(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】画像読取装置、異常検出方法および異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20231205BHJP
H04N 1/40 20060101ALI20231205BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20231205BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/40 006
H04N1/028 Z
H04N1/12 Z
(21)【出願番号】P 2020026270
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】乙丸 壮一
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220855(JP,A)
【文献】特開2008-187531(JP,A)
【文献】特開2020-017876(JP,A)
【文献】特開2015-039146(JP,A)
【文献】特開2017-147587(JP,A)
【文献】特開2008-294741(JP,A)
【文献】特開2017-184176(JP,A)
【文献】特開2011-188270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024-1/207
H04N 1/40 -1/409
H04N 1/46 -1/62
G06T 1/00
G06T 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと、前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイと、を有する読取部と、
前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得し、
前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得し、
前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成し、
前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出し、
前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は前記画素補間演算において、補間位置に隣接する隣接画素と、前記隣接画素を除く前記補間位置の近傍の画素と、を参照した重み付け加算により前記補間位置に画素を生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は前記比較処理において、前記特定画素範囲と前記第3背景画像データとの比較と、前記特定画素範囲と前記第3背景画像データとの差分が減少する向きへの前記特定画素範囲の移動とを繰り返し、前記差分の減少が止まるまでの前記特定画素範囲の移動量を前記ずれ量として検出する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、隣接する画素間の差分が所定値以下である画素が所定数連続する画素範囲を前記特定画素範囲に設定する、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記イメージセンサーは、複数の受光素子が前記所定方向に並ぶセンサーチップを前記所定方向に複数連結して構成されており、
前記制御部は、一つの前記センサーチップに対応する画素範囲毎に少なくとも一つの前記特定画素範囲を設定する、ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ずれ量が前記ずれ量に対する所定のしきい値を超える場合に外部へ警告を行う、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイとを有する読取部と、前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置が生成する画像における異常を検出する異常検出方法であって、
予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得工程と、
前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得工程と、
前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間工程と、
前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出するずれ量検出工程と、
前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出工程と、を有することを特徴とする異常検出方法。
【請求項8】
複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイとを有する読取部と、前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置が生成する画像における異常を検出する異常検出プログラムであって、
予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得機能と、
前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得機能と、
前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間機能と、
前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出するずれ量検出機能と、
前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出機能と、をプロセッサーに実行させることを特徴とする異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、異常検出方法および異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズが並ぶレンズアレイを通じて光を受光する複数の受光素子が並ぶイメージセンサーの構成においては、レンズの中央部付近と端部付近とでは受光素子への集光量が異なる。そのため、受光素子毎の受光量には、レンズとの位置関係に起因する、いわゆるレンズむらが生じる。
【0003】
画像読取装置であって、所定受光素子数離れた受光素子の間隔は各レンズの間隔であり、準備処理として第1基準部材データを取得し、実行処理として第2基準部材データを取得し、第1基準部材データと第2基準部材データとの比を判別データとして算出し、対象受光素子から所定受光素子数毎に離れた複数の受光素子の判別データを平均した判別データ平均値に基づき算出した範囲を対象受光素子の判別範囲として算出し、判別データが判別範囲を超えた第2基準部材データを異常と判断する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記文献1によれば、レンズ間隔毎の画素の判別データを平均化して判別範囲を算出することで、レンズむらによる影響を除外して紙粉等の異物による影響のある画素か否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像読取装置においては、レンズアレイやイメージセンサーは、夫々が装置の筐体や基板等、種々の材質による部材に固定されている。気温や湿度といった環境に応じて各部材の熱収縮、膨張が夫々に変化するため、レンズアレイとイメージセンサーとの位置関係は一定ではない。従って、ある環境において一つの受光素子に発生するレンズむらと、別の環境において当該一つの受光素子に発生するレンズむらとには相違が生じる。このように、レンズアレイとイメージセンサーとの位置ずれに応じて発生する、受光素子におけるレンズむらの変化は、紙粉等の影響による異常画素であるか否かの判定を難しくさせる。
【0007】
レンズむらの影響を除外して異常画素の判定を適切に行うためには、上述したようなレンズむらの変化の原因となる前記位置ずれを正確に検出する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
画像読取装置は、複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと、前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイと、を有する読取部と、前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、制御部と、を備え、前記制御部は、予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得し、前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得し、前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成し、前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出し、前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する。
【0009】
複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイとを有する読取部と、前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置が生成する画像における異常を検出する異常検出方法は、予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得工程と、前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得工程と、前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間工程と、前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出するずれ量検出工程と、前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出工程と、を有する。
【0010】
複数の受光素子が所定方向に並ぶイメージセンサーと前記イメージセンサーへ光を導く複数のレンズが並ぶレンズアレイとを有する読取部と、前記読取部による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置が生成する画像における異常を検出する異常検出プログラムは、予め記憶された、前記読取部による前記背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得機能と、前記読取部に前記背景部の読取をさせることにより前記背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得機能と、前記第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、前記第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより前記第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間機能と、前記第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を前記第3背景画像データに対して移動させて前記第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、前記所定方向における前記レンズアレイに対する前記イメージセンサーのずれ量を検出するずれ量検出機能と、前記第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを前記第3背景画像データと比較することにより、前記第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出機能と、をプロセッサーに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像読取装置の構成を簡易的に示すブロック図。
【
図2】搬送路を含む画像読取装置の内部構造を側方からの視点で簡易的に示す図。
【
図3】レンズアレイとイメージセンサーとの関係性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0013】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる画像読取装置10の構成をブロック図により簡易的に示している。
図2は、搬送路36を含む画像読取装置10の内部構造を、側方からの視点により簡易的に示している。
図2では、画像読取装置10に関する上下前後の方向を示している。
画像読取装置10は、原稿を読取可能なスキャナーである。画像読取装置10は、読取により生成した画像における異常を検出する異常検出方法を実現する。画像読取装置10は、制御部11と、搬送部12と、読取部13と、表示部14と、操作受付部15と、通信インターフェイス16と、を含む。インターフェイスをIFと略す。
【0014】
制御部11は、例えば、プロセッサーとしてのCPU11aや、ROM11bやRAM11c等のメモリーや、その他の記憶手段等を含み、メモリーに記憶されたプログラム11eに従って画像読取装置10を制御する。プログラム11eの少なくとも一部は、異常検出プログラムに該当する。制御部11を構成するプロセッサーは、一つのCPUに限られず、複数のCPUや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0015】
画像読取装置10は、本体部31と、本体部31に対して開閉可能なカバー32と、を備える。本体部31およびカバー32をまとめて、画像読取装置10の筐体と呼んでもよい。画像読取装置10の内部には、
図2に示すように、本体部31とカバー32とによって原稿Mの搬送路36が形成されている。
【0016】
搬送部12は、制御部11による制御下で原稿Mを搬送路36の上流から下流に向けて搬送する。搬送路36の上流から下流へ向かう方向を、搬送方向Dfと呼んでもよい。搬送路36の上流、下流を、単に、上流、下流とも記載する。原稿Mは、代表的には紙媒体であるが、紙以外の素材によるシート状の媒体であってもよい。搬送部12は、原稿Mを搬送するための複数のローラーや、ローラーに動力を与えてローラーを回転させるモーター等を含んでいる。
【0017】
符号34は、搬送路36の上流の供給口34を示し、符号35は、搬送路36の下流の排出口35を示している。本体部31の後方には、原稿トレイ33が本体部31に対して装着されている。原稿トレイ33に載置された原稿Mは、供給口34から搬送路36内へ取り込まれ、搬送路36を下流へ搬送されて、排出口35から外へ排出される。
図2の例では、排出口35は、供給口34よりも前方に在る。
【0018】
読取部13は、本体部31内に設けられており、制御部11による制御下で原稿Mを光学的に読み取る。読取部13は、原稿Mや後述の背景板38を照射するために発光する光源や、原稿M等からの反射光を受光して受光量に応じた電荷を出力するイメージセンサーや、イメージセンサーに光を導くためのレンズ等の光学系を含んでいる。
【0019】
読取部13は、搬送部12により搬送される原稿Mの本体部31を向く面を読み取ることが可能である。つまり、
図2の例では、画像読取装置10は、原稿Mの片面を読取可能なシードフィードスキャナーである。ただし、言うまでもなく画像読取装置10は、原稿Mの面を反転させる機構を有して読取部13により原稿Mの一方の面と他方の面とを順番に読取可能な構成であってもよい。あるいは、画像読取装置10は、読取部13とは別の読取部をカバー32内に有して、2つの読取部により原稿Mの両面を同時読取可能な構成であってもよい。
【0020】
表示部14は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイにより構成される。操作受付部15は、ユーザーからの操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンやタッチパネルである。むろん、タッチパネルは、表示部14の一機能として実現されるとしてもよい。
図2では省略しているが、表示部14や操作受付部15は、筐体におけるユーザーが視認や操作がし易い位置に設けられている。
【0021】
通信IF16は、画像読取装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。
図1の例では、画像読取装置10は、通信IF16を介して外部装置20と通信可能に接続している。画像読取装置10は、スキャナーとしての機能に加え、印刷機能やファクシミリ通信機能や電子メール通信機能等の複数機能を兼ね備えた、複合機であってもよい。
【0022】
外部装置20は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)や、サーバーや、スマートフォンや、タブレット型端末等である。
図1では、外部装置20の構成も簡易的に示しており、外部装置20は、外部装置20の制御を司る第2制御部21や、視覚情報を表示するための第2表示部22を含んでいる。本実施形態において、画像読取装置10の制御部11が実行するものとして説明する異常検出方法等の各種処理は、外部装置20が第2制御部21等のリソースを用いて、画像読取装置10から必要なデータを取得して実行するとしてもよい。
【0023】
図2に示すように、搬送路36は、本体部31の上を向く面である本体部上面31aと、カバー32の下を向く面であるカバー下面32aとの間に確保された隙間である。このような搬送路36は、本体部上面31a、カバー下面32aおよび各ローラー12a1,12a2,12a3,12b1,12b2,12b3により形成されている。
【0024】
図2には、搬送部12の一部を構成するローラーとして、搬送路36を挟んで相対するローラーの対を何組か示している。ローラー12a1およびローラー12b1によるローラー対を、第1ローラー対12a1,12b1と呼ぶ。ローラー12a2およびローラー12b2によるローラー対を、第2ローラー対12a2,12b2と呼ぶ。ローラー12a3およびローラー12b3によるローラー対を、第3ローラー対12a3,12b3と呼ぶ。ローラー12a1,12a2,12a3はカバー32に配設され、ローラー12b1,12b2,12b3は本体部31に配設されている。各ローラー対は、対を構成するローラーとローラーとの間に原稿Mを挟持して回転することにより原稿Mを搬送する。
【0025】
各ローラー対のうち最も上流の第1ローラー対12a1,12b1は、供給口34のやや下流の位置に配設されている。第1ローラー対12a1,12b1は、原稿トレイ33に載置された原稿Mの中から一枚の原稿Mを搬送路36へ取り込んで下流へ搬送する。第1ローラー対12a1,12b1よりも下流かつ読取部13よりも上流の位置に在る第2ローラー対12a2,12b2は、第1ローラー対12a1,12b1により搬送される原稿Mを、さらに下流へ搬送する。第2ローラー対12a2,12b2により搬送される原稿Mが搬送路36における読取部13の位置を通過する際に、原稿Mは読取部13により読み取られる。各ローラー対のうち最も下流の第3ローラー対12a3,12b3は、読取部13よりも下流に配設されている。第3ローラー対12a3,12b3は、第2ローラー対12a2,12b2により搬送される原稿Mを、さらに下流へ搬送し、排出口35から外部へ排出する。
【0026】
読取部13に対応して、本体部上面31aには光を透過する透明部としてのガラス板37が配設されている。ガラス板37は搬送路36に露出している。搬送路36内の光がガラス板37を介して本体部31内へ入射し、読取部13は、この入射した光をレンズ等の光学系を通じてイメージセンサーで受光することにより読み取りを行う。透明部の素材は、ガラスに限定せず、例えば、プラスチックであってもよい。
【0027】
ガラス板37と対向するカバー下面32aの位置には、背景部としての背景板38が設けられている。背景板38は、所定の色で塗られており、例えばグレー色である。背景板38は、カバー下面32aの一部であってもよいし、カバー下面32aに取り付けられた部材であってもよい。このように、読取部13は、ガラス板37を挟んで背景板38の反対側でガラス板37を介して読み取りを行う。搬送路36のうちガラス板37に対応する領域、つまりガラス板37と背景板38とで挟まれた領域が、読取部13による読取領域である。
【0028】
図3は、読取部13が有するレンズアレイ17とイメージセンサー18との関係性を示している。
図3では、図内上方にレンズアレイ17に正対する視線によるレンズアレイ17と、その奥のイメージセンサー18との位置関係を示し、図内下方に、レンズアレイ17に正対する視線に直交する視線によるレンズアレイ17とイメージセンサー18との位置関係を示している。レンズアレイ17は、所定方向Dsに複数のレンズ17aが並ぶことにより構成されており、イメージセンサー18は、方向Dsに複数の受光素子18aが並ぶことにより構成されている。受光素子18aは、光電変換素子である。方向Dsは、搬送方向Dfに交差する方向であり、レンズアレイ17およびイメージセンサー18の長手方向である。この長手方向を、主走査方向Dsとも呼ぶ。主走査方向Dsは、
図2において図面に垂直な方向である。搬送方向Dfと主走査方向Dsとは直交すると解してよい。
【0029】
イメージセンサー18は、ライン単位の画像データを生成して出力する処理を繰り返す。ライン単位の画像データとは、受光素子18a毎の読取値、つまり画素値が主走査方向Dsに対応して並ぶ画素列である。
図3の構成において、円形のレンズ17aの直径は、例えば約0.3mmであり、イメージセンサー18の主走査方向Dsの解像度、つまり1インチあたりの受光素子数は600dpiである。この場合、1つのレンズ17aに対応して主走査方向Dsに約7個の受光素子18aが並ぶ。
【0030】
図3の図内下方にレンズ17aと複数の受光素子18aとの間に記載した曲線は、レンズ17aを通じて各受光素子18aに集光される光量を例示している。この曲線が、受光素子18a毎に異なる受光量、すなわちレンズむらを表している。
図3の例によれば、一つのレンズ17aと複数の受光素子18aとの関係に注目すると、レンズ17aの中央部に対応する位置の受光素子18aは、レンズ17aの端部付近に対応する位置の受光素子18aよりも多くの光を受光する。従って、一つの受光素子18aに注目すると、この受光素子18aとレンズ17aとの位置関係が主走査方向Dsに沿って変化すると、この受光素子18aにおけるレンズむらも変化する。
本実施形態で検出する「ずれ量」は、主走査方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれ量である。
【0031】
2.異常検出処理:
図4は、制御部11がプログラム11eに従って実行する異常検出処理を、フローチャートにより示している。異常検出処理は、読取部13の読取により生成される画像における異常を検出する処理である。具体的には、紙粉やその他のゴミ等の異物の影響で画素値が異常値となっている異常画素を検出する処理である。制御部11は、例えば、操作受付部15や通信IF16を通じて、原稿Mのスキャン実行指示を受けたことを契機として、異常検出処理を開始する。
【0032】
ステップS100では、制御部11は、予め記憶された「基準背景画像データ」を取得する。基準背景画像データは、搬送路36に原稿Mが存在しない状態で読取部13が背景板38を読み取ることにより生成した、背景板38の読取値を画素毎に有する画像データであり、「第1背景画像データ」に該当する。ステップS100は、第1取得工程に該当する。例えば、基準背景画像データは、画像読取装置10を工場から出荷する前の製品組み立て工程において、生成され、制御部11が有するROM11b等の所定のメモリーに記憶される。従って、制御部11は、所定のメモリーに記憶された基準背景画像データを取得すればよい。
【0033】
基準背景画像データは、紙粉等の異物が画像読取装置10内に無い或いは殆ど無い一種の理想的な環境での読取により生成されたデータである。また、基準背景画像データは、1ライン分の画像データである。例えば、基準背景画像データは、読取部13が背景板38を繰り返し読み取ることにより繰り返し生成した複数のライン単位の画像データに基づいて、画素位置x毎に画素値を平均化して生成された画像データである。画素位置xは、画像処理において主走査方向Dsを表す方向として定義されたX軸方向における座標である。制御部11は、画像データを構成する各画素の画素位置xを、所定の原点(x=0)を基準にして把握する。原点は、例えば、読取部13が生成する画素列の両端のうち一方の端の画素位置である。
【0034】
ステップS110では、制御部11は、読取部13に背景板38の読取をさせることにより「背景画像データ」を取得する。背景画像データは、基準背景画像データと同様に、搬送路36に原稿Mが存在しない状態で読取部13が背景板38を読み取ることにより生成する、背景板38の読取値を画素毎に有する1ライン分の画像データである。背景画像データは「第2背景画像データ」に該当する。ステップS110は、第2取得工程に該当する。
【0035】
背景画像データの生成方法は、基準背景画像データの生成方法と同じである。ただし、ステップS110のタイミングと、基準背景画像データを生成したタイミングとでは、時期も画像読取装置10が置かれている環境も異なる。そのため、ステップS110のタイミングにおいては、基準背景画像データを生成したタイミングと比べて、レンズアレイ17とイメージセンサー18との位置関係が変化している可能性がある。レンズアレイ17とイメージセンサー18との位置関係の変化は、受光素子18aが受けるレンズむらに変化を与える。また、ステップS110のタイミングにおいては、画像読取装置10内に紙粉等やその他のゴミといった異物が存在することにより、背景画像データは、このような異物の影響を受けている可能性もある。従って、背景画像データを基準背景画像データと画素位置x毎に単純に比較して画素位置x毎に画素値の差分を得ても、得られた差分が異物の影響によるものかレンズむらの変化によるものかが解らない。
【0036】
ステップS120では、制御部11は、背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を設定する。特定画素範囲は、後述するステップS140のずれ量検出処理に用いる画素範囲である。本実施形態では、紙粉等の異物の影響を受けずに画素値が比較的安定している画素範囲を、特定画素範囲に設定する。
【0037】
そこで、制御部11は、背景画像データのうち、隣接する画素間の差分が所定値以下である画素が所定数連続する画素範囲を、特定画素範囲に設定する。画素間の差分とは、画素同士の画素値の差分である。読取値や画素値といった場合、それらは、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)毎の階調値である。また、公知の変換式によりRGBは輝度に変換することができる。一例として、制御部11は、背景画像データを構成する各画素が有する輝度の平均値に対する5%程度の値を、所定値とし、隣接する画素との輝度差がこの所定値以下である画素が所定数連続する画素範囲を、特定画素範囲に設定する。制御部11は、背景画像データ内に特定画素範囲を一つだけ設定してもよいが、ここでは、背景画像データ内に特定画素範囲を複数箇所設定するものとする。
【0038】
図5は、イメージセンサー18の構成例を示していている。イメージセンサー18は、複数の受光素子18aが主走査方向Dsに並ぶセンサーチップ19を、主走査方向Dsに複数連結して構成されている。
図5においては、センサーチップ19内の複数の小さな矩形の一つ一つが受光素子を表している。
図5では正確に示していないが、一つのセンサーチップ19は、例えば数百個の受光素子を有する。ステップS120では、制御部11は、背景画像データにおける各センサーチップ19の夫々に対応する画素範囲毎に、少なくとも一つ特定画素範囲を設定するとしてもよい。
【0039】
ステップS130では、制御部11は、ステップS100で取得した基準背景画像データの画素補間演算を行うことにより基準背景画像データを高解像度化し、さらに、ステップS110で取得した背景画像データの画素補間演算を行うことにより背景画像データを高解像度化する。ステップS130は補間工程に該当する。基準背景画像データを高解像度化した画像データを、「基準背景補間画像データ」と呼ぶ。基準背景補間画像データは「第3背景画像データ」に該当する。また、背景画像データを高解像度化した画像データを、「背景補間画像データ」と呼ぶ。背景補間画像データは「第4背景画像データ」に該当する。
【0040】
上述の例のように、イメージセンサー18の主走査方向Dsの解像度が600dpiである場合、基準背景画像データ、背景画像データの解像度も夫々600dpiである。ステップS130では、制御部11は、基準背景画像データおよび背景画像データの解像度を、例えば4倍にすることにより、夫々の解像度が2400dpiである基準背景補間画像データおよび背景補間画像データを生成する。
【0041】
基準背景画像データの画素補間演算と、背景画像データの画素補間演算とは、同じ方法なので、ここでは基準背景画像データの画素補間演算の具体例を説明する。制御部11は、600dpiの基準背景画像データを構成する画素間の補間位置に1画素を補間することにより1200dpiの基準背景画像データを生成し、その上で、1200dpiの基準背景画像データを構成する画素間の補間位置に1画素を補間することにより2400dpiの基準背景画像データ、つまり基準背景補間画像データを生成する。
【0042】
このような補間を行う場合、制御部11は、補間位置に隣接する隣接画素と、隣接画素を除く補間位置の近傍の画素と、を参照した重み付け加算により、補間位置に画素を補間する。例えば、X軸方向に連続する画素位置x=Nの画素と画素位置x=N+1の画素との中間点を新たな補間位置とする場合を想定する。この場合、制御部11は、補間位置にX軸方向マイナス側で隣接する画素位置x=Nと、X軸方向プラス側に隣接する画素位置x=N+1との各画素に加え、画素位置x=NにX軸方向マイナス側で隣接する画素位置x=N-1や、画素位置x=N+1のX軸方向プラス側に隣接する画素位置x=N+2の各画素も参照した重み付け加算により、補間を行う。X軸方向マイナス側とは、X軸の原点に近い方であり、X軸方向プラス側とは、X軸の原点から遠い方である。
【0043】
このような補間を行うことにより、補間位置を挟む隣接画素のみを参照した単純補間と比較して、補間後の画素位置に対してレンズむらの程度を精度よく表した補間結果を得ることができる。なお、制御部11は、基準背景画像データや背景画像データの画素補間演算として、例えば、スプライン補間等の多項式を用いた補間法を採用してもよい。
【0044】
ステップS140では、制御部11は、背景補間画像データにおける特定画素範囲を基準背景補間画像データに対して移動させて基準背景補間画像データと比較する比較処理を行うことにより、主走査方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれ量を検出する。ステップS140は、ずれ量検出工程に該当する。
【0045】
図6は、ステップS140によるずれ量検出の一例を説明するための図である。符号40は、基準背景補間画像データを示し、符号50は、背景補間画像データ内の特定画素範囲を示している。
図6において、一つ一つの矩形は、基準背景補間画像データ40や特定画素範囲50を構成する画素を表す。
【0046】
ステップS120では、ステップS130の画素補間演算前の背景画像データ内で特定画素範囲を設定した。
図6に示す特定画素範囲50は、ステップS120において背景画像データ内で設定した特定画素範囲がステップS130を経てX軸方向に高解像度化された結果としての画素範囲である。従って、背景画像データ内の特定画素範囲と、背景補間画像データ内の特定画素範囲とは、実質的に同じ範囲とみなしてよい。制御部11は、ステップS120を実行せずに、ステップS130の後に、背景補間画像データ内で特定画素範囲を設定してもよい。
【0047】
図6の例では、背景補間画像データのうち、X軸の原点(x=0)を基準とした画素位置x=Mから画素位置x=M+11までの連続する12個の画素が、一つの特定画素範囲50である。なお、
図6における“M”は、画素位置xを示す何らかの数字であり、
図2で原稿を示す“M”とは関係ない。制御部11は、先ず、ずれ量を0,-1,+1とした3通りの状態の夫々で、特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較する。
図6において、符号50の隣に括弧書きで記載した“-1”等の値は、ずれ量=0を基準としたずれ量を示している。ずれ量の単位は、ステップS130の画素補間演算後の画像データの解像度における1画素分のサイズである。上述の具体例によれば、ずれ量の単位は、1インチ×1/2400、である。
【0048】
制御部11は、ずれ量=0として特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較するときは、特定画素範囲50の各画素を、単に画素位置xが共通する画素同士で比較すればよい。特定画素範囲50の画素位置x=Mの画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=Mの画素と比較し、画素値の差分を算出する。同様に、特定画素範囲50の画素位置x=M+11の画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=M+11の画素と比較し、画素値の差分を算出する。制御部11は、このような基準背景補間画像データ40との比較を特定画素範囲50の画素毎に実行し、例えば、画素毎の比較により得た差分の絶対値の平均を、基準背景補間画像データ40との差分として取得する。
【0049】
制御部11は、ずれ量=-1として特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較するときは、特定画素範囲50の各画素を、X軸方向マイナス側に1画素移動させた状態で、基準背景補間画像データ40の各画素と比較する。特定画素範囲50の画素位置x=Mの画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=M-1の画素と比較し、画素値の差分を算出する。より詳細に言うと、特定画素範囲50の画素位置x=Mの画素を、一時的に画素位置x=M-1へ移動させた上で、基準背景補間画像データ40の同じ画素位置x=M-1の画素と比較する。同様に、特定画素範囲50の画素位置x=M+11の画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=M+10の画素と比較し、画素値の差分を算出する。制御部11は、このようにずれ量=-1とした状態でも、特定画素範囲50の各画素を基準背景補間画像データ40と比較し、比較により得た差分の絶対値の平均を、基準背景補間画像データ40との差分として取得する。
【0050】
制御部11は、ずれ量=+1として特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較するときは、特定画素範囲50の各画素を、X軸方向プラス側に1画素移動させた状態で、基準背景補間画像データ40の各画素と比較する。特定画素範囲50の画素位置x=Mの画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=M+1の画素と比較し、画素値の差分を算出する。より詳細に言うと、特定画素範囲50の画素位置x=Mの画素を、一時的に画素位置x=M+1へ移動させた上で、基準背景補間画像データ40の同じ画素位置x=M+1の画素と比較する。同様に、特定画素範囲50の画素位置x=M+11の画素であれば、基準背景補間画像データ40の画素位置x=M+12の画素と比較し、画素値の差分を算出する。制御部11は、このようにずれ量=+1とした状態でも、特定画素範囲50の各画素を基準背景補間画像データ40と比較し、比較により得た差分の絶対値の平均を、基準背景補間画像データ40との差分として取得する。
【0051】
制御部11は、ずれ量を0,-1,+1とした3通りの各状態で算出した特定画素範囲50と基準背景補間画像データ40との差分のうち、最小の差分に対応するずれ量を選択する。
図6において、符号50の隣に括弧書きで記載した“Yes/No”のうち“Yes”は、基準背景補間画像データ40との差分がより小さいことを意味する。つまり
図6の例では、ずれ量=0として算出した基準背景補間画像データ40との差分、ずれ量=-1として算出した基準背景補間画像データ40との差分、ずれ量=+1として算出した基準背景補間画像データ40との差分の中で、ずれ量=+1として算出した差分が最も小さかった。従って、制御部11は、ずれ量=+1を選択する。
【0052】
制御部11は、ずれ量=+1を選択した場合には、特定画素範囲50をX軸方向プラス側へ更に1画素移動させて同様の比較を行う。一方、制御部11は、ずれ量=-1を選択した場合には、特定画素範囲50をX軸方向マイナス側へ更に1画素移動させて同様の比較を行う。制御部11は、ずれ量=0を選択した場合には、ずれ量=0を検出結果として確定し、ステップS140を終える。
【0053】
上述のように、ずれ量=+1を選択した場合、制御部11は、ずれ量=+2として特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較する。つまり、ずれ量=0であるときよりも特定画素範囲50の各画素をX軸方向プラス側に2画素移動させた状態で、基準背景補間画像データ40の各画素と比較し、上述したように基準背景補間画像データ40との差分を取得する。そして、制御部11は、ずれ量=+2として算出した基準背景補間画像データ40との差分が、既に算出したずれ量=+1に対応する基準背景補間画像データ40との差分よりも小さければ、特定画素範囲50をX軸方向プラス側へ更に1画素移動させて同様の比較を行う。一方、制御部11は、ずれ量=+2として算出した基準背景補間画像データ40との差分が、ずれ量=+1として算出した基準背景補間画像データ40との差分以上であれば、ずれ量=+1とした位置で、基準背景補間画像データ40との差分の減少が止まったと言えるため、ずれ量=+1を検出結果として確定し、ステップS140を終える。
【0054】
図6の例では、ずれ量=+2として算出した基準背景補間画像データ40との差分は、ずれ量=+1として算出した基準背景補間画像データ40との差分よりも小さい場合を示している。従って
図6の例では、制御部11は、ずれ量=+3として特定画素範囲50を基準背景補間画像データ40と比較する。つまり、ずれ量=0であるときよりも特定画素範囲50の各画素をX軸方向プラス側に3画素移動させた状態で、基準背景補間画像データ40の各画素と比較して、上述したように基準背景補間画像データ40との差分を取得する。そして、制御部11は、ずれ量=+3として算出した基準背景補間画像データ40との差分が、既に算出したずれ量=+2に対応する基準背景補間画像データ40との差分よりも小さければ、特定画素範囲50をX軸方向プラス側へ更に1画素移動させて同様の比較を行う。一方、制御部11は、ずれ量=+3として算出した基準背景補間画像データ40との差分が、ずれ量=+2として算出した基準背景補間画像データ40との差分以上であれば、ずれ量=+2とした位置で、基準背景補間画像データ40との差分の減少が止まったと言えるため、ずれ量=+2を検出結果として確定し、ステップS140を終える。
図6は、ずれ量=+3として算出した基準背景補間画像データ40との差分が、ずれ量=+2として算出した基準背景補間画像データ40との差分よりも大きいために、ずれ量=+2を検出結果として確定してステップS140を終えた例である。
【0055】
このようにステップS140では、制御部11は、特定画素範囲50と基準背景補間画像データ40との比較と、特定画素範囲50と基準背景補間画像データ40との差分が減少する向きへの特定画素範囲50の移動とを繰り返し、この差分の減少が止まるまでの特定画素範囲50の移動量を、ずれ量として検出する。
【0056】
図6では、背景補間画像データ内の一箇所の特定画素範囲50を示しているが、特定画素範囲は、背景補間画像データ内においてX軸方向に離れて複数箇所に在る。従って、
図6を参照して説明した、特定画素範囲50の移動および基準背景補間画像データ40との比較は、全ての特定画素範囲について共通して行う処理である。制御部11は、一つのずれ量に対応する特定画素範囲と基準背景補間画像データ40との差分を、全ての特定画素範囲と基準背景補間画像データ40との比較に基づいて算出すればよい。
【0057】
ステップS150では、制御部11は、背景補間画像データの全体を、ステップS140で検出したずれ量に従って移動させることにより、基準背景補間画像データに対する背景補間画像データの位置を調整する。例えば、ステップS140で検出したずれ量が「+2」であれば、制御部11は、背景補間画像データの全体を、ずれ量=0の状態からX軸方向プラス側へ2画素分ずらす。ステップS150による移動後の背景補間画像データは、「第5背景画像データ」に該当する。
【0058】
ステップS160では、制御部11は、ステップS150による移動後の背景補間画像データと基準背景補間画像データとを、そのとき画素位置xが共通する画素同士で画素値を比較することにより、背景補間画像データの各画素について、異常値を有する異常画素であるか否かを判定する。制御部11は、このような比較をしたときの画素値の差分が所定のしきい値を超える背景補間画像データの画素を、異常画素と検出すればよい。ステップS150による移動後の背景補間画像データを基準背景補間画像データと比較することにより、レンズむらの程度が同じ或いはほぼ同等である画素値同士を比較することができるため、レンズむらの影響を排除して、紙粉等の異物の影響を受けた異常画素であるか否かを判定することができる。ステップS160は、異常検出工程に該当する。制御部11は、ステップS160を実行して、
図4のフローチャートを終了する。
【0059】
言うまでもなく、制御部11は、ステップS160における異常画素の検出結果を反映した処理を、ステップS160の後に実行することができる。
例えば、制御部11は、ステップS160の結果、異常画素を検出した場合には、その旨を外部へ通知してもよい。具体的には、異常画素が検出された旨をユーザーに通知するユーザーインターフェイス(UI)画面を、表示部14や、外部装置20の第2表示部22に表示させる。このようなUI画面は、メッセージやイラストを含み、UI画面を視認したユーザーは、カバー32を開けてガラス板37を清掃する等、紙粉等の異物を除去するための具体的行動を採ることができる。言うまでもなく、UI画面は、検出された異常画素に応じて異物が付着していると予想されるガラス板37の領域の、位置や数や大きさ等をユーザーに通知する内容を含んでいてもよい。
【0060】
また、制御部11は、ステップS160の後に、搬送部12および読取部13を制御して、原稿トレイ33に載置された原稿Mの搬送および読取を実行することができる。そして、原稿Mを読取部13が読み取ることにより生成した画像データである原稿画像データに対して、制御部11は、ステップS160における異常画素の検出結果に応じた補正を行うことができる。つまり、原稿画像データを構成する画素のうち、ステップS160による異常画素の検出結果から画素位置xが異常画素の位置に該当すると特定できる画素については、紙粉等の異物の影響による異常値を除去するような補正を行う。例えば、制御部11は、原稿画像データを構成する画素のうち、画素位置xが異常画素の位置に該当すると特定できた画素については、その画素値を、近隣の複数の画素を参照した補間演算により生成した画素値で置換すればよい。
【0061】
3.まとめ:
このように本実施形態によれば、画像読取装置10は、複数の受光素子18aが所定方向Dsに並ぶイメージセンサー18と、イメージセンサー18へ光を導く複数のレンズ17aが並ぶレンズアレイ17と、を有する読取部13と、読取部13による読取領域の背景となる背景部と、制御部11と、を備える。そして、制御部11は、予め記憶された、読取部13による背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得し、読取部13に背景部の読取をさせることにより背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得し、第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する。さらに、制御部11は、第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を第3背景画像データに対して移動させて第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれ量を検出し、第4背景画像データをずれ量に従って移動させた第5背景画像データを第3背景画像データと比較することにより、第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する。
【0062】
前記構成によれば、制御部11は、第1背景画像データと第2背景画像データとをそれぞれ高解像度化した第3背景画像データと第4背景画像データとを比較する。このとき、第4背景画像データの特定画素範囲を第3背景画像データに対して移動させて比較する。この結果、前記ずれ量を、より正確に検出することができる。例えば、方向Dsの解像度が600dpiであるイメージセンサー18が生成した第1背景画像データと第2背景画像データとをそれぞれX軸方向において4倍に高解像度化して、第3背景画像データと第4背景画像データとを2400dpiの画像データとすれば、1インチ×1/2400という微小な単位で前記ずれ量を検出することができる。そして、制御部11は、第5背景画像データを第3背景画像データと比較することにより、方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれが在る状態であってもレンズむらの影響を実質的に排除して、紙粉等の影響による異常画素の検出を正確に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、制御部11は前記画素補間演算において、補間位置に隣接する隣接画素と、隣接画素を除く補間位置の近傍の画素と、を参照した重み付け加算により補間位置に画素を生成するとしてもよい。
前記構成によれば、補間後の画素位置に対してレンズむらの程度を精度よく表した補間結果としての第3背景画像データと第4背景画像データとを得ることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、制御部11は前記比較処理において、特定画素範囲と第3背景画像データとの比較と、特定画素範囲と第3背景画像データとの差分が減少する向きへの特定画素範囲の移動とを繰り返し、前記差分の減少が止まるまでの特定画素範囲の移動量を前記ずれ量として検出するとしてもよい。
前記構成によれば、特定画素範囲と第3背景画像データとの差分が最小化したときの前記移動量を特定することにより、第1背景画像データが生成されたときの画像読取装置10の状態を基準とした現在の前記ずれ量を正確に検出することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、制御部11は、隣接する画素間の差分が所定値以下である画素が所定数連続する画素範囲を特定画素範囲に設定するとしてもよい。
前記構成によれば、第2背景画像データや第4背景画像データの中で、紙粉等の異物の読取値を有するような画素を避けて画素値が安定している画素範囲を特定画素範囲に設定することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、イメージセンサー18は、複数の受光素子18aが所定方向Dsに並ぶセンサーチップ19を所定方向Dsに複数連結して構成されており、制御部11は、一つのセンサーチップ19に対応する画素範囲毎に少なくとも一つの特定画素範囲を設定する、としてもよい。
複数のセンサーチップ19は、光電変換特性が互いに異なる場合がある。一つのセンサーチップ19に対応する画素範囲毎に少なくとも一つの特定画素範囲を設定し、各特定画素範囲を第3背景画像データと比較することにより、第1背景画像データが生成されたときの画像読取装置10の状態を基準とした現在の前記ずれ量として、より妥当な値を検出することができる。
【0067】
本実施形態は画像読取装置10以外のカテゴリーの発明も開示する。
複数の受光素子18aが所定方向Dsに並ぶイメージセンサー18とイメージセンサー18へ光を導く複数のレンズ17aが並ぶレンズアレイ17とを有する読取部13と、読取部13による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置10が生成する画像における異常を検出する異常検出方法は、予め記憶された、読取部13による背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得工程と、読取部13に背景部の読取をさせることにより背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得工程と、第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間工程と、第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を第3背景画像データに対して移動させて第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、所定方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれ量を検出するずれ量検出工程と、第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを第3背景画像データと比較することにより、第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出工程と、を有する。
【0068】
複数の受光素子18aが所定方向Dsに並ぶイメージセンサー18とイメージセンサー18へ光を導く複数のレンズ17aが並ぶレンズアレイ17とを有する読取部13と、読取部13による読取領域の背景となる背景部と、を備える画像読取装置10が生成する画像における異常を検出する異常検出プログラム11eは、予め記憶された、読取部13による背景部の読取値を画素毎に有する第1背景画像データを取得する第1取得機能と、読取部13に背景部の読取をさせることにより背景部の読取値を画素毎に有する第2背景画像データを取得する第2取得機能と、第1背景画像データの画素補間演算を行うことにより第1背景画像データを高解像度化した第3背景画像データを生成し、かつ、第2背景画像データの画素補間演算を行うことにより第2背景画像データを高解像度化した第4背景画像データを生成する補間機能と、第4背景画像データの一部の複数画素からなる特定画素範囲を第3背景画像データに対して移動させて第3背景画像データと比較する比較処理を行うことにより、所定方向Dsにおけるレンズアレイ17に対するイメージセンサー18のずれ量を検出するずれ量検出機能と、第4背景画像データを前記ずれ量に従って移動させた第5背景画像データを第3背景画像データと比較することにより、第5背景画像データの各画素について異常値を有する異常画素であるか否かを判定する異常検出機能と、をプロセッサーであるCPU11aに実行させる。
【0069】
さらに本実施形態の一つとして、制御部11は、前記ずれ量が前記ずれ量に対する所定のしきい値を超える場合に外部へ警告を行う、としてもよい。つまり、制御部11は、ステップS140で検出したずれ量が所定のしきい値を超える場合に警告を行う。警告を行うタイミングは、ステップS140の後であってもよいし、ステップS160の後であってもよいし、ステップS160の後に制御部11が原稿画像データを取得した後であってもよい。具体的には、制御部11は、警告画面を表示部14や外部装置20の第2表示部22に表示させる。
【0070】
図7は、表示部14に表示された警告画面60の例である。警告画面60はメッセージ61を含んでいる。メッセージ61は、例えば「レンズとイメージセンサーとのずれ量が大き過ぎます。」といった文字列を含んでいる。メッセージ61は、ステップS140で検出されたずれ量を示す数値や、製品のメンテナンスを行うべき旨のメッセージを含んでいてもよい。警告画面60を視認したユーザーは、製品に対して必要な修理を行ったり、サービスマンに修理を依頼したりすることができる。
【0071】
画像読取装置10は、
図2に記載したようなシートフィードスキャナーではなく、いわゆるフラットベッドスキャナーでもよい。つまり、透明部としてのガラス板等による原稿台に載置された原稿Mを原稿台と背景部とで挟んだ状態で、原稿台の背景部とは反対側で読取部13が移動しながら原稿Mや背景部を読取可能な構成であってもよい。この場合、搬送部12は不要である。
【符号の説明】
【0072】
10…画像読取装置、11…制御部、11e…プログラム、12…搬送部、13…読取部、14…表示部、15…操作受付部、16…通信IF、17…レンズアレイ、17a…レンズ、18…イメージセンサー、18a…受光素子、19…センサーチップ、20…外部装置、21…第2制御部、22…第2表示部、31…本体部、31a…本体部上面、32…カバー、32a…カバー下面、33…原稿トレイ、34…供給口、35…排出口、36…搬送路、37…ガラス板、38…背景板、40…基準背景補間画像データ、50…特定画素範囲、60…警告画面、61…メッセージ、M…原稿