(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20231205BHJP
H01R 13/516 20060101ALI20231205BHJP
H01R 12/73 20110101ALI20231205BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R13/42 E
H01R13/516
H01R12/73
(21)【出願番号】P 2020055508
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郎 鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-006815(JP,A)
【文献】特開平08-037065(JP,A)
【文献】特開平10-255891(JP,A)
【文献】特開2003-331973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/40-13/533
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタハウジングと、
前記アウタハウジングの内側に配置されるインナハウジングと、
前記インナハウジングの一面に開口するリテーナ装着孔と、
前記インナハウジングに収容される端子金具と、
前記リテーナ装着孔に挿入され、正規挿入状態では前記端子金具を係止し、半挿入状態では前記インナハウジングの一面から外側に突出する部分を有するリテーナと、を備え、
前記アウタハウジングは、前記半挿入状態の前記リテーナと干渉可能な干渉部を有し、
前記インナハウジングは、前記アウタハウジングに対し、前記一面を前記干渉部から離して位置させる第1姿勢と、前記一面を前記第1姿勢よりも前記干渉部の近くに位置させる第2姿勢と、に変位可能に保持され
、
前記端子金具は、回路基板に接続され、
前記インナハウジングは、前記端子金具と前記回路基板の接続のための接続口が開口する接続面を有し、
前記接続面は、前記アウタハウジングに前記回路基板を収容した状態において、前記第2姿勢では前記回路基板の表面から離れて対向して配置され、前記第1姿勢では前記第2姿勢よりも前記回路基板の表面の近くに配置されるコネクタ。
【請求項2】
前記接続面は、前記第2姿勢では前記回路基板の板面に対して傾斜して配置され、前記第1姿勢では前記回路基板の表面に沿って配置され、
前記インナハウジングは、前記第2姿勢において前記アウタハウジングに対し前記接続面に応じた傾斜姿勢となり、傾斜の外側に、前記接続面と反対側の前記一面を位置させる請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコネクタは、端子金具と、端子金具を収容するハウジングと、ハウジングの外周面に形成された開口部と、開口部に挿入されるリテーナと、を備えている。リテーナは、開口部を開放させる開放位置と開口部を閉塞する閉鎖位置とに移動可能とされている。リテーナは、閉鎖位置にて端子金具を係止する。リテーナは、開放位置または開放位置と閉鎖位置との間の途中位置にあるときに、ハウジングの外側に突出して配置される。
【0003】
ハウジングは、相手側のフード部内に嵌合される。リテーナが開放位置または途中位置ある場合には、フード部の縁部がリテーナと干渉する。これにより、ハウジングとフード部の嵌合動作が規制され、リテーナが閉鎖位置に至っていない不完全挿入状態(以下、半挿入状態と称する)にあることを知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の場合、ハウジングとフード部の嵌合作業を行う現場において、リテーナの半挿入状態を知ることができる。しかし、嵌合作業の現場にコネクタを搬送する前の段階で、リテーナが適正に挿入されていることを保証することが求められることもある。
【0006】
そこで、本開示は、コネクタ嵌合前の段階で、リテーナが適正に挿入されているか否かを検知することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、アウタハウジングと、前記アウタハウジングの内側に配置されるインナハウジングと、前記インナハウジングの一面に開口するリテーナ装着孔と、前記インナハウジングに収容される端子金具と、前記リテーナ装着孔に挿入され、正規挿入状態では前記端子金具を係止し、半挿入状態では前記インナハウジングの一面から外側に突出する部分を有するリテーナと、を備え、前記アウタハウジングは、前記半挿入状態の前記リテーナと干渉可能な干渉部を有し、前記インナハウジングは、前記アウタハウジングに対し、前記一面を前記干渉部から離して位置させる第1姿勢と、前記一面を前記第1姿勢よりも前記干渉部の近くに位置させる第2姿勢と、に変位可能に保持される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コネクタ嵌合前の段階で、リテーナが適正に挿入されているか否かを検知することが可能なコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1に係るコネクタにおいて、インナハウジングがアウタハウジングに対して第2姿勢に保持された状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、インナハウジングがアウタハウジングに対して第1姿勢に保持された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、リテーナが
インナハウジングに対して本係止位置に保持され、インナハウジングがアウタハウジングに対して第2姿勢に保持された状態を示す側断面図である。
【
図4】
図4は、リテーナがインナハウジングに対して半挿入状態に留め置かれ、インナハウジングがアウタハウジングに対して第2姿勢に至るのを規制された状態を示す側断面図である。
【
図5】
図5は、コネクタが相手側コネクタと嵌合され、端子金具が回路基板に接続された状態を示す側断面図である。
【
図8】
図8は、上下で対をなす
インナハウジングの斜視図である。
【
図9】
図9は、
インナハウジングを
接続面側から見た図である。
【
図11】
図11は、リテーナがインナハウジングに対して仮係止位置に保持された状態を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は、アウタハウジングの係止部がガイド部材の待機用係止受部に係止された状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)アウタハウジングと、前記アウタハウジングの内側に配置されるインナハウジングと、前記インナハウジングの一面に開口するリテーナ装着孔と、前記インナハウジングに収容される端子金具と、前記リテーナ装着孔に挿入され、正規挿入状態では前記端子金具を係止し、半挿入状態では前記インナハウジングの一面から外側に突出する部分を有するリテーナと、を備え、前記アウタハウジングは、前記半挿入状態の前記リテーナと干渉可能な干渉部を有し、前記インナハウジングは、前記アウタハウジングに対し、前記一面を前記干渉部から離して位置させる第1姿勢と、前記一面を前記第1姿勢よりも前記干渉部の近くに位置させる第2姿勢と、に変位可能に保持される。
上記構成によれば、インナハウジングが第1姿勢から第2姿勢に変位する過程において、一面が干渉部に近づいて半挿入状態のリテーナを干渉部に干渉させることができる。このため、インナハウジングが第2姿勢に至るのが規制され、リテーナが半挿入状態にあることを検知することができる。よって、相手コネクタとの嵌合作業を行う現場にコネクタを出荷する前の段階で、リテーナが適正に挿入されているかどうかを検知することができる。
【0011】
(2)前記端子金具は、回路基板に接続され、前記インナハウジングは、前記端子金具と前記回路基板の接続のための接続口が開口する接続面を有し、前記接続面は、前記アウタハウジングに前記回路基板を収容した状態において、前記第2姿勢では前記回路基板の表面から離れて対向して配置され、前記第1姿勢では前記第2姿勢よりも前記回路基板の表面の近くに配置されることが好ましい。
上記構成によれば、端子金具が回路基板の端面角部に接触するのを回避することができ、端子金具と回路基板とが良好に接続される状態を実現することができる。この場合に、インナハウジングを第1姿勢から第2姿勢に変位させてリテーナの半挿入状態を検知する動作が、端子金具を回路基板の表面に接続させる動作と連動するので、各動作を個別に行う必要がなく、作業負担を軽減することができる。
【0012】
(3)前記接続面は、前記第2姿勢では前記回路基板の表面に対して傾斜して配置され、前記第1姿勢では前記回路基板の表面に沿って配置され、前記インナハウジングは、前記第2姿勢において前記アウタハウジングに対し前記接続面に応じた傾斜姿勢となり、傾斜の外側に、前記接続面と反対側の前記一面を位置させるのが良い。
上記構成によれば、インナハウジングを傾斜姿勢に変位させる過程で、半挿入状態のリテーナを干渉部に干渉させることができる。このため、干渉部をインナハウジングの一面側に突出させる等といった特別な形状にする必要がなく、干渉部を簡単に形成することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<実施例1>
本実施例に係るコネクタ10は、インナハウジング20と、アウタハウジング21と、端子金具60と、リテーナ80と、を備えている。アウタハウジング21は、相手側コネクタ100に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向は、コネクタ10および相手側コネクタ100(以下、両コネクタ10、100と称する)が嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。
【0015】
(相手側コネクタ)
図5に示すように、相手側コネクタ100は、フード部110と、回路基板120と、を有している。回路基板120は、導電部121を除いて、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂等を基材として構成される。回路基板120を構成する材料は、基材となるLCP樹脂に、ガラス繊維やその他の添加材を加えたものであってもよい。
【0016】
フード部110は、合成樹脂製である。フード部110の上壁部分の前端側には、孔状のロック受部111が貫通して設けられている。フード部110および回路基板120は、図示しないケースに取り付けられている。フード部110および回路基板120の相対位置は、ケースを介して一定に維持されている。回路基板120は、フード部110内に配置され、前部がフード部110の開口端からインナハウジング20側に突出している。
【0017】
導電部121は、金属板材を折り曲げてなる接続用部材122を有している。接続用部材122は、回路基板120の板面(表面)にモールド成形等して突設された突起部分に嵌め付けられる。接続用部材122は、回路基板120の図示しない導電路に接続される。接続用部材122は、回路基板120の板面に、左右に複数並んだ状態で起立して配置される。
【0018】
(コネクタ全体の概略構造)
図1および
図2に示すように、インナハウジング20は、アウタハウジング21の内側に配置される。インナハウジング20は、上下方向(
図1の上下方向)に対をなして設けられている。インナハウジング20は、アウタハウジング21に対して第1姿勢(
図2に示す状態)と第2姿勢(
図1に示す状態)とに変位可能に組み込まれる。第1姿勢は、インナハウジング20が前後方向に沿って水平に配置される姿勢である。第2姿勢は、インナハウジング20が前後方向に対して交差する方向に傾斜して配置される姿勢である。アウタハウジング21とインナハウジング20との間には、インナハウジング20の変位動作の安定性を確保するためのガイド部材22が設けられている。
【0019】
リテーナ80は、インナハウジング20に装着される。リテーナ80は、インナハウジング20と対応するように、上下方向に対をなして設けられている。端子金具60は、インナハウジング20に複数収容されている。リテーナ80は、端子金具60を係止し、端子金具60のインナハウジング20からの抜け出しを規制する。
【0020】
図5に示すように、端子金具60は、回路基板120の導電部121に電気的に接続される。インナハウジング20が第2姿勢から第1姿勢に変位する際に、端子金具60が回路基板120の板面に対向する位置から導電部121に向けて変位するようになっている。
【0021】
(アウタハウジング)
アウタハウジング21は合成樹脂製であって、
図6に示すように、全体として前後に開放された箱形をなしている。アウタハウジング21は、インナハウジング20と同一材料(後述するように、LCP樹脂を基材とする材料)で構成され得る。もっとも、コスト面等を考慮し、リテーナ80と同一材料(PBT(Polybutylene Telephthalate)樹脂を基材とする材料)またはリテーナ80およびインナハウジング20と異なる材料でも構成され得る。
このアウタハウジング21は、左右で対向する一対の側壁23と、両側壁23の上端間に架設される上壁24と、両側壁23の下端間に架設される下壁25と、を有している。アウタハウジング21の内側には、ハウジング収容空間26が設けられている。
【0022】
両側壁23には、インナハウジング20の変位動作をガイドする上下一対ずつのガイド溝27が設けられている。ガイド溝27は、対応する側壁23を壁厚方向に貫通し、内側でハウジング収容空間26に連通している。ガイド溝27は、後部において前後方向に沿って配置される直線領域と、直線領域から前方へ向けて上下方向に離れるように傾斜する離間領域と、離間領域から前方に前後方向に沿って短く配置される頂上領域と、頂上領域から前方へ向けて側壁23の上下中央部に近づくように傾斜する接近領域と、を有している。直線領域は、アウタハウジング21の後端に開口している。
【0023】
両側壁23の内面の上下両端部には、上下一対ずつの挿入溝28が設けられている。挿入溝28は、側壁23の外面に閉塞される有底溝であり、前後方向に延びて側壁23の前端に開口する。両側壁23の上下両端部には、挿入溝28の底面を切り欠く形態の弾性係止部29が設けられている。弾性係止部29は、後端部を支点として内外(左右)に撓み変形可能とされている。
図12に示すように、弾性係止部29の前端部(先端部)には、内側に突出する係止突起31が設けられている。挿入溝28には、ガイド部材22の後述する挿入部41が挿入される。弾性係止部29は、ガイド部材22の後述する係止受部42、43、44を係止する。
【0024】
図6に示すように、上壁24および下壁25は、アウタハウジング21の後部に設けられている。アウタハウジング21の上下面は、上壁24および下壁25の前方に、開口部32を有している。開口部32は、内側でハウジング収容空間26と連通している。開口部32の左右両端は、両側壁23で区画されている。開口部32の前方は、開放されている。そして、開口部32の後方は、上壁24および下壁25の前端で区画されている。上壁24および下壁25の前端は、幅方向(左右方向)に沿って直線状に配置される縁部であって、後述する半挿入状態にあるリテーナ80と干渉可能な干渉部33として構成される。開口部32には、後述する傾斜姿勢にあるインナハウジング20が進入して逃がされる。上壁24には、撓み変形可能なロックアーム34が設けられている。ロックアーム34の撓み支点となる前端は、干渉部33の左右中央部位を構成している。
【0025】
(ガイド部材)
ガイド部材22は合成樹脂製であって、
図7に示すように、全体として前後に開放された箱形をなしている。ガイド部材22は、アウタハウジング21の内側で且つインナハウジング20の外側に配置される。ガイド部材22は、アウタハウジング21に対してインナハウジング20と同期して変位可能とされている。
【0026】
ガイド部材22の上下面は、平面視および底面視で矩形に開口する窓部35を有している。窓部35の周囲は、ガイド部材22の上下面において、矩形枠部分で区画されている。ガイド部材22の前面の周囲も、左右の側壁部分を含む矩形枠部分で区画されている。窓部35は、アウタハウジング21の内側に配置された状態で、開口部32と連通する。窓部35には、傾斜姿勢のインナハウジング20が進入して逃がされる。
【0027】
ガイド部材22は、左右の側壁部分の上下中央部間に架設された形態の仕切り壁36を有している。仕切り壁36は、
図3に示すように、前後方向に沿った水平板状をなしている。ガイド部材22がアウタハウジング21の内側に配置された状態において、ハウジング収容空間26は仕切り壁36によって上下に分割される。仕切り壁36の先端(前端)は、側壁部分の前端よりも後方において、幅方向に沿って直線状に配置される。
【0028】
ガイド部材22の左右の側壁部分には、インナハウジング20の後述するガイドピン71を受ける上下一対ずつの誘導溝37が設けられている。誘導溝37は、前後方向に延びて側壁部分の後端に開口する直線領域と、直前領域の前端から互いに離れる方向に延びる離間領域と、を有している。誘導溝37の直線領域の両端側には、前後のガイドピン71が挿入される。誘導溝37の離間領域には、インナハウジング20がアウタハウジング21に対して傾斜姿勢をとる場合に、前側のガイドピン71が変位可能に配置される。
【0029】
ガイド部材22の左右の側壁部分には、誘導溝37の直線部分を区画する弾性アーム部38が設けられている。弾性アーム部38の後端部には、誘導溝37の後部内側に突出する爪状の保持突起39が設けられている。弾性アーム部38は、前端部を支点として撓み変形可能とされている。
【0030】
ガイド部材22の左右の側壁部分には、上下面から連続して側方に張り出す上下一対ずつの挿入部41が設けられている。挿入部41は、前後方向に延びるリブ状をなしている。挿入部41には、待機用係止受部42、組付用係止受部43および規制用係止受部44が設けられている。これら係止受部42、43、44は、挿入部41の側面(側方の端面)に、前後方向に間隔を置いて凹設されている。具体的には、挿入部41の側面には、前側から順に、待機用係止受部42、組付用係止受部43および規制用係止受部44が並んで設けられている。
【0031】
ガイド部材22は、アウタハウジング21に対して前方から組み付けられ、移動規制位置を経て組付位置に至ることができる。また、ガイド部材22は、アウタハウジング21に対して相対的に前進させられ、待機位置に至ることができる。規制用係止受部44、組付用係止受部43および待機用係止受部42は、それぞれ、移動規制位置、組付位置および待機位置において、弾性係止部29の係止突起31を受け入れる。
【0032】
(端子金具)
端子金具60は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に形成される。
図3に示すように、端子金具60は、前後方向に延びる基部61と、基部61の前部に設けられる箱状の端子本体62と、基部61の後部に設けられるオープンバレル状のバレル部63と、を有している。バレル部63は電線90の端部に圧着して接続されている。端子本体62内には、撓み変形可能な弾性接触片64が配置されている。弾性接触片64は、基部61の前端から起立した後、折り返され、全体として上下方向に長い形状になっている。端子本体62も、弾性接触片64に対応して上下方向に長い形状になっている。端子本体62の後端縁には、上下方向に沿った被抜止部65が設けられている。被抜止部65は、端子本体62とバレル部63との間の高低差に起因し、上下方向に長く形成されている。被抜止部65は、リテーナ80の後述する抜止部85に係止される。端子本体62に基部61には、回路基板120の接続用部材122の進入を許容する孔が開口して設けられている。弾性接触片64は、基部61の孔に臨む位置に接点部66を有している。
【0033】
(インナハウジング)
インナハウジング20は合成樹脂製であって、
図8に示すように、全体として幅方向に扁平な形状をなしている。インナハウジング20を構成する材料は、回路基板120と同一の材料であり、LCP樹脂を基材とするものである。もっとも、インナハウジング20は、回路基板120と異なる材料で構成されていてもよく、好ましくは、回路基板120を構成する材料の熱膨張係数(線膨張係数)に近い熱膨張係数の材料で構成されているとよい。インナハウジング20を構成する材料は、基材となるLCP樹脂に、ガラス繊維やその他の添加材を加えたものであってもよい。
【0034】
図3に示すように、インナハウジング20には、複数のキャビティ45が設けられている(
図3は1つのみ図示)。各キャビティ45は、幅方向に一列に配置されている。キャビティ45は、上下方向に長い矩形の断面形状をなし、前後方向に延び、インナハウジング20の後端に開口している。各キャビティ45には、後方から端子金具60が挿入される。
【0035】
図8に示すように、インナハウジング20の前壁46には、端子金具60の導通検査を行うための検査窓47がキャビティ45毎に設けられている。各キャビティ45の前面は、各検査窓47を除いて、インナハウジング20の前壁46によって閉塞されている。
【0036】
インナハウジング20は、
図4に示すように、各キャビティ45に挿入された端子金具60の基部61と対向する内壁52に、接続口48を有している。
図9に示すように、接続口48は、幅方向に長いスリット状の孔であって、内壁52を貫通し、各キャビティ45と連通している。接続口48には、回路基板120の接続用部材122が挿入される。接続用部材122は、接続口48から基部61の孔を通して端子本体62内に進入し、端子本体62内において弾性接触片64の接点部66と接触する。インナハウジング20の内壁52には、接続口48の後方に、係止孔49を有している。
図3に示すように、係止孔49には、基部61に切り起こして設けられた突起67が進入する。内壁52におけるキャビティ45と反対側の外面は、接続口48が開口する平坦な接続面51として構成される。
【0037】
インナハウジング20は、各キャビティ45を介して内壁52と反対側に位置する外壁53に、リテーナ装着孔54を有している。リテーナ装着孔54は、幅方向に長い矩形の孔であって、外壁53を貫通し、各キャビティ45と連通している。リテーナ装着孔54には、リテーナ80が挿入される。
図3に示すように、リテーナ装着孔54の後部は、外壁53の厚み方向の途中に、リテーナ80の後部86を支持可能な段付き状の支持面55を有している。
【0038】
図8に示すように、リテーナ装着孔54の左右両端部には、一対のリテーナ係止孔56が設けられている。リテーナ係止孔56は、前方にスリット溝状に延びる領域を有している。インナハウジング20は、
図11に示すように、リテーナ係止孔56の前端に爪状の本係止部57を突設させ、リテーナ装着孔54の後端に爪状の仮係止部58を突設させている。仮係止部58は、本係止部57よりも大きく、本係止部57よりも外側(
図11の上側)に位置している。また、インナハウジング20は、リテーナ装着孔54の前後方向の途中に、上下方向に延びるガイドリブ59を突設させている。外壁53におけるキャビティ45と反対側の外面は、平坦な一面73として構成される。
図3に示すように、外壁53の一面73は、インナハウジング20が後述する第2姿勢にあるときに、アウタハウジング21の干渉部33の近くに対向して配置される。
【0039】
図9に示すように、インナハウジング20の左右両面には、前後一対ずつのガイドピン71が設けられている。各ガイドピン71は、円柱状をなし、インナハウジング20の左右両面に、前後方向に間隔を置いて突設されている。各ガイドピン71の先端部には、全周にわたって張り出す鍔部72が設けられている。
【0040】
(リテーナ)
リテーナ80は合成樹脂製であって、
図10に示すように、幅方向に長く延びる本体部81と、本体部81の左右両端に連なる係止部82、83、84を有している。リテーナ80を構成する材料は、インナハウジング20および回路基板120とは異なる材料であり、回路基板120を構成する材料の熱膨張係数(線膨張係数)から離れた熱膨張係数の材料で構成される。リテーナ80と回路基板120のそれぞれの材料の熱膨張係数の差は、インナハウジング20と回路基板120のそれぞれの材料の熱膨張係数の差よりも大きく設定されている。本実施例1の場合、リテーナ80を構成する材料は、PBT樹脂を基材とするものである。リテーナ80を構成する材料は、基材となるPBT樹脂に、ガラス繊維やその他の添加材を加えたものであってもよい。
【0041】
リテーナ80は、リテーナ装着孔54に嵌まる大きさに形成されている。リテーナ80は、インナハウジング20に対し、リテーナ装着孔54に浅く挿入される仮係止位置(
図4を参照)と、仮係止位置の状態よりもリテーナ装着孔54に深く挿入される本係止位置(
図3および
図5を参照)と、に移動可能に保持される。
【0042】
本体部81の前面は、上下方向および幅方向に沿った垂直面であって、全体が抜止部85として構成される。
図5に示すように、抜止部85は、本係止位置において、各キャビティ45に挿入された端子金具60の被抜止部65に対向し、各端子金具60を一括して係止する。
【0043】
図10に示すように、本体部81の後部86は、段差を介して前部87から一段落ちて配置される。本体部81の後部86は、本係止位置において、リテーナ装着孔54の支持面55
に支持される。本体部81の前部87の内面(インナハウジング20に組み付けられた状態で端子金具60に対向する面)には、インナハウジング20において各キャビティ45間を仕切る隔壁部分と対応する位置に、前後方向に延びる複数のリブ88が並んで設けられている。本体部81の外面(インナハウジング20に組み付けられた状態でインナハウジング20の外側を向く面)は、前後方向および左右方向に平坦な水平面になっている。
【0044】
図11に示すように、係止部82、83、84は、リテーナ係止孔56に挿入される。係止部82、83、84は、前後方向に並んで配置される、本係止アーム82、ガイド片83および仮係止アーム84を有している。
【0045】
図10に示すように、ガイド片83は、前部87の左右端部に連なり、本体部81より内側(インナハウジング20に組み付けられた状態で端子金具60が位置する側)に突出する帯板状の形態になっている。本係止アーム82は、ガイド片83の前側に連なる基端部分から内側に突出するアーム状の形態になっている。本係止アーム82は、基端部分を支点として前後方向に撓み変形可能とされている。本係止アーム82の先端部には、前方に突出する爪状部分が設けられている。仮係止アーム84は、後部86の左右端部に連なり、本体部81より内側に突出するアーム状の形態になっている。仮係止アーム84は、本体部81に連なる基端部分を支点として前後方向に撓み変形可能とされている。仮係止アーム84の先端部には、後方に突出する爪状部分が設けられている。仮係止アーム84は、本係止アーム82よりも前後幅を大きくして構成されている。
【0046】
(コネクタの組付方法、嵌合方法および嵌合構造)
まず、アウタハウジング21のハウジング収容空間26に、後方から上下一対のインナハウジング20が挿入される。このとき、前後の各ガイドピン71が対応するガイド溝27に挿入される。前側のガイドピン71はガイド溝27の直線領域から離間領域、頂上領域を経て接近領域に配置される。後側のガイドピン71はガイド溝27の直線領域に配置される。前側のガイドピン71がガイド溝27の頂上領域を乗り超える際に、インナハウジング20は傾斜姿勢である第2姿勢から水平姿勢である第1姿勢へと変位する。前側のガイドピン71がガイド溝27の接近領域の斜面上に留まることで、インナハウジング20の後方への抜け出しが規制される。
【0047】
続いて、アウタハウジング21内に前方からガイド部材22が挿入される。挿入部41が挿入溝28の溝面を摺動することにより、ガイド部材22の挿入動作が案内される。また、誘導溝37にはガイドピン71が挿入される。係止突起31が挿入部41を摺動することにより、弾性係止部29が撓み変形させられる。ガイド部材22の挿入過程で、ガイド部材22が移動規制位置に至ると、係止突起31が規制用係止受部44に嵌まり込み、弾性係止部29が弾性復帰する。弾性係止部29が弾性復帰するに伴い、後側のガイドピン71が保持突起39と干渉し、弾性アーム部38が撓み変形させられる。ガイド部材22が組付位置に至ると、弾性アーム部38が弾性復帰し、保持突起39が後側のガイドピン71の後方に回り込む。このとき、前側のガイドピン71は誘導溝37の前端に当たるように位置する。このため、ガイド部材22は、組付位置においてインナハウジング20に対して前後方向への移動を規制された状態で組み付けられる。そして、ガイド部材22が組付位置に至ると、組付用係止受部43に弾性係止部29の係止突起31が嵌まり込み、ガイド部材22がアウタハウジング21に対して組付位置に保持される。
【0048】
ガイド部材22が組付位置にあるとき、上下一対のインナハウジング20は、水平な第1姿勢をとり、互いの接続面51間に、基板収容部50を形成する(
図2を参照)。基板収容部50は、第1姿勢において、回路基板120の板厚に相当する上下方向の開口寸法を有している。次いで、アウタハウジング21の上方および下方から開口部32および窓部35を通してリテーナ装着孔54にリテーナ80が挿入される。
【0049】
リテーナ80が仮係止位置に至ると、
図11に示すように、仮係止アーム84の爪状部分が仮係止部58に内側から当たるように配置され、リテーナ80のリテーナ装着孔54からの抜け出しが規制される。また、リテーナ80が仮係止位置に至ると、本係止アーム82の爪状部分が本係止部57に外側から当たるように配置され、リテーナ80の本係止位置への移動が規制される。リテーナ80の移動動作は、ガイド片83に沿って配置されるガイドリブ59によって案内される。
【0050】
リテーナ80が仮係止位置にある状態において、本体部81は、各リブ88を除いて各キャビティ45に進入せず、各キャビティ45から退避して配置される。具体的には、本体部81の外側部分が外壁53の一面73よりも外側に突出して位置する。特に、本体部81の後部86は、支持面55から離れて全体が外壁53の一面73よりも外側に配置される(
図4を参照)。
【0051】
上記のように、インナハウジング20が第1姿勢をとり、リテーナ80が仮係止位置にあるときに、各キャビティ45に、後方から端子金具60が挿入される。ここで、端子金具60は、キャビティ45内にランスが突出していないため、ランスからの挿入抵抗を受けずにキャビティ45に円滑に挿入される。端子金具60がキャビティ45に正規に挿入されると、端子本体62の前壁部分がインナハウジング20の前壁46に当たって、端子金具60の挿入動作が規制される。また、突起67が係止孔49に進入して係止孔49の後端に掛け止められることにより、端子金具60のキャビティ45からの抜け出しが規制される。端子金具60がキャビティ45に正規に挿入された状態においては、弾性接触片64の接点部66が基部61の孔およびインナハウジング20の接続口48に外側から臨むように配置される。
【0052】
上記の状態で、リテーナ80がインナハウジング20に対して本係止位置に押し込まれる。リテーナ80が本係止位置に至ると、本係止アーム82の爪状部分が本係止部57に内側から当たるように配置され、リテーナ80の仮係止位置への戻り移動が規制される。また、リテーナ80が本係止位置に至ると、本体部81の後部86が支持面55に当たり、リテーナ80の内側への移動が規制される。
【0053】
リテーナ80が本係止位置にある状態において、抜止部85が端子本体62の被抜止部65に対し上下方向に沿って当たるように配置される。これにより、端子金具60のキャビティ45からの抜け出しが確実に規制される。
また、リテーナ80が本係止位置にある状態では、リテーナ80の全体がリテーナ装着孔54に挿入される。このとき、本体部81の外面は、インナハウジング20の一面73と面一状に連なり、またはインナハウジング20の一面73から内側に引っ込むように配置される。
【0054】
続いて、インナハウジング20が第1姿勢から第2姿勢へと変位させられる。例えば、後側のガイドピン71の鍔部72を後方に押圧することで、インナハウジング20を第2姿勢に変位させることができる。インナハウジング20に第2姿勢への押圧力が加わると、インナハウジング20とガイド部材22が一体化されていることから、ガイド部材22の係止突起31が組付用係止受部43から抜け出て、弾性係止部29が撓み変形させられる。インナハウジング20が第2姿勢に至るに伴い、弾性係止部29が弾性復帰し、係止突起31が待機用係止受部42に嵌まり込む(
図12を参照)。これにより、ガイド部材22は待機位置においてアウタハウジング21に保持される。同時に、インナハウジング20は、ガイド部材22を介して、第2姿勢においてアウタハウジング21に保持される。
ガイド部材22が待機位置にあるとき、前側のガイドピン71がガイド溝27の頂上領域に位置し、後側のガイドピン71がガイド溝27の直線領域の後端部に位置することになる。
【0055】
上下一対のインナハウジング20は、第2姿勢において、互いに前方へ向けて開いた状態に配置される。このとき、各インナハウジング20の接続面51間に形成された基板収容部50は、前方に向けて上下方向の開口寸法を拡張させる(
図3を参照)。インナハウジング20は、第2姿勢においても開口部32から突出せず、アウタハウジング21の内側に配置された状態を維持する。インナハウジング20の接続面51は、第2姿勢において、内側前方を向いて配置される。インナハウジング20の一面73は、第2姿勢において、第1姿勢のときよりも干渉部33の近くに配置される。コネクタ10は、インナハウジング20を第2姿勢に保持させた状態で、相手側コネクタ100との嵌合作業を行う現場に出荷される。
【0056】
ここで、仮に、リテーナ80が本係止位置に至らずに仮係止位置から本係止位置に至るまでの途中位置にある場合あるいは仮係止位置で留め置かれている場合(これらの場合を半挿入状態と称する)には、本体部81の外側部分がインナハウジング20の一面73から外側に突出した状態になる。このため、インナハウジング20が第2姿勢に至る過程で、インナハウジング20の一面73が干渉部33に近づくことにより、本体部81の外側部分が干渉部33と干渉し、インナハウジング20が第2姿勢に至るのを規制する(
図4を参照)。この場合、ガイド部材22も待機位置に至らず、弾性係止部29と待機用係止受部42が係止状態になることがないため、本体部81の外側部分が干渉部33と干渉した状態において、インナハウジング20の傾斜姿勢を維持することができない。よって、前側のガイドピン71がガイド溝27の接近領域の傾斜に沿って変位し、インナハウジング20が水平姿勢である第1姿勢に戻ろうとする。その結果、インナハウジング20が第2姿勢に至っていないことを確実に知ることができ、両コネクタ10、100の嵌合作業を行う現場に出荷する前の段階で、リテーナ80が半挿入状態にあることを検知することができる。
【0057】
上記のとおり、両コネクタ10、100の嵌合作業を行う際には、インナハウジング20がアウタハウジング21に対して第2姿勢に保持され、リテーナ80が本係止位置にある状態が担保されている。
両コネクタ10、100の嵌合開始時において、コネクタ10がフード部110内に浅く嵌合されると、回路基板120が基板収容部50に挿入される。そして、回路基板120の端面がガイド部材22の仕切り壁36の先端に当たり、ガイド部材22に対して後方への押し込み力が加わる。すると、係止突起31が待機用係止受部42から抜け出て、弾性係止部29が撓み変形させられる。
【0058】
両コネクタ10、100の嵌合動作が進行すると、回路基板120がガイド部材22を押し込み、ガイド部材22がアウタハウジング21に対してインナハウジング20とともに後退する。この間、前側のガイドピン71がガイド溝27の接近領域に沿って前方に変位し、インナハウジング20の傾斜角度が次第に小さくなる。また、係止突起31が挿入部41よりも前方に変位し、弾性係止部29が弾性復帰する。
【0059】
両コネクタ10、100が正規に嵌合されると、インナハウジング20が水平姿勢である第1姿勢をとり、前後のガイドピン71がガイド溝27の直線領域に移行する。インナハウジング20は、第2姿勢から第1姿勢に至る過程で、回路基板120の板面に次第に近づき、回路基板120の接続用部材122が基部61の孔およびインナハウジング20の接続口48を通して端子本体62内に進入する。
【0060】
インナハウジング20が第1姿勢に至ると、接続用部材122が弾性接触片64を撓ませつつ接点部66と接触する。これにより、端子金具60が回路基板120の導電部121に接続される。弾性接触片64は、回路基板120の端面角部と接触しないことから、回路基板120の端面角部との干渉に起因して損傷することはない。よって、端子金具60と回路基板120の接続状態を良好に実現することができる。また、端子金具60と回路基板120が接続されると、フード部110のロック受部111にロックアーム34の突状部分が嵌り込み、両コネクタ10、100が嵌合状態に保持される。
【0061】
両コネクタ10、100が正規に嵌合された状態において、上下一対のインナハウジング20の接続面51間における基板収容部50に回路基板120が挟まるように配置される。ここで、インナハウジング20と回路基板120は同一材料で構成され、線膨張係数に差が無い。このため、インナハウジング20と回路基板120の相対位置が位置ずれするのを防止することができる。仮に、インナハウジング20と回路基板120が異なる材料で構成されていても、インナハウジング20と回路基板120の熱膨張係数の差がリテーナ80と回路基板120の熱膨張係数の差よりも小さければ、インナハウジング20と回路基板120との相対位置が大きく位置ずれすることがない。よって、インナハウジング20に組み付けられた端子金具60も回路基板120との相対位置を一定に維持することができ、端子金具60の接点部66が接続用部材122を摺動し、接続抵抗が上昇する事態を防止することができる。一方、リテーナ80は、インナハウジング20と異なり、PTB樹脂等で構成される。このため、リテーナ80は強靭性に優れ、抜止部85が端子本体62の被抜止部65を係止する状態を良好に維持することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施例1によれば、インナハウジング20と回路基板120との熱膨張差がリテーナ80と回路基板120との熱膨張差よりも小さい(無い)ため、インナハウジング20と回路基板120が熱膨張差に起因して位置ずれするのを防止することができる。その結果、回路基板120と端子金具60の接続抵抗が上昇するのを防止することができる。一方、リテーナ80の材料は回路基板120の材料に制約されないため、リテーナ80の設計自由度を高めることができる。その結果、コネクタ10全体の低コスト化および機械的強度の向上を図ることができる。
【0063】
特に、リテーナ80はインナハウジング20よりも強靭性を有するPBT樹脂を基材として構成されているため、端子金具60を係止する際に破損する懸念を少なくすることができる。
【0064】
また、本実施例1によれば、インナハウジング20が第1姿勢から第2姿勢に変位する過程で、インナハウジング20の一面73が干渉部33に近づいて半挿入状態のリテーナ80を干渉部33に干渉させることができる。このため、インナハウジング20が第2姿勢に至るのが規制され、リテーナ80が半挿入状態にあることを検知することができる。よって、両コネクタ10、100の嵌合作業を行う現場に出荷する前の段階で、リテーナ80が適正に挿入されているかどうかを検知することができる。
【0065】
また、本実施例1の場合、インナハウジング20を第1姿勢から第2姿勢に変位させてリテーナ80の半挿入状態を検知する動作が、端子金具60を回路基板120の表面に接続させる動作と連動しているので、各動作を個別に行う必要がなく、作業負担を軽減することができる。
【0066】
しかも、インナハウジング20を、水平姿勢である第1姿勢から傾斜姿勢である第2姿勢に変位させる過程で、半挿入状態のリテーナ80を干渉部33に干渉させることができるため、干渉部33をインナハウジング20側に突出させた形状にする必要がなく、干渉部33を簡単な形状にすることができる。
【0067】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態(実施例1)の場合、リテーナが本係止位置においてインナハウジングの一面から突出する部分を有していなかったが、他の実施形態としては、リテーナが本係止位置においてインナハウジングの一面から突出する部分を有していても良い。本係止位置におけるリテーナの一面からの突出量は、仮係止位置におけるリテーナの一面からの突出量よりも小さくされる。要は、インナハウジングが第2姿勢にあるときに、本係止位置のリテーナが干渉部と干渉しなければ良い。
上記実施形態の場合、リテーナが仮係止位置にあるときに本体部の一部をインナハウジングの一面から突出させていたが、他の実施形態としては、リテーナが仮係止位置にあるときに本体部の全体をインナハウジングの一面から突出させていても良い。
上記実施形態の場合、インナハウジングがアウタハウジングに対して上下に対をなして設けられていたが、他の実施形態としては、インナハウジングがアウタハウジングに対して1つのみ設けられるだけでも良い。
【符号の説明】
【0068】
10…コネクタ
20…インナハウジング
21…アウタハウジング
22…ガイド部材
23…側壁
24…上壁
25…下壁
26…ハウジング収容空間
27…ガイド溝
28…挿入溝
29…弾性係止部
31…係止突起
32…開口部
33…干渉部
34…ロックアーム
35…窓部
36…仕切り壁
37…誘導溝
38…弾性アーム部
39…保持突起
41…挿入部
42…待機用係止受部
43…組付用係止受部
44…規制用係止受部
45…キャビティ
46…前壁
47…検査窓
48…接続口
49…係止孔
50…基板収容部
51…接続面
52…内壁
53…外壁
54…リテーナ装着孔
55…支持面
56…リテーナ係止孔
57…本係止部
58…仮係止部
59…ガイドリブ
60…端子金具
61…基部
62…端子本体
63…バレル部
64…弾性接触片
65…被抜止部
66…接点部
67…突起
71…ガイドピン
72…鍔部
73…一面
80…リテーナ
81…本体部
82…本係止アーム(係止部)
83…ガイド片(係止部)
84…仮係止アーム(係止部)
85…抜止部
86…後部
87…前部
88…リブ
90…電線
100…相手側コネクタ
110…フード部
111…ロック受部
120…回路基板
121…導電部
122…接続用部