(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20231205BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20231205BHJP
F04C 29/00 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
H02K1/20 A
H02K1/06 A
F04C29/00 T
(21)【出願番号】P 2020131114
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】門脇 渉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶大
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 駿介
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185032(JP,A)
【文献】特開平06-153441(JP,A)
【文献】特開2010-213412(JP,A)
【文献】特開2020-058194(JP,A)
【文献】特開2019-068702(JP,A)
【文献】特開平09-189296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
H02K 1/06
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に設けられるとともに、筒状のステータコアを有するステータと、
前記ハウジングの内部に設けられるロータと、
前記ハウジングの内部で冷媒を流す冷媒回路と、を備える回転電機であって、
前記ステータコアの軸線が延びる方向を軸方向とし、前記軸方向に直交する方向を径方向とするとき、
前記ロータは、前記径方向における前記ステータコアの内側に配置されており、
前記回転電機は、前記径方向における前記ロータとの間に前記冷媒回路を構成する隙間を形成する状態で、前記径方向における前記ロータと前記ステータコアとの間に設けられる
円筒状の樹脂部材を備え
、
前記ステータコアは、円筒状のヨークと、前記ヨークから前記径方向における前記ヨークの内側に延びる複数のティースと、を有し、
前記樹脂部材は、前記複数のティースの先端面に沿って延びる樹脂外周面と、前記樹脂外周面よりも前記径方向の内側に位置する樹脂内周面と、を有し、
前記樹脂内周面は、前記ロータに対して傾斜する傾斜面を有し、
前記ロータと前記傾斜面との間の前記隙間の前記径方向における寸法が、前記軸方向における前記樹脂内周面の両側の端部位置のうち少なくとも一方の前記端部位置から中間位置に近づくにつれて小さくなるように徐変することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ステータコアは、複数の電磁鋼板を積層したものであり、
前記樹脂部材は、前記電磁鋼板の積層方向に延びる第1樹脂部と、前記積層方向における前記ステータコアの両端面に沿って延びる第2樹脂部と、を有する請求項
1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回転電機は、ハウジングの内部に設けられたステータ及びロータを備えている。ステータは、筒状のステータコアを有している。ロータは、ステータコアの内側に配置されている。
【0003】
また、ロータは、回転に伴って発熱することにより温度が上昇する。そのため、回転電機としては、ロータの冷却を目的として、ハウジングの内部にて冷媒が流れる冷媒回路を備えるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高回転の回転電機においては、ロータの損失を低減する目的で、ステータコアの径方向においてロータとステータコアとの離間距離を大きく設定することが望ましい場合がある。しかしながら、離間距離を大きくすることでロータとステータコアとの隙間が大きくなると、その隙間を流れる冷媒の流速が低くなってしまう。そのため、冷媒によるロータの冷却効果が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータの損失を低減しつつ、ロータの冷却を好適に行うことができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、ハウジングの内部に設けられるとともに、筒状のステータコアを有するステータと、前記ハウジングの内部に設けられるロータと、前記ハウジングの内部で冷媒を流す冷媒回路と、を備える回転電機であって、前記ステータコアの軸線が延びる方向を軸方向とし、前記軸方向に直交する方向を径方向とするとき、前記ロータは、前記径方向における前記ステータコアの内側に配置されており、前記径方向における前記ロータとの間に前記冷媒回路を構成する隙間を形成する状態で、前記径方向における前記ロータと前記ステータコアとの間に設けられる樹脂部材を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ロータと樹脂部材との間に形成される隙間を冷媒が流れることにより、ロータが冷却される。ロータとステータコアとは、ロータと樹脂部材との隙間と、樹脂部材の径方向の寸法と、の分だけ離間する。そのため、樹脂部材を設けることで、冷媒が流れる隙間を大きくしなくても、ロータとステータコアとの離間距離を大きくできる。したがって、ロータの損失を低減しつつ、ロータの冷却を好適に行うことができる。
【0009】
回転電機において、前記樹脂部材は、前記軸方向に沿った断面をみたときに前記ロータに対して傾斜する傾斜面を有することが好ましい。
仮にロータと樹脂部材との隙間の寸法が軸方向において一様の大きさである場合、以下の不都合が生じる場合がある。すなわち、軸方向においてロータに温度のむらが生じる場合、ロータにおける高温部分が冷媒による十分な冷却効果が得られないおそれがある。また、ロータと樹脂部材との間の隙間を冷媒が流れる間に、ロータからの熱を受けて冷媒の温度が大きく上昇する場合、隙間における冷媒が流入する流入部から軸方向に離間したロータの部分ほど、冷媒による十分な冷却効果を得られないおそれがある。
【0010】
上記構成によれば、ロータと樹脂部材との隙間について、径方向における寸法が軸方向に徐々に小さくなる箇所を有している。これにより、上記のように、隙間の寸法を一様にした場合に十分な冷却効果が得られないおそれのあるロータの箇所の周りで、隙間の寸法を小さく設定することができるため、ロータの全体で十分な冷却効果を得ることができる。
【0011】
回転電機において、前記ステータコアは、複数の電磁鋼板を積層したものであり、前記樹脂部材は、前記電磁鋼板の積層方向に延びる第1樹脂部と、前記積層方向における前記ステータコアの両端面に沿って延びる第2樹脂部と、を有することが好ましい。
【0012】
ステータコアが複数の電磁鋼板を積層したものからなる場合、仮に電磁鋼板同士が離間すると、ステータコアの密度が低下することにより、回転電機の出力が低下するおそれがある。上記構成によれば、第2樹脂部によって複数の電磁鋼板を積層方向にて支持できるため、電磁鋼板同士の離間を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ロータの損失を低減しつつ、ロータの冷却を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1の2-2線において、ステータ、ロータ、及び樹脂部材の断面を示す断面図。
【
図3】ロータと樹脂部材との隙間付近を拡大して示す断面図。
【
図4】別例においてロータと樹脂部材との隙間付近を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、回転電機の一実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1に示すように、回転電機10は、内部空間を有する筒状のハウジング11と、ハウジング11内に収容された電動モータ20と、を備えている。ハウジング11は、板状の第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される有底筒状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。第2ハウジング構成体13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。第1ハウジング構成体12は、周壁13bにおける底壁13aとは反対側の開口を閉塞した状態で第2ハウジング構成体13に連結されている。
【0016】
第1ハウジング構成体12には、ハウジング孔12hが厚み方向に貫通して形成されている。ハウジング孔12hは円孔である。また、第1ハウジング構成体12の内面には、円筒状の第1ボス部12cが突設されている。第2ハウジング構成体13の底壁13aの内面には、円筒状の第2ボス部13cが突設されている。ハウジング孔12h、第1ボス部12c、及び第2ボス部13cは、互いに軸線が一致している。
【0017】
電動モータ20は、ステータ21と、ロータ22と、を備えている。ステータ21及びロータ22はいずれもハウジング11の内部に設けられる。ステータ21は、第2ハウジング構成体13の周壁13bの内周面に固定される円筒状のステータコア31と、ステータコア31に巻回されるコイル30と、を有している。ステータコア31は、複数の電磁鋼板31cを積層することで構成されている。ロータ22は、ステータ21の径方向におけるステータコア31の内側に配置されている。そして、コイル30に電流が流れることで、ロータ22は回転可能となっている。なお、以下では、ステータコア31の軸線が延びる方向を軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向という。
【0018】
ロータ22は、筒部材23と、磁性体である永久磁石24と、回転軸25と、を備えている。筒部材23は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材23の軸線は、ハウジング孔12h、第1ボス部12c、及び第2ボス部13cの軸線と一致しているとともに、軸方向に延びている。筒部材23は、軸方向の一方端部に第1開口23aを有し、軸方向の他方端部に第2開口23bを有している。筒部材23は、金属材料からなり、例えばチタン製である。
【0019】
永久磁石24は、中実円柱状であり、径方向に着磁されている。永久磁石24は、筒部材23の内周面に圧入されることにより筒部材23内に固定されている。永久磁石24の軸線は、筒部材23の軸線と一致している。永久磁石24の軸方向の長さは、筒部材23の軸方向の長さより短い。
【0020】
回転軸25は、永久磁石24よりも軸方向の一方側に位置する円柱状の第1軸部26と、永久磁石24よりも軸方向の他方側に位置する円柱状の第2軸部27と、を有する。第1軸部26及び第2軸部27は例えば金属製である。第1軸部26は、第1小径軸部26aと、第1小径軸部26aと軸方向で並ぶとともに第1小径軸部26aよりも直径の大きい第1大径軸部26bと、を有する。第1小径軸部26a及び第1大径軸部26bは軸方向に沿って軸線が延びている。第2軸部27は、第2小径軸部27aと、第2小径軸部27aと軸方向で並ぶとともに第2小径軸部27aよりも直径の大きい第2大径軸部27bと、を有する。第2小径軸部27a及び第2大径軸部27bは軸方向に沿って軸線が延びている。第1小径軸部26aと第2小径軸部27aとは直径が同じ寸法を有している。第1大径軸部26bと第2大径軸部27bとは直径が同じ寸法を有している。
【0021】
第1大径軸部26bは、第1ハウジング構成体12におけるハウジング孔12hに挿通されているとともに、第1ボス部12cの内部に位置している。第2大径軸部27bは、第2ボス部13cの内部に位置している。また、第1小径軸部26aは、筒部材23の第1開口23aに挿通されることにより、第1開口23aを閉塞した状態で筒部材23に固定されている。第2小径軸部27aは、筒部材23の第2開口23bに挿通されることにより、第2開口23bを閉塞した状態で筒部材23に固定されている。これにより、第1軸部26及び第2軸部27は、筒部材23及び永久磁石24と一体回転可能である。第1軸部26及び第2軸部27の軸線、すなわち回転軸25の軸線は、筒部材23の軸線と一致している。なお、回転軸25の軸線を軸線Lとして図示している。
【0022】
ロータ22は、一対の空気軸受29によってハウジング11に対して回転可能に支持されている。一対の空気軸受29は、第1ボス部12cの内周面と第1大径軸部26bの外周面との間と、第2ボス部13cの内周面と第2大径軸部27bの外周面との間と、にそれぞれ設けられている。
【0023】
回転電機10は、冷媒を圧縮する圧縮部63を備える。ハウジング11は、冷媒が供給される供給口60と、圧縮した冷媒を吐出する吐出口61と、を備える。供給口60は、ハウジング11の内部に開口する孔である。圧縮部63は、ロータ22の回転に伴って生じる回転力によって冷媒を吸入し、圧縮した後、吐出口61から冷媒を吐出する。回転電機10は、ハウジング11の内部で冷媒を流す冷媒回路62を備える。冷媒回路62は、供給口60、ハウジング11の内部空間、吐出口61、及び吐出口61と供給口60とを繋ぐようにハウジング11の外部に位置する外部冷媒回路65と、を含んでいる。外部冷媒回路65は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。本実施形態では、圧縮部63によって冷媒が圧縮され、且つ外部冷媒回路65によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房が行われている。なお、圧縮部63としては、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等、任意のタイプの圧縮部を用いることができる。
【0024】
次に、ステータコア31についてさらに詳細に説明する。
図2に示すように、ステータコア31は、円筒状のヨーク32と、ヨーク32からヨーク32の径方向の内側に延びる複数のティース33と、を備える。各電磁鋼板31cの外周端は、互いのヨーク32の外周端が溶接されることで互いに固定されている。ヨーク32の軸線が延びる方向はステータコア31の軸方向と一致する。すなわち、ステータコア31の軸線が延びる方向はヨーク32の軸線が延びる方向でもある。ステータコア31の径方向はヨーク32の径方向でもある。また、複数の電磁鋼板31cの積層方向は、軸方向に沿っている。
【0025】
ティース33は、コイル30が巻回される巻回部34と、巻回部34よりも径方向の内側に位置している先端部35と、を備える。巻回部34には、図示しない絶縁性材料製のインシュレータを介してそれぞれコイル30が巻回されている。インシュレータによって、ステータコア31とコイル30とが絶縁されている。先端部35は、ティース33においてインシュレータから露出した部分であって、コイル30が巻回されていない部分である。
【0026】
先端部35は、軸方向に延びる略矩形柱状をなす。また、先端部35は、巻回部34の径方向の内側の端部から、ヨーク32の周方向の両側に延びている。さらに、先端部35は、ヨーク32の周方向において隣り合うティース33同士で、ヨーク32の周方向にて互いに離間している。
【0027】
図1及び
図3に示すように、複数の電磁鋼板31cの積層方向である軸方向において、ステータコア31の先端部35の端面を第1端面35a及び第2端面35bとする。ステータコア31の先端部35の両端面のうち、第1端面35aは、軸方向において最も第1ハウジング構成体12側に位置する電磁鋼板31cの端面である。第2端面35bは、軸方向において最も第2ハウジング構成体13の底壁13a側に位置する電磁鋼板31cの端面である。第1端面35aと第2端面35bとの間には、ティース33の内周面でもある先端面35cが設けられている。先端面35cは、複数の電磁鋼板31cの内周端面からなる先端部35の内周端面である。本実施形態において、先端面35cは、筒部材23の外周面から径方向外側に第1寸法L1だけ離間した位置にて、筒部材23の外周面に沿って延びている。
【0028】
次に、ロータ22とステータコア31との間に設けられる樹脂部材40について説明する。
図2及び
図3に示すように、回転電機10は、径方向におけるロータ22とステータコア31との間に樹脂部材40を備えている。より詳細には、樹脂部材40は、径方向における筒部材23と各ティース33の先端部35との間に設けられている。樹脂部材40は、円筒状の第1樹脂部41と、第1樹脂部41の軸方向の両端部から第1樹脂部41の外側に円板状に延びる一対の第2樹脂部42と、を有する。
【0029】
第1樹脂部41の軸線は、複数の電磁鋼板31cの積層方向に延びており、ヨーク32の軸線と一致する。また、第1樹脂部41は、各ティース33の先端面35cに沿って延びる樹脂外周面41bと、樹脂外周面41bよりも径方向の内側にて筒部材23の外周面と対向して位置する樹脂内周面41aと、を有する。一対の第2樹脂部42は、ステータコア31の先端部35における第1端面35a及び第2端面35bに沿ってそれぞれ延びている。また、第1樹脂部41の樹脂外周面41bは、ティース33の先端面35cに固定されている。一対の第2樹脂部42は、ステータコア31の先端部35における第1端面35a及び第2端面35bにそれぞれ固定されている。これにより、本実施形態の樹脂部材40は、ステータコア31に固定されている。
【0030】
図3に示すように、軸方向に沿った樹脂部材40の断面を見たとき、第1樹脂部41の樹脂内周面41aは、筒部材23の外周面に対して傾斜している。具体的には、軸方向に沿った樹脂部材40の断面を見たとき、樹脂内周面41aは、軸方向における樹脂内周面41aの端部位置41dから中間位置41cに近づくにつれて、筒部材23の外周面に近づくように傾斜している。これにより、樹脂内周面41aは、径方向の内側に凸状となるように湾曲している。本実施形態では、樹脂内周面41aがロータ22に対して傾斜する傾斜面に相当する。
【0031】
中間位置41cにおいては、樹脂外周面41bと樹脂内周面41aとの間の径方向における寸法が第2寸法L2となっている。端部位置41dにおいては、樹脂外周面41bと樹脂内周面41aとの間の径方向における寸法が第3寸法L3となっている。第2寸法L2は第3寸法L3よりも大きい。樹脂部材40の径方向における寸法は、軸方向において端部位置41dから中間位置41cに近づくにつれて、第2寸法L2から第3寸法L3に徐変している。
【0032】
また、第2寸法L2及び第3寸法L3は、径方向における筒部材23の外周面とティース33の先端面35cとの離間距離である第1寸法L1よりも小さい。これにより、樹脂部材40は、径方向におけるロータ22の筒部材23の外周面との間に隙間Gを形成している。端部位置41dにおいて、樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との隙間Gは、径方向に最も大きくなっている。中間位置41cにおいて、樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との隙間Gは、径方向に最も小さくなっている。軸方向において端部位置41dから中間位置41cに近づくにつれて、隙間Gの径方向における寸法は小さくなるように徐変している。すなわち、樹脂部材40は、軸方向に沿った断面をみたときに、径方向における隙間Gの寸法が軸方向に徐変している。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
回転電機10が駆動すると、ロータ22が回転することにより、圧縮部63によって冷媒が圧縮される。そして、ハウジング11の内部では、供給口60から吐出口61に向けて冷媒が流れるようになる。このとき、樹脂部材40とロータ22との隙間Gも冷媒回路62の一部として機能する。具体的には、ティース33の先端部35における第2端面35b側において、端部位置41dでの樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との間の隙間Gが冷媒の流入部G1として機能するようになる。ティース33の先端部35における第1端面35a側において、端部位置41dでの樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との間の隙間Gが冷媒の流出部G2として機能するようになる。隙間Gにおいては、流入部G1から流出部G2に向けて、
図3に白抜き矢印で示すように冷媒が流れる。
【0034】
ここで、回転軸25の回転に伴って、
図1に示す永久磁石24の中央位置Cが最も高温になりやすい。そのため、軸方向において、永久磁石24及び筒部材23の中間位置に近い位置ほど高温になりやすい。
【0035】
本実施形態では、軸方向において第1樹脂部41の端部位置41dから中間位置41cに近づくにつれて、隙間Gの径方向における寸法を小さくなるように徐変させている。隙間Gの径方向における寸法は、中間位置41cで最も小さくなっている。そのため、軸方向における中間位置41cにおいて、隙間Gを流れる冷媒の流速を最も高くできるため、高温になりやすい永久磁石24及び筒部材23の部分の周りに高い流速の冷媒を流すことができる。
【0036】
また、ロータ22における筒部材23の外周面と、ステータコア31におけるティース33の先端面35cとは、隙間Gと樹脂部材40の径方向の寸法と、の分だけ離間する。そのため、冷媒が流れる隙間Gを大きくしなくても、ロータ22とステータコア31との離間距離を大きくできる。
【0037】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ロータ22とステータコア31とは、ロータ22と樹脂部材40との隙間Gと、樹脂部材40の径方向の寸法と、の分だけ離間する。そのため、樹脂部材40を設けることで、冷媒が流れる隙間Gを大きくしなくても、ロータ22とステータコア31との離間距離を大きくできる。したがって、ロータ22の損失を低減しつつ、ロータ22の冷却を好適に行うことができる。
【0038】
(2)樹脂部材40は、軸方向に沿った断面をみたときに、径方向における隙間Gの寸法が軸方向に沿って徐々に小さくなる箇所を有している。これにより、軸方向の全体で径方向における隙間Gの寸法を一様にした場合に十分な冷却効果が得られないおそれのあるロータ22の箇所の周りで、隙間Gの寸法を小さく設定することができるため、ロータ22の全体で十分な冷却効果を得ることができる。
【0039】
(3)第2樹脂部42によって複数の電磁鋼板31cを積層方向にて支持できるため、電磁鋼板31c同士の離間を抑制できる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
○
図4に示すように、樹脂部材40の軸方向の全体で、径方向における隙間Gの寸法が、軸方向に徐々に小さくなるように徐変していてもよい。具体的には、ティース33の先端部35の第2端面35b側での端部位置41dにおいては、樹脂外周面41bと樹脂内周面41aとの間の径方向における寸法が第4寸法L4となっている。ティース33の先端部35の第1端面35a側での端部位置41dにおいては、樹脂外周面41bと樹脂内周面41aとの間の径方向における寸法が第5寸法L5となっている。第4寸法L4は第5寸法L5よりも小さい。樹脂部材40の径方向における寸法は、軸方向において第2端面35b側での端部位置41dから第1端面35a側での端部位置41dに近づくにつれて、第4寸法L4から第5寸法L5に大きくなるように徐変している。
【0041】
また、第4寸法L4及び第5寸法L5は、径方向における筒部材23の外周面とティース33の先端面35cとの離間距離である第1寸法L1よりも小さい。これにより、この変更例での樹脂部材40によっても、径方向におけるロータ22の筒部材23の外周面との間に隙間Gが形成されている。第2端面35b側での端部位置41dにおいて、樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との隙間Gは、径方向に最も大きくなっている。第1端面35a側での端部位置41dにおいて、樹脂内周面41aと筒部材23の外周面との隙間Gは、径方向に最も小さくなっている。軸方向において第2端面35b側での端部位置41dから第1端面35a側での端部位置41dに近づくにつれて、隙間Gの径方向における寸法は小さくなるように徐変している。すなわち、この形態での樹脂部材40も、軸方向に沿った断面をみたときに、径方向における隙間Gの寸法が軸方向に沿って徐々に小さくなる箇所を有するように、ロータ22に対して傾斜する傾斜面を有している。この変更例においては、樹脂内周面41aが上記傾斜面に相当する。
【0042】
冷媒は、第2端面35b側での端部位置41dにおける流入部G1から隙間Gに流入し、第1端面35a側での端部位置41dにおける流出部G2に向けて流れ、流出部G2から隙間Gの外部に流出する。そのため、冷媒が隙間Gを流れる間に、ロータ22からの熱を受けて冷媒の温度が大きく上昇する場合、流入部G1での冷媒温度が最も低く、流出部G2に近づくほど冷媒温度が高くなる。
【0043】
本変更例では、冷媒温度が高くなる流出部G2に近づくほど、径方向における隙間Gの寸法が小さくなっている。これにより、流出部G2に近づくほど、隙間Gを流れる冷媒の流速を高めることができる。したがって、軸方向の全体で径方向における隙間Gの寸法を一様にした場合に十分な冷却効果が得られないおそれのあるロータ22の箇所の周りで、隙間Gの寸法を小さく設定することができるため、ロータ22の全体で十分な冷却効果を得ることができる。
【0044】
○ 上記実施形態や上記変更例で示した態様以外の樹脂部材40の形状を採用することにより、樹脂部材40の軸方向に沿った断面をみたときに、樹脂部材40が、径方向における隙間Gの寸法が軸方向に沿って徐々に小さくなる箇所を有するようにロータ22に対して傾斜する傾斜面を有するようにしてもよい。例えば、径方向における隙間Gの寸法が軸方向に沿って徐々に小さくなる箇所が、樹脂部材40の軸方向での一部分にのみ位置し、それ以外の部分では径方向における隙間Gの寸法が一様であってもよい。
【0045】
○ ステータコア31は、軸方向にて積層せず、単体の電磁鋼板31cからなるものであってもよい。
○ ステータコア31は、ティース33を有する分割コアを周方向に複数連結することにより構成されてもよい。
【0046】
○ 一対の第2樹脂部42のうち、一方又は両方を樹脂部材40から省略してもよい。
○ 樹脂部材40の固定対象はステータコア31でなくてもよい。例えば、樹脂部材40はハウジング11に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
G…隙間、L…軸線、10…回転電機、11…ハウジング、21…ステータ、22…ロータ、30…コイル、31…ステータコア、31c…電磁鋼板、40…樹脂部材、41…第1樹脂部、42…第2樹脂部、62…冷媒回路。