発電時の二酸化炭素排出量が内燃機関の駆動時のそれよりも少ないものが好ましい。
制御装置8をHAPS1に備える場合に限定はされない。HAPS1と無線接続されるコンピュータやサーバが、HAPS1の離陸・上昇を制御してもよい。
HAPS1はソーラープレーンに限定はされない。HAPS1は飛行船、成層圏ジェット等であってもよい。
飛行体はHAPSに限定はされない。本発明はeVTOL等の他の電動飛行体や、発電装置と内燃機関とを搭載するハイブリッド飛行体にも適用できる。
蓄電素子はリチウムイオン二次電池には限定されない。蓄電素子は、他の二次電池であってもよい。
【0068】
他の実施形態は、以下のように構成されてもよい。
(1)発電時の二酸化炭素排出量が内燃機関の駆動時のそれよりも少ない発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる、飛行体の制御方法。
(2)発電時の二酸化炭素排出量が内燃機関の駆動時のそれよりも少ない発電装置と、蓄電装置と、を備え、オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する、飛行体。
【0069】
(3)発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記飛行体が所定の空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる、飛行体の制御方法。
(4)発電装置と、蓄電装置と、を備え、オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、前記空域を飛行する場合の放電レートより高い放電レートで前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する、飛行体。
【0070】
(5)発電時の二酸化炭素排出量が内燃機関の駆動時のそれよりも少ない発電装置と蓄電装置とを備える飛行体を、前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇させる、飛行体の制御方法。
(6)発電時の二酸化炭素排出量が内燃機関の駆動時のそれよりも少ない発電装置と、蓄電装置と、を備え、オペレーション中に所定の空域を飛行するように制御され、前記蓄電装置を放電し前記発電装置により発電される電力を補助して、離陸及び/又は上昇する、飛行体。
【符号の説明】
【0071】
1 HAPS
2 翼部
3 プロペラ
4 脚部
5 ソーラーパネル(発電装置)
6 電池セル
7 蓄電装置
8 制御装置
80 記録媒体
81 制御部
82 記憶部
821 離陸制御プログラム
822 履歴DB
823 関係DB
83 入力部
84 通信部
85 モータ駆動部
9 無線中継局
10 モータ
11 第1コンバータ回路
12 第2コンバータ回路
13 切替部
14 インバータ回路
15 車輪
16 温度センサ
17 温調装置
30 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6