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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】封止用途の樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20231205BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20231205BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231205BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231205BHJP
   C08K 5/105 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/42
C08J5/18 CFC
C08K3/013
C08K5/105
H01L23/30 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020179833
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070656
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 安晃
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235424(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235425(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08G 59/00-59/72
C08K 3/013
C08K 5/105
C08J 5/18
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び
(C)無機充填材、を含む封止用途の樹脂組成物であって、
(B)成分が、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有し、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、封止用途の樹脂組成物。
【請求項2】
(B-1)成分が、下記一般式(B-i)で表される化合物、及び下記一般式(B-ii)で表される化合物のいずれかである、請求項1に記載の封止用途の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(B-i)中、Ar11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化2】
(一般式(B-ii)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
【請求項3】
(B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、15質量%以下である、請求項1又は2に記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分の合計含有量をm(b)とし、(C)成分の含有量をm(c)としたとき、m(c)/m(b)が、1以上50以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(B-2)(B-1)成分以外の硬化剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項6】
(B-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項に記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分全体を100質量%とした場合、(B-1)成分の含有量をm(b1)とし、(B-2)成分の含有量をm(b2)としたとき、m(b1)/m(b2)が、0.1以上10以下である、請求項又はに記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項8】
液状である、請求項1~のいずれか1項に記載の封止用途の樹脂組成物。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~のいずれか1項に記載の封止用途の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項10】
半導体チップと、当該半導体チップを封止する請求項1~のいずれか1項に記載の封止用途の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用途の樹脂組成物に関する。さらには、当該封止用途の樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられる半導体チップパッケージ用絶縁材料も更なる高機能化が求められている。このような絶縁層は、樹脂組成物を硬化して形成されるもの等が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-008312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止用途で絶縁材料を用いるには、その硬化物の誘電正接を低くすることが求められる。しかし、本発明者らは、誘電正接が低い絶縁材料はクラック及びデラミネーションが発生しやすいことを知見した。
【0005】
本発明の課題は、誘電正接が低く、クラック及びデラミネーションの発生が抑制された硬化物を得ることができる封止用途の樹脂組成物;当該封止用途の樹脂組成物を用いて形成された、樹脂シート、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、(B)硬化剤として、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有させることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び
(C)無機充填材、を含む封止用途の樹脂組成物であって、
(B)成分が、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有する封止用途の樹脂組成物。
[2] (B-1)成分が、下記一般式(B-i)で表される化合物、及び下記一般式(B-ii)で表される化合物のいずれかである、[1]に記載の封止用途の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(B-i)中、Ar11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化2】
(一般式(B-ii)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
[3] (B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、15質量%以下である、[1]又は[2]に記載の封止用途の樹脂組成物。
[4] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物。
[5] 樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分の合計含有量をm(b)とし、(C)成分の含有量をm(c)としたとき、m(c)/m(b)が、1以上50以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物。
[6] さらに、(B-2)(B-1)成分以外の硬化剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物。
[7] (B-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上20質量%以下である、[6]に記載の封止用途の樹脂組成物。
[8] (B)成分全体を100質量%とした場合、(B-1)成分の含有量をm(b1)とし、(B-2)成分の含有量をm(b2)としたとき、m(b1)/m(b2)が、0.1以上10以下である、[6]又は[7]に記載の封止用途の樹脂組成物。
[9] 液状である、[1]~[8]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物。
[10] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[9]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[11] 半導体チップと、当該半導体チップを封止する[1]~[9]のいずれかに記載の封止用途の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
[12] [11]に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電正接が低く、クラック及びデラミネーションの発生が抑制された硬化物を得ることができる封止用途の樹脂組成物;当該封止用途の樹脂組成物を用いて形成された、樹脂シート、当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備える半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。なお、誘電率とは、特に断りがない限り、比誘電率を表す。
【0010】
[封止用途の樹脂組成物]
本発明の封止用途の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材、を含む封止用途の樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有する。本発明では、(A)成分から(C)成分を含有させることで、誘電正接が低く、クラック及びデラミネーションの発生が抑制された硬化物を得ることができる。また、通常は、誘電率、圧縮成型時の圧縮成形性にも優れる硬化物、粘度が低く、チキソトロピックインデックスが低い樹脂組成物を得ることもできる。
【0011】
樹脂組成物は、(A)~(C)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)シランカップリング剤、(E)硬化促進剤、(F)着色剤、及び(G)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0012】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、(A)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂から選択される1種以上が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかがより好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0014】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を用いてもよく、固体状エポキシ樹脂を用いてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂のみを用いることが好ましい。
【0015】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0017】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0019】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0020】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:1である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0022】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0023】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0025】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。「樹脂成分」とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(C)無機充填材を除いた成分をいう。
【0026】
<(B)硬化剤>
樹脂組成物は、(B)成分として(B)硬化剤を含有する。(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂を硬化する機能を有する。(B)硬化剤は、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有し、必要に応じて(B-2)(B-1)成分以外の硬化剤を含んでいてもよい。(B)硬化剤としては、(B-1)成分を単独で用いてもよく、本発明の効果を顕著に得る観点から、(B-1)成分と(B-2)成分とを併用することが好ましい。
【0027】
-(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物-
樹脂組成物は、(B-1)芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物を含有する。(B-1)成分を樹脂組成物に含有させることで、誘電正接が低く、クラックの発生が抑制された硬化物を得ることが可能となる。(B-1)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
誘電正接を低くする観点から従来より使用されてきた硬化剤を用いると、硬化収縮が大きく、樹脂組成物の硬化物の内部に応力が発生しやすい。これに対し、本発明で用いる(B-1)成分は、芳香族エステル骨格及び不飽和結合を含有する。芳香族エステル骨格及び不飽和結合を有することにより、樹脂組成物の硬化物の応力が適度に緩和される。この結果、低誘電正接を維持でき、クラック及びデラミネーションの発生を抑制することが可能となる。
【0029】
(B-1)成分は、芳香族エステル骨格を有する。芳香族エステル骨格は、エステル結合と、そのエステル結合の一端又は両端に結合した芳香環とを有する骨格を表す。中でも、エステル結合の両端に芳香環を有するものが好ましい。このような骨格を有する基としては、例えば、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリーレンカルボニルオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシアリーレン基、アリールオキシカルボニルアリーレン基、アリーレンカルボニルオキシアリーレン基、アリーレンオキシカルボニルアリーレン基等が挙げられる。また、このような骨格を有する基の炭素原子数は好ましくは7~20、より好ましくは7~15、さらに好ましくは7~11である。アリール基及びアリーレン基等の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0030】
アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;等が挙げられる。
【0031】
アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基(-C-C-)等が挙げられる。
【0032】
(B-1)成分は、不飽和結合を含有する。これにより、硬化物の誘電率に優れるようになる。また、不飽和結合は、樹脂組成物の硬化反応に寄与する。不飽和結合が硬化反応に寄与することで芳香族エステル骨格の一部のエステル部位が硬化反応に用いられることが抑制され、その結果、誘電正接を低くできるとともにクラック及びデラミネーションの発生が抑制される。
【0033】
この不飽和結合は、好ましくは、炭素-炭素不飽和結合である。この炭素-炭素不飽和結合は、二重結合でもよく、三重結合でもよい。不飽和結合は、前記の置換基に含まれていることが好ましい。不飽和結合を含む置換基としては、例えば、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられる。不飽和結合は、末端の芳香族炭化水素基の置換基に含まれることが好ましく、両末端の芳香族炭化水素基の置換基に含まれることがより好ましい。
【0034】
炭素原子数2~30のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-ウンデセニル基、1-ペンタデセニル基、3-ペンタデセニル基、7-ペンタデセニル基、1-オクタデセニル基、2-オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3-ブタジエニル基、1,4-ブタジエニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ペンタデカ-4,7-ジエニル基、ヘキサ-1,3,5-トリエニル基、ペンタデカ-1,4,7-トリエニル基等が挙げられる。
【0035】
炭素原子数2~30のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1,3-ブタジイニル基等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、不飽和結合を含む置換基としては、炭素原子数2~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることがより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニル基であることがさらに好ましく、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基であることがさらにより好ましく、アリル基であることが特に好ましい。
【0037】
(B-1)成分は、芳香族エステル骨格に加えて、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、及びこれらの組み合わせからなる基のいずれかを有していてもよい。用語「芳香族炭化水素基」とは、芳香環を含む炭化水素基を意味し、芳香環は単環、多環、複素環のいずれであってもよい。
【0038】
芳香族炭化水素基としては、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基、アラルキレン基がより好ましく、アリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらの中でも、フェニレン基が好ましい。
【0039】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0040】
シクロアルキレン基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、下記式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられる。式(a)~(d)中、「*」は結合手を表す。
【化3】
【0041】
芳香族エステル骨格、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、及び不飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、不飽和炭化水素基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基は、単独で含んでいても、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0042】
炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基が挙げられる。
【0043】
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。不飽和炭化水素基は、上記したとおりである。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0045】
(B-1)成分は、下記一般式(B-i)で表される化合物、及び下記一般式(B-ii)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化4】
(一般式(B-i)中、Ar11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表し、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。nは0~10の整数を表す。)
【化5】
(一般式(B-ii)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。mは、2又は3の整数を表す。)
【0046】
一般式(B-i)中、Ar11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;ナフチル基、アントラセニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリル基、フタラジニル基、プテリジニル基、クマリニル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、アクリジニル基等の縮合環芳香族化合物から水素原子が1つ除かれたもの;等が挙げられ、中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、フェニル基が好ましい。Ar11が表す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。中でも、Ar11の置換基は、不飽和結合を含有することが好ましい。
【0047】
一般式(B-i)中、Ar12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられ、アリーレン基が好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。これらの中でも、フェニレン基が好ましい。
【0048】
Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0049】
一般式(B-i)中、Ar13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、これらの組み合わせからなる2価の基が好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、Ar12が表す2価の芳香族炭化水素基と同様である。
【0050】
2価の脂肪族炭化水素基としては、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
【0051】
アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0052】
シクロアルキレン基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基が好ましく、3~15のシクロアルキレン基がより好ましく、5~10のシクロアルキレン基がさらに好ましい。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘプチレン基、上記式(a)~(d)で表されるシクロアルキレン基等が挙げられ、式(c)で表されるシクロアルキレン基が好ましい。
【0053】
これらの組み合わせからなる2価の基としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を組み合わせた2価の基が好ましく、複数の、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及び複数の、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を交互に組み合わせた2価の基がより好ましい。前記の2価の基の具体例としては、以下の(B1)~(B8)の2価の基を挙げることができる。式中、a1~a7は、0~10の整数を表し、好ましくは0~5の整数を表す。「*」は、結合手を表し、波線は、(B-i)成分を合成する際に用いる芳香族化合物、芳香族化合物の酸ハロゲン化物、又は芳香族化合物のエステル化物が反応して得られる構造を表す。
【化6】
【化7】
【0054】
Ar13が表す2価の芳香族炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0055】
一般式(B-i)中、nは、0~10の整数を表し、0~5の整数を表すことが好ましく、0~3の整数を表すことがより好ましい。なお、一般式(B-i)で表される化合物がオリゴマー又はポリマーである場合、nはその平均値を表す。
【0056】
一般式(B-ii)中、Ar21は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表す。m価の芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6~30のm価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素原子数が6~20のm価の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素原子数が6~10のm価の芳香族炭化水素基がさらに好ましい。Ar21が表すm価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0057】
一般式(B-ii)中、Ar22は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。Ar22は、一般式(B-i)中のAr11が表す芳香族炭化水素基と同様である。Ar22が表す1価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、芳香族エステル骨格が有していてもよい置換基と同様である。
【0058】
一般式(B-ii)中、mは、2又は3の整数を表し、2が好ましい。
【0059】
(B-1)成分の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。また、(B-1)成分の具体例としては、国際公開第2018/235424号に記載の段落0068~0071、及び国際公開第2018/235425号に記載の段落0113~0115に記載の化合物が挙げられる。但し、(B-1)成分はこれら具体例に限定されるものではない。式中、sは0又は1以上の整数を表しrは1~10の整数を表す。
【化8】
【0060】
(B-1)成分は、公知の方法により合成したものを使用してよい。(B-1)成分の合成は、例えば、国際公開第2018/235424号、又は国際公開第2018/235425号に記載の方法によって行うことができる。
【0061】
(B-1)成分の重量平均分子量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは150以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1500以下である。(B-1)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0062】
(B-1)成分の不飽和結合当量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは150g/eq.であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは500g/eq.以下である。不飽和結合当量は、1当量の不飽和結合を含む(B-1)成分の質量である。
【0063】
(A)エポキシ樹脂と(B-1)成分との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(B-1)成分の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、(B-1)成分の反応基の合計数とは、各(B-1)成分の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての(B-1)成分について合計した値である。エポキシ樹脂と(B-1)成分との量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0064】
(B-1)成分の含有量としては、誘電正接が低く、クラックの発生が抑制された硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。下限は好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。
【0065】
(B-1)成分の含有量は、誘電正接が低く、クラックの発生が抑制された硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、25質量%以下である。下限は好ましくは1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
【0066】
-(B-2)(B-1)成分以外の硬化剤-
樹脂組成物は、(B-2)成分として、(B-1)成分以外の硬化剤を含有してもよい。(B-2)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(B-2)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、チオール系硬化剤等が挙げられる。一実施形態において、(B-2)成分は、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及びアミン系硬化剤のいずれかを含むことが好ましい。
【0068】
フェノール系硬化剤としては、特に制限されないが、ビフェニル型硬化剤、ナフタレン型硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ナフチレンエーテル型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤が好ましい。具体的には、ビフェニル型硬化剤の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」(明和化成社製)、ナフタレン型硬化剤の「NHN」、「CBN」、「GPH」(日本化薬社製)、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」(新日鐵化学社製)、「EXB9500」(DIC社製)、フェノールノボラック型硬化剤の「MEH-8000」、「MEH-8000H」(明和化成社製)、「TD2090」(DIC社製)、ナフチレンエーテル型硬化剤の「EXB-6000」(DIC社製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、「LA3018」、「LA7052」、「LA7054」、「LA1356」(DIC社製)等が挙げられる。特に、フェノールノボラック型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好適であり、フェノールノボラック型硬化剤が特に好適である。
【0069】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0070】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。
【0071】
アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。
【0072】
アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0073】
活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0074】
活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0075】
活性エステル系硬化剤としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0076】
具体的には、活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、及びナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤がさらに好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0077】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、;りん含有活性エステル系硬化剤として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0078】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤が挙げられ、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0079】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0080】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0081】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
【0082】
シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0083】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0084】
(B-2)成分の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの硬化剤の質量である。
【0085】
(A)エポキシ樹脂と(B-2)成分との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(B-2)成分の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、(B-2)成分の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、(B-2)成分の種類によって異なる。また、(B-2)成分の反応基の合計数とは、各(B-2)成分の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての(B-2)成分について合計した値である。エポキシ樹脂と(B-2)成分との量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0086】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0087】
(B-2)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
【0088】
(B-2)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。
【0089】
(B)成分全体を100質量%とした場合、(B-1)成分の含有量をm(b1)とし、(B-2)成分の含有量をm(b2)としたとき、m(b1)/m(b2)としては、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0090】
<(C)無機充填材>
樹脂組成物は、(C)成分として(C)無機充填材を含有する。(C)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる。
【0091】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2050-SXF」;などが挙げられる。
【0093】
(C)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
【0094】
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
【0095】
(C)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定することで得られる。
【0096】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい(以下、この表面処理剤を「他の表面処理剤」ということがある。他の表面処理剤は、(C)無機充填材を表面処理する表面処理剤であり、後述する(D)成分とは区別される。)。表面処理剤としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;シラン系カップリング剤;フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0097】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-303」(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE-9007N」(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE-9103P」(3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン)、信越化学工業社製「X-12-1056ES」(メルカプト基保護型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「X-12-1214A」(ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0098】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0099】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0100】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0101】
(C)無機充填材の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0102】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-1)成分の含有量をm(b1)とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をm(c)としたとき、m(c)/m(b1)が、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは30以下、25以下、20以下である。m(c)/m(b1)を斯かる範囲内となるように調整することにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。
【0103】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の合計含有量をm(b)とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をm(c)としたとき、m(c)/m(b)が、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。m(c)/m(b)を斯かる範囲内となるように調整することにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。
【0104】
<(D)シランカップリング剤>
樹脂組成物は、任意の成分として、(D)シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤とは、無機充填材との結合に寄与する官能基と、エポキシ樹脂等の有機成分との結合に寄与する官能基とを有するシラン化合物をいう。(D)シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)成分は、通常(C)成分を表面処理する他の表面処理剤ではなく、(C)成分を表面処理しないシランカップリング剤である。
【0105】
無機充填材との結合に寄与する官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基が挙げられる。これらは1種単独で含まれてもよく、2種以上を組み合わせて含まれてもよい。中でも、無機充填材を効率よく表面処理し得る観点から、アルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、さらにより好ましくは1又は2である。シランカップリング剤は、1分子中に、無機充填材との結合に寄与する官能基を、好ましくは1~3個、より好ましくは2又は3個有する。
【0106】
有機成分との結合に寄与する官能基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、ビニル基、イソシアネート基、イミダゾリル基、ウレイド基、スルフィド基、及びイソシアヌレート基が挙げられる。これらは1種単独で含まれてもよく、2種以上を組み合わせて含まれてもよい。中でも、部品の実装工程における反りをより一層抑制し得る観点から、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、ビニル基、イソシアネート基及びイミダゾリル基からなる群から選択される1種以上が好ましい。シランカップリング剤は、1分子中に、有機成分との結合に寄与する官能基を、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個有する。
【0107】
シランカップリング剤の分子量は、表面処理時や乾燥時の揮発を抑制する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは140以上、160以上、180以上、又は200以上である。該分子量の上限は、適切な反応性の観点から、好ましくは800以下、より好ましくは750以下、さらに好ましくは700以下、650以下、600以下、550以下、500以下、450以下、又は400以下である。
【0108】
一実施形態において、シランカップリング剤は、下式(1)で表されるシラン化合物である。
Si(X)m1(Rm2(R4-m1-m2 (1)
[式中、
Xは、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、ビニル基、イソシアネート基、イミダゾリル基、ウレイド基、スルフィド基、及びイソシアヌレート基からなる群から選択される官能基を含む1価の基を表し、
は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、
は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
m1及びm2は、m1とm2の和が4以下であるとの条件付きで、それぞれ1~3の整数を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよく、Rが複数存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよく、Rが複数存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
【0109】
Xで表される1価の基の炭素原子数は、好ましくは20以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下、10以下、9以下、8以下、7以下、又は6以下である。該炭素原子数の下限は、Xで表される1価の基が含む官能基によっても異なるが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上又は3以上である。部品の実装工程における反りをより一層抑制し得る観点から、Xで表される1価の基としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、ビニル基、イソシアネート基及びイミダゾリル基からなる群から選択される1種以上の官能基を含む1価の基が好ましい。
【0110】
Xで表される1価の基の具体例としては、N-(アミノC1-10アルキル)-アミノC1-10アルキル基、N-(フェニル)-アミノC1-10アルキル基、N-(C1-10アルキリデン)-アミノC1-10アルキル基、(エポキシC3-10シクロアルキル)C1-10アルキル基、グリシドキシC1-10アルキル基、グリシジルC1-10アルキル基、メルカプトC1-10アルキル基、アクリルオキシC1-10アルキル基、メタクリルオキシC1-10アルキル基、ビニル基、スチリル基、イソシアネートC1-10アルキル基、イミダゾリルC1-10アルキル基、ウレイドC1-10アルキル基、トリ(C1-10アルコキシ)シリルC1-10アルキルテトラスルフィドC1-10アルキル基、及びジ[トリ(C1-10アルコキシ)シリルC1-10アルキル]イソシアヌレートC1-10アルキル基が挙げられる。中でも、N-(アミノC1-10アルキル)-アミノC1-10アルキル基、N-(フェニル)-アミノC1-10アルキル基、N-(C1-10アルキリデン)-アミノC1-10アルキル基、(エポキシC3-10シクロアルキル)C1-10アルキル基、グリシドキシC1-10アルキル基、グリシジルC1-10アルキル基、メルカプトC1-10アルキル基、アクリルオキシC1-10アルキル基、メタクリルオキシC1-10アルキル基、ビニル基、スチリル基、及びイソシアネートC1-10アルキル基、イミダゾリルC1-10アルキル基が好ましく、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(フェニル)-3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、グリシドキシプロピル基、グリシジルプロピル基、メルカプトプロピル基、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、ビニル基、スチリル基、及びイソシアネートプロピル基が特に好ましい。本明細書において、「C~C」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C~Cアルキル」という表現は、炭素原子数1~6のアルキル基を示す。
【0111】
で表されるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、さらにより好ましくは1又は2である。
【0112】
としては、無機充填材を効率よく表面処理し得る観点から、アルコキシ基が好ましい。
【0113】
で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4である。
【0114】
で表されるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~20、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。
【0115】
としては、アルキル基が好ましい。
【0116】
式(1)中、m1及びm2は、m1とm2の和が4以下であるとの条件付きで、それぞれ1~3の整数を表す。m1は好ましくは1又は2であり、m2は好ましくは2又は3である。
【0117】
好適なシランカップリング剤の例としては、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、[3-(1-イミダゾリル)プロピル]トリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及びトリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0118】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、「KBM-503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「X-12-1056ES」(メルカプト基保護型シランカップリング剤)等が挙げられる。中でも、シランカップリング剤の市販品としては、「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、「KBM-503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)が好ましい。
【0119】
樹脂組成物は、(i)~(iii)の態様がある。
(i)2種以上の他の表面処理剤を含む。
(ii)他の表面処理剤と(D)成分とを含む、及び
(iii)他の表面処理剤は含まず、2種以上の(D)成分を含む。
中でも、樹脂組成物としては、(ii)の態様、即ち他の表面処理剤と(D)成分とを含むことが好ましい。詳細は、(C)成分を表面処理する表面処理剤と、(D)成分として単独で樹脂組成物中に含有する表面処理剤とを含む。ここで「単独で樹脂組成物中に含有」とは、(D)成分が(C)成分の表面処理剤として含有していないことを表す。即ち、樹脂組成物の好適な一実施形態は、(C)成分を表面処理する表面処理剤と、(D)成分として(C)成分を表面処理しない表面処理剤とを含む。なお、(D)成分は、通常樹脂組成物中に遊離して存在している。他の表面処理剤がシランカップリング剤である場合、シランカップリング剤は(D)成分も含めて2種以上含むことになる。この場合、(C)成分を表面処理するシランカップリング剤と、(C)成分を表面処理しないシランカップリング剤とを含む。
【0120】
(D)シランカップリング剤の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0121】
(D)シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0122】
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。
【0123】
(E)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等のエポキシ樹脂硬化促進剤;過酸化物系硬化促進剤等の熱重合硬化促進剤等が挙げられる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0125】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0126】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0127】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0128】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0129】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0130】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、ジt-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0131】
過酸化物系硬化促進剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーヘキシルD」、「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0132】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0133】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0134】
<(F)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、着色剤、顔料、熱可塑性樹脂、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0135】
着色剤、顔料としては、例えば、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーン;アイオディン・グリーン;ジアゾイエロー;クリスタルバイオレット;酸化チタン;三菱ケミカル社製の「MA-600MJ-S)」、等のカーボンブラック;ナフタレンブラック等が挙げられる。
【0136】
着色剤、顔料の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0137】
樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに任意の溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。また、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶剤は、量が少ないほど好ましい。溶剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下であり、含まないこと(0質量%)が特に好ましい。また、樹脂組成物は、このように溶剤の量が少ない場合に、ペースト状であってもよい。ペースト状の樹脂組成物の25℃における粘度は、20Pa・s~1000Pa・sの範囲内にあることが好ましい。
【0138】
樹脂組成物の25℃における粘度としては、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下、さらに好ましくは400Pa・s以下、350Pa・s以下、300Pa・s以下である。下限は特に制限はないが1Pa・s以上等とし得る。粘度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0139】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0140】
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物は、(A)成分、(B-1)成分、(C)成分を含む。これにより、誘電正接が低く、クラック及びデラミネーションの発生が抑制された硬化物を得ることが可能となる。また、通常は、誘電率、圧縮成型時の成形性に優れる硬化物を得ることも可能となる。
【0141】
樹脂組成物を150℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電正接が低い封止層をもたらす。誘電正接は、好ましくは0.006以下、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.004以下である。誘電正接の下限値は、0.0001以上等とし得る。誘電正接の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0142】
樹脂組成物は、(B-1)成分を含有することから、チキソトロピックインデックスが低いという特性を示す。チキソトロピックインデックスとしては、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.20以下、さらに好ましくは1.10以下、1以下である。下限は特に限定されないが、0.01以上等とし得る。チキソトロピックインデックスは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0143】
樹脂組成物を用いた硬化物は、クラックの発生が抑制されるという特性を示す。よって、前記硬化物は、クラックの発生が抑制された封止層をもたらす。クラックの評価は、12インチシリコンウエハ上に、熱剥離シートを貼り、熱剥離シート上にシリコンチップを置く。シリコンチップ上にコンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて樹脂組成物を圧縮成型して、150℃で90分間樹脂組成物層を熱硬化させる。180℃に加熱することで熱剥離シート及びシリコンウエハを除去し樹脂ウエハを得る。この樹脂ウエハのサーマルサイクルテストを実施し、硬化物層に我が生じることがない。クラックの評価は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0144】
樹脂組成物を用いた硬化物は、デラミネーションの発生が抑制されるという特性を示す。よって、前記硬化物は、デラミネーションの発生が抑制された封止層をもたらす。デラミネーションの評価は、12インチシリコンウエハ上に、熱剥離シートを貼り、熱剥離シート上にシリコンチップを置く。シリコンチップ上にコンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて樹脂組成物を圧縮成型して、150℃で90分間樹脂組成物層を熱硬化させる。180℃に加熱することで熱剥離シート及びシリコンウエハを除去し樹脂ウエハを得る。この樹脂ウエハのサーマルサイクルテストを実施し、シリコンチップと硬化物層との界面でデラミネーションが生じることがない。デラミネーションの評価は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0145】
樹脂組成物を150℃で90分間熱硬化させた硬化物は、通常、誘電率が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電率が低い封止層をもたらす。誘電率は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、さらに好ましくは3.1以下である。誘電率の下限値は、0.001以上等とし得る。誘電率の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0146】
樹脂組成物を用いた硬化物は、通常、モールド後の樹脂残渣の発生が抑制されるという特性を示す。したがって、この樹脂組成物を用いることにより、樹脂残渣の発生が抑制された、成形性に優れる封止層を得ることができる。具体的には、12インチシリコンウエハ上に、樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:15分)を用いて圧縮成型して、厚さ700μmの樹脂組成物層を形成し、試料を形成する。このとき、好ましくは、リリースフィルムに樹脂組成物層の樹脂残渣は確認されない。成形性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0147】
樹脂組成物の硬化物は、上述した利点により、半導体等の封止層に有用である。よって、この樹脂組成物は、半導体封止用の樹脂組成物として用いることができる。樹脂組成物は、半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップの封止層形成用樹脂組成物)、半導体チップパッケージを封止するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの封止層形成用樹脂組成物)としても好適に使用することができる。
【0148】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0149】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0150】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、更に好ましくは500μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、又は、200μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されず、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、等でありうる。
【0151】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0152】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0153】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0154】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0155】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0156】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0157】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0158】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0159】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0160】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0161】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0162】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0163】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0164】
<半導体チップパッケージ>
本発明の半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する本発明の樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。
【0165】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0166】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルム(リリースフィルム)を積層する工程である。この積層は、例えば、仮固定フィルム側から基材に加熱圧着することにより、基材に仮固定フィルムを貼り合わせることで、行うことができる。仮固定フィルムを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を仮固定フィルムに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に仮固定フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0167】
基材と仮固定フィルムとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0168】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を仮固定フィルム側からプレスすることにより、積層された仮固定フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0169】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハー;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0170】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0171】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0172】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成する。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0173】
樹脂組成物の優れた圧縮成型性を活用して、樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う樹脂組成物層を形成する。
【0174】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0175】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0176】
成型条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0177】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。
【0178】
樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0179】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
また、工程(C)では、樹脂シートを用いて樹脂組成物層を形成してもよい。
【0180】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0181】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0182】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。
【0183】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、この熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0184】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0185】
再配線形成層の材料が感光性樹脂である場合のビアホールの形成方法では、通常、再配線形成層の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の再配線形成層を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0186】
再配線形成層を光硬化させた後で、再配線形成層を現像し、未露光部を除去して、ビアホールを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0187】
再配線形成層の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0188】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0189】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線層のような導体層は、通常、導体材料によって形成される。導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0190】
導体層は、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0191】
導体層の厚さは、再配線層のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0192】
導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって再配線形成層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層として再配線層を形成しうる。また、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する再配線層を形成してもよい。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0193】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0194】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0195】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0196】
<半導体装置>
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0197】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0198】
<合成例1:芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物A(化合物A)の合成>
反応容器にオルトアリルフェノール201質量部、トルエン1000質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド152質量部を仕込み溶解させた。容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液309gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ、芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Aを得た。得られた芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物Aの不飽和結合当量は仕込み比から算出すると199g/eq.であった。化合物Aは下記式で表される構造である。
【化9】
【0199】
<合成例2:化合物Bの合成>
反応容器に1-ナフトール288質量部、トルエン1400質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド203質量部を仕込み溶解させた。容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ活性エステル樹脂(分子量418.4)を得た。活性エステル樹脂の官能基当量は209g/当量、軟化点78℃であった。
【0200】
<使用した無機充填材>
無機充填材A:平均粒径9μm、比表面積5.0m/g、KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
無機充填材B:平均粒径1.5μm、最大径5μm以下、比表面積3.3m/g、KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
【0201】
<実施例1>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)3部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)3部、合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)5部、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「HNA-100」)8部、無機充填材A 110部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM403」)0.3部、カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA-100」)0.1部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.5部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0202】
<実施例2>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)6部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)6部、合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)5部、アミン系硬化剤(セイカ社製、4,4‘-ジアミノジフェニルスルホン「SEIKACURE-S」)2部、無機充填材A 100部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM403」)0.3部、カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA-100」)0.1部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.5部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0203】
<実施例3>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)5部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)5部、合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)5部、フェノール系硬化剤(明和化成社製「MEH-8000H」、フェノール性水酸基当量141g/eq.)4部、無機充填材A 90部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM403」)0.3部、カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA-100」)0.1部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.5部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0204】
<実施例4>
実施例1において、無機充填材A 110部を、無機充填材B 90部に変えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0205】
<実施例5>
実施例2において、無機充填材A 100部を、無機充填材B 80部に変えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0206】
<実施例6>
実施例4において、
1)ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)の量を3部から5部に変え、
2)脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)の量を3部から4部に変え、
3)合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)の量を5部から2部に変えた。
以上の事項以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0207】
<実施例7>
実施例4において、合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)の量を5部から12部に変え、
酸無水物系硬化剤(新日本理化製「HNA-100」)の量を8部から3部に変えた。
以上の事項以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0208】
<比較例1>
実施例1において、
1)ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)の量を3部から6部に変え、
2)脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)の量を3部から5部に変え、
3)合成例1で得た芳香族エステル骨格及び不飽和結合含有化合物(化合物A)5部を、合成例2で得た化合物B 5部に変えた。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0209】
<誘電率(Dk)、及び誘電正接(Df)の測定>
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、離型処理したシリコンウエハから樹脂組成物を剥がし、150℃で90分間加熱して樹脂組成物を熱硬化させサンプルを作製した。ファブリペロー法により60GHzでの誘電率、誘電正接の測定を行った。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。また、誘電正接については以下の基準で評価した。
〇:誘電正接が0.005未満である。
×:誘電正接が0.005以上である。
【0210】
<粘度の測定>
実施例または比較例の樹脂組成物の粘度を、粘度校正用標準液JS52000で校正したE型粘度計RE-80U(東機産業社製)コーンローター3°×R9.7を用い、温度25℃および回転数5rpmの条件にて測定した。
【0211】
<チキソトロピックインデックスの測定>
チキソトロピックインデックスはロータ回転数5rpmで測定した粘度と1rpmで測定した粘度の比(1rpmでの粘度/5rpmでの粘度)で表した。
【0212】
<圧縮成型時の成形性の評価>
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:15分)を用いて圧縮成型して、厚さ700μmの樹脂組成物層を形成した。圧縮成型時に使用する、金型上に設けるリリースフィルムはAGC社製「アフレックス50MW 390NT」を用い、以下の基準で評価した。
〇:圧縮成型後リリースフィルム上に樹脂残差が見られない。
△:圧縮成型後リリースフィルム上に樹脂残差が見られないが離型性が悪い。
×:圧縮成型後リリースフィルム上に樹脂残差が見られた。
【0213】
<クラック、デラミネーションの評価>
12インチシリコンウエハ上に常温時に粘着性を有し且つ加熱時に容易に剥離できる熱剥離シート(Thermal release tape;日東電工社製「リバアルファ」両面タイプ)を貼り付けた。この熱剥離シート上に、1cm角シリコンチップ(厚さ400μm)を、等間隔に100個置いた。続いて、シリコンチップを置かれた熱剥離シート上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、シリコンチップが埋め込まれた層厚さ500μmの樹脂組成物層を形成し、150℃で90分オーブンで加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、180℃で加熱して熱剥離シートを剥離可能な状態にして、熱剥離シート及びシリコンウエハを除去した。これにより、樹脂組成物層の硬化物層と、この硬化物層に埋め込まれたシリコンチップとを含む樹脂ウエハを得た。
【0214】
その後、樹脂ウエハのサーマルサイクルテストを実施した。このサーマルサイクルテストは、-55℃への冷却と125℃への加熱とを1サイクルとして、前記の冷却及び加熱を1000サイクル繰り返す試験である。サーマルサイクルテスト後に樹脂ウエハを観察し、以下の基準でデラミネーション及びクラックを評価した。
【0215】
(デラミネーションの評価)
〇:シリコンチップと硬化物層との界面でデラミネーションが生じていない率が95%以上である。また、硬化物層に割れが生じていない。
△:シリコンチップと硬化物層との界面でデラミネーションが生じていない率が90%以上、95%未満である。また、硬化物層に割れが生じていない。
×:シリコンチップと硬化物層との界面でデラミネーションが生じていない率が90%未満もしくは硬化物層が割れている。
【0216】
(クラックの評価)
〇:硬化物層に割れが生じていない。
△:硬化物層に割れが1か所生じている。
×:硬化物層に割れが2か所以上生じている。
【0217】
【表1】
*表中、「(C)成分の含有量」は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量を表す。
【0218】
実施例1~7において、(D)成分~(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。