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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】空調換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20231205BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20231205BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20231205BHJP
   F24F 3/147 20060101ALI20231205BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20231205BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/007 B
F24F13/22 221
F24F3/147
F24F11/74
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020049118
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148369
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅裕
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207941(JP,A)
【文献】特開平03-286941(JP,A)
【文献】特開2010-242997(JP,A)
【文献】実開昭62-014250(JP,U)
【文献】特開2003-148780(JP,A)
【文献】特開2014-134343(JP,A)
【文献】特開2014-211266(JP,A)
【文献】特開2005-164183(JP,A)
【文献】特開2014-173826(JP,A)
【文献】特開2018-004115(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-125681(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 7/007
F24F 13/22
F24F 3/147
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全熱交換器と、
前記全熱交換器を経由する、給気経路及び排気経路と、
前記給気経路と複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第1風量調整器が設けられた給気ダクトと、
前記排気経路と前記複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第2風量調整器が設けられた排気ダクトと、
前記給気経路に設けられ、外部空間から前記複数の室内空間に室外空気を供給する第1ファンと、
前記排気経路に設けられ、前記複数の室内空間から前記外部空間に室内空気を排気する第2ファンと、
前記複数の室内空間のそれぞれに取り付けられた空気調和機と、
前記第1ファン、前記第2ファン、前記第1風量調整器、及び前記第2風量調整器を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記全熱交換器に着霜が発生したと判断した場合、前記複数の室内空間中、前記空気調和機がサーモオン状態にある室内空間よりも、前記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間からの排気量が増加するように、前記第2ファン及び前記第2風量調整器を制御する
空調換気システム。
【請求項2】
請求項1に記載された空調換気システムであって、
前記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、前記制御装置は、室内空間の実際温度から設定温度を減じた値がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行う
空調換気システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載された空調換気システムであって、
前記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、前記制御装置は、室内空間の実際温度がより高い室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行う
空調換気システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載された空調換気システムであって、
前記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、前記制御装置は、予め記憶された室内空間の容積がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行う
空調換気システム。
【請求項5】
全熱交換器と、
前記全熱交換器を経由する、給気経路及び排気経路と、
前記給気経路と複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第1風量調整器が設けられた給気ダクトと、
前記排気経路と前記複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第2風量調整器が設けられた排気ダクトと、
前記給気経路に設けられ、外部空間から前記複数の室内空間に室外空気を供給する第1ファンと、
前記排気経路に設けられ、前記複数の室内空間から前記外部空間に室内空気を排気する第2ファンと、
前記複数の室内空間の空気調和機から運転情報を受信する通信手段と、
前記第1ファン、前記第2ファン、前記第1風量調整器、及び前記第2風量調整器を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記全熱交換器に着霜が発生したと判断した場合、前記複数の室内空間中、前記空気調和機がサーモオン状態にある室内空間よりも、前記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間からの排気量が増加するように、前記第2ファン及び前記第2風量調整器を制御する
空調換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排気と給気との間で熱交換を行う全熱交換器を用いた場合に、室内の温かい空気が全熱交換器を経由して排気される際、全熱交換器内で冷たい外気(給気)で冷やされ、排気の温度が露点以下になると、全熱交換器内で着霜が発生し、全熱交換器が目詰まりする場合がある。
【0003】
このような状況の中、全熱交換器の除霜方法として、給気ファンの回転数を減らして、物理的に外気の風量を減らす方法がある(例えば、特許文献1参照)。また別の方法として、全熱交換器内で給気経路と排気経路を分割して、除霜運転と換気運転とを併行して行う方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-148780号公報
【文献】特開2018-004115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前者の方法では、外気の風量が物理的に減少するため、除霜運転時には室内の換気が充分になされない虞がある。一方、後者の方法では、全熱交換器内で給気経路と排気経路とが分割されることから、装置を大型化しなければ全熱交換機内における排気経路の流路断面積が縮小されてしまい、この場合においても換気能力が低下する虞がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、充分な換気能力を確保しつつ、全熱交換器を除霜することを可能とする空調換気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空調換気システムは、全熱交換器と、給気経路及び排気経路と、給気ダクトと、排気ダクトと、第1ファンと、第2ファンと、空気調和機と、制御装置とを具備する。
上記給気経路及び上記排気経路は、上記全熱交換器を経由する。
上記給気ダクトは、上記給気経路と複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第1風量調整器が設けられる。
上記排気ダクトは、上記排気経路と上記複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第2風量調整器が設けられる。
上記第1ファンは、上記給気経路に設けられ、外部空間から上記複数の室内空間に室外空気を供給する。
上記第2ファンは、上記排気経路に設けられ、上記複数の室内空間から上記外部空間に室内空気を排気する。
上記空気調和機は、上記複数の室内空間のそれぞれに取り付けられる。
上記制御装置は、上記第1ファン、上記第2ファン、上記第1風量調整器、及び上記第2風量調整器を制御する。
上記制御装置は、上記全熱交換器に着霜が発生したと判断した場合、上記複数の室内空間中、上記空気調和機がサーモオン状態にある室内空間よりも、上記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間からの排気量が増加するように、上記第2ファン及び上記第2風量調整器を制御する。
【0008】
このような空調換気システムによれば、空気調和機がサーモオン状態にある室内空間よりも、空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間からの排気量が増加するので、充分な換気能力が確保されつつも、より確実に全熱交換器を除霜することができる。
【0009】
上記の空調換気システムにおいては、上記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、上記制御装置は、室内空間の実際温度から設定温度を減じた値がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。
【0010】
このような空調換気システムによれば、室内空間の実際温度から設定温度を減じた値がより大きい室内空間からの排気量が優先的に増加するので、より確実に全熱交換器を除霜することができる。
【0011】
上記の空調換気システムにおいては、上記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、上記制御装置は、室内空間の実際温度がより高い室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。
【0012】
このような空調換気システムによれば、室内空間の実際温度がより高い室内空間からの排気量が優先的に増加するので、より確実に全熱交換器を除霜することができる。
【0013】
上記の空調換気システムにおいては、上記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、上記制御装置は、室内空間の容積がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。
【0014】
このような空調換気システムによれば、室内空間の容積がより大きい室内空間からの排気量が優先的に増加するので、より確実に全熱交換器を除霜することができる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空調換気システムは、全熱交換器と、給気経路及び排気経路と、給気ダクトと、排気ダクトと、第1ファンと、第2ファンと、通信手段と、制御装置とを具備する。
上記給気経路及び上記排気経路は、上記全熱交換器を経由する。
上記給気ダクトは、上記給気経路と複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第1風量調整器が設けられる。
上記排気ダクトは、上記排気経路と上記複数の室内空間のそれぞれとを接続し、内部に第2風量調整器が設けられる。
上記第1ファンは、上記給気経路に設けられ、外部空間から上記複数の室内空間に室外空気を供給する。
上記第2ファンは、上記排気経路に設けられ、上記複数の室内空間から上記外部空間に室内空気を排気する。
上記通信手段は、上記複数の室内空間の空気調和機から運転情報を受信する。
上記制御装置は、上記第1ファン、上記第2ファン、上記第1風量調整器、及び上記第2風量調整器を制御する。
上記制御装置は、上記全熱交換器に着霜が発生したと判断した場合、上記複数の室内空間中、上記空気調和機がサーモオン状態にある室内空間よりも、上記空気調和機がサーモオフ状態にある室内空間からの排気量が増加するように、上記第2ファン及び上記第2風量調整器を制御する。
【0016】
このような空調換気システムによれば、通信手段を介して各部屋の室内機がサーモオン状態であるか、サーモオフ状態であるかの情報を常時受信する。これにより、充分な換気能力が確保されつつも、より確実に全熱交換器を除霜することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、充分な換気能力を確保しつつ、より確実な全熱交換器の除霜を可能とする空調換気システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の空調換気システムの一例を示す模式的ブロック図である。
図2】本実施形態の空調換気の一例を示すフロー図が示される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0020】
図1は、本実施形態の空調換気システムの一例を示す模式的ブロック図である。
【0021】
空調換気システム1は、ビルディング、住宅等の建物90に備え付けられる。空調換気システム1は、制御装置10と、全熱交換器20と、給気経路31と、排気経路32と、風量調整器41a、41b、41cと、風量調整器42a、42b、42cと、給気ダクト51a、51b、51cと、排気ダクト52a、52b、52cと、ファン61(第1ファン)と、ファン62(第2ファン)と、空気調和機の室内機71、72、73とを具備する。なお、風量調整器41a、41b、41cを総称的に第1風量調整器とし、風量調整器42a、42b、42cを総称的に第2風量調整器とする。
【0022】
さらに、空調換気システム1は、給気温度センサ31tと、排気温度センサ32tと、給気圧力センサ31pと、排気圧力センサ32pとを具備する。また、建物90は、複数の室内空間81、82、83を有する。図1では、複数の室内空間として、3つの室内空間81、82、83が例示されている。室内空間の数は、この例に限らない。
【0023】
また、給気ダクト51aには、風量計41aqが設けられ、給気ダクト51bには、風量計41bqが設けられ、給気ダクト51cには、風量計41cqが設けられている。排気ダクト52aには、風量計42aqが設けられ、排気ダクト52bには、風量計42bqが設けられ、排気ダクト52cには、風量計42cqが設けられている。
【0024】
空調換気システム1において、制御装置10は、ファン61、62、及び風量調整器41a、41b、41c、42a、42b、42cを制御する。また、制御装置10には、風量調整器41a、41b、41c、42a、42b、42cの開口面積、給気温度センサ31tによって検出された温度、排気温度センサ32tによって検出された温度、温度センサ71tによって検出された温度、温度センサ72tによって検出された温度、温度センサ73tによって検出された温度、給気圧力センサ31pによって検出された圧力、排気圧力センサ32pによって検出された圧力、及び風量計41aq、41bq、41cq、42aq、42bq、42cqによって検出された風量が送信される。制御装置10は、建物90の内部に設けられてもよく、建物90の外部に設けられてもよい。
【0025】
全熱交換器20は、回転型の全熱交換器でもよく、静止型の全熱交換器でもよい。全熱交換器20には、給気経路31及び排気経路32のそれぞれが経由している。つまり、給気経路31は、全熱交換器20の一方の流路を通過し、排気経路32は、全熱交換器20の他方の流路を通過する。換言すれば、全熱交換器20は、給気経路31の途中に設けられているとともに、排気経路32の途中に設けられている。これにより、給気経路31を流れる空気と、排気経路32を流れる空気との間で全熱交換が行われる。
【0026】
給気ダクト51a、51b、51cは、給気経路31と複数の室内空間81、82、83のそれぞれとを接続する。給気ダクト51a、51b、51cは、給気経路31から分岐している。ここで、給気ダクト51aは、給気経路31と室内空間81とを接続する。給気ダクト51bは、給気経路31と室内空間82とを接続する。給気ダクト51cは、給気経路31と室内空間83とを接続する。また、給気ダクト51aの内部には、風量調整器41aが設けられている。給気ダクト51bの内部には、風量調整器41bが設けられている。給気ダクト51cの内部には、風量調整器41cが設けられている。
【0027】
排気ダクト52a、52b、52cは、排気経路32と複数の室内空間81、82、83のそれぞれとを接続する。排気ダクト52a、52b、52cは、排気経路32から分岐している。ここで、排気ダクト52aは、排気経路32と室内空間81とを接続する。排気ダクト52bは、排気経路32と室内空間82とを接続する。排気ダクト52cは、排気経路32と室内空間83とを接続する。また、排気ダクト52aの内部には、風量調整器42aが設けられている。排気ダクト52bの内部には、風量調整器42bが設けられている。排気ダクト52cの内部には、風量調整器42cが設けられている。
【0028】
ファン61は、給気経路31に設けられ、外部空間から複数の室内空間81、82、83に室外空気を供給する。ファン62は、排気経路32に設けられ、複数の室内空間81、82、83から外部空間に室内空気を排気する。図1では、ファン61が全熱交換器20と室内空間81、82、83との間に設けた例が示されている。ファン61は、全熱交換器20と外部空間との間に設けられてもよい。また、ファン62も、全熱交換器20と室内空間81、82、83との間に設けられてもよく、全熱交換器20と外部空間との間に設けられてもよい。
【0029】
空気調和機の室内機71は、室内空間81に取り付けられる。空気調和機の室内機72は、室内空間82に取り付けられる。空気調和機の室内機73は、室内空間83に取り付けられる。空気調和機の室内機71は、温度センサ71tを有する。空気調和機の室内機72は、温度センサ72tを有する。空気調和機の室内機73は、温度センサ73tを有する。空気調和機の室内機71、72、73は、室内空間81、82、83のそれぞれに独立して設けられている。図示はしないが、空気調和機の室外機は室外空間に設けられ、空気調和機の室内機71、72、73のそれぞれに対応して一台ずつ接続されてもよく、室内空間81、82、83のそれぞれが同じ室外機に接続されてもよい。
【0030】
冬季の室内空間81を例として、例えば、空調換気システム1による室内空間81の換気を説明する。
【0031】
室内空間81において、人が存在すると、室内空気の湿度及び室内空気中の二酸化炭素の濃度が増加する。室内空気中の二酸化炭素の濃度が1000ppm程度になると、人間は集中力の低下を起こしたり、眠気を感じたりする。このような悪影響を避けるため、室内空気中の二酸化炭素の濃度が当該数値を超えないようにすることが必要である。従って、必要に応じて室内空間81の換気が行なわれる。
【0032】
ファン62が駆動し、風量調整器42aが開状態となると、室内空気は、排気ダクト52a、排気経路32及び全熱交換器20を経由して外部空間に排気される。一方、ファン61が駆動し、風量調整器41aが開状態となると、室外空気は、給気経路31及び全熱交換器20、給気ダクト51aを経由して室内空間81に流入する。
【0033】
この際、全熱交換器20では、室内空気が室外空気に比べて温度が高く湿度が高いため、全熱交換器20において室内空気から外部空気へ熱と水分が移動する。すなわち、室内空気は室外空気へ放熱することで冷却され、且つ、減湿されて外部空間に排気される。一方、冷たく乾いた室外空気は、全熱交換器20で蓄熱された全熱によって加熱され、且つ、加湿されて室内空間81に流入する。これにより、室内空気と室外空気との全熱交換がなされる。さらに、室外空気が室内空間81に流入し、室内空気が室内空間81から排気されることによって、室内空間81の換気がなされる。
【0034】
ここで、全熱交換器20を通過する室内空気の温度が全熱交換器20内で冷やされることにより、室内空気の温度が露点以下になると、全熱交換器20内で着霜が発生する場合がある。全熱交換器内で着霜が発生すると、全熱交換器が目詰まりする虞がある。
【0035】
このような状況の中、給気ファンの回転数を減らして、外気の風量を減らしたり、全熱交換器内で給気経路と排気経路を分割して、除霜運転と換気運転とを併行したりして全熱交換器を除霜する方法がある。しかし、前者の方法では、外気の風量が減少することから室内の充分な換気がなされない虞がある。また、後者の方法では、全熱交換器内で給気経路と排気経路とが分割されることから、装置を大型化しなければ全熱交換機内における排気経路の流路断面積が縮小されて、換気能力が低下する虞がある。
【0036】
これに対して、本実施形態の空調換気システム1では、充分な換気能力を保持しつつ、より確実に全熱交換器20を除霜することができる。以下、本実施形態の空調換気システム1による空調換気の詳細を説明する。
【0037】
図2に、本実施形態の空調換気の一例を示すフロー図が示される。図2に示す制御フローは、制御装置10によって自動的に実行される。ここで、図2及び下記で使用される各パラメータは、以下の通りである。通常運転に係る各パラメータは、通常運転時に検出され、制御装置10の図示しない記憶部に記憶される。
【0038】
:通常運転時の風量調整器42aの開口面積
:通常運転時の風量調整器42bの開口面積
:通常運転時の風量調整器42cの開口面積
all:通常運転時の風量調整器42a、42b、42cの開口面積の総和(S+S+S
off:通常運転時の風量調整器42a、42b、42cのうち、サーモオフ状態である空気調和機の室内機71、72を備える室内空間81、82に対応する風量調整器42a、42bの開口面積の総和(S+S
=S/Sall:通常運転時のSallに対する風量調整器42aの開度比
=S/Sall:通常運転時のSallに対する風量調整器42bの開度比
=S/Sall:通常運転時のSallに対する風量調整器42cの開度比
aoff=S/Soff:通常運転時のSoffに対する風量調整器42aの開度比
boff=S/Soff:通常運転時のSoffに対する風量調整器42bの開度比
:通常運転時の室内空間81の排気風量
:通常運転時の室内空間82の排気風量
:通常運転時の室内空間83の排気風量
all:通常運転時の合計排気風量(Q+Q+Q
da:除霜運転時の風量調整器42aの開口面積
db:除霜運転時の風量調整器42bの開口面積
dc:除霜運転時の風量調整器42cの開口面積
dall:除霜運転時の風量調整器42a、42b、42cの開口面積の総和(Sda+Sdb+Sdc
doff:除霜運転時の風量調整器42a、42b、42cのうち、サーモオフ状態である空気調和機の室内機71、72を備える室内空間81、82に対応する風量調整器42a、42bの開口面積の総和(Sda+Sdb
pa=Sda/Sdall:ステップS30時のSdallに対する風量調整器42aの開度比
pb=Sdb/Sdall:ステップS30時のSdallに対する風量調整器42bの開度比
pc=Sdc/Sdall:ステップS30時のSdallに対する風量調整器42cの開度比
daoff=Sda/Sdoff:除霜運転時のSdoffに対する風量調整器42aの開度比
dboff=Sdb/Sdoff:除霜運転時のSdoffに対する風量調整器42bの開度比
all:通常運転時の合計排気風量(Q+Q+Q
dall:除霜運転時の合計排気風量(Qda+Qdb+Qdc
da:除霜運転時の室内空間81の排気風量
db:除霜運転時の室内空間82の排気風量
dc:除霜運転時の室内空間82の排気風量
dall:除霜運転時の合計排気風量(Qda+Qdb+Qdc
【0039】
例えば、室内空間81、82の空気調和機の室内機71、72がサーモオフ状態で、室内空間83の空気調和機の室内機73がサーモオン状態である場合をあげて、室内空間81~83の換気及び全熱交換機20の除霜運転について説明する。ここで、サーモオン状態とは、室内空間の室内温度を設定温度にするため暖房運転が継続されている状態にあることを意味する。サーモオフ状態とは、室内空間の室内温度が設定温度に到達し、暖房運転が一時的に停止されている状態にあることを意味する。この場合、室内温度が設定温度に到達しているため、室内温度は、設定温度よりも若干高くなっている。
【0040】
まず、除霜運転前の通常運転では、開口面積S、S、S(開度比R、R、R)が所定の値に制御される。例えば、各室内空間81~83の二酸化炭素濃度に基づいて開口面積S、S、S(開度比R、R、R)がファン62の回転数と共に調整される。なお、各室内空間81~83の二酸化炭素濃度は、各室内空間81~83に設けられた図示しない二酸化炭素濃度センサにより常時検出され、制御装置10の図示しない記憶部に記憶される。
【0041】
次に、空調換気システム1の除霜運転では、まず、全熱交換器20が着霜しているか否かの判断が定期的になされる(ステップS10)。例えば、制御装置10は、給気温度センサ31tが検出した給気経路31に吸入された給気温度(外気温度)が規定値以下(例えば、-3℃以下)であって、かつ、給気温度センサ31tが検出した温度と排気温度センサ32tが検出した温度との温度差が規定値以上(例えば、-30℃以上)ならば、全熱交換器20に着霜あり(YES)と判断し、給気温度センサ31tが検出した外気温度が規定値より大きいなならば、全熱交換器20に着霜なし(NO)と判断する。
【0042】
全熱交換器20が着霜していないと判断されたのであれば、除霜運転は行われずに終了、すなわち通常運転が継続される。一方、全熱交換器20が着霜されていると判断されたのであれば、次のステップS20に進む。
【0043】
なお、全熱交換器20が着霜しているか否かの判断は、給気温度(外気温度)が規定値以下であれば、給気温度と排気温度との温度差に限らず、例えば、給気圧力センサ31p及び排気圧力センサ32pのそれぞれが検出した圧力変動、または、給気圧力センサ31pが検出した圧力と排気圧力センサ32pが検出した圧力との圧力差に基づいて行われてもよい。
【0044】
次に、ステップS20では、合計排気風量Qdallが算出される。本実施形態では、全熱交換器20で発生した霜を融かすため、合計排気風量Qdallが合計排気風量Qallよりも大きい値に設定される。例えば、合計排気風量Qdall=合計排気風量Qall×1.3とされる。この係数「1.3」は、必要に応じて適宜変更される。例えば、係数は、1より大きい値であればよい。
【0045】
なお、除霜運転が開始されたとしても、外部空間から取り込む室外空気の給気量は、通常運転時も除霜運転時も一定に調整される。これにより、外部空間から全熱交換器20に供給される冷たい室外空気の風量は増加しないので、全熱交換器20への着霜が進行するのを抑制できる。
【0046】
但し、外部空間から取り込む室外空気の給気量が通常運転時も除霜運転時も一定であることから、合計排気風量Qdallと合計排気風量Qallと差分の排気量(Qdall-Qall)を空調換気システム1内で補填する必要がある。この補填は、例えば、給気経路31を通じてではなく、サーモオフ状態にある室内空間81、82のそれぞれの隙間を通じて外部空間から室内空間81、82のそれぞれに漏入してくる室外空気によって補填される。ここで、隙間とは、例えば、扉等の隙間等が該当する。
【0047】
また、サーモオフ状態にある室内空間81、82は、室内空間81、82の室内温度が設定温度に到達しているため、それぞれの室内温度は、設定温度よりも若干高くなっている。従って、外部空間から室内空間81、82の隙間を通じて室内空間81、82に室外空気が流入したとしても、室内空間81、82では室内温度が設定温度から大幅に乖離することが起きにくくなる。
【0048】
次に、制御装置10は、各室内空間81~83の二酸化炭素濃度に基づいて開口面積S、S、Sとファン62の回転数を調整する。全熱交換器20が着霜していると判断したら、合計排気風量Qallの1.3倍である合計排気風量Qdallを確保するため、ファン回転数を上昇させ、且つ、風量調整器42a、42b、42cの全開口面積の総和Sallを上昇させる(ステップS30)。このとき、開度比Rpaは、通常運転時の開度比Rに等しい。また、開度比Rpbは、通常運転時の開度比Rに等しい。また、開度比Rpcは、通常運転時の開度比Rに等しい。
【0049】
次に、制御装置10は、サーモオン状態である室内空間83における除霜運転時の排気風量Qdcが通常運転時の排気風量Qと同じになるように風量調整器42cの開口面積Sを帰還制御によって調整する(ステップS40)。
【0050】
ここで、合計排気風量Qdallが合計排気風量Qallよりも大きく設定されているため、排気風量Qdcと排気風量Qとを同じに設定するために、開口面積Sdcは、通常運転時の開口面積Sよりも小さく制御される。これにより、サーモオン状態にある室内空間83の急激な温度低下が抑制され、室内空間83では充分に換気がなされる。なお、本実施形態での「同じ」とは実質的に同一の意味であり、完全に同一及び完全に同一の場合と同じ作用効果を奏する範囲の値までを含む。
【0051】
次に、ステップS40の処理によって低下した合計排気風量が再度算出した合計排気風量Qdallになるように、開口面積Sda、Sdbを帰還制御によって調整する(ステップS50)。ここで、開口面積Sdaは、通常運転時の開口面積Sに比べて大きく設定され、開口面積Sdbは、通常運転時の開口面積Sに比べて大きく設定される。このとき、開度比Rdaoffは、開度比Raoffと同じになるように調整される。同様に、開度比Rdboffは、開度比Rboffと同じになるように調整される。
【0052】
この結果、開口面積Sdcが通常運転時よりも小さく制御されたとしても、開口面積Sda、Sdbが通常運転時よりも大きく制御されるため、合計排気風量Qdallが低下することなく、合計排気風量Qallの1.3倍を維持する。
【0053】
このように、開口面積Sdaが開口面積Sに比べて大きく、開口面積Sdbが開口面積Sbに比べて大きく設定されることにより、排気風量Qdaは、排気風量Qよりも大きくなり、排気風量Qdbは、排気風量Qよりも大きくなる。
【0054】
この後、設定された給気量と排気量をもって暫定的に給気及び排気、すなわち、換気運転が継続される(ステップS60)。換気運転中においては、室内空間81、82から、室内空間83に比べて温かい室内空気(排気)が全熱交換器20に流入する。
【0055】
次に、換気運転が暫定的に継続された後、再びステップS10に戻り、全熱交換器20が着霜されているか否かの判断がなされる。全熱交換器20に着霜なしと判断されれば、除霜運転は終了する。全熱交換器20に着霜ありと判断されれば、ステップS20以降のステップに進む。
【0056】
このように、制御装置10が全熱交換器20に着霜が発生したと判断した場合、複数の室内空間81~83の中、空気調和機の室内機73がサーモオン状態にある室内空間83よりも、空気調和機の室内機71、72がサーモオフ状態にある室内空間81、82からの排気量が増加するように、ファン62及び風量調整器42a~42cが制御装置10によって制御される。
【0057】
サーモオフ状態にある室内空間81、82は、設定温度に対して室温が高くなっているため、室内空間81、82からの排気量を増やすことで、室内空間83に比べて排気量を増やしても室内温度が設定温度から大幅に乖離することが起きにくい室内空間81、82の室内空気が全熱交換器20を通過するので、快適性の低下を抑制しつつ全熱交換器20を除霜できる。
【0058】
また、外部空間から取り込まれる室外空気の給気量は、除霜運転時においても通常運転時と同じ給気量で調整される。さらに、合計排気風量Qdallは、合計排気風量Qallよりも大きく調整される(例えば、1.3倍)。これにより、各室内空間81~83における換気も充分に行われることになる。
【0059】
(変形例1)
【0060】
例えば、空気調和機の室内機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合には、制御装置10は、室内空間の設定温度と実際温度(室内機の温度センサにより検出される温度)との差(=実際温度-設定温度)、言い換えると、室内空間の実際温度から設定温度を減じた値がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。
【0061】
例えば、上記の差が室内空間81よりも室内空間82のほうが大きい場合、制御装置10は、室内空間81よりも室内空間82からの排気量を増加させる。これにより、室内空間81よりも、より大きい熱量を有する室内空間82の室内空気が全熱交換器20の除霜運転に使用されることになり、全熱交換器20を短時間で除霜できる。
【0062】
(変形例2)
【0063】
また、別の変形例として、空気調和機の室内機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、制御装置10は、室内空間の実際温度がより高い室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。
【0064】
例えば、温度センサ72tが検出した温度が温度センサ71tが検出した温度よりも高い場合、制御装置10は、室内空間81よりも室内空間82からの排気量を増加させる。これにより、より温かい室内空間82の室内空気が全熱交換器20の除霜運転に使用されることになり、全熱交換器20を短時間で除霜できる。
【0065】
(変形例3)
【0066】
また、別の変形例として、空気調和機の室内機がサーモオフ状態にある室内空間が複数ある場合、制御装置10は、室内空間の容積がより大きい室内空間からの排気量を優先的に増加する制御を行ってもよい。その場合、空調換気システム1は、各室内空間81~83の容積を使用者が入力する手段を有する。使用者により入力された情報は、制御手段10の図示しない記憶部に予め記憶される。
【0067】
例えば、室内空間82の容積が室内空間81の容積よりも大きい場合、制御装置10は、室内空間81よりも室内空間82からの排気量を増加させる。これにより、排気量を増やしても室内温度が設定温度から大幅に乖離することが起きにくいので、快適性の低下を抑制しつつ全熱交換器20を除霜できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明は、空調換気システム1全体としての発明と限らず、空調換気システム1を制御する制御装置10も本発明の一部として提供される。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、空気調和機の室内機71、72、73を備えた空調換気システム1の例をあげて説明したが、当該空調換気システムから空気調和機が独立しても良い。この場合、空調換気システムは空気調和機と通信を行うための図示しない通信手段を備えている。空調換気システムは、当該通信手段を介して各部屋の室内機がサーモオン状態であるか、若しくは、サーモオフ状態であるかの情報を常時受信する。
【符号の説明】
【0070】
1…空調換気システム
10…制御装置
20…全熱交換器
31…給気経路
31p…給気圧力センサ
31t…給気温度センサ
32…排気経路
32p…排気圧力センサ
32t…排気温度センサ
41a、41b、41c…風量調整器(第1風量調整器)
42a、42b、42c…風量調整器(第2風量調整器)
41aq、41bq、41cq、42aq、42bq、42cq…風量計
51a、51b、51c…給気ダクト
52a、52b、52c…排気ダクト
61、62…ファン
71、72、73…室内機
71t、72t、73t…温度センサ
81、82、83…室内空間
90…建物
図1
図2