(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20231205BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20231205BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B66C23/88 C
B66C23/26 C
E02F9/02 A
(21)【出願番号】P 2020103290
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】坂井 桂次
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和之
(72)【発明者】
【氏名】村山 泰彦
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341977(JP,A)
【文献】特開2019-059586(JP,A)
【文献】特開2018-122962(JP,A)
【文献】特開2008-019007(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2927179(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2711330(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 23/26
E02F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラフレームと、このクローラフレームに配設されるクローラとを有する下部走行体を備える建設機械であって、
上記クローラの先端部と地面との間に配置されて使用される敷板と、
上記敷板を格納する格納装置と
を備え、
上記敷板が、
板状の敷板本体と、
互いに平行に離間した一対の軸部と
を有し、
上記一対の軸部のうち一方の軸部を回転軸として敷板本体を回転可能であり、
上記格納装置が、
上記クローラフレームから外側に延出し、上記一方の軸部を下方から支持する凹部を備える支持部を有する建設機械。
【請求項2】
上記格納装置が、上記凹部より上方に位置し、上記一方の軸部が上記凹部に支持された状態で他方の軸部と嵌合可能な嵌合部を有する請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
上記格納装置が、回転抑止部をさらに有しており、
上記回転抑止部が、正面視で上記凹部と上記嵌合部とを結ぶ仮想直線より上記クローラフレーム側に位置し、上記一方の軸部が上記凹部に支持された状態で上記他方の軸部が上記一方の軸部よりも下方に回転移動することを上記敷板本体の上面への当接により抑止するように構成されている請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
正面視で上記嵌合部が上記凹部より上記クローラフレーム側に位置し、
上記凹部と上記嵌合部とを結ぶ仮想直線と鉛直方向とのなす角度が20°以下である請求項2又は請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
上記一対の軸部が上記敷板本体の側縁から突設されており、
上記敷板が、上記一対の軸部の先端同士を連結する把持部をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
上記敷板本体が中空部を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーン、油圧ショベル、杭打ち機等の建設機械として、一対のクローラを有する走行手段を備えた下部走行体と、この下部走行体上に水平方向に旋回可能に設けられ、ブームが起伏可能に取り付けられる上部旋回体とを備えるものが知られている。
【0003】
建設機械は、作業現場で倒伏した状態で組み立てられ、ブームを起伏させて作業可能な状態となるが、例えばブームが長い建設機械ではこの起伏時に姿勢が不安定となるおそれがある。この不安定さを軽減する方法として、下部走行体のクローラの前端部と地面との間に敷板を嵌め込んで後方モーメントを増大させる方法が知られている(例えば特開2007-204236号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この敷板は、例えば建設機械の輸送時には建設機械に格納される。この格納場所としては、例えば使用時のクローラの前端部から比較的移動距離が少ないクローラフレームの側面が用いられる。
【0006】
ところで、敷板は建設機械が自立している際にクローラの前端部から加わる荷重に耐え得るだけの強度が必要となる。一方、敷板を必要とするような全高の大きい建設機械では、上記荷重はより大きくなるため、敷板は重量物となり易い。
【0007】
クローラフレームの側面はクローラ(シュー)の下となるため、このような重量の大きい敷板を吊り入れることが難しく、敷板の格納作業の容易化が求められている。
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、敷板の格納作業を容易に行える格納装置を備える建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る建設機械は、クローラフレームと、このクローラフレームに配設されるクローラとを有する下部走行体を備える建設機械であって、上記クローラの先端部と地面との間に配置されて使用される敷板と、上記敷板を格納する格納装置とを備え、上記敷板が、板状の敷板本体と、互いに平行に離間した一対の軸部とを有し、上記一対の軸部のうち一方の軸部を回転軸として敷板本体を回転可能であり、上記格納装置が、上記クローラフレームから外側に延出し、上記一方の軸部を下方から支持する凹部を備える支持部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建設機械が有する格納装置を用いることで、敷板の格納作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械を示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の敷板及び格納装置部分を示す模式的拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2の格納装置に敷板の一方の軸部を載せた状態を示す模式的正面図である。
【
図5】
図5は、
図2の格納装置に敷板を格納した状態を示す模式的正面図である。
【
図6】
図6は、
図3の敷板とは異なる敷板を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る建設機械は、クローラフレームと、このクローラフレームに配設されるクローラとを有する下部走行体を備える建設機械であって、上記クローラの先端部と地面との間に配置されて使用される敷板と、上記敷板を格納する格納装置とを備え、上記敷板が、板状の敷板本体と、互いに平行に離間した一対の軸部とを有し、上記一対の軸部のうち一方の軸部を回転軸として敷板本体を回転可能であり、上記格納装置が、上記クローラフレームから外側に延出し、上記一方の軸部を下方から支持する凹部を備える支持部を有する。
【0013】
当該建設機械は、敷板の格納装置として、支持部が敷板の一方の軸部を下方から支持する凹部を備えているので、敷板の一方の軸部をこの凹部に載せることで、敷板の重量を支えることができる。また、当該建設機械は、上記敷板を上記一方の軸部を軸として回転させることで、上記格納装置に格納することができる。このとき、敷板の重量が上記凹部により支えられているので、上記敷板はその重量に比して小さい力で回転させることができる。さらに、当該建設機械では、上記一対の軸部を利用して上記敷板を持ち上げ易い。従って、当該建設機械では、敷板の格納作業を容易に行うことができる。
【0014】
上記格納装置が、上記凹部より上方に位置し、上記一方の軸部が上記凹部に支持された状態で他方の軸部と嵌合可能な嵌合部を有するとよい。このように上記凹部より上方に位置し、上記一方の軸部が上記凹部に支持された状態で他方の軸部と嵌合可能な嵌合部を有するので、他方の軸部を上記嵌合部に嵌合させることで上記敷板を格納することができる。また、上記凹部の方が上記嵌合部よりも下方に位置しているので、敷板を上記凹部まで持ち上げる距離が短く、敷板を凹部に載せるために必要な力も低減できる。従って、敷板の格納作業をさらに容易に行うことができる。なお、上記嵌合部としては、上記敷板を格納した状態を維持できるものであればよく、必ずしも上記他方の軸部を動かないように固定する機能は要しない。
【0015】
上記格納装置が、回転抑止部をさらに有しており、上記回転抑止部が、正面視で上記凹部と上記嵌合部とを結ぶ仮想直線より上記クローラフレーム側に位置し、上記一方の軸部が上記凹部に支持された状態で上記他方の軸部が上記一方の軸部よりも下方に回転移動することを上記敷板本体の上面への当接により抑止するように構成されているとよい。このように回転抑止部を設けることで、凹部に支持された敷板が回転して落下することを抑止することができる。なお、格納装置における「正面視」とは、当該建設機械のクローラフレームの側面と平行な方向から見ることを指す。
【0016】
正面視で上記嵌合部が上記凹部より上記クローラフレーム側に位置し、上記凹部と上記嵌合部とを結ぶ仮想直線と鉛直方向とのなす角度としては、20°以下が好ましい。このように嵌合部を位置させることで、上記凹部がクローラフレームから飛び出ることを抑止しつつ、安定して敷板を保持することができる。
【0017】
上記一対の軸部が上記敷板本体の側縁から突設されており、上記敷板が、上記一対の軸部の先端同士を連結する把持部をさらに備えるとよい。このように構成することで、上記一対の軸部を敷板の取っ手の一部として用いることができる。このため、軸部と取っ手部とを別体として設ける場合に比べて敷板の重量が増加することを抑止できる。
【0018】
上記敷板本体が中空部を有するとよい。このように上記敷板本体に中空部を設けることで、敷板の重量を低減することができる。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る建設機械について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に示す建設機械1は、下部走行体2と、下部走行体2上に水平回転可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に起伏(前側に倒伏、後側に起立するよう揺動)可能に取り付けられるアタッチメントであるブーム4と、フック5と、ブーム4の先端からフック5を垂下するワイヤロープ6と、ワイヤロープ6を巻き上げるウィンチ7とを備える。
【0021】
下部走行体2は、走行装置としてクローラフレーム2aと、このクローラフレーム2aに配設されるクローラ2bとを有する。クローラフレーム2a及びクローラ2bは、下部走行体2の幅方向両側にそれぞれ設けられる。つまり、下部走行体2は、一対のクローラフレーム2a及びクローラ2bを有する。
【0022】
上部旋回体3は、ブーム4の取り付け部に隣接する操縦者用キャビン3aや、ブーム4を起伏させるブーム起伏ウインチ(不図示)等が設けられる。
【0023】
ブーム4は、上部旋回体3に前後に揺動可能に取り付けられる基端部4aと、基端部4aに取り付けられる先端部4bとを含む。また、ブーム4は、先端部4bにワイヤロープ6を案内するシーブを有する。
【0024】
フック5は、ワイヤロープ6の先端部4bに固定され、吊り荷を吊り上げる。
【0025】
ワイヤロープ6は、ブーム4の先端部4bのシーブを経由してウィンチ7に巻回されている。
【0026】
ウィンチ7は、ワイヤロープ6を巻上げることでフック5を上方へ移動させ、ワイヤロープ6を繰り出すことでフック5を下方へ移動させることができる。ウィンチ7は、
図1の建設機械1のようにブーム4の背側(ブーム4を延ばして倒伏した状態で上になる側)に設置されていてもよく、ブーム4の内部や上部旋回体3に設置されていてもよい。
【0027】
また、当該建設機械1は、
図2に示すように、クローラ2bの先端部と地面との間に配置されて使用される敷板10と、敷板10を格納する格納装置20とを備える。
【0028】
<敷板>
敷板10は、
図3に示すように、方形状の敷板本体11と、敷板本体11の一辺11aと平行で、かつ一辺11aの垂直方向に互いに離間した一対の軸部12(第1軸部12a及び第2軸部12b)とを有する。
図3の敷板10では、敷板本体11が方形状であるが、敷板本体11は他の形状、例えば楕円形状等であってもよい。
【0029】
敷板10は、敷板本体11の一辺11aがクローラ2bを横断する方向となるようにクローラ2bの前端部と地面との間に嵌め込んで用いられる。クローラ2bは下部走行体2の幅方向両側に設けられるので、敷板10についてもそれぞれのクローラ2bに設けられる。つまり、当該建設機械1は、一対の敷板10を備える。
【0030】
敷板本体11は、板状である。また、敷板本体11は、中空部11eを有するとよい。このように敷板本体11に中空部11eを設けることで、敷板10の重量を低減することができる。このような中空部11eを有する敷板本体11としては、
図2に示すような、平行に配設された一対の薄板と、その一対の薄板間を支える複数の支持板とで構成され、支持板間に中空部11eが設けられる構成や、断面が六角形状となるように中空部11eを設けたいわゆるハニカム構造等を挙げることができる。
【0031】
敷板本体11の長さ(
図3の一辺11aの長さ)は、クローラ2bの幅に応じて適宜決定される。具体的には、クローラ2bの幅と同等若しくはやや大きい長さとされる。敷板本体11の長さをこのような長さとすることで、当該建設機械1の不安定さをより確実に解消させることができる。また、敷板本体11の長さをクローラ2bの幅よりやや大きい長さとすることが好ましい。敷板10を設置する際に、クローラ2bとの間の位置調整が行い易い。
【0032】
敷板本体11の幅(
図3に示す敷板本体11の一辺11aに垂直な側辺11bの長さ)は、クローラ2bの前後方向の長さや当該建設機械1の重心位置等に応じて適宜決定される。
【0033】
敷板本体11の厚さは、必要とされる強度に応じて適宜決定される。敷板本体11の厚さは、長さ方向には均一であることが好ましい。一方、敷板本体11の厚さは、幅方向には均一であってもよいが、一方側に向かって漸増することが好ましい。敷板本体11の厚い側がクローラ2bの前端部側となるようにして用いることで、当該建設機械1の不安定さをより確実に解消させることができる。
【0034】
一対の軸部12は、円柱状であり、敷板本体11の一辺11aに垂直な一対の側辺11bから、それぞれ突設されている。つまり、一対の軸部12は、敷板本体11の側縁から突設されている。具体的には、第1軸部12aは、一対の側辺11bからそれぞれ突設する一対のパーツから構成されており、一対の軸部12のうち一方の軸部である第1軸部12aを回転軸として敷板本体11をその表面の法線方向に回転可能である。第1軸部12aは、1つのパーツで構成されてもよいが、このように複数のパーツで構成することもできる。複数のパーツで構成される場合は、同軸となるように配設されていることが好ましい。なお、複数のパーツで構成されている場合のパーツ数は、
図3に示す2に限定されるものではなく、3以上とすることもできる。また、第2軸部12bも第1軸部12aと同様に構成できる。ここで、「敷板本体の表面」とは、使用時にクローラ2bの前端部が接する面及びその裏側の面を指す。また、「敷板本体の表面の法線方向」には、その表面に対して正確に90°であることを要さず、例えば80°以上、より好ましくは85°以上の角度範囲を含み得る。また、敷板本体の表面に凹凸が存在する場合、その平均界面を法線方向を規定する際の表面とみなすものとする。
【0035】
敷板10は、
図3に示すように、一対の軸部12の先端同士を連結する把持部13をさらに備える。すなわち、各側辺11bから突設する各1つの第1軸部12aと第2軸部12bとの先端同士が把持部13により連結されている。従って、把持部13は、一対の側辺11bに対してそれぞれ1つずつ、合計2つ配設されている。このように一対の軸部12は敷板本体11を挟んで両側に設けるとよい。この構成によって一対の軸部12を利用して敷板10を持ち上げ易くすることができる。なお、
図3では、各側辺11bから突設する各1つの第1軸部12aと第2軸部12bとの先端同士を1つの把持部13で連結しているが、2つあるいはそれ以上の把持部13で連結することもできる。
【0036】
第1軸部12a、第2軸部12b及びこれらを連結する把持部13は、全体として取っ手として機能する。このように一対の軸部12を取っ手の一部として用いるので、軸部12と取っ手部とを別体として設ける場合に比べて敷板10の重量が増加することを抑止できる。また、敷板10の製造工数の削減や製造の容易性の向上を図ることができる。
【0037】
図3に示すように、側面視で一対の軸部12は敷板本体11の重心Gを挟むように配置されている。側面視で軸部12と敷板本体11の重心Gとの距離(
図3のL1)の下限としては、敷板本体11の一辺11aに垂直な側辺11bの長さ(
図3のL2)に対し20%が好ましく、25%がより好ましい。一方、上記距離L1の上限としては、側辺11bの長さL2に対し40%が好ましく、35%がより好ましい。上記距離L1が上記下限未満であると、一方の軸部12を支持して回転可能とするには、後述する凹部21aをクローラフレーム2aから離れて設ける必要が生じる。このため、凹部21aがクローラフレーム2aから飛び出てしまい、当該建設機械1の輸送が困難となるおそれがある。逆に、上記距離L1が上記上限を超えると、敷板10の回転軸となる一方の軸部12に対して重心位置が遠くなるため、回転に要する力が大きくなり、敷板10の格納作業が困難となるおそれがある。なお、敷板における「側面視」とは、一対の軸部の中心軸と平行な方向から見ることを指す。
【0038】
<格納装置>
格納装置20は、
図2に示すように、クローラフレーム2aから外側に延出する支持部21と、嵌合部22と、回転抑止部23とを有する。格納装置20は、一対の敷板10それぞれに対して設けられる。つまり、当該建設機械1は、一対の格納装置20を備える。一対の格納装置20は、一対のクローラフレーム2aに対して、それぞれ設けられるとよい。
【0039】
支持部21は、
図4に示すように、敷板10の一対の軸部12のうち一方の軸部12(第1軸部12a)を下方から支持する凹部21aを備える。
【0040】
図2に示すように、当該建設機械1では、敷板本体11の一対の側辺11bから突設する第1軸部12aのそれぞれのパーツを1つの凹部21aで支えている。つまり、当該建設機械1では、格納装置20は一対の支持部21を有している。
【0041】
なお、この支持部21の配設数は一対に限定されるものではなく、格納装置20を1つ、あるいは3つ以上の支持部21を有する構成とすることも可能である。あるいは、1つの支持部21が複数の凹部21aを備える構成としてもよい。これらの配設数は、第1軸部12aの構成や、敷板10の重量等を加味して適宜決定される。
【0042】
嵌合部22は、支持部21の凹部21aより上方に位置し、
図5に示すように、一方の軸部12である第1軸部12aが凹部21aに支持された状態で他方の軸部12である第2軸部12bと嵌合可能に構成される。
【0043】
嵌合部22は、支持部21と同様に一対の嵌合部22を有し、第2軸部12bのそれぞれのパーツと嵌合可能に構成されている。この嵌合部22についても、支持部21と同様、その配設数は一対に限定されるものではない。
【0044】
格納装置20は、
図5に示すように、嵌合部22に第2軸部12bを嵌合させた状態で第2軸部12bが嵌合部22から離脱することを抑止するピン24をさらに有するとよい。このピン24により輸送時の振動等により第2軸部12b、ひいては敷板10が格納装置20から脱落することを抑止することができる。
【0045】
正面視で嵌合部22は、凹部21aよりクローラフレーム2a側に位置するとよい。この場合、凹部21aと嵌合部22とを結ぶ仮想直線と鉛直方向とのなす角度(
図5のθ)の上限としては、20°が好ましく、15°がより好ましく、13°がさらに好ましい。上記角度θが上記上限を超えると、敷板10を格納するために、凹部21aをクローラフレーム2aから離れて設ける必要が生じる。このため、凹部21aがクローラフレーム2aから飛び出てしまい、当該建設機械1の輸送が困難となるおそれがある。一方、上記角度θは0°とすることもできるが、上記角度θとしては、0°超が好ましく、5°以上がより好ましく、8°以上がさらに好ましい。上記角度θが上記下限未満であると、敷板10を安定して保持できないおそれがある。なお、「凹部21aと嵌合部22とを結ぶ仮想直線」とは、一対の軸部12がそれぞれ凹部21aと嵌合部22と接する位置を結ぶ直線をいう。
【0046】
回転抑止部23は、
図5に示すように、正面視で凹部21aと嵌合部22とを結ぶ仮想直線よりクローラフレーム2a側に位置し、また
図4に示すように、一方の軸部12である第1軸部12aが凹部21aに支持された状態で他方の軸部12である第2軸部12bが第1軸部12aよりも下方に回転移動することを敷板本体11の上面11cへの当接により抑止するように構成されている。
【0047】
当該建設機械1では、この回転抑止部23は、
図2に示すように、一対の支持部21に架け渡される棒状体で構成されている。回転抑止部23は、
図4に示すように、第1軸部12aが凹部21aに支持された状態で、敷板本体11の上面11c側から下面11d側に向かって回転抑止部23、敷板本体11の上面11c及び凹部21aの底部がこの順に並ぶように配置されている。つまり、回転抑止部23と凹部21aとの間に敷板本体11を挿入可能に構成されている。
【0048】
また、
図4に示すように、第2軸部12b側を下方へ回転させると、敷板本体11の第1軸部12a側の上面11cが回転抑止部23に当接し、それ以上第2軸部12b側を下方へ回転させることができないように構成されている。このように回転抑止部23を設けることで、凹部21aに支持された敷板10が回転して落下することを抑止することができる。
【0049】
この敷板本体11の上面11cが回転抑止部23に当接した状態において、第2軸部12b側が第1軸部12a側より上方に位置するとよい。このように第2軸部12b側が第1軸部12a側より上方に位置する状態で敷板10の回転を抑止することで、敷板10を落下し難くすることができる。
【0050】
<格納装置の使用方法>
当該建設機械1の格納装置20は、載置工程と、回転工程と、嵌合工程とを備える使用方法により用いることができる。
【0051】
(載置工程)
上記載置工程では、第1軸部12aを支持部21の凹部21aに載置する。
【0052】
この工程では、例えば吊り上げ装置により敷板10を地面から、支持部21の凹部21aと同じ高さにまで水平に持ち上げる。持ち上げた敷板10を格納装置20の近傍まで近づける。
【0053】
このとき、クローラ2bがあるため、敷板10を格納装置20に完全に当接させることは困難であるため、近傍に近づけた後は、作業者の手により敷板10を水平に移動させつつ、第1軸部12aを支持部21の凹部21aに載置する。この工程では、敷板10を水平に吊ったままで行える。換言すれば、この段階で敷板10を垂直方向へ起こす必要がないので、比較的小さい力で行うことができる。
【0054】
また、敷板10を支持部21の凹部21aに載置すれば、吊り上げ装置による敷板10の吊り上げを止めることとなるが、この場合、
図4に示すように、敷板本体11の上面11cが回転抑止部23に当接し、凹部21aに支持された敷板10が回転して落下することを抑止できる。このため、作業者が敷板10を支持し続ける必要がない。
【0055】
なお、敷板10が軽量である場合は、吊り上げ装置を用いずに人力で上記載置工程を行うこともできる。この場合にあっても、敷板10を支持部21の凹部21aに載置すれば、作業者が敷板10を支持し続ける必要がない。このため、人力による場合であっても少ない労力でこの載置工程を行うことができる。
【0056】
(回転工程)
上記回転工程では、上記載置工程後に敷板10の第1軸部12aを回転軸として他方の軸部12(第2軸部12b)側を上方へ回転する。
【0057】
この工程では、
図4に示すように、敷板本体11の第2軸部12b側の端部を作用点Mとして回転させる。このとき、回転軸となる第1軸部12aから重心Gまでの距離に対し、上記回転軸から作用点Mまでの距離の方が長いため、てこの原理により、敷板10の重量よりも小さい力で敷板10を回転させることができる。
【0058】
なお、この回転は、
図5に示す状態、つまり第2軸部12bが嵌合部22の位置となるまで行う。正面視で嵌合部22が凹部21aよりクローラフレーム2a側に位置している場合、この回転が終了した状態で安定するので、逆回転しないように作業者が敷板10を支持し続ける必要がない。
【0059】
(嵌合工程)
上記嵌合工程では、上記回転工程後に敷板10の第2軸部12bを嵌合部22に嵌合する。
【0060】
この工程では、
図5に示すように、例えばピン24を差し込み、第2軸部12bが嵌合部22から離脱することを抑止する。
【0061】
以上のようにして、敷板10を格納装置20に格納することができる。なお、格納装置20に格納されている敷板10を使用する場合は、上述とは逆の手順により取り出すとよい。
【0062】
<利点>
当該建設機械1は、敷板10の格納装置20として、支持部21が敷板10の第1軸部12aを下方から支持する凹部21aを備えているので、敷板10の第1軸部12aをこの凹部21aに載せることで、敷板10の重量を支えることができる。また、当該建設機械1は、敷板10を第1軸部12aを軸として回転させることで、格納装置20に格納することができる。このとき、敷板10の重量が凹部21aにより支えられているので、敷板10はその重量に比して小さい力で回転させることができる。さらに、当該建設機械1では、一対の軸部12を利用して敷板10を持ち上げ易い。従って、当該建設機械1では、敷板10の格納作業を容易に行うことができる。
【0063】
また、当該建設機械1では、格納装置20が、凹部21aより上方に位置し、第1軸部12aが凹部21aに支持された状態で第2軸部12bと嵌合可能な嵌合部22を有するので、第2軸部12bを嵌合部22に嵌合させることで敷板10を格納することができる。また、凹部21aの方が嵌合部22よりも下方に位置しているので、敷板10を凹部21aまで持ち上げる距離が短く、敷板10を凹部21aに載せるために必要な力も低減できる。従って、敷板10の格納作業をさらに容易に行うことができる。
【0064】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0065】
本発明の建設機械は、
図1に示す構成に限定されるものではない。例えばフックに代えてショベルや杭打ち機等を備える建設機械であってもよい。また、ブームの先端にジブを取り付けたタワー仕様の建設機械や、さらにジブ角度を任意に変えて使用できるラッフィングジブ仕様の建設機械であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、一対の軸部を取っ手の一部として用いる場合について説明したが、一対の軸部と取っ手とは別体として設けることもできる。例えば、
図6の敷板14の上辺に設けられている軸部15のように、敷板本体11の一辺11aから突出する一対の支持棒と、この支持棒の先端を連結する回転軸とを有する構成としてもよい。また、
図6の敷板14の可舌片に設けられている軸部16のように、敷板本体11の一部を貫通する貫通孔を設け、この貫通孔と敷板本体11の一辺11aとに挟まれる領域を軸部16として用いることもできる。つまり、この
図6の敷板14では、敷板14の上辺に設けられている軸部15及び貫通孔と敷板本体11の一辺11aとに挟まれる領域である軸部16が一対の軸部として機能する。
【0067】
上記実施形態では、側面視で一対の軸部が敷板本体の重心を挟むように配置されている場合を説明したが、この配置は必須の構成要件ではなく、側面視で一対の軸部が共に敷板本体の重心の一方側に配置されている構成も本発明の意図するところである。
【0068】
上記実施形態では、格納装置が回転抑止部を有する場合を説明したが、回転抑止部は必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0069】
また、回転抑止部は一対の支持部に架け渡される棒状体に限定されるものではない。例えばクローラフレームから外側に延出する板状体であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、格納装置が、凹部より上方に位置し、一方の軸部が上記凹部に支持された状態で他方の軸部と嵌合可能な嵌合部を有する構成について説明したが、嵌合部の構成はこれに限定されるものではない。例えば嵌合部が凹部より下方に位置する構成や、嵌合部が他方の軸部以外と嵌合する構成も本発明の意図するところである。なお、嵌合部が他方の軸部以外と嵌合する構成としては、例えば敷板本体に設けられたブラケットやフックと嵌合する構成等を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明の建設機械が有する格納装置を用いることで、敷板の格納作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 建設機械
2 下部走行体
2a クローラフレーム
2b クローラ
3 上部旋回体
3a キャビン
4 ブーム
4a 基端部
4b 先端部
5 フック
6 ワイヤロープ
7 ウィンチ
10、14 敷板
11 敷板本体
11a 一辺
11b 側辺
11c 上面
11d 下面
11e 中空部
12、15、16 軸部
12a 第1軸部
12b 第2軸部
13 把持部
20 格納装置
21 支持部
21a 凹部
22 嵌合部
23 回転抑止部
24 ピン
G 重心
M 作用点