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特許7396109現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20231205BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G9/113 352
G03G15/08 220
G03G15/08 364
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020027236
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021131481
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】内橋 勇真
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-84741(JP,A)
【文献】特開2017-125913(JP,A)
【文献】特開2018-194787(JP,A)
【文献】特開2010-262083(JP,A)
【文献】特開2012-78524(JP,A)
【文献】特開2011-158831(JP,A)
【文献】特開2014-56108(JP,A)
【文献】特開2005-345971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア粒子を含み、
前記キャリア粒子は、その表面に、海部と島部とを含む海島構造を有し、
前記島部は、窒素含有シリコーン樹脂を含有し、
前記海部は、窒素非含有シリコーン樹脂を含有し、
前記キャリア粒子の前記表面の総面積における、前記島部の面積率は、20%以上40%以下である、現像剤用キャリア。
【請求項2】
前記窒素含有シリコーン樹脂は、下記化学式(10)、(11)、及び(12)で表される窒素含有基のうちの少なくとも1種を有する、請求項1に記載の現像剤用キャリア。
【化1】
【請求項3】
前記窒素含有基は、アミノシランカップリング剤由来の基である、請求項2に記載の現像剤用キャリア。
【請求項4】
前記窒素含有シリコーン樹脂は、下記一般式(1)で表される基を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の現像剤用キャリア。
【化2】
(前記一般式(1)中、
1は、下記一般式(2)又は(3)で表される基を表し、
1は、前記窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手を表し、
2、及びB3は、各々独立に、前記窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手、又は水素原子を表す。)
【化3】
(前記一般式(2)中、R21、及びR22は、各々独立に、アミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表し、R23は、炭素原子数6以上10以下のアリール基、水素原子、又はビニル基で置換されてもよい炭素原子数7以上16以下のアラルキル基を表し、mは、0又は1を表し、
前記一般式(3)中、R31、及びR32は、各々独立に、アミノ基で置換されてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表し、R33、及びR34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、nは、0又は1を表す。)
【請求項5】
前記窒素含有シリコーン樹脂は、下記一般式(4)で表される基を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の現像剤用キャリア。
【化4】
(前記一般式(4)中、
41は、下記一般式(5)で表される基を表し、
42は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
41は、前記窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手を表し、
42は、前記窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手、又は水素原子を表す。)
【化5】
(前記一般式(5)中、R51、及びR52は、各々独立に、アミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表し、R53は、炭素原子数6以上10以下のアリール基、水素原子、又はビニル基で置換されてもよい炭素原子数7以上16以下のアラルキル基を表し、pは、0又は1を表す。)
【請求項6】
トナー粒子を含む正帯電性トナーと、請求項1~5の何れか一項に記載の現像剤用キャリアとを含有する、現像剤。
【請求項7】
現像剤により静電潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置内の前記現像剤を排出する現像剤排出部と、
前記現像剤を前記現像装置内へ補給する現像剤補給部とを備え、
前記現像剤は、トナー粒子を含む正帯電性トナーと、請求項1~5の何れか一項に記載の現像剤用キャリアとを含有する、画像形成装置。
【請求項8】
現像剤排出部による現像装置内の現像剤の排出と、現像剤補給部による前記現像装置内への前記現像剤の補給とを行いつつ、前記現像装置内の前記現像剤を用いて静電潜像を現像する現像工程を含み、
前記現像剤は、トナー粒子を含む正帯電性トナーと、請求項1~5の何れか一項に記載の現像剤用キャリアとを含有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターのような画像形成装置を用いて画像を形成する場合、現像剤を用いて静電潜像が現像される。現像剤は、例えば、トナーとキャリアとを含む。キャリアによって、トナーが摩擦帯電される。摩擦帯電されたトナーによって、静電潜像が現像される。例えば、特許文献1に記載のキャリアは、芯材上に樹脂被覆層が設けられる。この樹脂被覆層は、NCO基を含有する樹脂と、フッ素原子を含有するアクリル樹脂とを含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-232514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のキャリアは、NCO基を含有する樹脂とフッ素原子を含有するアクリル樹脂とを含有するため、これらの2種の樹脂を分散させて均一な樹脂被覆層(コート層)を得ることが難しい。また、特許文献1に記載のキャリアが有するNCO基は、トナーを負帯電させやすく、正帯電性トナーへの適用が難しい。また、特許文献1に記載のキャリアは、形成画像に発生するカブリを抑制する点で不十分であることが、本発明者の検討により判明した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正帯電性トナーに適用可能で、分散性が高いコート層を有し、形成画像に発生するカブリを抑制できる現像剤用キャリアを提供することである。また、本発明の別の目的は、このような現像剤用キャリアを使用する現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る現像剤用キャリアは、キャリア粒子を含む。前記キャリア粒子は、その表面に、海部と島部とを含む海島構造を有する。前記島部は、窒素含有シリコーン樹脂を含有する。前記海部は、窒素非含有シリコーン樹脂を含有する。前記キャリア粒子の前記表面の総面積における、前記島部の面積率は、20%以上40%以下である。
【0007】
本発明に係る現像剤は、トナー粒子を含む正帯電性トナーと、上記現像剤用キャリアとを含有する。
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、現像剤により静電潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内の前記現像剤を排出する現像剤排出部と、前記現像剤を前記現像装置内へ補給する現像剤補給部とを備える。前記現像剤は、トナー粒子を含む正帯電性トナーと、上記現像剤用キャリアとを含有する。
【0009】
本発明に係る画像形成方法は、現像剤排出部による現像装置内の現像剤の排出と、現像剤補給部による前記現像装置内への前記現像剤の補給とを行いつつ、前記現像装置内の前記現像剤を用いて静電潜像を現像する現像工程を含む。前記現像剤は、トナー粒子を含む正帯電性トナーと、上記現像剤用キャリアとを含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る現像剤用キャリアは、正帯電性トナーに適用可能で、分散性が高いコート層を有し、形成画像に発生するカブリを抑制できる。また、本発明に係る現像剤、画像形成装置、及び画像形成方法は、形成画像に発生するカブリを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子の断面を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子の表面を示す図である。
図3】走査型プローブ顕微鏡により測定された、本発明の第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子の表面の電位像を示す写真図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る現像剤を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置を示す図である。
図6図5に示す画像形成装置の現像装置及びその周辺部を示す図である。
図7】キャリア(A-3)に含有されるキャリア粒子の表面の電位像から得られるヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明する。キャリアは、キャリア粒子の集合体である。トナーは、トナー粒子の集合体である。粉体(より具体的には、トナー母粒子、外添剤、トナー粒子、キャリアコア、キャリア粒子等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、その粉体に含まれる相当数の粒子について測定した値の数平均である。
【0013】
粉体の粒子径、及び数平均粒子径の各々は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の数平均値である。
【0014】
粉体の体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。以下、「体積中位径」を「D50」と記載することがある。
【0015】
ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて「JIS(日本産業規格)K7121-2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度が、ガラス転移点に相当する。ガラス転移に起因する変曲点の温度は、詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度である。以下、「ガラス転移点」を「Tg」と記載することがある。
【0016】
融点(Mp)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。以下、「融点」を「Mp」と記載することがある。
【0017】
質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。以下、「質量平均分子量」を「Mw」と記載することがある。
【0018】
本発明の実施形態において説明する各材料は、特記なき限り、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、一般式の説明において使用される「各々独立に」とは、「各々同一に又は異なって」いることを意味する。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。以上、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明した。次に、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
[第1実施形態:現像剤用キャリア]
以下、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る現像剤用キャリア(以下、キャリアと記載することがある)について説明する。図1は、第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子Cの断面を示す図である。図2は、第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子Cの表面を示す図である。図3は、走査型プローブ顕微鏡のKelvin Force Microscope(KFM)モードにより測定された、第1実施形態に係るキャリアに含有されるキャリア粒子Cの表面の電位像である。
【0020】
第1実施形態に係るキャリアは、キャリア粒子Cを含む。図1に示すように、キャリア粒子Cは、キャリアコア103と、コート層100とを有する。コート層100は、キャリアコア103を覆う。コート層100は、その層内に、第1樹脂粒子101と、第2樹脂領域102とを有する。第1樹脂粒子101は、窒素含有シリコーン樹脂を含有する。第2樹脂領域102は、窒素非含有シリコーン樹脂を含有する。コート層100において、第2樹脂領域102を構成する窒素非含有シリコーン樹脂に、第1樹脂粒子101が分散している。コート層100の第2樹脂領域102の厚みは、第1樹脂粒子101の直径と同一又は直径よりも薄いことが好ましく、第1樹脂粒子101の直径と同一であることがより好ましい。
【0021】
キャリア粒子Cが図1に示す断面構造を有することで、キャリア粒子Cは図2に示す表面構造を有するようになる。図2に示すように、キャリア粒子Cは、その表面に、海島構造を有する。海島構造は、海部2と島部1とを含む。島部1は、キャリア粒子Cの表面に露出している、第1樹脂粒子101の部分である。第1樹脂粒子101が窒素含有シリコーン樹脂を含有することから、島部1は窒素含有シリコーン樹脂を含有する。海部2は、キャリア粒子Cの表面に露出している、第2樹脂領域102の部分である。第2樹脂領域102が窒素非含有シリコーン樹脂を含有することから、海部2は窒素非含有シリコーン樹脂を含有する。海部2は、キャリア粒子Cの表面に連続的に広がる領域であり、島部1は、キャリア粒子Cの表面に不連続に点在する領域である。島部1は、キャリア粒子Cの表面に、点在していることが好ましく、均一に点在していることがより好ましい。
【0022】
探針(例えば、ロジウムコートされた探針)を備える走査型プローブ顕微鏡のKFMモードによりキャリア粒子Cの表面を測定した場合、図3に示すような電位像が観察される。図3中の目盛りの単位は、μmである。キャリア粒子Cの表面の電位像には、表面電位の分布が確認される。詳しくは、この電位像には、表面電位の絶対値が高い領域(図3中の白色領域、実施例で後述する第1領域A1に相当する領域)と、表面電位の絶対値が低い領域(図3中の黒色領域、実施例で後述する第2領域A2に相当する領域)とが確認される。この表面電位の絶対値が高い領域が、島部1であり、表面電位の絶対値が低い領域が、海部2である。
【0023】
第1実施形態のキャリアは、例えば、正帯電性トナー(以下、トナーと記載する)とともに使用される。キャリア粒子Cがその表面に海島構造を有し、島部1が窒素含有シリコーン樹脂を含有し、海部2が窒素非含有シリコーン樹脂を含有することで、次の利点が得られる。即ち、島部1は、電子供与性を有し、正帯電しやすい傾向がある。このため、島部1が、現像装置11(図6参照)内で帯電不良となったトナー(例えば、負帯電したトナー、又は正帯電量が所望値未満に低下したトナー)を静電気的に捕集する。例えば、画像形成装置20(図5参照)がトリクル現像方式を採用する場合、現像剤補給部115(図6参照)から新しい現像剤D(図6参照)が補給されることによって、現像剤Dが現像装置11(図6参照)から排出される。排出された現像剤Dには、帯電不良のトナーを捕集したキャリアが含有される。このように、帯電不良のトナーが現像剤Dとともに排出されるため、長期に渡って現像装置11内に、帯電不良のトナーが残留しない。その結果、帯電不良のトナーにより引き起こされる、形成画像に発生するカブリを抑制することができる。なお、トリクル現像方式については、第3実施形態で後述する。
【0024】
既に述べたように、島部1は、窒素含有シリコーン樹脂を含有し、海部2は、窒素非含有シリコーン樹脂を含有する。島部1に含有されるシリコーン樹脂が窒素原子を含有し、海部2に含有されるシリコーン樹脂が窒素原子を含有しないことで、帯電不良となったトナーを島部1が好適に捕集できる。また、島部1を構成する第1樹脂粒子101、及び海部2を構成する第2樹脂領域102の両方がシリコーン樹脂を含有することで、コート層100中の材料(窒素含有シリコーン樹脂及び窒素非含有シリコーン樹脂)の分散性が向上する。このため、コート層100内に第1樹脂粒子101が均一に分散し、キャリア粒子Cの表面に島部1を均一に点在させることができる。また、コート層100の加熱硬化時に、島部1を構成する第1樹脂粒子101と海部2を構成する第2樹脂領域102との界面で、窒素含有シリコーン樹脂のシラノール基と、窒素非含有シリコーン樹脂のシラノール基とが反応し、共有結合(例えば、-Si-O-Si-結合)が形成される。その結果、コート層100から第1樹脂粒子101が脱離することを抑制できる。
【0025】
キャリア粒子Cの表面の総面積における、島部1の面積率は、20%以上40%以下である。以下、キャリア粒子Cの表面の総面積における島部1の面積率を、島部1の面積率と略記することがある。島部1の面積率が20%以上であると、島部1の面積が適度に大きくなり、帯電不良のトナーを島部1が好適に捕集できる。その結果、形成画像に発生するカブリが抑制される。一方、島部1の面積率が40%以下であると、海部2の面積が十分に確保でき、海部2との摩擦によりトナーを所望の値まで摩擦帯電できる。その結果、形成画像に発生するカブリが抑制される。
【0026】
形成画像に発生するカブリを抑制するために、島部1の面積率は、25%以上35%以下であることが好ましい。
【0027】
島部1の面積率は、例えば、探針(例えば、ロジウムコートされた探針)を備える走査型プローブ顕微鏡のKFMモードによりキャリア粒子Cの表面を観察して電位像を得、得られた電位像を画像解析することにより測定できる。島部1の面積率の測定方法の詳細は、実施例で後述する。
【0028】
島部1の面積率は、例えば、コート層100を形成する際に、第2樹脂領域102を構成する窒素非含有シリコーン樹脂の添加量に対する、第1樹脂粒子101の添加量の比率を変更することにより、調整できる。第2樹脂領域102を構成する窒素非含有シリコーン樹脂の添加量に対する、第1樹脂粒子101の添加量の比率が高くなるほど、島部1の面積率は高くなる。
【0029】
島部1の面積率を所望の範囲内に調整するために、第1樹脂粒子101に含有される窒素含有シリコーン樹脂の質量は、第2樹脂領域102に含有される窒素非含有シリコーン樹脂100質量部に対して、25質量部以上70質量部以下であることが好ましい。島部1の面積率を所望の範囲内に調整するために、窒素非含有シリコーン樹脂100質量部に対する窒素含有シリコーン樹脂の含有量は、25質量部、30質量部、43質量部、50質量部、67質量部、及び70質量部からなる群から選択される2つの値の範囲内であることも好ましい。
【0030】
島部1の平均表面電位V1と、海部2の平均表面電位V2とは、下記式(A)を満たすことが好ましい。式(A)中の「|V1-V2|」は、式「V1-V2」から算出される値の絶対値である。以下、式(A)中の「|V1-V2|」から算出される値を、表面電位差ΔVと記載することがある。
|V1-V2|≧0.8V ・・・(A)
【0031】
表面電位差ΔVの上限は特に限定されないが、表面電位差ΔVは、例えば2.0V以下である。島部1の表面電位、及び海部2の表面電位は、走査型プローブ顕微鏡が備える探針(例えば、ロジウムコートされた探針)とキャリア粒子Cの表面との接触により発生した電位であり、キャリア粒子Cの表面と探針との間の仕事関数の差によって決定される。そのため、島部1の表面電位、及び海部2の表面電位は、現像時にトナー粒子Tとキャリア粒子Cの表面との摩擦帯電により発生する電位とは異なっている。従って、トナー(即ち、正帯電性トナー)とともにキャリアが使用される場合であっても、島部1の平均表面電位V1及び海部2の平均表面電位V2は、各々、正の値であってもよく、負の値であってもよい。一例として、島部1の平均表面電位V1及び海部2の平均表面電位V2は、各々、負の値である。
【0032】
表面電位差ΔVは、例えば、探針(例えば、ロジウムコートされた探針)を備える走査型プローブ顕微鏡を用いて、KFMモードによりキャリア粒子Cの表面を観察して電位像を得、得られた電位像を画像解析することにより測定できる。表面電位差ΔVの測定方法の詳細は、実施例で後述する。
【0033】
表面電位差ΔVは、例えば、島部1を構成する窒素含有シリコーン樹脂の窒素含有基の量を変更することにより、調整できる。島部1を構成する窒素含有シリコーン樹脂の窒素含有基の量が多くなるほど、表面電位差ΔVは大きくなる。
【0034】
島部1は、窒素含有シリコーン樹脂以外の樹脂を更に含有してもよいが、形成画像に発生するカブリを更に抑制するために、島部1は窒素含有シリコーン樹脂のみを含有することが好ましい。海部2は窒素非含有シリコーン樹脂以外の樹脂を更に含有してもよいが、同じ理由から、海部2は窒素非含有シリコーン樹脂のみを含有することが好ましい。同じ理由から、島部1及び海部2は、導電材を含有しないことが好ましい。また、アクリル樹脂はトナーを正帯電させ難い傾向があることから、トナーを良好に正帯電させるために、島部1及び海部2は、アクリル樹脂を含有しないことが好ましい。
【0035】
(コート層の海部)
既に述べたように、海部2は、窒素非含有シリコーン樹脂を含有する。窒素非含有シリコーン樹脂は、例えば、メチル基及びフェニル基のうちの一方又は両方を有するシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、又はポリエステル変性シリコーン樹脂であってもよい。海部2が含有する窒素非含有シリコーン樹脂は、窒素含有基を含有しないことが好ましく、アミノシランカップリング剤由来の窒素含有基を含有しないことがより好ましい。なお、窒素含有基については、後述する。アミノシランカップリング剤由来の窒素含有基を有さない場合、窒素非含有シリコーン樹脂は、アミノシランカップリング剤処理部位を有さない。
【0036】
(コート層の島部)
既に述べたように、島部1は、窒素含有シリコーン樹脂を含有する。島部1が含有する窒素含有シリコーン樹脂は、下記化学式(10)、(11)、及び(12)で表される窒素含有基のうちの少なくとも1種(例えば、1種又は2種)を有することが好ましい。即ち、窒素含有シリコーン樹脂は、化学式(10)で表される窒素含有基、化学式(11)で表される窒素含有基、及び化学式(12)で表される窒素含有基からなる群から選択される少なくとも1種(例えば、1種又は2種)の窒素含有基を有することが好ましい。
【0037】
【化1】
【0038】
化学式(10)、(11)、及び(12)中、*は、窒素含有シリコーン樹脂を構成する原子に結合する結合手を表す。この結合手が結合する原子は、炭素原子であることが好ましく、後述するアミノシランカップリング剤由来の基を構成する炭素原子であることがより好ましく、後述する一般式(1)又は(4)で表される基を構成する炭素原子であることが更に好ましい。化学式(10)で表される窒素含有基は、一価の基であり、アミノ基である。化学式(11)で表される窒素含有基は、二価の基である。化学式(11)中の2個の結合手は、互いに異なる原子に結合してもよく、同一の原子に結合してもよい。化学式(12)で表される窒素含有基は、三価の基である。化学式(12)中の3個の結合手は、互いに異なる原子に結合してもよい。また、化学式(12)中の3個の結合手のうち、2個の結合手が同一の原子に結合し、残りの1個の結合手が異なる原子に結合してもよい。
【0039】
窒素含有基は、アミノシランカップリング剤由来の基であることが好ましい。アミノシランカップリング剤由来の窒素含有基を有する場合、窒素含有シリコーン樹脂は、アミノシランカップリング剤処理部位を有する。
【0040】
島部1が含有する窒素含有シリコーン樹脂は、下記一般式(1)又は(4)で表される基を有することが好ましい。一般式(1)及び(4)で表される基が、上記窒素含有基を含んでいる。
【0041】
【化2】
【0042】
一般式(1)中、R1は、下記一般式(2)又は(3)で表される基を表す。B1は、窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手を表す。B2、及びB3は、各々独立に、窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手、又は水素原子を表す。窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子は、例えば、窒素含有シリコーン樹脂のシリコーン主鎖が有するケイ素原子、又はアミノシランカップリング剤が有するケイ素原子である。
【0043】
【化3】
【0044】
一般式(2)中、R21、及びR22は、各々独立に、アミノ基(-NH2基)で置換されていてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表す。R23は、炭素原子数6以上10以下のアリール基、水素原子、又はビニル基で置換されてもよい炭素原子数7以上16以下のアラルキル基を表す。mは、0又は1を表す。一般式(2)中、*は、一般式(1)中のR1が結合しているケイ素原子に結合する結合手を表す。
【0045】
一般式(3)中、R31、及びR32は、各々独立に、アミノ基(-NH2基)で置換されていてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表す。R33、及びR34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。nは、0又は1を表す。一般式(3)中、*は、一般式(1)中のR1が結合しているケイ素原子に結合する結合手を表す。
【0046】
【化4】
【0047】
一般式(4)中、R41は、下記一般式(5)で表される基を表す。R42は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。B41は、窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手を表す。B42は、窒素含有シリコーン樹脂を構成するケイ素原子に結合する結合手、又は水素原子を表す。
【0048】
【化5】
【0049】
一般式(5)中、R51、及びR52は、各々独立に、アミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基を表す。R53は、炭素原子数6以上10以下のアリール基、水素原子、又はビニル基で置換されてもよい炭素原子数7以上16以下のアラルキル基を表す。pは、0又は1を表す。一般式(5)中、*は、一般式(4)中のR41が結合しているケイ素原子に結合する結合手を表す。
【0050】
一般式(2)中のR21及びR22、一般式(3)中のR31及びR32、並びに一般式(5)中のR51及びR52が表す炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基としては、炭素原子数2以上5以下のアルカンジイル基が好ましく、エタンジイル基、プロパンジイル基又はペンタンジイル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基は、アミノ基で置換されていてもよい。アミノ基で置換された炭素原子数1以上6以下のアルカンジイル基としては、アミノ基で置換された炭素原子数2以上5以下のアルカンジイル基が好ましく、3-アミノペンタンジイル基がより好ましい。
【0051】
一般式(2)中のR23、及び一般式(5)中のR53が表す炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0052】
一般式(2)中のR23、及び一般式(5)中のR53が表す炭素原子数7以上16以下のアラルキル基としては、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。炭素原子数7以上16以下のアラルキル基は、ビニル基で置換されてもよい。ビニル基で置換された炭素原子数7以上16以下のアラルキル基としては、ビニル基で置換された炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、4-ビニルベンジル基がより好ましい。
【0053】
一般式(3)中のR33及びR34、並びに一般式(4)中のR42が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はブチル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。
【0054】
一般式(1)で表される基の好適な例としては、下記一般式(1-1)~(1-5)で表される基が挙げられる。一般式(1-1)~(1-5)中のB1、B2、及びB3は、各々、式(1)中のB1、B2、及びB3と同義である。一般式(4)で表される基の好適な例としては、下記一般式(4-1)で表される基が挙げられる。一般式(4-1)中のB41、及びB42は、各々、式(4)中のB41、及びB42と同義である。
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
シリコーン樹脂に窒素含有基を導入可能なアミノシランカップリング剤の例としては、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、及びN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0058】
N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランによって、一般式(1-1)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランの何れによっても、一般式(1-2)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンによって、一般式(1-3)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランによって、一般式(1-4)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩によって、一般式(1-5)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランによって、一般式(4-1)で表される基がシリコーン樹脂に導入される。
【0059】
アミノシランカップリング剤由来の窒素含有基を有する場合、窒素含有シリコーン樹脂は、100質量部のシリコーン樹脂に対して120質量部以上5000質量部以下のアミノシランカップリング剤により表面処理されたシリコーン樹脂であることが好ましい。アミノシランカップリング剤由来の窒素含有基を有する場合、窒素含有シリコーン樹脂は、100質量部のシリコーン樹脂に対して360質量部以上4600質量部以下のアミノシランカップリング剤により表面処理されたシリコーン樹脂であることがより好ましい。
【0060】
トナーを良好に正帯電できるキャリアを得るために、窒素含有シリコーン樹脂は、アジド結合(-NCO基)を有さないことが好ましい。
【0061】
島部1を構成する第1樹脂粒子101のD50は、キャリアコア103のD50よりも小さい。第1樹脂粒子101のD50は、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。
【0062】
(キャリアコア)
キャリア粒子Cが有するキャリアコア103は、磁性材料を含有することが好ましい。キャリアコア103に含有される磁性材料としては、例えば、金属酸化物が挙げられ、より具体的には、マグネタイト、マグヘマイト、及びフェライトが挙げられる。キャリアコア103は、フェライトを含有することが好ましい。フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、Mn-Mgフェライト、Mn-Mg-Srフェライト、Ca-Mgフェライト、Liフェライト、及びCu-Znフェライトが挙げられる。キャリアコア103のD50は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0063】
なお、キャリア粒子Cが有するコート層100及びキャリアコア103は、各々、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。キャリア粒子CのD50は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0064】
(キャリアの製造方法)
キャリアの製造方法は、例えば、第1樹脂粒子101の形成工程、及びコート層100の形成工程を含む。
【0065】
第1樹脂粒子101の形成工程において、窒素含有シリコーン樹脂を含有する第1樹脂粒子101を製造する。以下、第1樹脂粒子101の形成工程の一例を説明する。シリコーン樹脂のトルエン溶液、アミノシランカップリング剤、触媒、及び第1界面活性剤を混合して、組成物を得る。次いで、組成物に水と第2界面活性剤とを加えて、高い剪断力を付与しながら攪拌することで、W/O型からO/W型に組成物を転相乳化させ、O/W型のエマルションを得る。O/W型のエマルションを加熱して、シリコーン樹脂の架橋反応を進行させ、第1樹脂粒子101のサスペンジョンを得る。スプレードライヤーを用いて、第1樹脂粒子101のサスペンジョンを熱風乾燥させることで、第1樹脂粒子101が得られる。
【0066】
好適に転相乳化を進行させるために、第1界面活性剤のHLB値は、第2界面活性剤のHLB値よりも、低いことが好ましい。第1界面活性剤のHLB値は、1以上8以下であることが好ましく、5以上7以下であることがより好ましい。第2界面活性剤のHLB値は、9以上14以下であることが好ましく、12以上14以下であることがより好ましい。第1界面活性剤のHLB値と第2界面活性剤のHLB値の合計が、10以上15以下であることが好ましい。第1界面活性剤の量に対する第2界面活性剤の量の比率を変更することで、樹脂粒子の粒子径を調整することができる。
【0067】
コート層100の形成工程において、キャリアコア103の表面に、コート層100を形成して、キャリア粒子Cを含むキャリアを得る。以下、コート層100の形成工程の一例を説明する。樹脂粒子の形成工程で得られた第1樹脂粒子101、窒素非含有シリコーン樹脂、及びトルエンを含有する液を、転動流動造粒コーティング装置を用いて、キャリアコア103に噴霧して、乾燥させる。これにより、キャリアコア103の表面に、第1樹脂粒子101及び窒素非含有シリコーン樹脂を含有するコート層100が形成され、キャリア粒子Cが得られる。
【0068】
[第2実施形態:現像剤]
以下、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る現像剤Dについて説明する。図4は、第2実施形態に係る現像剤Dを示す図である。図4に示す現像剤Dは、トナー粒子Tを含むトナー(即ち、正帯電性トナー)と、キャリア粒子Cを含むキャリアとを含有する。キャリアは、第1実施形態に係るキャリアである。第1実施形態に係るキャリアを含有することから、第2実施形態に係る現像剤Dは、第1実施形態で述べたのと同じ理由により、形成画像に発生するカブリを抑制できる。
【0069】
以下、現像剤Dに含有されるトナーについて説明する。トナーは、トナー粒子Tを含む。トナー粒子Tは、正帯電性を有する。
【0070】
理解を容易にするため、図4に示されるトナー粒子Tは、外添剤粒子を有していないが、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に備えられる外添剤粒子とを備えるトナー粒子であってもよい。この場合、図4に示されるトナー粒子Tが、トナー母粒子に相当する。また、図4に示されるトナー粒子Tは、シェル層を有していないが、トナーコアと、トナーコアを覆うシェル層とを備えるトナー粒子であってもよい。この場合、図4に示されるトナー粒子Tが、トナーコアに相当する。トナー粒子TのD50は、4μm以上12μm以下であることが好ましく、5μm以上9μm以下であることがより好ましい。
【0071】
トナー粒子Tは、例えば、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含有する。
【0072】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
【0073】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールモノマーと、1種以上の多価カルボン酸モノマーとの重合体である。なお、多価カルボン酸モノマーの代わりに、多価カルボン酸誘導体(より具体的には、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等)を使用してもよい。
【0074】
多価アルコールモノマーの例としては、ジオールモノマー、ビスフェノールモノマー、及び3価以上のアルコールモノマーが挙げられる。
【0075】
ジオールモノマーの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ベンゼンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0076】
ビスフェノールモノマーの例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0077】
3価以上のアルコールモノマーの例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0078】
多価カルボン酸モノマーの例としては、2価カルボン酸モノマー、及び3価以上のカルボン酸モノマーが挙げられる。
【0079】
2価カルボン酸モノマーの例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
【0080】
3価以上のカルボン酸モノマーの例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0081】
ポリエステル樹脂のTgは60℃以上80℃以下であることが好ましい。2種のポリエステル樹脂を使用する場合には、一方のポリエステル樹脂のTgが60℃以上65℃未満であり、他方のポリエステル樹脂のTgが65℃以上80℃以下であることが好ましい。
【0082】
ポリエステル樹脂のMwは、50000以上500000以下であることが好ましい。2種のポリエステル樹脂を使用する場合には、一方のポリエステル樹脂のMwが50000以上100000以下であり、他方のポリエステル樹脂のMwが200000以上400000以下であることが好ましい。
【0083】
(着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0084】
トナー粒子Tは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0085】
トナー粒子Tは、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0086】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
【0087】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0088】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0089】
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、帯電安定性及び帯電立ち上がり特性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナー粒子Tに電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0090】
電荷制御剤として好ましくは、正電荷制御剤が挙げられる。正電荷制御剤は、正帯電性の電荷制御剤である。トナー粒子Tに正電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン染料、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーの正帯電性を強めることができる。
【0091】
(離型剤)
離型剤は、例えば、耐ホットオフセット性に優れたトナーを得る目的で使用される。離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0092】
離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、植物由来ワックス、動物由来ワックス、鉱物由来ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス(例えば、低分子量ポリエチレン)、ポリプロピレンワックス(例えば、低分子量ポリプロピレン)、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物としては、例えば酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体が挙げられる。植物由来ワックスとしては、例えばキャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物由来ワックスとしては、例えばみつろう、ラノリン、及び鯨ろうが挙げられる。鉱物由来ワックスとしては、例えばオゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。エステルワックスとしては、例えば、ペンタエリスリトールエステルワックス、モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスとしては、例えば脱酸カルナバワックスが挙げられる。離型剤としては、エステルワックスが好ましく、ペンタエリスリトールエステルワックスがより好ましい。離型剤のMpは、60℃以上100℃以下であることが好ましく、80℃以上90℃以下であることがより好ましい。
【0093】
(外添剤)
トナー粒子Tが外添剤粒子を含む外添剤を有する場合、外添剤としては、無機外添剤が好ましい。無機外添剤としては、例えば、シリカ、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)が挙げられる。外添剤の量は、100質量部のトナー母粒子に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。外添剤は、表面処理されていてもよい。例えば、その他の外添剤としてシリカを使用する場合、表面処理剤によりシリカの表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。
【0094】
(現像剤の製造方法)
現像剤Dの製造方法は、例えば、キャリアの製造工程、トナーの製造工程、及びキャリアとトナーとの混合工程を含む。キャリアの製造工程は、第1実施形態で述べたキャリアの製造方法に相当する。
【0095】
(トナーの製造工程)
トナーの製造工程として、粉砕法によるトナーの製造を例に挙げて説明する。トナーの製造工程において、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合して、混合物を得る。混合物を溶融しながら混練して、混練物を得る。混練に使用される溶融混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロールミル、及びオープンロール型混練機が挙げられる。得られた混練物を粉砕して、粉砕物を得る。粉砕物を分級して、トナー粒子Tを含有するトナーを得る。得られるトナーは、粉砕トナーである。
【0096】
トナー粒子がトナー母粒子と外添剤とを有する場合には、外添工程を更に実施する。外添工程において、混合機を用いて、上記で得られたトナー粒子Tに相当するトナー母粒子と、外添剤とを混合する。混合条件は、外添剤がトナー母粒子に完全に埋没しない条件に設定されることが好ましい。混合により、トナー母粒子の表面に外添剤が付着して、トナーが得られる。なお、外添剤は、化学的結合ではなく、物理的結合(物理的な力)で、トナー母粒子の表面に付着している。
【0097】
(キャリアとトナーとの混合工程)
キャリアとトナーとの混合工程において、混合機(例えば、ボールミル)を用いて、トナーとキャリアとを混合することで、現像剤Dを得る。
【0098】
[第3実施形態:画像形成装置]
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置20について説明する。図5は、第3実施形態に係る画像形成装置20の構成を示す。図6は、図5に示す画像形成装置20の現像装置11a~11d及びその周辺部を示す。以下、区別する必要がない場合には、現像装置11a~11dの各々を現像装置11と記載する。画像形成装置20は、トリクル現像方式の画像形成装置の一例である。
【0099】
図6に示すように、画像形成装置20は、現像装置11と、現像剤排出部116と、現像剤補給部115とを備える。現像装置11は、現像剤Dを収容する。現像装置11は、現像剤Dにより静電潜像を現像する。現像剤排出部116は、現像装置11内の現像剤Dを排出する。現像剤補給部115は、現像装置11内へ現像剤Dを補給する。現像剤Dは、第2実施形態で述べた現像剤Dであり、トナー粒子Tを含むトナー(即ち、正帯電性トナー)と、第1実施形態に係るキャリアとを含有する。第3実施形態に係る画像形成装置20が備える現像装置11が、第1実施形態に係るキャリアを含有する現像剤Dを収容する。このため、第1実施形態で述べたのと同じ理由により、第3実施形態に係る画像形成装置20は、形成画像に発生するカブリを抑制できる。
【0100】
図5に示す画像形成装置20は、タンデム方式を採用する。画像形成装置20は、帯電装置8a~8dと、露光装置9と、現像装置11a~11dと、感光体ドラム12a~12dと、転写装置10と、定着装置17と、クリーニング装置18と、制御部19とを備える。転写装置10は、転写ベルト13と、駆動ローラー14aと、従動ローラー14bと、テンションローラー14cと、一次転写ローラー15a~15dと、2次転写ローラー16とを備える。転写ベルト13は、駆動ローラー14a、従動ローラー14b、及びテンションローラー14cに張架されている。以下、区別する必要がない場合には、帯電装置8a~8dの各々を帯電装置8と記載し、感光体ドラム12a~12dの各々を感光体ドラム12と記載し、一次転写ローラー15a~15dの各々を一次転写ローラー15と記載する。
【0101】
制御部19は、各種センサーの出力に基づいて、画像形成装置20の動作を電子制御する。制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、プログラムとを記憶し、かつ、所定のデータを書換え可能に記憶する記憶装置とを備える。ユーザーは、入力部(不図示)を通じて、制御部19に指示(例えば、電気信号)を与える。入力部は、例えば、キーボード、マウス、又はタッチパネルである。
【0102】
感光体ドラム12は、円筒状の外形を有する。感光体ドラム12は、芯材として金属製の筒体(例えば、筒状の導電性基体)を備える。その芯材の外側に、感光層を備える。感光体ドラム12は回転可能に支持されている。感光体ドラム12は、例えばモーター(不図示)によって駆動されて、図6中の矢印の方向に回転する。
【0103】
帯電装置8は感光体ドラム12の周面を帯電する。露光装置9は、帯電された感光体ドラム12の周面を露光して、感光体ドラム12の周面に静電潜像を形成する。例えば、画像データに基づいて感光体ドラム12の表層部(感光層)に静電潜像が形成される。現像装置11が、感光体ドラム12に形成された静電潜像を、現像装置11内の現像剤Dにより現像する。これにより、感光体ドラム12の周面にトナー像が形成される。現像装置11の詳細は、後述する。
【0104】
転写ベルト13は、駆動ローラー14aにより駆動されて、図5中の矢印で示される方向に回転する。感光体ドラム12にトナー像が形成された後、一次転写ローラー15にバイアス(電圧)をかけて、感光体ドラム12に付着したトナー(トナー像)を転写ベルト13に一次転写する。複数個の感光体ドラム12に形成されたトナー像を順次、転写ベルト13に一次転写することにより、転写ベルト13上に、複数種のトナー像(例えば、異なる色のトナー像)を重ねることができる。一次転写後、2次転写ローラー16にバイアス(電圧)をかけることにより、転写ベルト13上のトナー像を、搬送される記録媒体Pに2次転写する。転写ベルト13上に重ねた複数種のトナー像(例えば、異なる色のトナー像)が記録媒体Pに一括して2次転写される。これにより、記録媒体Pに画像が形成される。記録媒体Pは、例えば印刷用紙である。
【0105】
2次転写後、定着装置17が、記録媒体P上のトナーを加熱及び加圧して、記録媒体Pにトナーを定着させる。定着装置17は、例えば、加熱ローラー及び加圧ローラーを備える。このような定着装置17は、ニップ定着方式の定着装置17と呼ばれる。なお、定着方式は任意であり、例えばベルト定着方式であってもよい。クリーニング装置18は、2次転写後に転写ベルト13上に残留するトナーを除去する。
【0106】
<現像装置、現像剤補給部、及び現像剤排出部>
次に、図6を参照しながら、現像装置11、現像剤補給部115、及び現像剤排出部116について説明する。現像装置11は、現像ローラー111と、規制ブレード112と、第1攪拌シャフト113と、第2攪拌シャフト114とを備える。また、現像装置11は、収容部Rを有する。収容部Rは、第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114を収容する。現像ローラー111は、感光体ドラム12の近傍に配置される。
【0107】
現像装置11は、現像剤Dにより静電潜像を現像する。収容部Rは、現像剤Dを収容している。画像形成装置20を用いて画像を形成する場合には、現像剤Dを、現像装置11(より具体的には、現像装置11が備える収容部R)、及び現像剤補給部115(現像剤補給部115が備える現像剤コンテナ115b)にセットする。現像装置11内の現像剤Dによる静電潜像の現像を開始した後、現像装置11内の現像剤Dの排出と現像装置11内への現像剤Dの補給とが行われる。このため、画像形成装置20による印刷を続けると、収容部R内の現像剤Dは、現像剤補給部115から補給される新しい現像剤Dに、少しずつ入れ替わる。
【0108】
第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114はそれぞれ、螺旋状の攪拌羽根を有する。第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114は、収容部R内の現像剤Dを攪拌しながら、互いに逆方向に現像剤Dを搬送する。トナーとキャリアとを含む現像剤Dが攪拌されることで、キャリアとの摩擦によってトナーが帯電し、帯電したトナーがキャリアに担持される。
【0109】
現像ローラー111は、マグネットロールと、現像スリーブとを備える。マグネットロールは、少なくともその表層部に磁極を有する。磁極は、例えば、永久磁石に基づくN極及びS極である。現像スリーブは、非磁性の筒体(例えば、アルミニウムパイプ)である。マグネットロールは現像スリーブ内(筒内)に位置し、現像スリーブは現像ローラー111の表層部に位置する。非回転のマグネットロールの周りを現像スリーブが回転できるように、マグネットロールのシャフトと現像スリーブとがフランジを介して接続されている。
【0110】
現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)は、図6中の矢印の方向に回転しながら、収容部Rにあるキャリアを磁力により引き付けて、表面に現像剤D(トナーを担持したキャリア)を担持する。キャリア粒子Cは、磁気ブラシを形成する。磁気ブラシは、現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)の表面に穂立ちしたキャリア粒子Cのクラスターである。穂状に連なったキャリア粒子Cの表面にはトナー粒子Tが付着している。磁気ブラシの厚さ(穂の高さ)は、規制ブレード112によって所定の厚さに規制される。
【0111】
現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)が、図6中に示される矢印の方向に回転することで、収容部Rにある現像剤Dのうちのトナーが感光体ドラム12に搬送される。現像ローラー111にバイアス(電圧)が印加されることで、現像ローラー111及び感光体ドラム12の表面電位の間に電位差が生じる。この電位差によって、現像ローラー111に担持された現像剤Dに含まれる帯電したトナーが、感光体ドラム12の表面に移動する。詳しくは、現像ローラー111に担持された現像剤Dのうちの帯電したトナーが、感光体ドラム12に形成された静電潜像(例えば、露光によって非露光部位よりも電位の低下した露光部位)に電気的な力で引き付けられて、感光体ドラム12上の静電潜像に移動する。その結果、感光体ドラム12の表面にトナー像が形成される。静電潜像の現像時に、現像ローラー111上の磁気ブラシが感光体ドラム12に接触してもよい。或いは、磁気ブラシを感光体ドラム12に接触させずに、電気的な力で現像ローラー111から感光体ドラム12に向けてトナーを飛翔させてもよい。
【0112】
次に、現像装置11へ現像剤Dを補給するための補給機構について説明する。補給機構である現像剤補給部115は、現像剤Dを現像装置11内に補給する。現像剤補給部115は、現像装置11の上部に設けられる。現像剤補給部115は、現像剤コンテナ115bと、補給量調整部材115aとを備える。現像剤コンテナ115bは、現像剤Dを収容している。現像剤コンテナ115b内の現像剤Dは、現像装置11の収容部Rに供給される。現像剤コンテナ115bから現像装置11へ供給される現像剤Dの補給量は、補給量調整部材115aによって制御される。補給量調整部材115aは、例えば、制御部19により回転動作を制御されるスクリューシャフトから構成される。例えば、スクリューシャフトの回転量に応じて現像剤Dの補給量を変更できる。なお、現像剤コンテナ115bは、現像剤コンテナ115b内の現像剤Dを攪拌するための攪拌装置(不図示)を備えてもよい。
【0113】
次に、現像装置11から現像剤Dを排出するための排出機構について説明する。排出機構である現像剤排出部116は、現像装置11内の現像剤Dを排出する。現像剤排出部116は、排出路116aと、回収容器116bとを備える。現像装置11の収容部Rは、排出路116aを介して、回収容器116bに連結されている。収容部Rにある現像剤Dの量が所定の量を超えると、過剰な現像剤Dは、排出路116aの上端側の開口から排出路116a内に入る。所定の量は、例えば、排出路116aの上端位置によって決まる量である。過剰な現像剤Dは、例えば、排出路116aの上端位置によって決まる量を超えた分の現像剤Dである。過剰な現像剤Dが排出路116a内に入ると、過剰な現像剤Dは、重力によって排出路116aの内側を下方に進み、回収容器116bに流れ込む。
【0114】
記録媒体Pに画像を形成するにつれて、現像装置11内の現像剤Dに、帯電不良のトナー、ひいては帯電不良のトナー粒子Tが含有されるようになる。帯電不良のトナー粒子Tは、現像装置11内へ補給される前のトナー粒子T(現像剤コンテナ115bに収容されるトナー粒子T)を現像剤コンテナ115bから取り出してキャリアにより摩擦帯電させたときの摩擦帯電量よりも、摩擦帯電量が低くなったトナー粒子Tである。第1実施形態で述べたように、現像剤Dが現像装置11から排出されるときに、現像装置11内の帯電不良のトナー粒子Tが、キャリア粒子Cの島部1に付着して、現像装置11から排出される。その結果、帯電不良のトナー粒子Tが、現像装置11内に長期に渡って留まらず、帯電不良のトナーに起因する形成画像に発生するカブリを抑制できる。
【0115】
形成画像に発生するカブリを抑制するために、現像剤コンテナ115bに収容される現像剤D(現像装置11内に補給される前の現像剤D)において、キャリアの含有量は、100質量部のトナーに対して、5質量部以上であることが好ましい。キャリアの含有量の上限は特に限定されないが、現像剤コンテナ115bに収容される現像剤Dにおいて、キャリアの含有量は、100質量部のトナーに対して、例えば20質量部以下である。
【0116】
形成画像に発生するカブリを抑制するために、印刷開始前に現像装置11に収容される現像剤D(現像装置11にセットする初期の現像剤D)において、キャリアの含有量は、10質量部のトナーに対して、80質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
【0117】
以上、第3実施形態に係る画像形成装置20について説明した。なお、第3実施形態に係る画像形成装置は、上記画像形成装置20に限定されず、例えば、次に示す第1~5の変形例のように変更可能である。第1の変形例において、現像剤排出部116は、収容部Rから排出路116aへ流れ出る流量を調整するための部材(例えば、スクリューシャフト)を更に備える。第2の変形例において、現像剤排出部116は、排出口(例えば、排出路116aの上端側の開口)の開口面積を可変とする開閉装置を更に備える。第3の変形例において、収容部Rにある現像剤Dの量を検出するためのセンサーを、収容部Rに設ける。第4の変形例において、収容部Rからの現像剤Dの排出量を検出するためのセンサーを、回収容器116bに設ける。第5の変形例において、現像ローラー111と感光体ドラム12との間に、現像ローラー111以外の現像ローラー(以下、その他の現像ローラーと記載することがある)が更に設けられる。第5の変形例は、タッチダウン方式の画像形成装置に相当する。タッチダウン方式の画像形成装置では、例えば現像ローラー111とその他の現像ローラーとの間に電位差を生じさせることで、現像ローラー111の表面に担持された現像剤D(キャリア及びトナー)のうちトナーのみをその他の現像ローラーに移動させて、その他の現像ローラーの表面にトナー層を形成する。そして、その他の現像ローラー上のトナー層を感光体ドラム12に移動させて、感光体ドラム12上の静電潜像をトナー像に現像する。
【0118】
[第4実施形態:画像形成方法]
以下、図5及び図6を引き続き参照して、本発明の第4実施形態に係る画像形成方法について説明する。第4実施形態に係る画像形成方法は、現像装置11内の現像剤Dによる静電潜像の現像を開始した後、現像剤排出部116による現像装置11内の現像剤Dの排出と、現像剤補給部115による現像装置11内への現像剤Dの補給とを行いつつ、現像装置11内の現像剤Dを用いて静電潜像を現像する現像工程を含む。
【0119】
第4実施形態に係る画像形成方法は、例えば、第3実施形態に係る画像形成装置20を用いて行われる。第4実施形態に係る画像形成方法は、第2実施形態に係る現像剤D、即ち、トナー粒子Tを含むトナー(即ち、正帯電性トナー)と第1実施形態に係るキャリアとを含有する現像剤Dを用いて行われる。このため、第1実施形態で述べたのと同じ理由により、第4実施形態に係る画像形成方法によれば、形成画像に発生するカブリを抑制できる。
【実施例
【0120】
本発明の実施例について説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の数平均を評価値とした。また、以下の記載において、「室温」は25℃を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0121】
表1に、実施例又は比較例に係るキャリア(A-1)~(A-7)及び(B-1)~(B-2)の構成を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1において各用語の意味は、次のとおりである。
シリコーンS1:シリコーン樹脂S1。シリコーン樹脂S1は、シリコーン樹脂溶液L-S1(信越化学工業株式会社製「KR-350」、固形分濃度:25質量%、溶媒:トルエン)に含有されるシリコーン樹脂である。
シリコーンS2:シリコーン樹脂S2。シリコーン樹脂S2は、シリコーン樹脂溶液L-S2(信越化学工業株式会社製「KR-251」、固形分濃度:20質量%、樹脂:メチル基を有するシリコーン樹脂、溶媒:トルエン)に含有されるシリコーン樹脂である。
シリコーンS3:シリコーン樹脂S3。シリコーン樹脂S3は、シリコーン樹脂溶液L-S3(信越化学工業株式会社製「KR-300」、固形分濃度:50質量%、樹脂:メチル基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂、溶媒:キシレン)に含有されるシリコーン樹脂である。
アミノN1:アミノシランカップリング剤N1(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製「KBM-603」)
アミノN2:アミノシランカップリング剤N2(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学工業株式会社製「KBM-602」)
アミノN1/シリコーンS1:アミノシランカップリング剤N1で処理されたシリコーン樹脂S1
アミノN1/シリコーンS2:アミノシランカップリング剤N1で処理されたシリコーン樹脂S2
アミノN2/シリコーンS1:アミノシランカップリング剤N2で処理されたシリコーン樹脂S1
N/S:アミノシランカップリング剤の質量/シリコーン樹脂の質量
面積率:キャリア粒子の表面の総面積における、島部の面積率(単位:%)
ΔV:式(A)の「|V1-V2|」から算出される値である表面電位差ΔV
【0124】
以下、キャリア(A-1)~(A-7)及び(B-1)~(B-2)の製造方法、測定方法、及び評価方法について、説明する。
【0125】
[キャリアの製造方法]
<樹脂粒子の製造>
まず、キャリアの島部を形成するために使用する樹脂粒子A及びC~Eを製造した。
【0126】
(樹脂粒子Aの製造)
120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)と、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)と、110.4部のアミノシランカップリング剤N1とを混合して、溶液Iを得た。240部の溶液Iに、10部のエチレングリコールモノヘキシルエーテル(東京化成工業株式会社製、HLB値:6.4)を加え、室温で混合して、組成物を得た。250部の組成物と、80部のポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬株式会社「ノイゲンXL-80」、HLB値:13.8)とを、容量2Lの容器に入れ、ホモミキサーを用いて4000rpmの回転速度で1分間混合した。次いで、100部のイオン交換水を容器内に加え、ホモミキサーを用いて4000rpmの回転速度で10分間混練して、転相させた。次いで、570部のイオン交換水を容器に加え、ホモミキサーを用いて2500rpmの回転速度で20分間混合して、エマルションIIを得た。エマルションIIに含有される乳化粒子の平均粒子径は、300nmであった。この乳化粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒径分布測定装置(コールター株式会社製「Colter N4 Plus」)により、コールター原理に基づき測定された平均粒子径であった。次いで、攪拌しながら80℃で12時間、得られたエマルションIIを加熱して、シリコーンの架橋反応の一部を進行させた。その結果、エマルションIIIが得られた。次いで、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製「FOC-25」)を用いて、250℃の熱風温度で、エマルションIIIを噴霧し乾燥させて、樹脂粒子Aを得た。
【0127】
(樹脂粒子Cの製造)
120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、及び110.4部のアミノシランカップリング剤N1を、12.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:3.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、82.0部のトルエン、及び136.4部のアミノシランカップリング剤N1に変更したこと以外は、樹脂粒子Aと同じ方法により、樹脂粒子Cを製造した。なお、82.0部のトルエンは、濃度調整のために添加した。
【0128】
(樹脂粒子Dの製造)
120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、及び110.4部のアミノシランカップリング剤N1を、150.0部のシリコーン樹脂溶液L-S2(固形分濃度:20質量%、シリコーン樹脂S2の量:30.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、及び110.4部のアミノシランカップリング剤N1に変更したこと以外は、樹脂粒子Aと同じ方法により、樹脂粒子Dを製造した。
【0129】
(樹脂粒子Eの製造)
120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、及び110.4部のアミノシランカップリング剤N1を、120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)、9.6部の触媒(信越化学工業株式会社製「CAT-AC」)、及び110.4部のアミノシランカップリング剤N2に変更したこと以外は、樹脂粒子Aと同じ方法により、樹脂粒子Eを製造した。
【0130】
<キャリアの製造>
(キャリア(A-1)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合して、樹脂粒子Aのトルエン分散液を得た。トルエン分散液に、160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)を加え、更に混合して、コート液(固形分濃度:20質量%)を得た。
【0131】
転動流動造粒コーティング装置(株式会社パウレック製「MP-01」)を用いて、1000部のキャリアコア(Mn-Mg-Srフェライトコア、パウダーテック株式会社製「EF-35」、粒子径:35μm)に、100部の上記コート液をスプレーコーティングし、未乾燥キャリア粒子を得た。オーブンを用いて、未乾燥キャリア粒子を、250℃で1時間乾燥させて、キャリア粒子を含有するキャリア(A-1)を得た。キャリア(A-1)の製造において、トルエン分散液に含有される樹脂粒子Aによって島部が形成され、シリコーン樹脂溶液L-S1に含有されるシリコーン樹脂S1によって海部が形成された。
【0132】
(キャリア(A-2)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、20.0部の樹脂粒子Aと110.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、120.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:30.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-2)を製造した。
【0133】
(キャリア(A-3)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、15.0部の樹脂粒子Cと95.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、140.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:35.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-3)を製造した。
【0134】
(キャリア(A-4)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、15.0部の樹脂粒子Aと60.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、175.0部のシリコーン樹脂溶液L-S2(固形分濃度:20質量%、シリコーン樹脂S2の量:35.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-4)を製造した。
【0135】
(キャリア(A-5)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、15.0部の樹脂粒子Dと95.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、140.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:35.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-5)を製造した。
【0136】
(キャリア(A-6)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、15.0部の樹脂粒子Dと165.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、70.0部のシリコーン樹脂溶液L-S3(固形分濃度:50質量%、シリコーン樹脂S3の量:35.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-6)を製造した。
【0137】
(キャリア(A-7)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、15.0部の樹脂粒子Eと95.0部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、140.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:35.0部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(A-7)を製造した。
【0138】
(キャリア(B-1)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、7.5部の樹脂粒子Aと72.5部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、170.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:42.5部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(B-1)を製造した。
【0139】
(キャリア(B-2)の製造)
10.0部の樹脂粒子Aと80.0部のトルエンとを混合する代わりに、22.5部の樹脂粒子Aと117.5部のトルエンとを混合したこと、及び160.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:40.0部)の代わりに、110.0部のシリコーン樹脂溶液L-S1(固形分濃度:25質量%、シリコーン樹脂S1の量:27.5部)を使用したこと以外は、キャリア(A-1)と同じ方法により、キャリア(B-2)を製造した。
【0140】
なお、上記キャリア(A-1)~(A-7)及び(B-1)~(B-2)の製造過程において製造されたコート液の固形分濃度は、何れも20質量%であった。
【0141】
[キャリアの測定方法]
<海島構造の確認、表面電位差ΔVの測定、及び島部の面積率の測定>
走査型プローブ顕微鏡(SPM、株式会社日立ハイテクサイエンス製多機能型ユニット「AFM5200S」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)を用いて、下記測定条件でキャリア粒子の表面を観察し、キャリア粒子の表面の電位像を得た。得られた電位像は、0から255までの256諧調の輝度のドットで構成されていた。256諧調の輝度の各々は、測定されたキャリア粒子の表面電位の最小値から最大値までの範囲を256分割した電位と対応していた。電位像において、電位の絶対値が高いほど、高い輝度のドットで表示されていた。キャリアに含有される10個のキャリア粒子の表面を観察して、10個の電位像を得た。10個の電位像を画像解析することにより、ドットの輝度を横軸に、対応する輝度を有するドットの個数を縦軸にとったヒストグラムを得た。
【0142】
(測定条件)
・測定ユニットの可動範囲(測定可能なサンプルの大きさに相当する範囲):100μm(Small Unit)
・測定探針:ロジウムコートされた探針(株式会社日立ハイテクサイエンス製「SI-DF-3R」)
・測定モード:Kelvin Force Microscope(KFM)
・励起電圧:1V
・測定範囲(1視野に相当する範囲):1μm×1μm
・解像度(Xデータ/Yデータ):256/256
【0143】
図3を参照しながら第1実施形態で述べたような海部と島部とが、得られた電位像に存在しているか否かを確認した。
【0144】
以下、図7を参照して、表面電位差ΔV及び島部の面積率の算出方法について説明する。図7は、キャリア(A-3)に含有される10個のキャリア粒子の表面の電位像から得られるヒストグラムを示す。図7の横軸は、電位像のドットの輝度を示し、縦軸は、対応する輝度を有するドットの個数の頻度(Frequency)を示す。図7に示すヒストグラムにおいて、2個のピークP1及びP2と、2個のピークP1及びP2の間で縦軸の値が最も低い(頻度が最も低い)谷部PVとが確認された。なお、複数個の谷部PVが確認される場合には、ピークP1の輝度とピークP2の輝度との中間値(数平均値)に最も近い輝度を有する谷部PVを、谷部PVと決定する。ピークP1の輝度は、ピークP2の輝度よりも高い。谷部PVの輝度LV以上の電位を有する領域を、第1領域A1とした。谷部PVの輝度LV未満の電位を有する領域を、第2領域A2とした。ピークP1は第1領域A1に位置し、ピークP2は第2領域A2に位置していた。第1領域A1に属する各ドットの電位及びドットの個数から、第1領域A1に属するドットの数平均電位を算出し、第1領域A1に属するドットの数平均電位を島部の平均表面電位V1(単位:V)とした。また、第2領域A2に属する各ドットの電位及びドットの個数から、第2領域A2に属するドットの数平均電位を算出し、第2領域A2に属するドットの数平均電位を海部の平均表面電位V2(単位:V)とした。そして、下記式に従って、表面電位差ΔVを算出した。
表面電位差ΔV=|V1-V2
【0145】
また、第1領域A1に属するドットの個数、及び第2領域A2に属するドットの個数から、式(B)に従って、島部の面積率(単位:%)を算出した。
島部の面積率=100×(第1領域A1に属するドットの個数)/[(第1領域A1に属するドットの個数)+(第2領域A2に属するドットの個数)] ・・・(B)
【0146】
得られた表面電位差ΔV、及び島部の面積率を、表1に示す。なお、キャリア(A-1)~(A-7)の何れの電位像においても、海部と島部とが確認された。また、キャリア(A-1)~(A-7)の何れにおいても、島部の平均表面電位V1及び海部の平均表面電位V2は、各々、負の値であった。
【0147】
[キャリアの評価方法]
<評価に使用する現像剤の調製>
トナー10質量部とキャリア90質量部とを混合して、初期現像剤を得た。また、トナー300質量部とキャリア15質量部とを混合して、補給用現像剤を得た。補給用現像剤において、キャリアの含有量は、100質量部のトナーに対して、5質量部であった。なお、初期現像剤、及び補給用現像剤に含有させるトナーは、以下に示す方法により製造された。
【0148】
(トナーの製造)
まず、トナー母粒子を作製した。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10」)を用いて、48.0質量部の第1ポリエステル樹脂(Mw:300000、Tg:65℃)と、39.0質量部の第2ポリエステル樹脂(Mw:75000、Tg:61℃)と、8.0質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)と、2.0質量部の電荷制御剤(ニグロシン染料、オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)N-71」)と、3.0質量部の離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-5」、成分:ペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス、溶融温度:84℃)とを混合した。2軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM-26SS」)を用いて、得られた混合物を溶融混練し、混錬物を得た。混練物を、冷却した。粉砕機(旧東亜器械製作所製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて、粒子径2mmの設定条件で、冷却された混練物を粗粉砕し、粗粉砕物を得た。粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて、粗粉砕物を微粉砕し、微粉砕物を得た。分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて、微粉砕物を分級し、トナー母粒子を得た。トナー母粒子のD50は、7.0μmであった。
【0149】
得られたトナー母粒子に、外添剤を外添させた。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10」)を用いて、回転速度3500rpmの条件で、100.0質量部のトナー母粒子と、1.5質量部の正帯電性シリカ粒子(表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA200」、個数平均一次粒子径:13nm)と、1.0質量部の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT-500B」、内容:未処理の酸化チタン粒子、個数平均一次粒子径:35nm)とを、5分間混合した。混合により、トナー母粒子の表面に、正帯電性シリカ粒子と酸化チタン粒子とが付着した。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて、外添剤が付着したトナー母粒子を篩別し、トナーを得た。得られたトナーは、正帯電性を有していた。
【0150】
<カブリ濃度の評価>
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa2553ci」、現像方式:トリクル現像方式)を用いた。この評価機は、現像装置と、現像剤排出部と、現像剤供給部とを備えていた。上記<評価に使用する現像剤の調製>で製造された初期現像剤を、評価機のブラック用現像装置に投入した。上記<評価に使用する現像剤の調製>で製造された補給用現像剤を、評価機のブラック用現像剤供給部の現像剤コンテナに投入した。
【0151】
温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下で、上記評価機を用いて、白紙画像を1000枚の用紙に印刷した。次いで、評価機を用いて、文字パターン画像(印字率10%)を100枚の用紙に印刷した。文字パターン画像が印刷された100枚目の用紙に対して、カブリ濃度(FD)を測定した。FDの測定では、反射濃度計(X-Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、画像が印刷された用紙の空白部の反射濃度を測定した。そして、式「FD=空白部の反射濃度-未印刷紙の反射濃度」に基づいて、FDを算出した。FDの測定結果を、表2に示す。なお、FDが低い程、形成画像に発生するカブリが抑制されていることを示す。
【0152】
【表2】
【0153】
表1に示すように、キャリア(A-1)~(A-7)は、各々、以下に示す構成を有していた。キャリア粒子は、その表面に、海部と島部とを含む海島構造を有していた。島部は、窒素含有シリコーン樹脂(より具体的には、アミノシランカップリング剤N1で処理されたシリコーン樹脂S1、アミノシランカップリング剤N1で処理されたシリコーン樹脂S2、又はアミノシランカップリング剤N2で処理されたシリコーン樹脂S1)を含有していた。海部は、窒素非含有シリコーン樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂S1、S2、又はS3)を含有していた。キャリア粒子の表面の総面積における、島部の面積率は、20%以上40%以下であった。このため、表2に示すように、キャリア(A-1)~(A-7)を含有する現像剤を用いて印刷された画像のFDは、キャリア(B-1)~(B-2)を含有する現像剤を用いて印刷された画像のFDよりも低く、形成画像に発生するカブリが抑制されていた。
【0154】
以上のことから、本発明に係るキャリア、及び本発明に係る現像剤は、形成画像に発生するカブリを抑制できると判断される。また、このようなキャリアを含有する現像剤を使用することから、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、形成画像に発生するカブリを抑制できると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明に係るキャリアは、現像剤に利用することができる。本発明に係る現像剤は、画像形成装置を用いて記録媒体に画像を形成するために利用できる。本発明に係る画像形成装置、及び画像形成方法は、記録媒体に画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0156】
1 :島部
2 :海部
8、8a、8b、8c、8d:帯電装置
9 :露光装置
10 :転写装置
11、11a、11b、11c、11d:現像装置
12、12a、12b、12c、12d:感光体ドラム
13 :転写ベルト
14a :駆動ローラー
14b :従動ローラー
14c :テンションローラー
15、15a、15b、15c、15d:一次転写ローラー
16 :2次転写ローラー
17 :定着装置
18 :クリーニング装置
19 :制御部
20 :画像形成装置
100 :コート層
101 :第1樹脂粒子
102 :第2樹脂領域
103 :キャリアコア
111 :現像ローラー
112 :規制ブレード
113 :第1攪拌シャフト
114 :第2攪拌シャフト
115 :現像剤補給部
115a :補給量調整部材
115b :現像剤コンテナ
116 :現像剤排出部
116a :排出路
116b :回収容器
C :キャリア粒子
D :現像剤
P :記録媒体
R :収容部
T :トナー粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7