(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 49/08 20060101AFI20231205BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B62D49/08 Z
B62D49/00 M
(21)【出願番号】P 2020144795
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智志
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-127266(JP,A)
【文献】特開2020-66409(JP,A)
【文献】特開2017-171253(JP,A)
【文献】特開2007-125948(JP,A)
【文献】米国特許第3490787(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102012011265(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも後部に作業機が装着可能な走行車体と、
機体における前後重量のバランスを調整する板状のウェイトと、
前記走行車体の前端においてエンジンよりも下方に設けられ、前記ウェイトの主面が前記走行車体の前後方向に向いた状態で取り付けられるウェイト取付部と、
前記ウェイト取付部に固定され、前記ウェイトの前方に障害物センサが取り付けられるセンサ取付部と
、
を備え
、
前記ウェイトは、
前記センサ取付部よりも後方に配置され、
前記センサ取付部は、
前記ウェイト取付部の下方に突出する突出部を有し、
前記障害物センサは、
前記突出部に固定されること
を特徴とする作業車両。
【請求項2】
少なくとも後部に作業機が装着可能な走行車体と、
機体における前後重量のバランスを調整する板状のウェイトと、
前記走行車体の前端においてエンジンよりも下方に設けられ、前記ウェイトの主面が前記走行車体の前後方向に向いた状態で取り付けられるウェイト取付部と、
前記ウェイト取付部に固定され、前記ウェイトの前方に障害物センサが取り付けられるセンサ取付部と、
を備え、
前記ウェイトは、
前記センサ取付部よりも後方に配置され、
前記ウェイト取付部は、
前記ウェイトおよび前記センサ取付部の間に仕切板を有すること
を特徴とする作業車両。
【請求項3】
少なくとも後部に作業機が装着可能な走行車体と、
機体における前後重量のバランスを調整する板状のウェイトと、
前記走行車体の前端においてエンジンよりも下方に設けられ、前記ウェイトの主面が前記走行車体の前後方向に向いた状態で取り付けられるウェイト取付部と、
前記ウェイト取付部に固定され、前記ウェイトの前方に障害物センサが取り付けられるセンサ取付部と、
を備え、
前記ウェイト取付部は、
前記走行車体の上下方向が開口した枠形状であり、
前記ウェイトは、
前記ウェイト取付部における前記走行車体の左右方向の側方壁に係合した状態で固定され、
前記センサ取付部は、
両側の前記側方壁に挟持された状態で配置されること
を特徴とする作業車両。
【請求項4】
少なくとも後部に作業機が装着可能な走行車体と、
機体における前後重量のバランスを調整する板状のウェイトと、
前記走行車体の前端においてエンジンよりも下方に設けられ、前記ウェイトの主面が前記走行車体の前後方向に向いた状態で取り付けられるウェイト取付部と、
前記ウェイト取付部に固定され、前記ウェイトの前方に障害物センサが取り付けられるセンサ取付部と、
を備え、
前記ウェイト取付部の前端は、
前記障害物センサよりも前方に位置すること
を特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、機体の前部に障害物センサが配置された作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、走行車体の前部に機体の前後重量のバランスを調整するウェイトや、ウェイト取付部が取り付けられた場合、ウェイトやウェイト取付部により検知範囲が狭くなることで、検知精度が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、障害物センサの検知精度の低下を低減できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、走行車体(2)と、ウェイト(14)と、ウェイト取付部(13)と、センサ取付部(40)とを備える。前記走行車体(2)は、少なくとも後部に作業機(W)が装着可能である。前記ウェイト(14)は、板状であり、機体における前後重量のバランスを調整する。前記ウェイト取付部(13)は、前記走行車体(2)の前端においてエンジン(E)よりも下方に設けられ、前記ウェイト(14)の主面が前記走行車体(2)の前後方向に向いた状態で取り付けられる。前記センサ取付部(40)は、前記ウェイト取付部(13)に固定され、前記ウェイト(14)の前方に障害物センサ(20)が取り付けられる。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、障害物センサの検知精度の低下を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両の説明図であり、作業車両の概略左側面図である。
【
図2】
図2は、ウェイト取付部およびセンサ取付部の構成を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、ウェイト取付部およびセンサ取付部の構成を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るウェイト取付部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るウェイト取付部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、各固定板の間に1つのウェイトが配置された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両(トラクタ)1の全体構成>
まず、
図1を参照して作業車両1の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1の説明図であり、作業車両1の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農用トラクタである。
【0011】
また、以下において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である(
図1参照)。
【0012】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクタ1の操縦者(「作業者」ともいう)が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0013】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
【0014】
図1に示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wとを備える。走行車体2は、フロントバンパー12と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。走行車体2の前部は主にエンジンEとフロントバンパー12によって支持され、後部は主にミッションケース10によって支持される。
【0015】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪となる。トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。
【0016】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として、図中、矢線Rで示すように、上下方向に回動(開閉)可能である。また、ボンネット6は、閉じた状態で、ミッションケース10に連結されたエンジンEの上部を覆う。エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0017】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。なお、操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)を備える。
【0018】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
【0019】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、後述するPTO(Power Take-off)軸11へ伝達する。
【0020】
PTO軸11は、ミッションケース10から後方に突出している。PTO軸11は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。作業機Wは、圃場内で作業を行う機械であり、たとえば、耕耘作業を行うロータリ耕耘機や、施肥作業を行う施肥機である。
【0021】
また、トラクタ1は、ウェイト取付部13を備える。ウェイト取付部13は、走行車体2のフロントバンパー12の前方に設けられる。フロントバンパー12は、エンジンEを覆うボンネット6よりも下方に配置される部材である。すなわち、ウェイト取付部13は、走行車体2の前端においてエンジンEよりも下方に設けられる。また、ウェイト取付部13には、走行車体2の後部に作業機Wが装着されたトラクタ1における前後重量のバランスを調整する板状のウェイト14が取り付けられる。なお、ウェイト14は、主面が走行車体2の前後方向に向いた状態で取り付けられるが、かかる点については、
図8で後述する。
【0022】
また、トラクタ1は、障害物センサ20と、センサ取付部40とをさらに備える。障害物センサ20は、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)であり、トラクタ1の前方に存在する障害物を検知する。センサ取付部40は、障害物センサ20が取り付けられる部材であり、ウェイト14とともにウェイト取付部13に固定される。具体的には、障害物センサ20は、ウェイト取付部13よりも下方において、ウェイト14の前方に取付けられる。
【0023】
このように、障害物センサ20がウェイト取付部13よりも下方に配置され、かつ、ウェイト14よりも前方に配置されることで、ウェイト取付部13およびウェイト14によって検知範囲が狭くなりにくいため、障害物センサ20の検知精度の低下を抑制できる。
【0024】
次に、
図2および
図3を用いて、ウェイト取付部13およびセンサ取付部40の構成について詳細に説明する。
図2および
図3は、ウェイト取付部13およびセンサ取付部40の構成を説明する説明図である。なお、
図2および
図3では、ウェイト取付部13にセンサ取付部40のみ(ウェイト14が無い状態)を取り付けた場合を示している。
【0025】
図2に示すように、ウェイト取付部13は、上下方向が開口した枠形状である。具体的には、ウェイト取付部13は、前方壁13a、後方壁13bおよび側方壁13c,13dを有する上面視で矩形状の枠形状である。
【0026】
前方壁13aは、ウェイト取付部13における前端に位置する。後方壁13bは、前方壁13aと対向する位置に配置され、フロントバンパー12と当接する部位である。側方壁13cは、右側方に位置し、前方壁13aおよび後方壁13bの右端と連結する。側方壁13dは、左側方に位置し、前方壁13aおよび後方壁13bの左端と連結する。
【0027】
センサ取付部40は、枠形状であるウェイト取付部13の開口に挿入した位置に配置される。具体的には、センサ取付部40は、板状の部材であり、両端が両側の側方壁13c,13dに挟持された状態で配置される。
【0028】
また、センサ取付部40は、ウェイト取付部13の下方に突出して延在している。つまり、センサ取付部40は、ウェイト取付部13の下方に突出する突出部を有する。そして
障害物センサ20は、センサ取付部40の突出部に取付けられる。
【0029】
具体的には、センサ取付部40の突出部は、ウェイト取付部13の下方に延在するとともに、前方へ向かって屈曲している。つまり、センサ取付部40の突出部は、側面視でL字状である。そして、障害物センサ20は、センサ取付部40の突出部のうち、前方へ屈曲した先端部に配置される。
【0030】
また、
図2および
図3に示すように、センサ取付部40には、孔部41が形成されている。具体的には、
図3に示すように、孔部41は、障害物センサ20の真後ろに配置される。これにより、障害物センサ20の配線を孔部41に通して走行車体2の各種制御装置へ配索することができる。
【0031】
なお、ウェイト取付部13およびセンサ取付部40は、一体的に構成されてもよく、それぞれ別部材で構成してネジ等の締結具により固定してもよい。
【0032】
次に、
図4および
図5を用いて、ウェイト14の取付状態について説明する。
図4は、トラクタ1の側面図である。
図5は、トラクタ1の上面図である。
【0033】
図4および
図5に示すように、ウェイト14は、センサ取付部40よりも後方に配置される。これにより、障害物センサ20の検知範囲が狭くなることを回避することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、ウェイト14は、主面が前後方向を向いた状態で取り付けられるとともに、前後方向に並べて複数配置される。また、
図5に示すように、ウェイト14は、ウェイト取付部13に対して左右の両側にそれぞれ配置される。
【0035】
具体的には、ウェイト14は、ウェイト取付部13における左右方向の側方壁13c,13dに係合した状態で固定される。なお、
図4および
図5では、側方壁13c,13dそれぞれにおいて、前後方向に6個(合計12個)のウェイト14が取り付けられた場合を示している。
【0036】
また、
図5に示すように、前方壁13aは、障害物センサ20よりも前方に位置する。すなわち、ウェイト取付部13の前端は、障害物センサ20よりも前方に位置する。これにより、前方の障害物などが障害物センサ20に接触することを減らすことができる。
【0037】
なお、障害物センサ20は、ウェイト取付部13よりも下方に配置されるとともに、検知範囲が前方の水平方向の範囲であるため、ウェイト取付部13の前端により検知範囲が狭くなることはない。
【0038】
上述したように、実施形態に係るトラクタ1は、走行車体2と、ウェイト取付部13と、ウェイト14と、センサ取付部40とを備える。走行車体2は、少なくとも後部に作業機Wが装着可能である。ウェイト14は、板状であり、機体における前後重量のバランスを調整する。ウェイト取付部13は、走行車体2の前端においてエンジンEよりも下方に設けられ、ウェイト14の主面が走行車体2の前後方向に向いた状態で取り付けられる。センサ取付部40は、ウェイト取付部13に固定され、ウェイト14の前方に障害物センサ20が取り付けられる。これにより、障害物センサ20の検知精度の低下を低減できる。
【0039】
なお、上述したウェイト取付部13の形状は一例であって、例えば、
図6および
図7に示す形状を採用してもよい。
図6および
図7を用いてウェイト取付部13の他の形状について説明する。
【0040】
図6および
図7は、変形例に係るウェイト取付部13を示す斜視図である。
図6に示すように、ウェイト取付部13は、センサ取付部40の後方に仕切板131を有してもよい。
【0041】
具体的には、仕切板131は、ウェイト14(不図示)およびセンサ取付部40の間に配置される。これにより、ウェイト14が前方に滑って移動したとしてもセンサ取付部40に接触しないようできる。
【0042】
また、仕切板131は、ウェイト取付部13の両側の側方壁13c,13dに挟持された状態で配置される。これにより、ウェイト取付部13の剛性を高めることができる。
【0043】
また、センサ取付部40および仕切板131は互いに離間して配置されることが好ましい。これにより、ウェイト14が仕切板131に接触した際にセンサ取付部40を介して障害物センサ20に伝わる振動を抑制できる。
【0044】
さらに、
図7に示すように、ウェイト取付部13は、仕切板131に加えて、前後方向に並ぶ複数のウェイト14それぞれを固定する固定板132を有してもよい。具体的には、固定板132は、前後方向に隣り合うウェイト14の間に配置される。
【0045】
これにより、ウェイト14同士が滑って接触することを抑制することができる。
【0046】
また、固定板132は、仕切板131と同様に、ウェイト取付部13の両側の側方壁13c,13dに挟持された状態で配置される。これにより、ウェイト取付部13の剛性をさらに高めることができる。
【0047】
なお、各固定板132の前後方向の間隔は、ウェイト1個分の厚みであってもよく、ウェイト複数個分の厚みであってもよい。つまり、各固定板132の間に1つのウェイト14が配置されてもよく、複数のウェイト14が配置されてもよい。
【0048】
図8は、各固定板132の間に1つのウェイト14が配置された例を示す図である。具体的には、各固定板132の間には、左右両側に2つのウェイト14が固定される。これにより、各ウェイト14が前後方向へ移動することを抑制できるとともに、左右方向における2つのウェイト14の位置を揃えることができるため、左右方向における重量バランスの偏りを低減することができる。
【0049】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 トラクタ
2 走行車体
3 車体フレーム
4 前輪
5 後輪
6 ボンネット
7 操縦部
7a キャビン
8 操縦席
9 ステアリングホイール
10 ミッションケース
11 PTO軸
12 フロントバンパー
13 ウェイト取付部
14 ウェイト
20 障害物センサ
40 センサ取付部
41 孔部
131 仕切板
132 固定板
E エンジン
W 作業機