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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20231205BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20231205BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K49/10 A
H02K7/10 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020141639
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2021092311
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019221191
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河田 真治
(72)【発明者】
【氏名】中島 登志久
(72)【発明者】
【氏名】洗 津
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015223338(DE,A1)
【文献】特開2018-78777(JP,A)
【文献】特開平08-312821(JP,A)
【文献】特開2009-281497(JP,A)
【文献】特開2010-106940(JP,A)
【文献】特公昭48-24967(JP,B1)
【文献】特表2016-533706(JP,A)
【文献】特開2001-95227(JP,A)
【文献】特開2003-244931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 49/10
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記駆動側回転体、回転方向に複数配置された前記磁気伝達部、及び前記従動側回転体は、軸方向に対向するように構成され、
前記隔壁部材は、一部に凹状部(34b)を有し、
前記磁気伝達部は、前記隔壁部材の凹状部の底面部分(34c)に構成され、
前記隔壁部材の前記凹状部は、前記底面部分と周面部分(34g)とを有しており、
前記磁気伝達部は、前記凹状部の底面部分に位置し実質的な磁気伝達を行う伝達部位(46d)と、前記伝達部位から略直角に屈曲し前記周面部分に位置する周壁部位(46e)とを含み、
前記隔壁部材における前記凹状部の前記底面部分と前記周面部分との間の屈曲部(34h)の曲率を、前記磁気伝達部の前記伝達部位と前記周壁部位との間の屈曲部位(46f)の曲率よりも大きくして構成された、駆動伝達装置。
【請求項2】
駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は略直方体形状をなし径方向に沿って配置されるものであって、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の径方向内側端部である応力集中箇所(46g)の周囲に曲面形状の窪み部(34j)を設けて構成された、駆動伝達装置。
【請求項3】
駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記隔壁部材は、被固定部材(42,31)に対して自身の固定に用いる周縁板部(34a)を有し、
前記磁気伝達部は、前記周縁板部に延出する延出部(46h)を有して構成され、
前記磁気伝達部は、前記延出部に嵌合部(46i)を有し、
前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の前記嵌合部を用いて前記被固定部材に対して凹凸嵌合させて構成された、駆動伝達装置。
【請求項4】
回転駆動するモータ(40,40x)と、
駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記駆動側回転体、回転方向に複数配置された前記磁気伝達部、及び前記従動側回転体は、軸方向に対向するように構成され、
前記隔壁部材は、一部に凹状部(34b)を有し、
前記磁気伝達部は、前記隔壁部材の凹状部の底面部分(34c)に構成され、
前記隔壁部材の前記凹状部は、前記底面部分と周面部分(34g)とを有しており、
前記磁気伝達部は、前記凹状部の底面部分に位置し実質的な磁気伝達を行う伝達部位(46d)と、前記伝達部位から略直角に屈曲し前記周面部分に位置する周壁部位(46e)とを含み、
前記隔壁部材における前記凹状部の前記底面部分と前記周面部分との間の屈曲部(34h)の曲率を、前記磁気伝達部の前記伝達部位と前記周壁部位との間の屈曲部位(46f)の曲率よりも大きくして構成された、駆動装置。
【請求項5】
回転駆動するモータ(40,40x)と、
駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は略直方体形状をなし径方向に沿って配置されるものであって、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の径方向内側端部である応力集中箇所(46g)の周囲に曲面形状の窪み部(34j)を設けて構成された、駆動装置。
【請求項6】
回転駆動するモータ(40,40x)と、
駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、
前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、
前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、
前記隔壁部材は、被固定部材(42,31)に対して自身の固定に用いる周縁板部(34a)を有し、
前記磁気伝達部は、前記周縁板部に延出する延出部(46h)を有して構成され、
前記磁気伝達部は、前記延出部に嵌合部(46i)を有し、
前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の前記嵌合部を用いて前記被固定部材に対して凹凸嵌合させて構成された、駆動装置。
【請求項7】
前記隔壁部材は、凹部(34d)又は貫通孔(34f)を有し、
前記磁気伝達部は、一部又は全部が磁性金属材料よりなる磁気伝達体(46)であり、前記凹部又は貫通孔に組み付けられて構成された、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記隔壁部材は、凹部又は貫通孔を有し、
前記磁気伝達部は、前記凹部又は貫通孔に対する磁性金属材料を用いた磁気伝達体の直接成形にて構成された、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記隔壁部材は、貫通孔を有し、
前記磁気伝達体は、前記貫通孔に組み込まれるものであり、
前記貫通孔を少なくとも閉塞するカバー部材(36)が前記隔壁部材に対して装着されて構成された、請求項又は請求項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記磁気伝達部は、一部又は全部が磁性金属材料よりなる磁気伝達体であり、
前記隔壁部材は、前記磁気伝達体に対する非磁性の樹脂材料の成形にて構成された、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
複数の前記磁気伝達体は、互いが連結部(46a,46b,46c)にて連結されて全体で1つの部品として構成された、請求項から請求項10のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
複数の前記磁気伝達部は、前記隔壁部材の強度を高めるべく、電気角が360°のもの同士が連結部分(46j)にて連結されて構成された、請求項から請求項11のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記隔壁部材は、自身の変形を抑制すべく、自身若しくは周囲部材(42)に設けた支持部(34k,42c,51)にて支持されて構成された、請求項から請求項12のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の連結部分の位置する部位が前記周囲部材に設けた前記支持部にて支持されて構成された、請求項12に従属の請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
複数の前記磁気伝達部は、隣接するもの同士が対向する面(46l)が一部切り欠かれた切欠部(46m,46n)を有して構成された、請求項から請求項14のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気継手を含む駆動伝達装置及び駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隔壁部材を挟んで駆動伝達を行う駆動伝達装置として、非接触で回転駆動力の伝達が可能な磁気継手が周知である。磁気継手は、隔壁部材を挟んで配置される駆動側回転体と従動側回転体とが磁気連結されてなり、駆動側回転体の回転に伴って従動側回転体が連れ回りすることで、被駆動対象に回転駆動力を伝達するものである。
【0003】
また、被駆動対象に伝達する回転を減速する必要がある場合には、従動側回転体の後段にその従動側回転体の回転を減速するギヤ減速部が備えられるものもある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-72449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記磁気継手及び減速部等の2つの機能を有する駆動伝達装置において、伝達効率、静粛性、長寿命等の性能面の向上や、構成部品の共用化が図れないか等の検討を行っていた。
【0006】
本発明の目的は、高性能化及び部品共用化を図り得る駆動伝達装置及び駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記駆動側回転体、回転方向に複数配置された前記磁気伝達部、及び前記従動側回転体は、軸方向に対向するように構成され、前記隔壁部材は、一部に凹状部(34b)を有し、前記磁気伝達部は、前記隔壁部材の凹状部の底面部分(34c)に構成され、前記隔壁部材の前記凹状部は、前記底面部分と周面部分(34g)とを有しており、前記磁気伝達部は、前記凹状部の底面部分に位置し実質的な磁気伝達を行う伝達部位(46d)と、前記伝達部位から略直角に屈曲し前記周面部分に位置する周壁部位(46e)とを含み、前記隔壁部材における前記凹状部の前記底面部分と前記周面部分との間の屈曲部(34h)の曲率を、前記磁気伝達部の前記伝達部位と前記周壁部位との間の屈曲部位(46f)の曲率よりも大きくして構成される。
また、上記課題を解決する駆動伝達装置は、駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は略直方体形状をなし径方向に沿って配置されるものであって、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の径方向内側端部である応力集中箇所(46g)の周囲に曲面形状の窪み部(34j)を設けて構成される。
また、上記課題を解決する駆動伝達装置は、駆動側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記隔壁部材は、被固定部材(42,31)に対して自身の固定に用いる周縁板部(34a)を有し、前記磁気伝達部は、前記周縁板部に延出する延出部(46h)を有して構成され、前記磁気伝達部は、前記延出部に嵌合部(46i)を有し、前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の前記嵌合部を用いて前記被固定部材に対して凹凸嵌合させて構成される。
【0008】
また、上記課題を解決する駆動装置は、回転駆動するモータ(40,40x)と、駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記駆動側回転体、回転方向に複数配置された前記磁気伝達部、及び前記従動側回転体は、軸方向に対向するように構成され、前記隔壁部材は、一部に凹状部(34b)を有し、前記磁気伝達部は、前記隔壁部材の凹状部の底面部分(34c)に構成され、前記隔壁部材の前記凹状部は、前記底面部分と周面部分(34g)とを有しており、前記磁気伝達部は、前記凹状部の底面部分に位置し実質的な磁気伝達を行う伝達部位(46d)と、前記伝達部位から略直角に屈曲し前記周面部分に位置する周壁部位(46e)とを含み、前記隔壁部材における前記凹状部の前記底面部分と前記周面部分との間の屈曲部(34h)の曲率を、前記磁気伝達部の前記伝達部位と前記周壁部位との間の屈曲部位(46f)の曲率よりも大きくして構成される。
また、上記課題を解決する駆動装置は、回転駆動するモータ(40,40x)と、駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は略直方体形状をなし径方向に沿って配置されるものであって、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の径方向内側端部である応力集中箇所(46g)の周囲に曲面形状の窪み部(34j)を設けて構成される。
また、上記課題を解決する駆動装置は、回転駆動するモータ(40,40x)と、駆動側である前記モータ側から従動側に回転駆動力を伝達すべく、駆動側回転体(45)と従動側回転体(47)とを隔壁部材(34)を介して非接触で磁気連結する磁気継手としての機能と、被駆動対象(33)に伝達する回転を変速する変速部としての機能とを有する駆動伝達装置(41)とを備える駆動装置(32)であって、前記駆動伝達装置は、回転方向に複数の磁石磁極(45n,45s)を有する前記駆動側回転体と、前記駆動側回転体の磁石磁極にて励磁可能であり前記回転方向に互いに磁気分離して配置される複数の磁気伝達部(46,46x)と、前記回転方向に複数の磁石磁極(47n,47s)を有し前記磁気伝達部を介した前記駆動側回転体の磁石磁極の回転動作に応答して回転する前記従動側回転体とを備え、前記駆動側回転体の磁極数、前記磁気伝達部の数及び前記従動側回転体の磁極数を異ならせることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間において回転変速を行う磁気変速部としての機能も有して構成され、前記磁気伝達部は、その一部又は全部が一体的に前記隔壁部材に組み込まれて構成されるものであり、前記隔壁部材は、被固定部材(42,31)に対して自身の固定に用いる周縁板部(34a)を有し、前記磁気伝達部は、前記周縁板部に延出する延出部(46h)を有して構成され、前記磁気伝達部は、前記延出部に嵌合部(46i)を有し、前記隔壁部材は、前記磁気伝達部の前記嵌合部を用いて前記被固定部材に対して凹凸嵌合させて構成される。
【0009】
上記各構成によれば、駆動伝達装置は、磁気伝達部を介した駆動側回転体と従動側回転体との磁気連結による回転伝達が行われる磁気継手としての機能と、駆動側回転体から磁気伝達部を介した従動側回転体への回転伝達の際に変速も行われる磁気変速部としての機能とを有し、両機能を駆動側回転体及び従動側回転体と磁気伝達部との共通部品にて実現可能である。また、磁気変速部は非接触であるため高い静粛性や長寿命はもとより、駆動側回転体と従動側回転体との間に介在する隔壁部材に磁気伝達部の一部又は全部が組み込まれることで駆動側回転体と従動側回転体との間の磁気連結が効率的であり、高い伝達効率が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における駆動装置を備える冷凍サイクル装置の構成図。
図2】駆動伝達装置を備える駆動装置の構成図。
図3】(a)~(c)は、駆動伝達装置の構成図。
図4】(a)~(c)は、駆動伝達装置の動作説明図。
図5】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図6】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図7】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図8】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図9】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図10】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図11】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図12】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図13】(a)~(c)は、変更例における磁気伝達体の構成図。
図14】変更例におけるロータ及び駆動側回転体の構成図。
図15】変更例におけるロータ及び駆動側回転体の構成図。
図16】変更例における従動側回転体の構成図。
図17】変更例における従動側回転体の構成図。
図18】変更例における駆動装置の構成図。
図19】変更例における駆動装置の構成図。
図20】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図21】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図22】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図23】(a)(b)は、変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図24】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図25】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図26】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図27】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図28】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図29】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図30】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図31】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
図32】変更例における磁気伝達体を有する封止板の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、駆動伝達装置及び駆動装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の熱交換器10は、ハイブリッド車、EV車等の電動車両の空調用の冷凍サイクル装置Dに用いられる。冷凍サイクル装置Dは、ヒートポンプサイクル装置である。冷凍サイクル装置Dを備えた車両空調装置は、エバポレータ14によって冷やした空気を車室内に送風する冷房モードと、ヒータコア15によって温めた空気を車室内に送風する暖房モードとを切り替え可能に構成されている。即ち、冷凍サイクル装置Dの冷媒循環回路Daは、冷房モードに対応した循環回路である冷房循環経路βと、暖房モードに対応した循環回路である暖房循環経路αとに切り替え可能に構成されている。なお、冷凍サイクル装置Dの冷媒循環回路Daに流通される冷媒としては、例えばHFC系冷媒やHFO系冷媒を用いることができる。また、冷媒には、コンプレッサ11を潤滑するためのオイルが含まれることが好ましい。
【0013】
冷凍サイクル装置Dは、冷媒循環回路Daにおいて、コンプレッサ11と、水冷コンデンサ12と、熱交換器10と、膨張弁13と、エバポレータ14とを備えている。
コンプレッサ11は、車室外のエンジンルームに配置される電動式圧縮機であって、気相冷媒を吸引して圧縮し、それにより高温高圧となった気相冷媒を水冷コンデンサ12側に吐出する。コンプレッサ11から吐出された高温高圧の気相冷媒は、水冷コンデンサ12内に流入する。なお、コンプレッサ11の圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構やベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を用いることができる。また、コンプレッサ11は、冷媒吐出能力が制御されるようになっている。
【0014】
水冷コンデンサ12は周知の熱交換器であって、冷媒循環回路Da上に設けられた第1熱交換部12aと、冷却水循環装置における冷却水の循環回路C上に設けられた第2熱交換部12bとを備える。なお、循環回路C上には、前記ヒータコア15が設けられている。水冷コンデンサ12は、第1熱交換部12a内を流れる気相冷媒と第2熱交換部12b内を流れる冷却水との間で熱交換させる。即ち、水冷コンデンサ12では、第1熱交換部12a内の気相冷媒の熱によって第2熱交換部12b内の冷却水が加熱される一方、第1熱交換部12a内の気相冷媒が冷却されるようになっている。従って、水冷コンデンサ12は、コンプレッサ11から吐出され第1熱交換部12aに流入した冷媒が持つ熱を、冷却水とヒータコア15とを介して車両空調装置の送風空気に放熱させる放熱器として機能する。
【0015】
水冷コンデンサ12の第1熱交換部12aを通過した気相冷媒は、後述の統合弁装置24を介して熱交換器10に流入する。熱交換器10は、車室外のエンジンルーム内における車両前方側に配置される室外熱交換器であり、熱交換器10の内部を流通する冷媒と外気との間で熱交換させるものである。
【0016】
熱交換器10は、具体的には、第1熱交換部21と、過冷却器として機能する第2熱交換部22とを備える。更に、熱交換器10は、第1及び第2熱交換部21,22と連結された貯液器23と、貯液器23に設けられた統合弁装置24とが一体に構成されてなる。第1熱交換部21の流入路21a及び流出路21bは、統合弁装置24と連通されている。また、第2熱交換部22の流入路22aは、貯液器23及び統合弁装置24と連通されている。
【0017】
第1熱交換部21は、内部に流通する冷媒の温度に応じて凝縮器又は蒸発器として機能する。貯液器23は気相冷媒と液相冷媒とを分離し、その分離した液相冷媒が貯液器23内に貯まるように構成されている。第2熱交換部22は、貯液器23から流入した液相冷媒と外気との間で熱交換させることで液相冷媒を更に冷却して冷媒の過冷却度を高め、その熱交換後の冷媒を膨張弁13へと流す。なお、第1熱交換部21、第2熱交換部22及び貯液器23は、例えばボルト締結にて相互に連結されることで一体的に構成されている。
【0018】
統合弁装置24は、貯液器23内に配置される弁本体部25と、弁本体部25を駆動させるためのモータ26とを備える電動式の弁装置である。モータ26の一例としては、ステッピングモータである。統合弁装置24は、暖房モード時において、水冷コンデンサ12の第1熱交換部12aと第1熱交換部21の流入路21aとを連通すると共に、第1熱交換部21の流出路21bを直接的にコンプレッサ11と連通させる暖房循環経路αを確立させる。また、統合弁装置24は、冷房モード時において、水冷コンデンサ12の第1熱交換部12aと第1熱交換部21の流入路21aとを連通すると共に、第1熱交換部21の流出路21bを第2熱交換部22、膨張弁13及びエバポレータ14を介してコンプレッサ11と連通させる冷房循環経路βを確立させる。停止時における統合弁装置24は、何れの流路も閉弁状態とする。つまり、統合弁装置24は、モータ26の駆動により弁本体部25を動作させて、停止、暖房モード及び冷房モードの各状態に合った動作切り替えを行っている。
【0019】
膨張弁13は、熱交換器10から供給された液相冷媒を減圧膨張させる弁である。膨張弁13は、後述のモータ40により動作可能とした電動式の膨張弁装置30として一体的に構成されている。モータ40の一例としては、ブラシレスモータである。膨張弁13は、低温高圧状態の液相冷媒を減圧してエバポレータ14に供給する。
【0020】
エバポレータ14は、冷房モード時において送風空気を冷却する蒸発器として機能する冷却用熱交換器である。膨張弁13からエバポレータ14に供給された液相冷媒は、車両空調装置のダクト内のエバポレータ14周辺の空気と熱交換する。この熱交換によって、液相冷媒が気化し、エバポレータ14周辺の空気が冷却される。その後、エバポレータ14内の冷媒はコンプレッサ11に向けて流出され、コンプレッサ11で再び圧縮される。
【0021】
膨張弁装置30は、図2に示すように、基台ブロック31内に構成される膨張弁13と、基台ブロック31に対して一体的に固定されて膨張弁13を駆動する駆動装置32とを備える。
【0022】
膨張弁装置30の基台ブロック31には、第2熱交換部22側からエバポレータ14側に冷媒を流入させる流入路31aが設けられている。流入路31aは、断面円形の通路形状をなしている。ここで、基台ブロック31は、略直方体形状をなしており、駆動装置32が固定される一面を上面31xとした場合(以降、基台ブロック31が下側、駆動装置32が上側として説明する)、流入路31aは、一方側の側面31y1からその反対側の側面31y2に向けて貫通して形成されている。
【0023】
基台ブロック31における流入路31aの途中には、流入路31a自身の延びる方向と直交する上下方向に延びる縦通路31bが設けられ、縦通路31bの上側と連通する断面円形状の弁収容穴31d内に弁体33が収容されている。弁体33は、下方に向けられた先端部33aが尖った針状の弁体である。即ち、ニードル弁にて構成される膨張弁13は、弁体33が自身の軸方向(図2では上下方向)に沿って進退することで、先端部33aが縦通路31bの開口部31cを開閉し、流入路31aにおける冷媒の流通を許容・遮断し、更には流通量を調整する。
【0024】
弁体33は、上記先端部33aの他、中間部に雄ネジ部33bと、基端部に後述の駆動伝達部41を構成する従動側回転体47と連結するための連結部33cとを備える。雄ネジ部33bは、弁収容穴31dの内周面に形成された雌ネジ部31eと螺合し、弁体33自身の回転を弁体33の軸方向、即ち上下方向への直動動作に変換する。連結部33cは、従動側回転体47からの回転動作を弁体33に伝達しつつ、弁体33の直動動作を許容するように従動側回転体47と連結する。弁体33の直動動作は、膨張弁13の開閉動作である。なお、従動側回転体47は、弁収容穴31dの上端と連通する回転体収容凹部31fに収容されている。
【0025】
基台ブロック31の上面31xには、従動側回転体47を収容した状態での回転体収容凹部31fの開口部31gを閉塞して封止する封止板34が固定ネジ(図示略)にて固定されている。封止板34は、非磁性金属材料(例えば非磁性SUS材料)の板材のプレス加工や同材料の板状ブロック材の切削加工等にて作製されている。封止板34は、基台ブロック31の上面31xに配置される周縁板部34aから中央部が略円形状に窪む凹状部34bを有している。封止板34の凹状部34bは、凹状をなす側とは反対側から見ると膨出部となっている。基台ブロック31の開口部31g及び回転体収容凹部31fは円形状をなしており、封止板34の凹状部34bは開口部31gから回転体収容凹部31f内に挿入される。封止板34の凹状部34b内には、駆動伝達部41を構成する駆動側回転体45が収容される態様にて配置される。つまり、駆動側回転体45の配置位置が基台ブロック31側に偏倚するため、駆動側回転体45を含む駆動装置32の基台ブロック31からの突出量が小さく抑えられることに寄与している。
【0026】
また、封止板34は、凹状部34bの底面部分に相当する円形状の隔壁面部34cが駆動側回転体45と従動側回転体47との間に介在し、駆動側回転体45が位置する駆動装置32側と従動側回転体47が位置する基台ブロック31側とを仕切る隔壁として機能する。封止板34は、隔壁として機能し、基台ブロック31側で扱われる冷媒が駆動装置32側に浸入しないようにしている。更に、封止板34の凹状部の外周面に環状のシール部材35が密着して装着され、基台ブロック31の開口部31gとも密着する。シール部材35を用いることで、基台ブロック31の開口部31gがより確実な封止状態なる。
【0027】
また、封止板34の凹状部34bにおける隔壁面部34cには、駆動伝達部41の一部を構成する磁気伝達体46が一体に組み付けられている。磁気伝達体46は、磁性金属板材や磁性金属粉体等を用いて作製されている。磁気伝達体46は、軸方向視で扇状、軸直交方向視で矩形状をなすブロック状をなしている。磁気伝達体46は、複数個用いられ(図3(b)参照)、周方向に等間隔に配置されている。この場合、封止板34の隔壁面部34cには、磁気伝達体46と同数で同形状、同位置となるような組付凹部34dが設けられている。また、組付凹部34dは、駆動側回転体45側が開口、従動側回転体47側が薄肉部34eにて閉塞されている。
【0028】
そして、磁気伝達体46は、封止板34とは別に予め作製されて組付凹部34dに嵌合されて組み付けられる。磁気伝達体46は、組付凹部34dに嵌合されることで隔壁面部34cの上面と面一となっている。磁気伝達体46は、組付凹部34dに対して圧入や溶接、接着等にて固定される。このような磁気伝達体46の組み付けにより、封止板34の隔壁面部34cは、磁気伝達体46の在る磁性部分と磁気伝達体46の無い非磁性部分とが周方向に交互となるように構成されている。
【0029】
駆動装置32は、ブラシレスモータ等にて構成されるモータ40と、モータ40の駆動力を封止板34を挟んで基台ブロック31内の弁体33に伝達する駆動伝達部41とを備える。駆動装置32は、内側に収容空間を有するハウジング42が基台ブロック31の上面31xに取付ネジ(図示略)等にて固定される。ハウジング42の内周面には、モータ40のステータ43が固定され、ステータ43の下側には、同じくモータ40を構成するロータ44が回転可能に配置されている。ロータ44は、自身の回転軸(図示略)がステータ43、若しくはハウジング42に対して軸受(図示略)を用いて支持されている。
【0030】
ロータ44は、N極磁極44nとS極磁極44sとを有する複数の磁石磁極を有している。また、ロータ44は、駆動伝達部41の駆動側回転体45と一体に構成されている。ロータ44と駆動側回転体45との間には磁性板50が介在されている。
【0031】
駆動伝達部41は、ロータ44の下面側に一体に構成される駆動側回転体45と、封止板34に一体に組み付けられる磁気伝達体46と、封止板34を挟んで駆動側回転体45とは反対側に配置される従動側回転体47とを備える。ロータ44を含むモータ40、駆動伝達部41の駆動側回転体45、円環状に配置される磁気伝達体46及び従動側回転体47は、膨張弁13の弁体33の軸線上に並んで配置されている。
【0032】
駆動伝達部41は、駆動側回転体45、磁気伝達体46及び従動側回転体47を用いた磁気継手としての機能とともに、磁気減速部としての機能も有している。
図3(a)~(c)に示すように、駆動側回転体45は、下面側の磁気対向面45xにおける外周側環状領域において、N極磁極45nとS極磁極45sとの2極(磁極数は「2」、極対数は「1」)の磁石磁極が180°角度範囲ずつ等角度間隔に設けられている。駆動側回転体45は、下面中央部に封止板34の隔壁面部34cと当接する半球状の軸方向受け部45aを有するが、それ以外の部分は所定の隙間を有している。
【0033】
磁気伝達体46を有する封止板34の隔壁面部34cは、駆動側回転体45の下面と軸方向に対向している。磁気伝達体46は、封止板34の隔壁面部34cの外周側環状領域、即ち駆動側回転体45の磁極45n,45sと軸方向に対向する外周側環状領域に6個配置されている。磁気伝達体46は、周方向に等間隔に互いに離間し磁気分離して配置されている。この場合、磁気伝達体46は、自身が30°の角度範囲の扇状をなしており、隣接する磁気伝達体46の間隔についても、それぞれ30°の間隔を有して配置されている。つまり、この磁気伝達体46を有する封止板34の隔壁面部34cにおいては、磁気伝達体46の在る磁性部分と磁気伝達体46の無い非磁性部分とが周方向に交互に30°角度範囲ずつ等角度間隔に構成されている。
【0034】
従動側回転体47は、磁気伝達体46を有する封止板34の隔壁面部34cの下面と軸方向に対向している。従動側回転体47は、上面側の磁気対向面47xにおける外周側環状領域、即ち磁気伝達体46と軸方向に対向する外周側環状領域に5つのN極磁極47nと5つのS極磁極47sとの合計10極(磁極数は「10」、極対数は「5」)の磁石磁極が交互に36°角度範囲ずつ等角度間隔に設けられている。従動側回転体47は、上面中央部に封止板34の隔壁面部34cと当接する半球状の軸方向受け部47aを有するが、それ以外の部分は所定の隙間を有している。従動側回転体47は、封止板34の下面側の基台ブロック31の回転体収容凹部31f内に収容されている。
【0035】
このように構成される駆動伝達部41は、図4(a)~(c)に示すようにして動作する。以下では、駆動側回転体45のN極磁極45nに着目して説明する。因みに、本実施形態の駆動側回転体45、磁気伝達体46を有する封止板34及び従動側回転体47の構成から、駆動側回転体45の180°範囲のN極磁極45nは、磁気伝達体46を有する封止板34においては3つの磁気伝達体46の在る磁性部分とその間の3つの非磁性部分とを含む角度範囲に相当し、従動側回転体47においては3つのS極磁極47sと2つのN極磁極45nとを含む角度範囲に相当する。
【0036】
図4(a)に示す状態は、駆動側回転体45のN極磁極45nの範囲に対向する3つの磁気伝達体46がそれぞれN極に励磁され、3つ並びの真ん中の磁気伝達体46がN極磁極45nの磁極中心に位置し、更に従動側回転体47の3つ並びの真ん中のS極磁極47sが真ん中の磁気伝達体46と対向して位置している。従動側回転体47に回転力が生じない安定した状態である。そして、モータ40の駆動により駆動側回転体45が磁気伝達体46を1つ分回転すると(矢印R1)、図4(b)に示す状態となる。
【0037】
図4(b)に示す状態は、磁気伝達体46において回転方向側に1つずれた3つ並びの真ん中の磁気伝達体46が駆動側回転体45のN極磁極45nの磁極中心となった状態である。すると、駆動側回転体45のN極磁極45nにて励磁された3つ並びの真ん中の磁気伝達体46と、従動側回転体47の3つ並びの真ん中のS極磁極47sとが正面で対向しようとする駆動側回転体45の回転方向とは逆方向の回転力が従動側回転体47に生じる。これにより、図4(c)に示すように、従動側回転体47が駆動側回転体45の回転動作に応答して駆動側回転体45の回転方向とは逆方向に駆動側回転体45よりも小さい回転量で回転する(矢印R2)。
【0038】
そして、駆動側回転体45が連続的に回転することで上記したN極磁極45nのみならずS極磁極45sについても同様な動作が繰り返され、従動側回転体47はその駆動側回転体45とは逆方向に小さな回転量で回転する。具体的には、駆動側回転体45が磁気伝達体46の1つ分である60°回転すると、従動側回転体47は磁極47n,47sの1つ分である12°だけ逆方向に回転する。つまり、駆動側回転体45と従動側回転体47との回転比(減速比)は「5:1」であり、駆動側回転体45の回転は、磁気伝達体46を介して従動側回転体47に伝達する過程で減速・高トルク化されるようになっている。
【0039】
因みに、磁気減速部としては、駆動側回転体45の磁極の極対数を「a」、磁気伝達体46の個数を「b」、従動側回転体47の磁極の極対数を「c」とすると、次式(I)、

b=c+a・・・(I)

が成立するように駆動側回転体45及び従動側回転体47の極対数と、磁気伝達体46の個数とが設定される。磁気減速部として機能する本実施形態の駆動伝達部41では、駆動側回転体45の磁極45n,45sの極対数は「1」、磁気伝達体46の個数は「6」、従動側回転体47の磁極47n,47sの極対数は「5」であり、上記式が成立する設定である。
【0040】
なお、次式(II)、

b=c-a・・・(II)

が成立するように駆動側回転体45及び従動側回転体47の極対数と、磁気伝達体46の個数とを設定しても磁気減速部として成立する。先の式(I)が成立する本実施形態では、駆動側回転体45の回転動作に応答して従動側回転体47が逆方向に回転減速する態様であるのに対し、上記式(II)は、駆動側回転体45の回転動作に応答して従動側回転体47が同方向に回転減速する態様である。
【0041】
このような駆動伝達部41は、複数のギヤの噛み合いにて減速して駆動伝達する周知のギヤ減速部とは異なり、磁気減速により非接触で駆動伝達可能な構造をなしているため、駆動伝達の際に極めて静粛性が高いものとなっている。しかも、磁気継手として駆動側回転体45と従動側回転体47との間の駆動伝達を非接触で行えることから、本実施形態のように駆動側回転体45と従動側回転体47との間に封止板34の介在が可能である。つまり、封止板34にて基台ブロック31の開口部31gを液密に封止することが可能である。つまり、基台ブロック31の開口部31g内に存在する冷媒が、モータ40を含む駆動装置32のハウジング42内に浸入することが封止板34にて防止されている。
【0042】
なお、このような本実施形態の駆動伝達部41、ひいては本実施形態の駆動装置32としては、封止板34より上側のモータ40及び駆動側回転体45のみならず、磁気伝達体46を有する封止板34自身及び封止板34より下側の従動側回転体47を含んで構成されている。
【0043】
そして、モータ40の回転駆動を制御することで、駆動伝達部41を介して膨張弁13の弁体33の進退位置が調整され、エバポレータ14への冷媒の供給量の調整が行われる。つまり、車両空調装置の統合弁装置24と連動させて膨張弁装置30による膨張弁13の開閉制御が行われることで、車両空調装置の空調制御が行われている。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
(1)駆動伝達部41は、磁気伝達体46を介した駆動側回転体45と従動側回転体47との磁気連結による回転伝達が行われる磁気継手としての機能と、駆動側回転体45から磁気伝達体46を介した従動側回転体47への回転伝達の際に減速も行われる磁気減速部としての機能とを有し、両機能を駆動側回転体45及び従動側回転体47と磁気伝達体46との共通部品にて実現することができる。また、磁気減速は非接触であるため高い静粛性や長寿命はもとより、駆動側回転体45と従動側回転体47との間に介在する隔壁部材としての封止板34の隔壁面部34cに磁気伝達体46が組み込まれることで駆動側回転体45と従動側回転体47との間の磁気連結を効率的とすることができ、高い伝達効率が期待できる。
【0045】
(2)封止板34の隔壁面部34cの組付凹部34dに対して予め作製された磁気伝達体46が組み付ける構成のため、磁気伝達体46の組み付けと同時に位置決めもなされる。位置決めしつつの磁気伝達体46の組み付けを容易に行うことができる。また、組付凹部34dは反開口側が薄肉部34eにて閉塞されているため、封止板34の本来の封止機能を損なわなくて済む。また、磁気伝達体46と従動側回転体47との間に薄肉部34eが介在するが、薄肉部34e自身の厚みが薄いことから、磁気伝達体46と従動側回転体47との間の磁気連結を大きく損なうものではない。
【0046】
(3)封止板34の隔壁面部34cの組付凹部34dに組み付ける磁気伝達体46としては、磁性金属板材にて容易に作製可能である。また、磁気伝達体46を磁性金属粉体を用いた焼結部材や樹脂部材としても容易に構成可能であり、また磁性金属粉体を用いることで渦電流損を低減可能である。
【0047】
(4)封止板34は凹状部34bを有することから、形状的に自身の剛性は高く、封止板34の無用な変形等を抑制可能である。また、封止板34に設けた凹状部34bの外周面に環状のシール部材35を装着することで、封止板34と基台ブロック31とのそれぞれに対するシール部材35の密着は主として軸直交方向となる。封止板34は隔壁面部34cが基台ブロック31内を流れる冷媒からの圧力を軸方向に受けるが、シール部材35の密着方向と直交するため、冷媒圧を受けてもシール部材35の密着状態を良好に維持可能である。
【0048】
(5)駆動側回転体45、磁気伝達体46及び従動側回転体47が軸方向に対向する構成のため、駆動伝達部41の簡略構成に貢献でき、また駆動伝達部41、ひいては駆動装置32の軸直交方向の小型化に貢献できる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の駆動伝達部41の構成は一例であり、適宜変更してもよい。
【0050】
先ずは、磁気伝達体46を有する封止板34の変更例について記載する。例えば、磁気伝達体46の数は上記実施形態の6個に限定されるものではなく、図5(a)(b)に示すように24個用いてもよい。この場合、封止板34の隔壁面部34cにおける組付凹部34dの数も24個とする。なお、磁気伝達体46を24個とすることで、駆動伝達部41を磁気減速部として機能させるための上記式から、例えば駆動側回転体45の磁極45n,45sの極対数を「4」、従動側回転体47の磁極47n,47sの極対数を「20」とする。勿論、磁気伝達体46の個数、駆動側回転体45の磁極45n,45sの極対数、従動側回転体47の磁極47n,47sの極対数については、これら以外の数であってもよい。
【0051】
また、磁気伝達体46を予め作製し、薄肉部34eを有する組付凹部34dに組み付けた上記実施形態に限定されるものではなく、図6(a)(b)に示すように、隔壁面部34cの上面と下面とを貫通する貫通孔である組付孔34fに磁気伝達体46を組み付けてもよい。薄肉部34eを有する組付凹部34dを形成するよりも貫通形状の組付孔34fを形成する方が容易であり、封止板34を容易に作製することが可能となる。また、薄肉部34eを省略する分、磁気伝達体46を軸方向に厚くし、封止板34の隔壁面部34cの下面と面一としてもよい。このようにすれば、駆動側回転体45と磁気伝達体46との間のみならず磁気伝達体46と従動側回転体47との間についても互いに直接的な対峙となり、またより近接させることができるため、この間での磁気伝達効率をより良好とすることが可能である。なお、本態様とする場合、封止板34の封止機能を損なわないためにも磁気伝達体46周りを液密にシールするのが好ましい。
【0052】
また、図7に示すように、組付孔34fに組み付けた磁気伝達体46が封止板34の隔壁面部34cの上面と下面とのそれぞれから軸方向に突出させてもよい。このようにすれば、駆動側回転体45と磁気伝達体46との間、磁気伝達体46と従動側回転体47との間をそれぞれ直接的な対峙でかつより一層近接させることができ、この両者間での磁気伝達効率をより一層良好とすることが可能である。なお、封止板34の隔壁面部34cの上面及び下面からの磁気伝達体46の突出は一方側であってもよい。
【0053】
また、組付凹部34dの薄肉部34eを従動側回転体47のある下面側とした上記実施形態に限定されるものではなく、図8に示すように、組付凹部34dの薄肉部34eを駆動側回転体45のある上面側としてもよい。このようにすれば、磁気伝達体46と従動側回転体47との間を直接的な対峙でかつ近接させることができ、この間での磁気伝達効率を良好とすることが可能である。
【0054】
また、磁気伝達体46を磁性金属板材や磁性金属粉体等を用いて予め作製したものを組付凹部34dや組付孔34fに組み付ける態様に限らず、例えば封止板34の隔壁面部34cの組付凹部34dや組付孔34fを型とし、磁性金属粉体を含む焼結粉末を圧縮成形したり、磁性金属粉体を含む樹脂材料を流し込んだりしてもよい。このように磁気伝達体46を封止板34に対して直接成形してもよい。このようにすれば、渦電流損の低減はもとより、磁気伝達体46の組み付けの必要がなく、組付部材間の部品干渉もなく、更には磁気伝達体46とその周囲との間に隙間なく磁性部材を充填することが可能である。
【0055】
また、封止板34を例えば非磁性SUS等の非磁性金属板材のプレス加工やブロック材の切削加工等にて作製した上記実施形態に限定されるものではなく、図9及び図10(a)(b)に示すように非磁性の樹脂材料で作製してもよい。予め作製した磁気伝達体46周りに非磁性の樹脂材料を流し込むインサート成形にて封止板34を作製してもよく、図9に示す態様では、封止板34の隔壁面部34cに完全に磁気伝達体46を埋設させる構成、図10(a)(b)に示す態様では、封止板34の隔壁面部34cの上面と下面とのそれぞれで面一とし、隔壁面部34cの軸方向の面をそれぞれ露出させる構成である。このようにすれば、上記と同様、磁気伝達体46の組み付けの必要がなく、組付部材間の部品干渉もなく、更には磁気伝達体46とその周囲との間に隙間なく磁性部材を充填することが可能である。
【0056】
また、封止板34と磁気伝達体46とを別材料にて作製したが、図11に示すように、1つの材料から作製してもよい。例えば、熱又は応力を加えることで磁性相と非磁性相とに性質が変化し得るSUS板材を用い、磁性SUS板材から磁気伝達部分46x以外の部分を非磁性化させたり、非磁性SUS板材から磁気伝達部分46xを部分的に磁性化したりして、磁気伝達部分46xを一体に有する封止板34を作製してもよい。このようにすれば、部品点数の低減が図れる。
【0057】
また、組付凹部34dに薄肉部34eを設け、単体で封止板34を完全な封止部材として構成した上記実施形態に限定されるものではなく、図12(a)(b)に示すように、薄肉部34eを無くした組付孔34fを用いる封止板34に対し、例えば有底円筒状の嵌合凹部36aを有する薄板のカバー部材36を封止板34の凹状部34bの外側(この場合、従動側回転体47側)に装着させる構成としてもよい。このようにすれば、少なくとも組付孔34fがカバー部材36にて閉塞されるため、磁気伝達体46周りをシールしなくとも封止板34とカバー部材36とで完全な封止機能を持たせることが可能となる。
【0058】
また、予め作製した複数個の磁気伝達体46を個々に封止板34に組み付けた上記実施形態に限定されるものではなく、図13(a)~(c)に示すように、周方向に隣り合う磁気伝達体46同士を幅狭の連結部46a,46b,46cで互いに連結し、複数個の磁気伝達体46を全体として1つの部品として構成してもよい。因みに、図13(a)では、磁気伝達体46を内径側端部で連結する連結部46aを用いる態様、図13(b)では、磁気伝達体46を径方向中間部で連結する連結部46bを用いる態様、図13(c)では、磁気伝達体46を外径側端部で連結する連結部46cを用いる態様をそれぞれ示している。このように複数個の磁気伝達体46を一体的な部品とすることで、封止板34への組付時や部品管理等に有利である。なお、連結部46a~46cは、幅狭等として自身の磁気抵抗が大きくなるように構成される。即ち、隣接の磁気伝達体46同士で実質的に磁気分離とすることで、上記実施形態と同様の性能が得られる。
【0059】
・また、図20(a)(b)に示す封止板34は、凹状部34bの底面部分を構成する隔壁面部34cと周面部分を構成する周面部34gとにわたって連なる略L字状の磁気伝達体46が周方向に所定数、一体に組み付けられてなる。磁気伝達体46は、隔壁面部34cに位置し実質的な磁気伝達の機能を有する伝達部位46dと、伝達部位46dから略直角に屈曲し周面部34gに位置する周壁部位46eとを有している。伝達部位46dと周壁部位46eとは、その間の屈曲部位46fにて略直角に屈曲された形状をなしている。磁気伝達体46の屈曲部位46fは、封止板34の凹状部34bの隔壁面部34cと周面部34gとの間の屈曲部34hと対応している。
【0060】
ここで、封止板34の凹状部34bの屈曲部34hと、磁気伝達体46の屈曲部位46fとにおいて、それぞれの凹状内側の屈曲箇所が応力集中部であるとした場合について検討してみる。封止板34は非磁性金属若しくは非磁性樹脂にて構成、磁気伝達体46は磁性金属にて構成され、磁気伝達体46は封止板34に対して相対的に強度(耐力)が高く、換言すれば封止板34は磁気伝達体46に対して相対的に強度(耐力)が低い。仮に、封止板34の屈曲部34hと磁気伝達体46の屈曲部位46fとのそれぞれの凹状内側の屈曲箇所の曲率を同じとして、凹状部34bの内周面を周方向で面一とした場合、各屈曲箇所に同様な応力集中が生じ得る。すると、相対的に強度の低い封止板34の凹状部34bの磁気伝達体46の無い非磁性部分への負担が大きく、非磁性部分から比較的早期の破損に繋がるため、冷媒の圧力を受ける封止板34の耐圧強度を総合的に低くしかねない。
【0061】
そこで、図20において若干誇張して示すが、本態様では、非磁性材料で相対的に強度の低い封止板34の屈曲部34hの屈曲箇所の曲率が、磁性材料で相対的に強度の高い磁気伝達体46の屈曲部位46fの屈曲箇所の曲率に対して大きく設定されている。つまり、封止板34側の屈曲部34hよりも磁気伝達体46側の屈曲部位46fに応力集中が優先して生じ易い形状とし、強度の高い部材側で応力を受け止めるようにしている。このような磁気伝達体46を有する封止板34において、その耐圧強度が総合的に高められている。
【0062】
・また、図21(a)(b)に示す封止板34において、相対的に強度の低い自身の非磁性部分と、相対的に強度の高い磁性部分の磁気伝達体46とで、後者の磁気伝達体46側にて優先的に応力集中が生じ易い形状とする別の例である。本態様では、封止板34は平板形状、磁気伝達体46は略直方体形状をなし、磁気伝達体46の径方向内側端部46gと封止板34の近傍部位が応力集中部であるとした場合について検討してみる。仮に、封止板34の組付孔34iに磁気伝達体46を組み込む構成で磁気伝達体46を含めて封止板34を面一とした場合、磁気伝達体46の径方向内側端部46gと封止板34の近傍部位とに同様な応力集中が生じると、相対的に強度の低い封止板34の磁気伝達体46周りの部位への負担が大きい。
【0063】
そこで、図21において若干誇張して示すが、本態様では、非磁性材料で相対的に強度の低い封止板34において、磁気伝達体46の径方向内側端部46gの近傍部位である組付孔34iの一部を含んで封止板34の周方向に連なる窪み部34jが設けられている。窪み部34jは、断面円弧状に窪む滑らかな曲面形状をなし、磁気伝達体46の径方向内側端部46gの表面との面一を避けている。つまり、封止板34側の近傍部位よりも磁気伝達体46側の径方向内側端部46gに応力集中が優先して生じ易い形状とし、強度の高い部材側で応力を受け止めるようにしている。このような磁気伝達体46を有する封止板34であっても、その耐圧強度が総合的に高められている。
【0064】
・また、図22(a)(b)に示す封止板34は、実質的な磁気伝達を行う伝達部位46dと伝達部位46dから屈曲した周壁部位46eとを有する略L字状の磁気伝達体46を用い、伝達部位46dが凹状部34bの隔壁面部34cに、周壁部位46eが凹状部34bの周面部34gに位置して一体に組み付けられてなる。なお、本態様の封止板34では、凹状部34bの内側面が磁気伝達体46を含めて略面一となっている。また、封止板34は、周縁板部34aが駆動装置32のハウジング42と基台ブロック31とで挟まれるようにして固定されるが、磁気伝達体46の周壁部位46eから一体に設けた延出片46hをその周縁板部34a内に位置させている。延出片46hは、周壁部位46eの長手方向で伝達部位46dとは反対側端部に設けられ、更に周壁部位46eから伝達部位46dとは反対方向に延びている。延出片46hは、基台ブロック31側では露出して基台ブロック31と直接当接し、ハウジング42側では封止板34の一部にて覆われてその覆われた部分がハウジング42と当接している。
【0065】
つまり、本態様の封止板34は、相対的に強度の高い磁気伝達体46の一部を延出片46hとして封止板34自身の固定部分に位置させて、磁気伝達体46自身が主として封止板34を支え、特に冷媒の圧力を受ける凹状部34bを支える構造としている。このように本態様の封止板34は、磁気伝達体46を封止板34自身の骨格としても機能し、その耐圧強度の向上等が期待できる。
【0066】
また、図23(a)(b)に示す封止板34は、磁気伝達体46の延出片46hが周縁板部34aのハウジング42側で露出してハウジング42と直接当接している。更に、延出片46hには一体に挿入片46iが設けられ、これに対応してハウジング42の端面には嵌合孔42aが設けられている。そして、ハウジング42の装着時に封止板34の挿入片46iがハウジング42の端面の嵌合孔42aに嵌挿される凹凸嵌合となり、封止板34とハウジング42との結合がより強固となる構造としている。これによっても、封止板34の耐圧強度の向上等が期待できる。なお、封止板34の周縁板部34aの基台ブロック31側において、磁気伝達体46の延出片46hが露出して基台ブロック31と直接当接していてもよいが、他部材が介在する等して延出片46hが基台ブロック31と直接当接していなくてもよい。
【0067】
また、図24に示す封止板34を含めた構造としては、封止板34の中心部に支持柱部34kが一体に立設され、支持柱部34kの先端部がハウジング42の上底面部分に設けた装着凹部42bに装着されている。つまり、特に冷媒の圧力を受ける凹状部34bの隔壁面部34cを自身の支持柱部34kとハウジング42とで支えて変形を抑制する構造とすることで、封止板34の耐圧強度の向上等が期待できる。
【0068】
また、図25に示す封止板34を含めた構造では、ハウジング42の上底面部分に支持柱部42cが一体に立設され、支持柱部42cの先端部が封止板34における凹状部34bの隔壁面部34cの中心部に当接している。つまり、凹状部34bの隔壁面部34cをハウジング42の支持柱部42cにて支える構造として、封止板34の耐圧強度の向上等を図る変更例である。
【0069】
また、図26に示す封止板34を含めた構造では、封止板34とハウジング42とは別に支持柱部材51を用意し、ハウジング42の上底面部分に設けた装着筒部42dに支持柱部材51が装着されている。支持柱部材51は、装着筒部42dに対して所定の力以上で挿入移動でき、それ未満では移動不能に保持されるようになっている。そして、支持柱部材51の先端部が封止板34における凹状部34bの隔壁面部34cの中心部に当接し、支持柱部材51にて凹状部34bの隔壁面部34cが支えられる。本態様は、封止板34の耐圧強度の向上等を図る変更例であるとともに、支持柱部材51の挿入位置が調整できる構造であるため、個々の寸法誤差等の事情に容易に対応可能である。
【0070】
また、図27に示す封止板34を含めた構造では、上記同様に支持柱部材51を用い、支持柱部材51の先端部が平板形状の封止板34の中心部に当接して支えて、封止板34の耐圧強度の向上等を図る変更例である。なお、上記した図24図27の態様でのハウジング42の内部構成は、図面が煩雑となるのを防止するために省略している。
【0071】
また、図28に示す平板形状の封止板34において、周方向に所定数並設される磁気伝達体46のうちで、電気角が360°の位相差を有するもの同士、すなわち図28の態様では機械角で90°のもの同士が封止板34の径方向内側において互い連結される連結部分46jが設けられている。連結部分46jは十字状をなし、封止板34の中心部にその交差が位置している。連結部分46jは、磁気的な影響を生じさせることなく封止板34の強度を高め、封止板34の耐圧強度の向上等が期待できる。
【0072】
また、図29に示す平板形状の封止板34では、磁気伝達体46の十字状の連結部分46jの交差点である封止板34の中心部が、上記した図25の態様のハウジング42に一体の支持柱部42c、若しくは図26及び図27の態様のハウジング42に装着の支持柱部材51の先端部に当接する構造である。これにより、封止板34の耐圧強度の一層の向上等が期待できる。
【0073】
また、封止板34の耐圧強度を高めるために自身の厚みを大きくして対応する場合、図30図31及び図32に示すように、磁気伝達体46を背高に構成する必要がある。一方で、磁気伝達体46の周方向の配置位置は極数で決まっており、磁気伝達体46の磁気伝達面46kは最低限の大きさが必要である。すると、周方向で隣り合う磁気伝達体46の間での磁束漏れが増加することが懸念される。これを考慮し、図30に示す磁気伝達体46は、磁気伝達面46kの大きさを確保しつつ、隣接するもの同士が対向する周方向両側面46lの両端部を除く一部を円弧状に切り欠いた切欠部46mを有している。図31に示す磁気伝達体46は、周壁部位46e及び延出片46hを有するものであり、同じく周方向両側面46lを円弧状に一部切り欠いた切欠部46mを有している。図32に示す磁気伝達体46は、周方向両側面46lを矩形状に一部切り欠いた切欠部46nを有している。これら切欠部46m,46nにて隣接の磁気伝達体46同士の間隔が確保され、磁束漏れの抑制が図られている。
【0074】
次いで、駆動側回転体45及び従動側回転体47の変更例について記載する。
駆動側回転体45の磁極45n,45sの着磁態様について特に言及しなかったが、図14に示すように軸方向着磁としてもよい。なお、モータ40におけるロータ44の磁極44n,44sの着磁態様についても同様に軸方向着磁としてもよい。この場合、駆動側回転体45の磁極45n,45sの磁極数とロータ44の磁極44n,44sの磁極数を同じとした場合であっても、ロータ44と駆動側回転体45との間に図2に示した磁性板50を用いてもよく、また磁性板50を省略することも可能である。磁性板50を省略する場合、ロータ44と駆動側回転体45とで別のマグネット部品を用いてもよいが、1つのマグネット部品で構成することもできる。
【0075】
また、駆動側回転体45の磁極45n,45sの着磁態様を、図15に示すように必要面に主として磁極が現れる極異方性着磁としてもよい。なお、ロータ44の磁極44n,44sの着磁態様についても同様に極異方性着磁としてもよい。この場合、極異方性着磁とした場合であってもロータ44と駆動側回転体45との間に図2に示した磁性板50を用いてもよく、また磁性板50を省略することも可能である。磁性板50を省略する場合、上記と同様、ロータ44と駆動側回転体45とで別のマグネット部品を用いてもよいが、1つのマグネット部品で構成することもできる。
【0076】
なお、駆動側回転体45の磁極45n,45sとロータ44の磁極44n,44sとを一体的に構成する場合、駆動側の磁極の磁力を従動側回転体47の磁極47n,47sの磁力よりも大きく構成することが好ましい。駆動側の磁極の磁力は、ロータ44として使用する部分と磁気連結に使用する部分との両方が必要なためである。磁力を大きく構成する手段としては、磁石材料を同材料とする場合は軸方向の厚みを厚くしたり、軸方向の厚みを同じとする場合は強磁石材料を用いたりして対応する。
【0077】
従動側回転体47の磁極47n,47sの着磁態様について特に言及しなかったが、図16に示すように軸方向着磁としてもよく、図17に示すように必要面に主として磁極が現れる極異方性着磁としてもよい。
【0078】
次いで、上記以外の変更例として、駆動側回転体45、磁気伝達体46及び従動側回転体47を軸方向に対向する構成としたが、それぞれ径方向に対向する構成のものを用いてもよい。この場合、径方向に対向する例えば磁気伝達体46と従動側回転体47との間に封止板34の一部を介在させるような封止板34の形状変更等の対応が必要となる。
【0079】
・上記実施形態の駆動装置32の構成は一例であり、適宜変更してもよい。
従動側回転体47の回転支持について特に言及しなかったが、図2に示す上記実施形態等のように、従動側回転体47を基台ブロック31の径方向対向部位に対して直接若しくは軸受(図示略)を用いて支持してもよい。また、図18に示すように、従動側回転体47を基台ブロック31の径方向対向部位に対して隙間31sを設け、従動側回転体47の径方向への偏倚を許容する構成としてもよい。従動側回転体47は、磁気伝達体46を介して駆動側回転体45と磁気連結しているため、大きく逸脱せずに回転可能である。このようにすれば、従動側回転体47の軸ずれ等を許容することが可能である。なお、従動側回転体47が径方向にずれた配置となっても、弁体33との連結が維持可能に構成される。
【0080】
ハウジング42内にモータ40の構成部品であるステータ43及びロータ44等を収容したが、図19に示すように、完成品のモータ40xをハウジング42内に収容し、モータ40xにて駆動伝達部41の駆動側回転体45を回転させる構成としてもよい。
【0081】
・上記以外で適宜変更してもよい。
膨張弁装置30は基台ブロック31を下側、駆動装置32を上側としたが、配置構造はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0082】
駆動伝達部41は磁気減速部として機能させたが、入出力を逆とした磁気増速部も含め、磁気変速部として機能させてもよい。
車両空調用の冷凍サイクル装置Dの膨張弁装置30に適用したが、車両空調以外若しくは膨張弁以外の弁装置の駆動装置、被駆動対象が弁体以外、即ち弁装置以外の駆動装置、モータを有しない駆動伝達装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
31 基台ブロック(被固定部材)、32 駆動装置、33 弁体(被駆動対象)、34 封止板(隔壁部材)、34a 周縁板部、34b 凹状部、34c 隔壁面部(底面部分)、34d 組付凹部(凹部)、34f 組付孔(貫通孔)、34g 周面部(周面部分)、34h 屈曲部、34j 窪み部、34k 支持柱部(支持部)、36 カバー部材、40,40x モータ、41 駆動伝達部(駆動伝達装置)、42 ハウジング(被固定部材、周囲部材)、42c 支持柱部(支持部)、45 駆動側回転体、45n,45s 磁極、46 磁気伝達体(磁気伝達部)、46a,46b,46c 連結部、46d 伝達部位、46e 周壁部位、46f 屈曲部位、46g 径方向内側端部(応力集中箇所)、46h 延出片(延出部)、46i 挿入片(嵌合部)、46j 連結部分、46l 周方向両側面(対向する面)、46m,46n 切欠部、46x 磁気伝達部分(磁気伝達部)、47 従動側回転体、47n,47s 磁極、51 支持柱部材(支持部)
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