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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】音波センサーユニット、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04R1/02 330
B41J2/01 303
B41J2/01 451
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027008
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021132313
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慎也
(72)【発明者】
【氏名】村山 平
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160104(JP,A)
【文献】特開2018-133622(JP,A)
【文献】特開2015-118028(JP,A)
【文献】特開2006-003278(JP,A)
【文献】特開2002-336248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側圧電素子及び前記送信側圧電素子に接続される送信側振動面を有しターゲットに音波を送信可能な送信素子と、受信側圧電素子及び前記受信側圧電素子に接続される受信側振動面を有し前記ターゲットから反射される音波を受信可能な受信素子とを有する素子基板と、
前記素子基板に対向し、前記送信側圧電素子及び前記受信側圧電素子を封止する封止基板と、
を含む音波センサーと、
前記封止基板から前記素子基板に向かう第1方向において、前記封止基板に対して前記素子基板と反対側に配置され、前記封止基板に固定されるホルダーと、
を備え、
前記ホルダーには、前記第1方向に前記ホルダーを貫く孔が形成され、
前記第1方向から見た平面視において、前記受信側振動面は前記孔を構成する前記ホルダーの壁面の内側に配置されることを特徴とする音波センサーユニット。
【請求項2】
前記第1方向に向かうに従って前記孔が広くなるように、前記壁面が湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の音波センサーユニット。
【請求項3】
前記ホルダーは、粘弾性を有する粘着テープを介して前記封止基板に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の音波センサーユニット。
【請求項4】
前記音波センサーは、複数の前記送信素子が前記受信素子を囲むアレイ構造を有し、
前記第1方向から見た平面視において、前記孔の縁は複数の前記送信側振動面に重なることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の音波センサーユニット。
【請求項5】
前記第1方向において、前記ホルダーの前記封止基板に固定される面と反対側の非固定面には、前記複数の前記送信素子を囲むように前記非固定面から突出する凸部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の音波センサーユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の音波センサーユニットと、
前記ターゲットに記録する記録ヘッドと、
前記音波センサーユニット及び前記記録ヘッドが取り付けられるキャリッジと、
を備えることを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波センサーユニット、及び当該音波センサーユニットを備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、密閉構造を有する素子収容ケースの中に超音波素子(音波素子)が収容される超音波センサー(音波センサーユニット)が知られている(特許文献1)。
音波素子は、電気信号を音波振動に変換する送信用素子(送信素子)と音波振動を電気信号に変換する受信用素子(受信素子)とを有する。素子収容ケースはギャップ空間を隔てて音波素子に対向配置される天板部を有し、天板部に音波素子による音波の送信または受信の際に音波振動するダイアフラム部が設けられている。すなわち、ダイアフラム部は、送信素子に対応し音波を送信する送信側ダイアフラム部と、受信素子に対応し音波を受信する受信側ダイアフラム部とを有する。
かかる構成によって、送信素子の音波振動は、ギャップ空間と送信側ダイアフラム部とを介して外部空間に送信され、さらに、外部空間の音波振動は、受信側ダイアフラム部とギャップ空間とを介して受信素子に伝搬される。このように、特許文献1に記載の音波センサーユニットでは、音波素子とダイアフラム部との間のギャップ空間と、ダイアフラム部の外側の外部空間との間で、空気等の気体の授受がない状態で、音波振動の授受が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の音波センサーユニットでは、送信素子の音波振動が、素子収容ケースの中を伝搬し、または、素子収容ケースの壁面によって反射され、音波振動を電気信号に変換する受信素子に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
音波センサーユニットは、送信側圧電素子及び前記送信側圧電素子に接続される送信側振動面を有しターゲットに音波を送信可能な送信素子と、受信側圧電素子及び前記受信側圧電素子に接続される受信側振動面を有し前記ターゲットから反射される音波を受信可能な受信素子とを有する素子基板と、前記素子基板に対向し、前記送信側圧電素子及び前記受信側圧電素子を封止する封止基板と、を含む音波センサーと、前記封止基板から前記素子基板に向かう第1方向において、前記封止基板に対して前記素子基板と反対側に配置され、前記封止基板に固定されるホルダーと、を備え、前記ホルダーには、前記第1方向に前記ホルダーを貫く孔が形成され、前記第1方向から見た平面視において、前記受信側振動面は前記孔を構成する前記ホルダーの壁面の内側に配置される。
【0006】
記録装置は、上記音波センサーユニットと、前記ターゲットに記録する記録ヘッドと、前記音波センサーユニット及び前記記録ヘッドが取り付けられるキャリッジと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る記録装置の概略図。
図2】実施形態1に係る音波センサーユニットの斜視図。
図3】音波センサーの状態を示す平面図。
図4】音波センサーの斜視図。
図5】音波素子制御部の状態を示すブロック図。
図6】ホルダーの斜視図。
図7】実施形態1に係る音波センサーユニットの断面図。
図8】ホルダーの他の斜視図。
図9】Z方向から見た音波センサーユニットの平面図。
図10】比較例に係る音波センサーユニットの断面図。
図11】実施形態1に係る音波センサーユニットの断面図。
図12】実施形態2に係る音波センサーユニットが有するホルダーの斜視図。
図13】実施形態2に係る音波センサーユニットの断面図。
図14】実施形態2に係る音波センサーユニットが有する他のホルダーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態1
1.1記録装置の概要
図1に示すように、実施形態1に係る記録装置1は、長尺の媒体Mを扱うラージフォーマットプリンターである。記録装置1は、脚部11と、脚部11に支持された筐体部12と、筐体部12の両端に取り付けられたセット部20及び巻取部25と、筐体部12の一方の端に取付けられた操作部14とを備えている。媒体Mとしては、例えば、上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙、合成紙、及びPET(Polyethylene terephthalate)やPP(polypropylene)などから成るフィルムなどを使用することができる。
以降の説明では、記録装置1の幅方向(媒体Mの幅方向)をX方向とし、記録装置1の高さ方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に交差する記録装置1の奥行方向をY方向とする。また、方向を示す矢印の先端側を+方向とし、方向を示す矢印の基端側を-方向とする。-Z方向は重力方向であり、X方向とY方向とに沿って配置される平面(XY平面)は水平面である。
なお、媒体Mは本願におけるターゲットの一例である。-Z方向は本願における第1方向の一例である。-Z方向から見ることは、本願における第1方向から見た平面視の一例であり、以降、Z方向から見た平面視と称す。
さらに、以降の説明では、+X方向及び-X方向を走査方向Xと称し、+Y方向を搬送方向Yと称す。媒体Mの搬送方向はセット部20から巻取部25までの搬送経路の各点において変化するが、搬送方向Yは、後述する印刷部30近傍において媒体Mが搬送される方向である。
【0009】
筐体部12の内部には、長尺の媒体Mに印刷する印刷部30と、記録装置1の各部を制御する制御部10とが設けられている。印刷部30は、走査方向Xに移動可能なキャリッジ34と、キャリッジ34に取り付けられ媒体Mに記録する記録ヘッド31と、媒体Mを搬送方向Yに搬送可能な搬送部16と、記録ヘッド31のノズル形成面32に対向配置されるプラテン33とを有する。制御部10は、音波素子7を制御する音波素子制御部9を有する。
キャリッジ34には、記録ヘッド31の他に音波センサーユニット2が取り付けられている。また、音波センサーユニット2及び記録装置1は、空気中に設置されている。
このように、本実施形態に係る記録装置1は、音波センサーユニット2と、媒体Mに記録する記録ヘッド31と、音波センサーユニット2及び記録ヘッド31が取り付けられるキャリッジ34とを有する。
【0010】
プラテン33に対して搬送方向Yの上流側には上流側媒体支持部22が配置され、プラテン33に対して搬送方向Yの下流側には下流側媒体支持部23が配置されている。長尺の媒体Mは、上流側媒体支持部22とプラテン33と下流側媒体支持部23とによって支持されながら、搬送部16によって上流側媒体支持部22から下流側媒体支持部23に向かう方向(搬送方向Y)に搬送される。
【0011】
媒体Mは、セット部20に収納されたロール体Rから巻き解かれ、給送口13から筐体部12の内部に給送される。セット部20から給送される媒体Mは、上流側媒体支持部22によって支持されながら、搬送部16に案内される。搬送部16に案内された媒体Mは、搬送部16によってプラテン33に向けて搬送される。
媒体Mがプラテン33によって支持された状態で、記録ヘッド31から媒体Mにインクが吐出されることよって、媒体Mに画像が形成される。画像が形成された媒体Mは、下流側媒体支持部23によって支持されながら、排出口15から筐体部12の外に排出され、巻取部25によってロール状に巻き取られる。
【0012】
上流側媒体支持部22にはヒーター27が取り付けられ、下流側媒体支持部23にはヒーター28が取り付けられ、図示を省略するがプラテン33にもヒーターが取り付けられている。ヒーター27,28は、例えばチューブヒーターである。
媒体Mに吐出されたインクを速やかに乾燥させるために、プラテン33は、ヒーターによって室温から所定の温度に加熱されている。ヒーター27は、上流側媒体支持部22を介して、媒体Mの温度が室温から室温よりも大きい所定の温度となるように徐々に媒体Mの温度を増加させる。ヒーター28は、下流側媒体支持部23を介して、媒体Mの温度を所定の温度よりも高い温度まで増加させ、媒体Mが巻取部25に巻き取られる前に、媒体Mに吐出されたインクを乾燥させる。
【0013】
搬送部16は、記録ヘッド31に対して搬送方向Yの上流側に配置され、駆動ローラー17と従動ローラー18とを有している。従動ローラー18は、媒体Mを介して駆動ローラー17に圧接され、従動回転する。駆動ローラー17は、従動ローラー18との間で媒体Mを挟持する。駆動ローラー17は、不図示のモーターなどの動力源と直接的或いは間接的に連結され、動力源から駆動力が伝達される。駆動ローラー17が回転駆動することにより、媒体Mが搬送方向Yに搬送される。
【0014】
操作部14は、例えばタッチパネルを有する液晶表示装置で構成される。作業者は、操作部14によって、記録装置1の各種設定を行うことができる。
キャリッジ34は、走査方向Xに延在するガイド軸35によって支持され、ガイド軸35が延在する方向(走査方向X)に移動可能である。キャリッジ34に取り付けられる記録ヘッド31と音波センサーユニット2とは、キャリッジ34と一緒に走査方向Xに移動可能である。
【0015】
音波素子制御部9は、音波センサーユニット2の信号に基づき、音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を算出する。制御部10は、音波素子制御部9の算出結果に基づき、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔を算出する。さらに、制御部10は、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔が所定の間隔に維持されるように、Z方向におけるプラテン33とキャリッジ34との少なくとも一方の位置を調整する。例えば、制御部10は、プラテン33とキャリッジ34との少なくとも一方を+Z方向または-Z方向に移動させる不図示の移動機構を制御する。
記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔が所定の間隔に維持されると、記録ヘッド31から媒体Mに対して吐出されるインクの飛行距離が所定の距離に維持され、記録ヘッド31から吐出されるインクが媒体Mの目標位置に着弾し、媒体Mに形成される画像の品位が高められる。
【0016】
1.2音波センサーユニットの概要
図2に示すように、音波センサーユニット2は、音波センサー3と、音波センサー3と音波素子制御部9とを接続する配線基板4と、音波センサー3を支持するホルダー6とを有する。
配線基板4は、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)で構成され、可撓性を有する。以降、後述する素子基板40の第1辺401がX方向に沿って配置されるとともに、第1辺401と交差する第2辺402がY方向に沿って配置された状態で、各構成要素の詳細を説明する。
【0017】
図3に示すように、音波センサー3には、互いに交差するX方向及びY方向に沿って、合計9個の音波素子7が2次元アレイ状に配置されている。例えば、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とした場合、音波センサー3には、音波素子7が3行3列にマトリクス状に配列されている。
9個の音波素子7のうち中心に位置する音波素子7が、受信素子71である。9個の音波素子7のうち受信素子71の周囲に配置される8個の音波素子7が、送信素子72である。このように、音波センサー3は、複数の送信素子72が受信素子71を囲むアレイ構造を有する。
【0018】
図3及び図4に示すように、音波センサー3は、+Z方向において順に配置される素子基板40と、支持壁44と、封止基板45とを有する。素子基板40は、+Z方向において順に配置される本体部41と、支持膜42と、圧電素子50とを有する。
本体部41は、例えばSi等の半導体基板により構成される。本体部41は、隔壁部41Bと、本体部41を貫通する開口部41Aとを有する。隔壁部41Bによって囲まれた領域が、開口部41Aである。本体部41には、X方向に長い複数の開口部41AがY方向に並んで設けられている。
支持膜42は、例えばSiO2及びZrO2の積層体等により構成され、弾性変形可能である。Z方向における支持膜42の厚み寸法は、Z方向における本体部41の厚み寸法に対して十分小さい。
支持壁44は、例えば樹脂により構成され、Y方向に延在する部材である。複数の支持壁44が、X方向において並んで設けられている。
【0019】
支持膜42の一方の面は本体部41の隔壁部41Bに接合され、支持膜42の他方の面は支持壁44に接合されている。
支持膜42における隔壁部41Bと支持壁44とのいずれかに接合される部分は、弾性変形が抑制される。支持膜42における隔壁部41Bと支持壁44との両方に接合されない部分は、弾性変形可能であり、Z方向に振動可能な振動面43になる。
図4に一点鎖線で図示されるように、支持膜42における隔壁部41Bと支持壁44とによって区画される部分が、Z方向に振動可能な振動面43になる。
【0020】
音波素子7は、Z方向に振動可能な振動面43と、振動面43に接続される圧電素子50とを有する。Z方向から見た平面視において、圧電素子50は振動面43の内側に配置される。また、振動面43が形成される領域は、音波素子7が形成される領域である。このため、図4において一点鎖線で図示される振動面43が形成される領域(隔壁部41Bと支持壁44とによって区画される領域)が、音波素子7が形成される領域になる。
隔壁部41Bと支持壁44とによって区画される領域の中に音波素子7が形成されると、隣の音波素子7の影響(クロストークの影響)が隔壁部41Bと支持壁44とによって抑制され、9個の音波素子7がそれぞれ正常に動作するようになる。
【0021】
圧電素子50は、支持膜42側から順に積層される下部電極51と圧電膜52と上部電極53とによって構成される。下部電極51が振動面43に接続される。振動面43の振動が下部電極51を介して圧電膜52に伝達され、圧電膜52の振動が下部電極51を介して振動面43に伝達される。
下部電極51はX方向に延在し、上部電極53はY方向に延在し、圧電膜52は下部電極51と上部電極とが重なった9つの部分に独立して配置される。Z方向から見た平面視において、下部電極51と圧電膜52と上部電極53とが重なった部分が圧電素子50である。圧電素子50は、撓み振動モードの圧電アクチュエーターである。
【0022】
下部電極51と上部電極53との間に所定周波数の矩形波電圧、すなわち駆動信号が印加されると、圧電膜52が収縮または伸張して振動面43が振動し、振動面43から媒体Mに向けて音波が送信される。さらに、振動面43から送信された音波は、媒体Mによって反射される。
媒体Mによって反射された音波によって振動面43が振動すると、圧電膜52のZ方向において電位差が発生し、下部電極51と上部電極53との間に電位差が発生する。下部電極51と上部電極53との間に発生する電位差を検出することによって、受信した音波を検出することができる。
【0023】
下部電極51は、X方向に沿って直線状に形成されている。X方向における下部電極51の両端部には、配線基板4に接続される駆動端子51Aが設けられる。
上部電極53は、Y方向に沿って直線状に形成されている。上部電極53の±Y方向側の端部は共通電極線53Aに接続される。共通電極線53Aは、X方向に複数配置される各上部電極53同士を結線する。X方向における共通電極線53Aの端部には、配線基板4に接続される共通端子53Bが設けられている。
駆動端子51A及び共通端子53Bは、それぞれ配線基板4を経由して駆動回路90に接続される。駆動端子51Aには、駆動回路90から駆動信号が入力される。共通端子53Bには、駆動回路90から所定の基準電位が印加される。
【0024】
封止基板45は、Si等の半導体基板やガラスエポキシ等の絶縁体基板によって構成され、素子基板40に対向配置される。Z方向から見た平面視において、封止基板45と素子基板40とは略重なる。封止基板45を設けることによって、素子基板40が補強され、素子基板40の機械的強度が高められる。
なお、封止基板45の材質や厚みは、音波素子7の周波数特性に影響を及ぼすため、音波素子7にて送受信する音波の中心周波数に基づいて設定することが好ましい。
【0025】
封止基板45には、素子基板40に対向する面から、支持壁44に向かって突出する梁部46が設けられている。梁部46は、支持壁44に接合される。これにより、封止基板45と振動面43との間に所定寸法のギャップが設けられ、振動面43の振動が阻害されなくなる。
封止基板45は、素子基板40に対向し、受信側圧電素子50A(図2参照)及び送信側圧電素子50B(図2参照)を封止する。詳しくは、圧電素子50(受信側圧電素子50A、送信側圧電素子50B)は、支持膜42と支持壁44と梁部46と封止基板45とによって密封された空間の中に配置される。密閉された空間の中には外気中の水分が侵入しにくいので、水分による圧電素子50の劣化が抑制され、音波素子7の信頼性が高められる。
【0026】
図5に示すように、音波素子制御部9は、音波素子7を駆動させる駆動回路90と、演算部97とを含んで構成されている。
駆動回路90は、音波素子7の駆動を制御するためのドライバー回路であり、基準電位回路91と、切替回路92と、送信回路93と、受信回路94とを有する。
基準電位回路91は、素子基板40に形成される上部電極53の共通端子53Bに接続され、上部電極53に基準電位を印加する。
切替回路92は、素子基板40に形成される下部電極51の駆動端子51Aと、送信回路93と、受信回路94とに接続される。切替回路92は、スイッチング回路により構成されており、各駆動端子51Aのそれぞれと送信回路93とを接続する送信接続、及び、各駆動端子51Aのそれぞれと受信回路94とを接続する受信接続を切り替える。
【0027】
送信回路93は、切替回路92及び演算部97に接続される。送信回路93は、切替回路92が送信接続に切り替えられた際に、演算部97の制御に基づいて、圧電素子50にパルス波形の駆動信号を出力し、音波素子7から媒体Mに向けて音波を送信させる。
受信回路94は、切替回路92及び演算部97に接続される。受信回路94は、切替回路92が受信接続に切り替えられた際に、媒体Mによって反射された音波に起因する下部電極51と上部電極53との間の電位差を受信し、演算部97に送信する。演算部97は、受信回路94からの信号に基づき、音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を算出する。
【0028】
音波素子制御部9は、3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のうち中央に位置する音波素子7が媒体Mによって反射された音波を受信し、当該中央に位置する音波素子7の周辺に位置する音波素子7が媒体Mに向けて音波が送信するように、3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のそれぞれを制御する。
本実施形態では、3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のうち中央に位置する音波素子7が音波を受信可能な受信素子71になり、当該中央に位置する音波素子7の周辺に位置する音波素子7が音波を送信可能な送信素子72になる。このような配置を採用することで、媒体Mの表面から振動面43を離間させて媒体Mを検出する場合、複数の送信素子72から送信される音波が合成されて音波の強度が増加し、強度が増加した音波を媒体Mの表面に入射させることができる。これにより、媒体Mの表面から反射する音波の強度もノイズに対して十分大きくなり、中央に配置された1つの受信素子71による音波の受信の精度を向上することができる。
【0029】
3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のうち中央に位置する音波素子7において、当該音波素子7の振動面43が受信側振動面43Aになり、当該音波素子7の圧電素子50が受信側圧電素子50Aになる。当該中央に位置する音波素子7の周辺に位置する音波素子7において、当該音波素子7の振動面43が送信側振動面43Bになり、当該音波素子7の圧電素子50が送信側圧電素子50Bになる。
受信素子71は、受信側圧電素子50A及び受信側圧電素子50Aに接続される受信側振動面43Aを有する。送信素子72は、送信側圧電素子50B及び送信側圧電素子50Bに接続される送信側振動面43Bを有する。
このように、素子基板40は、受信側圧電素子50A及び受信側圧電素子50Aに接続される受信側振動面43Aを有し媒体Mから反射される音波を受信可能な受信素子71と、送信側圧電素子50B及び送信側圧電素子50Bに接続される送信側振動面43Bを有し媒体Mに音波を送信可能な送信素子72とを有する。
【0030】
なお、3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のうち、どの音波素子7を受信素子71にし、どの音波素子7を送信素子72にするのかを任意に設定できる。
例えば、音波素子制御部9は、3行3列にマトリクス状に配列される音波素子7のうち中央に位置する音波素子7を送信素子72にし、当該中央に位置する音波素子7の周辺に位置する音波素子7を受信素子71にすることができる。このような配置を採用することで、媒体Mの表面に振動面43を密着させて媒体Mを検出する場合、中央に配置された1つの送信素子72から音波が送信される。これにより、媒体Mの表面が曲面を有する場合であっても、曲面で複数の方向に反射された複数の音波を、複数の受信素子71によって受信することで、受信の精度を向上することができる。
【0031】
図6は、音波センサー3が載置される側から見たホルダー6の斜視図である。図7は、図6のA─A線に沿って切断した音波センサーユニット2の断面図である。図8は、音波センサー3が載置される側と反対側から見たホルダー6の斜視図である。
また、図6では、音波センサー3が二点鎖線で図示されている。図7では、受信側振動面43A(受信素子71)にハッチングが施され、送信側振動面43B(送信素子72)に網掛けが施されている。また、図7では、支持壁44の図示が省略されている。
【0032】
図6及び図7に示すように、ホルダー6は、金型の中に熱可塑性樹脂を流し込むことによって形成される樹脂の成形体である。ホルダー6は、封止基板45から素子基板40に向かう-Z方向において、封止基板45に対して素子基板40と反対側に配置され、封止基板45に固定される。
ホルダー6は、音波センサー3が支持される支持部68と、キャリッジ34に固定される固定部69とを有する。ホルダー6では、固定部69と、支持部68と、固定部69とが+X方向に沿って順に配置される。
支持部68は、音波センサー3が載置される載置面68aを有する。音波センサー3における封止基板45は、粘弾性を有する粘着テープ5によってホルダー6の載置面68aに接着され、ホルダー6の載置面68aに固定されている。換言すれば、ホルダー6は、粘弾性を有する粘着テープ5を介して封止基板45に固定されている。
このように、音波センサーユニット2は、封止基板45とホルダー6とが粘弾性を有する粘着テープ5によって接着される構成を有する。
なお、載置面68aは、本願におけるホルダーの封止基板に固定される面の一例である。
【0033】
固定部69には、ネジ(図示省略)が差し込まれるネジ孔65が設けられている。音波センサー3がホルダー6に固定された状態で、ネジ孔65にネジを差し込み、音波センサー3が固定されたホルダー6をネジによってキャリッジ34に固定する。
支持部68には、ホルダー6を-Z方向に貫く貫通孔60と、配線基板4が挿通される接続孔64とが設けられている。すなわち、ホルダー6には、-Z方向にホルダー6を貫く貫通孔60が形成されている。貫通孔60の-Z方向側の端が貫通孔60の縁60aである。また、貫通孔60の縁60aは、貫通孔60を形成(構成)する壁面61の-Z方向側の端であると言い換えることができる。
なお、貫通孔60は、本願における孔の一例である。
【0034】
貫通孔60は、Z方向に沿った壁面61で囲まれている。換言すれば、ホルダー6において壁面61で囲まれた部分が、-Z方向にホルダー6を貫く貫通孔60である。本実施形態では、封止基板45から素子基板40に向かう-Z方向に向かうに従って、貫通孔60が広くなるように、貫通孔60を構成する壁面61が湾曲している。
【0035】
図8に示すように、ホルダー6は、封止基板45が固定される面(載置面68a)と反対側に非固定面68bを有する。非固定面68bはXY平面(水平面)に対して平行に配置される。非固定面68bには、非固定面68bから+Z方向に突出する凸部67が形成されている。Z方向から見た平面視において、音波センサー3に形成される複数の送信素子72と受信素子71とは、非固定面68bから+Z方向に突出する凸部67の内側に配置される(図7参照)。すなわち、複数の送信素子72を囲むように非固定面68bから突出する凸部67が設けられている。
このように、-Z方向において、ホルダー6の封止基板45に固定される面(載置面68a)と反対側の非固定面68bには、複数の送信素子72を囲むように非固定面68bから突出する凸部67が設けられている。
【0036】
非固定面68bに凸部67を設けることによって、支持部68の機械的強度が高められる。
すると、音波センサー3が固定されたホルダー6をネジによってキャリッジ34に固定する際に、支持部68にたわみ等の変形が生じにくくなり、音波センサー3に機械的ダメージが生じにくくなる。さらに、音波センサー3が固定されたホルダー6を取り扱う際においても、支持部68にたわみ等の変形が生じにくくなり、音波センサー3に機械的ダメージが生じにくくなる。加えて、音波センサー3(封止基板45)とホルダー6との接着が解除されにくくなり、音波センサー3が安定してホルダー6に固定されるようになる。
【0037】
図9は、Z方向から見た音波センサーユニット2の平面図である。
図9では、音波センサー3の輪郭が実線で図示され、ホルダー6の支持部68の輪郭が一点鎖線で図示され、配線基板4の図示が省略されている。さらに、図9では、音波センサー3に形成される振動面43(受信側振動面43A、送信側振動面43B)の輪郭が二点鎖線で図示され、受信側振動面43Aにハッチングが施され、送信側振動面43Bに網掛けが施されている。さらに、図9では、ホルダー6に形成される貫通孔60の縁60a及び接続孔64が破線で図示されている。また、図9に破線で図示される貫通孔60の縁60aは、壁面61の-Z方向側の端である。
【0038】
図7及び図9に示すように、受信素子71(受信側振動面43A)は、複数の送信素子72(送信側振動面43B)によって囲まれている。以降の説明では、受信素子71(受信側振動面43A)及び複数の送信素子72(送信側振動面43B)が配置される領域をセンサー領域SAと称し、センサー領域SAの外側の領域(音波素子7が配置されていない領域)を周辺領域PAと称す。
【0039】
Z方向から見た平面視において、受信側振動面43Aは貫通孔60を構成するホルダー6の壁面61の内側に配置される。換言すれば、Z方向から見た平面視において、受信側振動面43Aは貫通孔60の縁60aの内側に配置される。
さらに、Z方向から見た平面視において、貫通孔60の縁60aは複数の送信側振動面43Bに重なる。
【0040】
Z方向から見た平面視において、貫通孔60は楕円をその短軸で半分に分割した半楕円形状である。Z方向から見た平面視において、受信側振動面43Aが貫通孔60を構成するホルダー6の壁面61の内側に配置される構成を有するのであれば、貫通孔60の形状は任意である。例えば、貫通孔60の形状は、半楕円形状に限定されず、三角形であってもよく、矩形であってもよく、多角形であってもよく、円であってもよく、楕円であってもよく、直線と曲線とを有する形状であってもよい。
【0041】
センサー領域SA及び周辺領域PAにおいて、音波センサー3の封止基板45が粘着テープ5によってホルダー6に固定されている。
本実施形態では、粘着テープ5を音波センサー3に貼り付ける際に配線基板4に例えば粘着テープ5を掴む治具などが当たって機械的衝撃が加わらないように、粘着テープ5が配線基板4から離れた位置に配置される。このため、粘着テープ5は、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAに配置されず、接続孔64に対して+Y方向側に位置する周辺領域PAに配置される(図7図11参照)。
もちろん、図7に二点鎖線で図示されるように、粘着テープ5を、接続孔64に対して+Y方向側に加えて、接続孔64に対して-Y方向側に配置してもよい。例えば、粘着テープ5に配線基板4が挿通可能な開口を設け、粘着テープ5を、接続孔64に対して+Y方向側に加えて、接続孔64に対して-Y方向側に配置してもよい。すると、音波センサー3とホルダー6とは、粘着テープ5によってより強く固定されるようになる。
【0042】
図10は、図7に対応する図であり、比較例に係る音波センサーユニット2Aの断面図である。図11は、図7に対応する図であり、本実施形態に係る音波センサーユニット2の断面図である。
比較例に係る音波センサーユニット2Aではホルダー6Aに貫通孔60が形成されていない。本実施形態に係る音波センサーユニット2ではホルダー6に貫通孔60が形成されている。この点が、比較例に係る音波センサーユニット2Aと、本実施形態に係る音波センサーユニット2との相違点である。
【0043】
送信素子72に駆動信号が印加されると、送信側圧電素子50Bが振動し、送信側圧電素子50Bに接続される送信側振動面43Bが振動する。すると、送信側振動面43Bの周辺の空気も振動し、その振動が音波となり媒体Mに入射し、媒体Mによって反射される。媒体Mによって反射される音波は受信側振動面43Aに入射し、受信側振動面43Aが振動し、受信側振動面43Aの振動が受信側圧電素子50Aに伝達され、受信側圧電素子50Aの下部電極51と上部電極53との間に電位差が生じ、受信側振動面43Aの振動に起因する信号が発生する。音波素子制御部9は、受信側振動面43Aの振動に起因する信号に基づき、音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を算出する。
以降の説明では、媒体Mによって反射される音波を、媒体Mからの反射波と称す。
【0044】
さらに、送信側圧電素子50B及び送信側振動面43Bの振動は、素子基板40や封止基板45やホルダー6,6Aに伝わり、振動波Sとして素子基板40や封止基板45やホルダー6,6Aの中を進行する。図10及び図11では、素子基板40や封止基板45やホルダー6,6Aの中を進行する振動波Sの状態が、矢印で模式的に図示されている。
【0045】
上述したように、音波センサーユニット2,2Aは空気中に設置されている。本実施形態のホルダー6の+Z方向側に配置される非固定面68b及び壁面61は、ホルダー6の構成要素である熱可塑性樹脂と空気との境界に相当する。言い換えれば、非固定面68b及び壁面61は互いに密度が異なる2つの物質の境界を形成する。この場合、2つの物質のうち一方は熱可塑性樹脂、他方は空気である。同様に、比較例のホルダー6Aの+Z方向側に配置される非固定面68bは、ホルダー6Aの構成要素である熱可塑性樹脂と空気との境界に相当する。言い換えれば、互いに密度が異なる2つの物質の境界を形成する。この場合、2つの物質のうち一方は熱可塑性樹脂、他方は空気である。
振動波Sは送信素子72から遠ざかる方向に進行する。さらに、送信素子72から遠ざかる方向に進行する振動波Sは、互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射される。非固定面68b及び壁面61は、互いに密度が異なる2つの物質の境界であるので、振動波Sを反射する反射面になる。
なお、ホルダー6,6Aの非固定面68bは、XY平面(水平面)に対して平行に配置される。
【0046】
図10に矢印で示すように、比較例に係る音波センサーユニット2Aでは、ホルダー6Aの中を進行する振動波Sは、非固定面68bによって反射され、受信素子71に入射しやすくなる。詳しくは、ホルダー6Aの中を進行する振動波Sは、非固定面68b等の互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射を繰り返し、受信素子71が配置される部分に集中するようになり、残響振動となって受信素子71に入射する。
図示を省略するが、封止基板45の中を進行する振動波Sは、封止基板45と粘着テープ5との界面で反射され、受信素子71に入射しやすくなる。詳しくは、封止基板45の中を進行する振動波Sは、封止基板45と粘着テープ5との界面等の互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射を繰り返し、受信素子71が配置される部分に集中するようになり、残響振動となって受信素子71に入射する。この場合、2つの物質のうち一方は粘着テープ5を構成する樹脂、他方は空気である。
以降の説明では、比較例のホルダー6Aにおいて非固定面68b等の互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射される振動波Sをホルダー6Aからの反射波と称し、本実施形態のホルダー6において非固定面68b等の互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射される振動波Sをホルダー6からの反射波と称す。さらに、封止基板45と粘着テープ5との界面等の互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射される振動波Sを封止基板45からの反射波と称す。
【0047】
封止基板45はSi等の半導体基板や絶縁体基板であり、ホルダー6Aは金型の中に熱可塑性樹脂を流し込むことによって形成される樹脂の成形体である。
封止基板45は、Si等の半導体基板を微細プロセス加工することにより形成されるので、樹脂の成形体であるホルダー6Aと比べてZ方向寸法が短く、薄板化されている。樹脂の成形体であるホルダー6Aは、金型の中に熱可塑性樹脂を流し込むことによって形成されるので、封止基板45と比べてZ方向寸法が長く、薄板化が難しい。このため、封止基板45からの反射波は早く受信素子71に入射し、ホルダー6Aからの反射波は遅く受信素子71に入射するようになる。
また、本実施形態のホルダー6は、比較例のホルダー6Aと同じ樹脂の成形体であり、封止基板45からの反射波は早く受信素子71に入射し、ホルダー6からの反射波は遅く受信素子71に入射するようになる。
【0048】
送信素子72が駆動されると、空気中に伝搬される音波と、素子基板40や封止基板45やホルダー6Aの中に伝搬される振動波Sとが同時に発生する。
空気中に伝搬される音波は、媒体Mからの反射波として受信素子71に入射する。素子基板40や封止基板45やホルダー6Aの中に伝搬される振動波Sは、封止基板45からの反射波及びホルダー6Aからの反射波として受信素子71に入射する。
【0049】
封止基板45からの反射波は、ホルダー6Aからの反射波と比べて早く受信素子71に入射し、且つ、媒体Mからの反射波と比べて早く受信素子71に入射する。
音波素子制御部9では、受信回路94が、媒体Mからの反射波に起因する信号を受信し、且つ、封止基板45からの反射波に起因する信号を受信しないように、切替回路92が受信回路94の受信接続タイミングを調整する。このため、封止基板45からの反射波が生じても、受信回路94が封止基板45からの反射波に起因する信号を受信しなくなる。すなわち、受信回路94が封止基板45からの反射波に起因する信号を受信しないように、受信回路94の受信接続タイミングが調整されている。
【0050】
ところが、ホルダー6Aからの反射波は、媒体Mからの反射波と同じ時期に受信素子71に入射する。これは、媒体Mの表面から振動面43までの距離が、振動面43から非固定面68bまでの距離と同程度のスケールであること、媒体Mからの反射波が受信素子71に到達する時間が、ホルダー6Aからの反射波が受信素子71に到達する時間と同程度であること、などが理由として挙げられる。このため、受信回路94がホルダー6Aからの反射波に起因する信号を受信しないように、受信回路94の受信接続タイミングを調整することが難しく、受信回路94は、媒体Mからの反射波に起因する信号に加えて、ホルダー6Aからの反射波に起因する信号を受信するようになる。すると、ホルダー6Aからの反射波に起因する信号がノイズとなり、演算部97は、受信回路94からの信号に基づき、音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を正確に算出することが難しくなる。その結果、制御部10は、音波素子制御部9の算出結果に基づき、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔を正確に算出することが難しくなる。
【0051】
図11に矢印で示すように、本実施形態に係る音波センサーユニット2では、ホルダー6の中の振動波Sは、非固定面68bに加えて非固定面68bと交差する壁面61によって反射されるので、受信素子71に入射しにくくなる。詳しくは、受信素子71は、貫通孔60によってホルダー6から分離されているので、互いに密度が異なる2つの物質の境界で反射を繰り返してホルダー6の中を進行する振動波S、すなわち、ホルダー6からの反射波は受信素子71に入射しにくくなる。
その結果、受信回路94が、媒体Mからの反射波に起因する信号を受信し、且つ、ホルダー6からの反射波に起因する信号を受信しなくなり、演算部97は、受信回路94からの信号に基づき、音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を正確に算出することが可能になる。従って、制御部10は、音波素子制御部9の算出結果に基づき、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔を正確に算出することが可能になる。
【0052】
本実施形態は、ホルダー6が粘弾性を有する粘着テープ5を介して封止基板45に固定される構成を有する。封止基板45とホルダー6との間に粘弾性を有する粘着テープ5が配置されると、粘着テープ5が不要な振動を吸収するダンパーの役割を果たし、素子基板40や封止基板45やホルダー6に伝わる振動(振動波S)を弱くすることができる。
【0053】
本実施形態は、Z方向から見た平面視において、貫通孔60の縁60aは複数の送信側振動面43Bに重なる構成を有する。その結果、貫通孔60の縁60aの外側に配置されるセンサー領域SAと周辺領域PAとにおいて、音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定されるようになる。
かかる構成を有すると、周辺領域PAのみにおいて音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定される構成と比べて、音波センサー3とホルダー6とが強く固定され、振動や機械的衝撃が作用しても音波センサー3とホルダー6との固定が解除されにくくなる。
【0054】
送信素子72の振動に起因するセンサー領域SAの振動は、周辺領域PAに伝搬され、例えば、共振等の現象によって周辺領域PAにおいて強い振動に増幅されるおそれがある。
貫通孔60の縁60aの外側に配置されるセンサー領域SAと周辺領域PAとにおいて、音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定される構成を有すると、周辺領域PAにおいて強い振動に増幅される場合であっても、周辺領域PAにおいて音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定されているので、周辺領域PAにおいて増幅された強い振動がセンサー領域SAの受信素子71に伝わりにくくなる。
その結果、周辺領域PAにおいて増幅された強い振動の悪影響が抑制され、制御部10は、音波素子制御部9の算出結果に基づき、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔の検出精度を向上できる。
【0055】
本実施形態では、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAにおいて増幅された強い振動が生じる場合があったので、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAにおいて、音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定されている。
なお、共振等の現象によって強い振動が生じる領域は、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAに限定されない。例えば、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAに加えて、接続孔64に対して+Y方向側に位置する周辺領域PAにおいて増幅された強い振動が生じる場合は、接続孔64に対して-Y方向側に位置する周辺領域PAに加えて、接続孔64に対して+Y方向側に位置する周辺領域PAにおいて、音波センサー3とホルダー6とが粘着テープ5によって固定されることが好ましい。
【0056】
本実施形態は、-Z方向に向かうに従って、貫通孔60が広くなるように、貫通孔60を構成する壁面61が湾曲する構成を有する。
かかる構成を有すると、送信側圧電素子50B及び送信側振動面43Bの振動が音波となって、壁面61で囲まれた貫通孔60の中の空間に伝搬されても、当該音波が壁面61によって受信素子71が配置される方向に反射されにくくなる。
さらに、壁面61が湾曲する構成を有すると、壁面61が湾曲しない構成と比べて、例えば、ホルダー6にたわみ等の変形が生じた場合に壁面61にクラック等が生じにくくなり、ホルダー6の耐性を高めることができる。
【0057】
2.実施形態2
図12は、図8に対応する図であり、実施形態2に係る音波センサーユニット2Bが有するホルダー6Bの斜視図である。図13は、図10に対応する図であり、本実施形態に係る音波センサーユニット2Bの断面図である。
本実施形態に係る音波センサーユニット2Bと比較例に係る音波センサーユニット2Aとでは、非固定面68bの形状が異なる。すなわち、本実施形態のホルダー6Bの非固定面68bはXY平面(水平面)に対して傾斜している。比較例のホルダー6Aの非固定面68bはXY平面に対して平行である。この点が、本実施形態に係る音波センサーユニット2Bと比較例に係る音波センサーユニット2Aとの主な相違点である。
さらに、本実施形態に係る音波センサーユニット2Bと実施形態1に係る音波センサーユニット2とは、ホルダー6,6Bを除き同じ構成を有している。
【0058】
図12に示すように、本実施形態の非固定面68bはXY平面に対して傾斜している。すると、図13に示すように、振動波Sは、XY平面に対して傾斜する非固定面68bによって受信素子71が配置される方向に反射されにくくなる。
その結果、本実施形態に係る音波センサーユニット2Bは、比較例に係る音波センサーユニット2Aと比べて、受信回路94がホルダー6Bの反射波に起因する信号を受信しにくくなり、演算部97が受信回路94からの信号に基づき音波センサーユニット2から媒体Mまでの距離を正確に算出しやすくなる。その結果、本実施形態では、制御部10が、音波素子制御部9の算出結果に基づき、記録ヘッド31のノズル形成面32と媒体Mとの間隔を正確に算出しやすくなる。
【0059】
さらに、図14に示すように、ホルダー6Cの非固定面68bが+Z方向に突出する突出部68cを有する構成であってもよい。非固定面68bに+Z方向に突出する突出部68cを設けると、上述した非固定面68bがXY平面に対して傾斜する構成(上述したホルダー6B)と同様に、非固定面68bがXY平面に対して平行である構成(比較例のホルダー6A)と比べて、振動波Sは、+Z方向に突出する突出部68cを有する非固定面68bによって、受信素子71が配置される方向に反射されにくくなり、振動波Sが受信素子71に入射しにくくなる。その結果、上述したホルダー6Bと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…記録装置、2…音波センサーユニット、3…音波センサー、4…配線基板、5…粘着テープ、6…ホルダー、7…音波素子、9…音波素子制御部、10…制御部、30…印刷部、31…記録ヘッド、34…キャリッジ、40…素子基板、41…本体部、41A…開口部、41B…隔壁部、42…支持膜、43…振動面、43A…受信側振動面、43B…送信側振動面、44…支持壁、45…封止基板、46…梁部、50…圧電素子、50A…受信側圧電素子、50B…送信側圧電素子、51…下部電極、51A…駆動端子、52…圧電膜、53…上部電極、53A…共通電極線、53B…共通端子、60…貫通孔、60a…貫通孔の縁、61…壁面、64…接続孔、65…ネジ孔、67…凸部、68…支持部、68a…載置面、68b…非固定面、69…固定部、71…受信素子、72…送信素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14