(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】収納ケース
(51)【国際特許分類】
E05B 65/52 20060101AFI20231205BHJP
A45C 13/10 20060101ALI20231205BHJP
A45C 5/14 20060101ALI20231205BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
E05B65/52 P
A45C13/10 N
A45C5/14 A
A45C11/00 M
(21)【出願番号】P 2020058063
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】塩坂 拓
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047164(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00709282(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00709283(EP,A1)
【文献】米国特許第06481605(US,B1)
【文献】国際公開第2007/131954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/52
A45C 13/10
A45C 5/14
A45C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結した収納ケースであって、
前記ケース本体に前記ケースカバーを固定するラッチ機構と、
前記ラッチ機構と同一面に揺動可能に連結されたハンドルと、
前記ラッチ機構及び前記ハンドルを同時に施錠する施錠機構と、
取付対象の係止部に対する掛け止め状態を固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、前記収納ケースが着脱可能な着脱位置と前記収納ケースが着脱不能な固定位置に移動可能な可動部材を有し、
前記可動部材は、前記ラッチ機構又は前記ハンドルによって前記固定位置に位置決め可能であり、
前記施錠機構は、前記可動部材が前記固定位置に位置決めされた状態で施錠可能なことを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
前記可動部材は、前記ハンドルによって前記固定位置に位置決め可能であることを特徴とする請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記固定機構は、前記可動部材と一体にスライドするフック部材を有しており、
前記フック部材は、前記可動部材が前記固定位置に移動すると前記係止部の掛け止め状態を固定することを特徴とする請求項2に記載の収納ケース。
【請求項4】
前記固定機構は、前記可動部材を操作する摘み部を有しており、
前記ハンドルには前記摘み部が入り込む窪みが形成されており、
前記可動部材は、前記窪みに前記摘み部が入り込んで、前記ハンドルによって前記固定位置に位置決めされることを特徴とする請求項3に記載の収納ケース。
【請求項5】
前記収納ケースには、前記取付対象の係止部に対する掛け止め箇所を覆う庇部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
収納ケースとして、いわゆるドローラッチ機構(パッチン錠)によって閉状態を維持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の収納ケースは、ケース本体に対してケースカバーが開閉可能に連結されており、ケース本体とケースカバーによって収納空間が形成されている。ケース本体の前面には一対の掛け金具が設けられ、ケースカバーの前面には一対の受け金具が設けられており、受け金具に掛け金具が引っ掛けられた状態で、掛け金具のロックレバーを押し下げることでケースカバーが閉じた状態でロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収納ケースには、収納ケースを閉状態で施錠する施錠機構の他に、取付対象に対して収納ケースを取り付けた状態で施錠する施錠機構が設けられている。このため、収納ケースを閉じる際と収納ケースを取付対象に取り付ける際に施錠操作を実施しなければならず、ユーザにとって煩わしい作業になっていた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、施錠操作の操作性を向上させてユーザの作業負担を軽減することができる収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の収納ケースは、ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結した収納ケースであって、前記ケース本体に前記ケースカバーを固定するラッチ機構と、前記ラッチ機構と同一面に揺動可能に連結されたハンドルと、前記ラッチ機構及び前記ハンドルを同時に施錠する施錠機構と、取付対象の係止部に対する掛け止め状態を固定する固定機構と、を備え、前記固定機構は、前記収納ケースが着脱可能な着脱位置と前記収納ケースが着脱不能な固定位置に移動可能な可動部材を有し、前記可動部材は、前記ラッチ機構又は前記ハンドルによって前記固定位置に位置決め可能であり、前記施錠機構は、前記可動部材が前記固定位置に位置決めされた状態で施錠可能であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の収納ケースによれば、ラッチ機構又はハンドルによって可動部材が固定位置に位置決めされて、ラッチ機構及びハンドルが施錠されることで、ラッチ機構又はハンドルを介して固定機構が間接的に施錠される。よって、収納ケースが閉状態に施錠されると共に、取付対象に収納ケースが固定された状態で施錠されて、施錠操作の操作性が向上されてユーザの作業負担が軽減される。また、可動部材が固定位置にあるときに施錠可能であるため、収納ケースが着脱可能な状態で誤って固定機構が施錠されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図9】本実施例の施錠機構の施錠動作の遷移図である。
【
図10】本実施例の固定機構の固定動作の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の収納ケースは、ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結されている。ケース本体にはケースカバーを固定するラッチ機構が設けられ、ケース本体においてラッチ機構と同一面には揺動可能にハンドルが連結されている。施錠機構によってラッチ機構とハンドルが同時に施錠され、固定機構によって取付対象の係止部に対する掛け止め状態が固定される。固定機構の可動部材は、収納ケースを着脱可能な着脱位置と収納ケースを着脱不能な固定位置に移動される。ラッチ機構又はハンドルによって可動部材が固定位置に位置決めされる。ラッチ機構及びハンドルが施錠されることで、ラッチ機構又はハンドルを介して固定機構が間接的に施錠される。よって、収納ケースが閉状態に施錠されると共に、取付対象に収納ケースが固定された状態で施錠されて、施錠操作の操作性が向上されてユーザの作業負担が軽減される。また、可動部材が固定位置にあるときに施錠可能であるため、収納ケースが着脱可能な状態で誤って固定機構が施錠されることがない。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。以下の説明では、鞍乗型車両等の車両にサイドケースとして取り付けられる収納ケースについて説明する。ただし、本実施例の収納ケースは、荷台上のリアボックス、キャスター付きのトランクケースや手荷物バッグ等の他の収納ケースに適用することができる。また、以下の図では、矢印FRはケース前方、矢印REはケース後方、矢印Lはケース左方、矢印Rはケース右方をそれぞれ示している。
図1は本実施例の収納ケースの斜視図である。
【0011】
図1に示すように、収納ケース1は、車両側部のケースホルダ10に対して着脱可能に取り付けられる。収納ケース1のケース本体20の前面が開放されており、ケース本体20の下縁にはヒンジを介してケースカバー30が下開き可能に連結されている。ケース本体20とケースカバー30によって荷物の収納空間が形成され、ケース本体20には収納空間に収納された荷物を押さえる中バンド21がX字状に設けられている。収納ケース1の底面四隅には半球状の弾性脚部(不図示)が設けられ、収納ケース1が車両から外された状態でも、収納ケース1を安定した状態で自立させることができる。
【0012】
ケース本体20の上面中央には、収納ケース1を持ち運び可能にするハンドル40が揺動可能に連結されている。ハンドル40の内側には、ケースカバー30が閉まった状態で、ケース本体20にケースカバー30を固定するラッチ機構50が設置されている。また、ケース本体20の上面には、ハンドル40及びラッチ機構50を囲むように上部カバー29が取り付けられている。上部カバー29から施錠機構70(
図6参照)のキーシリンダ71が露出しており、キーシリンダ71の鍵穴に差し込まれたキーによって、ラッチ機構50及びハンドル40の施錠及び開錠が切り替えられる。
【0013】
また、収納ケース1には、ケースホルダ10に収納ケース1を取り付けた状態で固定する固定機構80(
図8参照)が設けられている。このため、ハンドル40及びラッチ機構50用の施錠機構70の他に、固定機構80用の施錠機構が必要になって部品点数が増加する。単一の施錠機構70によってハンドル40、ラッチ機構50、固定機構80を施錠するためには施錠構造が複雑化する。そこで、本実施例の収納ケース1では、ハンドル40によって固定機構80の動きが規制された状態でのみ、施錠機構70によってハンドル40を施錠可能にしている。
【0014】
図2から
図7を参照して、収納ケースの上部構造について説明する。
図2は、本実施例の収納ケースの部分断面図である。
図3は、本実施例の収納ケースの平面図である。
図4は、本実施例の収納ケースの部分平面図である。
図5は、本実施例の収納ケースの部分平面図である。
図6は、本実施例の施錠機構の斜視図である。
図7は、本実施例の施錠状態を示す斜視図である。なお、
図4は収納ケースから上部カバー、ラッチアーム、ハンドルを外した状態を示し、
図5はさらに設置カバーを外した状態を示している。
【0015】
図2から
図4に示すように、ケース本体20のケース上部は、各種機構が設置される設置カバー22によって形成されている。設置カバー22の上部には、上面中央を露出させるように上部カバー29が取り付けられ、設置カバー22の露出部分にはラッチ機構50及びハンドル40が設置されている(特に
図3参照)。設置カバー22の上部にはラッチ機構50の掛け具として板状突起から成るラッチアーム51が設けられ、ケースカバー30の上部にはラッチ機構50の受け具として複数のアーム受け部35が設けられている。ラッチアーム51は連結アーム61を介して設置カバー22に連結されている。
【0016】
連結アーム61は、左右一対のアーム部を連ねた平面視H状に形成されている(特に
図4参照)。連結アーム61の基端側は第1の揺動ピン63を介して設置カバー22に連結されており、連結アーム61の先端側は第2の揺動ピン64を介してラッチアーム51に連結されている。連結アーム61の基端側にはカム62(特に
図2参照)が形成されており、設置カバー22上には連結アーム61の揺動に反発する側面視アーチ状の反発バネ65が設置されている。連結アーム61が第1の揺動ピン63を支点に揺動して、カム62が反発バネ65に弾接することで、ラッチアーム51を押し上げる起立姿勢とラッチアーム51を引き下ろす倒伏姿勢に連結アーム61が保持される。
【0017】
ラッチアーム51は、連結アーム61の先端側からケースカバー30に向かって延びた幅広の板状に形成されている。ラッチアーム51の基端側には筒状の把持部52が形成されており、把持部52によってラッチアーム51が持ち上げられる。また、ラッチアーム51の基端側は、第2の揺動ピン64に装着されたトーションバネ66(特に
図4参照)によって押し上げ方向(開方向)に押されている。ラッチアーム51の先端側には、側面視C字状に屈曲したフック53が形成されている。フック53が複数のアーム受け部35の先端に掛け止めされることで、ケース本体20に対してケースカバー30が閉状態でロックされる。
【0018】
ケースカバー30の上部には、ラッチアーム51のフック53が入り込むように凹部31が形成されており、凹部31の底面は上下2段の段状に形成されている。凹部31の上段には、平面視櫛歯状の複数のアーム受け部35がケース幅方向(左右方向)に設けられている。各アーム受け部35の先端側には、凹部31の上段から前方に突出した係止爪36が形成されている。各アーム受け部35の上面には、ラッチアーム51のフック53を係止爪36の爪先に向けてガイドする斜面37(特に
図2参照)が形成されている。フック53が斜面37に当たることで、フック53が係止爪36に掛け止めされる係止位置までガイドされる。
【0019】
また、各アーム受け部35の斜面37は、係止爪36よりも基端側の所定位置から爪先までの範囲に亘って形成されている。本実施例では各アーム受け部35の基端から略中間位置までは略水平に形成され、この略中間位置から爪先に向かって各アーム受け部35の厚みが薄くなるように傾斜している。アーム受け部35は平面視細長に形成されており、樹脂成形がし易くなっている。なお、斜面37は、本実施例のように直線的に傾斜してもよいし、凸状に湾曲しながら傾斜してもよいし、凹状に湾曲しながら傾斜してもよい。
【0020】
ハンドル40は、第1の揺動ピン63を支点に揺動する一対の支持アーム41と、一対の支持アーム41を連ねるグリップ42と、によって平面視U字状に形成されている。ハンドル40はラッチアーム51と同一の設置カバー22に揺動可能に連結されており、ハンドル40を倒したときに平面視U字状のハンドル40の内側にラッチアーム51の基端側が収まっている。これにより、設置カバー22上の設置スペースにハンドル40とラッチアーム51がコンパクトに設置される。一対の支持アーム41の基端側は、第1の揺動ピン63に装着された一対のトーションバネ43(特に
図4参照)によって引き込み方向(閉方向)に押されている。
【0021】
第1の揺動ピン63はケース幅方向に延びており、第1の揺動ピン63のケース幅方向の内側には連結アーム61が支持され、第1の揺動ピン63のケース幅方向の外側にはハンドル40が支持されている。連結アーム61とハンドル40に第1の揺動ピン63が兼用されることで、部品点数及びコストが低減されると共に、ラッチ機構50とハンドル40がよりコンパクトに設置される。また、第1の揺動ピン63の一端はL字状に屈曲しており、屈曲部分の先端が設置カバー22上の保持部67に回り止めされている。保持部67によって第1の揺動ピン63の回転が抑えられて、ハンドル40とラッチアーム51の共回りが防止されている。
【0022】
図5から
図7に示すように、設置カバー22の下側のケース部23には、ラッチ機構50及びハンドル40を同時に施錠する施錠機構70が設けられている。施錠機構70は、ケース本体20(ケース部23)に固定されたプレート支持部77に対して、キーシリンダ71に連結されたロックプレート72をケース幅方向(左右方向)にスライドさせている。プレート支持部77は、ケース幅方向を長辺とした上面開放のボックス状に形成されている。プレート支持部77の側壁には、ロックプレート72に点接触又は線接触して、ロックプレート72に対する摺動抵抗を抑えるように凸状部78(特に
図6参照)が形成されている。
【0023】
ロックプレート72は、ケース幅方向に延びた帯状に形成されている。ロックプレート72には、ロックプレート72及びハンドル40を掛け止めする4つの係止片74a-74dが形成されている。一対の係止片74b、74cはケース幅方向の内側でラッチアーム51を掛け止めし、一対の係止片74a、74dはケース幅方向の外側でハンドル40を掛け止めする。ラッチアーム51には一対の係止片74b、74cに掛け止めされる一対のラッチ受け部54が形成され、ハンドル40には一対の係止片74a、74dに掛け止めされる一対のハンドル受け部44が形成されている。
【0024】
一対のラッチ受け部54には一対の係止片74b、74cが入り込む開口が形成されており、一対のハンドル受け部44には一対の係止片74a、74dが入り込む開口が形成されている。設置カバー22には、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44に対応して4つのスリット24a-24d(
図4参照)が形成されている。一対のラッチ受け部54はケース幅方向の内側のスリット24b、24cを通じて設置カバー22の下側に突出し、一対のハンドル受け部44はケース幅方向の外側のスリット24a、24dを通じて設置カバー22の下側に突出している。
【0025】
ロックプレート72は、キーシリンダ71(
図4参照)に差し込まれたキーの操作によってプレート支持部77上でスライドされる。ロックプレート72が左側にスライドされると、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口に係止片74a-74dが入り込む。そして、4つの係止片74a-74dの先端は、スリット24a-24dを通り越して設置カバー22の内側面と対向する(不図示)。これにより、ラッチ機構50及びハンドル40が施錠される。ロックプレート72が右側にスライドされると、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口から係止片74a-74dが抜け出してラッチ機構50及びハンドル40が解錠される。一方のハンドル受け部44の下部には、施錠状態でハンドル40が下りないように誤施錠防止用の突起部45が設けられている。
【0026】
このとき、ラッチ受け部54及びハンドル受け部44がケース幅方向に並んでいるため、ケース幅方向に長い単一のロックプレート72によってラッチ受け部54及びハンドル受け部44が同時に掛け止めされる。ロックプレート72がケース幅方向にスライドされることで、ロックプレート72によってラッチ機構50及びハンドル40が同時に施錠及び解錠される。よって、ラッチ機構50及びハンドル40に施錠機構70が兼用されて施錠機構70の部品点数が低減される。また、ラッチ受け部54とハンドル受け部44が近いため、ロックプレート72を短く形成して施錠機構70の耐久性が向上される。
【0027】
上記したように、収納ケース1は、ケースホルダ10を介して車両に取り付けられている。ケースホルダ10の前面から一対の係止部11(特に
図5参照)が突出しており、各係止部11にはそれぞれ係止穴12が形成されている。設置カバー22の後面から一対の固定フック25(
図4参照)が突出しており、各固定フック25の先端側が下方に向けて屈曲されている。設置カバー22の一対の固定フック25の先端側がケースホルダ10の一対の係止穴12に入り込むことで、ケース幅方向に離間した2カ所でケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能に掛け止めされる。収納ケース1には庇部28(
図2参照)が形成され、庇部28によって係止部11に対する掛け止め箇所が覆われて意匠性が向上する。
【0028】
また、設置カバー22(
図4参照)の下側のケース部23には、ケースホルダ10に対する掛け止め状態を固定する固定機構80が設けられている。固定機構80は、ケース本体20の内側に収納されたスライダ(可動部材)81と、ケース本体20の外側でスライダ81と一体にスライドするスライドフック(フック部材)86と、を有している。スライダ81は、ケース幅方向を長辺とした角柱状に形成されており、ケース本体20の壁面によってケース幅方向にスライド可能に収納されている。スライダ81の上面には側面視凸状の摘み部88が設けられており、摘み部88は設置カバー22の上面から露出している(
図4参照)。
【0029】
摘み部88の操作によってスライダ81がスライドされ、ケース本体20の後面上のスライドフック86がスライドされる。スライダ81が左側にスライドされると、一対の係止部11からスライドフック86が離間する。スライドフック86による収納ケース1の掛け止め状態の固定が解除されて、収納ケース1がケースホルダ10に着脱可能に掛け止めされる。スライダ81が右側にスライドされると、一対の係止部11にスライドフック86が突き当たる。スライドフック86による収納ケース1の掛け止め状態が固定されて、収納ケース1がケースホルダ10に着脱不能に掛け止めされる。
【0030】
このように、スライダ81は、収納ケース1が着脱可能な着脱位置と収納ケース1が着脱不能な固定位置の間でスライドされている。ハンドル40(
図7参照)のグリップ42には、スライダ81を固定位置に位置決めするための窪み46が形成されている。この場合、ハンドル40を倒したときにグリップ42の真下に摘み部88が位置し、スライダ81が固定位置に位置付けられたときの摘み部88にグリップ42の窪み46が対応している。摘み部88の先端が窪み46に入り込むことで、スライダ81が固定位置に位置決めされて、ハンドル40によってスライダ81が固定位置に保持される。
【0031】
スライダ81が固定位置に位置していないと、グリップ42に摘み部88が干渉してハンドル40を完全に倒すことができない。一対のハンドル受け部44が設置カバー22のスリット24a、24d(
図4参照)に中途半端に入り込んで、一対のハンドル受け部44によって施錠機構70のロックプレート72のスライドが阻害される。このように、施錠機構70は、スライダ81が固定位置に位置付けられたときにのみ、ハンドル40とラッチ機構50が施錠可能になっている。よって、ケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能な状態ではハンドル40とラッチ機構50が施錠されることがない。
【0032】
一方、スライダ81が固定位置に位置していると、ハンドル40の窪み46に摘み部88が入り込んでハンドル40が完全に倒される。このため、一対のハンドル受け部44によって施錠機構70のロックプレート72のスライドが阻害されることがない。施錠機構70によってラッチ機構50及びハンドル40が施錠されると、ハンドル40によってスライダ81が固定位置に固定されてケースホルダ10から収納ケース1が着脱不能になる。よって、ラッチ機構50及びハンドル40の施錠操作に伴って、施錠機構70によって施錠されたハンドル40によって固定機構80も施錠される。
【0033】
ここで、
図8を参照して、固定機構の詳細について説明する。
図8は、本実施例の固定機構の斜視図である。
【0034】
図8に示すように、固定機構80のスライダ81は、十分な剛性が確保できるように平面視角柱状に形成されている。スライダ81の後面にはスライドフック86が固定され、スライダ81の上面には摘み部88が固定されている。スライダ81はケース本体20(
図5参照)の各壁面によって押圧されている。このため、適切な摩擦力を受けながら摘み部88を用いてスライダ81をスライドさせることが可能になっている。なお、ケース本体20の壁面の弾性力によってスライダ81に節度を持った制動力が付与されてもよいし、不図示の弾性部材によってスライダ81に節度を持った制動力が付与されてもよい。
【0035】
スライダ81の下面82は後面視波形状に形成されている。このため、スライダ81の下面82と下面82に接するケース本体20の支持面の接触面積が抑えられてスライダ81の摺動抵抗が低減される。スライダ81の後面83は開放されているが、後面83の外縁は平面視波形状に形成されている(特に、
図10(B)参照)。このため、スライダ81の後面83と後面83に接するケース本体20の内側面の接触面積が抑えられてスライダ81の摺動抵抗が低減される。なお、スライダ81の下面82及び後面83は、スライダ81の摺動抵抗を低減可能な形状であればよい。
【0036】
スライダ81には一対の位置決め突起85が設けられており、スライダ81の前面84から一対の位置決め突起85が僅かに突出している。スライダ81の前面84に対向するケース本体20の対向面には、一対の位置決め凹部31a(
図10(B)参照)と一対の位置決め凹部31b(
図10(B)参照)が形成されている。スライダ81の一対の位置決め突起85が一対の位置決め凹部31aに嵌ると、スライダ81が収納ケース1を着脱可能な着脱位置に位置決めされる。スライダ81の一対の位置決め突起85が一対の位置決め凹部31bに嵌ると、スライダ81が収納ケース1を着脱不能な固定位置に位置決めされる。
【0037】
スライドフック86には、ケース幅方向に離間した一対の支持部87が形成されている。一対の支持部87においてスライドフック86がスライダ81に固定されており、剛性の高いスライダ81によって一対の支持部87に作用する負荷が受け止められている。摘み部88は、ユーザが摘まんで動かし易いように凸状に形成されている。上記したように、スライダ81が固定位置に位置付けられると、摘み部88の先端がグリップ42(
図10(B)参照)の窪み46に入り込む。これにより、固定機構80は、ハンドル40を介して間接的に施錠可能に形成されている。
【0038】
図9を参照して、施錠機構の施錠動作について説明する。
図9は本実施例の施錠機構の施錠動作の遷移図であり、(A)、(B)は施錠機構の解錠状態、(C)、(D)は施錠機構の施錠状態をそれぞれ示している。
【0039】
図9(A)、(B)に示すように、施錠機構70の解錠状態では、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口からロックプレート72の係止片74a-74dが外れている。このとき、プレート支持部77はコイルバネ73によってロックプレート72に押し付けられており、ロックプレート72がプレート支持部77に下方から支持されている。プレート支持部77の側壁には、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44から逃げるように複数の凹状部79が形成され、複数の凹状部79の間にロックプレート72を支持する複数の凸状部78が形成されている。
【0040】
また、ロックプレート72は、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44を掛け止め可能に平面視L字状に切り欠かれている。このロックプレート72の各切り欠き75がプレート支持部77の各凹状部79に位置合わせされており、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44が各切り欠き75を通じて各凹状部79に入り込むことが可能になっている。また、プレート支持部77の複数の凸状部78がロックプレート72の係止片74a-74dに接触しており、ロックプレート72に対するプレート支持部77の接触面積が最小限に抑えられている。
【0041】
図9(C)、(D)に示すように、キー操作によってロックプレート72がスライドすると、プレート支持部77の複数の凹状部79の上方に係止片74a-74dが位置付けられる。一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口に係止片74a-74dが入り込み、係止片74a-74dによって一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44が掛け止めされてラッチ機構50及びハンドル40が施錠される。この施錠動作中はロックプレート72に対するプレート支持部77の接触面積が最小限に抑えられているため、ロックプレート72の摺動抵抗が低減されて施錠機構70の操作性が向上されている。
【0042】
また、施錠動作中は複数の凸状部78が係止片74a-74dの少なくとも一部に接触し続けている。ロックプレート72には切り欠き75によってエッジ76が形成されているが、係止片74a-74dが複数の凸状部78から完全に外れることがないため、エッジ76によって凸状部78が削られることがない。よって、コイルバネ73によってプレート支持部77がロックプレート72に押し付けられていても、ロックプレート72のスライドによるプレート支持部77の損傷が防止されている。このように、単一のロックプレート72をスライドさせるという簡易な構成で、ラッチ機構50とハンドル40を同時に施錠することができる。
【0043】
一方、施錠機構70の解錠動作は施錠動作とは逆の手順で実施される。すなわち、キー操作によってロックプレート72が施錠動作とは逆向きにスライドすることで、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口から係止片74a-74dが抜け出す。これにより、係止片74a-74dによる一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の掛け止めが解除されてラッチ機構50及びハンドル40が解錠される。この解錠動作中も複数の凸状部78が係止片74a-74dの少なくとも一部に接触し続けているため、ロックプレート72のエッジ76によって凸状部78が削られることがない。
【0044】
図10を参照して、固定機構の固定動作について説明する。
図10は本実施例の固定機構の固定動作の遷移図であり、(A)、(B)は固定機構の解除状態、(C)、(D)は固定機構の固定状態をそれぞれ示している。なお、
図10(A)、(C)では、ハンドルを倒した状態を図示しているが、ハンドルが起こされた状態で、摘み部が操作されているものとする。
【0045】
図10(A)に示すように、ケースホルダ10(
図1参照)から一対の係止部11が突出しており、各係止部11の係止穴12に収納ケース1の一対の固定フック25が掛け止めされている。各係止部11の左側下部には、スライドフック86の一対の支持部87が進入可能な係止凹部13が形成されている。スライダ81(
図10(B)参照)がケース本体20内に位置付けられた状態で、スライドフック86がケース本体20の後方に位置付けられ、摘み部88がケース本体20の上方に位置付けられている。摘み部88はハンドル40のグリップ42の真下に位置するため、ハンドル40が起こされた状態で摘み部88が操作される。
【0046】
図10(A)、(B)に示すように、固定機構80の解除状態では、スライダ81が着脱位置に位置付けられている。このとき、スライダ81の一対の位置決め突起85が一対の位置決め凹部31aに嵌っており、スライドフック86の一対の支持部87が一対の係止部11の係止凹部13から離間している。ケースホルダ10に対して収納ケース1を着脱する際に、ケースホルダ10の一対の係止部11にスライドフック86の一対の支持部87が干渉することがない。よって、スライダ81が着脱位置に位置付けられると、ケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能になっている。
【0047】
スライダ81が着脱位置に位置付けられると、摘み部88の先端がハンドル40の窪み46から外れてハンドル40を完全に倒すことができない。このため、ハンドル40の一対のハンドル受け部44によってロックプレート72(
図9参照)のスライドが阻害される。ケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能な状態では、施錠機構70(
図9参照)によってラッチ機構50及びハンドル40が施錠されることがない。ハンドル40が摘み部88の先端に干渉して倒れないため、ハンドル40の浮き具合からケースホルダ10に対する収納ケース1の掛け止め状態が固定されていないことを確認することができる。
【0048】
図10(C)、(D)に示すように、摘み部88によってスライダ81が着脱位置から固定位置にスライドされる。このとき、スライダ81の一対の位置決め突起85が一対の位置決め凹部31aから一対の位置決め凹部31bに移り、スライドフック86の一対の支持部87が一対の係止部11の係止凹部13に入り込む。一対の支持部87が一対の係止凹部13に入り込むことで、一対の係止部11の係止穴12から一対の固定フック25が抜け止めされる。よって、スライダ81が固定位置に位置付けられると、ケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱不能になっている。
【0049】
スライダ81が固定位置に位置付けられると、摘み部88の先端がハンドル40の窪み46に入り込んでハンドル40を倒すことができる。このため、ハンドル40の一対のハンドル受け部44によってロックプレート72(
図9参照)のスライドが阻害されることがない。ケースホルダ10に対してスライダ81が着脱不能な状態では、施錠機構70(
図9参照)によってラッチ機構50(
図9参照)及びハンドル40が施錠される。ハンドル40が施錠されることで、ハンドル40の窪み46によってスライダ81が固定位置に固定される。すなわち、スライダ81が固定位置に位置決めされた状態で固定機構80も施錠される。
【0050】
以上、本実施例によれば、ラッチ機構50又はハンドル40によってスライダ81が固定位置に位置決めされて、ラッチ機構50及びハンドル40が施錠されることで、ラッチ機構50又はハンドル40を介して固定機構80が間接的に施錠される。よって、収納ケース1が閉状態に施錠されると共に、車両に収納ケース1が固定された状態で施錠されて、施錠操作の操作性が向上されてユーザの作業負担が軽減される。また、スライダ81が固定位置にあるときに施錠可能であるため、収納ケース1が着脱可能な状態で誤って固定機構80が施錠されることがない。
【0051】
なお、本実施例では、ラッチアームが連結アームを介してケース本体に連結されたが、ラッチアームは直にケース本体に連結されてもよいし、ラッチアームは他のリンク機構を介してケース本体に連結されてもよい。
【0052】
また、本実施例では、単一のラッチアームが複数のアーム受け部に掛け止めされたが、ラッチアーム及びアーム受け部の数は特に限定されない。例えば、複数のラッチアームが複数のアーム受け部に掛け止めされてもよいし、単一のラッチアームが単一のアーム受け部に掛け止めされてもよい。
【0053】
また、本実施例では、ハンドルが平面視U字状に形成されたが、ハンドルの形状は適宜変更可能である。ハンドルは、ケース幅方向に延びる支持アームと、支持アームからケース幅方向の内側に延びるグリップと、を有し、ハンドルを倒したときに支持アームよりもケース幅方向の内側にラッチ機構の一部が位置するように形成されていればよい。例えば、ハンドルが1つの支持アームとグリップによって平面視L字状に形成されてもよい。
【0054】
また、本実施例では、ハンドルによってスライダが固定位置に位置決めされたが、ラッチ機構によってスライダが固定位置に位置決めされてもよい。例えば、ラッチアームに窪みが形成されて、摘み部の先端がラッチアームの窪みに入り込むことでスライダが位置決めされてもよい。
【0055】
また、本実施例では、ハンドルの窪みに摘み部が入り込むことでスライダが位置決めされたが、ハンドルによるスライダの位置決め構造は特に限定されない。例えば、スライダに指掛け用の窪みが形成され、この窪みに入り込む突起がハンドルに形成されてもよい。
【0056】
また、本実施例では、車両の左右に収納ケースが取り付けられたが、車両の前後に収納ケースが取り付けられてもよい。また、収納ケースのケース本体がケースホルダに取り付けられたが、収納ケースのケースカバーがケースホルダに取り付けられてもよい。
【0057】
また、本実施例では、取付対象としての車両に収納ケースが取り付けられたが、収納ケースは車両以外の取付対象に取り付けられてもよい。
【0058】
以上の通り、本実施例の収納ケース(1)は、ケース本体(20)にケースカバー(30)が開閉可能に連結した収納ケースであって、ケース本体にケースカバーを固定するラッチ機構(50)と、ラッチ機構と同一面に揺動可能に連結されたハンドル(40)と、ラッチ機構及びハンドルを同時に施錠する施錠機構(70)と、取付対象(車両)の係止部(11)に対する掛け止め状態を固定する固定機構(80)と、を備え、固定機構は、収納ケースが着脱可能な着脱位置と収納ケースが着脱不能な固定位置に移動可能な可動部材(スライダ81)を有し、可動部材は、ラッチ機構又はハンドルによって固定位置に位置決め可能であり、施錠機構は、可動部材が固定位置に位置決めされた状態で施錠可能である。この構成によれば、ラッチ機構又はハンドルによって可動部材が固定位置に位置決めされて、ラッチ機構及びハンドルが施錠されることで、ラッチ機構又はハンドルを介して固定機構が間接的に施錠される。よって、収納ケースが閉状態に施錠されると共に、取付対象に収納ケースが固定された状態で施錠されて、施錠操作の操作性が向上されてユーザの作業負担が軽減される。また、可動部材が固定位置にあるときに施錠可能であるため、収納ケースが着脱可能な状態で誤って固定機構が施錠されることがない。
【0059】
本実施例の収納ケースにおいて、可動部材は、ハンドルによって固定位置に位置決め可能である。この構成によれば、ハンドルによって可動部材が位置決めされて、ハンドルが施錠されることで、ハンドルを介して可動部材が間接的に施錠される。ハンドルによって可動部材が位置決めされないときにはハンドルが施錠されないため、目立ち易いハンドルによって収納ケースの掛け止め状態で固定されているか否かを確認することができる。
【0060】
本実施例の収納ケースにおいて、固定機構は、可動部材と一体にスライドするフック部材(スライドフック86)を有しており、フック部材は、可動部材が固定位置に移動すると係止部の掛け止め状態を固定する。この構成によれば、簡易な構成の固定機構によって取付対象の係止部に対する掛け止め状態を固定することができる。
【0061】
本実施例の収納ケースにおいて、固定機構は、可動部材を操作する摘み部(88)を有しており、ハンドルには摘み部が入り込む窪み(46)が形成されており、可動部材は、窪みに摘み部が入り込んで、ハンドルによって固定位置に位置決めされる。この構成によれば、可動部材の摘み部とハンドルの窪みによって可動部材を固定位置に位置決めすることができる。
【0062】
本実施例の収納ケースにおいて、収納ケースには、取付対象の係止部に対する掛け止め箇所を覆う庇部(28)が形成されている。この構成によれば、掛け止め箇所が庇部に覆われることで外部に露出せず、外観がシンプルになって意匠性が向上する。
【0063】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0064】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0065】
1 :収納ケース
10:ケースホルダ
11:係止部
20:ケース本体
28:庇部
30:ケースカバー
40:ハンドル
46:窪み
50:ラッチ機構
70:施錠機構
80:固定機構
81:スライダ(可動部材)
86:スライドフック(フック部材)
88:摘み部