(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20231205BHJP
G01K 1/143 20210101ALI20231205BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20231205BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01K7/22 J
G01K1/143
H01C7/02
H01C7/04
(21)【出願番号】P 2020047171
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 利博
(72)【発明者】
【氏名】稲場 均
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174135(JP,A)
【文献】特開2012-194115(JP,A)
【文献】特開2010-185688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01C 7/02,7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱素子部と、
測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と前記感熱素子部が取り付けられ前記測定対象物に接触させる底面部とを有した圧着端子とを備え、
前記底面部が、前記測定対象物との接触面側に凸状に湾曲していると共に前記測定対象物に対して接触した状態で弾性変形可能であ
り、
前記圧着端子が、前記底面部の両側から立設した一対の側壁部と、
一対の前記側壁部の上部から外側に突出した一対の前記ネジ取り付け部とを有していることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項
1に記載の温度センサにおいて、
前記ネジ取り付け部が、前記側壁部の上部から斜め下方に向けて突出していることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載の温度センサにおいて、
前記底面部が、前記側壁部よりも薄い板材で形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記感熱素子部が、前記底面部の上面に設置された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続されていると共に他端が一対のリード線に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備えていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物への取り付けが容易で、温度測定のばらつきが少ない温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、チップ状やフレーク状のサーミスタ素子を圧着端子に取り付けたものが知られている。
この温度センサでは、いわゆるR端子である圧着端子にネジ止め取り付けが可能な円環部が設けられているので、この部分にネジを挿通させた状態で測定対象物の雌ネジ部等に螺着させることで、温度センサを測定対象物に容易にネジ止めすることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、感熱素子部と、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と感熱素子部が取り付けられた底面部とを有した圧着端子とを備えている温度センサが記載されている。
この温度センサでは、感熱素子部が、底面部の上面に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの上面に設けられたサーミスタ素子と、一端がサーミスタ素子に接続され絶縁性フィルムの表面に形成された一対のパターン配線とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、圧着端子の底面部を測定対象物に押し付けるようにして温度センサ101を設置して温度を測定しているが、
図5に示すように、圧着端子105が傾いた状態で測定対象物Mに押し付けられたり、測定対象物Mの設置面に凹凸等の歪みがあったりすると、圧着端子105の底面部104と測定対象物Mとの間に空気層ARができてしまい熱伝導が低下して温度測定にばらつきが生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、測定対象物との密着性が向上し、温度測定のばらつきを抑えることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、感熱素子部と、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と前記感熱素子部が取り付けられ前記測定対象物に接触させる底面部とを有した圧着端子とを備え、前記底面部が、前記測定対象物との接触面側に凸状に湾曲していると共に前記測定対象物に対して接触した状態で弾性変形可能であることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、底面部が、測定対象物との接触面側に凸状に湾曲していると共に測定対象物に対して接触した状態で弾性変形可能であるので、測定対象物に取り付けた際に、湾曲した底面部が押圧されて測定対象物の形状に対応して弾性変形することで、測定対象物との高い密着性が得られる。
したがって、底面部における接触熱抵抗が一定になると共に熱応答性が向上し、さらに感熱素子部の位置が一定となることで、温度測定のばらつきを抑制することができる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記圧着端子が、前記底面部の両側から立設した一対の側壁部と、一対の前記側壁部の上部から外側に突出した一対の前記ネジ取り付け部とを有していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、圧着端子が、底面部の両側から立設した一対の側壁部と、一対の側壁部の上部から外側に突出した一対のネジ取り付け部とを有しているので、両側のネジ取り付け部を測定対象物にネジ止めすることで、両側から底面部を測定対象物に確実に押し付けることができる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第2の発明において、前記ネジ取り付け部が、前記側壁部の上部から斜め下方に向けて突出していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、ネジ取り付け部が、側壁部の上部から斜め下方に向けて突出しているので、ネジ取り付け部を測定対象物にネジ止めすると、傾斜しているネジ取り付け部が測定対象物に押し付けられて弾性変形することで、底面部も測定対象物に強く押し付けられて弾性変形させることができる。
【0011】
第4の発明に係る温度センサは、第2又は第3の発明において、前記底面部が、前記側壁部よりも薄い板材で形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、底面部が、側壁部よりも薄い板材で形成されているので、底面部が側壁部よりも撓み易く、容易に弾性変形させ易くなる。
【0012】
第5の発明に係る温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記感熱素子部が、前記底面部の上面に設置された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続されていると共に他端が一対のリード線に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、感熱素子部が、底面部の上面に設置された絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子とを備えているので、弾性変形する底面部に対応して柔軟な絶縁性フィルムも変形することができ、底面部と絶縁性フィルムとの密着性を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、底面部が、測定対象物との接触面側に凸状に湾曲していると共に測定対象物に対して接触した状態で弾性変形可能であるので、底面部を測定対象物に押し付けて取り付けた際に、測定対象物との高い密着性が得られる。
したがって、本発明の温度センサでは、底面部における接触熱抵抗が一定になると共に熱応答性が向上し、さらに感熱素子部の位置が一定となることで、温度測定のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本実施形態において、温度センサを測定対象物に取り付けた状態を示す断面図である。
【
図3】本実施形態において、感熱素子部を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態において、温度センサを示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る温度センサの従来例において、温度センサを測定対象物に取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、
図1から
図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0016】
本実施形態の温度センサ1は、
図1及び
図2に示すように、感熱素子部2と、測定対象物MにネジSで固定可能なネジ取り付け部3と感熱素子部2が取り付けられ測定対象物Mに接触させる底面部4とを有した圧着端子5とを備えている。
上記底面部4は、測定対象物Mとの接触面(底面部4の下面)側に凸状に湾曲していると共に測定対象物Mに対して接触した状態で弾性変形可能である。
【0017】
上記圧着端子5は、底面部4の両側から立設した一対の側壁部6と、一対の側壁部6の上部から外側に突出した一対のネジ取り付け部3とを有している。
なお、圧着端子5は、底面部4の一端から立設し一対の側壁部6の端部を繋いだ前壁部7を有しており、一対の側壁部6と前壁部7とで平面視コ字状の箱形状となっている。
【0018】
上記ネジ取り付け部3は、側壁部6の上部から斜め下方に向けて突出している。
ネジ取り付け部3には、ネジ用孔部3aが形成されている。
上記底面部4は、側壁部6よりも薄い板材で形成されている。
すなわち、圧着端子5は、例えば厚み0.1~5mmのAlの板材で形成されており、底面部4だけを板金加工で叩いて薄くしている。
【0019】
上記感熱素子部2は、
図2から
図4に示すように、底面部4の上面に設置された絶縁性フィルム8と、絶縁性フィルム8の上面に設けられた感熱素子9と、一端が感熱素子9に接続されていると共に他端が一対のリード線10に接続され絶縁性フィルム8の上面に形成された一対のパターン配線11とを備えている。
【0020】
上記感熱素子9は、両端に端子電極が形成されたチップサーミスタである。なお、感熱素子9として、フレーク状のサーミスタ素子,薄膜サーミスタや焦電素子等を採用しても構わない。
上記絶縁性フィルム8は、金属フィラーを含有した接着剤Gで圧着端子5の底面部4に接着されている。
例えば、上記接着剤Gとして、銀フィラーを含有した高熱伝導性銀接着剤(50~95W/(m・K))などが採用可能である。
【0021】
上記一対のリード線10は、一対のパターン配線11の他端にあるパッド部11aに半田材、溶接又は導電性接着剤で接合され接続されている。なお、パッド部11aは、リード線10を接続するために、他の部分よりも幅広に形成されている。
【0022】
上記絶縁性フィルム8は、例えば厚さ7.5~125μmのポリイミド樹脂シートで矩形状に形成されている。
上記一対のパターン配線11の一端は、感熱素子9の両端の端子電極に接続されている。
これら一対のパターン配線11は、例えばCu膜等の金属膜でパターン形成されている。
【0023】
感熱素子9は、底面部4,一対の側壁部6及び前壁部7に囲まれた領域内に充填されたシリコーン樹脂等の封止樹脂部12で封止されている。
本実施形態の温度センサ1を測定対象物Mに取り付けるには、まず測定対象物Mの取り付け穴M1の底部に高熱伝導性の接着剤G又は樹脂を塗布した状態で、底面部4を取り付け穴M1の底部に載置する。
【0024】
次に、一対のネジ取り付け部3のネジ用孔M2にネジSを挿通させた状態で、測定対象物Mのネジ孔M2に螺着させる。このとき、ネジSを締め付けると傾斜していたネジ取り付け部3が測定対象物Mに密着するように変形すると共に、同時に生じる弾性により一対の側壁部6及び底面部4が測定対象物Mの取り付け穴M1の底部に押し付けられる。
底面部4は、測定対象物Mの取り付け穴M1の底部に押し付けられると、取り付け穴M1の底部形状に対応して弾性変形する。本実施形態では、取り付け穴M1の平坦な底部に合わせて底面部4が湾曲形状から平坦形状に変形する。
【0025】
このように本実施形態の温度センサ1では、底面部4が、測定対象物Mとの接触面側に凸状に湾曲していると共に測定対象物Mに対して接触した状態で弾性変形可能であるので、測定対象物Mに取り付けた際に、湾曲した底面部4が押圧されて測定対象物Mの形状に対応して弾性変形することで、測定対象物Mとの高い密着性が得られる。
したがって、底面部4における接触熱抵抗が一定になると共に熱応答性が向上し、さらに感熱素子部2の位置が一定となることで、温度測定のばらつきを抑制することができる。
【0026】
また、圧着端子5が、底面部4の両側から立設した一対の側壁部6と、一対の側壁部6の上部から外側に突出した一対のネジ取り付け部3とを有しているので、両側のネジ取り付け部3を測定対象物Mにネジ止めすることで、両側から底面部4を測定対象物Mに確実に押し付けることができる。
【0027】
特に、ネジ取り付け部3が、側壁部6の上部から斜め下方に向けて突出しているので、ネジ取り付け部3を測定対象物Mにネジ止めすると、傾斜しているネジ取り付け部3が測定対象物Mに押し付けられて弾性変形することで、底面部4も測定対象物Mに強く押し付けられて弾性変形させることができる。
【0028】
また、底面部4が、側壁部6よりも薄い板材で形成されているので、底面部4が側壁部6よりも撓み易く、容易に弾性変形させ易くなる。
さらに、感熱素子部2が、底面部4の上面に設置された絶縁性フィルム8と、絶縁性フィルム8の上面に設けられた感熱素子9とを備えているので、弾性変形する底面部4に対応して柔軟な絶縁性フィルム8も変形することができ、底面部4と絶縁性フィルム8との密着性を維持することができる。
【0029】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、いわゆる丸形端子(R端子)の圧着端子を採用したが、ネジ止め可能なネジ取り付け部であればY端子等の他の形状の形状としても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1,101…温度センサ、2…感熱素子部、3…ネジ取り付け部、4…底面部、5,105…圧着端子、6…側壁部、8…絶縁性フィルム、9…感熱素子、11…パターン配線、M…測定対象物、S…ネジ