(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】フォークリフトの通知装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231205BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B66F9/24 L
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020139223
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】水城 琢
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智也
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 将崇
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-028266(JP,A)
【文献】特開2020-090381(JP,A)
【文献】特開昭59-027314(JP,A)
【文献】特開昭63-185800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0114526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
G08G 1/16
B60R 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトの通知装置であって、
前記フォークリフトの前後方向において前記フォークリフトよりも後方の検知領域に存在する障害物を検知する検知装置と、
前記フォークリフトの操作者に前記障害物の存在を通知する通知部と、
前記フォークリフトの車速を取得する取得部と、
前記検知領域に前記障害物が存在している状態で前記フォークリフトが後方に向けて走行しており、かつ、前記取得部により取得された前記フォークリフトの車速が低速動作範囲であることを通知条件とした場合、前記通知条件が成立した場合に前記通知部に通知を行わせる通知制御部と、を備え
、
前記検知領域の前記前後方向の寸法は、前記フォークリフトが後進することで前記フォークリフトよりも前方の障害物から離間し、前記フォークリフトが旋回を行える距離以上に前記フォークリフトの前方の障害物から離間した際に前記フォークリフトの後方の障害物が前記検知領域に入るように設定可能であるフォークリフトの通知装置。
【請求項2】
前記通知部はランプを含み、
前記ランプは、前記操作者の搭乗位置よりも前方に配置されている請求項1に記載のフォークリフトの通知装置。
【請求項3】
前記通知制御部は、前記通知条件とは異なる条件であって少なくとも前記検知領域に前記障害物が存在している場合である特定条件が成立した場合に前記通知部に通知を行わせ、
前記通知制御部は、前記通知条件が成立した場合と前記特定条件が成立した場合とで、前記通知部による通知態様を異ならせる請求項1又は請求項2に記載のフォークリフトの通知装置。
【請求項4】
前記検知装置は、前記障害物が人か否かを判定する人判定部を備え、
前記通知部による通知は、前記フォークリフトの減速により通知を行う減速通知と、前記減速を行うことなく通知を行う非減速通知と、を含み、
前記通知制御部は、前記通知条件が成立した場合で、かつ、前記障害物が人ではない場合には前記通知部に前記非減速通知のみを行わせる請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のフォークリフトの通知装置。
【請求項5】
前記検知領域に前記障害物が存在している状態で前記フォークリフトが後方に向けて走行しており、かつ、前記取得部により取得された前記フォークリフトの車速が前記低速動作範囲の上限値よりも高い場合、前記通知制御部は前記通知部に前記減速通知を行わせる請求項4に記載のフォークリフトの通知装置。
【請求項6】
前記検知領域の大きさは、予め設定されている請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のフォークリフトの通知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォークリフトの通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役作業を行うフォークリフトは、車体と、車体の前方に設けられた荷役装置と、を備える。フォークリフトは、フォークリフトの操作者に通知を行う通知装置を備えている場合がある。特許文献1に開示の通知装置は、フォークリフトが運搬しようとしている荷が荷崩れを起こすおそれのある場合に操作者に通知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトは、2つの障害物の間で作業を行う場合がある。例えば、2つの棚が存在しており、これらの2つの棚の間でフォークリフトは作業を行う場合がある。棚は、荷が置かれる部材である。フォークリフトは、棚に荷を置く荷置き作業、及び棚から荷を取る荷取り作業を行う。2つの棚の1つを第1棚、もう1つを第2棚とする。第1棚に荷を置く場合、フォークリフトの操作者はフォークリフトによって第1棚に荷を置いた後に、フォークリフトを後進させる。第1棚から荷を取る場合、フォークリフトの操作者はフォークリフトによって第1棚から荷を取った後に、フォークリフトを後進させる。このように、荷置き作業を行う場合であっても、荷取り作業を行う場合であっても、フォークリフトを第1棚から離間させる際にはフォークリフトを後進させる。この際、フォークリフトの後方には第2棚が位置している。荷役装置がフォークリフトの前方にある関係上、操作者の意識は前方(荷役装置)に向いていることが多い。このため、フォークリフトが後方の障害物に接近したときに操作者に通知を行うことが求められる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、後方に障害物が存在していることを操作者に通知できるフォークリフトの通知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するフォークリフトの通知装置は、フォークリフトの通知装置であって、前記フォークリフトの前後方向において前記フォークリフトよりも後方の検知領域に存在する障害物を検知する検知装置と、前記フォークリフトの操作者に前記障害物の存在を通知する通知部と、前記フォークリフトの車速を取得する取得部と、前記検知領域に前記障害物が存在している状態で前記フォークリフトが後方に向けて走行しており、かつ、前記取得部により取得された前記フォークリフトの車速が低速動作範囲であることを通知条件とした場合、前記通知条件が成立した場合に前記通知部に通知を行わせる通知制御部と、を備える。
【0007】
フォークリフトが2つの障害物の間で荷役作業を行う場合、フォークリフトを後進させる際にフォークリフトの後方に障害物が位置している場合がある。後方の障害物にフォークリフトが接近し、この障害物の存在によって通知条件が成立すると、通知部による通知が行われる。従って、後方に障害物が存在していることを操作者に通知できる。
【0008】
上記フォークリフトの通知装置について、前記通知部はランプを含み、前記ランプは、前記操作者の搭乗位置よりも前方に配置されていてもよい。
上記フォークリフトの通知装置について、前記通知制御部は、前記通知条件とは異なる条件であって少なくとも前記検知領域に前記障害物が存在している場合である特定条件が成立した場合に前記通知部に通知を行わせ、前記通知制御部は、前記通知条件が成立した場合と前記特定条件が成立した場合とで、前記通知部による通知態様を異ならせてもよい。
【0009】
上記フォークリフトの通知装置について、前記検知装置は、前記障害物が人か否かを判定する人判定部を備え、前記通知部による通知は、前記フォークリフトの減速により通知を行う減速通知と、前記減速を行うことなく通知を行う非減速通知と、を含み、前記通知制御部は、前記通知条件が成立した場合で、かつ、前記障害物が人ではない場合には前記通知部に前記非減速通知のみを行わせてもよい。
【0010】
上記フォークリフトの通知装置について、前記検知領域に前記障害物が存在している状態で前記フォークリフトが後方に向けて走行しており、かつ、前記取得部により取得された前記フォークリフトの車速が前記低速動作範囲の上限値よりも高い場合、前記通知制御部は前記通知部に前記減速通知を行わせてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、後方に障害物が存在していることを操作者に通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】フォークリフトが用いられる作業場を示す模式図。
【
図4】障害物検知装置が行う処理を示すフローチャート。
【
図5】検知可能領域と検知領域とを模式的に示す図。
【
図6】主制御装置が行う処理を示すフローチャート。
【
図7】検知領域に障害物が存在していない状態でのフォークリフトを示す図。
【
図8】検知領域に障害物が存在している状態でのフォークリフトを示す図。
【
図9】フォークリフトの通知装置の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、フォークリフトの通知装置の一実施形態について説明する。以下の説明において、前後左右とは、フォークリフトの前進方向を基準とした場合の前後左右である。
図1に示すように、フォークリフト10は、倉庫、工場、公共施設、商用施設などの作業場で用いられる。作業場には、複数の棚SH1,SH2が配置されている。棚SH1,SH2は、互いに間隔を空けて配置されている。一例として、作業場に2つの棚SH1,SH2が配置されている場合について説明するが、作業場には3つ以上の棚が配置されていてもよい。2つの棚SH1,SH2の1つを第1棚SH1、もう1つを第2棚SH2とする。作業場では、荷役作業が行われる。荷役作業は、棚SH1,SH2に荷Wを置く荷置き作業、及び棚SH1,SH2から荷Wを取る荷取り作業を含む。
【0014】
図2に示すように、フォークリフト10は、車体11と、車体11の前下部に配置された2つの駆動輪12と、車体11の後下部に配置された2つの操舵輪14と、運転席19と、荷役装置20と、を備える。車体11は、ヘッドガード15と、2つのフロントピラー16と、2つのリアピラー17と、を備える。2つのフロントピラー16は、フォークリフト10の左右方向に互いに離間して設けられている。2つのリアピラー17は、フロントピラー16よりも後方に設けられている。2つのリアピラー17は、フォークリフト10の左右方向に互いに離間して設けられている。ヘッドガード15は、2つのフロントピラー16及び2つのリアピラー17に支持されている。2つのフロントピラー16、2つのリアピラー17及びヘッドガード15に囲まれる領域は、操作者の搭乗可能な運転室18である。運転席19は、運転室18に配置されている。本実施形態では、運転席19が搭乗位置である。フロントピラー16は、運転席19よりも前方に配置されている。
【0015】
荷役装置20は、車体11の前部に設けられたマスト21と、マスト21とともに昇降可能に設けられた一対のフォーク22と、マスト21を昇降動作させるリフトシリンダ23と、を備える。フォーク22には、荷Wが積載される。リフトシリンダ23は油圧シリンダである。リフトシリンダ23の伸縮によってマスト21が昇降すると、これに伴いフォーク22が昇降する。本実施形態のフォークリフト10は、操作者による操作によって走行動作及び荷役動作が行われるものである。
【0016】
図3に示すように、フォークリフト10は、フォークリフトの通知装置30と、アクセルセンサ34と、ディレクションセンサ35と、タイヤ角センサ36と、アクセルペダル37と、ディレクションレバー38と、走行用モータ41と、回転数センサ42と、走行制御装置43と、バス60と、を備える。フォークリフトの通知装置30は、主制御装置31と、検知装置51と、を備える。
【0017】
主制御装置31は、プロセッサ32と、記憶部33と、を備える。プロセッサ32としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部33は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部33には、フォークリフト10を動作させるためのプログラムが記憶されている。記憶部33は、処理をプロセッサ32に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納しているといえる。記憶部33、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。主制御装置31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である主制御装置31は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0018】
検知装置51は、ステレオカメラ52と、ステレオカメラ52によって撮像された画像から障害物の検知を行う障害物検知装置55と、ランプ58と、ブザー59と、を備える。障害物は、人及び人以外の障害物を含む。以下の説明では、人以外の障害物を物体と称する。
【0019】
ステレオカメラ52は、フォークリフト10の後方を撮像するように配置されていればよく、任意の位置に配置することができる。本実施形態において、ステレオカメラ52は、ヘッドガード15に配置されている。ステレオカメラ52は、フォークリフト10の上方からフォークリフト10の走行する路面を鳥瞰できるように配置されている。検知装置51で検知される障害物は、フォークリフト10の後方の障害物である。
【0020】
ステレオカメラ52は、2つのカメラ53,54を備える。カメラ53,54は、例えば、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサを用いたものである。各カメラ53,54は、互いの光軸が平行となるように配置されている。2つのカメラ53,54は、互いに離間しているため、2つのカメラ53,54によって撮像される画像では同一障害物がずれて写ることになる。詳細にいえば、同一障害物を撮像した場合、2つのカメラ53,54によって撮像される画像に写る障害物には、2つのカメラ53,54間の距離に応じた画素のずれが生じることになる。本実施形態のステレオカメラ52としては、水平画角が100°以上の広角のステレオカメラ52を用いているが、ステレオカメラ52としては、広角ではないステレオカメラ52を用いてもよい。
【0021】
障害物検知装置55は、プロセッサ56と、記憶部57と、を備える。プロセッサ56としては、例えば、CPU、GPU、又はDSPが用いられる。記憶部57は、RAM及びROMを含む。記憶部57には、ステレオカメラ52によって撮像された画像から障害物を検知するための種々のプログラムが記憶されている。記憶部57は、処理をプロセッサ56に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納しているといえる。記憶部57、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。障害物検知装置55は、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である障害物検知装置55は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0022】
障害物検知装置55は、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し行うことで、フォークリフト10の後方に存在する障害物の検知を行う。また、障害物検知装置55は、検知した障害物の位置を導出する。障害物の位置とは、フォークリフト10と障害物との相対的な位置である。
【0023】
図4に示すように、ステップS100において、障害物検知装置55は、ステレオカメラ52の各カメラ53,54から画像を取得する。
次に、ステップS110において、障害物検知装置55は、ステレオ処理を行うことで、視差画像を取得する。視差画像は、画素に対して視差[px]を対応付けたものである。視差画像とは、必ずしも表示を要するものではなく、視差画像における各画素に視差が対応付けられたデータのことを示す。視差は、ステレオカメラ52の備える2つのカメラ53,54によって撮像された画像を比較し、各画像に写る同一特徴点について画像間の画素数の差を導出することで得られる。障害物検知装置55は、2つのカメラ53,54によって撮像された画像のうち一方を基準画像、他方を比較画像とし、基準画像の画素毎に、最も類似する比較画像の画素を抽出する。障害物検知装置55は、基準画像の画素と、比較画像の画素の画素数の差を視差として算出する。これにより、基準画像の各画素に視差が対応付けられた視差画像を取得することができる。なお、特徴点とは、障害物のエッジなど、境目として認識可能な部分である。特徴点は、輝度情報などから検知することができる。
【0024】
次に、ステップS120において、障害物検知装置55は、実空間上の座標系であるワールド座標系における特徴点の座標を導出する。ワールド座標系は、フォークリフト10が水平面に位置している状態で水平方向のうちフォークリフト10の車幅方向に延びる軸をX軸、水平方向のうちX軸に直交する軸をY軸、鉛直方向に延びる軸をZ軸とする座標系である。特徴点の座標の導出は、ステレオカメラ52の基線長、ステレオカメラ52の焦点距離、及びステップS110で得られた視差画像からカメラ座標系における特徴点の座標を導出した後に、当該座標をワールド座標系における座標に変換することで行われる。なお、
図2及び
図5には、X軸、Y軸及びZ軸を矢印X,Y,Zで図示している。
【0025】
図4に示すように、ステップS130において、障害物検知装置55は、特徴点をクラスタ化することで障害物の抽出を行う。障害物検知装置55は、障害物の一部を表す点である特徴点のうち同一障害物を表していると想定される特徴点の集合を1つの点群とし、当該点群を障害物として抽出する。障害物検知装置55は、ステップS120で導出されたワールド座標系における特徴点の座標から、所定範囲内に位置する特徴点を1つの点群とみなすクラスタ化を行う。障害物検知装置55は、クラスタ化された点群を1つの障害物とみなす。なお、ステップS130で行われる特徴点のクラスタ化は種々の手法で行うことができる。
【0026】
次に、ステップS140において、障害物検知装置55は、ワールド座標系における障害物の座標を導出する。障害物の座標は、点群を構成する特徴点の座標から導出可能である。ワールド座標系における障害物の座標は、フォークリフト10と障害物との相対位置を表している。詳細にいえば、ワールド座標系における障害物の座標のうちX座標は原点から障害物までの左右方向の距離を表しており、Y座標は原点から障害物までの前後方向の距離を表している。原点は、例えば、X座標及びY座標をステレオカメラ52の配置位置とし、Z座標を路面とする座標である。X座標及びY座標から、ステレオカメラ52の配置位置から障害物までのユークリッド距離を導出することも可能である。ワールド座標系における障害物の座標のうちZ座標は、路面からの障害物の高さを表す。
【0027】
図5に示すように、障害物検知装置55は、検知可能領域AA1に存在する障害物の位置を導出可能である。検知可能領域AA1とは、障害物検知装置55が障害物を検知可能な範囲である。検知可能領域AA1は、例えば、ステレオカメラ52の水平画角、ステレオカメラ52の垂直画角、及びステレオカメラ52の取付角度によって定まる。検知可能領域AA1は、ステレオカメラ52によって撮像可能な範囲ともいえる。
【0028】
図4に示すように、ステップS150において、障害物検知装置55は、障害物が人か否かを判定する。障害物が人か否かの判定は、種々の方法で行うことができる。本実施形態において、障害物検知装置55は、ステレオカメラ52の2つのカメラ53,54のうちいずれかで撮像された画像に対して、人判定処理を行う。障害物検知装置55は、ステップS140で得られたワールド座標系における障害物の座標をカメラ座標に変換し、当該カメラ座標をカメラ53,54によって撮像された画像の座標に変換する。本実施形態において、障害物検知装置55は、ワールド座標系における障害物の座標を基準画像の座標に変換する。障害物検知装置55は、基準画像における障害物の座標に対して、人判定処理を行う。人判定処理は、例えば、特徴量抽出と、事前に機械学習を行った人判定器と、を用いて行われる。特徴量抽出としては、例えば、HOG:Histogram of Oriented Gradients特徴量、Haar-Like特徴量などの画像における局所領域の特徴量を抽出する手法が挙げられる。人判定器としては、例えば、教師有り学習モデルによる機械学習を行ったものが用いられる。教師有り学習モデルとしては、例えば、サポートベクタマシン、ニューラルネットワーク、ナイーブベイズ、ディープラーニング、決定木等を採用することが可能である。機械学習に用いる教師データとしては、画像から抽出された人の形状要素や、外観要素などの画像固有成分が用いられる。形状要素として、例えば、人の大きさや輪郭などが挙げられる。外観要素としては、例えば、光源情報、テクスチャ情報、カメラ情報などが挙げられる。光源情報には、反射率や、陰影等に関する情報が含まれる。テクスチャ情報には、カラー情報等が含まれる。カメラ情報には、画質、解像度、画角等に関する情報が含まれる。ステップS150の処理を行うことで、障害物検知装置55は障害物が人か否かを判定する人判定部を備えているといえる。
【0029】
障害物検知装置55による検知結果は、主制御装置31に取得される。これにより、主制御装置31は、フォークリフト10の後方に存在する障害物を認識することができる。
ランプ58は、単数であっても複数であってもよい。本実施形態では、ランプ58は複数設けられている。ランプ58は、フォークリフト10の操作者が視認できる位置に配置されていればよく、任意の位置に配置することができる。
【0030】
図2に示すように、ランプ58は2つのフロントピラー16及び2つのリアピラー17のそれぞれに1つずつ設けられている。ランプ58は、運転席19に着座した操作者の視界に入り込むような高さに配置されている。ランプ58は、運転席19よりも上方に配置されている。フロントピラー16は、運転席19よりも前方に配置されているため、フロントピラー16に設けられたランプ58は、運転席19よりも前方に配置されているといえる。
【0031】
ブザー59は、任意の配置することができる。本実施形態では、ブザー59は2つのリアピラー17のうちの1つに設けられている。
ランプ58及びブザー59は、主制御装置31からの指令によって作動する。主制御装置31は、バス60を介して検知装置51に指令を送信することで、ランプ58を作動させることができる。ランプ58の作動とは、ランプ58が点灯、あるいは、ランプ58が点滅することである。なお、主制御装置31は、ランプ58を点灯させるかランプ58を点滅させるかを選択することができる。主制御装置31は、バス60を介して検知装置51に指令を送信することで、ブザー59を作動させることができる。ブザー59の作動とは、ブザー59が音を発することである。
【0032】
アクセルセンサ34は、アクセルペダル37の操作量、即ち、アクセル開度を検知する。アクセルセンサ34は、アクセル開度に応じた電気信号を主制御装置31に出力する。主制御装置31は、アクセルセンサ34からの電気信号によりアクセル開度を認識可能である。
【0033】
ディレクションセンサ35は、進行方向を指示するディレクションレバー38の操作方向を検知する。ディレクションセンサ35は、中立を基準として、前進を指示する方向にディレクションレバー38が操作されているか、後進を指示する方向にディレクションレバー38が操作されているかを検知する。ディレクションセンサ35は、ディレクションレバー38の操作方向に応じた電気信号を主制御装置31に出力する。主制御装置31は、ディレクションセンサ35からの電気信号によりディレクションレバー38の操作方向を認識可能である。主制御装置31は、操作者により前進が指示されているか、後進が指示されているか、いずれも指示されていないかを把握することができる。
【0034】
タイヤ角センサ36は、操舵輪14の操舵角を検知する。タイヤ角センサ36は、操舵角に応じた電気信号を主制御装置31に出力する。主制御装置31は、タイヤ角センサ36からの電気信号により操舵角を認識可能である。
【0035】
走行用モータ41は、フォークリフト10を走行させるための駆動装置である。走行用モータ41の駆動により、駆動輪12が回転することでフォークリフト10は走行する。
回転数センサ42は、走行用モータ41の回転数を検知する。回転数センサ42としては、例えば、ロータリエンコーダを用いることができる。回転数センサ42は、走行用モータ41の回転数に応じた電気信号を走行制御装置43に出力する。
【0036】
走行制御装置43は、走行用モータ41の回転数を制御するモータドライバである。走行制御装置43は、回転数センサ42の電気信号から、走行用モータ41の回転数、及び回転方向を認識可能である。
【0037】
走行用モータ41、回転数センサ42、及び走行制御装置43は、2つの駆動輪12毎に個別に設けられている。2つの駆動輪12毎に設けられた走行用モータ41の回転数及び回転方向を走行制御装置43により個別に制御することで、2つの駆動輪12の回転数及び回転方向は、独立して制御可能である。2つの駆動輪12毎に設けられた走行用モータ41の回転数は、回転数センサ42により個別に検知可能である。
【0038】
主制御装置31、走行制御装置43及び検知装置51は、バス60によって互いに情報を取得可能に構成されている。主制御装置31、走行制御装置43及び検知装置51は、CAN:Controller Area NetworkやLIN:Local Interconnect Networkなどの車両用の通信プロトコルに従った通信を行うことで、互いに情報を取得する。
【0039】
主制御装置31は、走行制御装置43から走行用モータ41の回転数及び回転方向を取得することで、フォークリフト10の車速を導出する。フォークリフト10の車速は、駆動輪12毎に設けられた走行用モータ41それぞれの回転数及び回転方向、及びギヤ比、駆動輪12の外径などを用いることで導出可能である。なお、主制御装置31は、車速とともにフォークリフト10の進行方向も導出する。フォークリフト10の進行方向とは、前進方向及び後進方向のいずれかである。主制御装置31は、フォークリフト10の車速を取得する取得部を備えているといえる。
【0040】
主制御装置31は、アクセルセンサ34により検知されたアクセル開度から目標車速を演算する。主制御装置31は、目標車速から目標回転数を演算する。目標回転数は、フォークリフト10の車速を目標車速に到達させるための回転数である。目標回転数は、2つの走行用モータ41毎に個別に導出される。また、主制御装置31は、ディレクションレバー38の操作方向からフォークリフト10を前進させるか後進させるかを判断する。主制御装置31は、目標回転数を示す情報と走行用モータ41の回転方向を示す情報を含む指令を生成し、走行制御装置43に指令を与える。走行制御装置43は、指令による目標回転数に追従するように走行用モータ41を制御する。走行制御装置43は、指令による回転方向に走行用モータ41が回転するように走行用モータ41を制御する。操作者によるアクセルペダル37の操作量に応じた車速でフォークリフト10は走行する。なお、本実施形態のように、2つの駆動輪12の回転数を独立して制御できるフォークリフト10では、操作者による旋回操作、即ち、ハンドルの角度に応じて2つの走行用モータ41の回転数及び回転方向を調整することでフォークリフト10の旋回を行うことができる。従って、2つの走行用モータ41の回転数の差を利用して旋回を行うフォークリフト10の場合、主制御装置31は、目標車速及びハンドルの角度に応じて目標回転数を導出する。
【0041】
主制御装置31は、車速上限値を設定することで、車速制限を課すことができる。車速上限値が設定されている場合、主制御装置31は、フォークリフト10の車速が車速上限値を上回らないように制御を行う。例えば、主制御装置31は、アクセル開度から演算される目標車速が車速上限値未満の場合には、アクセル開度から演算された目標車速から目標回転数を演算する一方で、アクセル開度から演算される目標車速が車速上限値以上の場合には、目標車速に代えて車速上限値を用いて目標回転数を演算する。そして、目標回転数と走行用モータ41の回転数が一致するように走行制御装置43に指令を与える。
【0042】
なお、車速制限が課されていない状態とは、車速上限値が設定されていない態様に加えて、フォークリフト10の到達し得る最高速度よりも高い車速上限値を設定する等、実質的には機能しない車速上限値を設定する態様を含む。
【0043】
次に、主制御装置31が行う通知制御について説明する。主制御装置31は、所定の制御周期で以下の通知制御を行うことで、フォークリフト10の後方に存在する障害物を操作者に認識させる。
【0044】
図6に示すように、ステップS10において、主制御装置31は、フォークリフト10が後進しているか否かを判定する。ステップS10の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS11の処理を行う。ステップS10の判定結果が否定の場合、主制御装置31はステップS31の処理を行う。
【0045】
ステップS11において、主制御装置31は、検知領域AA2に障害物が存在するか否かを判定する。障害物検知装置55による検知可能領域AA1には、検知領域AA2が設定されている。検知領域AA2は、検知可能領域AA1も狭い領域である。検知領域AA2は、フォークリフト10よりも後方の領域である。検知領域AA2は、ワールド座標で規定される。本実施形態では、ワールド座標系のX座標Xw及びY座標Ywにより検知領域AA2を規定しているが、ワールド座標系のX座標Xw及びY座標Ywに加えてZ座標Zwにより検知領域AA2は規定されてもよい。以下の説明において、X軸とはワールド座標系のX軸であり、Y軸とはワールド座標系のY軸である。
【0046】
ステップS11で用いられる検知領域AA2の大きさは予め設定されている。検知領域AA2のY軸方向の寸法は、作業場の棚SH1,SH2同士の間の寸法に基づいて設定されている。検知領域AA2のY軸方向の寸法は、棚SH1,SH2同士の間の寸法よりも短い。棚SH1,SH2同士の間の寸法が長いほど、検知領域AA2のY軸方向の寸法は長い値に設定される。なお、棚が3つ以上配置されている場合、棚同士の間の寸法のうち最も短い寸法に基づき、検知領域AA2のY軸方向の寸法は設定される。
【0047】
フォークリフト10が荷置き作業及び荷取り作業を含む荷役作業を行う際の動作を考えると、フォークリフト10は棚SH1,SH2に沿って棚SH1,SH2同士の間を走行した後に、旋回することで棚SH1を向く。そして、棚SH1に向けて前進する。荷役作業を終えた後には、フォークリフト10は後進する。後進によりフォークリフト10は、フォークリフト10の前方の棚SH1から離間していく。フォークリフト10の前方の棚SH1とフォークリフト10との距離が、フォークリフト10の旋回を行える距離以上になると、フォークリフト10は旋回し、棚SH1,SH2同士の間を走行する。このように、フォークリフト10が荷置き作業及び荷取り作業を行う際には、後進することでフォークリフト10の前方の棚SH1から離間する工程が生じる。検知領域AA2のY軸方向の寸法は、フォークリフト10が後進することでフォークリフト10の前方の棚SH1から離間し、フォークリフト10が旋回を行える距離以上にフォークリフト10の前方の棚SH1から離間した際に、フォークリフト10の後方の棚SH2が検知領域AA2に入るように設定されている。言い換えれば、検知領域AA2のY軸方向の寸法は、フォークリフト10と、フォークリフト10の前方の棚SH1との距離がフォークリフト10を旋回させるのに必要となる距離未満の場合には、フォークリフト10の後方の棚SH2が検知領域AA2に入らないように設定されている。
【0048】
検知領域AA2のX軸方向の寸法は、任意に設定することができる。検知領域AA2のX軸方向の寸法は、例えば、フォークリフト10の車幅以上の寸法に設定される。検知領域AA2のX軸方向の寸法は、一定値であってもよいし、検知領域AA2のY軸方向の位置に応じて異なる値にしてもよい。X軸方向の寸法を検知領域AA2のY軸方向の位置に応じて異なる値にする場合、例えば、フォークリフト10から離れるにつれてX軸方向の寸法が大きくなるようにしてもよい。
【0049】
ステップS11で用いられる検知領域AA2は、フォークリフト10の後方に常に直線状に延びる領域であってもよいし、フォークリフト10が旋回すると予想される方向に曲がる領域であってもよい。フォークリフト10が旋回すると予想される方向に応じて検知領域AA2を曲げる場合、主制御装置31は、フォークリフト10が右方に旋回すると予想されるときには検知領域AA2を右方に曲げ、フォークリフト10が左方に旋回すると予想されるときには検知領域AA2を左方に曲げる。フォークリフト10が旋回すると予想される方向は、例えば、タイヤ角センサ36の検知結果から把握することができる。
【0050】
ステップS11の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS12の処理を行う。ステップS11の判定結果が否定の場合、主制御装置31はステップS31の処理を行う。
【0051】
ステップS12において、主制御装置31は、フォークリフト10の車速が低速動作範囲内か否かを判定する。低速動作範囲とは、予め定められた範囲である。低速動作範囲の下限値は0[km/h]よりも高い値である。低速動作範囲の下限値は、フォークリフト10が走行していることを検知することができれば、任意の値に設定することができる。フォークリフト10が走行していない場合であっても振動がフォークリフト10に加わった場合には、0[km/h]以上の車速が検知される場合がある。低速動作範囲の下限値としては、振動の影響によって検知され得る車速よりも高い値に設定されている。低速動作範囲の上限値は、フォークリフト10の到達し得る最高速度よりも低い値である。低速動作範囲は、フォークリフト10の管理者が任意に設定することができる。低速動作範囲は、例えば、0.5[km/h]~3.0[km/h]である。
【0052】
ステップS12の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS13の処理を行う。ステップS12の判定結果が否定の場合、主制御装置31はステップS21の処理を行う。
【0053】
ステップS13において、主制御装置31は、障害物が人か物体かを判定する。主制御装置31は、障害物が物体の場合には、ステップS14の処理を行う。主制御装置31は、障害物が人の場合にはステップS15の処理を行う。
【0054】
ステップS14において、主制御装置31は、通知を行う。ステップS14における通知は、接近通知である。接近通知とは、フォークリフト10の後方に障害物が存在していることを操作者に知らせるための通知である。主制御装置31は、ランプ58を点滅させる。接近通知を行う際には、主制御装置31は、ブザー59を作動させない。接近通知を行う際には、主制御装置31は、車速制限を課さない。接近通知は、ランプ58の点滅のみでの通知である。操作者は、ランプ58が点滅していることを視認することで、フォークリフト10の後方に障害物が存在していることを認識できる。接近通知は、フォークリフト10の減速を行うことがない通知である非減速通知である。接近通知は、フォークリフト10の後方に障害物が存在することを操作者が認識している状況を想定して設定された通知である。例えば、棚SH1,SH2の間で荷役作業を行っている場合、操作者は後方に棚SH1,SH2が存在していることを認識していると予想される。この際に減速を行うと、後方に障害物が存在していることを操作者が認識しているにも関わらず減速が行われ、作業効率の低下を招く。接近通知は、フォークリフト10が障害物に接近したことを操作者に認識させることで、作業効率の向上を図るために行われる通知といえる。接近通知では、通知部はランプ58である。主制御装置31は、通知制御部である。
【0055】
ステップS15において、主制御装置31は、通知を行う。ステップS15における通知は、警告通知である。警告通知とは、フォークリフト10を停止又は減速させる必要があることを操作者に知らせるための通知である。警告通知は、接近通知よりも、障害物の存在を操作者に認識させやすい通知である。警告通知は、フォークリフト10の後方に障害物が存在することを操作者が認識していない状況を想定しているものであって障害物が存在していることを操作者に認識させるための通知である。警告通知は、障害物とフォークリフト10との接触を抑制するための通知である。
【0056】
主制御装置31は、ランプ58を点滅させる。警告通知を行う際のランプ58の点滅速度は、接近通知を行う際のランプ58の点滅速度よりも速い(点灯と消灯を繰り返す周期が短い)。主制御装置31は、ブザー59を作動させる。主制御装置31は、車速上限値を0に設定することで、車速制限を課す。車速上限値が0の場合、フォークリフト10の進行が禁止された状態といえる。車速上限値が0に設定されることで、フォークリフト10は減速する。警告通知は、ランプ58の点滅、ブザー59の作動、及び車速制限による通知である。操作者は、ランプ58が点滅していることを視認することで、フォークリフト10の後方に障害物が存在していることを認識できる。操作者は、ブザー59の発する音によりフォークリフト10の後方に障害物が存在していることを認識できる。操作者は、フォークリフト10が減速することでフォークリフト10の後方に障害物が存在していることを認識できる。警告通知は、フォークリフト10の減速により通知を行う減速通知である。警告通知では、ランプ58及びブザー59に加えて、車速制限を課すことでフォークリフト10に減速を行わせる主制御装置31が通知部である。
【0057】
ステップS10~ステップS12の判定が全て肯定になると、検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が低速動作範囲であるといえる。検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が低速動作範囲であることを通知条件とする。ステップS10~ステップS12の判定が全て肯定の場合に通知が行われることで、通知条件が成立した場合に通知が行われるといえる。
【0058】
ステップS21において、主制御装置31は、フォークリフト10の車速が閾値以上か否かを判定する。閾値は、低速動作範囲の上限値よりも高い値であり、かつ、フォークリフト10の到達し得る最高速度よりも低い値である。
【0059】
ステップS21の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS22の処理を行う。ステップS21の判定結果が否定の場合、主制御装置31はステップS31の処理を行う。
【0060】
ステップS22において、主制御装置31は、通知を行う。ステップS22の通知は、警告通知である。ステップS22で行われる警告通知は、ステップS14で行われる接近通知及びステップS15で行われる警告通知とは異なる態様で行われる。ステップS22の警告通知は、少なくとも減速通知を含む通知である。主制御装置31は、車速上限値を0以上の値に設定することで、フォークリフト10に減速を行わせる。車速上限値としては、例えば、ステップS21の判定に用いられる閾値を挙げることができる。主制御装置31は、ランプ58を点滅させてもよい。ランプ58の点滅速度は、ステップS14の接近通知及びステップS15の警告通知を行う際のランプ58の点滅速度と異なる速度としてもよい。主制御装置31は、ブザー59を作動させてもよい。ブザー59の音量は、ステップS15の警告通知を行う際のブザー59の音量と異ならせてもよい。
【0061】
ステップS10、ステップS11及びステップS21の判定が全て肯定になると、検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が低速動作範囲の上限値よりも高いといえる。検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が低速動作範囲でないことを特定条件とする。ステップS10、ステップS11及びステップS21の判定が全て肯定の場合に通知が行われることで、特定条件が成立した場合に、通知条件が成立した場合とは異なる通知態様で通知が行われるといえる。なお、通知条件が成立しているか否かの判定と特定条件が成立しているか否かの判定とで、検知領域AA2の大きさを異ならせてもよい。特定条件は、ステップS12で設定される検知領域AA2と同一の領域に障害物が存在している場合に成立してもよいし、ステップS12で設定される検知領域AA2と異なる大きさの領域に障害物が存在している場合に成立してもよい。例えば、主制御装置31は特定条件が成立しているか否かを判定する際に、フォークリフト10の車速が速いほど、検知領域AA2のY軸方向の寸法を長くし、この検知領域AA2に障害物が存在している場合に特定条件が成立するようにしてもよい。
【0062】
ステップS31において、主制御装置31は、通知解除を行う。主制御装置31は、過去の制御周期で通知条件又は特定条件の成立により通知を行っている場合には、この通知を解除することで、通知が行われないようにする。主制御装置31は、ステップS31の処理を行う際に、通知が行われていない場合には、この状態を維持する。
【0063】
本実施形態の作用について説明する。
図7に示すように、フォークリフト10が棚SH1,SH2から荷Wを取る荷取り作業を行う場合、2つの棚SH1,SH2同士の間で作業が行われる。フォークリフト10が第1棚SH1から荷Wを取る場合、フォークリフト10は第1棚SH1に向けて前進する。フォークリフト10が荷取り作業を行っている状態では、検知領域AA2には第2棚SH2が入り込まず、第2棚SH2の存在によって通知条件が成立することは抑制されている。フォークリフト10が荷取り作業を終えた後には、フォークリフト10は後進する。荷取り作業を行っている場合には、フォークリフト10は停止している場合が多い。従って、フォークリフト10が第1棚SH1から離間する際にはフォークリフト10の車速が低速動作範囲内である。フォークリフト10の後進に伴い、フォークリフト10は後方の第2棚SH2に接近していく。
【0064】
図8に示すように、第2棚SH2が検知領域AA2に入り込むと、第2棚SH2の存在によって通知条件が成立する。これにより、接近通知が行われる。本実施形態では、ランプ58の点滅によって接近通知が行われる。フォークリフト10の操作者は、接近通知によって第2棚SH2に接近したことを認識する。フォークリフト10の操作者は、接近通知により第2棚SH2に接近したこと認識すると、フォークリフト10を旋回させる。
【0065】
操作者は、ランプ58の点滅によって旋回を行うタイミングを把握することができる。検知領域AA2のY軸方向の寸法が過剰に長いと、第1棚SH1との離間距離が十分ではない状態で接近通知が行われるおそれがある。検知領域AA2のY軸方向の寸法が過剰に短いと、フォークリフト10と第2棚SH2とが過剰に接近してから接近通知が行われるおそれがある。検知領域AA2のY軸方向の寸法は、第1棚SH1との離間距離が旋回を行える距離であり、かつ、フォークリフト10が第2棚SH2に過剰に接近していない状態で接近通知が行えるように設定されている。
【0066】
上記した例では、フォークリフト10が荷取り作業を行う場合について説明したが、フォークリフト10が棚SH1,SH2に荷Wを置く荷取り作業を行う場合であっても同様の態様で接近通知が行われる。
【0067】
なお、実施形態では、棚SH1,SH2同士の間で荷役作業が行われる場合を例に挙げて説明したが、フォークリフト10は棚SH1,SH2同士の間以外であっても、2つの障害物の間で荷役作業を行う場合がある。例えば、作業場に2つの荷置き位置が設定されており、2つの荷置き位置の間で荷役作業を行う場合には、2つの荷置き位置に置かれた荷W同士の間でフォークリフト10は荷役作業を行う場合がある。また、フォークリフト10は、棚SH1,SH2と壁との間で荷役作業を行う場合がある。フォークリフト10が2つの障害物同士の間で荷役作業を行う場合であれば、障害物が棚SH1,SH2以外の場合であっても同様の態様で接近通知が行われる。
【0068】
本実施形態の効果について説明する。
(1)主制御装置31は、通知条件が成立すると接近通知を行う。フォークリフト10が後方の棚SH1,SH2に接近したときに操作者に通知を行うことができる。操作者は、接近通知によって後方の棚SH1,SH2に接近したことを認識できる。
【0069】
フォークリフト10の操作者は、接近通知によって後方の棚SH1,SH2に接近したことを認識すると、フォークリフト10を旋回させる。接近通知は、フォークリフト10を旋回させるタイミングを操作者に通知しているといえる。接近通知により、操作者を支援することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0070】
(2)接近通知の際に点滅するランプ58は、運転席19よりも前方に配置されている。荷役装置20は、車体11の前方に設けられているため、操作者は前方を向いている場合が多い。運転席19よりも前方にランプ58を配置することで、操作者は荷役装置20を視認しながら、後方の棚SH1,SH2に接近したことを認識することができる。
【0071】
(3)通知条件が成立した際に行われる通知と、特定条件が成立した際に行われる通知とで通知態様を異ならせている。これにより、状況に応じた通知を行うことができる。
(4)主制御装置31は、通知条件が成立した場合で、検知領域AA2に存在する障害物が人であればフォークリフト10の減速を行う。主制御装置31は、通知条件が成立した場合で、検知領域AA2に存在する障害物が物体であればフォークリフト10の減速を行わない。検知領域AA2に存在する障害物が人の場合には、フォークリフト10を減速させることが好ましい。これに対し、検知領域AA2に存在する障害物が物体の場合、操作者は障害物の存在を認識した上でフォークリフト10を後進させている場合があり、フォークリフト10を減速させると作業効率の低下を招くおそれがある。障害物が物体の場合には減速を行わないことで、作業効率の低下を抑制できる。
【0072】
(5)通知条件が成立した場合で、検知領域AA2に存在する障害物が物体の場合には接近通知が行われる。接近通知では、ランプ58の点滅のみが行われる。接近通知は、作業効率を低下させることなく、操作者に後方に棚SH1,SH2が存在していると認識させることを意図している。ブザー59を作動させる場合や、フォークリフト10の減速を行う場合に比べて、ランプ58の点滅は作業を阻害しにくい。このため、作業効率の低下を抑制できる。
【0073】
(6)警告通知は、フォークリフト10を停止又は減速させる必要があることを操作者に知らせるための通知である。このため、警告通知では、接近通知に比べて後方に障害物が存在していることを操作者に認識させやすいように通知が行われる。接近通知で過剰に通知を行うと、通知への慣れが生じるおそれがあり、警告通知を行った際に、フォークリフト10を停止又は減速させる必要があることを操作者が認識できないおそれがある。接近通知を、ランプ58の点滅のみとし、過剰な通知を行わないことで、通知への慣れが生じることを抑制できる。
【0074】
(7)主制御装置31は、検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が閾値よりも高い場合、フォークリフト10の減速を行う。障害物同士の間で荷役作業が行われている場合、必然的にフォークリフト10の後方に障害物が存在している状況である。フォークリフト10の車速が閾値よりも高い場合、2つの障害物同士の間とは異なる場所でフォークリフト10が走行している状況等、必然的にフォークリフト10の後方に障害物が存在しているような状況ではないと考えられる。必然的にフォークリフト10の後方に障害物が存在しているような状況では、操作者はフォークリフト10の後方に障害物が存在していることを認識している場合が多く、この場合には作業効率の低下を抑制するために減速を行うことなく通知を行う。一方で、フォークリフト10の車速が閾値よりも高い場合には、操作者はフォークリフト10の後方の障害物を認識していない場合があるため、減速を含む通知を行う。これにより、フォークリフト10の後方の障害物とフォークリフト10との接触を抑制できる。
【0075】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○主制御装置31は、検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が閾値よりも高い場合に、通知を行わなくてもよい。
【0076】
○主制御装置31は、検知領域AA2に障害物が存在している状態でフォークリフト10が後方に向けて走行しており、かつ、フォークリフト10の車速が閾値よりも高い場合、ランプ58やブザー59による通知を行い、減速による通知を行わなくてもよい。
【0077】
○主制御装置31は、障害物が人か物体かによって異なる制御を行わなくてもよい。詳細にいえば、主制御装置31は、ステップS13の処理を行わなくてもよい。この場合、主制御装置31は、通知条件が成立した場合に、接近通知を行うようにしてもよい。即ち、主制御装置31は、障害物が物体であっても人であっても接近通知を行うようにしてもよい。同様に、主制御装置31は、通知条件が成立した場合に、ステップS15の警告通知を行うようにしてもよい。この場合、障害物検知装置55は、障害物が人か否かの判定を行わなくてもよい。
【0078】
○特定条件は、検知領域AA2に障害物が存在している場合に成立する条件であれば、任意の条件を設定することができる。通知条件は、2つの障害物同士の間で荷役作業を行う場合に、後方の障害物への接近を操作者に認識させるために設定された条件である。これに対し、特定条件は、2つの障害物同士の間とは異なる場所でフォークリフト10が走行している場合等、種々の状況を想定して設定することができる。特定条件を設定することで、種々の状況で通知を行うことができる。なお、特定条件は、複数設定されていてもよい。この場合、複数の特定条件毎に、成立した場合に行われる通知態様を異ならせてもよい。
【0079】
○特定条件は設定されていなくてもよい。
○通知条件が成立した場合の通知と特定条件が成立した場合の通知とで通知態様を同一にしてもよい。この場合、特定条件が成立した場合の通知は、ステップS14の接近通知であってもよいし、ステップS15の警告通知であってもよい。
【0080】
○通知部としては、ランプ58、ブザー59及び主制御装置31による車速制限機能の少なくともいずれかを備えていればよい。また、通知部としては、操作者に通知を行うことができるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、操作者が視認可能な表示部に表示を行うことで通知を行ってもよい。
【0081】
○ステップS14、ステップS15及びステップS22で行われる通知は、任意の態様で行うことができる。例えば、減速のみで通知を行ってもよいし、ランプ58を点灯させることで通知を行ってもよい。
【0082】
○ランプ58の取付位置は任意である。ランプ58は、フロントピラー16にのみ設けられていてもよいし、リアピラー17にのみ設けられていてもよい。ランプ58は、荷役装置20など、操作者が視認可能な位置であれば、どのような位置に設けられていてもよい。
【0083】
○ランプ58は、少なくとも1つ設けられていればよい。この場合、ランプ58は、2つのフロントピラー16のいずれかに設けられることが好ましい。
○
図9に示すように、ランプ70は棚SH1,SH2に設けられていてもよい。この場合、通知条件が成立した場合に、主制御装置31は、棚SH1,SH2のランプ70を点滅させる。棚SH1,SH2にランプ70を設ける場合、棚SH1,SH2には、ランプ70を点滅させるための制御装置が設けられる。棚SH1,SH2にランプ70を設ける場合、フォークリフト10及び棚SH1,SH2はそれぞれ互いに通信可能な無線ユニットを備える。無線ユニットとしては、例えば、近距離無線通信を行うものが挙げられる。一例として、Bluetooth(登録商標)を用いる場合について説明を行う。
【0084】
無線通信ユニットは、無線信号のRSSI値を検知可能である。RSSI(Received Signal Strength Indication)値とは、無線信号の受信強度を示す値である。棚SH1,SH2に設けられた無線通信ユニットは、周期的に接続要求信号を送信している。フォークリフト10に設けられた無線ユニットは、接続要求信号を受信すると、接続要求信号のRSSI値を検知する。RSSI値は、フォークリフト10の無線通信ユニットと棚SH1,SH2との無線通信ユニットとが近いほど大きくなる。従って、接続要求信号のRSSI値は、フォークリフト10と棚SH1,SH2との離間距離を表しているともいえる。
【0085】
フォークリフト10の無線通信ユニットは、RSSI値が閾値以上の接続要求信号を受信すると、当該接続要求信号を送信した無線通信ユニットとペアリングを行う。RSSI値の閾値としては、荷役作業を行うためにフォークリフト10が棚SH1,SH2に近付いた際に、当該棚SH1,SH2に設けられた無線通信ユニットとフォークリフト10の無線通信ユニットとのペアリングが行われるように設定されている。
【0086】
主制御装置31は、通知条件が成立すると、フォークリフト10の無線通信ユニットから棚SH1,SH2の無線通信ユニットに指令を送信する。この指令は、ランプ70の点滅を指示する指令である。棚SH1,SH2の無線通信ユニットが指令を受信すると、棚SH1,SH2に設けられた制御装置はランプ70を点滅させる。これにより、フォークリフト10の前方に存在する棚SH1,SH2のランプ70を点滅させることができる。主制御装置31は、棚SH1,SH2のランプ70を点滅させた後には、任意のタイミングでペアリングを解除することができる。
【0087】
○検知装置51は、ステレオカメラ52に代えて、ToF(Time of Flight)カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、又はミリ波レーダーを備えていてもよい。TOFカメラは、カメラと、光を照射する光源と、を備え、光源から照射された光の反射光を受光するまでの時間からカメラによって撮像された画像の画素毎に奥行き方向の距離を導出するものである。LIDARは、照射角度を変更しながらレーザーを照射し、レーザーが当たった部分から反射された反射光を受光することで周辺環境を認識可能な距離計である。ミリ波レーダーとは、所定の周波数帯域の電波を周囲に照射することで周辺環境を認識可能なものである。ステレオカメラ52、ToFカメラ、LIDAR、及びミリ波レーダーは、ワールド座標系における3次元座標を計測することができるセンサである。検知装置51としては、3次元座標を計測することができるセンサを備えることが好ましい。検知装置51が3次元座標を計測できるセンサを備える場合、障害物検知装置55は、予め機械学習を行った人判定器を用いることで、障害物が人か物体かの判定を行うことができる。なお、検知装置51は、ステレオカメラ52とLIDAR等、複数のセンサを組み合わせたものを備えていてもよい。
【0088】
また、検知装置51は、ステレオカメラ52に代えて、水平面を表す座標面であるXY平面での障害物の座標を計測することができるセンサを備えていてもよい。即ち、センサとしては、障害物の2次元座標を計測することができるものを用いてもよい。この種のセンサとしては、例えば、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーの照射を行う2次元のLIDAR等を用いることができる。
【0089】
○検知装置51としては、超音波センサを用いてもよい。
○障害物検知装置55は、ステレオカメラ52によって撮像された画像のうち比較画像を用いて、障害物が人か否かの判定を行うようにしてもよい。障害物の座標は、基準画像から導出されているため、障害物の座標から比較画像上での障害物の座標を導出すると、基線長に応じたずれが生じる。このため、障害物検知装置55は、基線長に応じて比較画像上での障害物の座標を補正し、補正した座標に対して人判定処理を行う。
【0090】
○障害物検知装置55としての機能を主制御装置31が備えていてもよい。この場合、フォークリフトの通知装置30は、障害物検知装置55を備えていなくてもよい。
○ステレオカメラ52は、3つ以上のカメラを備えていてもよい。
【0091】
○ランプ58及びブザー59は、主制御装置31が直接作動させるようにしてもよい。
○フォークリフト10は、駆動装置であるエンジンの駆動によって走行するものでもよい。この場合、走行制御装置43は、エンジンへの燃料噴射量などを制御する装置となる。
【0092】
○フォークリフト10は、立席タイプのものであってもよい。この場合、フォークリフト10は運転席19を備えない。この場合の搭乗位置は、操作者がフォークリフト10の操作を行う位置である。
【0093】
○フォークリフト10は、1つの走行用モータで2つの駆動輪12を回転させるものであってもよい。
○通知制御部は、主制御装置31とは異なる装置であってもよい。通知制御部は、例えば、障害物検知装置55であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
AA2…検知領域、10…フォークリフト、30…フォークリフトの通知装置、31…取得部、通知部及び通知制御部としての主制御装置、51…検知装置、58…通知部としてのランプ、59…通知部としてのブザー。