(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231205BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
F25B1/00 383
F25B47/02 510H
F25B47/02 510A
(21)【出願番号】P 2020031118
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】加見 祐一
(72)【発明者】
【氏名】徐 兆良
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 淳
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-205646(JP,A)
【文献】特開2007-024470(JP,A)
【文献】特開2011-017474(JP,A)
【文献】特開2021-133795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F25B 1/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
空調対象空間を暖房する暖房運転に際して、前記圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる暖房用熱交換器(12)を有し、高圧冷媒を熱源として前記空調対象空間に送風される送風空気を加熱する加熱部(12、30)と、
前記暖房運転に際して外気から吸熱する外気用熱交換器(22、29)を有する外気用熱交換部(29X)と、
前記外気用熱交換器に対して供給される空気の風速を調整する風速調整部(22a)と、
前記外気用熱交換器の除霜を行う除霜運転として、前記外気が低温である状態で前記外気用熱交換器に付着した霜を蒸発除去させる為のドライ除霜モードを実行する制御部(70)と、を有し、
前記制御部は、
前記ドライ除霜モードにおいて、前記外気用熱交換器に付着した霜を融解させる融解除霜を行う融解制御部(70l)と、
前記融解除霜における霜の融解により前記外気用熱交換器に付着している残留水分に対して、予め定められた範囲の熱量又は前記風速調整部にて予め定められた範囲に調整された風速の少なくとも一方を供給して、前記残留水分を乾燥させるドライ除霜を行うドライ制御部(70m)と、
前記ドライ除霜によって、前記外気用熱交換器における前記残留水分の乾燥が完了したか否かを判定する乾燥完了判定部(70n)と、を有し、
前記乾燥完了判定部にて、前記残留水分の乾燥が完了したと判定された場合に、前記ドライ除霜モードによる前記除霜運転を終了する車両用空調装置。
【請求項2】
前記乾燥完了判定部(70n)は、前記融解除霜を完了するまでに要した投入エネルギ量を特定し、
前記投入エネルギ量を用いて、前記ドライ除霜にて前記残留水分の乾燥するまでに必要な必要エネルギ量を算出し、
前記ドライ除霜にて前記残留水分を乾燥させる為に投入したドライ投入エネルギ量が前記必要エネルギ量以上になった場合に、前記残留水分の乾燥が完了したと判定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記乾燥完了判定部(70n)は、前記ドライ投入エネルギ量が前記必要エネルギ量以上になったか否かを判定する際に、前記ドライ除霜に際して前記外気用熱交換器に投入された総エネルギ量から、空気に対して放熱された放熱エネルギ量を除いて、前記ドライ投入エネルギ量を特定する請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記乾燥完了判定部(70n)は、外気温度、外気湿度、前記外気用熱交換器を通過する風速、前記外気用熱交換器にて前記残留水分を加熱する加熱温度のうち、少なくとも1つを用いて、前記放熱エネルギ量を特定する請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記乾燥完了判定部(70n)は、前記ドライ除霜における前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力が一定である状態において、前記外気用熱交換器(22、29)における冷媒圧力が予め定められた基準圧力を超えた場合、前記残留水分の乾燥が完了したと判定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記乾燥完了判定部(70n)は、前記ドライ除霜における前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力が外気温度により定められる目標凝縮温度に応じて調整される状態において、前記圧縮機の冷媒吐出能力が予め定められた基準吐出能力よりも低下した場合、又は、前記圧縮機の冷媒吐出能力が前記ドライ除霜の動作中に予め定められた基準量以上に低下した場合、前記残留水分の乾燥が完了したと判定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記乾燥完了判定部(70n)は、
前記ドライ除霜モードにおいて、前記融解除霜を開始する際に、前記外気用熱交換器に付着している着霜量を推定する着霜量推定部(70d)と、
前記着霜量推定部によって推定された着霜量の霜を蒸発除去させる為に必要な所要時間を推定する所要時間推定部(70e)と、を有し、
前記ドライ除霜の開始時点からの経過時間が、前記所要時間推定部で推定された所要時間を経過した場合、前記残留水分の乾燥が完了したと判定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記ドライ制御部(70m)は、前記ドライ除霜において、0.12m/s~1.2m/sの範囲内で定められた目標風速になるように前記風速調整部(22a)で調整された空気を前記外気用熱交換器(22、29)に供給する請求項1ないし7の何れか1つに記載された車両用空調装置。
【請求項9】
前記ドライ制御部(70m)は、外気温度が低い程、0.12m/s~1.2m/sの範囲内で定められる前記目標風速を低く定める請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記ドライ制御部(70m)は、外気湿度が高い程、0.12m/s~1.2m/sの範囲内で定められる前記目標風速を低く定める請求項8又は9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記ドライ制御部(70m)は、前記ドライ除霜において、前記外気用熱交換器(22、29)を流通する冷媒又は熱媒体の温度が15℃~70℃の範囲内で定められた目標温度に近づくように調整して、前記外気用熱交換器に対して熱量を供給する請求項1ないし10の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記ドライ制御部(70m)は、外気温度が低い程、15℃~70℃の範囲内で定められる前記目標温度を低く定める請求項11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記ドライ制御部(70m)は、外気湿度が高い程、15℃~70℃の範囲内で定められる前記目標温度を低く定める請求項11又は12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記制御部(70)は、前記外気用熱交換器(22、29)に付着した霜の融解が完了したか否かを判定する融解判定部(70b)を有しており、
前記融解制御部(70l)は、前記融解除霜を開始する際に、前記風速調整部(22a)によって、前記外気用熱交換器に供給される空気の風速を0.12m/s以下に制限し、
前記ドライ制御部(70m)は、前記融解判定部によって前記外気用熱交換器に付着した霜の融解が完了したと判定された場合に、前記ドライ除霜にて、前記風速調整部によって予め定められた0.12m/s~1.2m/sの範囲内の風速になるように調整する請求項1ないし13の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記外気用熱交換部(29X)は、前記外気用熱交換器(29)を介して熱媒体が循環する熱媒体回路(50a)を有し、
前記外気用熱交換器は、前記暖房運転に際して前記外気との熱交換によって冷媒に吸熱させる外気冷媒熱交換部(29a)と、前記外気と前記熱媒体とを熱交換させる外気熱媒体熱交換部(29b)とを熱的に接続した複合型熱交換器により構成されており、
前記熱媒体回路には、前記熱媒体の温度を調整可能な補助熱源(53)が配置されている請求項1ないし14の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記加熱部(12、30)は、前記暖房運転に際して、前記暖房用熱交換器(12)にて高圧冷媒を熱源として加熱される高温側熱媒体が循環すると共に、前記暖房用熱交換器と、前記高温側熱媒体と前記空調対象空間に送風される送風空気を熱交換させるヒータコア(33)と、を接続する高温側熱媒体回路(30)を有し、
前記暖房運転に際して、前記暖房用熱交換器の冷媒流出口に配置され、冷媒を減圧させる吸熱用減圧部(20c)と、
前記吸熱用減圧部で減圧された低圧冷媒に吸熱させて、低温側熱媒体回路(40)を循環する低温側熱媒体を冷却するチラー(24)と、を有し、
前記高温側熱媒体回路及び前記低温側熱媒体回路の少なくとも一方には、前記高温側熱媒体及び前記低温側熱媒体の少なくとも一方を加熱する為の加熱源(34、44)が配置されており、
前記外気用熱交換器(29)は、前記外気と前記高温側熱媒体とを熱交換させる第1熱交換部(29c)と、前記外気と前記低温側熱媒体とを熱交換させる第2熱交換部(29d)と、を熱的に接続した複合型熱交換器により構成されている請求項1ないし14の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記制御部(70)は、前記除霜運転として、前記高温側熱媒体回路(30)又は前記低温側熱媒体回路(40)の少なくとも一方に配置された前記加熱源(34、44)に生じた熱を利用する熱源利用モードを有し、
前記熱源利用モードでは、前記加熱源に生じた熱によって、前記高温側熱媒体と前記低温側熱媒体の少なくとも一方を加熱し、
加熱された前記高温側熱媒体と前記低温側熱媒体の少なくとも一方を、前記外気用熱交換器(29)に流通させて、前記第2熱交換部(29d)に熱を供給する請求項16に記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記低温側熱媒体回路(40)は、バッテリ(75)と前記低温側熱媒体とを熱交換させるバッテリ用熱交換部(43)と、前記低温側熱媒体を循環させる低温側ポンプ(42)と、を有しており、
前記制御部(70)は、前記除霜運転として、前記バッテリの充電中に生じた熱を利用するバッテリ発熱利用モードを有し、
前記バッテリ発熱利用モードでは、充電中の前記バッテリに生じた熱を、前記低温側熱媒体を介して、前記チラー(24)にて低圧冷媒に吸熱させ、
前記チラーから流出した冷媒を前記圧縮機(11)で圧縮して、前記圧縮機から吐出された冷媒の有する熱を、前記暖房用熱交換器(12)にて前記高温側熱媒体に放熱させ、
前記暖房用熱交換器から流出した前記高温側熱媒体の熱を、前記外気用熱交換器(29)の第1熱交換部(29c)を介して、前記第2熱交換部(29d)に供給する請求項17に記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記制御部(70)は、前記除霜運転に際して、前記低温側熱媒体が有する熱量が予め定められた基準熱量以上であるか否かを判定する熱量判定部(70c)を有し、
前記熱量判定部により前記低温側熱媒体が有する熱量が前記基準熱量以上であると判定された場合には、前記バッテリ発熱利用モードで前記外気用熱交換器(29)の除霜を行い、
前記低温側熱媒体が有する熱量が前記基準熱量よりも小さいと判定された場合には、前記熱源利用モードによる前記外気用熱交換器の除霜を行う請求項18に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外気用熱交換器を有する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房運転時に、外気用熱交換器(例えば、室外熱交換器)にて外気から吸熱する車両用空調装置が存在する。このような車両用空調装置に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1の車両用空調装置では、暖房運転時に低温外気から吸熱に起因して着霜した室外熱交換器を除霜するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の技術では、室外熱交換器の除霜を行う際に、冷媒出口温度を0℃近傍にすることで、室外熱交換器の除霜を行っている。この為、特許文献1では、室外熱交換器に着霜した霜を融解させることはできるが、融解により生じた水分は、室外熱交換器の表面に残留していると考えられる。
【0005】
そして、外気が低温である環境において、融解した水分が室外熱交換器表面に残留したままだと、除霜運転終了後に、室外熱交換器の表面で再凍結してしまい、室外熱交換器の熱交換性能を低下させてしまうことが想定される。この為、除霜に伴って生じた残留水分を室外熱交換器から除去する必要がある。
【0006】
更に、室外熱交換器における残留水分の除去が不十分である場合には、残留水分の再凍結することが想定される為、室外熱交換器から残留水分を確実に除去することが重要になる。
【0007】
この点、特許文献1では、冷媒出口温度と外気温との温度差を用いた判断によって、除霜運転の終了を判断している。しかしながら、冷媒出口温度等の温度計測にはばらつきがある為、室外熱交換器表面における残留水分の有無については、精度良く判定することができず、残留水分の再凍結が生じてしまう虞がある。
【0008】
本開示は、上記点に鑑み、外気用熱交換器の除霜に際して、外気用熱交換器に付着した霜に由来する水分の蒸発除去を精度よく完了させることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る車両用空調装置は、圧縮機(11)と、加熱部(12、30)と、外気用熱交換器(22、29)を有する外気用熱交換部(29X)と、風速調整部(22a)と、制御部(70)と、を有している。
【0010】
圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。加熱部は、暖房用熱交換器(12)を有し、高圧冷媒を熱源として空調対象空間に送風される送風空気を加熱する。暖房用熱交換器は、空調対象空間を暖房する暖房運転に際して、圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる。
【0011】
外気用熱交換器は、暖房運転に際して外気から吸熱する。風速調整部は、外気用熱交換器に対して供給される空気の風速を調整する。制御部は、外気用熱交換器の除霜を行う除霜運転として、外気が低温である状態で外気用熱交換器に付着した霜を蒸発除去させる為のドライ除霜モードを実行する。
【0012】
そして、制御部は、融解制御部(70l)と、ドライ制御部(70m)と、乾燥完了判定部(70n)と、を有し、乾燥完了判定部にて、残留水分の乾燥が完了したと判定された場合に、ドライ除霜モードによる除霜運転を終了する。
【0013】
融解制御部は、ドライ除霜モードにおいて、外気用熱交換器に付着した霜を融解させる融解除霜を行う。ドライ制御部は、融解除霜における霜の融解により外気用熱交換器に付着している残留水分に対して、予め定められた範囲の熱量又は風速調整部にて予め定められた範囲に調整された風速の少なくとも一方を供給して、残留水分を乾燥させるドライ除霜を行う。乾燥完了判定部は、ドライ除霜によって、外気用熱交換器における残留水分の乾燥が完了したか否かを判定する。
【0014】
これによれば、ドライ除霜モードの融解除霜によって、外気用熱交換部に付着した霜を融解して、ドライ除霜によって、融解で生じた外気用熱交換器の残留水分を乾燥させることができる。そして、車両用空調装置では、乾燥完了判定部にて、残留水分の乾燥が完了したと判定された場合に、ドライ除霜モードによる除霜運転を終了する。この為、車両用空調装置は、ドライ除霜モードによる除霜運転の終了時に、外気用熱交換器における残留水分を蒸発除去することができ、残留水分の再凍結を防止することができる。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る複合型熱交換器の構成を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態の室内空調ユニットの模式的な構成図である。
【
図4】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態の車両用空調装置における暖房モードの動作を示す全体構成図である。
【
図6】第1実施形態の車両用空調装置における第1凝縮熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図7】第1実施形態の車両用空調装置における第2凝縮熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図8】第1実施形態の車両用空調装置におけるホットガス除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図9】第1実施形態の車両用空調装置における蓄熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図10】車両用空調装置における除霜制御プログラムのフローチャートである。
【
図11】ドライ除霜における蒸発速度を試算する為の実験式の説明図である。
【
図12】外気用熱交換器の凝縮温度に対する熱交換器蒸発量及び風速との関係を示すグラフである。
【
図13】圧縮機回転数に対する凝縮温度及び風速との関係を示すグラフである。
【
図14】熱交換器蒸発量及び風速の関係にて、冷凍サイクル装置で実現可能な運転条件エリアを示すグラフである。
【
図15】ドライ除霜における白霧の視認性に関する基準を示す湿り空気線図である。
【
図16】単位重量あたりの許容上限蒸発量の算出に関する湿り空気線図である。
【
図17】凝縮温度に対する室外器蒸発量及び風速の関係と、許容上限蒸発量との関係を示すグラフである。
【
図18】ドライ除霜にて白霧の目視を抑制しつつ室外熱交換器の熱交換性能を充分に回復させる為の対象エリアを示すグラフである。
【
図19】ドライ除霜にて白霧の目視を抑制しつつ室外熱交換器の熱交換性能を充分に回復させる為の実現可能な目標エリアを示すグラフである。
【
図20】ドライ除霜における目標凝縮温度を決定する為の制御特性図である。
【
図21】ドライ除霜における目標風速を決定する為の制御特性図である。
【
図22】ドライ除霜モードにおける風速、圧縮機回転数及び吐出圧力の変化の一例を示す説明図である。
【
図23】車両用空調装置におけるドライ除霜の完了判定に関するフローチャートである。
【
図24】ドライ除霜の完了判定に関する第1変形例を示す説明図である。
【
図25】ドライ除霜の完了判定に関する第2変形例を示す説明図である。
【
図26】第2実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【
図27】第2実施形態に係る複合型熱交換器の構成を示す模式図である。
【
図28】第2実施形態の車両用空調装置における暖房モードの動作を示す全体構成図である。
【
図29】第2実施形態の車両用空調装置における第1凝縮熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図30】第2実施形態の車両用空調装置における第2凝縮熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図31】第2実施形態の車両用空調装置における蓄熱除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図32】第2実施形態の車両用空調装置におけるバッテリ廃熱利用除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図33】第2実施形態の車両用空調装置におけるヒータ利用除霜モードの動作を示す全体構成図である。
【
図34】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【
図35】第4実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の実施形態を説明する。各実施形態において先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
本開示に係る車両用空調装置1の第1実施形態について、図を用いて説明する。車両用空調装置1は、電動モータから走行用の駆動力を得る車両である電気自動車に搭載されている。本実施形態の車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うと共に、車載機器であるバッテリ75を冷却する車載機器冷却機能付きの空調装置である。
【0019】
バッテリ75は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。本実施形態のバッテリ75は、リチウムイオン電池である。バッテリ75は、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
【0020】
この種のバッテリは、低温になると入出力に制限がかかり、高温になると出力が低下しやすい。この為、バッテリの温度は、バッテリの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(本実施形態では、5℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
【0021】
又、この種のバッテリは、バッテリの温度が高温になるほど、バッテリを構成するセルの劣化が進行しやすい。換言すると、バッテリの温度を或る程度低い温度に維持することで、バッテリの劣化の進行を抑制することができる。
【0022】
そこで、車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10によって生成された冷熱によってバッテリ75を冷却することができるようになっている。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10における送風空気とは異なる冷却対象物は、バッテリ75である。
【0023】
車両用空調装置1は、
図1に示すように、冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50a、室内空調ユニット60等を備えている。
【0024】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能、および高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体を加熱する機能を果たす。更に、冷凍サイクル装置10は、バッテリ75を冷却するために、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を冷却する機能を果たす。
【0025】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行う為に、様々な運転モード用の冷媒回路を切替可能に構成されている。冷凍サイクル装置10は、例えば、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等を切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ75を冷却する運転モードとバッテリ75の冷却を行わない運転モードとを切り替えることができる。
【0026】
又、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。更に、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
【0027】
図1に示すように、冷凍サイクル装置10には、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b、冷却用膨張弁20c、複合型熱交換器29、室内蒸発器23、チラー24等が接続されている。
【0028】
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0029】
圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bとを有している。
【0030】
そして、水冷媒熱交換器12は、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と、熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。水冷媒熱交換器12は、暖房用熱交換器の一例に相当する。
【0031】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手構造の第1接続部14aの流入口側が接続されている。三方継手構造としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0032】
さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2接続部14b~第6接続部14fを備えている。これらの第2接続部14b~第6接続部14fの基本的構成は、第1接続部14aと同様である。
【0033】
第1接続部14aの一方の流出口には、暖房用膨張弁20aの入口側が接続されている。第1接続部14aの他方の流出口には、冷媒バイパス通路28aを介して、第2接続部14bの一方の流入口側が接続されている。冷媒バイパス通路28aには、除湿用開閉弁17aが配置されている。
【0034】
除湿用開閉弁17aは、第1接続部14aの他方の流出口側と第2接続部14bの一方の流入口側とを接続する冷媒バイパス通路28aを開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、暖房用開閉弁17bを備えている。暖房用開閉弁17bの基本的構成は、除湿用開閉弁17aと同様である。
【0035】
除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、制御装置70から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0036】
暖房用膨張弁20aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した高圧冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁20aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0037】
更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを備えている。冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cの基本的構成は、暖房用膨張弁20aと同様である。
【0038】
暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cは、全開機能及び全閉機能をそれぞれ有している。全開機能は、弁開度を全開にすることで流量調整作用及び冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能させる。全閉機能は、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞させる機能である。そして、この全開機能及び全閉機能によって、暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。
【0039】
従って、本実施形態の暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cは、制御装置70から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0040】
暖房用膨張弁20aの出口には、複合型熱交換器29の冷媒入口側が接続されている。複合型熱交換器29は、冷凍サイクル装置10の冷媒と外気とを熱交換させる外気冷媒熱交換部29aと、機器側熱媒体回路50aを循環する熱媒体と外気とを熱交換させる外気熱媒体熱交換部29bを一体的に構成した熱交換器である。従って、複合型熱交換器29は、外気用熱交換器の一例に相当し、外気用熱交換部を構成している。
【0041】
複合型熱交換器29は、駆動装置室内の前方側に配置されている。そして、外気熱媒体熱交換部29bは外気冷媒熱交換部29aに対して車両前方側に配置されている。換言すると、外気熱媒体熱交換部29bは、外気の流れに関して、外気冷媒熱交換部29aの上流側に配置されている。
【0042】
又、複合型熱交換器29には、外気ファン22aが、外気冷媒熱交換部29a及び外気熱媒体熱交換部29bに対して外気を送風するように配置されている。外気ファン22aは、制御装置70から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
【0043】
即ち、外気ファン22aは、複合型熱交換器29に対する外気の風速(風量)を調整することができるので、風速調整部の一例に相当する。従って、複合型熱交換器29は、外気ファン22aによって送風される外気や、電気自動車の走行に伴って送風される外気との熱交換を行うことができる。
【0044】
そして、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29a及び外気熱媒体熱交換部29bは、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっている。冷媒又は熱媒体と、空気(即ち、外気)とを熱交換させるタンクアンドチューブ型の熱交換器は、冷媒又は熱媒体を流通させる複数のチューブと、複数のチューブを流通する冷媒又は熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。そして、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブを流通する冷媒又は熱媒体と、隣り合うチューブ間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
【0045】
図2に示すように、外気冷媒熱交換部29aにおけるチューブ29atの間に形成される空気通路と、外気熱媒体熱交換部29bにおけるチューブ29btの間に形成される空気通路には、熱交換フィン29eが配置されている。熱交換フィン29eは、一つの薄板状の金属部材により構成されている。熱交換フィン29eは、外気冷媒熱交換部29aにおける冷媒と外気との熱交換を促進させると共に、外気熱媒体熱交換部29bにおける熱媒体と外気との熱交換を促進させる部材である。
【0046】
そして、複合型熱交換器29では、複数の熱交換フィン29eが、外気冷媒熱交換部29aのチューブ29atと、外気熱媒体熱交換部29bのチューブ29btの双方にろう付け接合されている。つまり、外気冷媒熱交換部29aと外気熱媒体熱交換部29bは、複数の熱交換フィン29eによって連結されている。
【0047】
これにより、複合型熱交換器29では、熱交換フィン29eを介して、外気冷媒熱交換部29a側の冷媒と、外気熱媒体熱交換部29b側の熱媒体との間における熱の伝達を可能にしている。
【0048】
図1に示すように、複合型熱交換器29の冷媒出口には、第3接続部14cの流入口側が接続されている。第3接続部14cの一方の流出口には、暖房用通路28bを介して、第4接続部14dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路28bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁17bが配置されている。
【0049】
第3接続部14cの他方の流出口には、第2接続部14bの他方の流入口側が接続されている。第3接続部14cの他方の流出口側と第2接続部14bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁21が配置されている。逆止弁21は、第3接続部14c側から第2接続部14b側へ冷媒が流れることを許容し、第2接続部14b側から第3接続部14c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0050】
第2接続部14bの流出口には、第5接続部14eの流入口側が接続されている。第5接続部14eの一方の流出口には、冷房用膨張弁20bの入口側が接続されている。第5接続部14eの他方の流出口には、冷却用膨張弁20cの入口側が接続されている。
【0051】
冷房用膨張弁20bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、複合型熱交換器29から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷房用減圧部である。
【0052】
冷房用膨張弁20bの出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。室内蒸発器23は、冷房用膨張弁20bにて減圧された低圧冷媒と送風機62から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。即ち、室内蒸発器23は、空調用蒸発器の一例に相当する。
【0053】
冷却用膨張弁20cは、少なくともバッテリ75の冷却を行う運転モード時に、複合型熱交換器29から流出した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。又、冷却用膨張弁20cは、水冷媒熱交換器12の冷媒流出口側に配置されている為、吸熱用減圧部の一例に相当する。
【0054】
冷却用膨張弁20cの出口には、チラー24の冷媒通路24aの入口側が接続されている。チラー24は、冷却用膨張弁20cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路24aと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路24bとを有している。
【0055】
そして、チラー24は、冷媒通路24aを流通する低圧冷媒と、熱媒体通路24bを流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器である。チラー24の冷媒通路24aの出口には、第6接続部14fの他方の流入口側が接続されている。
【0056】
そして、室内蒸発器23の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁25の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁25は、室内蒸発器23の着霜を抑制するために、室内蒸発器23における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁25は、室内蒸発器23の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
【0057】
これにより、蒸発圧力調整弁25は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器23の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁25の出口には、第6接続部14fの一方の流入口側が接続されている。そして、第6接続部14fの流出口には、第4接続部14dの他方の流入口側が接続されている。
【0058】
第4接続部14dの流出口には、アキュムレータ26の入口側が接続されている。アキュムレータ26は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器であり、貯液部の一例に相当する。アキュムレータ26の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の第5接続部14eは、複合型熱交換器29から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部として機能する。また、第6接続部14fは、室内蒸発器23から流出した冷媒の流れとチラー24から流出した冷媒の流れとを合流させて、圧縮機11の吸入側へ流出させる合流部である。
【0060】
そして、室内蒸発器23およびチラー24は、冷媒流れに対して互いに並列的に接続されている。さらに、冷媒バイパス通路28aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を、分岐部の上流側へ導いている。暖房用通路28bは、複合型熱交換器29から流出した冷媒を、圧縮機11の吸入口側へ導いている。
【0061】
次に、第1実施形態における高温側熱媒体回路30について説明する。高温側熱媒体回路30は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路30は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、高温側ポンプ32、ヒータコア33、水加熱ヒータ34等を、高温側熱媒体流路31によって接続して構成されている。
【0062】
水冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの出口側には、水加熱ヒータ34が配置されている。水加熱ヒータ34は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bから流出した高温側熱媒体を加熱する加熱装置であり、熱源の一例に相当する。水加熱ヒータ34としては、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを採用することができる。水加熱ヒータ34の発熱量は、制御装置70から出力される制御電圧によって任意に制御される。
【0063】
水加熱ヒータ34の熱媒体通路の出口側には、高温側ポンプ32の吸入口側が接続されている。高温側ポンプ32は、水加熱ヒータ34を通過した高温側熱媒体を、ヒータコア33の熱媒体入口側へ水ポンプである。高温側ポンプ32は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0064】
ヒータコア33は、水冷媒熱交換器12等にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器23を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。
図3に示すように、ヒータコア33は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。ヒータコア33の熱媒体出口には、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bの入口側が接続されている。
【0065】
従って、高温側熱媒体回路30では、高温側ポンプ32が、ヒータコア33へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することで、ヒータコア33における高温側熱媒体の送風空気への放熱量(即ち、ヒータコア33における送風空気の加熱量)を調整できる。
【0066】
つまり、本実施形態では、水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路30の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
【0067】
続いて、第1実施形態における低温側熱媒体回路40について説明する。低温側熱媒体回路40は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。
【0068】
低温側熱媒体回路40は、チラー24の熱媒体通路12b、低温側ポンプ42、バッテリ用熱交換部43、電気ヒータ44、低温側リザーブタンク45等を低温側熱媒体流路41によって接続して構成されている。
【0069】
そして、低温側熱媒体回路40は、バッテリ用熱交換部43にて、冷凍サイクル装置10等によって温度調整された低温側熱媒体とバッテリ75とを熱交換させることで、バッテリ75の温度調整を行う。低温側熱媒体回路40は、バッテリ75の温度調整を行うと共に、バッテリ75からの廃熱を様々な用途で有効に活用する為の熱媒体回路ということができる。
【0070】
図1に示すように、チラー24における熱媒体通路24bの出口側には、電気ヒータ44が配置されている。電気ヒータ44は、チラー24の熱媒体通路24bから流出した低温側熱媒体を加熱する加熱装置であり、熱源の一例に相当する。電気ヒータ44として、PTCヒータを採用することができる。電気ヒータ44の発熱量は、制御装置70から出力される制御電圧によって任意に制御される。
【0071】
電気ヒータ44における熱媒体通路24bの出口側には、バッテリ用熱交換部43の入口側が接続されている。バッテリ用熱交換部43は、熱媒体通路43aを流通する低温側熱媒体と電池セルとを熱交換させることによって、バッテリ75の温度を調整する為の熱交換部である。
【0072】
そして、バッテリ用熱交換部43における熱媒体通路43aは、専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。これにより、熱媒体通路43aは、バッテリ75の全域からバッテリ75の廃熱を均等に吸熱できるように形成されている。換言すると、冷媒通路は、全ての電池セルの有する熱を均等に吸熱して、全ての電池セルを均等に冷却できるように形成されている。
【0073】
このようなバッテリ用熱交換部43は、積層配置された電池セル同士の間に熱媒体通路43aを配置することによって形成すればよい。又、バッテリ用熱交換部43は、バッテリ75に一体的に形成されていてもよい。例えば、積層配置された電池セルを収容する専用ケースに熱媒体通路43aを設けることによって、バッテリ75に一体的に形成されていてもよい。
【0074】
バッテリ用熱交換部43における熱媒体通路43aの出口には、低温側リザーブタンク45が配置されている。低温側リザーブタンク45は、低温側熱媒体回路40で余剰となっている低温側熱媒体を貯留する貯留部である。
【0075】
そして、低温側リザーブタンク45の熱媒体出口側には、低温側ポンプ42の吸入口側が接続されている。低温側ポンプ42は、チラー24における熱媒体通路43aの入口側へ低温側熱媒体を圧送する水ポンプである。低温側ポンプ42の基本的構成は、高温側ポンプ32と同様である。
【0076】
従って、低温側熱媒体回路40では、低温側ポンプ42が、バッテリ用熱交換部43へ流入する低温側熱媒体の流量を調整することによって、バッテリ用熱交換部43における低温側熱媒体がバッテリ75から奪う吸熱量を調整できる。又、電気ヒータ44により、バッテリ75と低温側熱媒体との温度差を調整することでも、バッテリ用熱交換部43における吸熱量を調整できる。
【0077】
つまり、本実施形態によれば、チラー24及び低温側熱媒体回路40の各構成機器によって、冷却用膨張弁20cから流出した冷媒を蒸発させて、バッテリ75を冷却する冷却部が構成されている。
【0078】
次に、第1実施形態における機器側熱媒体回路50aについて説明する。機器側熱媒体回路50aは、電気自動車に搭載された発熱機器53の温度を調整すると共に、発熱機器53に生じる熱を活用する為の熱媒体回路である。機器側熱媒体回路50aの熱媒体としては、上述した高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40等と同様の熱媒体を採用できる。
【0079】
機器側熱媒体回路50aは、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bと、機器側ポンプ52、発熱機器53と、機器側三方弁54とを、機器側熱媒体流路51によって環状に接続して構成されている。従って、機器側熱媒体回路50aは、複合型熱交換器29と共に、外気用熱交換部29Xを構成している。
【0080】
複合型熱交換器29における外気熱媒体熱交換部29bの熱媒体出口側には、機器側熱媒体流路51を介して、機器側ポンプ52の吸入口側が接続されている。機器側ポンプ52は、機器側熱媒体流路51の熱媒体を発熱機器53における熱媒体通路53aの入口側へ圧送する。機器側ポンプ52の基本的構成は、高温側ポンプ32等と同様である。
【0081】
そして、機器側ポンプ52の吐出口側には、発熱機器53の熱媒体通路53aが配置されている。発熱機器53は、電気自動車に搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器によって構成されている。発熱機器53は、補助熱源の一例に相当する。
【0082】
換言すると、発熱機器53は、発熱とは異なる目的の作動によって発熱し、その発熱量の制御が困難な機器である。従って、発熱機器53は、発熱を目的として作動して、任意の熱量を発生させる水加熱ヒータ34のような加熱装置ではない。発熱機器53としては、インバータ、モータジェネレータが採用されている。そして、発熱機器53の熱媒体通路53aは、熱媒体を流通させることで、それぞれの構成機器を冷却できるように形成されている。
【0083】
インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
【0084】
尚、発熱機器53として、トランスアクスル装置を採用することも可能である。トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。
【0085】
そして、発熱機器53の熱媒体通路53aにおける出口側には、機器側三方弁54の流入出口の1つが接続されている。機器側三方弁54は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
【0086】
機器側三方弁54における別の流入出口は、機器側熱媒体流路51を介して、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bにおける熱媒体入口側に対して接続されている。そして、機器側三方弁54のさらに別の流入出口には、機器側迂回流路51aが接続されている。
【0087】
機器側迂回流路51aは、機器側熱媒体回路50aにおける熱媒体の流れに関して、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bを迂回させる為の熱媒体流路である。機器側迂回流路51aの他端側は、複合型熱交換器29における外気熱媒体熱交換部29bの出口側と機器側ポンプ52の吸入口側を接続する機器側熱媒体流路51に対して接続されている。
【0088】
これにより、機器側熱媒体回路50aは、機器側三方弁54の作動を制御することで、機器側熱媒体回路50aにおける熱媒体の流れを切り替えることができる。従って、機器側熱媒体回路50aにおいて、機器側迂回流路51a及び発熱機器53を介して熱媒体を循環させることで、発熱機器53の廃熱を機器側熱媒体回路50aの熱媒体に蓄熱しておくことができる。
【0089】
次に、室内空調ユニット60について、
図3を参照して説明する。室内空調ユニット60は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0090】
室内空調ユニット60は、その外殻を形成するケーシング61内に形成された空気通路の内部に送風機62、室内蒸発器23、ヒータコア33等を収容している。ケーシング61は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。ケーシング61は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0091】
ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
【0092】
内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0093】
内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0094】
送風機62の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器23、ヒータコア33が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器23は、ヒータコア33よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
【0095】
ケーシング61内には、室内蒸発器23通過後の送風空気を、ヒータコア33を迂回して流す冷風バイパス通路65が設けられている。又、ケーシング61内の室内蒸発器23の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア33の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。
【0096】
エアミックスドア64は、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、ヒータコア33側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路65を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア64は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0097】
ケーシング61内のヒータコア33及び冷風バイパス通路65の送風空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア33にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路65を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。
【0098】
そして、ケーシング61の送風空気流れ下流部には、混合空間にて混合された送風空気(即ち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0099】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0100】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0101】
従って、エアミックスドア64が、ヒータコア33を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整される。
【0102】
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0103】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成する。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0104】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0105】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0106】
更に、乗員が操作パネル71に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0107】
次に、車両用空調装置1の電気制御部の概要について、
図4を用いて説明する。制御装置70は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置70は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
【0108】
各種制御対象機器には、圧縮機11、除湿用開閉弁17a、暖房用開閉弁17b、暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b、冷却用膨張弁20c、外気ファン22aが含まれている。更に、各種制御対象機器には、高温側ポンプ32、水加熱ヒータ34、低温側ポンプ42、電気ヒータ44、機器側ポンプ52、機器側三方弁54、送風機62、内外気切替装置63、エアミックスドア64等が含まれている。
【0109】
そして、制御装置70の入力側には、
図3に示すように、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサとしては、内気温センサ72a、外気温センサ72b、日射センサ72c、高圧圧力センサ72d、空調風温度センサ72eが含まれる。又、制御用センサとして、蒸発器温度センサ72f、蒸発器圧力センサ72g、チラー温度センサ72h、チラー圧力センサ72i、室外器温度センサ72j、室外器圧力センサ72k、バッテリ温度センサ72lが含まれている。
【0110】
内気温センサ72aは、車室内の温度である内気温Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72bは、車室外の温度である外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ72cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0111】
高圧圧力センサ72dは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の圧力である高圧圧力Pdを検出する高圧圧力検出部である。空調風温度センサ72eは、混合空間から車室内へ吹き出される吹出空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0112】
蒸発器温度センサ72fは、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ72fは、具体的に、室内蒸発器23の出口側冷媒の温度を検出している。
【0113】
蒸発器圧力センサ72gは、室内蒸発器23における冷媒蒸発圧力Peを検出する蒸発器圧力検出部である。本実施形態の蒸発器圧力センサ72gは、具体的に、室内蒸発器23の出口側冷媒の圧力を検出している。
【0114】
チラー温度センサ72hは、チラー24の冷媒通路24aにおける冷媒蒸発温度を検出するチラー側冷媒温度検出部である。具体的に、本実施形態に係るチラー温度センサ72hは、チラー24の冷媒通路24aにおける出口側冷媒の温度を検出している。
【0115】
チラー圧力センサ72iは、チラー24の冷媒通路24aにおける冷媒蒸発圧力を検出するチラー側冷媒圧力検出部である。具体的に、チラー圧力センサ72iは、チラー24の冷媒通路24aにおける出口側冷媒の圧力を検出している。
【0116】
室外器温度センサ72jは、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aを流通する冷媒の温度である室外器冷媒温度T1を検出する室外器温度検出部である。本実施形態の室外器温度センサ72jは、具体的に、複合型熱交換器29における外気冷媒熱交換部29aの出口側冷媒の温度を検出している。
【0117】
室外器圧力センサ72kは、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aを流通する冷媒の圧力である室外器冷媒圧力P1を検出する室外器温度検出部である。本実施形態の室外器圧力センサ72kは、具体的に、複合型熱交換器29における外気冷媒熱交換部29aの出口側冷媒の圧力を検出している。
【0118】
バッテリ温度センサ72lは、バッテリ75の温度であるバッテリ温度TBを検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ72lは、複数の温度検出部を有し、バッテリ75の複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置70では、バッテリ75の各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
【0119】
又、制御装置70の入力側には、高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50aにおける各熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ73a~第5熱媒体温度センサ73eが含まれている。
【0120】
第1熱媒体温度センサ73aは、水冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの出口部分に配置されており、水冷媒熱交換器12から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ73bは、ヒータコア33の流出口部分に配置されており、ヒータコア33を通過する高温側熱媒体の温度を検出する。
【0121】
第3熱媒体温度センサ73cは、水加熱ヒータ34の熱媒体通路における出口部分に配置されており、水加熱ヒータ34から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第4熱媒体温度センサ73dは、チラー24における熱媒体通路の流入口部分に配置されており、チラー24に流入する熱媒体の温度を検出する。
【0122】
そして、第5熱媒体温度センサ73eは、バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aにおける流出口部分に配置されており、バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aから流出する低温側熱媒体の温度を検出する。
【0123】
車両用空調装置1は、第1熱媒体温度センサ73a~第5熱媒体温度センサ73e等の温度センサの検出結果を参照して、高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50aにおける熱媒体の流れを切り替える。
【0124】
更に、制御装置70の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続されている。制御装置70には、この操作パネル71に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0125】
操作パネル71に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。オートスイッチは、冷凍サイクル装置10の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。
【0126】
エアコンスイッチは、室内蒸発器23で送風空気の冷却を行うことを要求する操作スイッチである。風量設定スイッチは、送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される操作スイッチである。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する操作スイッチである。
【0127】
又、制御装置70には、通信ユニット74が接続されている。通信ユニット74は、インターネット、携帯電話網等の公衆回線網及び基地局を含むネットワークを介して、種々の情報を通信して取得する。従って、制御装置70は、車両用空調装置1が搭載されている電気自動車の現在位置に対応する気象情報等を取得することができる。
【0128】
そして、本実施形態の制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(即ち、ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0129】
例えば、制御装置70のうち、複合型熱交換器29の着霜量が予め定められた基準を超えたか否かを判定する構成は、着霜判定部70aを構成する。又、制御装置70のうち、除霜運転によって、複合型熱交換器29に付着した霜が全て融解したか否かを判定する構成は、融解判定部70bを構成する。
【0130】
そして、制御装置70のうち、除霜運転に際して、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体が有する熱量が予め定められた基準熱量以上であるか否かを判定する構成は、熱量判定部70cを構成する。
【0131】
制御装置70のうち、後述するドライ除霜モードでの除霜運転を開始する前に、複合型熱交換器29に付着している着霜量を推定する構成は、着霜量推定部70dを構成する。そして、制御装置70のうち、着霜量推定部70dによって推定された着霜量の霜を蒸発除去させる為に必要な所要時間を推定する構成は、所要時間推定部70eを構成する。
【0132】
又、制御装置70のうち、後述するドライ除霜モードを構成する融解除霜にて、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させる為の制御を行う構成は、融解制御部70lを構成する。そして、制御装置70のうち、ドライ除霜モードを構成するドライ除霜にて、霜の融解に伴い生じた水分を複合型熱交換器29から蒸発除去する為の制御を行う構成は、ドライ制御部70mを構成する。
【0133】
更に、制御装置70のうち、ドライ除霜モードのドライ除霜において、霜の融解に伴い生じた水分の蒸発除去による複合型熱交換器29の乾燥が完了したか否かを判定する構成は、乾燥完了判定部70nを構成する。
【0134】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置の作動について説明する。車両用空調装置1は、車室内の空調及びバッテリ75の冷却を行うために、冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0135】
具体的に、車両用空調装置1は、車室内の空調を行うために、暖房モードの冷媒回路、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路等に切り替えることができる。暖房モードは、加熱された送風空気を車室内へ吹き出す運転モードである。冷房モードは、冷却された送風空気を車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。
【0136】
これらの運転モードの切り替えは、予め制御装置70に記憶されている空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル71のオートスイッチが投入(ON)されると実行される。空調制御プログラムでは、各種制御用センサの検出信号および操作パネルの操作信号に基づいて、運転モードを切り替える。
【0137】
本実施形態に係る車両用空調装置1における暖房モードについて、
図4を参照して説明する。暖房モードでは、制御装置70が、除湿用開閉弁17aを閉じ、暖房用開閉弁17bを開く。そして、制御装置70は、暖房用膨張弁20aを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態として、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全閉状態とする。
【0138】
又、制御装置70は、高温側ポンプ32を作動させ、予め定められた圧送能力で高温側熱媒体を圧送する。尚、暖房モードにおいては、制御装置70は、低温側ポンプ42を停止させた状態にしておく。
【0139】
そして、機器側熱媒体回路50aにおいては、制御装置70は、発熱機器53の熱媒体通路53aと機器側迂回流路51aとを連通させて、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bへの流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。この時、制御装置70は、機器側熱媒体回路50aの熱媒体温度が発熱機器53に定められた温度範囲内になるように、機器側ポンプ52の動作を制御する。
【0140】
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
図5に示すように、暖房モードにおける冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、暖房用開閉弁17b、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0141】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、ヒータコア33における高温側熱媒体の温度が目標高温側熱媒体温度に近づくように、冷媒吐出能力を制御する。
【0142】
目標高温側熱媒体温度は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶されている暖房モード用の制御マップを参照して決定される。目標吹出温度TAOは、各種制御用センサの検出信号および操作パネルの操作信号を用いて算定される。
【0143】
又、エアミックスドア64については、制御装置70は、空調風温度センサ72eによって検出された吹出空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように開度を制御する。暖房モードでは、室内蒸発器23を通過した送風空気の全風量を水冷媒熱交換器12へ流入させるようにエアミックスドア64の開度を制御してもよい。
【0144】
冷凍サイクル装置10では、圧縮機11が作動すると、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aへ流入する。水冷媒熱交換器12へ流入した冷媒は、熱媒体通路12bを流れる高温側熱媒体に放熱して凝縮する。これにより、水冷媒熱交換器12において、高温側熱媒体が加熱される。
【0145】
この時、高温側熱媒体回路30では、高温側ポンプ32の作動によって、高温側熱媒体が循環している。従って、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体は、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32を介して、ヒータコア33に流入する。ヒータコア33に流入した高温側熱媒体は、室内蒸発器23を通過した送風空気と熱交換する。これにより、車室内に送風される送風空気が、少なくとも高圧冷媒を熱源として加熱される。
【0146】
水冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、第1接続部14aを介して暖房用膨張弁20aへ流入し、低圧冷媒となるまで減圧される。暖房用膨張弁20aにて減圧された低圧冷媒は、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aへ流入する。複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aへ流入した冷媒は、外気ファン22aから送風された外気と熱交換し、外気から吸熱して蒸発する。
【0147】
複合型熱交換器29から流出した冷媒は、第3接続部14c、暖房用開閉弁17b、第4接続部14dを介して、アキュムレータ26に流入する。アキュムレータ26にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0148】
従って、暖房モードでは、ヒータコア33にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。そして、暖房モードでは、機器側熱媒体回路50aの熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。
【0149】
上述したように、本実施形態に係る車両用空調装置1の暖房モードでは、複合型熱交換器29にて外気から吸熱し、外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用している。ここで、外気が低温高湿度である場合には、複合型熱交換器29における外気冷媒熱交換部29aの表面に着霜が生じ、複合型熱交換器29における熱交換性能を低下させてしまう。
【0150】
換言すると、暖房モードにおいて、複合型熱交換器29の着霜が生じると、複合型熱交換器29における外気からの吸熱量が低下してしまい、結果として、車両用空調装置1の暖房性能が低下する要因となる。この為、本実施形態に係る車両用空調装置1は、複合型熱交換器29の着霜に対処する為に、複数の除霜モードによる除霜運転を実行する。
【0151】
本実施形態における除霜運転の運転態様としては、第1凝縮熱除霜モード、第2凝縮熱除霜モード、第3凝縮熱除霜モード、ホットガス除霜モード、蓄熱除霜モードを有している。除霜運転の運転態様の一つである第1凝縮熱除霜モードについて、
図6を参照して説明する。
【0152】
第1凝縮熱除霜モードは、室内蒸発器23にて室内空調ユニット60内の送風空気から吸熱した熱及びチラー24にて低温側熱媒体回路40から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。チラー24にて低温側熱媒体回路40から吸熱した熱には、バッテリ75から低温側熱媒体に放熱された熱や、電気ヒータ44で低温側熱媒体に加えられた熱が含まれる。
【0153】
第1凝縮熱除霜モードは、例えば、電気自動車のバッテリ75の充電中であって、車室内に熱容量がある場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。バッテリ75の充電中であれば、バッテリ75に生じる熱量が大きいことが想定される為、充電によりバッテリ75に生じた熱を、複合型熱交換器29の除霜に有効活用できる。
【0154】
第1凝縮熱除霜モードにおいて、制御装置70は、除湿用開閉弁17a及び暖房用開閉弁17bを閉じる。そして、制御装置70は、暖房用膨張弁20aを全開状態として、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを絞り状態とする。
【0155】
又、制御装置70は、低温側熱媒体回路40に関し、低温側ポンプ42を作動させて、予め定められた圧送能力で低温側熱媒体を圧送する。尚、第1凝縮熱除霜モードでは、制御装置70は、高温側熱媒体回路30に関して、高温側ポンプ32を停止させた状態にしておく。
【0156】
そして、機器側熱媒体回路50aにおいては、制御装置70は、発熱機器53の熱媒体通路53aと機器側迂回流路51aとを連通させて、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bへの流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。
【0157】
これにより、第1凝縮熱除霜モードの場合の冷凍サイクル装置10では、少なくとも、2つの冷媒の循環回路が構成される。第1凝縮熱除霜モードにおける冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、逆止弁21、冷房用膨張弁20b、室内蒸発器23、蒸発圧力調整弁25、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0158】
同時に、冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、逆止弁21、冷却用膨張弁20c、チラー24、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0159】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、チラー24における低温側熱媒体の温度が目標低温側熱媒体温度に近づくように、冷媒吐出能力を制御する。目標低温側熱媒体温度は、バッテリ温度が適正な温度範囲に近づくように定められる。
【0160】
又、冷房用膨張弁20bについては、制御装置70は、室内蒸発器23の出口側冷媒の過熱度が、予め定めた基準蒸発器側過熱度(本実施形態では、5℃)に近づくように絞り開度を制御する。室内蒸発器23の出口側冷媒の過熱度は、蒸発器温度センサ72fで検出された冷媒蒸発温度Te及び蒸発器圧力センサ72gで検出された冷媒蒸発圧力Peから算定される。
【0161】
そして、冷却用膨張弁20cについては、制御装置70は、チラー24における冷媒通路24aの出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準チラー側過熱度に近づくように絞り開度を制御する。チラー24における出口側冷媒の過熱度は、チラー24の出口側冷媒の過熱度は、チラー温度センサ72hで検出された出口側冷媒の温度と、チラー圧力センサ72iで検出された出口側冷媒の圧力から算出される。又、基準チラー側過熱度は、バッテリ温度TBがバッテリ75の適切な温度範囲内に維持できる低温側熱媒体の温度となるように設定されている。
【0162】
図6に示すように、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aを通過する。この時、高温側熱媒体回路30では、高温側ポンプ32が停止している為、水冷媒熱交換器12へ流入した冷媒は、熱媒体通路12bを流れる高温側熱媒体に殆ど放熱することなく、冷媒通路12aを通過する。
【0163】
水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bから流出した高圧冷媒は、第1接続部14aを介して、全開状態の暖房用膨張弁20aを通過して、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aに流入する。従って、複合型熱交換器29には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が殆ど放熱することなく流入する。この為、複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aに対して高圧冷媒の有する熱を加えることができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0164】
複合型熱交換器29の外気冷媒熱交換部29aから流出した冷媒は、第3接続部14c、逆止弁21,第2接続部14bを介して、第5接続部14eに流入する。第5接続部14eの一方の流出口から流出した冷媒は、冷房用膨張弁20bにて減圧され、室内蒸発器23に流入する。室内蒸発器23に流入した低圧冷媒は、ケーシング61内の車室内空気から吸熱して蒸発する。
【0165】
そして、第5接続部14eの他方の流出口から流出した冷媒は、冷却用膨張弁20cにて減圧され、チラー24の冷媒通路24aに流入する。ここで、低温側熱媒体回路40では、低温側ポンプ42が作動している為、チラー24の熱媒体通路24bには、バッテリ75から吸熱した低温側熱媒体が圧送されている。従って、チラー24に流入した低圧冷媒は、バッテリ75の廃熱で加熱された低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。
【0166】
室内蒸発器23から流出した冷媒及びチラー24から流出した冷媒は、第6接続部14fにて合流して、第4接続部14dを介して、アキュムレータ26に流入する。アキュムレータ26では冷媒の気液分離が行われ、気相冷媒が圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0167】
このように、第1凝縮熱除霜モードでは、室内蒸発器23で吸熱した車室内空気の熱及び、チラー24で吸熱したバッテリ75に生じた熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0168】
そして、第1凝縮熱除霜モードでは、機器側熱媒体回路50aの熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0169】
次に、除霜運転の運転態様の一つである第2凝縮熱除霜モードについて、
図7を参照して説明する。第2凝縮熱除霜モードは、チラー24にて低温側熱媒体回路40から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。第2凝縮熱除霜モードは、例えば、電気自動車のバッテリ75の充電中の場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。
【0170】
第2凝縮熱除霜モードにおいて、制御装置70は、除湿用開閉弁17a及び暖房用開閉弁17bを閉じる。又、制御装置70は、暖房用膨張弁20aを全開状態として、冷却用膨張弁20cを絞り状態とする。そして、制御装置70は、冷房用膨張弁20bを全閉状態にする。
【0171】
又、制御装置70は、低温側ポンプ42を作動させて、予め定められた圧送能力で低温側熱媒体を圧送する。そして、制御装置70は、高温側熱媒体回路30に関して、高温側ポンプ32を停止させた状態にしておく。
【0172】
そして、機器側熱媒体回路50aにおいては、制御装置70は、発熱機器53の熱媒体通路53aと機器側迂回流路51aとを連通させて、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bへの流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。この時、制御装置70は、機器側熱媒体回路50aの熱媒体温度が発熱機器53に定められた温度範囲内になるように、機器側ポンプ52の動作を制御する。
【0173】
これにより、第2凝縮熱除霜モードの場合の冷凍サイクル装置10では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、逆止弁21、冷却用膨張弁20c、チラー24、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0174】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。第2凝縮熱除霜モードでは、冷房用膨張弁20bを除いて、各制御対象機器を第1凝縮熱除霜モードと同様に制御する。
【0175】
図7に示すように、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aを通過する。水冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒は、全開状態の暖房用膨張弁20aを通過して、複合型熱交換器29に流入する。
【0176】
従って、複合型熱交換器29には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が殆ど放熱することなく流入する。この為、複合型熱交換器29に対して高圧冷媒の有する熱を加えることができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0177】
複合型熱交換器29から流出した冷媒は、逆止弁21、第2接続部14b、第5接続部14eを介して、冷却用膨張弁20cに流入して減圧され、チラー24の冷媒通路24aに流入する。これにより、チラー24に流入した低圧冷媒は、バッテリ75の廃熱で加熱された低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。
【0178】
チラー24から流出した冷媒は、第6接続部14f及び第4接続部14dを介して、アキュムレータ26に流入する。アキュムレータ26では冷媒の気液分離が行われ、気相冷媒が圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0179】
このように、第2凝縮熱除霜モードでは、チラー24で吸熱したバッテリ75に生じた熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0180】
そして、第2凝縮熱除霜モードでは、機器側熱媒体回路50aの熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0181】
続いて、除霜運転の運転態様の一つである第3凝縮熱除霜モードについて説明する。第3凝縮熱除霜モードは、室内蒸発器23にて車室内空気から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。第3凝縮熱除霜モードは、例えば、低温側熱媒体の温度が低下した状態で、且つ、車室内に熱容量がある場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。
【0182】
第3凝縮熱除霜モードにおける各種制御対象機器の作動については、冷却用膨張弁20cを閉状態にする点を除いて、上述した第1凝縮熱除霜モードと同様である。つまり、第3凝縮熱除霜モードでは、冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、第2開閉弁16b、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、冷房用膨張弁20b、室内蒸発器23、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。従って、第3凝縮熱除霜モードでは、車室内空気が有する熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0183】
ここで、車両用空調装置1においては、第3凝縮熱除霜モードでの除霜運転を行っている状態で、バッテリ75の冷却が要求された場合には、冷却用膨張弁20cを閉状態から絞り状態に変更して、第1凝縮熱除霜モードでの除霜運転を実行するように構成される。
【0184】
又、車両用空調装置1において、凝縮熱除霜モードで複合型熱交換器29の除霜を行う場合、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の温度に応じて、第2凝縮熱除霜モードと、第3凝縮熱除霜モードが使い分けられる。
【0185】
例えば、低温側熱媒体温度がバッテリ75の発熱量が大きいことを示す基準低温側熱媒体温度(例えば、0℃)以上となっている場合には、除霜運転の運転態様として、第2凝縮熱除霜モードが実行される。低温側熱媒体温度が基準低温側熱媒体温度よりも低い場合、除霜運転の運転態様として、第3凝縮熱除霜モードが実行される。これにより、除霜運転の際の除霜熱源として、バッテリ75の廃熱を有効に利用することができる。
【0186】
尚、バッテリ75の充電中に、第1凝縮熱除霜モード又は第2凝縮熱除霜モードで除霜運転を実行する場合には、低温側熱媒体温度が予め定められた低温側熱媒体温度範囲内になるように、電気ヒータ44によって補助するようにしても良い。低温側熱媒体温度範囲は、バッテリ75の充電効率が最も高くなるように、バッテリ75の充電容量の確保及び劣化の防止の観点から定められた低温側熱媒体の温度範囲であり、例えば、0℃~40℃である。
【0187】
本実施形態における除霜運転の運転態様の一つであるホットガス除霜モードについて、
図8を参照して説明する。ホットガス除霜モードは、圧縮機11の圧縮仕事等によって、複合型熱交換器29へ流入する気相冷媒の温度を上昇させることによって除霜を行う運転モードである。ホットガス除霜モードは、例えば、低温側熱媒体の温度が低下し、バッテリ75からの吸熱が禁止された場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。
【0188】
ホットガス除霜モードにおいて、制御装置70は、除湿用開閉弁17aを閉じ、暖房用開閉弁17bを開く。又、制御装置70は、暖房用膨張弁20aを絞り状態として、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全閉状態にする。更に、制御装置70は、低温側ポンプ42及び高温側ポンプ32を何れも停止させた状態にしておく。
【0189】
そして、機器側熱媒体回路50aにおいては、制御装置70は、発熱機器53の熱媒体通路53aと機器側迂回流路51aとを連通させて、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bへの流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。
【0190】
これにより、ホットガス除霜モードの場合の冷凍サイクル装置10では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁20a、複合型熱交換器29、暖房用開閉弁17b、アキュムレータ26、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0191】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。ホットガス徐霜モードでは、例えば、圧縮機11については、ホットガス除霜モードについて、予め定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動が制御される。
【0192】
そして、暖房用膨張弁20aの絞り開度については、ホットガス除霜モードについて、予め定められた絞り開度となるように調整される。例えば、水冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの出口側の冷媒温度が水冷媒熱交換器12における熱媒体通路24bの出口側の高温側熱媒体温度に近づくように、暖房用膨張弁20aの絞り開度が調整される。
【0193】
図8に示すように、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aを通過する。水冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒は、全開状態の暖房用膨張弁20aを通過して、複合型熱交換器29に流入する。
【0194】
従って、複合型熱交換器29には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が殆ど放熱することなく流入する。この為、複合型熱交換器29に対して、圧縮機11の圧縮仕事によって加えられた高圧冷媒の有する熱を伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0195】
複合型熱交換器29から流出した冷媒は、第3接続部14c、暖房用開閉弁17b、第4接続部14dを介して、アキュムレータ26に流入する。アキュムレータ26では冷媒の気液分離が行われ、気相冷媒が圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0196】
このように、ホットガス除霜モードでは、圧縮機11の圧縮仕事によって高圧冷媒に加えられた熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。そして、ホットガス除霜モードでは、機器側熱媒体回路50aの熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0197】
続いて、除霜運転の運転態様の一つである蓄熱除霜モードについて、
図9を参照して説明する。蓄熱除霜モードは、機器側熱媒体回路50aを循環する熱媒体に蓄熱された熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。蓄熱除霜モードは、例えば、冷凍サイクル装置10の運転が禁止された場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。
【0198】
蓄熱除霜モードにおいて、制御装置70は、圧縮機11の動作を停止すると共に、除湿用開閉弁17aを開き、暖房用開閉弁17bを閉じる。又、制御装置70は、暖房用膨張弁20a、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全開状態とする。そして、制御装置70は、低温側ポンプ42及び高温側ポンプ32を、何れも停止させた状態にしておく。
【0199】
機器側熱媒体回路50aにおいては、制御装置70は、発熱機器53の熱媒体通路53aと外気熱媒体熱交換部29bの外気熱媒体熱交換部29bとを連通させて、機器側迂回流路51aへの流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。この時、制御装置70は、蓄熱除霜モードに定められた圧送能力になるように、機器側ポンプ52を動作させて、機器側熱媒体回路50a内において熱媒体を循環させる。
【0200】
これにより、機器側熱媒体回路50aでは、熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器53の熱媒体通路53a、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bにおける熱媒体通路、機器側ポンプ52の順に流れて循環する。
【0201】
ここで、車両用空調装置1では、暖房モード等において、機器側熱媒体回路50aを循環する熱媒体に対して、発熱機器53に生じた廃熱を蓄熱している。この為、蓄熱除霜モードでは、発熱機器53の廃熱を蓄熱している熱媒体を、複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bに流入させることができ、発熱機器53の廃熱を複合型熱交換器29の外気熱媒体熱交換部29bに伝達することができる。
【0202】
図2に示すように、複合型熱交換器29では、複数の熱交換フィン29eを介して、外気熱媒体熱交換部29bと外気冷媒熱交換部29aが熱的に接続されている。この為、外気熱媒体熱交換部29b及び熱交換フィン29eを介して、発熱機器53の廃熱を、外気冷媒熱交換部29aに伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜に用いることができる。
【0203】
このように、蓄熱除霜モードでは、冷凍サイクル装置10を作動させることなく、発熱機器53の廃熱を有効に活用して、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0204】
本実施形態に係る車両用空調装置1における複合型熱交換器29の除霜運転は、制御装置70によって、ROMに格納された除霜制御プログラムを実行することで実現される。この除霜制御プログラムは、複合型熱交換器29に付着した霜の着霜量が予め定められた基準を超えた場合に実行される。
【0205】
図10に示すように、除霜制御プログラムでは、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させる通常除霜モードと、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させ、融解で生じた残留水分を蒸発させることで乾燥させるドライ除霜モードとを行うことができる。
【0206】
先ず、ステップS1では、ドライ推奨条件を満たすか否かが判定される。ドライ推奨条件とは、除霜運転に伴い生じた残留水分が複合型熱交換器29表面に付着したままにしておくと、残留水分が再凍結して複合型熱交換器29の熱交換性能を再び低下させてしまう可能性が高いか否かに関する判定基準である。
【0207】
本実施形態では、電気自動車の現在位置に対応する気象情報等を通信ユニット74で取得して、今後の所定期間の間、0℃以下の低外気温が継続する場合に、ドライ推奨条件を満たすと判定する。ドライ推奨条件を満たしていない場合には、ステップS2にて、通常除霜モードでの除霜運転を開始する。一方、ドライ推奨条件を満たす場合には、ステップS6にて、ドライ除霜モードでの除霜運転を開始する。
【0208】
先ず、通常除霜モードでの除霜運転について説明する。通常除霜モードでは、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させる為の融解除霜が行われる。ステップS3では、車両用空調装置1の運転状態や周辺環境に応じて、第1凝縮熱除霜モード~第3凝縮熱除霜モード、ホットガス除霜モード、蓄熱除霜モードの何れかが選択され、選択された運転態様にて融解除霜が開始される。
【0209】
例えば、第1凝縮熱除霜モード等の凝縮熱除霜モードでは、制御装置70は、チラー24における低温側熱媒体の温度が目標低温側熱媒体温度(例えば、5℃)に近づくように、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。冷房用膨張弁20b、冷却用膨張弁20cについては、制御装置70は、チラー24における冷媒通路24aの出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準チラー側過熱度(例えば、10℃)に近づくように絞り開度を制御する。
【0210】
そして、複合型熱交換器29に対する外気の供給量に対応する外気ファン22aについては、何れの運転態様においても停止させておく。霜を融解させる際に外気を供給すると、外気により熱が奪われてしまう為、霜の融解についての効率を低下させる為である。
【0211】
ステップS4では、複合型熱交換器29に付着している霜の融解が完了したか否かが判定される。具体的には、例えば、圧縮機11の吐出圧力が予め定められた基準圧力(例えば、0.7MPa)より高くなった場合、又は、融解除霜の開始から所定期間(例えば、300s)を経過した場合に、複合型熱交換器29における霜の融解を完了したと判定する。
【0212】
複合型熱交換器29における霜の融解を完了したと判定した場合、ステップS5に進み、通常除霜モードでの除霜運転を終了する。一方、複合型熱交換器29における霜の融解を完了していないと判定された場合、ステップS3に処理を戻し、通常除霜モードにおける融解除霜を継続する。
【0213】
上述したように、除霜運転にて、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させた場合であっても、外気温が0℃以下の低温である場合には、融解で生じた水分(以下、残留水分ともいう)が再び凍結して、複合型熱交換器29の熱交換性能を低下させてしまう。複合型熱交換器29の熱交換性能の低下は、車両用空調装置1における空調性能の低下等の要因となる為、除霜で生じた水分の再凍結を防止する必要がある。
【0214】
除霜で生じた残留水分の再凍結を防止する方法として、除霜で生じた水分を蒸発させて複合型熱交換器29表面から水分を除去することが考えられる。そして、車両用空調装置1における除霜運転に際して、複合型熱交換器29から水分を蒸発除去する為の効率の良い条件があると考えられる。
【0215】
この為、複合型熱交換器29からの水分の蒸発除去に関し、エネルギ効率や車両用空調装置1の品質の観点で有用な条件を特定する為に、複合型熱交換器29における水分の蒸発について考察する。
【0216】
先ず、複合型熱交換器29における水分の蒸発について考察する上での前提条件について説明する。複合型熱交換器29に付着した霜は、過去の実測結果の傾向から、除霜運転開始後の1~2分で融解して水になるものとし、付着した霜は全て融解しているものとする。
【0217】
複合型熱交換器29表面における残留水分の蒸発表面には、分布はないものとする。複合型熱交換器29における冷媒温度は、凝縮温度で均一であるものとする。複合型熱交換器29の残留水分における蒸発表面の風速は全て均一とする。残留水分の蒸発除去において、過渡的な水の表面積変化などの経時変化は無視する。
【0218】
複合型熱交換器29表面における残留水分の蒸発水温については、以下の関係が成り立つものとして定義する。複合型熱交換器29の冷媒凝縮温度から残留水分の蒸発水温を減算した値に対して、水の伝導率及び蒸発表面積を乗算し残留水分の厚みで除算した値は、外気温から複合型熱交換器29の冷媒凝縮温度を減算した値に、水から空気への熱伝導率及び蒸発表面積を乗算した値に等しい。
【0219】
そして、複合型熱交換器29の空気通路における残留水分の保水状態については、空気通路を区画するフィンの内部は、残留水分で満たされていない状態であるものとし、この場合の複合型熱交換器29の蒸発表面積は、予め定められた値であるものとする。
【0220】
上述した前提条件のもとで、
図11に示す複数の実験式を用いて、単位面積あたりの蒸発速度Vaについて考察する。具体的には、拡散係数Dに関する実験式、レイノルズ数Reに関する実験式、シュミット数Scに関する実験式、シャーウッド数Shに関する実験式、単位面積あたりの蒸発速度Vaに関する実験式を用いている。
【0221】
これらの
図11に示す実験式から、風速Vcが増加すると、単位面積あたりの蒸発速度Vaが上昇する傾向を示すことがわかる。又、残留水分の蒸発水温が増加すれば、単位面積あたりの蒸発速度Vaが上昇する傾向を示す。残留水分の蒸発水温は、冷媒凝縮温度の上昇に伴って上昇し、風速Vcの減少に伴って増加する。同じ冷媒凝縮温度において、風速Vcを増加させた場合、単位面積あたりの蒸発速度Vaを上昇させる因子と低下させる因子の双方の影響が生じる。
【0222】
図11に示す実験式を用いて、冷媒凝縮温度が異なる場合における熱交換器蒸発量と風速Vcとの関係を算出した結果を
図12に示す。
図12におけるEtaは、冷媒凝縮温度が20℃の場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。
【0223】
同様に、Etbは、冷媒凝縮温度が30℃の場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示し、Etcは、冷媒凝縮温度が40℃の場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。そして、Etdは、冷媒凝縮温度が50℃の場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示し、Eteは、冷媒凝縮温度が60℃の場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。
【0224】
図12に示すグラフから、熱交換器蒸発量は、風速Vc上昇に伴う残留水分の蒸発水温の上昇によって、増加傾向を示すことがわかる。更に、熱交換器蒸発量は、冷媒凝縮温度の上昇に伴う残留水分の蒸発水温の上昇によって、増加傾向を示すことがわかる。即ち、車両用空調装置1によって制御することができる冷媒凝縮温度及び外気ファン22aによる風速Vcを適切に調整することで、複合型熱交換器29における残留水分の蒸発除去を、より効率よく実現することができる。
【0225】
ここで、本実施形態に係る車両用空調装置1において、複合型熱交換器29における蒸発水分の蒸発除去を行う場合は、上述した冷媒凝縮温度及び風速Vcを実現する為には、冷凍サイクル装置10の動作させることが想定される。
【0226】
一般的な冷凍サイクルで実現可能な範囲における冷媒凝縮温度と風速の関係について検討する。
図13は、圧縮機の冷媒吐出能力とチラー24の吸熱量を条件として定めた場合の冷媒凝縮温度と風速の関係を示すグラフである。
【0227】
尚、
図13において、Tcdhは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が最大である場合の冷媒凝縮温度と風速の関係を示している。又、Tcdlは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が最小である場合の冷媒凝縮温度と風速の関係を示している。そして、Tcdsは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が標準的な値である場合の冷媒凝縮温度と風速の関係を示している。
【0228】
図12、
図13に示すグラフを用いて、
図14に示すグラフが形成される。
図14において、Edhは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が最大である場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。又、Edlは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が最小である場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。そして、Wdsは、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が標準的な値である場合の熱交換器蒸発量と風速の関係を示している。
【0229】
図14に示すグラフによれば、風速に応じて、冷凍サイクルにて実現可能な運転条件エリアAfを特定することができる。この運転条件エリアAfに含まれる熱交換器蒸発量及び風速Vcの下で冷凍サイクルを動作させることで、少なくとも、複合型熱交換器29における残留水分の蒸発除去を、比較的短期間で実現することができる。
【0230】
複合型熱交換器29における残留水分の蒸発除去を行うということは、残留水分に由来する水蒸気が発生することを意味する。外気温が低い場合に、駆動装置室内の複合型熱交換器29から水蒸気が発生した場合、外部からは、白い霧状の気体が駆動装置室から発生していると認識される為、駆動装置室内の機器から白煙が発生しているように誤認される虞がある。
【0231】
この為、複合型熱交換器29における残留水分の蒸発除去を行う際には、白霧の視認を抑制しながら、残留水分の蒸発除去を促進する必要がある。白霧の視認に関する基準として、湿り空気線図を用いた方法が知られている。
【0232】
図15は、湿り空気線図の説明図である。この図において、横軸は温度、縦軸は絶対湿度、図中の斜めの曲線は相対湿度ψを示している。相対湿度ψが100%の線を特に飽和線Lsaと呼ぶ。飽和線Lsaの左側の領域は水分が完全に液化している状態を示す。飽和線Lsaの右側は、水蒸気とその他の気体(空気等)が混在している状態にある。この状態のガスは相対湿度ψが高いほど水分が凝縮して白霧として視認されやすい。
【0233】
ここで、複合型熱交換器29における残留水分の蒸発除去に際して、水蒸気が白霧として誤認を招くのは、外気と複合型熱交換器29通過後の空気との物質混合が完了した段階であると仮定する。そして、外気と複合型熱交換器29通過後の空気の混合が完了すれば、最終的に両者の混合比率に基づく関係に行き着く。熱の拡散は物質の拡散よりも早いが、白霧が視認された結果、課題となるかどうかは、経験的な知見から、物質混合が完了した状態と定義することが可能であり、外気と複合型熱交換器29通過後の空気の混合比率により判定できるものと考えられる。
【0234】
図15を参照しつつ、外気温が0℃の場合を例に挙げて、湿り空気線図を用いた白霧の視認性の判定について説明する。先ず、湿り空気線図における外気温度における飽和点から、飽和線Lsaに対する接線Ltanを求める。接線Ltanは、水蒸気が白霧として認識される視認限界を示している。
図15に示す場合は、外気温が0℃の場合の飽和点Pを通過する接線Ltanが求められる。
【0235】
図15の湿り空気線図において、接線Ltanよりも下に位置する領域は、複合型熱交換器29から生じた水蒸気が白霧として認識されない視認抑制領域Aaにあたる。一方、湿り空気線図において、飽和線Lsa以下で接線Ltanより上に位置する領域は、複合型熱交換器29から生じた水蒸気が白霧として認識されて課題となる視認領域Abにあたる。
【0236】
外気と複合型熱交換器29通過後の空気の混合が完了した段階の水蒸気の状態が、視認抑制領域Aaと、視認領域Abの何れに属するかによって、水蒸気が白霧として視認されるか否かを特定できる。従って、外気と室外熱交換器22通過後の空気の混合が完了した段階の空気の状態が視認抑制領域Aaに属するように、室外熱交換器22における冷媒凝縮温度及び風速Vcを制御することで、白霧としての視認性を抑えた状態で迅速なドライ除霜を実現できる。
【0237】
又、湿り空気線図にて接線Ltanを基準として、外気と室外熱交換器22通過後の空気の混合が完了した段階の空気の状態が視認抑制領域Aaとなるように定めることで、空気の状態は、視認領域Abに属することはない。この為、外気と室外熱交換器22通過後の空気が完了するまでの過程において、白霧として視認性を充分に抑制できる。
【0238】
ここで、冷凍サイクルにおける冷媒側能力と空気側能力が釣り合うと仮定して、任意の風速Vc、冷媒凝縮温度をつくる冷凍サイクルバランス点(つまり、冷媒吐出能力と吸熱量)における冷媒側室外器能力に対する空気側比エンタルピSepを算出する。空気側比エンタルピSepから、湿り空気線図において、空気側比エンタルピSepに対応する比エンタルピ線Lseを特定する。
【0239】
例えば、或る任意のシステムを前提として、外気温が0℃で、風速Vcが0.5m/s、冷媒凝縮温度が35℃の場合、空気側比エンタルピは、33kJ/kgに算出される。そして、
図16に示す湿り空気線図において、算出した33kJ/kgに対応する比エンタルピ線Lseが特定される。
【0240】
続いて、接線Ltanと比エンタルピ線Lseとの交点Pcを特定する。ここで、外気温度の飽和点Pにおける絶対湿度Ahtから、交点Pcにおける絶対湿度Ahaを減算することで、単位通過空気重量あたりの許容上限蒸発量Emが算出される。単位通過空気重量当たりの許容上限蒸発量Emは、複合型熱交換器29通過後の単位重量当たりの空気に対して、飽和するまでに許容される水蒸気量を示している。
【0241】
このようにして算出される単位通過空気重量あたりの許容上限蒸発量Emについて、風速Vc、冷媒凝縮温度等の諸条件を変更して算出した。諸条件毎の単位通過空気重量あたりの許容上限蒸発量Emをまとめると、
図17における許容上限蒸発量線Emxとなる。
図17において、室外器蒸発量及び風速Vcが許容上限蒸発量線Emxよりも低い領域であれば、最終的に白霧として視認されない状態で効率よく残留水分の蒸発除去を行うことができる。
【0242】
ここで、車両用空調装置1における除霜運転では、低外気温時の暖房運転によって、複合型熱交換器29に付着する霜の最大許容着霜量が付着するものと仮定する。従って、本実施形態にて、複合型熱交換器29から蒸発除去する必要がある必要水分蒸発量Enは、最大許容着霜量から、霜の融解によって複合型熱交換器29から落下する水分量を減算して求められる。
【0243】
図18に示すように、複合型熱交換器29からの残留水分の蒸発除去に関して、白霧を視認させることなく、複合型熱交換器29の熱交換性能を迅速に回復させる為の運転条件は、対象エリアAoで規定される。そして、対象エリアAoは、許容上限蒸発量線Emxに係る風速Vcよりも大きく、必要水分蒸発量Enよりも熱交換器蒸発量が大きくなるように定められる。
【0244】
図10~
図18を用いて行った考察は、
図19に示すグラフでまとめることができる。
図19のグラフは、
図14に示すグラフと、
図18に示すグラフをまとめた内容である。
図19のグラフに示す目標エリアAtは、残留水分の蒸発除去に関し、冷凍サイクルで実現可能な運転条件において、白霧を視認させることなく、複合型熱交換器29の熱交換性能を迅速に回復させる為の運転条件を示している。具体的には、目標エリアAtは、
図14における運転条件エリアAfと、
図18における対象エリアAoとの重複範囲により規定される。
【0245】
図19に示すように、目標エリアAtには、点Px、点Pz、点Pzが含まれている。点Pxは、許容上限蒸発量線Emxと必要水分蒸発量Enの交点を示す。点Pyは、許容上限蒸発量線Emxと、圧縮機11の回転数及びチラー24の吸熱量が最大である場合の室外器蒸発量を示す曲線Edhとの交点を示す。点Pzは、曲線Edhと、必要水分蒸発量Enとの交点を示している。
【0246】
目標エリアAtにおける風速Vcの最小値は、点Pxにおける風速であり、0.12m/sである、又、目標エリアAtにおける風速Vcの最大値は、点Pzにおける風速であり、1.2m/sである。
【0247】
従って、除霜運転で複合型熱交換器29から残留水分を蒸発除去させる際に、外気ファン22aによる風速を0.12m/s~1.2m/sの範囲で調整することで、白霧を視認させることなく、迅速に残留水分を蒸発除去させることができる。
【0248】
そして、目標エリアAtにおける熱交換器蒸発量の最小値は、点Px、点Pzにおける熱交換器蒸発量に基づいて特定され、必要水分蒸発量Enに相当する。熱交換器蒸発量から冷媒凝縮温度を特定することができるので、目標エリアAtにおける冷媒凝縮温度の最小値は、15℃に特定される。
【0249】
又、目標エリアAtにおける熱交換器蒸発量の最大値は、点Pyにおける熱交換器蒸発量に基づいて特定される。点Pyにおける熱交換器蒸発量から算出して、目標エリアAtにおける冷媒凝縮温度の最大値は、70℃に特定される。
【0250】
従って、除霜運転で複合型熱交換器29から残留水分を蒸発除去させる際に、冷媒凝縮温度が15℃~70℃となるように調整された熱量を複合型熱交換器29に対して供給することで、白霧を視認させることなく、迅速に残留水分を蒸発除去させることができる。
【0251】
ここで、複合型熱交換器29からの残留水分の蒸発除去に関する運転条件として、除霜条件係数DCCを用いて制御しても良い。除霜条件係数DCCは、外気ファン22aにより複合型熱交換器29に対して供給される風速Vcと、複合型熱交換器29における冷媒凝縮温度を積算して定められるパラメータである。除霜条件係数DCCの算出に際して、室外熱交換器22における冷媒凝縮温度の単位としては摂氏が採用されている。ドライ除霜の事象を議論する上では、水の融点を基準とし融点からの温度差が重要な因子となる為である。
【0252】
除霜条件係数DCCを用いた場合、目標エリアAtに係る除霜条件係数DCCは、1.8~35に定められる。除霜条件係数DCCに係る「1.8」という値は、点Pxに係る値であり、0.12m/sに対して、15℃を乗算して求められる。除霜条件係数DCCに係る「35」という値は、点Pyに係る値であり、0.5m/sに対して、70℃を乗算して求められる。
【0253】
従って、複合型熱交換器29から残留水分を蒸発除去させる際に、除霜条件係数DCCが1.8~35となるように、風速Vc及び冷媒凝縮温度を調整することで、白霧を視認させることなく、迅速に残留水分を蒸発除去させることができる。
【0254】
ここで、
図10に戻り、除霜制御プログラムのドライ除霜モードについて説明する。ドライ除霜モードでは、融解除霜に続いて、融解した霜に起因する残留水分を蒸発させて乾燥させるドライ除霜が行われる。ドライ除霜では、上述のように定められた風速Vcや冷媒凝縮温度といったパラメータを用いて、車両用空調装置1の作動が制御される。
【0255】
ドライ推奨条件を満たしてステップS6に移行すると、ドライ除霜モードにおける融解除霜が実行される。ステップS7の融解除霜は、複合型熱交換器29に付着している霜を融解させることを目的としており、上述したステップS3と同様の制御が行われる。
【0256】
そして、ステップS8では、複合型熱交換器29における霜の融解が完了したか否かが判定される。ステップS8においては、上述したステップS4と同様の手法によって判定される。ドライ除霜モードにおける融解除霜によって、複合型熱交換器29の霜の融解が完了したと判定された場合は、ステップS9に進み、ドライ除霜が開始される。
【0257】
ステップS9では、車両用空調装置1の運転状態や周辺環境に応じて、第1凝縮熱除霜モード~第3凝縮熱除霜モード、ホットガス除霜モード、蓄熱除霜モードの何れかが選択され、選択された運転態様にてドライ除霜が開始される。
【0258】
この時、制御装置70は、選択された運転態様に応じて、圧縮機11や外気ファン22a等の作動を制御する。例えば、凝縮熱除霜モードでドライ除霜を行う場合、制御装置70は、複合型熱交換器29における冷媒凝縮温度が目標凝縮温度TCOに近づくように、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。目標凝縮温度TCOは、予め制御装置70に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0259】
本実施形態では、
図20の制御特性図に示すように、外気温の上昇に伴って、目標凝縮温度TCOを上昇させるように決定する。これにより、ドライ除霜における冷媒凝縮温度は、15℃~70℃の範囲内において、外気温が低いほど低くなるように調整される。尚、蓄熱除霜モードの場合は、機器側熱媒体回路50aの熱媒体温度を15℃~70℃の範囲内において、外気温が低いほど低くなるように調整する。
【0260】
冷房用膨張弁20b、冷却用膨張弁20cについては、制御装置70は、チラー24における冷媒通路24aの出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準チラー側過熱度(例えば、10℃)に近づくように絞り開度を制御する。
【0261】
そして、複合型熱交換器29に対する外気の供給量に対応する外気ファン22aについては、目標風速VaOに近づくように、外気ファン22aの回転数を制御する。目標風速VaOは、予め制御装置70に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0262】
本実施形態では、
図21の制御特性図に示すように、目標風速VaOは、複合型熱交換器29の冷媒凝縮温度の低下に伴って減少するように決定される。上述したように、目標凝縮温度TCOは、外気温が低くなるほど低く定められる為、目標風速VaOも、外気温が低くなるほど、小さくなるように定められる。
【0263】
図21に示す制御特性図において、目標風速VaOは、外気ファン22aの動作が行われる状態においては、視認限界風速Vlよりも大きくなるように定められている。視認限界風速Vlは、複合型熱交換器29の冷媒凝縮温度によるドライ除霜において、水蒸気が白霧として視認される風速Vcの上限値を示している。これにより、
図21に示す制御特性図に従ってドライ除霜における目標風速VaOを設定することで、白霧の視認を抑制しながら、複合型熱交換器29からの残留水分の蒸発除去を促進させることができる。
【0264】
ステップS10に移行すると、ドライ除霜モードにおけるドライ除霜が完了したか否かが判定される。本実施形態においては、複合型熱交換器29表面の残留水分が蒸発し、複合型熱交換器29表面から除去された状態をもって、ドライ除霜の完了とする。
【0265】
図22に示すように、ドライ除霜モードでは、融解除霜を完了した後、ドライ除霜が実行される。ドライ除霜にて蒸発させる残留水分は、融解除霜における霜の融解に由来するものであると考えられる為、融解除霜時に投入されたエネルギ量と、ドライ除霜時に必要とされるエネルギ量との間には、強い相関があると考えられる。
【0266】
本実施形態におけるステップS10では、融解除霜時に投入されたエネルギ量と、ドライ除霜時に必要とされるエネルギ量の関係性を利用して、ドライ除霜が完了したか否かが判定を行う。
【0267】
図23を参照して具体的に説明する。ステップS21では、融解水分量を推定する。融解水分量とは、融解除霜によって融解した霜の総量を意味する。融解水分量は、融解除霜で霜の融解に投入された総エネルギ量を、単位重量当たりの氷の融解熱で除算することによって推定される。
【0268】
具体的には、圧縮機11の仕事量とチラー24における吸熱量の合計値から風速等による放熱ロスを減算した値を累積加算して、融解除霜時に霜の融解に投入した総エネルギ量を算出する。算出された総エネルギ量は、投入エネルギ量の一例に相当する。風速等による放熱ロスは、融解除霜時における放熱エネルギ量に相当する。
【0269】
融解除霜時における放熱エネルギ量は、例えば、風速と外気温度との関係から実験的に空気に対する放熱ロスを取得して得られた制御テーブルを用いて特定される。制御テーブルでは、外気温度が低い程、放熱エネルギ量が大きくなるように定められている。又、制御テーブルでは、風速が大きい程、放熱エネルギ量が大きくなるように定められている。
【0270】
そして、算出された総エネルギ量を、単位重量当たりの氷の融解熱(例えば、約334kj/kg)で除算することで、融解除霜時に融解した霜の総量である融解水分量が推定される。
【0271】
ステップS22では、算出した融解水分量を用いて、必要仕事量を算出する。必要仕事量とは、ドライ除霜において、融解水分量に相当する残留水分を蒸発させる為に必要なエネルギ量を意味し、必要エネルギ量の一例に相当する。具体的には、ステップS21で推定された融解水分量に対して、単位重量あたりの水の蒸発潜熱(例えば、約2400kj/kg)を乗算することで、必要仕事量が算出される。
【0272】
ステップS23においては、ドライ除霜中に投入されたエネルギの積算値であるドライ投入仕事量が必要仕事量以上になったか否か(つまり、必要エネルギ量以上になったか否か)を判定する。ドライ投入仕事量はドライ投入エネルギ量の一例に相当する。尚、ドライ投入エネルギ量とは、ドライ除霜に際して残留水分を乾燥させる為に投入されたエネルギ量であり、その投入過程を限定するものではない。つまり、ドライ投入エネルギ量には、ドライ除霜に際して、熱媒体を用いて投入されたエネルギ量も含まれる。
【0273】
ドライ投入エネルギ量を特定する際に、圧縮機11の仕事量とチラー24における吸熱量の合計値から、ドライ除霜時における放熱エネルギ量を除いておく。ドライ除霜時における放熱エネルギ量は、ドライ除霜時に空気に対して放熱された放熱ロスを意味する。従って、上述した制御テーブルを参照して、ドライ除霜時における風速及び外気温度を用いることで、ドライ除霜時における放熱エネルギ量を特定することができる。
【0274】
ドライ投入仕事量が必要仕事量以上になった場合には、融解除霜で生じた残留水分の全てがドライ除霜にて蒸発したものと考えられるので、ドライ除霜が完了したと判定する。ドライ投入仕事量が必要仕事量未満である場合には、ドライ除霜は完了してないと判定する。
【0275】
このようにドライ除霜の完了判定を行うことによって、車両用空調装置1は、複合型熱交換器29における残留水分の除去を確実に行うことができる。又、ステップS21やステップS23において、融解除霜時及びドライ除霜時における放熱エネルギ量を考慮することによって、残留水分の除去を完了したことに関する判定精度を向上させることができる。又、放熱エネルギ量は、風速や外気温度を利用している為、融解除霜時及びドライ除霜時の環境に応じて適切に特定される。この点からも、ドライ除霜の完了に関する判定精度を高めることができる。
【0276】
尚、ステップS21、ステップS22については、ドライ除霜モードの融解除霜が完了した時点(即ち、ドライ除霜を開始する直前)に実行しても良い。又、放熱エネルギ量を特定する際に、外気温度と風速を用いていたが、これに限定されない。更に、外気湿度や複合型熱交換器29の加熱温度を利用することも可能である。又、放熱エネルギ量として、予め定められた値や比率等を採用しても良い。
【0277】
再び、
図10に戻り、除霜制御プログラムのステップS10以後について説明する。ステップS10において、ドライ除霜が完了したと判定された場合、ステップS11に進み、ドライ除霜を完了する。その後、除霜制御プログラムを終了する。一方、ドライ除霜が完了していないと判定された場合は、ステップS9に処理を戻して、ドライ除霜を継続して実行する。
【0278】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、ドライ除霜モードにおいて、複合型熱交換器29に付着した霜を融解させる融解除霜と、霜の融解によって生じた残留水分を蒸発させて乾燥させるドライ除霜とを実行する。これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器29の除霜に際して、残留水分の再凍結を抑制することができ、複合型熱交換器29の熱交換性能を回復させることができる。
【0279】
更に、ドライ除霜モードのドライ除霜は、ステップS10にて残留水分の蒸発除去が完了したと判定された場合に終了されるので、車両用空調装置1は、複合型熱交換器29における残留水分の再凍結を、より確実に抑制することができる。
【0280】
又、ステップS10においては、
図20に示すように、融解水分量の推定、必要仕事量の算出を実行して、ドライ投入仕事量が必要仕事量以上であるか否かをもって、ドライ除霜が完了しているか否かが判定される。これにより、車両用空調装置1は、ドライ除霜モードの完了に関する判定精度が向上する為、複合型熱交換器29表面における残留水分を確実に除去した状態にすることができる。
【0281】
そして、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ドライ除霜モードにおけるドライ除霜に際して、0.12m/s~1.2m/sの範囲内で調整された空気を、複合型熱交換器29に供給する。
【0282】
これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器29に付着している残留水分の蒸発除去を促進させて、より短期間で効率よく、複合型熱交換器29の熱交換性能を回復させることができ、残留水分の再凍結を抑制することができる。
【0283】
又、ドライ除霜において、複合型熱交換器29へ供給する空気の風速を、0.12m/s~1.2m/sの範囲内で調整することにより、複合型熱交換器29の残留水分に由来する水蒸気が白霧として視認されることを抑制することができる。
【0284】
図21に示すように、目標風速VaOは、0.12m/s~1.2m/sの範囲内において、外気温が低くなるほど小さくなるように定められる。これにより、車両用空調装置1は、ドライ除霜モードのドライ除霜に関して、省エネルギ化を図ることができる。
【0285】
又、本実施形態に係る車両用空調装置1は、ドライ除霜モードにおけるドライ除霜に際して、複合型熱交換器29を流通する冷媒の冷媒凝縮温度が15℃~70℃の範囲内となるように調整して、複合型熱交換器29に対して熱量を供給する。これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器29に付着している残留水分の蒸発除去を促進させることができるので、より短期間で効率よく、複合型熱交換器29の熱交換性能を回復させて、残留水分の再凍結を抑制することができる。
【0286】
そして、車両用空調装置1は、ドライ除霜において、複合型熱交換器29を流通する冷媒の冷媒凝縮温度が15℃~70℃の範囲内となるように調整して、複合型熱交換器29に対して熱量を供給する。これにより、車両用空調装置1は、ドライ除霜に際して、複合型熱交換器29の残留水分に由来する水蒸気が白霧として視認されることを抑制することができる。
【0287】
図20に示すように、目標凝縮温度TCOは、15℃~70℃の範囲内において、外気温が低くなるほど低くなるように定められる。これにより、車両用空調装置1は、ドライ除霜モードのドライ除霜に関して、省エネルギ化を図ることができる。
【0288】
又、車両用空調装置1によれば、ドライ除霜モードの融解除霜では、外気ファン22aによる複合型熱交換器29に対する送風を停止し、複合型熱交換器29における風速Vcを0.12m/sよりも小さくしている。これにより、融解除霜時において、送風による熱ロスを抑えて、複合型熱交換器29に付着した霜を効率よく融解させることができる。
【0289】
そして、ステップS8にて霜の融解が完了したと判定された場合に開始されるドライ除霜では、0.12m/s~1.2m/sの範囲内の風速で空気を供給することで、白霧として視認されることを抑制しつつ、残留水分を効率よく蒸発させることができる。
【0290】
又、車両用空調装置1において、外気用熱交換部29Xは、複合型熱交換器29と、機器側熱媒体回路50aによって構成されている。第1実施形態に係る複合型熱交換器29は、暖房運転に際して外気との熱交換によって冷媒に吸熱させる外気冷媒熱交換部29aと、外気と熱媒体とを熱交換させる外気熱媒体熱交換部29bとを、熱交換フィン29eにより熱的に接続して構成されている。そして、
図1に示すように、機器側熱媒体回路50aには、機器側熱媒体回路50aを流通する熱媒体の温度を調整可能な補助熱源として、発熱機器53が配置されている。
【0291】
従って、
図9に示すように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、除霜運転の運転態様として、発熱機器53の廃熱を蓄熱して、複合型熱交換器29の除霜に利用する蓄熱除霜モードを実現することができる。これにより、複合型熱交換器29の除霜に際して、発熱機器53の廃熱を有効に活用することができるので、除霜運転の省エネルギ化を促進することができる。
【0292】
(第1実施形態の第1変形例)
第1実施形態におけるステップS10では、ドライ除霜の完了を
図23に示す方法で判定していたが、別の方法でドライ除霜の完了を判定しても良い。第1変形例に係るドライ除霜モードにおいては、ドライ除霜における圧縮機11の冷媒吐出能力は、予め定められた所定値(例えば、目標回転数NcO)で一定であるものとする。
【0293】
図24に示すように、第1変形例におけるドライ除霜において、複合型熱交換器29表面に残留水分が付着している場合、複合型熱交換器29内の冷媒の有する熱は、残留水分の蒸発に用いられる。この為、複合型熱交換器29の冷媒凝縮圧力は、大きく変動することはない。
【0294】
一方で、ドライ除霜が完了して複合型熱交換器29表面に残留水分がなくなった場合、残留水分の蒸発潜熱として作用していた分の熱量が余剰となる。この為、複合型熱交換器29における冷媒凝縮圧力は、徐々に上昇していく。
【0295】
従って、第1変形例によれば、ドライ除霜における圧縮機11の冷媒吐出能力が一定である状態にて、冷媒凝縮圧力が予め定められた基準凝縮圧力KPcよりも大きくなったか否かを用いて、ドライ除霜の完了を判定する。これによれば、第1実施形態と同様に、ドライ除霜によって、複合型熱交換器29表面から残留水分が除去されたことを特定することができる。
【0296】
尚、基準凝縮圧力KPcを超えた時から所定時間tpを経過した時点をもって、ドライ除霜の完了としても良い。このように判定すれば、複合型熱交換器29の表面から残留水分を確実に除去することができる。冷媒凝縮圧力が基準凝縮圧力KPcを超えた時点で、ドライ除霜の完了と判定しても良い。
【0297】
(第1実施形態の第2変形例)
又、ドライ除霜の完了判定に関して、第1実施形態及び第1変形例とは異なる方法を採用することも可能である。第2変形例に係るドライ除霜モードでは、圧縮機11の冷媒吐出能力(例えば、回転数)は、外気温により定められる目標凝縮圧力PcOに応じて調整されるものとする。
【0298】
この場合の目標凝縮圧力PcOは、ドライ除霜時に凝縮器として作動する外気用熱交換器(例えば、複合型熱交換器29)における凝縮圧力の目標値である。第2変形例では、ドライ除霜時において、複合型熱交換器29の凝縮圧力に相関を有する物理量(例えば、冷媒温度や冷媒吐出圧力)を用いて、圧縮機11の冷媒吐出能力が調整される。尚、複合型熱交換器29の冷媒出口側に冷媒圧力センサを配置して、その検出値を用いて調整しても良い。
【0299】
第2変形例によるドライ除霜では、ドライ除霜が進行して複合型熱交換器29表面から残留水分が除去された後、圧縮機11の回転数は、
図25に示すように、予め定められた基準回転数KNcになるまで低下していく。基準回転数KNcは、圧縮機11の基準吐出能力に対応する指標である。
【0300】
従って、第2変形例によれば、ドライ除霜における圧縮機11の冷媒吐出能力が目標凝縮圧力PcOに応じて調整される場合に、圧縮機11の回転数が基準回転数KNcになるまで低下したか否かを用いて、ドライ除霜の完了を判定する。これによれば、第1実施形態及び第1変形例と同様に、ドライ除霜によって、複合型熱交換器29表面から残留水分が除去されたことを特定することができる。
【0301】
尚、ドライ除霜の動作中において、圧縮機11の冷媒吐出能力が目標凝縮圧力PcOに応じて調整される場合に、圧縮機11の回転数が予め定められた基準量以上に低下したか否かを用いて、ドライ除霜の完了を判定することも可能である。残留水分の蒸発除去が完了すると、複合型熱交換器29に対する投入エネルギ量のうち、残留水分の蒸発に用いられていた分が不要になる為、この方式によっても判定することができる。これによれば、第1実施形態及び第1変形例と同様に、ドライ除霜によって、複合型熱交換器29表面から残留水分が除去されたことを特定することができる。
【0302】
又、圧縮機11の回転数が基準回転数KNcに低下した時から所定時間tpを経過した時点をもって、ドライ除霜の完了としても良い。このように判定すれば、複合型熱交換器29の表面から残留水分を確実に除去することができる。又、圧縮機11の回転数が基準回転数KNcに低下した時点をもって、ドライ除霜の完了と判定しても良い。
【0303】
(第1実施形態の第3変形例)
更に、ドライ除霜の完了判定に関して、第1実施形態、第1変形例及び第2変形例とは異なる方法を採用することも可能である。第3変形例では、ドライ除霜モードの融解除霜を開始する前に、複合型熱交換器29に付着している着霜量を推定する。例えば、暖房運転の継続時間、暖房運転時における外気温度等から、融解除霜の開始時点における複合型熱交換器29の着霜量を推定する。
【0304】
そして、推定した複合型熱交換器29の着霜量の霜を融解して蒸発除去させる為に必要な所要時間を算出する。ドライ除霜モードの完了(即ち、ドライ除霜の完了)は、ドライ除霜モードの開始からの経過時間が所要時間を超えたか否かをもって判断される。これによれば、第1実施形態、第1変形例及び第2変形例と同様に、ドライ除霜によって、複合型熱交換器29表面から残留水分が除去されたことを特定することができる。
【0305】
(第2実施形態)
図26~
図33に示すように、本実施形態では、第1実施形態とは異なる構成に適用した車両用空調装置1について説明する。尚、
図26~
図33では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0306】
第2実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路30と、低温側熱媒体回路40と、室内空調ユニット60と、制御装置70を有している。
【0307】
図26に示すように、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置10は、圧縮機11と、水冷媒熱交換器12と、冷房用膨張弁20bと、冷却用膨張弁20cと、室内蒸発器23と、チラー24と、蒸発圧力調整弁25等を有している。
【0308】
第2実施形態において、圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、上述した実施形態と同様に、冷媒通路12aと、熱媒体通路12bと、を有している。そして、水冷媒熱交換器12は、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と、熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。
【0309】
水冷媒熱交換器12は、所謂、サブクール型の熱交換器によって構成されており、凝縮部12cと、レシーバ部12dと、過冷却部12eを有している。凝縮部12cは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、高温側熱媒体回路30の高温側熱媒体とを熱交換させて冷媒を凝縮させる凝縮用の熱交換部である。
【0310】
レシーバ部12dは、凝縮部12cから流出した冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を蓄える受液部である。過冷却部12eは、レシーバ部12dから流出した液相冷媒と、高温側熱媒体回路30の高温側熱媒体とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。尚、水冷媒熱交換器12は、高温側熱媒体回路30と共に加熱部の一部を構成する。
【0311】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、冷媒分岐部15aの流入口側が接続されている。冷媒分岐部15aは、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手である。
【0312】
冷媒分岐部15aの一方の流出口には、冷却用膨張弁20cを介して、チラー24における冷媒通路24aの入口側が接続されている。冷媒分岐部15aの他方の流出口には、冷房用膨張弁20bを介して、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cは、上述した実施形態と同様に構成されており、減圧部の一例に相当する。
【0313】
そして、冷却用膨張弁20cの出口には、チラー24における冷媒通路24aの入口側が接続されている。チラー24は、冷媒通路24aを流通する低圧冷媒との熱交換により、熱媒体通路24bを通過する低温側熱媒体回路40の低温側熱媒体を冷却する蒸発器である。チラー24における冷媒通路24aの出口には、冷媒合流部15bの一方の流入口側が接続されている。
【0314】
冷房用膨張弁20bの出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、冷房用膨張弁20bにて減圧された低圧冷媒と送風空気とを熱交換させる蒸発器であり、空調用蒸発器の一例である。
【0315】
室内蒸発器23の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁25の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁25の出口には、冷媒合流部15bの他方の流入口側が接続されている。冷媒合流部15bは、チラー24の冷媒通路から流出した冷媒の流れと蒸発圧力調整弁25から流出した冷媒の流れとを合流させる。冷媒合流部15bの流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0316】
次に、第2実施形態に係る高温側熱媒体回路30は、水冷媒熱交換器12、複合型熱交換器29、高温側ポンプ32、ヒータコア33、水加熱ヒータ34、高温側三方弁35、高温側リザーブタンク36等を、高温側熱媒体流路31で接続して構成されている。
【0317】
図26に示すように、高温側熱媒体回路30では、複合型熱交換器29の第1熱交換部29cと、ヒータコア33にそれぞれ並列な共通流路31aが配置されている。共通流路31aには、高温側リザーブタンク36、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32が配置されている。
【0318】
高温側リザーブタンク36は、高温側熱媒体回路30で余剰となっている高温側熱媒体を貯留する高温側熱媒体回路用の貯留部である。又、高温側リザーブタンク36は、高温側熱媒体回路30内の高温側熱媒体量が不足した際に高温側熱媒体を補給するための熱媒体供給口を有している。
【0319】
そして、高温側リザーブタンク36の熱媒体出口側には、水冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの出口側には、高温側熱媒体回路30における加熱源としての水加熱ヒータ34が接続されている。
【0320】
水加熱ヒータ34の下流側には、高温側ポンプ32の吸入口側が接続されている。高温側ポンプ32の吐出口には、高温側三方弁35における一つの流入出口側が接続されている。高温側三方弁35は、3つの流入出口を有する三方式の流量調整弁によって構成されている。
【0321】
高温側三方弁35における一方の流出口には、ヒータコア33の熱媒体入口側が接続されている。そして、高温側三方弁35における他方の流出口には、複合型熱交換器29における第1熱交換部29cが接続されている。ヒータコア33の熱媒体出口側には、共通流路31aを介して、高温側リザーブタンク36の熱媒体入口側が接続されている。
【0322】
複合型熱交換器29は、高温側熱媒体回路30の高温側熱媒体と外気とを熱交換させる第1熱交換部29cと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体と外気とを熱交換させる第2熱交換部29dとを一体的に構成した熱交換器である。第1熱交換部29cにおける熱媒体出口側には、共通流路31aを介して、高温側リザーブタンク36の熱媒体入口側が接続されている。
【0323】
第2実施形態においても、複合型熱交換器29は、外気用熱交換器の一例に相当し、外気用熱交換部29Xを構成する。そして、複合型熱交換器29は、駆動装置室内の前方側に配置されており、第1熱交換部29cは第2熱交換部29dに対して車両前方側に配置されている。換言すると、第1熱交換部29cは、外気の流れに関して、第2熱交換部29dの上流側に配置されている。
【0324】
又、複合型熱交換器29には、外気ファン22aが、第1熱交換部29c及び第2熱交換部29dに対して外気を送風するように配置されている。即ち、外気ファン22aは、複合型熱交換器29に対する外気の風速(風量)を調整することができるので、風速調整部の一例に相当する。
【0325】
ここで、第2実施形態に係る複合型熱交換器29の第1熱交換部29c及び第2熱交換部29dは、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっている。熱媒体(即ち、高温側熱媒体、低温側熱媒体)と、空気(即ち、外気)とを熱交換させるタンクアンドチューブ型の熱交換器は、熱媒体を流通させる複数のチューブと、複数のチューブを流通する熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。そして、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブを流通する熱媒体と、隣り合うチューブ間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
【0326】
図27に示すように、第1熱交換部29cにおけるチューブ29ctの間に形成される空気通路と、第2熱交換部29dにおけるチューブ29dtの間に形成される空気通路には、熱交換フィン29eが配置されている。熱交換フィン29eは、一つの薄板状の金属部材により構成されている。熱交換フィン29eは、第1熱交換部29cにおける熱媒体と外気との熱交換を促進させると共に、第2熱交換部29dにおける熱媒体と外気との熱交換を促進させる部材である。
【0327】
そして、複合型熱交換器29では、複数の熱交換フィン29eが、第1熱交換部29cのチューブ29ctと、第2熱交換部29dのチューブ29dtの双方にろう付け接合されており、第1熱交換部29cと第2熱交換部29dを連結している。これにより、複合型熱交換器29では、熱交換フィン29eを介して、第1熱交換部29c側の高温側熱媒体と、第2熱交換部29d側の低温側熱媒体との間における熱の伝熱を可能にしている。
【0328】
図26に示すように、共通流路31aにおける高温側三方弁35の逆側の端部では、複合型熱交換器29の第1熱交換部29cから流出した高温側熱媒体の流れと、ヒータコア33から流出した高温側熱媒体の流れが合流している。
【0329】
そして、第2実施形態に係る低温側熱媒体回路40は、チラー24、複合型熱交換器29、第1低温側ポンプ42a、第1低温側三方弁46a、低温側開閉弁48、バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43a等を低温側熱媒体流路41で接続して構成されている。低温側熱媒体流路41は、複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体通路と、チラー24の熱媒体通路24bを接続した環状の熱媒体流路である。
【0330】
第1低温側ポンプ42aの吐出口には、チラー24における熱媒体通路24bの入口側が接続されている。第1低温側ポンプ42aの基本的構成は、高温側ポンプ32と同様である。
【0331】
チラー24における熱媒体通路24bの出口には、低温側開閉弁48を介して、複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体入口側が接続されている。低温側開閉弁48は、チラー24と複合型熱交換器29を接続する低温側熱媒体流路41を開閉する電磁弁である。
【0332】
低温側開閉弁48の流出口側には、複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体入口側が接続されている。従って、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dは、低温側熱媒体回路40の低温側熱媒体と外気ファン22aから送風された外気とを熱交換させることで、外気の熱を低温側熱媒体に吸熱させることができる。
【0333】
複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体出口側には、第1低温側三方弁46aが接続されている。第1低温側三方弁46aにおける流入出口の一つは、上述したように、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに接続されている。そして、第1低温側三方弁46aにおける他の流入出口は、低温側熱媒体流路41を介して、低温側ポンプ42の吸入口側に接続されている。更に、第1低温側三方弁46aの残りの流入出口は、迂回流路41aを介して、第2低温側三方弁46bにおける流入出口の一つが接続されている。
【0334】
図26に示すように、低温側熱媒体回路40には、迂回流路41aが配置されている。迂回流路41aの一端側は、第1低温側三方弁46aの残りの流入出口に接続されている。そして、迂回流路41aの他端側は、低温側開閉弁48の流出口と複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体入口を接続する低温側熱媒体流路41に接続されている。
【0335】
迂回流路41aには、第2低温側三方弁46bが配置されている。第2低温側三方弁46bは、第1低温側三方弁46aと同様の構成である。第2低温側三方弁46bにおける流入出口の一つは、上述したように、迂回流路41aを介して、第1低温側三方弁46aが接続されている。第2低温側三方弁46bにおける他の流入出口は、迂回流路41aを介して、低温側逆止弁47に接続されている。そして、第2低温側三方弁46bにおける残りの流入出口には、バッテリ接続流路41bの一端側が接続されている。
【0336】
バッテリ接続流路41bは、チラー24における熱媒体通路24bの出口と低温側開閉弁48を接続する低温側熱媒体流路41から伸び、第2低温側三方弁46bの流入出口に接続される熱媒体流路である。バッテリ接続流路41bには、第2低温側ポンプ42b、電気ヒータ44、バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aが配置されている。
【0337】
バッテリ用熱交換部43における熱媒体通路43aの入口側は、バッテリ接続流路41bを介して、電気ヒータ44に接続されている。電気ヒータ44として、PTCヒータを採用することができ、低温側熱媒体回路40における加熱源の一例に相当する。
【0338】
電気ヒータ44における熱媒体通路の入口側には、バッテリ接続流路41bを介して、第2低温側ポンプ42bの吐出口側が接続されている。第2低温側ポンプ42bの基本的構成は、高温側ポンプ32及び第1低温側ポンプ42aと同様である。
【0339】
続いて、第2実施形態に係る機器側回路部50は、電気自動車に搭載された発熱機器53に生じる熱を活用する為の熱媒体回路である。機器側回路部50は、低温側熱媒体回路40の構成の一部を兼用している。機器側回路部50は、発熱機器53と、機器側ポンプ52と、機器側三方弁54と、機器側リザーブタンク55とを、機器側熱媒体流路51によって接続して構成されている。
【0340】
図26に示すように、機器側熱媒体流路51の一端部は、複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体入口側の低温側熱媒体流路41に接続されている。機器側熱媒体流路51の他端部は、第2熱交換部29dの熱媒体出口側の低温側熱媒体流路41に対して接続されている。
【0341】
そして、機器側熱媒体流路51には、発熱機器53の熱媒体通路53aが配置されている。発熱機器53の熱媒体通路53aにおける入口側には、機器側ポンプ52の吐出口が接続されている。機器側ポンプ52の基本的構成は、高温側ポンプ32等と同様である。
【0342】
図26に示すように、機器側ポンプ52の吸入口は、機器側熱媒体流路51を介して、機器側リザーブタンク55に接続されている。機器側リザーブタンク55は、機器側回路部50を含む低温側熱媒体回路40にて余剰となっている低温側熱媒体を貯留する低温側熱媒体回路用の貯留部である。
【0343】
又、機器側リザーブタンク55は、低温側熱媒体回路40内の低温側熱媒体量が不足した際に低温側熱媒体を補給するための熱媒体供給口を有している。そして、機器側リザーブタンク55の熱媒体入口側は、機器側熱媒体流路51を介して、複合型熱交換器29における第2熱交換部29dの熱媒体入口側の低温側熱媒体流路41に接続されている。
【0344】
そして、発熱機器53の熱媒体通路53aにおける出口側には、機器側三方弁54の流入出口の1つが接続されている。機器側三方弁54における別の流入出口は、機器側熱媒体流路51を介して、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dにおける熱媒体出口側の低温側熱媒体流路41に対して接続されている。
【0345】
又、機器側三方弁54のさらに別の流入出口には、機器側迂回流路51aが接続されている。機器側迂回流路51aは、熱媒体の流れに関して、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dを迂回させる為の熱媒体流路である。機器側迂回流路51aの他端側は、機器側リザーブタンク55の入口側の機器側熱媒体流路51に接続されている。
【0346】
次に、第2実施形態に係る車両用空調装置1の暖房モードについて、
図28を参照して説明する。第2実施形態に係る暖房モードでは、制御装置70が、冷却用膨張弁20cを絞り状態として、冷房用膨張弁20bを全閉状態とする。又、制御装置70は、暖房モードに対して定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
【0347】
高温側熱媒体回路30においては、制御装置70は、高温側熱媒体が循環するように、高温側ポンプ32を作動させる。そして、制御装置70は、共通流路31a側の流入出口とヒータコア33側の流入出口を連通させて、複合型熱交換器29の第1熱交換部29c側への流入出口を閉塞するように、高温側三方弁35を作動させる。
【0348】
低温側熱媒体回路40においては、制御装置70は、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口と第1低温側ポンプ42a側の流入出口とを連通させて、迂回流路41a側の流入出口を閉塞するように、第1低温側三方弁46aを作動させる。又、制御装置70は、低温側開閉弁48を開く。そして、制御装置70は、第1低温側ポンプ42aを作動させ、第2低温側ポンプ42bを停止させた状態にする。
【0349】
機器側回路部50においては、制御装置70は、発熱機器53側の流入出口と機器側迂回流路51a側の流入出口とを連通させ、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。そして、制御装置70は、機器側熱媒体回路50aの熱媒体温度が発熱機器53に定められた温度範囲内になるように、機器側ポンプ52の動作を制御する。
【0350】
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
図28に示すように、暖房モードにおける冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷却用膨張弁20c、チラー24、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0351】
暖房モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、高温側三方弁35、ヒータコア33、高温側リザーブタンク36、水冷媒熱交換器12、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0352】
そして、暖房モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体は、第1低温側ポンプ42a、チラー24、低温側開閉弁48、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d、第1低温側三方弁46a、第1低温側ポンプ42aの順に流れて循環する。
【0353】
又、暖房モードの機器側回路部50では、低温側熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器53、機器側三方弁54、機器側迂回流路51a、機器側リザーブタンク55、機器側ポンプ52の順に流れて循環する。
【0354】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、ヒータコア33における高温側熱媒体の温度が目標高温側熱媒体温度に近づくように、冷媒吐出能力を制御する。
【0355】
目標高温側熱媒体温度は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶されている暖房モード用の制御マップを参照して決定される。目標吹出温度TAOは、各種制御用センサの検出信号および操作パネルの操作信号を用いて算定される。
【0356】
そして、冷却用膨張弁については、制御装置70は、チラー24における冷媒通路24aの出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準チラー側過熱度に近づくように絞り開度を制御する。チラー24における出口側冷媒の過熱度は、チラー24の出口側冷媒の過熱度は、チラー温度センサ72hで検出された出口側冷媒の温度と、チラー圧力センサ72iで検出された出口側冷媒の圧力から算出される。又、基準チラー側過熱度は、バッテリ温度TBがバッテリ75の適切な温度範囲内に維持できる低温側熱媒体の温度となるように設定されている。
【0357】
又、エアミックスドア64については、制御装置70は、空調風温度センサ72eによって検出された吹出空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように開度を制御する。暖房モードでは、室内蒸発器23を通過した送風空気の全風量を水冷媒熱交換器12へ流入させるようにエアミックスドア64の開度を制御してもよい。
【0358】
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11が作動すると、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aへ流入する。水冷媒熱交換器12へ流入した冷媒は、熱媒体通路12bを流れる高温側熱媒体に放熱して凝縮する。これにより、水冷媒熱交換器12において、高温側熱媒体が加熱される。
【0359】
水冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、冷却用膨張弁20cへ流入し、低圧冷媒となるまで減圧される。そして、チラー24の冷媒通路24aを通過する低圧冷媒は、熱媒体通路24bを流れる低温側熱媒体と熱交換し、低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。チラー24の冷媒通路24aから流出した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0360】
ここで、暖房モードの低温側熱媒体回路40において、低温側熱媒体は、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d及びチラー24の熱媒体通路12bを介して循環している。従って、低温側熱媒体は、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dにおいて、外気ファン22aで送風された外気から吸熱して、チラー24の熱媒体通路24bに流入している。
【0361】
従って、暖房モードでは、外気を熱源として利用しつつ、ヒータコア33にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。そして、暖房モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。
【0362】
第2実施形態においても、暖房運転時に外気が低温高湿度である場合は、複合型熱交換器29に着霜が生じてしまう。第2実施形態に係る車両用空調装置1は、除霜運転の運転態様として、第1凝縮熱除霜モード、第2凝縮熱除霜モード、第3凝縮熱除霜モード、蓄熱除霜モード、バッテリ廃熱利用除霜モード、ヒータ利用除霜モードを有している。
【0363】
第2実施形態における除霜運転の運転態様として、先ず、
図29を参照しながら、第1凝縮熱除霜モードについて説明する。第2実施形態の第1凝縮熱除霜モードは、第1実施形態と同様に、室内蒸発器23にて送風空気から吸熱した熱及びチラー24にて低温側熱媒体回路40から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。
【0364】
第1凝縮熱除霜モードは、例えば、電気自動車のバッテリ75の充電中であって、車室内に熱容量がある場合における複合型熱交換器29の除霜に際して実行される。バッテリ75の充電中であれば、バッテリ75に生じる熱量が大きいことが想定される。
【0365】
第1凝縮熱除霜モードにおいて、制御装置70は、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを、それぞれに適した絞り開度で絞り状態とする。又、制御装置70は、第1凝縮熱除霜モードに対して定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
【0366】
高温側熱媒体回路30においては、制御装置70は、高温側熱媒体が循環するように、高温側ポンプ32を作動させる。そして、制御装置70は、共通流路31a側の流入出口と複合型熱交換器29の第1熱交換部29c側への流入出口を連通させて、ヒータコア33側の流入出口を閉塞するように、高温側三方弁35を作動させる。
【0367】
低温側熱媒体回路40においては、制御装置70は、迂回流路41a側の流入出口と第1低温側ポンプ42a側の流入出口とを連通させて、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口を閉塞するように、第1低温側三方弁46aを作動させる。
【0368】
又、制御装置70は、バッテリ接続流路41b側の流入出口と迂回流路41a側の流入出口とを連通させて、低温側逆止弁47側の流入出口を閉塞するように、第2低温側三方弁46bを作動させる。更に、制御装置70は、第1低温側ポンプ42a及び第2低温側ポンプ42bを作動させると共に、低温側開閉弁48を閉じる。
【0369】
機器側回路部50においては、制御装置70は、発熱機器53側の流入出口と機器側迂回流路51a側の流入出口とを連通させ、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。そして、制御装置70は、機器側熱媒体回路50aの熱媒体温度が発熱機器53に定められた温度範囲内になるように、機器側ポンプ52の動作を制御する。
【0370】
これにより、第1凝縮熱除霜モードの冷凍サイクル装置10では、2つの冷媒の循環回路が構成される。第1凝縮熱除霜モードにおける冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷却用膨張弁20c、チラー24、圧縮機11の順に流れて循環する。同時に、冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷房用膨張弁20b、室内蒸発器23、蒸発圧力調整弁25、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0371】
第1凝縮熱除霜モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、高温側三方弁35、複合型熱交換器29、高温側リザーブタンク36、水冷媒熱交換器12、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0372】
そして、第1凝縮熱除霜モードの低温側熱媒体回路40では、バッテリ接続流路41b及び迂回流路41aを介した低温側熱媒体の循環回路が構成される。具体的には、低温側熱媒体は、第1低温側ポンプ42a、チラー24、第2低温側ポンプ42b、電気ヒータ44、バッテリ用熱交換部43、第2低温側三方弁46b、第1低温側三方弁46a、第1低温側ポンプ42aの順に流れて循環する。
【0373】
又、第1凝縮熱除霜モードの機器側回路部50では、低温側熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器53、機器側三方弁54、機器側迂回流路51a、機器側リザーブタンク55、機器側ポンプ52の順に流れて循環する。
【0374】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、ヒータコア33における高温側熱媒体の温度が目標高温側熱媒体温度に近づくように、冷媒吐出能力を制御する。
【0375】
又、冷房用膨張弁20bについては、制御装置70は、室内蒸発器23の出口側冷媒の過熱度が、予め定めた基準蒸発器側過熱度(本実施形態では、5℃)に近づくように絞り開度を制御する。室内蒸発器23の出口側冷媒の過熱度は、蒸発器温度センサ72fで検出された冷媒蒸発温度Te及び蒸発器圧力センサ72gで検出された冷媒蒸発圧力Peから算定される。
【0376】
そして、冷却用膨張弁については、制御装置70は、チラー24における冷媒通路24aの出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準チラー側過熱度に近づくように絞り開度を制御する。チラー24における出口側冷媒の過熱度は、チラー24の出口側冷媒の過熱度は、チラー温度センサ72hで検出された出口側冷媒の温度と、チラー圧力センサ72iで検出された出口側冷媒の圧力から算出される。又、基準チラー側過熱度は、バッテリ温度TBがバッテリ75の適切な温度範囲内に維持できる低温側熱媒体の温度となるように設定されている。
【0377】
図29に示すように、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aを通過する。冷媒は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを流れる高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する。
【0378】
ここで、第1凝縮熱除霜モードでは、高温側熱媒体は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bから流出すると、複合型熱交換器29の第1熱交換部29cに流入する。これにより、高温側熱媒体は、高圧冷媒の有する熱を、複合型熱交換器29に加えることができる。
【0379】
図27に示すように、複合型熱交換器29において、第1熱交換部29cと第2熱交換部29dは、複数の熱交換フィン29eによって熱的に接続されている。従って、高圧冷媒の有する熱を、高温側熱媒体及び熱交換フィン29eを介して、第2熱交換部29dに伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0380】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した冷媒の流れは、冷媒分岐部15aにて、冷房用膨張弁20b側の流れと、冷却用膨張弁20c側の流れに分岐する。冷媒分岐部15aの一方の流出口から流出した冷媒は、冷房用膨張弁20bにて減圧され、室内蒸発器23に流入する。室内蒸発器23に流入した低圧冷媒は、ケーシング61内の車室内空気から吸熱して蒸発する。
【0381】
そして、冷媒分岐部15aの他方の流出口から流出した冷媒は、冷却用膨張弁20cにて減圧され、チラー24の冷媒通路24aに流入する。ここで、低温側熱媒体回路40では、低温側ポンプ42が作動しており、低温側熱媒体は、バッテリ用熱交換部43を介して循環している。従って、チラー24の熱媒体通路24bには、バッテリ75から吸熱した低温側熱媒体が圧送されている。つまり、チラー24に流入した低圧冷媒は、バッテリ75の廃熱で加熱された低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。
【0382】
室内蒸発器23から流出した冷媒及びチラー24から流出した冷媒は、冷媒合流部15bにて合流して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0383】
このように、第1凝縮熱除霜モードでは、室内蒸発器23で吸熱した車室内空気の熱及び、チラー24で吸熱したバッテリ75に生じた熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。従って、第1凝縮熱除霜モードは、バッテリ発熱利用モードの一例に相当する。
【0384】
そして、第1凝縮熱除霜モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0385】
続いて、第2実施形態に係る第2凝縮熱除霜モード及び第3凝縮熱除霜モードについて説明する。第1実施形態と同様に、第2凝縮熱除霜モードは、チラー24にて低温側熱媒体回路40から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。そして、第3凝縮熱除霜モードは、室内蒸発器23にて車室内空気から吸熱した熱を利用して、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。
【0386】
先ず、第2実施形態に係る第2凝縮熱除霜モードにおける各種制御対象機器の作動は、冷房用膨張弁20bを閉状態にする点を除いて、第2実施形態に係る第1実施形態と同様である。
【0387】
従って、第2凝縮熱除霜モードの冷凍サイクル装置10において、冷媒は、
図30に示すように、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷却用膨張弁20c、チラー24、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0388】
第2凝縮熱除霜モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、高温側三方弁35、複合型熱交換器29、高温側リザーブタンク36、水冷媒熱交換器12、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0389】
そして、第2凝縮熱除霜モードの低温側熱媒体回路40では、バッテリ接続流路41b及び迂回流路41aを介した低温側熱媒体の循環回路が構成される。具体的には、低温側熱媒体は、第1低温側ポンプ42a、チラー24、第2低温側ポンプ42b、電気ヒータ44、バッテリ用熱交換部43、第2低温側三方弁46b、第1低温側三方弁46a、第1低温側ポンプ42aの順に流れて循環する。
【0390】
又、第2凝縮熱除霜モードの機器側回路部50では、低温側熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器53、機器側三方弁54、機器側迂回流路51a、機器側リザーブタンク55、機器側ポンプ52の順に流れて循環する。
【0391】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。第2凝縮熱除霜モードでは、冷房用膨張弁20bを除いて、各制御対象機器を第1凝縮熱除霜モードと同様に制御する。
【0392】
図30に示すように、第2凝縮熱除霜モードでは、チラー24で吸熱したバッテリ75に生じた熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。従って、第2凝縮熱除霜モードは、バッテリ発熱利用モードの一例に相当する。
【0393】
そして、第2凝縮熱除霜モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0394】
次に、第2実施形態に係る第3凝縮熱除霜モードにおける各種制御対象機器の作動は、冷却用膨張弁20cを閉状態にする点を除いて、上述した第1凝縮熱除霜モードと同様である。つまり、第3凝縮熱除霜モードでは、冷媒は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷房用膨張弁20b、室内蒸発器23、圧縮機11の順に流れて循環する。高温側熱媒体回路30における高温側熱媒体の流れ等は、第1凝縮熱除霜モードと同様である。この結果、第3凝縮熱除霜モードでは、車室内空気が有する熱を、冷凍サイクル装置10にて汲み上げて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0395】
続いて、第2実施形態における除霜運転の運転態様である蓄熱除霜モードについて、
図31を参照して説明する。蓄熱除霜モードは、第2実施形態における暖房モード等の運転モードにおいて、低温側熱媒体に蓄熱した熱を用いて、冷凍サイクル装置10を作動させることなく、複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。
【0396】
上述したように、
図28~
図30に示すように、暖房モード等の機器側回路部50において、低温側熱媒体を、機器側ポンプ52、発熱機器53、機器側三方弁54、機器側熱媒体流路51、機器側リザーブタンク55、機器側ポンプ52の順に流している。従って、機器側回路部50の低温側熱媒体には、発熱機器53の廃熱が蓄熱されている。蓄熱除霜モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に蓄熱されている熱を用いて、冷凍サイクル装置10を作動させることなく、複合型熱交換器29の除霜を行う。
【0397】
蓄熱除霜モードにおいて、制御装置70は、圧縮機11を停止状態にすると共に、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全開状態にする。これにより、蓄熱除霜モードでは、冷凍サイクル装置10は作動することはない。
【0398】
高温側熱媒体回路30においては、制御装置70は、高温側ポンプ32を停止状態にする。そして、制御装置70は、共通流路31a側の流入出口とヒータコア33側の流入出口を連通させて、複合型熱交換器29の第1熱交換部29c側への流入出口を閉塞するように、高温側三方弁35を作動させる。従って、蓄熱除霜モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体が循環することはない。
【0399】
又、低温側熱媒体回路40においては、制御装置70は、第1低温側ポンプ42a及び第2低温側ポンプ42bを停止状態にする。そして、制御装置70は、迂回流路41a側の流入出口と複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口とを連通させて、第1低温側ポンプ42a側の流入出口を閉塞するように、第1低温側三方弁46aを作動させる。更に、制御装置70は、低温側開閉弁48を閉じる。これにより、蓄熱除霜モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体が循環することはない。
【0400】
そして、蓄熱除霜モードの機器側回路部50においては、制御装置70は、発熱機器53側の流入出口と複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口とを連通させ、機器側迂回流路51a側の流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。そして、制御装置70は、蓄熱除霜モードについて定められた圧送能力で機器側回路部50の低温側熱媒体を圧送するように、機器側ポンプ52の作動を制御する。
【0401】
図31に示すように、蓄熱除霜モードの機器側回路部50においては、発熱機器53の廃熱を蓄熱している低温側熱媒体が、発熱機器53、機器側三方弁54を介して、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに流入する。これにより、蓄熱除霜モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に蓄熱していた熱を、複合型熱交換器29に伝達して、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0402】
続いて、第2実施形態における除霜運転の運転態様であるバッテリ廃熱利用除霜モードについて、
図32を参照して説明する。バッテリ廃熱除霜モードは、冷凍サイクル装置10を作動させることなく、バッテリ75に生じた廃熱を利用して複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。
【0403】
バッテリ廃熱除霜モードにおいて、制御装置70は、圧縮機11を停止状態にすると共に、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全開状態にする。これにより、バッテリ廃熱除霜モードでは、冷凍サイクル装置10は作動することはない。
【0404】
高温側熱媒体回路30においては、制御装置70は、高温側ポンプ32を停止状態にする。そして、制御装置70は、共通流路31a側の流入出口とヒータコア33側の流入出口を連通させて、複合型熱交換器29の第1熱交換部29c側への流入出口を閉塞するように、高温側三方弁35を作動させる。従って、バッテリ廃熱除霜モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体が循環することはない。
【0405】
又、低温側熱媒体回路40においては、制御装置70は、第1低温側ポンプ42aを停止状態にすると共に、第2低温側ポンプ42bに予め定められた圧送能力を発揮させる。そして、制御装置70は、迂回流路41a側の流入出口と複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口とを連通させて、第1低温側ポンプ42a側の流入出口を閉塞するように、第1低温側三方弁46aを作動させる。
【0406】
更に、制御装置70は、バッテリ接続流路41b側の流入出口と迂回流路41a側の流入出口とを連通させて、低温側逆止弁47側の流入出口を閉塞するように、第2低温側三方弁46bを作動させる。そして、制御装置70は、低温側開閉弁48を開く。
【0407】
機器側回路部50においては、制御装置70は、発熱機器53側の流入出口と機器側迂回流路51a側の流入出口とを連通させ、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。そして、制御装置70は、機器側ポンプ52を停止状態にする。これにより、バッテリ廃熱除霜モードの機器側回路部50では、低温側熱媒体が循環することはない。
【0408】
バッテリ廃熱除霜モードの低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体は、第2低温側ポンプ42b、電気ヒータ44、バッテリ用熱交換部43、第2低温側三方弁46b、第1低温側三方弁46a、複合型熱交換器29、低温側開閉弁48の順に流れて循環する。
【0409】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。バッテリ廃熱除霜モードでは、第2低温側ポンプ42bから圧送された低温側熱媒体は、電気ヒータ44を介して、バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aに流入する。バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aにおいて、低温側熱媒体は、充電等によりバッテリ75に生じている廃熱を吸熱して加熱される。
【0410】
バッテリ用熱交換部43の熱媒体通路43aから流出すると、低温側熱媒体は、第2低温側三方弁46b及び第1低温側三方弁46aを介して、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに流入する。これにより、低温側熱媒体は、バッテリ75の廃熱を複合型熱交換器29に加えることができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0411】
複合型熱交換器29の第2熱交換部29dから流出すると、低温側熱媒体は、低温側開閉弁48を介して、第2低温側ポンプ42bの吸入口に流入する。これにより、低温側熱媒体は、電気ヒータ44に向かって再度圧送される。
【0412】
このように、バッテリ廃熱除霜モードでは、低温側熱媒体によって、バッテリ75の廃熱を複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0413】
そして、バッテリ廃熱除霜モードでは、複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに流入する低温側熱媒体の温度が必要な温度よりも低い場合には、電気ヒータ44を作動させて、低温側熱媒体を加熱することができる。これにより、低温側熱媒体の温度を、複合型熱交換器29の除霜を行う為に十分な温度(例えば、15℃~70℃の範囲内)まで上昇させることができ、複合型熱交換器29の除霜を確実に行うことができる。
【0414】
次に、第2実施形態における除霜運転の運転態様の一つであるヒータ利用除霜モードについて、
図33を参照して説明する。ヒータ利用霜モードは、冷凍サイクル装置10を作動させることなく、水加熱ヒータ34の発熱を利用して複合型熱交換器29の除霜を行う運転モードである。
【0415】
ヒータ利用除霜モードでは、制御装置70は、圧縮機11を停止状態にすると共に、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを全開状態にする。これにより、ヒータ利用除霜モードでは、冷凍サイクル装置10は作動することはない。
【0416】
高温側熱媒体回路30に関して、制御装置70は、高温側ポンプ32を作動させると共に、水加熱ヒータ34をヒータ利用除霜モードについて定められた発熱量で発熱させる。そして、制御装置70は、共通流路31a側の流入出口と複合型熱交換器29の第1熱交換部29c側への流入出口を連通させ、ヒータコア33側の流入出口を閉塞するように、高温側三方弁35を作動させる。
【0417】
これにより、ヒータ利用除霜モードの高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、高温側三方弁35、複合型熱交換器29、高温側リザーブタンク36、水冷媒熱交換器12、水加熱ヒータ34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0418】
又、低温側熱媒体回路40においては、制御装置70は、第2低温側ポンプ42bを停止状態にすると共に、第1低温側ポンプ42aに予め定められた圧送能力を発揮させる。そして、制御装置70は、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口と第1低温側ポンプ42a側の流入出口とを連通させて、迂回流路41a側の流入出口を閉塞するように、第1低温側三方弁46aを作動させる。更に、制御装置70は、低温側開閉弁48を開く。
【0419】
機器側回路部50においては、制御装置70は、発熱機器53側の流入出口と機器側迂回流路51a側の流入出口とを連通させ、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d側の流入出口を閉塞するように、機器側三方弁54を作動させる。そして、制御装置70は、機器側ポンプ52を停止状態にする。これにより、バッテリ廃熱除霜モードの機器側回路部50では、低温側熱媒体が循環することはない。
【0420】
この回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置70は、高温側熱媒体の温度が複合型熱交換器29を除霜する為に十分な温度になるように、水加熱ヒータ34の発熱量を制御する。
【0421】
ヒータ利用除霜モードでは、高温側ポンプ32から圧送された高温側熱媒体は、高温側三方弁35を介して、複合型熱交換器29の第1熱交換部29cに流入する。上述したように、ヒータ利用除霜モードにおいて、高温側熱媒体は、水加熱ヒータ34によって加熱されている。従って、複合型熱交換器29の第1熱交換部29cには、水加熱ヒータ34で加えられた熱が高温側熱媒体を介して伝達される。
【0422】
図27に示すように、複合型熱交換器29において、第1熱交換部29cと第2熱交換部29dは、複数の熱交換フィン29eによって熱的に接続されている。従って、高温側熱媒体に加えられた熱を、第1熱交換部29c及び熱交換フィン29eを介して、第2熱交換部29dに伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0423】
第1熱交換部29cから流出した高温側熱媒体は、高温側リザーブタンク36を通過して、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bに流入する。熱媒体加熱除霜モードでは、冷凍サイクル装置10が停止している為、高温側熱媒体は、冷媒との熱交換によって加熱されることはない。
【0424】
水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bから流出すると、高温側熱媒体は、水加熱ヒータ34に流入する。水加熱ヒータ34は、制御装置70の制御によって発熱量が制御されている為、高温側熱媒体は、複合型熱交換器29の除霜に必要な温度(例えば、15℃~70℃の範囲内)になるように加熱された状態で、水加熱ヒータ34から流出する。水加熱ヒータ34から流出した高温側熱媒体は、高温側ポンプ32の吸入口に流入し、高温側三方弁35に向かって再度圧送される。
【0425】
このように、ヒータ利用除霜モードでは、高温側熱媒体を利用して、水加熱ヒータ34で加えられた熱を複合型熱交換器29の第2熱交換部29dに伝達することができ、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。従って、ヒータ利用除霜モードは、熱源利用モードの一例に相当する。
【0426】
そして、ヒータ利用除霜モードでは、機器側回路部50の低温側熱媒体に対して、発熱機器53の廃熱を蓄熱しておくことができる。この時、機器側三方弁54の動作を制御することで、蓄熱していた発熱機器53の廃熱を、複合型熱交換器29の除霜に利用することも可能である。
【0427】
尚、ヒータ利用除霜モードの他の態様として、低温側熱媒体回路40の電気ヒータ44を利用した運転モードを実現することができる。この場合、低温側熱媒体回路40の各構成機器は、バッテリ廃熱利用モードの低温側熱媒体回路40と同様に制御される。これにより、低温側熱媒体は、第2低温側ポンプ42b、電気ヒータ44、バッテリ用熱交換部43、第2低温側三方弁46b、第1低温側三方弁46a、複合型熱交換器29、低温側開閉弁48の順に流れて循環する。この場合、バッテリ75の廃熱が小さい場合でも、電気ヒータ44で加えられた熱を用いて、複合型熱交換器29の除霜に利用することができる。
【0428】
ここで、第2実施形態では、低温側熱媒体回路40の熱量に応じて、バッテリ発熱利用モードに相当する第1凝縮熱除霜モード及び第2凝縮熱除霜モードと、熱源利用モードに相当するヒータ利用除霜モードとの間で除霜運転の運転態様を使い分けることができる。
【0429】
バッテリ発熱利用モードと熱源利用モードの使い分けに関して、低温側熱媒体回路40の熱量が基準熱量よりも大きいか否かが判定される。基準熱量とは、例えば、バッテリ75の発熱量に応じて定められる。
【0430】
バッテリ75の発熱量が多く、低温側熱媒体回路40の熱量が基準熱量以上である場合は、除霜運転の運転態様として、バッテリ発熱利用モードである第1凝縮熱除霜モード又は第2凝縮熱除霜モードが採用される。一方、バッテリ75の発熱量が少なく、低温側熱媒体回路40の熱量が基準熱量未満である場合、除霜運転の運転態様として、ヒータ利用除霜モードが採用される。これにより、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、車両用空調装置1の運転条件及び周辺環境に応じて、適切な運転態様で、複合型熱交換器29の除霜を行うことができる。
【0431】
そして、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、上述した第1実施形態と同様に、
図10に示す除霜制御プログラムに従って、複合型熱交換器29の除霜運転を実行する。つまり、第2実施形態に係る車両用空調装置1においても、ドライ除霜モードによる除霜運転が行われる為、上述した実施形態と同様に、複合型熱交換器29の第2熱交換部29d表面から残留水分を、効率よく短期間で蒸発除去することができる。尚、ドライ除霜モードにおいて、複合型熱交換器29に投入される熱量は、冷媒凝縮温度ではなく、複合型熱交換器29を流通する熱媒体(高温側熱媒体、低温側熱媒体)の温度によって定められる。
【0432】
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、
図26~
図33に示すように構成した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0433】
(第3実施形態)
図34に示すように、本実施形態では、上述した実施形態とは異なる構成に適用した車両用空調装置1について説明する。尚、
図34では、上述した実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0434】
第3実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10と、高温側熱媒体回路30と、低温側熱媒体回路40と、室内空調ユニット60と、制御装置70とを有している。第3実施形態における高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、室内空調ユニット60、制御装置70の構成は、基本的に第1実施形態と同様である。従って、これらの構成に関する再度の説明は省略する。
【0435】
図34に示すように、第3実施形態に係る車両用空調装置1は、外気用熱交換部29Xの構成が第1実施形態と相違している。具体的には、第3実施形態では、外気用熱交換器として、複合型熱交換器29に代えて室外熱交換器22が採用され、機器側熱媒体回路50aが廃止されている。又、第1実施形態の冷凍サイクル装置10では、アキュムレータ26が配置されているが、第3実施形態では、レシーバ19が採用されている。
【0436】
具体的に、
図34を参照して、第3実施形態における冷凍サイクル装置10の構成について説明する。第3実施形態において、圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は暖房用熱交換器の一例に相当する。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bと、を有している。
【0437】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0438】
更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2三方継手13b~第8三方継手13hを備えている。第2三方継手13b~第8三方継手13hの基本的構成は、いずれも第1三方継手13aと同様である。
【0439】
第1三方継手13aの一方の流出口には、第1開閉弁16a及び第5三方継手13eを介して、レシーバ19の入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、第2開閉弁16b及び第2三方継手13bを介して、暖房用膨張弁20aの入口側が接続されている。
【0440】
第1開閉弁16aは、第1三方継手13aの一方の流出口からレシーバ19の入口へ至る入口側通路27aを開閉する電磁弁である。第1開閉弁16aは、制御装置70から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される。
【0441】
第5三方継手13eは、入口側通路27aにおいて、一方の流入口が第1開閉弁16aの出口側に接続されている。更に、入口側通路27aにおいて、第5三方継手13eの一方の流出口は、レシーバ19の入口側に接続されている。
【0442】
レシーバ19は、気液分離機能を有する貯液部である。即ち、レシーバ19は、冷凍サイクル装置10において冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する熱交換部から流出した冷媒の気液を分離する。そして、レシーバ19は、分離された液相冷媒の一部を下流側に流出させ、残余の液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として蓄える。
【0443】
第2開閉弁16bは、第1三方継手13aの他方の流出口から第2三方継手13bの一方の流入口へ至る外気側通路27cを開閉する電磁弁である。第2開閉弁16bの基本的構成は、第1開閉弁16aと同様である。
【0444】
そして、第2三方継手13bの他方の流入口には、レシーバ19の冷媒出口側が接続されている。レシーバ19の冷媒出口と第2三方継手13bの他方の流入口とを接続する出口側通路27bには、第6三方継手13fが配置されている。
【0445】
第6三方継手13fの流入口は、出口側通路27bを介して、レシーバ19の冷媒出口側に接続されている。第6三方継手13fにおける一方の流出口には、出口側通路27bを介して、第2三方継手13bにおける他方の流入口が接続されている。更に、第6三方継手13fの他方の流出口には、第7三方継手13gの流入口側が接続されている。
【0446】
そして、第2三方継手13bの流出口には、暖房用膨張弁20aを介して、室外熱交換器22の冷媒入口側が接続されている。暖房用膨張弁20aは、少なくとも後述する暖房モードの冷媒回路に切り替えられた際に、レシーバ19から流出した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。
【0447】
図34に示すように、冷凍サイクル装置10は、冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cを備えている。冷房用膨張弁20b及び冷却用膨張弁20cの基本的構成は、暖房用膨張弁20aと同様である。
【0448】
室外熱交換器22は、暖房用膨張弁20aから流出した冷媒と、外気ファン22aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器22は、駆動装置室内の前方側に配置されている。この為、車両走行時には、室外熱交換器22に走行風を当てることができる。室外熱交換器22は、外気用熱交換器の一例であり、外気用熱交換部29Xを構成している。
【0449】
室外熱交換器22は、冷房モード時等において、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。又、暖房モード時等においては、室外熱交換器22は、暖房用膨張弁20aにて減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0450】
そして、外気ファン22aは、室外熱交換器22に対して外気を送風するように配置されている。外気ファン22aは、室外熱交換器22に対する外気の風速(風量)を調整することができるので、風速調整部の一例に相当する。
【0451】
室外熱交換器22の冷媒出口には、第3三方継手13cを構成する三方弁18の流入口側が接続されている。三方弁18は、1つの流入口と2つの流出口を有し、2つの流出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。三方弁18は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0452】
第3三方継手13cを構成する三方弁18の一方の流出口には、逆止弁21を介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。そして、三方弁18の他方の流出口には、第5三方継手13eの他方の流入口側が接続されている。
【0453】
図34に示すように、逆止弁21は、第3三方継手13cの一方の流出口から第4三方継手13dの一方の流入口へ至る吸入側通路27dに配置されている。逆止弁21は、室外熱交換器22の冷媒出口側から三方弁18を介して、圧縮機11の吸入口側へ冷媒が流れることを許容し、圧縮機11の吸入口側から室外熱交換器22の冷媒出口側へ冷媒が流れることを禁止している。
【0454】
上述したように、出口側通路27bに配置された第6三方継手13fの他方の流出口には、第7三方継手13gの流入口側が接続されている。第7三方継手13gの一方の流出口には、冷房用膨張弁20bの入口側が接続されている。そして、第7三方継手13gの他方の流出口には、冷却用膨張弁20cの入口側が接続されている。
【0455】
冷房用膨張弁20bは、少なくとも冷房モードの冷媒回路に切り替えられた際に、レシーバ19から流出した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。
【0456】
冷房用膨張弁20bの出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。室内蒸発器23は、冷房用膨張弁20bにて減圧された低圧冷媒を、送風機62から送風された送風空気と熱交換させて蒸発させる蒸発部である。従って、室内蒸発器23は空調用蒸発器の一例に相当する。室内蒸発器23の冷媒出口には、第8三方継手13hの一方の流入口が接続されている。
【0457】
冷却用膨張弁20cは、チラー24にて低温側熱媒体を冷却する際に、レシーバ19から流出した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。冷却用膨張弁20cの出口には、チラー24の冷媒通路24aの入口側が接続されている。
【0458】
チラー24は、冷却用膨張弁20cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路24aと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路24bとを有している。チラー24は蒸発器の一例に相当する。
【0459】
チラー24の冷媒通路24aの出口には、第8三方継手13hの他方の流入口が接続されている。第8三方継手13hの流出口には、第4三方継手13dを介して、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0460】
そして、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、除霜運転の運転態様として、第1凝縮熱除霜モード、第2凝縮熱除霜モード、第3凝縮熱除霜モードを採用することができる。又、第3実施形態に係る車両用空調装置1は、上述した実施形態と同様に、
図10に示す除霜制御プログラムに従って、室外熱交換器22の除霜運転を実行する。
【0461】
つまり、第3実施形態に係る車両用空調装置1においても、ドライ除霜モードによる除霜運転が行われる為、上述した実施形態と同様に、室外熱交換器22表面から残留水分を、効率よく短期間で蒸発除去することができる。尚、第3実施形態におけるドライ除霜の完了判定において、ドライ投入エネルギ量は、ドライ除霜に際して、冷媒を用いて投入されたエネルギ量を含んでいる。
【0462】
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、室外熱交換器22を用いたレシーバサイクルとして構成した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0463】
(第4実施形態)
図35に示すように、本実施形態では、上述した実施形態とは異なる構成に適用した車両用空調装置1について説明する。尚、
図35では、上述した実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0464】
ここで、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、室内空調ユニット60等を備える。第4実施形態に係る高温側熱媒体回路30、低温側熱媒体回路40、室内空調ユニット60及び制御装置70の構成は、第1実施形態と同様である為、その説明を省略する。
【0465】
図35に示すように、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10における外気用熱交換部29Xの構成が相違している点を除いて、第1実施形態と同様の構成である。即ち、第4実施形態における冷凍サイクル装置10は、外気用熱交換部29Xとして室外熱交換器22を用いたアキュムレータサイクルとして構成されている。
【0466】
第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、除霜運転の運転態様として、第1凝縮熱除霜モード、第2凝縮熱除霜モード、第3凝縮熱除霜モード、蓄熱除霜モードを採用することができる。又、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、上述した実施形態と同様に、
図10に示す除霜制御プログラムに従って、室外熱交換器22の除霜運転を実行することができる。
【0467】
つまり、第4実施形態に係る車両用空調装置1においても、ドライ除霜モードによる除霜運転が行われる為、上述した実施形態と同様に、室外熱交換器22表面から残留水分を、効率よく短期間で蒸発除去することができる。
【0468】
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、室外熱交換器22を用いたアキュムレータサイクルとして構成した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0469】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0470】
(a)上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【0471】
(b)冷凍サイクル装置の構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。上述した効果を発揮できるように、複数のサイクル構成機器の一体化等を行ってもよい。
【0472】
(c)加熱部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0473】
(d)冷却部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0474】
(e)上述した実施形態において、ドライ除霜における目標風速VaOを、
図21に示す制御特性図に従って、冷媒凝縮温度が低い程、目標風速VaOが小さくなるように決定していたが、この態様に限定されるものではない。
【0475】
例えば、目標風速VaOを決定する為の制御特性図として、0.12m/s~1.2m/sの範囲内において、外気温度が低い程、目標風速VaOを低く決定する制御特性図を採用しても良い。
【0476】
又、目標風速VaOを決定する為の制御特性図として、0.12m/s~1.2m/sの範囲内において、外気湿度が高い程、目標風速VaOを低く決定する制御特性図を採用しても良い。このように目標風速VaOを決定することによって、外気湿度との関係において、ドライ除霜時における白霧の視認を抑制することができる。
【0477】
(f)上述した実施形態において、ドライ除霜における目標凝縮温度TCOを、
図20に示す制御特性図に従って、外気温が低い程、目標凝縮温度TCOが小さくなるように決定していたが、この態様に限定されるものではない。
【0478】
例えば、目標風速VaOを決定する為の制御特性図として、15℃~70℃の範囲内において、外気湿度が高い程、目標凝縮温度TCOを低く決定する制御特性図を採用しても良い。このように目標凝縮温度TCOを決定することによって、外気湿度との関係において、ドライ除霜時における白霧の視認を抑制することができる。
【0479】
(g)上述した第1凝縮熱除霜モード、第2凝縮熱除霜モードにてドライ除霜を行っている場合に、低温側熱媒体流路41における電気ヒータ44の発熱量を制御しても良い。例えば、ドライ除霜時における圧縮機11の冷媒吐出能力が予め所定値に定められている場合、低温側熱媒体温度が目標最低低温側熱媒体温度以上になるように電気ヒータ44の発熱量を制御する。目標最低低温側熱媒体温度は、バッテリ75の電池容量を充分に利用することができる最低温度を意味する。これにより、バッテリ75を充分に活用できる状態に温度調整すると同時に、電気ヒータ44による補助を最小限に留めることができる。
【0480】
又、ドライ除霜時における圧縮機11の冷媒吐出能力が目標凝縮圧力PcOに近づくように調整される場合においては、電気ヒータ44の発熱量を以下のように制御することも可能である。この条件において、圧縮機11の冷媒吐出能力が最大であっても目標凝縮圧力PcOに到達しない場合、目標凝縮圧力PcOに到達するように、電気ヒータ44で補っても良い。
【0481】
(h)上述した実施形態においては、ドライ除霜の完了を判定する際に、霜の融解熱及び融解した水に対する蒸発潜熱を用いていたが、これに限定されるものでない。ドライ除霜の完了を判定する際に、霜の融解熱及び融解した水に対する蒸発潜熱に加えて、霜に対する顕熱変化分や水に対する顕熱変化分を利用しても良い。
【0482】
例えば、融解除霜開始時における室外熱交換器22の温度を霜の温度に近似する物理量として取得して、霜が融点に達するまでに必要な顕熱を特定しても良い。又、予め予測された蒸発水温と、外気温度、外気湿度、風速、加熱温度を用いて特定される蒸発温度を合わせて用いてもよい。霜に対する顕熱変化分や水に対する顕熱変化分は、例えば、室外熱交換器22に対する着霜量の推定や、ドライ除霜の完了判定に用いることができ、それぞれの精度を向上させることができる。
【0483】
(i)又、ドライ除霜の完了判定に関して、圧縮機11や水加熱ヒータ34等において、霜の融解及び残留水分の蒸発除去に使用した使用エネルギ量が予め定められた基準消費量になった場合に、除霜動作を完了するように構成することも可能である。
【0484】
この場合、室外熱交換器22において、霜の溶け残りが生じる虞がある為、溶け残り判定フラグを記憶しておき、以後の制御に活用することが望ましい。例えば、溶け残り判定フラグがある場合には、通常よりも早いタイミングで除霜動作を行うようにすることも可能である。
【0485】
(j)上述した実施形態においては、ドライ除霜時において、外気ファン22aによって、室外熱交換器22等に送風を行っていたが、外気ファン22aの送風量と、室外熱交換器22に対する風速が大きく異なる場合も想定される。例えば、暴風雨が吹き荒れている場合には、外気ファン22aの動作から想定される以上の風速が室外熱交換器22を通過してしまう。この為、室外熱交換器22における凝縮温度が十分に上昇せず、ドライ除霜に対する投入エネルギ量が増大してしまうことが考えられる。
【0486】
このような場合を考慮して、除霜開始から予め定められた期間を経過した後に、室外熱交換器22における凝縮温度が基準値以上に上昇した場合、その時点でドライ除霜を完了させるようにしても良い。この場合における基準値とは、残留水分の蒸発を期待することができる凝縮温度の最低値を意味し、例えば、10℃である。
【0487】
そして、この場合においても、室外熱交換器22において、霜の溶け残りが生じる虞がある為、溶け残り判定フラグを記憶しておき、以後の制御に活用することが望ましい。例えば、溶け残り判定フラグがある場合には、通常よりも早いタイミングで除霜動作を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0488】
1 車両用空調装置
11 圧縮機
12 水冷媒熱交換器
22a 外気ファン
29X 外気用熱交換部
30 高温側熱媒体回路
70 制御装置
70l 融解制御部
70m ドライ制御部
70n 乾燥完了判定部