(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】パイプハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H02G3/04 081
(21)【出願番号】P 2020076621
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019228260
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金 知聖
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157435(JP,A)
【文献】特開2018-120743(JP,A)
【文献】特開2009-148072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線が挿通されるパイプと、
前記電線が挿通され、前記パイプの内部に取り付けられることにより、前記パイプ内のシール性を確保する封止部と、
前記パイプ内に取り付けられた前記封止部の厚み方向両側の少なくともパイプ開口側に設けられ、前記封止部を取り付け位置で固定する位置固定部と
を備え
、
前記位置固定部は、前記パイプの軸方向内側に位置する第1位置固定部と、前記パイプの軸方向外側に位置する第2位置固定部とを備え、
前記封止部は、前記第1位置固定部及び前記第2位置固定部の間に配置されており、
前記第1位置固定部と前記第2位置固定部との間隔は、前記封止部の厚みと同じ、又はそれよりも小さく形成されているパイプハーネス。
【請求項2】
前記位置固定部は、前記パイプの外周面に凹みを付けることによって前記パイプの内周面が突出した形状をなす突状部である
請求項1に記載のパイプハーネス。
【請求項3】
前記突状部の内径は、前記封止部の外径よりも小さく形成されている
請求項
2に記載のパイプハーネス。
【請求項4】
前記位置固定部は、前記パイプの周方向全周に形成されている
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のパイプハーネス。
【請求項5】
前記第1位置固定部及び前記第2位置固定部は、同じ形状に形成されている
請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載のパイプハーネス。
【請求項6】
前記パイプは、金属パイプである
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のパイプハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイプハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、ワイヤハーネスを構成する電線をパイプに挿通することで形成されたパイプハーネスが記載されている。このように、電線をパイプ内に通した構成とするのは、例えば自動車等の車両の床下に配策される場合に、電線をパイプによって保護するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のパイプハーネスでは、パイプ内の防水に対するシール性を確保するために、ゴム栓等でパイプをシールする対策が考案されている。このシール構造では、例えばパイプにゴム栓を取り付け、このゴム栓の中央の孔に電線を通す構造がとられる。しかし、このシール構造の場合、ゴム栓を固定するために、例えばリテーナ等の別部材が必要となるので、部品点数増加やコスト増加の問題があった。
【0005】
そこで、構造の簡素化を可能にしたパイプハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のパイプハーネスは、電線と、前記電線が挿通されるパイプと、前記電線が挿通され、前記パイプの内部に取り付けられることにより、前記パイプ内のシール性を確保する封止部と、前記パイプ内に取り付けられた前記封止部の厚み方向両側の少なくともパイプ開口側に設けられ、前記封止部を取り付け位置で固定する位置固定部とを備える。
【0007】
本開示のパイプハーネスは、電線と、前記電線が挿通されるパイプと、前記電線が挿通され、前記パイプの内部に取り付けられることにより、前記パイプ内のシール性を確保する封止部と、前記パイプにおいて該パイプ内に取り付けられた前記封止部の厚み方向中間部と対応した位置に設けられ、前記封止部を取り付け位置で固定する位置固定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、構造の簡素化を可能にしたパイプハーネスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のパイプハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、パイプハーネスの端部分を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、パイプハーネスの端部分を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、パイプハーネスの全体を示す概略側面図である。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)は、1次加工の概略を示す製造手順図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)は、封止部及び電線の取り付け手順を示す説明図である。
【
図7】
図7は、2次加工の概略を示す説明図である。
【
図8】
図8は、別例のパイプハーネスの端部分を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、別例のパイプハーネスの端部分を説明するための概略断面図である。
【
図10】
図10は、別例のパイプハーネスの端部分を説明するための概略断面図である。
【
図11】
図11は、別例のパイプハーネスの端部分を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のパイプハーネスは、
[1]電線と、前記電線が挿通されるパイプと、前記電線が挿通され、前記パイプの内部に取り付けられることにより、パイプ内のシール性を確保する封止部と、前記パイプ内に取り付けられた前記封止部の厚み方向両側の少なくともパイプ開口側に設けられ、前記封止部を取り付け位置で固定する位置固定部とを備えた。
【0011】
この構成によれば、パイプに取り付ける封止部を、パイプに一体形成した位置固定部によってパイプに固定するので、別部材を使用しなくても封止部をパイプに固定することが可能となる。よって、パイプハーネスの構造を簡素化することができる。
【0012】
[2]電線と、前記電線が挿通されるパイプと、前記電線が挿通され、前記パイプの内部に取り付けられることにより、前記パイプ内のシール性を確保する封止部と、前記パイプにおいて該パイプ内に取り付けられた前記封止部の厚み方向中間部と対応した位置に設けられ、前記封止部を取り付け位置で固定する位置固定部とを備えた。
【0013】
この構成によれば、パイプに取り付ける封止部を、パイプに一体形成した位置固定部によってパイプに固定するので、別部材を使用しなくても封止部をパイプに固定することが可能となる。よって、パイプハーネスの構造を簡素化することができる。また、位置固定部は、封止部の厚み方向中間部と対応した位置に設けられるので、単一の位置固定部によって、封止部を該封止部の厚み方向であってパイプの軸方向の両方向に移動不能に固定することができる。
【0014】
[3]前記位置固定部は、前記パイプの外周面に凹みを付けることによって前記パイプの内周面が突出した形状をなす突状部であることが好ましい。この構成によれば、位置固定部を凹みによる簡素な形状にすることができる。
【0015】
[4]前記突状部の内径は、前記封止部の外径よりも小さく形成されていることが好ましい。この構成によれば、封止部をパイプ軸方向において位置固定部にしっかりと密着させることが可能となるので、高いシール性を確保することができる。
【0016】
[5]前記位置固定部は、前記パイプの周方向全周に形成されていることが好ましい。この構成によれば、封止部と位置固定部との密着面を多く確保することが可能となるので、高いシール性を確保するのに一層寄与する。
【0017】
[6]前記位置固定部は、前記パイプの軸方向内側に位置する第1位置固定部と、前記パイプの軸方向外側に位置する第2位置固定部とを備え、前記封止部は、前記第1位置固定部及び前記第2位置固定部の間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1位置固定部及び第2位置固定部の間に封止部を挟むように配置することが可能となるので、封止部をパイプ軸方向にしっかりと固定することができる。
【0018】
[7]前記第1位置固定部及び前記第2位置固定部は、同じ形状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1位置固定部及び第2位置固定部の両方とも同じ製法で形成することが可能となるので、これらを簡便に形成することができる。
【0019】
[8]前記第1位置固定部と前記第2位置固定部との間隔は、前記封止部の厚みと同じ、又はそれよりも小さく形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1位置固定部及び第2位置固定部の間に封止部をしっかりと固定することが可能となるので、高いシール性を確保するのに一層寄与する。
【0020】
[9]前記封止部の厚み方向中間部の外周面には、前記パイプの内部に取り付けられる前の状態で前記位置固定部が嵌まる形状の凹部が形成されることが好ましい。この構成によれば、封止部の厚み方向中間部の外周面に形成された凹部に位置固定部が嵌まるので、封止部をパイプの軸方向の両方向に移動不能にしっかりと固定することができる。
【0021】
[10]前記封止部は、外力が加わっていない状態で外径が一定とされることが好ましい。この構成によれば、封止部の形状が単純となり、容易に製造することができる。
[11]前記パイプは、金属パイプであることが好ましい。この構成によれば、金属パイプの一部を位置固定部とすることが可能となるので、位置固定部を金属製の強度の高いものとすることができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のパイプハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0023】
図1に示すように、パイプハーネス1は、燃料電池車等の車両2に搭載される。車両2には、燃料電池3を作動させる燃料を貯留する燃料タンク4が搭載されている。燃料タンク4は、配管5を介して燃料電池3に接続され、燃料として例えばエタノールや水素等が貯留されている。燃料タンク4は、配管5を介して内部の燃料を燃料電池3に供給する。燃料電池3は、燃料を化学反応させることで発電する。なお、エタノールを燃料とする場合には、燃料電池3及び燃料タンク4の間に改質装置を設けて、エタノールを例えば水素に化学変化させてもよい。
【0024】
燃料電池3は、車体に取り付けられたパイプハーネス1を介してインバータ8に接続されている。インバータ8は、車両2の走行駆動源となるモータ9に複数の配線10を介して接続されている。インバータ8は、燃料電池3によって発電された電圧を所定値に変換し、変換後の電圧をモータ9に出力する。モータ9は、インバータ8から入力する電圧によって回転し、車両2の進行方向の推進力とする。
【0025】
図2に示すように、パイプハーネス1は、電線13と、電線13が挿通されるパイプ14とを備える。電線13は、パイプ14内に収納されるとともに、パイプ14の端部から露出されている。パイプ14は、例えば金属パイプであることが好ましく、例えばアルミニウムや銅などの材料から形成される。
【0026】
図3に示すように、パイプハーネス1は、パイプ14内のシール性を確保する封止部15を備える。封止部15は、電線13が挿通されるとともに、パイプ14の内部に取り付けられている。封止部15には、径方向(
図3のZ方向)の中心に貫設された孔16に電線13が密着された状態で挿通されている。封止部15は、例えばゴム栓であることが好ましい。封止部15の外周は、厚さ方向(
図3のY方向)に大径部17及び小径部18が交互に複数並んだ形状に形成されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、パイプハーネス1は、パイプ14内で封止部15を取り付け位置で固定する位置固定部21を備える。位置固定部21は、パイプ14内に取り付けられた封止部15の厚み方向両側(
図3のY軸方向両側)の少なくともパイプ開口22側に設けられている。本例の場合、位置固定部21は、間に封止部15を挟み込むように厚み方向の両側に一対設けられている。本例の位置固定部21は、パイプ14の軸方向内側に位置する第1位置固定部21aと、パイプ14の軸方向外側に位置する第2位置固定部21bとを備える。封止部15は、第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bの間に配置されている。
【0028】
位置固定部21は、パイプ14の外周面に凹みを付けることによってパイプ14の内周面が突出した形状をなす突状部23である。位置固定部21、すなわち突状部23は、パイプ14の周方向全周に形成されている。突状部23の内径W1は、封止部15の外径W2よりも小さく形成されている。第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bは、同じ形状に形成されている。第1位置固定部21aと第2位置固定部21bとの間隔Waは、封止部15の厚みWbと同じ、又はそれよりも小さく形成されている。
【0029】
図4に示すように、封止部15及び位置固定部21の組は、パイプ14の両端にそれぞれ設けられている。パイプハーネス1は、電線13の一端が例えば燃料電池3に電気接続され、電線13の他端が例えばインバータ8に電気接続される。
【0030】
本実施形態の作用について説明する。
図5(a)、(b)に示すように、位置固定部21をパイプ14に形成する場合には、パイプ14に凹みを形成可能な治具29を用いて行う。治具29は、例えばスウェージング加工によってパイプ14に位置固定部21を形成できる工具であることが好ましい。本例の治具29は、治具本体30と、パイプ14の外周面に凹みを形成する突起31と、パイプ14に対して治具29がパイプ周方向(
図5(b)の矢印B方向)に回転するのを案内する1以上(本例は2つ)のローラ32とを備える。治具29は、作業者自らが回転操作する手動式、或いはアクチュエータによって自動で回転させる電動式のいずれでもよい。
【0031】
図5(a)に示すように、パイプ14に位置固定部21を形成する場合、まず1次加工として、パイプ14を治具本体30に凹設された嵌め込み部33にセットし、パイプ14において第1位置固定部21aを形成する箇所に治具29の突起31が位置させる。このセット時、パイプ14の外周面にローラ32が接触しつつ、パイプ14の外周面において第1位置固定部21aを形成する箇所に突起31が強く押し当てられた状態にする。
【0032】
そして、
図5(b)に示すように、治具29をパイプ14にセットした後、突起31でパイプ14の外周面に圧力を加えながら、治具29をパイプ14の周方向(
図5(b)の矢印B1方向)に回転操作することにより、パイプ14に第1位置固定部21aを凹設する。回転数は、1周のみ、或いは複数周のいずれでもよい。このように、パイプ14の外周が突起31に押されながら治具29が回転操作されることにより、パイプ14を周状に形状変化させて、パイプ14に第1位置固定部21aとしての突状部23が凹設される。
【0033】
図6(a)に示すように、パイプ14に第1位置固定部21aを形成した後、パイプ14の内部に封止部15を取り付ける。封止部15は、第1位置固定部21aに接触する位置に到達するまで奥に押し込まれて取り付けられる。また、封止部15は、パイプ14の内周面に対して密着するように取り付けられる。
【0034】
図6(b)に示すように、パイプ14に取り付けられた封止部15に対し、電線13を挿通する。本例の場合、封止部15の中心に形成された孔16に電線13を挿通する。電線13は、封止部15の孔に対して隙間無く密着する状態で取り付けられることが好ましい。
【0035】
図7に示すように、パイプ14に封止部15を取り付けた後、2次加工としてパイプ14に第2位置固定部21bを形成することにより、封止部15をパイプ14に位置決めする。本例の場合、第2位置固定部21bは、第1位置固定部21aを形成するときと同様の手法によってパイプ14に形成される。なお、パイプ14の両端に封止部15を取り付ける場合には、もう片方にも同様の手順に沿って封止部15を取り付け固定する。以上により、パイプ14への電線13及び封止部15の取り付けが行われる。
【0036】
本実施形態の効果について説明する。
(1)パイプハーネス1は、電線13と、電線13が挿通されるパイプ14と、電線13が挿通され、パイプ14の内部に取り付けられることにより、パイプ14内のシール性を確保する封止部15と、パイプ14内に取り付けられた封止部15の厚み方向両側(
図3のY軸方向)の少なくともパイプ開口22側に設けられ、封止部15を取り付け位置で固定する位置固定部21とを備える。
【0037】
本例の構成によれば、パイプ14に取り付ける封止部15を、パイプ14に一体形成した位置固定部21によってパイプ14に固定するので、別部材を使用しなくても封止部15をパイプ14に固定することが可能となる。よって、パイプハーネス1の構造を簡素化することができる。
【0038】
(2)位置固定部21は、パイプ14の外周面に凹みを付けることによってパイプ14の内周面が突出した形状をなす突状部23である。よって、位置固定部21を凹みによる簡素な形状にすることができる。
【0039】
(3)突状部23の内径W1は、封止部15の外径W2よりも小さく形成されている。よって、封止部15をパイプ軸方向(
図3のY軸方向)において位置固定部21にしっかりと密着させることが可能となるので、高いシール性を確保することができる。
【0040】
(4)位置固定部21は、パイプ14の周方向全周に形成されている。よって、封止部15と位置固定部21との密着面を多く確保することが可能となるので、高いシール性を確保するのに一層寄与する。
【0041】
(5)位置固定部21は、パイプ14の軸方向内側(パイプ14の奥行き方向)に位置する第1位置固定部21aと、パイプ14の軸方向外側(パイプ14の端部方向)に位置する第2位置固定部21bとを備える。封止部15は、第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bの間に配置されている。よって、第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bの間に封止部15を挟むように配置することが可能となるので、封止部15をパイプ軸方向(
図3のY軸方向)にしっかりと固定することができる。
【0042】
(6)第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bは、同じ形状に形成されている。よって、第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bの両方とも同じ製法で形成することが可能となるので、これらを簡便に形成することができる。
【0043】
(7)第1位置固定部21aと第2位置固定部21bとの間隔Waは、封止部15の厚みWbと同じ、又はそれよりも小さく形成されている。よって、第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bの間に封止部15をしっかりと固定することが可能となるので、高いシール性を確保するのに一層寄与する。
【0044】
(8)パイプ14は、金属パイプである。この場合、金属パイプの一部を位置固定部21とすることが可能となるので、位置固定部21を金属製の強度の高いものとすることができる。
【0045】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・封止部15の形状は、厚み方向に複数の段を有する形状に限定されず、パイプ14内をシールできる形状であればよい。
【0046】
・封止部15の素材は、例えば樹脂等の種々の素材を用いることができる。
・封止部15は、Oリングでもよい。
・位置固定部21は、封止部15の両側に一対設けられることに限らず、少なくともパイプ開口22側に設けた片側配置としてもよい。
【0047】
・位置固定部21は、周方向全周に亘って設けられることに限定されず、周方向において間欠的に設けられてもよい。
・位置固定部21は、断面コ字状に限定されず、例えば舌片状の形状など、種々の形状に変えてもよい。
【0048】
・第1位置固定部21a及び第2位置固定部21bは、互いに異なる形状としてもよい。
・スウェージング加工は、例えば金型を回転させて、パイプ母材を叩きながら延ばす装置によって行われてもよい。スウェージング加工は、冷間鍛造加工等の種々の工法を用いることができる。また、スウェージング加工を用いて成形することに限定されず、例えば、電磁パルスを用いて上記実施形態と同様の形状に成形するようにしてもよい。
【0049】
・封止部15及び位置固定部21の組は、パイプハーネス1の両端に設けられることに限らず、片側の端部のみに設けられてもよい。
・突状部23の内径W1や封止部15の外径W2は、種々の大きさに適宜変更可能である。
【0050】
・第1位置固定部21aと第2位置固定部21bとの間隔Waや、封止部15の厚みWbは、種々の大きさに適宜変更可能である。
・パイプ14の形状は、円筒に限定されず、例えば四角形状等の他の形状に変えてもよい。
【0051】
・パイプ14の素材は、金属に限定されず、例えば樹脂としてもよい。
・車両2は、燃料電池車に限らず、エンジン車両、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車などの種々の車両でもよい。
【0052】
・位置固定部21の位置や数や封止部15との係合構造等は、変更してもよい。
例えば、
図8及び
図9に示すように変更してもよい。具体的には、この例の位置固定部41は、パイプ42において該パイプ42内に取り付けられた封止部43の厚み方向中間部と対応した位置に設けられて、封止部43を取り付け位置で固定する。なお、封止部43の厚み方向は、パイプ42の軸方向及び電線44の長さ方向と同じ方向である。
【0053】
この例の位置固定部41は、上記実施形態の位置固定部21と同様に、パイプ42の外周面に凹みを付けることによってパイプ42の内周面が突出した形状をなす突状部45である。位置固定部41、すなわち突状部45は、パイプ42の周方向全周に形成されている。突状部45の内径は、封止部43の外径よりも小さく形成されている。また、突状部45は、その突出量がパイプ42の軸方向に連続的に変化して曲面状に形成されている。
【0054】
図9に示すように、封止部43の厚み方向中間部の外周面には、パイプ42の内部に取り付けられる前の状態で位置固定部41が嵌まる形状の凹部46が形成されている。すなわち、封止部43は、厚み方向中間部の外径が厚み方向両側部の外径よりも小さく形成されることで位置固定部41が嵌まる形状の凹部46を有している。また、
図9に示すように、パイプ42の内部に取り付けられる前の状態において、封止部43の厚み方向両側部の外周は、厚み方向に大径部47及び小径部48が交互に複数並んだ形状に形成されている。また、封止部43の厚み方向両側部において、パイプ42の軸方向内側は、パイプ42の軸方向外側よりも最大外径が大きくされており、主にパイプ42の軸方向内側でシール性を確保する構成とされている。
【0055】
そして、封止部43は、パイプ42に位置固定部41が形成された状態で、
図9に示す状態から
図8に示す状態となるように、パイプ42内に挿入され、凹部46に位置固定部41が嵌まることで固定されている。
【0056】
このようにしても、上記実施形態の効果と略同様の効果を得ることができる。詳しくは、パイプ42に取り付ける封止部43を、パイプ42に一体形成した位置固定部41によってパイプ42に固定するので、別部材を使用しなくても封止部43をパイプ42に固定することが可能となる。よって、パイプハーネス1の構造を簡素化することができる。また、位置固定部41は、封止部43の厚み方向中間部と対応した位置に設けられるので、単一の位置固定部41によって、封止部43を該封止部43の厚み方向であってパイプ42の軸方向の両方向に移動不能に固定することができる。
【0057】
また、封止部43の厚み方向中間部の外周面には、パイプ42の内部に取り付けられる前の状態、すなわち単体の状態で位置固定部41が嵌まる形状の凹部46が形成されている。この構成によって、凹部46に位置固定部41が嵌まるので、封止部43をパイプ42の軸方向の両方向に移動不能にしっかりと固定することができる。
【0058】
また、例えば、
図10及び
図11に示すように変更してもよい。具体的には、この例の位置固定部51(
図11参照)は、パイプ52において該パイプ52内に取り付けられた封止部53の厚み方向中間部と対応した位置に設けられて、封止部53を取り付け位置で固定する。なお、封止部53の厚み方向は、パイプ52の軸方向及び電線54の長さ方向と同じ方向である。
【0059】
この例の位置固定部51は、上記実施形態の位置固定部21と同様に、パイプ52の外周面に凹みを付けることによってパイプ52の内周面が突出した形状をなす突状部55である。位置固定部51、すなわち突状部55は、パイプ52の周方向全周に形成されている。突状部55の内径は、封止部53の外径よりも小さく形成されている。
【0060】
封止部53は、外力が加わっていない状態で外径が一定とされている。すなわち、この例の封止部53は、外力が加わっていない状態で円筒形状とされている。
そして、封止部53は、
図10に示すように、パイプ52に位置固定部51(
図11参照)が形成されていない状態でパイプ52内に挿入され、その後、
図11に示すように、位置固定部51が形成されることで厚み方向中間部が圧縮されて固定されている。この構成では、主に圧縮された封止部53の厚み方向中間部でシール性が確保される構成とされている。
【0061】
このようにしても、上記実施形態の効果と略同様の効果を得ることができる。詳しくは、パイプ52に取り付ける封止部53を、パイプ52に一体形成した位置固定部51によってパイプ52に固定するので、別部材を使用しなくても封止部53をパイプ52に固定することが可能となる。よって、パイプハーネス1の構造を簡素化することができる。また、位置固定部51は、封止部53の厚み方向中間部と対応した位置に設けられるので、単一の位置固定部51によって、封止部53を該封止部53の厚み方向であってパイプ52の軸方向の両方向に移動不能に固定することができる。
【0062】
また、封止部53は、外力が加わっていない状態で外径が一定とされるため、封止部53の形状が単純となり、容易に製造することができる。なお、封止部53は、その外周が厚み方向に大径部及び小径部が交互に複数並んだ形状に形成されたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 パイプハーネス
2 車両
13 電線
14 パイプ
15 封止部
16 孔
21 位置固定部
21a 第1位置固定部
21b 第2位置固定部
22 パイプ開口
23 突状部
29 治具
41 位置固定部
42 パイプ
43 封止部
44 電線
45 突状部
46 凹部
47 大径部
48 小径部
51 位置固定部
52 パイプ
53 封止部
54 電線
55 突状部
W1 内径
W2 外径
Wa 間隔
Wb 厚み