(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光源ユニット及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20231205BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20231205BHJP
F21V 29/56 20150101ALI20231205BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231205BHJP
F21Y 105/18 20160101ALN20231205BHJP
【FI】
F21S2/00 377
F21V29/503
F21V29/56
F21Y115:10
F21Y105:18
(21)【出願番号】P 2020144831
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 猛
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
(72)【発明者】
【氏名】村上 悟司
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0016664(KR,A)
【文献】国際公開第2014/064904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 29/503
F21V 29/56
F21Y 115/10
F21Y 105/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に光を照射する光源ユニットであって、
複数のLED素子と、
前記複数のLED素子が載置される載置面を有し、前記載置面に直交する方向から見たときに、少なくとも最も外側に、複数の分割領域が周方向に配列するように設けられたLED基板と、
前記複数の分割領域のそれぞれに、前記LED素子を冷却するための冷却媒体を流し込む流入口と、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記流入口よりも前記LED基板の中心側に設けられた、前記冷却媒体を排出する排出口と、前記流入口と前記排出口を連絡し、内側を前記冷却媒体が通流する流路とを有し、前記LED基板の前記載置面とは反対側の面に設けられた冷却部材とを備えることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記LED基板は、それぞれに前記分割領域が形成された複数の小基板が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記流路は、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、周端部側から中心側に向かうように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記流入口は、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED素子の配置領域の外縁を構成する前記LED素子のうちの少なくとも一つと重なっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記複数の分割領域が、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED基板の中心に関して回転対称となるように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記複数の分割領域が、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED基板の中心に関して点対称となるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記流路が、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED基板の中心に関して点対称となるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記LED基板の材料は、主たる成分が窒化アルミニウム、又は窒化珪素であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項9】
前記LED基板の前記載置面は、第一領域と、前記第一領域よりも前記LED基板の中心側に、前記第一領域よりも前記LED素子の配置密度が低い第二領域とが形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項10】
前記被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内で前記被処理基板を支持する支持部材と、
前記被処理基板に向かって光を照射する請求項1~9のいずれか一項に記載の光源ユニットとを備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項11】
前記光源ユニットは、前記チャンバの外側に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源ユニット及び光照射装置に関し、特に、光源としてLED素子を用いた、被処理基板に光を照射する光源ユニット及び光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ等の被処理基板に対して、成膜処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理といった様々な熱処理が行われ、これらの処理は、非接触での処理が可能な光照射による加熱処理方法が多く採用されている。
【0003】
LED素子は、供給される電力が同じであっても、温度によって特性が変動し、高温になるほど、輝度が低下するという特徴を有する。このため、LED素子が加熱用の光源として用いられる装置の多くは、より高い輝度を維持するために、LED素子が搭載される基板(LED基板)に空冷用のヒートシンクや水冷用の流路が設けられている。
【0004】
特に、半導体ウェハの加熱処理のような、高出力が要求され、多数のLED素子が用いられる光照射装置に関しては、一般的に空冷式よりも排熱性能が高い水冷式の冷却機構が採用される。そして、下記特許文献1には、LED基板の載置面に直交する方向から見たときに、冷却水が周方向に通流するように流路が形成された熱処理用の光照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造プロセスに用いられる半導体ウェハに光を照射する装置は、半導体ウェハ全体が均一に処理されるように、被処理基板の表面(特に主面)全体にわたって同じ強度の光が照射できることが期待されている。
【0007】
そこで、本発明者らは、半導体ウェハ等の被処理基板全体にわたってより均一な光を照射できる光照射装置を鋭意検討したところ、以下のような課題が存在することを見出した。以下、図面を参照しながら説明する。
【0008】
図12及び
図13は、従来の熱処理用の光照射装置に搭載されているLED基板103の一例を示す模式的な図面である。それぞれのLED基板103の内側には、冷却水が通流する流路103c(図面上では破線で図示されており、冷却水は二点鎖線で示す方向に通流する。)が形成されている。なお、この
図12及び
図13では、LED素子が図示されていないが、LED素子は、流路103cが形成されているLED基板103の面、又は流路103cが形成されている面とは反対側のLED基板103の面、いずれの面上に搭載されていても構わない。
【0009】
図12及び
図13に示すように、従来の熱処理用の光照射装置に搭載されているLED基板103は、流入口103pから排出口103qに向かって、二点鎖線が示す方向に冷却水が通流するように、流路103cが形成されている。これらは、LED基板103全体で見ると、一点鎖線の矢印で示すように、周方向に冷却水が周回するように通流する。
【0010】
冷却水は、流路103cを通流しながらLED素子から発せられた熱を吸収することで徐々に温度が上昇するため、下流側(排出口103q側)に向かうにつれて、吸収できる熱量が徐々に低下する。つまり、従来の光照射装置では、LED基板103全体の温度分布が、冷却水が通流する周方向、言い換えれば一点鎖線の矢印の方向に、徐々に温度が高くなるような分布となる。そして、LED基板103の周端部103e側は、中心103f側に比べて周回距離が長くなるため、その温度差がより顕著となる。
【0011】
上述したように、LED素子は、供給される電力が同じであっても、高温になるほど輝度が低下する。このため、
図12及び
図13に示すようなLED基板103の構成では、LED基板103に載置されたLED素子が、LED基板103の周方向において、一点鎖線の矢印の方向に徐々に輝度が低下してしまう。したがって、従来の光照射装置の構成では、被処理基板W1の主面において、周方向において照射ムラが生じてしまい、期待されるほどの均一な光照射ができていなかった。
【0012】
また、近年では、被処理基板に対して照射される光の分布をより均一化することを目的として、LED基板の周端部周辺においてLED素子の配置密度を高めるような構成等が採用されている。
【0013】
図14及び
図15は、従来の光照射装置100の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図14及び
図15に示す光照射装置100は、チャンバ101を備えている。そして、被処理基板W1は、チャンバ10内に備えられた支持部材104によって、主面W1aがLED基板103の載置面103bと対向するように、チャンバ101の内側で支持されている。
【0014】
図14に示すように、被処理基板W1の主面W1aと、LED基板103の載置面103bとが対向する範囲に、一様にLED素子102が配列されている場合、被処理基板W1の周端部W1e側は、中央部W1c側よりも重なり合う光が少なくなる。
【0015】
このため、従来の光照射装置100では、被処理基板W1の全面にわたって均一的に光を照射する目的で、
図15に示すように、LED基板103の載置面103bにおいて、被処理基板W1の周端部W1e側に光を照射するLED素子102の配置密度が、中央部W1c側に光を照射するLED素子102の配置密度よりも高くなるように構成されていた。しかしながら、このような構成では、LED基板103は、周端部103e側の温度が中央部側に対してより高温になりやすく、被処理基板W1において、周端部W1e側に照射される光の強度が、大幅に低下してしまう。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑み、LED素子から被処理基板に照射される光の照射ムラを抑制した光源ユニット及び光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光源ユニットは、
被処理基板に光を照射する光源ユニットであって、
複数のLED素子と、
前記複数のLED素子が載置される載置面を有し、前記載置面に直交する方向から見たときに、少なくとも最も外側に、複数の分割領域が周方向に配列するように設けられたLED基板と、
前記複数の分割領域のそれぞれに、前記LED素子を冷却するための冷却媒体を流し込む流入口と、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記流入口よりも前記LED基板の中心側に設けられた、前記冷却媒体を排出する排出口と、前記流入口と前記排出口を連絡し、内側を前記冷却媒体が通流する流路とを有し、前記LED基板の前記載置面とは反対側の面に設けられた冷却部材とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、上記光源ユニットにおいて、
前記LED基板は、それぞれに前記分割領域が形成された複数の小基板が配置されてなるものであっても構わない。
【0019】
本明細書において、被処理基板の主面とLED基板の載置面が対向するとは、それぞれの面が直接対向する場合はもちろん、チャンバの壁面に形成された透過窓のように、LED素子から出射される光を透過させる部材を介して対向する場合も含まれる。
【0020】
LED基板は、少なくとも最も外側に、複数の分割領域が周方向に配列するように設けられている。当該構成は、例えば、一つのLED基板において、扇形状を呈する複数に分割された領域が設けられている場合や、一つ、又は複数の領域の周囲を取り囲むように別の領域が周方向に配列するように構成されている場合等が含まれる。また、複数の小基板で構成される場合は、複数の小基板のそれぞれに、当該領域が構成されていて、それらが配列されてLED基板をなす場合である。具体的な構成例としては、「発明を実施するための形態」の説明において参照される、各実施形態の図面にて図示されている形状である。
【0021】
上記構成とすることで、それぞれの流入口には、温度が低い状態の冷却媒体が流し込まれる。そして、各流入口から流し込まれた冷却媒体は、LED基板全体ではなく、分割されたそれぞれの領域、又は小基板に対応する各流路を通流する。このため、冷却媒体が通流する流路(特に、周端部周辺を周回する経路)は、LED基板全体に冷却媒体が通流する流路よりも短くなり、冷却媒体が高温になる前に、排出口に到達しやすくなる。
【0022】
また、冷却媒体が流路内で高温となってしまっても、周端部周辺においては、高温状態の冷却媒体がそのままLED基板を一周するように通流することがなくなる。なお、本発明において、冷却媒体としては、例えば、水やフッ素系の不活性液体等を採用し得る。
【0023】
これにより、LED基板の載置面における周方向において生じる温度差が抑制され、LED基板に載置されたLED素子全体の輝度ムラが抑制されて、基板に照射される光の照射ムラが抑制される。
【0024】
さらに、LED素子は、高温の状態で維持される時間が長いほど、寿命が短くなってしまう。つまり、上記構成とすることで、光照射装置は、基板に照射される光の照射ムラを抑制すると共に、LED素子の寿命のバラつきを低減できるという効果も奏する。
【0025】
また、LED基板は、分割数や各小基板の大きさを調整し、冷却部材の流路の経路長や配置するLED素子数を適切に設定することで、LED基板全体の温度分布を調整することができる。
【0026】
また、上記光源ユニットは、
前記流路は、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、周端部側から中心側に向かうように構成されていても構わない。
【0027】
さらに、上記光源ユニットは、
前記流入口は、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED素子の配置領域の外縁を構成する前記LED素子のうちの少なくとも一つと重なっていても構わない。
【0028】
例えば、LED基板の周端部側において、中央部側よりもLED素子の配置密度が高くなるように構成されている場合、周端部側の温度が中央部側の温度よりも非常に高くなる。
【0029】
そこで、上記構成とすることで、流入口から流し込まれた温度が低い状態の冷却媒体が、最初に周端部側を通流し、その後、徐々にLED素子の熱を吸収しながら中心側を通流するようになる。したがって、流路を通流する冷却媒体が、周端部側で中心側よりも多くの熱を吸収でき、周端部側をより重点的に冷却するように構成することができる。
【0030】
ここで、「周端部側から中心側に向かうように」とは、進行するにつれて徐々に中心に近づいていく構成だけでなく、周方向の移動と、中心側に向かう径方向の移動を交互に繰り返すようにステップ状に中心側に近づいていく構成等も含む。
【0031】
上記光源ユニットは、
前記複数の小基板が、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED基板の中心に関して回転対称となるように構成されていても構わない。
【0032】
回転対称とは、載置面の中心に関して(360°/n)回転させると一致する構成をいい、nは2以上の整数である。
【0033】
さらに、上記光源ユニットは、
前記複数の小基板が、前記LED基板の前記載置面に向かって見たときに、前記LED基板の中心に関して点対称となるように構成されていても構わない。
【0034】
点対称とは、載置面の中心に関して180°回転させると一致する構成をいい、上記の回転対称のnが2の場合に相当する。
【0035】
上記構成とすることで、各流入口から別々に流し込まれた冷却媒体が、それぞれの冷却部材の流路を通流する。このため、LED基板の載置面における周方向に関し、少なくとも周端部周辺では、複数の流路それぞれに冷却媒体が供給され、中心の周りを一周するように徐々に温度が高くなるような温度の傾斜が生じなくなる。したがって、LED基板の載置面に載置されたLED素子は、全体の温度分布がより均一となる。
【0036】
なお、本明細書における「回転させると一致する」とは、必ずしも、回転の前後で完全に一致していなくてもよく、所定の方向から見たときの回転前と回転後の状態を重ねたときに、対象とする部材や領域が回転前の面積に対して95%以上重なっている状態をいう。小基板を例として説明すると、載置面に直交する方向から見て、LED基板の中心に関して回転させたときに、回転前と回転後の状態において、回転後の小基板が回転前の小基板の面積に対して95%以上重なっている状態をいう。
【0037】
上記光源ユニットは、
前記流路が、前記LED基板の前記載置面に直交する方向から見たときに、前記LED基板の中心に関して点対称となるように構成されていても構わない。
【0038】
上記構成とすることで、各流入口から流し込まれた冷却媒体が、点対称となるように形成された流路を通流しながら熱を吸収する。このため、LED基板の載置面における周方向において、中心の周りを一周するように徐々に温度が高くなるような温度の傾斜が生じなくなる。したがって、LED基板の載置面に載置されたLED素子は、全体の温度分布がより均一となる。
【0039】
上記光源ユニットにおいて、
前記LED基板の材料は、主たる成分が窒化アルミニウム、又は窒化珪素であっても構わない。
【0040】
本明細書における「主たる成分」とは、最も含有率が高い材料を指す。
【0041】
上記構成とすることで、LED素子から発生した熱を、効率的に流路内を通流する冷却媒体に伝搬させることができる。
【0042】
上記光源ユニットにおいて、
前記LED基板の前記載置面は、第一領域と、前記第一領域よりも前記LED基板の中心側に、前記第一領域よりも前記LED素子の配置密度が低い第二領域とが形成されていても構わない。
【0043】
上記構成とすることで、被処理基板の周端部側に照射される光の強度と中心側の照射される光の強度との差が小さくなり、被処理基板に照射される光の強度分布がより均一となる。なお、LED基板の載置面には、第一領域よりも周端部側、第二領域よりも中心側、第一領域と第二領域との間それぞれに、第一領域と第二領域とはLED素子の配置密度が異なる別の領域が形成されていても構わない。
【0044】
本発明の光照射装置は、
前記被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内で前記被処理基板を支持する支持部材と、
前記被処理基板に向かって光を照射する上記光源ユニットとを備えることを特徴とする。
【0045】
上記光照射装置において、
前記光源ユニットは、前記チャンバの外側に配置されていても構わない。
【0046】
チャンバは、熱処理の工程にもよるが、熱処理が実行されている間、被処理基板が数百度にまで加熱される場合もあるため、内側の空間も非常に高い温度となる。このため、チャンバ内にLED素子を配置すると、LED素子が熱によって損傷してしまうおそれがある。
【0047】
そこで、上記構成とすることで、LED素子が熱処理中に損傷してしまうおそれを回避することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、LED素子から被処理基板に照射される光の照射ムラを抑制した光源ユニット及び光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】光照射装置の一実施形態の構成をY方向に見たときの模式的な断面図である。
【
図2】LED基板を-Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図3】冷却部材を+Z側から見たときの図面である。
【
図4】光照射装置の一実施形態のLED基板を-Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図5】冷却部材を+Z側から見たときの図面である。
【
図6】光照射装置の一実施形態のLED基板を-Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図7】冷却部材を+Z側から見たときの図面である。
【
図8】光照射装置の別実施形態の冷却部材を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図9】光照射装置の別実施形態の冷却部材を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図10】光照射装置の別実施形態の冷却部材を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図11】光照射装置の別実施形態の冷却部材を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【
図12】従来の熱処理用の光照射装置に搭載されているLED基板の一例を示す模式的な図面である。
【
図13】従来の熱処理用の光照射装置に搭載されているLED基板の一例を示す模式的な図面である。
【
図14】従来の光照射装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】従来の光照射装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、光照射装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0051】
[第一実施形態]
図1は、光照射装置1の一実施形態の構成をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図1に示すように、第一実施形態の光照射装置1は、光源ユニット2と、被処理基板W1が収容されるチャンバ10と、供給機構15とを備え、光源ユニット2は、複数のLED素子11と、LED素子11が載置されたLED基板12と、を備える。
【0052】
以下の説明においては、
図1に示すように、LED基板12と被処理基板W1が対向する方向をZ方向、後述される一対の支持部材13が対向する方向をX方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向として説明する。
【0053】
また、以下も同様に、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0054】
チャンバ10は、
図1に示すように、内側に被処理基板W1を支持する一対の支持部材13を備える。支持部材13は、被処理基板W1の主面W1aがXY平面上に配置されるように、被処理基板W1を支持する。
【0055】
なお、支持部材13による被処理基板W1の支持は、その主面W1aがXY平面上に配置されるようなものであればよく、例えば、支持部材13がピン状の突起を複数備え、その突起により被処理基板W1を点で支持するものであっても構わない。ここで、主面W1aは、回路素子や配線等が形成され、LED素子11から出射される光が照射される面である。
【0056】
また、チャンバ10は、+Z側の壁面にLED素子11から出射された光を内側に取り込むための、LED素子11から出射された光を透過させる透光窓10aを備える。チャンバ10が備える透光窓10aは、
図1に示すように、支持部材13で支持される被処理基板W1の主面W1aと対向するように構成されている。つまり、LED素子11から出射された光は、透光窓10aを介して被処理基板W1の主面W1aに照射される。
【0057】
なお、LED基板12がチャンバ10内に配置されて、チャンバ10が透光窓10aを備えていなくても構わない。また、チャンバ10は、Z方向から見たときの形状が、例えば、円形状や楕円形状や多角形状等、任意の形状を採用し得る。
【0058】
供給機構15は、
図1に示すように、LED基板12の+Z側の面に設けられた冷却部材12zの流入口12p及び排出口12qと、配水管15aによって接続されている。供給機構15は、
図1において一点鎖線の矢印で示すように、流入口12pに冷却水C1を流し込み、冷却部材12zに形成された流路12cを通流して排出口12qから排出された冷却水C2を受け取る。なお、流路12cについては、後述される
図3に図示されている。
【0059】
冷却部材12zは、排熱効率の観点から、熱伝導率の高い銅やアルミニウム等を主たる成分として作製された部材であることが好ましい。
図1では、LED基板12と同じ厚さの板状の部材として図示されているが、冷却部材12zは、排熱効率やLED素子11の配置構成等に応じて、リング形状やブロック形状等の任意の形状としても構わない。
【0060】
なお、第一実施形態においては、冷却部材12zの流路12cには冷却媒体として冷却用の水を通流させて冷却する構成で説明するが、水以外の冷却媒体として、例えば、フッ素系の不活性液体等も採用し得る。
【0061】
また、第一実施形態において、排出口12qから排出された冷却水C2は、供給機構15に戻されるように構成されているが、そのまま光照射装置1の外側に排出される構成であっても構わない。
【0062】
図2は、LED基板12を-Z側から見たときの模式的な図面である。
図2に示すように、LED基板12は、Z方向に見たときに、LED基板12の中心12fに関し、点対称となるように小基板12nが周方向に配列されている。複数のLED素子11は、支持部材13に支持された被処理基板W1の主面W1aと対向するように配置されたLED基板12の載置面12b上にアレイ状に配置されている。
【0063】
また、複数のLED素子11は、
図14及び
図15を参照して上述したように、被処理基板W1に対して照射される光の分布をより均一化することを目的として、LED基板12の周端部12e周辺において、配置密度が高くなるように配置されている。つまり、周端部12e側に第一領域A1、中心12f側に第一領域A1よりもLED素子11の配置密度が低い第二領域A2が形成されている。
【0064】
LED基板12の載置面12bに載置される複数のLED素子11は、被処理基板W1に対して照射する光の均一性の確保と、LED素子11の排熱性の観点から、1.0mm~5.0mmの離間距離で配置されていることが好ましく、1.5mm~3.0mmの離間距離で配置されていることがより好ましい。
【0065】
図3は、冷却部材12zを+Z側から見たときの図面であり、実際には見えないが、LED素子11の配置領域の外縁を形成する一部のLED素子11aと、冷却部材12zの内側に形成された冷却水C1が通流する流路12cの一例が破線で図示されている。LED基板12と冷却部材12zは、
図2及び
図3に示すように、同一形状を呈している。冷却部材12zは、四つの小基板12nから構成されているLED基板12にそれぞれ対応して配置されており、冷却部材12zをZ方向に見たときの流路12cの形状は、すべて同一である。
【0066】
LED素子11を実装するLED基板12の材料の主たる成分としては、絶縁体である金属酸化物や金属窒化物等のセラミックスが用いられ、特に、熱伝導率が高い窒化アルミニウムや窒化珪素であることが好ましい。
【0067】
流路12cは、
図3に示すように、流入口12pと、流入口12pよりもLED基板12の中心12f側に設けられた排出口12qとを、周端部12e側から中心12f側に向かうように連絡している。また、流路12cは、全ての冷却部材12z全体で見ると、LED基板12の中心12fに対して点対称となるように構成されている。そして、流入口12pは、Z方向に見たときに、
図2に示すLED素子11の配置領域の外縁を構成するLED素子11aと重複するように形成されている。
【0068】
流路12cは、周端部12e側から中心12f側に向かうように形成されているが、一部に中心12f側から周端部12e側に向かうような経路を含んでいても構わない。また、流路12cは、上述したように、LED基板12のLED素子11が載置された面とは反対側の面に、管状の部材が付設されて構成されていても構わない。
【0069】
上記構成とすることで、それぞれの流入口12pには、供給機構15から温度が低い状態の冷却水C1が流し込まれる。そして、各流入口12pから流し込まれた冷却水C1は、LED基板12全体ではなく、分割されたそれぞれの小基板12nの流路12cを通流する。このため、冷却水C1が通流する流路12cは、冷却部材12z全体を通流するよりも短くなり、冷却水C1が高温になる前に、排出口12qに到達しやすくなる。
【0070】
また、各流入口12pに対して供給機構15から冷却水C1が流し込まれ、LED基板12が点対称に冷却される。このため、LED基板12の周方向において、LED基板12の中心12fの周りを一周するように徐々に温度が高くなるような温度勾配は発生しない。したがって、LED基板12全体の温度ムラが抑制され、LED素子11全体の輝度の均一性が向上し、被処理基板W1に照射される光の照射ムラが抑制される。
【0071】
さらに、
図3に示すように、周端部12e側から中心12f側に向かって冷却水C1が通流する構成とすることで、温度が低い状態の冷却水C1は、流路12cの上流側である周端部12e側でより多くの熱を吸収する。これにより、LED基板12の周端部12e側が重点的に冷却されて、中心12f側と周端部12e側との温度差が小さくなり、LED基板12全体における温度分布の均一性がより向上される。
【0072】
第一実施形態の光照射装置1のLED基板12は、四つの小基板12nで構成されているが、二つの小基板12nで構成されていてもよく、六つ以上の小基板12nで構成されていても構わない。
【0073】
また、LED基板12及び各小基板12nは、全体をZ方向から見たときの形状が、六角形や八角形等の多角形状であっても構わない。
【0074】
光照射装置1は、装置全体を小型化させるために、配水管15aの代わりに、配水路が形成された配水プレートを備えていても構わない。配水プレートは、配水管15aほど広い配置スペースを必要としないため、光照射装置1全体をより小型化することができる。
【0075】
また、流路12cは、一部に中心12f側から周端部12e側に向かって流れる部分が形成されていても構わない。
【0076】
さらに、流入口12pは、Z方向に見たときに、LED素子11の配置領域の外縁を構成するLED素子11aと重複していなくても構わない。
【0077】
[第二実施形態]
本発明の光照射装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0078】
図4は、光照射装置1の一実施形態のLED基板12を-Z側から見たときの模式的な図面である。
図4に示すように、光照射装置1の第二実施形態は、LED基板12が、一つの円形状を呈する小基板12nと、当該小基板12nを取り囲むように周方向に配列された構成する四つの小基板12nから構成されている。LED基板12は、全体として中心12fに関して点対称となっている。
【0079】
第二実施形態では、
図4に示すように、複数のLED素子11が、いずれの小基板12nにおいてもほぼ同じ配置密度となるように配置されている。
【0080】
図5は、冷却部材12zを+Z側から見たときの図面であり、
図3と同様に、実際には見えないが、内側に形成された冷却水C1(
図1参照)が通流する流路12cの一例が破線で図示されている。
【0081】
以下、第二実施形態の冷却水C1の流路12cについて、一部の小基板12nに設けられた冷却部材12zで説明する。第二実施形態のLED基板12は、供給機構15から外周に配置された四つの小基板12nの流入口12pにそれぞれ冷却水C1が流し込まれる。そして、冷却水C1は、外周の小基板12nの流路12cを通流する。
【0082】
外周の小基板12nの流路12cを通流した冷却水C1は、排出口12qから排出される。排出口12qから排出された冷却水C1は、配水管(
図2参照)を通して中央の小基板12nの流入口12pに流れ込む。
【0083】
中央の小基板12nは、四つの流入口12pに対して排出口12qが一つ設けられている。中央の小基板12nのそれぞれの流入口12pに流れ込んだ冷却水C1は、各流路12cを通流し、排出口12qで合流して冷却水C2(不図示)として排出される。
【0084】
図5では、各流入口12pから流し込まれた冷却水C1を一つの排出口12qからまとめて排出できるように、排出口12qが流入口12pより大きく構成されているが、流入口12pと排出口12qは、それぞれ任意の大きさで構成して構わない。
【0085】
このようにして、冷却水C1は、各小基板12nにおいて、流入口12pから流し込まれ、中央の小基板12nの流路12cを通流して、排出口12qから冷却水C2として排出される。
【0086】
ここで、各小基板12nは、中心12f側の小基板12nに載置されたLED素子11の輝度が、周端部12e側の小基板12nに載置されたLED素子11の輝度より小さくなるように、供給される電力が制御されていても構わない。
【0087】
このような制御を行うことで、
図15を参照して上述したような、被処理基板W1の主面W1aにおける中央部W1c側と周端部W1e側に照射される光の強度の差を、LED素子11の配置密度を調整することなく抑制することができる。
【0088】
しかしながら、上述した供給電力の制御が行われる場合、中心12f側の小基板12nに配置されたLED素子11よりも、周端部12e側の小基板12nに配置されたLED素子11の方が、供給されている電力が大きいため、LED基板12の周端部12e側がより高温になる。
【0089】
図5に示すように、周端部12e側から中心12f側に向かって冷却水C1が通流する構成とすることで、温度が低い状態の冷却水C1は、流路12cの上流側である周端部12e側でより多くの熱を吸収する。このため、LED基板12の周端部12e側が重点的に冷却されて、中心12f側と周端部12e側との温度差が小さくなり、LED基板12全体における温度分布の均一性がより向上される。
【0090】
なお、中央の小基板12nの流入口12pに、冷却水C1が供給機構15から直接流し込まれ、全ての小基板12nの排出口12qから冷却水C2が排出されるように構成されていても構わない。
【0091】
また、LED基板12は、中央の小基板12nが取り除かれ、周端部12eを形成する複数の小基板12nによって円環状に構成されていても構わない。例えば、LED基板12の中央に穴が設けることで、当該穴を介して被処理基板W1の表面温度を観測するように、放射温度計を設けることができる。放射温度計による観測用の穴は、複数の小基板12nのうちのいずれかに設けられていても構わない。
【0092】
[第三実施形態]
本発明の光照射装置1の第三実施形態の構成につき、第一実施形態及び第二実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0093】
図6は、光照射装置1の一実施形態のLED基板12を-Z側から見たときの模式的な図面である。
図6に示すように、光照射装置1の第三実施形態は、LED基板12が、正方形状の小基板12nと、当該小基板12nを取り囲むように周方向に配列された八つの小基板12nで構成されている。
【0094】
第三実施形態のLED基板12は、三種類の形状が含まれており、それぞれ流路12cの形状は異なっているが、LED基板12全体として見たときには、小基板12nや流路12cが中心12fに関して点対称となっている。
【0095】
図7は、冷却部材12zを+Z側から見たときの図面であり、
図3と同様に、実際には見えないが、内側に形成された冷却水C1が通流する流路12cの一例が破線で図示されている。
【0096】
以下、第三実施形態の冷却水C1の流路12cについて、一部の小基板12nで説明する。第三実施形態は、供給機構15から外周に配置された八つの小基板12nに設けられた冷却部材12zの流入口12pにそれぞれ冷却水C1が流し込まれる。そして、冷却水C1は、外周の小基板12nに設けられた冷却部材12zの流路12cを通流する。
【0097】
外周の冷却部材12zの流路12cを通流した冷却水C1は、排出口12qから排出される。排出口12qから排出された冷却水C1は、配水管(
図2参照)を通して中央の小基板12nに設けられた冷却部材12zの流入口12pに流れ込む。
【0098】
ここで、第三実施形態は、外周の冷却部材12zの排出口12qが八つであるのに対して、中央の冷却部材12zの流入口12pが四つで構成されている。これは、外周の冷却部材12zの排出口12qと中央の冷却部材12zの流入口12pを連絡する配水管によって、冷却水C1が合流、又は再分配されることで調整される。
【0099】
中央の冷却部材12zの流入口12pに流れ込んだ冷却水C1は、中央の冷却部材12zの流路12cを通流して、排出口12qから冷却水C2として排出される。
【0100】
このようにして、冷却水C1は、各冷却部材12zにおいて、流入口12pから流し込まれて、流路12cを通流して排出口12qから冷却水C2として排出される。
【0101】
なお、中央の冷却部材12zの流入口12pに、冷却水C1が供給機構15から直接流し込まれ、全ての冷却部材12zの排出口12qから冷却水C2が排出されるように構成されていても構わない。
【0102】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0103】
〈1〉
図9及び
図10は、光照射装置1の別実施形態の冷却部材12zを+Z側から見たときの模式的な図面であり、
図3と同様に、実際には見えないが、内側に形成された冷却水C1が通流する流路12cの一例が破線で図示されている。
図9に示すように、LED基板12を構成する小基板12nは、Z方向に見たときに、LED基板12全体として点対称ではなく、LED基板12の中心12fに関して120°(360°/3)回転させた状態と一致する、すなわち、回転対称となるように構成されていても構わない。
【0104】
なお、
図9は、三つの小基板12nで構成する例を示したが、LED基板12は、四つ以上の小基板12nで構成されていてもよい。また、
図7及び
図8に示す第三実施形態の構成のように、周端部12eを形成する各小基板12nが同じ形状を呈していなくても構わない。
【0105】
さらに、
図10に示すように、流路12cは、LED基板12全体において、LED基板12の中心12fを原点としたときの、Y軸に関して線対称となるように構成され、中心12fに関して回転対称や点対称とならないように構成されていても構わない。
【0106】
〈2〉
図11及び
図12は、光照射装置1の別実施形態のLED基板12を+Z側から見たときの模式的な図面であり、
図3と同様に、実際には見えないが、内側に形成された冷却水C1が通流する流路12cの一例が破線で図示されている。
図11及び
図12は、LED基板12が一枚の基板で構成されており、Z方向から見たときに、それぞれに流入口12p、排出口12q及び流路12cが設けられた複数の分割領域12rが設けられている。
【0107】
〈3〉 上述した光照射装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0108】
1 : 光照射装置
2 : 光源ユニット
10 : チャンバ
10a : 透光窓
11 : LED素子
11a : LED素子
12 : LED基板
12b : 主面
12c : 流路
12e : 周端部
12f : 中心
12n : 小基板
12p : 流入口
12q : 排出口
12r : 分割領域
12z : 冷却部材
13 : 支持部材
15 : 供給機構
15a : 配水管
15b : 配水路
15p : 配水プレート
16 : 冷却部材
100 : 光照射装置
101 : チャンバ
102 : LED素子
103 : LED基板
103c : 流路
103e : 周端部
103f : 中心
103p : 流入口
103q : 排出口
104 : 支持部材
C1,C2 : 冷却水
W1 : 被処理基板
W1a : 主面
W1c : 中央部
W1e : 周端部