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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231205BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20231205BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
H01M50/249
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020111415
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010713
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月23日に開催の「東京モーターショー2019」において公開 令和1年11月25日に開催の「2019 マツダ・ヨーロピアン・テクノロジー&デザイン・フォーラム」において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 守英
(72)【発明者】
【氏名】波多野 和久
(72)【発明者】
【氏名】安久祢 寿
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宗成
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156030(JP,A)
【文献】特開2019-167032(JP,A)
【文献】特開2019-026042(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041970(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下面を構成するフロアパネルと、
前記車両の両側に離れて前後方向に延びるように配置されて前記フロアパネルの下面に取り付けられることにより、中空角柱状の閉断面構造を構成する一対のフロアフレームと、
前記フロアフレームの各々の下面に両側が取り付けられていて、前記フロアパネルの下方に配置されるバッテリユニットと、
を備えた電動車両であって、
前記バッテリユニットは、
複数のバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケースの左右両側に、前後方向に間隔を隔てて取り付けられていて、前記バッテリケースから略水平に張り出すことにより、前記フロアフレームの下面の直下に間隔を隔てて位置する締結座部を有する取付ブラケットと、
を有し、
前記フロアフレームへの前記バッテリユニットの取付部位において、剛性に関する所定の特定値に基づいて、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分における車幅方向の剛性(Rf)に対する、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分における車幅方向の剛性(Rb)の比率からなる剛性比(Rb/Rf)が設定され、
前記剛性比が0.1以上となるように、前記取付ブラケットの前記締結座部が、振動騒音の抑制と軽量化との関係に基づいて設定される所定のスペーサーを介してボルトで締結することにより、前記フロアフレームの下面に取り付けられている電動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両において、
前記剛性比が、0.1以上0.5以下に設定されている電動車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動車両において、
前記スペーサーが筒状に構成されていて、
前記ボルトを前記スペーサーに挿通してナットに締結することにより、前記取付ブラケットが前記フロアフレームの下面に取り付けられている電動車両。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両において、
前記スペーサーが、前記取付ブラケットと一体に構成されている電動車両。
【請求項5】
請求項3に記載の電動車両において、
前記スペーサーが、前記取付ブラケットと別体に構成されている電動車両。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の電動車両において、
剛性に関する前記所定の特定値に、イナータンスが用いられている電動車両。
【請求項7】
請求項6に記載の電動車両において、
前記フロアフレームへの前記バッテリユニットの取付部位のうち、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分、および、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分の各々に対し、車幅方向から所定の加振力を入力することによって発生する加速度を計測することにより、前記加振力に対する前記加速度の比からなる前記イナータンスを取得し、
前記フロアフレームの下面よりも上側の部分において取得された前記イナータンスを、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分における車幅方向の剛性(Rf)とし、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分において取得された前記イナータンスを、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分における車幅方向の剛性(Rb)とすることにより、前記剛性比(Rb/Rf)が設定されている電動車両。
【請求項8】
請求項7に記載の電動車両において、
前記イナータンスの取得に、110Hz以上140Hz以下の周波数帯の加振力が用いられている電動車両。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の電動車両において、
前記バッテリケースは、
前記バッテリモジュールが載置されるバッテリトレイと、
閉断面構造に構成されていて前記バッテリトレイの周囲を囲むバッテリフレームと、
を有し、
前記バッテリトレイの下面が前記バッテリフレームの下面と略同じ高さに位置するように配置されている電動車両。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の電動車両において、
前記フロアパネルのうち、前記バッテリユニットと上下に対向している部分が、前後方向に延びるトンネル部の無い、フラットパネルで構成されている電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、電力による走行が可能な電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関およびモータで駆動するハイブリッド車、モータのみで駆動する電気自動車など、電力による走行が可能な電動車両が注目されている。これら電動車両には、そのモータを駆動する二次電池(駆動バッテリ)が搭載されている。駆動バッテリは、常に充電できないので、蓄電した電力で重い車両を動かさなければならない。そのため、駆動バッテリは大容量が要求される。
【0003】
大容量にするために、通常、駆動バッテリは、電池の集合体からなるバッテリモジュールを複数個、連結して構成されている。駆動バッテリはまた、連結されたこれらバッテリモジュールを、所定形状のバッテリケースに収容することにより、ユニット化されている(バッテリユニット)。従って、駆動バッテリは、サイズが大きく、重量も重い(例えば数100Kg)。そのため、一般に、駆動バッテリは、前後および左右の方向に大きくなるように、かつ、上下方向に小さくなるように形成し、車体の下側に配置される場合が多い。
【0004】
例えば、特許文献1の電気自動車では、車体11の下部フレームが、車両の両側を前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ31,32、前後方向に間隔を隔ててこれらサイドメンバ31,32の間に架設された複数のクロスメンバ33,34,35、並びに、これらサイドメンバ31,32およびクロスメンバ33,34,35の上面に接合されたフロアパネル70などで構成されている。
【0005】
駆動バッテリに相当するバッテリユニット14は、そのようなサイドメンバ31,32の間の、クロスメンバ33,34,35およびフロアパネル70の下側に配置されている。そして、そのバッテリユニット14には、複数のバッテリモジュールを収容したバッテリケース50と、バッテリケース50の下側に複数取り付けられた中空柱状の桁部材101,102,103,104とが備えられている。これら桁部材101~104は、バッテリケース50の下側に、前後方向に間隔を隔てて左右方向に延びるように配置されていて、これらの両端は、バッテリケース50の左右両側から突出している。
【0006】
各桁部材101~104の両端には、挿通孔を形成することにより、締結部121,122,123,124,125,126が構成されている。また、バッテリユニット14の前端部にも、締結部210,211を構成する一対の前側支持部材130,131が設けられている。
【0007】
各サイドメンバ31,32における、これら締結部121~126と対向する部位の各々には、バッテリユニット取付部が設けられている。各バッテリユニット取付部は、補強部材301,302で剛性が補強されている。これらバッテリ取付部の各々の下側に、各締結部121~126が、直接的に、ボルトで締結して固定されている。締結部210,211は、クロスメンバ33にボルトで締結して固定されている。そうして、バッテリユニット14が、車体11の下部フレームに取り付けられている。
【0008】
特許文献2にも、特許文献1の電気自動車と同様に、バッテリユニットの枠状フレームが、直接的に、左右のフロアフレームに締結して固定されている電動車両が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、特許文献1の電気自動車の各締結部121~126の高さ調整を可能にする技術が開示されている。具体的には、各締結部121~126が、横断面が略U形状をした一対の金具220,221からなるベース金具220で構成されている。金具220,221の位置をずらして閉断面構造を形成し、これらを溶接することで各締結部121~126を構成している。それにより、各バッテリユニット取付部の高さにばらつきがあっても、均等に近い力で締結できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-143446号公報
【文献】特開2011-251620号公報
【文献】特開2012-096789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
車体およびバッテリユニットの各々のサイズ、構造、配置などの主な条件は、車体およびバッテリユニットの各々に要求される機能、性能などを満たすために、設計段階において、ほとんどが決定されてしまう。
【0012】
例えば、バッテリユニットの下面の位置は、最低地上高によって定まる。バッテリユニットの上面の位置は、バッテリモジュールの大きさ、容量などによって定まる。車体においても、例えば、中空筒状のフロアフレーム(サイドメンバ31,32に相当)の横断面の大きさ、形状などは、衝突安全性、走行安定性、快適性(いわゆるNVH)などによって定まる。バッテリフレーム(桁部材101~104に相当)の横断面の大きさ、形状なども、バッテリユニットに要求される剛性などによって定まる。
【0013】
従って、フロアフレームおよびバッテリユニットの各々は、これらの連結に適した高さに位置するとは限らない。フロアフレームとバッテリユニットとを連結する部位が上下に離間し、これらの間に隙間が生じる場合がある。この場合、特許文献1、2のように、フロアフレームとバッテリユニットとを、直接的に締結できないので、強固に固定するのは難しい。
【0014】
そのため、特許文献3のように、フロアフレームまたはバッテリフレームの横断面の大きさを変更して、高さ調整することが考えられる。しかし、この場合、フレームの構成部材を余分に大きくしなければならない。そのため、フレームの重量が増加して車両の重量増を招き、電力消費が増大する。
【0015】
フロアフレームにバッテリユニットを取り付けるブラケット(各締結部に相当)を上下方向に折り曲げて、高さ調整することも考えられる。しかし、この場合、ブラケットの車幅方向の剛性が低下する。剛性を高くするためにブラケットの厚みを大きくすれば、車両の重量増を招き、電力消費が増大する。
【0016】
更に、このような取付では、振動騒音も考慮する必要がある。すなわち、車両の走行時に、フロアフレームとバッテリユニットとが車幅方向に共振して、搭乗者に不快感を与える騒音が発生する場合がある。特に、このような取付では、125Hz程度の中周波数帯の振動騒音(ロードノイズ)が問題になる。
【0017】
そこで、開示する技術の目的は、フロアフレームにバッテリユニットを取り付ける部位が上下に離間した場合でも、振動騒音および車両の重量増を抑制しながら、これらを適切に連結できる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
開示する技術は、車両の下面を構成するフロアパネルと、前記車両の両側に離れて前後方向に延びるように配置されて前記フロアパネルの下面に取り付けられることにより、中空角柱状の閉断面構造を構成する一対のフロアフレームと、前記フロアフレームの各々の下面に両側が取り付けられていて、前記フロアパネルの下方に配置されるバッテリユニットと、を備えた電動車両に関する。
【0019】
前記バッテリユニットは、複数のバッテリモジュールと、前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、前記バッテリケースから略水平に張り出すことにより、前記フロアフレームの下面の直下に間隔を隔てて位置する取付ブラケットと、を有している。
【0020】
そして、前記フロアフレームへの前記バッテリユニットの取付部位において、剛性に関する所定の特定値に基づいて、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分における車幅方向の剛性(Rf)に対する、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分における車幅方向の剛性(Rb)の比率からなる剛性比(Rb/Rf)が設定され、前記剛性比が0.1以上となるように、前記取付ブラケットが、中間部を介して前記フロアフレームの下面に取り付けられている。
【0021】
要するに、この電動車両では、フロアパネルに取り付けられて中空角柱状の閉断面構造を構成している一対のフロアフレームの各々の下面に、バッテリユニットの両側が取り付けられている。そして、その取付部位では、バッテリケースから略水平に張り出した取付ブラケットが、フロアフレームの下面の直下に間隔を隔てて位置している。
【0022】
つまり、各種の制約により、取付部位に隙間が生じた状態となっており、上述したように、高剛性を確保するために、車両の重量増を回避しながら、取付ブラケットをフロアフレームの下面に、直接的に取り付けることは難しい。しかも、このような取付では、振動騒音も考慮する必要もある。
【0023】
そこで、この電動車両では、これら取付部位の特定の剛性比と騒音振動との所定の相関関係に基づいて、剛性比が0.1以上となるように、特定の中間部を介して、取付ブラケットがフロアフレームの下面に取り付けられている。
【0024】
この相関関係は、このような問題を解決するために、本発明者らが見出したものである。相関関係では、剛性比が約0.1となる辺りに変曲点が認められ、そして、剛性比が0.1より小さい領域では、剛性比が小さくなるほど、振動騒音が急激に増大する傾向が認められている。従って、剛性比を0.1以上とすることで、振動騒音を効果的に抑制できる。
【0025】
また、剛性比は小さい方が、バッテリユニット側の剛性を小さくできる。つまり、取付ブラケットを軽量にできる。従って、剛性比の値を小さくすることで、軽量化も図れる。このように、この電動車両によれば、フロアフレームにバッテリユニットを取り付ける部位が上下に離間した場合でも、振動騒音および車両の重量増を抑制しながら、これらを適切に連結できる。
【0026】
前記電動車両はまた、前記剛性比が、0.1以上0.5以下に設定されている、としてもよい。
【0027】
本発明者らの知見によれば、剛性比が大きくなると、振動騒音が減少する傾向が認められるが、その減少量は僅かである。剛性比を0.5より大きくしても、振動騒音の効率的な抑制効果は得られない。剛性比を0.1以上0.5以下に設定すれば、振動騒音の抑制と軽量化とを、バランス良く両立できる。
【0028】
前記電動車両はまた、前記中間部が、筒状のスペーサーで構成されていて、ボルトを前記スペーサーに挿通してナットに締結することにより、前記取付ブラケットが前記フロアフレームの下面に取り付けられている、としてもよい。
【0029】
スペーサーを介したボルトおよびナットによる締結であれば、既存の部材を用いて、極めて簡単に取り付けることができる。従って、効果的なバッテリユニットの取り付けを、安価かつ簡便に行える。
【0030】
前記スペーサーは、前記取付ブラケットと一体に構成してもよいし、前記取付ブラケットと別体に構成してもよい。
【0031】
スペーサーを取付ブラケットと一体に構成すれば、安定した剛性が確保できる。スペーサーを取付ブラケットと別体に構成すれば、スペーサーの交換により、高さを容易に変更できる。また、取付ブラケットの共用が可能になる。
【0032】
剛性に関する前記所定の特定値には、イナータンスを用いることができる。
【0033】
具体的には、前記フロアフレームへの前記バッテリユニットの取付部位のうち、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分、および、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分の各々に対し、車幅方向から所定の加振力を入力することによって発生する加速度を計測することにより、前記加振力に対する前記加速度の比からなる前記イナータンスを取得し、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分において取得された前記イナータンスを、前記フロアフレームの下面よりも上側の部分における車幅方向の剛性(Rf)とし、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分において取得された前記イナータンスを、前記フロアフレームの下面よりも下側の部分における車幅方向の剛性(Rb)とすることにより、前記剛性比(Rb/Rf)が設定されている、とすることができる。
【0034】
イナータンスは、剛性に関する公知の伝達関数である。ここで必要なのは、剛性の値そのものではなく、剛性の比(無次元数)である。イナータンスであれば、剛性の比較が可能であり、剛性の値を求めなくても、剛性比を設定できる。しかも、イナータンスであれば、高精度な計測が容易にできる。従って、場所的に計測が困難な場合、計測箇所が多数な場合などにも適切かつ簡便に対応できる。車体の下に位置する取付部位の計測に好適である。
【0035】
前記イナータンスの取得には、110Hz以上140Hz以下の周波数帯の加振力を用いるのが好ましい。
【0036】
フロアフレームの振動に起因した振動騒音では、特に、125Hz程度の中周波数帯の振動騒音(ロードノイズ)が問題となる。従って、剛性比を設定するためのイナータンスの取得に、110Hz以上140Hz以下の周波数帯の加振力を用いれば、振動騒音を効果的に抑制することできる。
【0037】
前記電動車両はまた、前記バッテリケースは、前記バッテリモジュールが載置されるバッテリトレイと、閉断面構造に構成されていて前記バッテリトレイの周囲を囲むバッテリフレームと、を有し、前記バッテリトレイの下面が前記バッテリフレームの下面と略同じ高さに位置するように配置されている、としてもよい。
【0038】
バッテリトレイの周囲を囲むバッテリフレームを閉断面構造で構成すれば、軽量でありながら高剛性なバッテリフレームを実現できる。そして、バッテリトレイの下面を、そのバッテリフレームの下面と略同じ高さに配置すれば、バッテリトレイの側方は、全周にわたってバッテリフレームによって囲まれた状態となる。従って、バッテリトレイの周囲を、高剛性なバッテリフレームで保護できる。
【0039】
前記電動車両はまた、前記フロアパネルのうち、前記バッテリユニットと上下に対向している部分が、前後方向に延びるトンネル部の無い、フラットパネルで構成されている、としてもよい。
【0040】
前後方向に延びるトンネル部が有ると、フロアパネルが上方に膨出する。従って、車室が狭くなり、乗り降りの邪魔になる。それに対し、フロアパネルが、そのようなトンネル部の無いフラットパネルで構成されていると、車室が拡がり、利便性に優れる。一方、車体の剛性が低下するので、フロアパネルおよびフロアフレームが振動し易くなる。従って、振動騒音の増加が懸念される。それに対し、この電動車両では、バッテリユニットが、振動騒音を抑制できる所定の剛性比で、フロアフレームに取り付けられているので、そのような振動騒音の増加も抑制できる。
【発明の効果】
【0041】
開示する技術を適用した電動車両によれば、フロアフレームにバッテリユニットを取り付ける部位が上下に離間した場合でも、振動騒音および車両の重量増を抑制しながら、これらを適切に連結できる。従って、高性能な電動車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】電動車両の車体の下側部分を下方から見た概略図である。
図2A】電動車両の車体の下側部分を斜め前方から見た概略斜視図である。
図2B】電動車両の車体の下側部分を斜め後方から見た概略斜視図である。
図3】バッテリユニットが無い状態の車体を下方から見た概略図である。
図4A】バッテリユニットを斜め上方から見た概略斜視図である。
図4B】バッテリカバーを除いてバッテリユニットの内部を見た概略斜視図である。
図4C】バッテリケースの下側部分を示す概略斜視図である。
図4D図4Cにおける矢印Y1で示す方向から見た概略図である。
図4E】バッテリケースの下側部分を分解した概略斜視図である。
図5】間接取付ブラケット(横間接取付ブラケット)を斜め下方から見た概略斜視図である。
図6】横間接取付ブラケットの取付部位(横間接取付部位)の概略斜視図である。
図7】横間接取付ブラケットの取付部位(横間接取付部位)の概略断面図である。
図8】フロアフレームの内部の構造を示す概略斜視図である。
図9】剛性の計測に用いる計測システムの模式図である。
図10】車体側のイナータンスの計測について説明するための図である。
図11】バッテリユニット側のイナータンスの計測について説明するための図である。
図12】剛性比とフロアフレームに起因した振動騒音との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
開示する技術を、具体的な実施形態によって説明する。ただし、以下の説明は一例である。説明で用いる前後、左右、および、上下の方向は、各図に矢印で示す。なお、これら方向は車両を基準としている。従って、左右方向は車幅方向に相当する。
【0044】
<電動車両の主な構成>
図1図2A図2Bに、本実施形態の電動車両1を示す。図1は、電動車両1を構成している車体10の下側部分を、下方から見た図である。図2Aは、電動車両1を構成している車体10の下側部分を、斜め前方から見た図である。図2Bは、電動車両1を構成している車体10の下側部分を、斜め後方から見た図である。これら図は、開示する技術に関連した電動車両1の主な構成を示している。
【0045】
この電動車両1は、電力で走行する電気自動車である。図示はしないが、電動車両1の前部に区画されている機器室には、モータが設置されている。その機器室の後側に隣接して、ドライバー等が搭乗する車室1aが区画されている。更にその車室1aの後側に隣接して、荷室が区画されている。この電動車両1は、モータが前輪を回転駆動することで走行する。なお、電動車両1は、モータと共にエンジンを搭載し、これらを併用して走行するハイブリッド自動車であってもよい。
【0046】
電動車両1にはまた、モータを駆動するための電源として、二次電池(バッテリユニット40)が搭載されている。バッテリユニット40は、大容量かつ高重量である。そのため、電動車両1に搭載できる箇所は限られる。通常、バッテリユニット40は、上下の方向に小さく、前後および左右の方向に大きくした状態で、車体10の下方のスペースに配置されている。
【0047】
(車体10)
図3に、バッテリユニット40が無い状態での車体10の下側部分を示す。車体10の下側部分は、左右一対のサイドシル11,11、フロアパネル13などで構成されている。
【0048】
図2A図3図7に示すように、各サイドシル11は、鋼板で形成された中空角柱状の部分からなり、横断面が略矩形の閉断面構造を有している。各サイドシル11は、車体10の左右の下縁に沿うように配置されていて、互いに平行して前後方向に延びている。両サイドシル11,11の後端部は、車室1aの左右の後隅部に位置し、両サイドシル11,11の前端部は、車室1aの左右の前隅部に位置している。
【0049】
図2Aに示すように、各サイドシル11の前端部の上側には、中空角柱状のヒンジピラー14が連結されている。図2Bに示すように、各サイドシル11の後端部の上側には、中空角柱状のリヤピラー15が連結されている。左右の各々に位置するヒンジピラー14およびリヤピラー15は、前後に対向した状態で上方に延びている。この電動車両1では、いわゆるセンターピラー(サイドシル11の中間部分の上側から上方に延びるピラー)は、省略されている。
【0050】
図示しないが、各ヒンジピラー14には、フロンドドアが、揺動して開閉可能に取り付けられている。また、各リヤピラー15には、リヤドアが、揺動して開閉可能に取り付けられている。そして、これらドアを閉じたとき、フロントドアの先端部とリヤドアの先端部とが密着する。
【0051】
すなわち、この電動車両1では、車室1aの側面を開閉するドアが、いわゆる観音開きするように構成されている。従って、この電動車両1の場合、センターピラーが無いので、車室1aに出入りし易い。利便性に優れる。一方、センターピラーが有る場合に比べて、車体10の剛性は低い。
【0052】
図3図7に示すように、フロアパネル13は、プレス加工された鋼板などからなり、主に車室1aの下面を構成している。フロアパネル13は、左右のサイドシル11,11の間に設けられていて、これらの間を覆っている。フロアパネル13の前縁部は、車室1aと機器室との間を区画するダッシュパネル16の下縁部に連結されている。図2Aに示すように、ダッシュパネル16は、フロアパネル13との連結部位から、湾曲しながら斜め上方に拡がっている。
【0053】
ダッシュパネル16における車幅方向の中間部分には、上向きに凹んで前後方向に延びる、横断面が逆U形状の短トンネル部16aが形成されている。短トンネル部16aは、ダッシュパネル16から後方のフロアパネル13にも延出されている。ただし、この電動車両1では、フロアパネル13の前端部に、短トンネル部16aの後端部を構成する傾斜溝13a(側面視が略三角形の溝)が形成されているだけである。一般的な車両に認められるように、この電動車両1のフロアパネル13には、前後に延びる長いトンネル部は形成されていない。
【0054】
すなわち、フロアパネル13の大部分は、車幅方向の断面が略水平なフラットパネル13eとなっている。従って、この電動車両1の場合、車室1aの内部に膨出する長いトンネル部が無いので、車室1aが拡がる。利便性に優れる。一方、長いトンネル部が有る場合に比べて、車体10の剛性は低い。
【0055】
フロアパネル13の後部には、上方に一段高くする段差部13bが設けられている。それにより、フロアパネル13における段差部13bよりも後側の部分(後端部13c)は、上方にシフトした状態で略水平に拡がっている。フロアパネル13における段差部13bの前側には、挿通口が開口した接続凹部13dが形成されている。
【0056】
フロアパネル13の後端部13cの後側には、荷室の下面を構成するリヤパネル17が連結されている。リヤパネル17は、一対のサイドシル11,11の後端部よりも後方に位置している。リヤパネル17は、互いに平行して後方に延びる一対のリヤサイドフレーム18,18の間に設けられていて、これらの間を覆っている。
【0057】
ダッシュパネル16、フロアパネル13、および、リヤパネル17の下面には、車体10を補強する様々な部材が取り付けられている。具体的には、フロアフレーム20、フロントフレーム21、トルクボックス22、レインフォースメント23、クロスメンバ24f,24rなどが取り付けられている。これら部材は、いずれも鋼板のプレス加工品である。これら部材はまた、略ハット形状の横断面を有している。各パネルの下面にこれら部材を溶接して取り付けることにより、中空柱状の閉断面構造が形成されている。
【0058】
例えば、フロアフレーム20は、図6図7に示すように、帯状の下壁部20aと、下壁部20aの両縁に対向状に設けられて下壁部20aに沿って延びる一対の側壁部20b,20bと、両側壁部20b,20bの上縁に沿って互いに逆向きに張り出す一対のフランジ部20c,20cと、を有している。そして、フロアフレーム20は、その両側のフランジ部20c,20cが、フロアパネル13の下面に取り付けられることにより、中空角柱状の閉断面構造を構成している。
【0059】
図3に示すように、フロアフレーム20は、一対からなり、左右対称状に配置されている。すなわち、両フロアフレーム20,20は、フロアパネル13の左右両側に離れて、両サイドシル11,11の各々の内側に隣接した位置に配置されている。また、両フロアフレーム20,20は、前後方向に傾斜して延びるように配置されていて、前方に向かうほど、互いに近づき、かつ、隣接するサイドシル11から離れるように傾斜している。
【0060】
各フロアフレーム20の先端部に、各フロントフレーム21の後端部が、連続するように連結されている。各フロントフレーム21は、図2Aに示すように、ダッシュパネル16の下面に取り付けられていて、湾曲しながら斜め上方に向かって延びている。フロアフレーム20とフロントフレーム21とが連結されている部分(前側フレーム連結部位25)の各々と、隣接しているサイドシル11との間には、2つのトルクボックス22,22が、前後に並んで架設されている。
【0061】
また、各前側フレーム連結部位25と短トンネル部16aとの間には、一対のレインフォースメント23,23が配置されている。各レインフォースメント23は、略J状に延びる部材からなる。各レインフォースメント23の屈曲側の端部がフロアフレーム20の側面に連結されている。各レインフォースメント23は、その延出側の端部を後方に向けた状態で、ダッシュパネル16の後端部およびフロアパネル13の前端部の下面に取り付けられている。両レインフォースメント23の後部は、短トンネル部16aの両側に沿ってその途中まで延びている。
【0062】
図2B図3に示すように、2つのクロスメンバ24f,24rが、一対のリヤサイドフレーム18,18の間に架設されている。これらクロスメンバ24f,24rは、前後方向に離れて位置し、リヤパネル17に取り付けられている。前側のクロスメンバ24fは、リヤパネル17とフロアパネル13との連結部位に沿って延びるように配置されている。
【0063】
各サイドシル11の後側には、後輪を収容するホイールハウス26が取り付けられている。そして、そのホイールハウス26の下方に、リヤサスペンション30が設置されている。
【0064】
図2B図3に示すように、リヤサスペンション30は、後輪の各々を軸支する左右一対のトレーリングアーム30a,30aと、これらトレーリングアーム30a,30aの間に連結されて、車幅方向に延びるトーションビーム30bと、を備える(いわゆるトーションビーム式サスペンション)。各トレーリングアーム30aは、アームブラケット30cを介して、フロアフレーム20とリヤサイドフレーム18とが連結されている部分(後側フレーム連結部位31)の各々に取り付けられている。
【0065】
(バッテリユニット40)
図4Aに示すように、バッテリユニット40は、それ自体が、車体10に取り付けられる単一の部材として構成されている。バッテリユニット40の総重量は、例えば、約300kgである。バッテリユニット40は、車体10の下側に拡がるスペースに配置されている。
【0066】
すなわち、バッテリユニット40は、フロアパネル13に沿って拡がるように、フロアパネル13の下方に配置されている。図1図3に示すように、フロアパネル13のうち、バッテリユニット40と上下に対向している部分は、フラットパネル13eで構成されている。その部分には、前後方向に延びる長いトンネル部は無い。従って、広い車室1aを確保できる。そして、車体10の下側の限られたスペースを無駄にすることなく、バッテリユニット40を効率よく配置できる。
【0067】
バッテリユニット40は、上下方向の厚みが小さいプレート状の部材からなる。バッテリユニット40は、上面視が略長方形の形状を有し、左右方向よりも前後方向に長い。バッテリユニット40の下面は、略平坦に形成されている。
【0068】
バッテリユニット40の上面のうち、その後側の部分は、フロアパネル13の形状に合わせて、前側および中間の部分よりも一段高く形成されている。バッテリユニット40の前端部には、フロアパネル13の傾斜溝13aに嵌合する前側膨出部40aが設けられている。バッテリユニット40の中間部分には、フロアパネル13の接続凹部13dに嵌合する後側膨出部40bが設けられている。
【0069】
図4A図4Dに示すように、バッテリユニット40は、大略、複数(図例では16個)のバッテリモジュール45と、これらバッテリモジュール45を収容するバッテリケース60とで構成されている。バッテリケース60は、バッテリトレイ61、バッテリカバー64、バッテリフレーム65などで構成されている。
【0070】
(バッテリケース60)
図4C図4Eに示すように、バッテリケース60の下面は、バッテリトレイ61によって構成されている。バッテリトレイ61は、上面が開放された底の浅い容器状の部材である。具体的に、バッテリトレイ61は、前後方向に長い略長方形の下面部61aと、下面部61aの周囲に連なる枠状の周面部61bと、周面部61bの上縁から全周にわたって外側に小さく張り出した下接合部61cと、複数(図例では3つ)の架設フレーム62(区別する場合は、前架設フレーム62a、中架設フレーム62b、後架設フレーム62cともいう)と、を有している。
【0071】
各架設フレーム62は、フロアフレーム20などと同じ、略ハット形状の横断面を有する部材からなる。各架設フレーム62は、下面部61aおよび周面部61bに溶接して取り付けることにより、閉断面構造を構成している。これら架設フレーム62により、バッテリトレイ61の剛性が強化されている。これら架設フレーム62はまた、バッテリモジュール45を支持する支持部材としても利用されている。そのため、これら架設フレーム62は、前後方向に所定の間隔を隔てて、左右方向に延びるように配置されている。そして、これら架設フレーム62の上面は、バッテリトレイ61の上面と略同じ高さに配置されている。
【0072】
図4A図6図7に示すように、バッテリカバー64は、下面が開放されたケース状の部材からなり、バッテリケース60の上面および側面を構成している。バッテリカバー64の下縁の周囲には、下接合部61cに対応した形状の上接合部64aが設けられている。上接合部64aは、バッテリカバー64をバッテリトレイ61の上に被せた状態で、下接合部61cにシール材を介して接合される。それにより、バッテリカバー64とバッテリトレイ61とが一体化され、これらの内部が密封される。
【0073】
図4Eに示すように、バッテリフレーム65は、バッテリトレイ61の周囲を囲む矩形枠状の部材からなる。バッテリユニット40は、このバッテリフレーム65を介して車体10に支持される。バッテリフレーム65は、左右方向に間隔を隔てて対向して延びる1対の側枠部65a,65aと、これら側枠部65a,65aの前端部の間に架設された前枠部65bと、これら側枠部65a,65aの後端部の間に架設された後枠部65cと、を有している。
【0074】
これら側枠部65a、前枠部65b、および、後枠部65cの各々は、複数の鋼板によって中空角柱状に形成されている。具体的には、図6図7に示すように、これらの各々には、折り曲げられた2つの鋼板650,650が用いられている。これら鋼板650は、帯状に延びる縦板部650aと、縦板部650aの両縁から互いに逆向きに張り出す上板部650bおよび下板部650cと、を有し、略Z形状の横断面に折り曲げられている。
【0075】
そして、これら鋼板650,650をずらして、双方の上板部650bどうしおよび下板部650cどうしを接合する。それにより、これら側枠部65a、前枠部65b、および、後枠部65cの各々に、略矩形の閉断面構造が形成されている。従って、バッテリフレーム65は、軽量かつ高剛性に形成されている。
【0076】
バッテリトレイ61は、バッテリフレーム65に上方から嵌め込まれて一体化されている。具体的には、バッテリフレーム65の上面(各上板部650bの上面)に、バッテリトレイ61の下接合部61cが載置され、その状態でこれらが溶接して固定されている。それにより、バッテリトレイ61の上面は、バッテリフレーム65の上面と略同じ高さに位置している。
【0077】
またこのとき、バッテリトレイ61の下面(下面部61aの下面)は、バッテリフレーム65の下面(各下板部650cの下面)と略同じ高さに位置するように配置されている。バッテリトレイ61の側方は、全周にわたってバッテリフレーム65によって囲まれている。従って、バッテリトレイ61は、バッテリフレーム65により、その周囲が保護されている。
【0078】
また、バッテリフレーム65には、車体10に取り付けるために、複数の支持部材が設けられている。具体的には、図4Eに示すように、これら側枠部65aおよび前枠部65bの各々に、前間接取付ブラケット76、横間接取付ブラケット75、および、横直付けブラケット77が設けられている。なお、本実施形態では、横間接取付ブラケット75が「取付ブラケット」に相当する。
【0079】
前間接取付ブラケット76は、前枠部65bに2個設けられている。これら前間接取付ブラケット76,76は、左右両側に離れて配置されている。横間接取付ブラケット75は、各側枠部65aに、左右対称状に4個ずつ設けられている(第1~第4の横間接取付ブラケット75a~75d)。
【0080】
具体的には、図4Cに示すように、前架設フレーム62aの両端部と内外に対向する位置に、第1の横間接取付ブラケット75aの各々が配置されている。中架設フレーム62bの両端部と内外に対向する位置に、第3の横間接取付ブラケット75cの各々が配置されている。これら第1および第3の横間接取付ブラケット75a,75cの各々の中間の位置に、第2の横間接取付ブラケット75bの各々が配置されている。そして、後架設フレーム62cの両端部と内外に対向する位置に、第4の横間接取付ブラケット75dの各々が配置されている。
【0081】
横直付けブラケット77は、各側枠部65aの後部に、左右対称状に1個ずつ設けられている。各横直付けブラケット77は、前後方向における各側枠部65aの後架設フレーム62cと後枠部65cとの中間の位置に配置されている。これら支持部材の構造および取り付けについては別途後述する。
【0082】
(バッテリモジュール45)
図4Bに示すように、バッテリモジュール45の各々は、いずれも同じ部材からなる。各バッテリモジュール45は、一方が長い直方体形状を有している。図示はしないが、各バッテリモジュール45は、複数のバッテリセルで構成されている。バッテリセルは、例えば、所定の定格電圧を有するリチウムイオン電池である。これらバッテリセルを電気的に接続することにより、バッテリモジュール45は、大容量で高電圧が出力できるように構成されている。1個のバッテリモジュール45の重量は、例えば、約14kgである。
【0083】
16個のバッテリモジュール45は、後述する支持金具50などに支持されて、バッテリトレイ61の上に載置されている。それにより、これらバッテリモジュール45は、それらの長手方向を前後方向に一致させた状態で、バッテリケース60の内部に、上下二段に整列した状態で収容されている。
【0084】
これらバッテリモジュール45の下段では、左右方向に4個並べられたバッテリモジュール45が、前後方向に3列(前列、中連、後列)並べて配置されている。そして、左右方向に並ぶ4個のバッテリモジュール45が、後列のバッテリモジュール45の上に重ねて配置されることにより、これらバッテリモジュール45の上段が構成されている。
【0085】
図4B図4Cに示すように、下段の各バッテリモジュール45は、所定の支持金具50(第1~第3の支持金具51,52,53)を介して、バッテリトレイ61に取り付けられている。支持金具50の各々は、図4Cに示すように、帯板状の支持部50aと、支持部50aの下縁から略L状に屈曲した固定部50bと、を有している。支持金具50は、プレス加工により、鋼板から一体に形成されている。
【0086】
前架設フレーム62aには、2個の支持金具50(第1の支持金具51)が、左右に並べた状態で取り付けられている。これら第1の支持金具51は、支持部50aを前架設フレーム62aよりも後方に突き出した状態で、固定部50bを前架設フレーム62aの上面に締結して取り付けられている。
【0087】
中架設フレーム62bには、4個の支持金具50(第1および第2の支持金具51,52)が、各々、左右に並べた状態で取り付けられている。すなわち、第1の支持金具51の各々は、支持部50aを中架設フレーム62bよりも前方に突き出した状態で、固定部50bを中架設フレーム62bの上面に締結して取り付けられている。第2の支持金具52の各々は、支持部50aを中架設フレーム62bよりも後方に突き出した状態で、固定部50bを中架設フレーム62bの上面に締結して取り付けられている。
【0088】
後架設フレーム62cには、4個の支持金具50(第2および第3の支持金具52,53)が、各々、左右に並べた状態で取り付けられている。すなわち、第2の支持金具52の各々は、支持部50aを後架設フレーム62cよりも前方に突き出した状態で、固定部50bを後架設フレーム62cの上面に締結して取り付けられている。第3の支持金具53の各々は、支持部50aを後架設フレーム62cよりも後方に突き出した状態で、固定部50bを後架設フレーム62cの上面に締結して取り付けられている。
【0089】
そして、後枠部65cには、2個の支持金具50(第3の支持金具53)が、左右に並べた状態で取り付けられている。第3の支持金具53の各々は、支持部50aを後枠部65cよりも前方に突き出した状態で、固定部50bを後枠部65cの上面に締結して取り付けられている。
【0090】
そして、前列の4個のバッテリモジュール45は、前後に対向している第1の支持金具51,51の2組に、2個ずつ、その前端部および後端部を支持部50aに締結して取り付けられている。それと同様に、中列の各バッテリモジュール45は、前後に対向している第2の支持金具52,52の2組に、その前端部および後端部を支持部50aに締結して取り付けられている。後列の各バッテリモジュール45は、前後に対向している第3の支持金具53,53の2組に、その前端部および後端部を支持部50aに締結して取り付けられている。
【0091】
下段の各バッテリモジュール45は、図4Dに示すように、その下面がバッテリトレイ61の上面よりも上方に位置するように配置されている。それにより、バッテリトレイ61の上面と、これらバッテリモジュール45の下面との間には、スペースが設けられている。そして、図示しないが、そのスペースに、冷却配管とともに、弾性を有するゴム板が設置されている。従って、各バッテリモジュール45の下面は、バッテリトレイ61により、弾性的に支持されている。
【0092】
そして、バッテリモジュール45の共振を抑制するために、本実施形態では、第1の支持金具51は、第2および第3の支持金具52,53よりも、板厚が小さい鋼板で形成されている。固定部50bの締結箇所数も、第1の支持金具51は、第2および第3の支持金具52,53よりも相対的に少なくされている。それにより、前列のバッテリモジュール45と、中列および後列のバッテリモジュール45とでは、これらの取付部位(モジュール取付部位)の剛性が異なり、固有振動数に差が生じるように設定されている。
【0093】
なお、電動車両1の仕様により、これらモジュール取付部位の剛性は変更可能である。共振が抑制できるように、予め各モジュール取付部位の剛性を設計し、所定の大きさで固有振動数が異なる複数のモジュール取付部位を設定すればよい。
【0094】
上段の各バッテリモジュール45は、台状に構成された支持フレーム55を介して、バッテリトレイ61に取り付けられている。図4C図4Dに示すように、支持フレーム55は、矩形板状の床部55aと、床部55aの周囲に取り付けられた矩形枠状の床枠部55bと、床枠部55bから下方に延びる複数の脚部55cと、を有している。支持フレーム55は、後列のバッテリモジュール45の上に被さるように配置されている。
【0095】
そして、床枠部55bの前縁部に設けられている一対の脚部55c,55cが、後架設フレーム62cの上面に固定されている。床枠部55bの両側縁部に設けられている左右一対の脚部55c,55cが、バッテリトレイ61の上面に固定されている。床枠部55bの後縁部に設けられている複数の脚部55cが、後枠部65cに固定されている。
【0096】
床枠部55bの前縁部および後縁部の各々には、2個の支持金具50(第3の支持金具53)が、下段と同様に取り付けられている。そして、上段の各バッテリモジュール45が、後列のバッテリモジュール45と同様に、床部55aに弾性的に支持された状態で、これら2組の第3の支持金具53に取り付けられている。上段のモジュール取付部位の固有振動数を、下段の各モジュール取付部位の固有振動数と異なるようにしてもよい。
【0097】
<バッテリユニット40の車体10への取り付け>
バッテリユニット40は、横間接取付ブラケット75、前間接取付ブラケット76、横直付けブラケット77、および、後直付けブラケット78により、車体10に取り付けられている。
【0098】
(横間接取付ブラケット75、前間接取付ブラケット76)
横間接取付ブラケット75および前間接取付ブラケット76の各々は、いずれも同じ形状の金具からなる(これらを総称して「間接取付ブラケット70」ともいう)。間接取付ブラケット70は、鋼板のプレス加工によって形成されている。
【0099】
図5に示すように、間接取付ブラケット70は、1つのボルト孔71aが開口する平坦な締結座部71が設けられた基部70aと、基部70aの一端から下方に断面略L形状に屈曲した中継部70bと、中継部70bの突端から基部70aと逆方向に突出した突端部70cと、基部70aおよび中継部70bの間の両隅の部分に対向して拡がる一対の補強部70d,70dと、を有している。なお、間接取付ブラケット70には、スペーサー100も設けられているが、これについては後述する。
【0100】
基部70aおよび中継部70bの縁の部分、並びに、一対の補強部70d,70dは、下方に湾曲する曲面部分と、その曲面の外縁から側方に向かって反る折曲部分とで、立体的に形成されている。それにより、間接取付ブラケット70の剛性は、構造的に強化されている。なお、フロアフレーム20の傾斜に合わせて、第1~第4の横間接取付ブラケット75a~75dの各々の基部70aの長さは、配置位置が後方になるほど長く形成されている。
【0101】
各前間接取付ブラケット76は、前枠部65bに、各横間接取付ブラケット75は、側枠部65aに、それぞれ、締結および溶接して固定されている。具体的には、図6図7に示すように、前枠部65bおよび各側枠部65aの各々には、これらの上面から側方に、上板部650bが略水平に張り出している。そして、基部70aの上面は、上板部650bの下面に密着され、中継部70bの側面は、縦板部650aの外面に密着され、突端部70cの上面は、下板部650cの下面に密着されている。
【0102】
その状態で、前枠部65bおよび各側枠部65aの各々に、前間接取付ブラケット76および横間接取付ブラケット75の各々が、締結および溶接して固定されている。それにより、基部70aの上面は、バッテリフレーム65の上面と略同じ高さに位置で略水平に張り出すので、締結座部71は、車幅方向の剛性に優れた構造となっている。
【0103】
(横直付けブラケット77、後直付けブラケット78)
横直付けブラケット77の基本的な構造は、間接取付ブラケット70とほぼ同じである。ただし、横直付けブラケット77は、間接取付ブラケット70よりも大型の金具からなる。横直付けブラケット77は、相対的に大きな基部70a、中継部70b、補強部70dを有している。横直付けブラケット77は、各側枠部65aに締結および溶接して固定されている。横直付けブラケット77の基部70aの締結座部71には、複数のボルト孔が形成されている。
【0104】
後直付けブラケット78は、横直付けブラケット77よりも更に大きな金具からなる。後直付けブラケット78は、図2Bに示すように、矩形板状の吊り壁部78aと、吊り壁部78aの上縁から段面略L形状に屈曲した横長壁部78bと、を有している。後直付けブラケット78は、吊り壁部78aの下端部を後枠部65cの後面に締結することにより、後枠部65cに固定される。
【0105】
そして、これら横間接取付ブラケット75、前間接取付ブラケット76、横直付けブラケット77、および、後直付けブラケット78の各々は、ボルトBとナット81とによる締結により、車体10に取り付けられている。
【0106】
具体的には、後直付けブラケット78の場合、図2Bに示すように、その横長壁部78bが前側のクロスメンバ24fの下面に締結して固定されている。各横直付けブラケット77の場合、その基部70aの締結座部71が、ボルトBおよびナット81による締結により、各後側フレーム連結部位31の下面に、直接的に取り付けられている。
【0107】
そして、第1~第4の各横間接取付ブラケット75a~75dは、図3に示すように、これらの配置に対応してフロアフレーム20の各々の下面の所定部位に設けられたブラケット取付部位80(区別する場合は、第1~第4の各ブラケット取付部位80a~80dともいう)に、ボルトBおよびナット81による締結により、取り付けられている。各前間接取付ブラケット76も、これらと同様に、レインフォースメント23の各々の下面に取り付けられている。
【0108】
各ブラケット取付部位80には、ナット81が固定されている。具体的には、図6図7図8に示すように、下壁部20aに、ボルトBを挿通するための貫通孔82が形成されている。この貫通孔82と同軸に、下壁部20aの上面(閉断面構造の内部に臨む面)に、ナット81が溶接して固定されている。下壁部20aとフロアパネル13との間の距離は、第1のブラケット取付部位80aよりも、第2~第4の各ブラケット取付部位80b,80c,80dの方が大きくなっている。
【0109】
そのため、第1の各ブラケット取付部位80aには、高さの低いナット81が用いられている。第2~第4の各ブラケット取付部位80b,80c,80dには、高さの高いナット81(柱状ナット81)が用いられている。第2~第4の各ブラケット取付部位80b,80c,80dにはまた、両側壁部20bの対向面に両端部が溶接されて横断面方向に拡がる補強板83が設けられている。その補強板83に、各柱状ナット81の外周面を接合することにより、各柱状ナット81のフロアフレーム20に対する剛性が強化されている。
【0110】
(バッテリユニット40を車体10へ取り付ける時の課題)
バッテリユニット40の下面の位置は、最低地上高によって決定される。バッテリユニット40の上面の位置は、バッテリモジュール45の大きさ、容量などによって決定される。また、フロアパネル13の傾斜溝13aに前側膨出部40aを嵌合し、接続凹部13dに後側膨出部40bを嵌合する必要もある。
【0111】
車体10においても、フロアフレーム20の横断面の大きさ、形状などは、衝突安全性、走行安定性、快適性など、車体10自体に要求される諸条件によって決定される。バッテリフレーム65の横断面の大きさ、形状なども、所定の制約の下で決定される。
【0112】
その結果、この電動車両1では、車体10に取り付けた状態では、フロアフレーム20の下面と横間接取付ブラケット75の上面とが、上下に離間し、これらの間に隙間が生じる、という問題が発生した。
【0113】
この場合、フロアフレーム20に各横間接取付ブラケット75を直接的に取り付けることはできない。そこで、フロアフレーム20またはバッテリフレーム65の大きさを変更すると、これらフレームの重量が増加して電動車両1の重量増を招き、電力消費が増大する。
【0114】
また、基部70aを折り曲げて高さ調整すれば、横間接取付ブラケット75の車幅方向の剛性が低下する。それに対し、横間接取付ブラケット75の厚みを大きくすれば、直付けでき、車幅方向の剛性を向上できる。ところが、横間接取付ブラケット75は個数が多いので、そうした場合、電動車両1の重量増を招き、電力消費が増大する。そのため、電動車両1の重量増を招くことなく、フロアフレーム20に、各横間接取付ブラケット75を強固に固定するのは難しい。
【0115】
更に、振動騒音も考慮しなければならない。すなわち、車両の走行時、各フロアフレーム20は、車幅方向に波打つように振動する。バッテリユニット4は、それに伴って横揺れする。それにより、フロアフレーム20とバッテリユニット40とが車幅方向に共振し、フロアパネル13を通じて、搭乗者に不快感を与える騒音が発生する場合がある。フロアフレーム20の振動に起因した振動騒音では、特に、125Hz程度の中周波数帯の振動騒音(ロードノイズ)が問題視されている。
【0116】
しかも、この電動車両1の場合、フロアパネル13がフラットパネル13eで構成されている。センターピラーも省略されている。それにより、車体10の剛性が相対的に低下し、振動騒音が発生し易くなっている。振動騒音の抑制と軽量化は、相反する事項である。そのため、これらを両立させながら、車体10にバッテリユニット40を適切に取り付けることは難しい。
【0117】
そこで、この電動車両1では、従来のように、剛性の向上を目的として、フロアフレーム20にバッテリユニット40をできる限り強固に取り付けようとするのではなく、振動騒音の抑制と軽量化との双方を配慮し、車幅方向に適切な剛性が得られるように、工夫されている。
【0118】
すなわち、図6図7に示すように、上下方向に離間しているフロアフレーム20へのバッテリユニット40の取付部位(横間接取付部位90)、つまり、各ブラケット取付部位80と各横間接取付ブラケット75との連結部分が、各々、特定のスペーサー100(中間部の一例)を介して取り付けられている。
【0119】
具体的には、スペーサー100は、円筒状の金具からなる。本実施形態では、各スペーサー100は、ボルト孔71aと同軸に各基部70aの締結座部71の上面に溶接して固定されていて、間接取付ブラケット70と一体に構成されている。各スペーサー100の高さは、離間距離に合わせて設定されている。
【0120】
スペーサー100の内径は、ボルト孔71aよりも大きく形成されている。また、スペーサー100の厚みは、軽量化の観点からは小さい方が好ましく、剛性の観点からは大きい方が好ましい。これらスペーサー100の仕様は、後述する振動騒音の抑制と軽量化との関係に基づいて設定される。なお、スペーサー100は円筒状でなく、角筒状であってもよい。
【0121】
横間接取付ブラケット75における各締結座部71の下側から、ボルト孔71aおよびスペーサー100の各々に、ボルトBを挿通する。そのボルトBを、ブラケット取付部位80における貫通孔82およびナット81の各々にねじ込む。そうすることにより、横間接取付ブラケット75が、ブラケット取付部位80に取り付けられている。
【0122】
このような構造の横間接取付部位90によれば、スペーサー100を介在させるだけでよい。従って、安価で実現でき、簡単な変更で対応できる。
【0123】
そして、振動騒音の抑制と軽量化を両立させるために、これら横間接取付部位90には、剛性に関する所定の特定値に基づく剛性比が設定されている。後述するように、本発明者らは、これら横間接取付部位90の所定の剛性比と、フロアフレーム20に起因する騒音振動との間に、変曲点が存在する所定の関係が認められることを見出した。そして、その関係に基づき、振動騒音の抑制と軽量化との両立が可能になる所定の値となるように、横間接取付部位90の剛性比が設定されている。
【0124】
<剛性に関する特定値、剛性比>
本実施形態では、剛性に関する特定値として、イナータンス(inertance)が用いられている。イナータンスは、公知の伝達関数であり、入力される加振力(F)と、それによって発生する加速度(A)との比(A/F)である。イナータンスが大きいほど、振動は伝わり易い。従って、イナータンスにより、剛性それ自体の値を計測しなくても、剛性の客観的な比較が可能になる。そして、イナータンスであれば、後述するように、高精度な計測が容易にできる。
【0125】
剛性比は、横間接取付部位90の各々において、フロアフレーム20の下面よりも上側の部分における車幅方向の剛性(上側剛性、Rf)と、フロアフレーム20の下面よりも下側の部分における車幅方向の剛性(下側剛性、Rb)との比率(Rb/Rf)である。
【0126】
上側剛性は、各横間接取付部位90における車体側の車幅方向の剛性に相当する。具体的には、上側剛性は、各ブラケット取付部位80それ自体の車幅方向のイナータンスである。一方、下側剛性は、各横間接取付部位90におけるバッテリユニット側の剛性に相当する。具体的には、下側剛性は、スペーサー100を含めた各横間接取付ブラケット75の車幅方向のイナータンスである。
【0127】
(車体側およびバッテリユニット側の各々の剛性の計測)
イナータンスの計測方法について具体的に説明する。なお、説明する計測方法、計測に用いる装置などは、一例であり、状況に応じて適宜変更できる。
【0128】
図9に、イナータンスの計測に用いる計測システム110を模式的に示す。計測システム110は、加振器111、加速度センサ112、計算ユニット113などで構成されている。加振器111は、加振棒111aにより、特定の方向から任意の周波数で、測定対象に加振力を加えられるように構成されている。加振棒111aには、加振力および周波数を計測して計算ユニット113に出力する加振センサ111bが取り付けられている。
【0129】
加速度センサ112は、測定対象の加速度を計測し、計算ユニット113に出力する。計算ユニット113には、CPUやメモリなどのハードウエアと計算ソフトとが装備されている。計算ユニット113は、加振センサ111bおよび加速度センサ112の各々から入力される計測値に基づいて、イナータンスを算出する。
【0130】
(車体側のイナータンスの計測)
バッテリユニット40が装着されていない状態の車体10が計測対象である。その車体10を、例えば複数の空気バネの上に載置する。それにより、車体10を浮かせた状態で支持する。その状態で、図10に示すように、第1~第4の各ブラケット取付部位80a~80dのいずれか1つにボルトBを締結すると共に、その表面(フロアフレーム20の下面)に加速度センサ112を接着して固定する。そして、そのボルトBに加振棒111aの先端を接触させ、車幅方向に加振力が付与できるように、加振器111をセットする。
【0131】
その後、例えば0Hz~800Hzの間のランダムな周波数により、加振器111で加振力を付与する。それと同時に、加振センサ111bおよび加速度センサ112による計測を行う。計算ユニット113は、これらセンサから入力された計測値に基づいて、イナータンスを算出する。それにより、計測したブラケット取付部位80のイナータンスを取得する。
【0132】
本実施形態では、特に125Hz程度の中周波数帯の振動騒音(ロードノイズ)の抑制が重要視されている。そこで、110Hz以上140Hz以下の周波数帯でのイナータンスを平均化し、その平均値を、剛性比の算出に用いる。
【0133】
このような計測処理を、第1~第4の各ブラケット取付部位80a~80dに対して行い、合計8箇所からなるブラケット取付部位80全てのイナータンスを算出する。そして、これらブラケット取付部位80で算出されたイナータンスの平均値を、更に平均化し、その総合平均値を、車体側のイナータンスとして取り扱う。
【0134】
(バッテリユニット側のイナータンスの計測)
車体10への装着前のバッテリユニット40が計測対象である。そのバッテリユニット40を、車体側での計測と同様に、空気バネなどによって浮かせた状態で支持する。その状態で、図11に示すように、第1~第4の各横間接取付ブラケット75a~75dのいずれか1つにおけるスペーサー100の突端に、加速度センサ112を接着して固定する。そして、加振棒111aの先端をそのスペーサー100に接触させ、車幅方向に加振力が付与できるように、加振器111をセットする。
【0135】
そうして、車体側での計測と同様に、加振器111で加振力を付与する。それと同時に、加振センサ111bおよび加速度センサ112による計測を行う。計算ユニット113は、これらセンサから入力された計測値に基づいて、イナータンスを算出する。それにより、計測した横間接取付ブラケット75のイナータンスを取得する。
【0136】
110Hz以上140Hz以下の周波数帯でのイナータンスを平均化し、その平均値を、剛性比の算出に用いる。このような計測処理を、第1~第4の各横間接取付ブラケット75a~75dに対して行い、合計8箇所からなる横間接取付ブラケット75全てのイナータンスを算出する。そして、これら横間接取付ブラケット75で算出されたイナータンスの平均値を、更に平均化し、その総合平均値を、バッテリユニット側のイナータンスとして取り扱う。
【0137】
(剛性比の設定)
このようにして取得された、車体側のイナータンスの総合平均値を、上側剛性(Rf)とする。そして、バッテリユニット側のイナータンスの総合平均値を、下側剛性(Rb)とする。そうすることにより、剛性比(Rb/Rf)を設定する。
【0138】
図12に、本発明者らの知見に基づくグラフを示す。このグラフは、剛性比とフロアフレーム20に起因した振動騒音(ロードノイズ)との相関関係を示している。縦軸は、125Hzの周波数帯における振動騒音の大小を表している。横軸は、上述した剛性比を表している。
【0139】
剛性比が小さくなるほど、振動騒音は大きくなる傾向が認められる。そして、剛性比が約0.1となる辺りに変曲点が認められる。剛性比が0.1より小さい領域では、剛性比が小さくなるほど、振動騒音が急激に増大する傾向が認められる。一方、剛性比が0.1以上の領域では、剛性比が大きくなるほど、振動騒音が減少する傾向が認められるが、その減少量は僅かである。
【0140】
バッテリユニット側の剛性が大きくなるほど、剛性比は大きくなる。対して、バッテリユニット側の剛性が小さくなるほど、剛性比は小さくなる。すなわち、剛性比が小さくなるほど、バッテリユニット側の剛性を小さくできるので、スペーサー100を含めた横間接取付ブラケット75を軽量にできる。
【0141】
そこで、この電動車両1では、変曲点を考慮して、剛性比が、0.1以上となるように設定されている。剛性比が0.1以上であれば、振動騒音を効果的に抑制できる。特に、剛性比を0.1以上0.5以下に設定すれば、振動騒音の抑制と軽量化とを、バランス良く両立することができる。
【0142】
このように、本実施形態の電動車両1は、その下面を構成するフロアパネル13と、その車両の両側に離れて前後方向に延びるように配置されてフロアパネル13の下面に取り付けられることにより、中空角柱状の閉断面構造を構成する一対のフロアフレーム20,20と、これらフロアフレーム20,20の各々の下面に両側が取り付けられていて、フロアパネル13の下方に配置されるバッテリユニット40と、を備えている。
【0143】
バッテリユニット40は、複数のバッテリモジュール45と、バッテリモジュール45を収容するバッテリケース60と、バッテリケース60から略水平に張り出すことにより、フロアフレーム20の下面(ブラケット取付部位80)の直下に間隔を隔てて位置する横間接取付ブラケット75と、を有している。
【0144】
そして、フロアフレーム20へのバッテリユニット40の取付部位(横間接取付部位90)において、イナータンスに基づいて、上側剛性(Rf)に対する、下側剛性(Rb)の比率からなる剛性比(Rb/Rf)が設定され、その剛性比が0.1以上となるように、横間接取付ブラケット75が、スペーサー100を介して、ブラケット取付部位80に取り付けられている。
【0145】
それにより、本実施形態の電動車両1によれば、各種の制約により、各ブラケット取付部位80と、各横間接取付ブラケット75とが、上下に離間して位置する場合であっても、スペーサー100により、安価かつ簡単な変更で、これらを適切に取り付けることができる。しかも、これら横間接取付部位90が、特定の剛性比に基づいて適切な値に設定されているので、電動車両1の重量増および振動騒音も効果的に抑制できる。従って、高性能な電動車両1を実現できる。
【0146】
なお、開示する技術にかかる電動車両は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0147】
実施形態では、スペーサー100が間接取付ブラケット70と一体に構成されている場合を例示したが、スペーサー100は、間接取付ブラケット70と別体に構成してもよい。
【0148】
すなわち、取付時に、スペーサー100にボルトBを挿通し、そのボルトBを締結することでスペーサー100を固定する。この場合、スペーサー100の高さを容易に変更できるので、利便性に優れる。また、間接取付ブラケット70の共用化が可能になるので、部品点数の削減、部材コストの低減が図れる。
【0149】
剛性に関する特定値は、イナータンスに限らない。剛性比(無次元数)が設定できればよいため、同じ単位の剛性値であればよい。
【0150】
全ての横間接取付部位90で特定の剛性比を設定することは必須でない。一部の横間接取付部位90で剛性比を設定してもよい。
【0151】
中間部は、基部70aに、別部材のスペーサー100を固定して構成することに限らない。基部70aを膨出させたり基部70aの肉厚を大きくしたりすることにより、横間接取付ブラケット75それ自体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0152】
1 電動車両
10 車体
11 サイドシル
13 フロアパネル
13e フラットパネル
16 ダッシュパネル
16a トンネル部
17 リヤパネル
18 リヤサイドフレーム
20 フロアフレーム
30 リヤサスペンション
40 バッテリユニット
45 バッテリモジュール
51 第1の支持金具
52 第2の支持金具
53 第3の支持金具
55 支持フレーム
60 バッテリケース
61 バッテリトレイ
62 架設フレーム
64 バッテリカバー
65 バッテリフレーム
65a 側枠部
65b 前枠部
65c 後枠部
70 間接取付ブラケット
75 横間接取付ブラケット
75a~75d 第1~第4の横間接取付ブラケット
76 前間接取付ブラケット
77 横直付けブラケット
78 後直付けブラケット
80 ブラケット取付部位
80a~80d 第1~第4のブラケット取付部位
90 横間接取付部位
100 スペーサー(中間部)
110 計測システム
111 加振器
112 加速度センサ
113 計算ユニット
B ボルト
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12