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特許7396250交直変換装置および交直変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】交直変換装置および交直変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20231205BHJP
【FI】
H02M7/493
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020184784
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074610
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰裕
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070179(JP,A)
【文献】特表2004-510400(JP,A)
【文献】特開2017-112732(JP,A)
【文献】特開2020-124070(JP,A)
【文献】特開2009-055696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-1/44
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源に接続される直流リンク電圧入力部と、共振周波数で矩形波電圧を出力する矩形波電圧出力部と、前記直流リンク電圧入力部と矩形波電圧出力部の間に並列に接続されたM個の単相インバータユニットと、前記M個の単相インバータユニットの半導体スイッチング素子駆動用のゲート指令信号を生成するゲート指令信号生成部と、を備えた交直変換装置であり、
前記M個の単相インバータユニットは、Kを1以上M以下の整数として、各々の単相インバータユニット(K)が、直流リンク電圧入力部に接続された平滑コンデンサC(K)および平滑コンデンサC(K)の両端間にブリッジ接続された半導体スイッチング素子U(K),X(K),V(K),Y(K)を有しており、
前記ゲート指令信号生成部は、
前記単相インバータユニットの並列数Mを3以上に、Nを3以上で且つ2M-3以下の奇数に各々設定し、2K-1+Nが2Mを超える場合は2K-1+Nから2Mを減算するという条件下で、
1クロック期間は出力電流の半サイクルに相当し、2K-1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U(K)/Y(K)と、2K-1+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V(K)/X(K)とを生成することを特徴とする交直変換装置。
【請求項2】
前記M個の単相インバータユニットは、各直流リンク電圧入力部と平滑コンデンサC1~C(M)の間に各々接続された入力側リアクトルと、各矩形波電圧出力部に各々接続された出力側リアクトルとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の交直変換装置。
【請求項3】
前記M個の単相インバータユニットの半導体スイッチング素子各々に設けられ、半導体スイッチング素子のゲート電圧が閾値以下となったときにゲート駆動を抑制するアクティブミラークランプ回路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の交直変換装置。
【請求項4】
前記MおよびNは5以上の奇数に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の交直変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の交直変換装置を実行することを特徴とする交直変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば誘導加熱回路などの共振負荷に矩形波電圧を供給する交直変換装置における、半導体スイッチング素子のスイッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、共振負荷に接続された交直変換装置(負荷共振電力変換装置)の回路構成を示している。図1において、交直変換装置10は、入力側が直流電圧源11に接続され、出力側が誘導加熱回路などの共振負荷12に接続された複数の単相インバータを備えている。この複数の単相インバータの各半導体スイッチング素子をON,OFF制御することにより、共振周波数で矩形波電圧を共振負荷12に出力する。
【0003】
複数の単相インバータを備えた交直変換装置においては、例えば特許文献1のように単相インバータを順番に駆動することでスイッチング周波数の低い素子で高周波出力を実現している。
【0004】
しかし、何かしらの理由でデッドタイムが低減した場合、U,X相又はV,Y相のインピーダンスが低いため、瞬時的に大きな短絡電流が流れる。
【0005】
また、半導体スイッチング素子を構成する、例えばSiC素子はdV/dtが高く、上アームのON/OFF動作時のサージなどによって下アームが誤動作することがある。その対策の一つに例えば図11に示すアクティブミラークランプ回路の実装がある。
【0006】
図11において、Q1-1は単相インバータ内の1つの半導体スイッチング素子である。Q2は、抵抗RG-Pを介して入力される半導体スイッチング素子Q1-1のオンゲート指令によりオン制御されて、ゲート抵抗RG(on)を介してQ1-1をオン制御させる正バイアス用スイッチング素子である。
【0007】
Q3は、抵抗RG-nを介して入力される半導体スイッチング素子Q1-1のオフゲート指令によりオン制御されて、ゲート抵抗RG(off)を介してQ1-1をオフ制御させる負バイアス用スイッチング素子である。
【0008】
図11のアクティブミラークランプ回路は、半導体スイッチング素子Q1-1のゲート電圧が負バイアスとなったら負バイアス用スイッチング素子Q3をONすることでゲートを負バイアスに引き込む動作をする。負バイアスとなったことを判断するために、センサ(コンパレータ)を設けるが、それによってノイズ等による誤動作の危険がある。
【0009】
そこで、図11の構成のとおり、アクティブミラークランプ用スイッチング素子Q4のドレインを半導体スイッチング素子Q1-1のゲートに接続し、Q4のゲートを、抵抗RGM、コンデンサ21、ダイオード22(ミラークランプ動作タイミング調整用ダイオード)を介して負バイアス用スイッチング素子Q3のゲート側に接続している。
【0010】
そして、信号がONするときはRC回路による遅延を生じさせ、OFFするときはダイオード22によって遅延を生じないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-70179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図11のアクティブミラークランプ回路は、半導体スイッチング素子Q1-1のゲート電圧を監視し一定値以下となったらゲート抵抗を介さずに、スイッチング素子Q4でコモン電位もしくは逆バイアス電位に引き込むよう動作し、これによって誤ゲート駆動を抑制している。
【0013】
しかし、ゲート電圧の低下までの時間は素子のゲート容量とゲート抵抗値に依存し、この時定数よりも後にアクティブミラークランプを動作させなければならない。加えて、アクティブミラークランプ用スイッチング素子Q4のゲート電圧スレッショルドのばらつきによって遅延時間もばらつく。数100KHzの高周波電源などで求められるデッドタイムは100ns程度やそれ以下であるのに対して、ばらつきも含めたアクティブミラークランプの動作時間はそれ以下を求められ非常に厳しいものになる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、複数の単相インバータユニットを備えた交直変換装置において、同一ユニット内の半導体スイッチング素子の連続駆動をなくし、半導体スイッチング素子の誤動作を防止することができる交直変換装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための請求項1に記載の交直変換装置は、
直流電圧源に接続される直流リンク電圧入力部と、共振周波数で矩形波電圧を出力する矩形波電圧出力部と、前記直流リンク電圧入力部と矩形波電圧出力部の間に並列に接続されたM個の単相インバータユニットと、前記M個の単相インバータユニットの半導体スイッチング素子駆動用のゲート指令信号を生成するゲート指令信号生成部と、を備えた交直変換装置であり、
前記M個の単相インバータユニットは、Kを1以上M以下の整数として、各々の単相インバータユニット(K)が、直流リンク電圧入力部に接続された平滑コンデンサC(K)および平滑コンデンサC(K)の両端間にブリッジ接続された半導体スイッチング素子U(K),X(K),V(K),Y(K)を有しており、
前記ゲート指令信号生成部は、
前記単相インバータユニットの並列数Mを3以上に、Nを3以上で且つ2M-3以下の奇数に各々設定し、2K-1+Nが2Mを超える場合は2K-1+Nから2Mを減算するという条件下で、
1クロック期間は出力電流の半サイクルに相当し、2K-1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U(K)/Y(K)と、2K-1+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V(K)/X(K)とを生成することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載の交直変換装置は、請求項1において、
前記M個の単相インバータユニットは、各直流リンク電圧入力部と平滑コンデンサC1~C(M)の間に各々接続された入力側リアクトルと、各矩形波電圧出力部に各々接続された出力側リアクトルとを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の交直変換装置は、請求項1又は2において、
前記M個の単相インバータユニットの半導体スイッチング素子各々に設けられ、半導体スイッチング素子のゲート電圧が閾値以下となったときにゲート駆動を抑制するアクティブミラークランプ回路を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の交直変換装置は、請求項1から3のいずれか1項において、
前記MおよびNは5以上の奇数に設定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の交直変換装置の制御方法は、
請求項1から4のいずれか1項に記載の交直変換装置を実行することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
(1)請求項1~5に記載の発明によれば、複数の単相インバータユニットを時分割駆動する際に、同一ユニット内の半導体スイッチング素子が連続して駆動されることがない。すなわち、例えばM=3なら3クロック後、M=5なら5クロック後に同一ユニットの半導体スイッチング素子が駆動される。このため半導体スイッチング素子の誤動作が防止される。
(2)請求項2に記載の発明によれば、ゲート駆動のデッドタイムが短くなっても入力側リアクトル、出力側リアクトルによって短絡電流増加の傾きを抑制することができる。
(3)請求項3に記載の発明によれば、アクティブミラークランプ回路の遅延時間の影響を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用される共振負荷用電力変換装置の構成図。
図2】本発明の実施例1による単相インバータユニットの構成図。
図3】本発明の実施例1によるゲート信号生成パターンの一例を示す信号波形図。
図4】本発明の実施例1におけるU1-X2間短絡の電流ルートを示す説明図。
図5】本発明の実施例1におけるV2-Y1間のノイズのルートを示す説明図。
図6】本発明の実施例2による単相インバータユニットの構成図。
図7】本発明の実施例2によるゲート信号生成パターンの一例を示す信号波形図。
図8】本発明の実施例3によるM並列の単相インバータユニットの構成図。
図9】本発明の実施例3による4並列の単相インバータユニットの構成図。
図10】本発明の実施例1における効果を表し、(a)は3並列の単相インバータユニットの構成図、(b)は同一ユニット内素子が動作する間隔の説明図。
図11】単相インバータユニット内の半導体スイッチング素子に用いられるアクティブミラークランプ回路の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図2は実施例1による交直変換装置の単相インバータユニットを3並列とした構成例を示している。図2において、100INは、図示省略の直流電圧源の正、負極端に接続される直流リンク電圧入力部である。直流リンク電圧入力部100INには、入力部インダクタンスLDC11,LDC12(入力側リアクトル)を介して平滑コンデンサC1が接続されている。
【0024】
平滑コンデンサC1の両端間には、半導体スイッチング素子U1,X1,V1,Y1がブリッジ接続され、半導体スイッチング素子U1とX1の共通接続点には出力部インダクタンスLAC11(出力側リアクトル)の一端が接続され、半導体スイッチング素子V1とY1の共通接続点には出力部インダクタンスLAC12(出力側リアクトル)の一端が接続されている。
【0025】
前記入力部インダクタンスLDC11,LDC12、平滑コンデンサC1、半導体スイッチング素子U1,X1,V1,Y1および出力部インダクタンスLAC11,LAC12によって単相インバータユニット1を構成している。
【0026】
出力部インダクタンスLAC11,LAC12の各他端は矩形波電圧出力部100OUTを介して図示省略の共振負荷に接続されている。
【0027】
単相インバータユニット1と同様に接続された入力部インダクタンスLDC21,LDC22、平滑コンデンサC2、半導体スイッチング素子U2,X2,V2,Y2および出力部インダクタンスLAC21,LAC22によって単相インバータユニット2が構成され、
単相インバータユニット1と同様に接続された入力部インダクタンスLDC31,LDC32、平滑コンデンサC3、半導体スイッチング素子U3,X3,V3,Y3および出力部インダクタンスLAC31,LAC32によって単相インバータユニット3が構成されている。
【0028】
単相インバータユニット2、3の入力側は各々直流リンク電圧入力部100INに共通に接続され、単相インバータユニット2、3の出力側は各々矩形波電圧出力部100OUTに共通に接続されている。
【0029】
単相インバータユニット1、2、3内の各半導体スイッチング素子は、図示省略のゲート指令信号生成部で生成されたゲート指令信号によってON,OFF制御され、これによって共振周波数の矩形波電圧が矩形波電圧出力部100OUTから出力される。
【0030】
半導体スイッチング素子U1,X1,V1,Y1,U2,X2,V2,Y2,U3,X3,V3,Y3は、特に高速動作によるノイズ発生が顕著な、高バンドギャップ系スイッチング素子(炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga23)等を用いた、MOSFET等)において好適であるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、例えば珪素(Si)系のIGBTなどでもよい。
【0031】
ゲート指令信号生成部で生成されるゲート指令の信号生成パターンは図3のように構成される。
【0032】
図3は単相インバータユニットの並列数M=3を想定して、1周期が6クロック(2Mクロック)の信号生成パターンを示す。1クロック期間は出力電流の半サイクルに相当する。
【0033】
尚、以下の実施例において、ゲート指令の表記は、半導体スイッチング素子のU1,X1,V1,Y1…と同じ表記としている。
【0034】
ゲート指令信号パターンは、
1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U1/Y1と、
U1/Y1より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V2/X2と、
V2/X2より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U3/Y3と、
U3/Y3より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V1/X1と、
V1/X1より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U2/Y2と、
U2/Y2より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V3/X3と、
から構成される。
【0035】
図3のパターンによれば、単相インバータユニット1→2→3→1→2→3→1→2…の順に駆動されており、同一ユニットが駆動されるのは3クロック後である。このように同一ユニット内の半導体スイッチング素子が連続して駆動されることがないので、半導体スイッチング素子の誤動作が防止される。
【0036】
本実施例1において、例えば単相インバータユニット1の半導体スイッチング素子U1/Y1がOFF動作した後、単相インバータユニット2の半導体スイッチング素子V2/X2がON動作する。短絡しないようにデッドタイムを設けるが、何かしらの要因でデッドタイムが短くなり、短絡が起きた場合、図4の矢印に示すように、単相インバータユニット1の平滑コンデンサC1→半導体スイッチング素子U1→出力部インダクタンスLAC11→単相インバータユニット2の出力部インダクタンスLAC21→半導体スイッチング素子X2→入力部インダクタンスLDC22→単相インバータユニット1の入力部インダクタンスLDC12→平滑コンデンサC1のルートで短絡電流が発生する。
【0037】
この短絡電流ルートにより、電流増加の傾きを抑制できる。出力が高周波である関係から交流側は通常導体であるが、直流側は電線でも良いため、入力部インダクタンスLDC12,LDC22は大きな値になり、より電流増加の傾きが低減される。
【0038】
また、図5において半導体スイッチング素子Y1を代表に遮断ノイズの影響を説明する。半導体スイッチング素子Y1がOFFした後に半導体スイッチング素子V2のON/OFF動作によるサージが発生するが、矢印に示すように出力部インダクタンスLAC22,LAC12を介して流れるため、サージは半導体スイッチング素子Y1に到達しにくい。
【0039】
半導体スイッチング素子V1のON/OFF動作によるサージが最も半導体スイッチング素子Y1に影響を与えるが、Y1がOFF動作してから同一ユニット内のV1がONするのは3クロック後となる。アクティブミラークランプ回路の動作開始はゲート電圧の低下時間に依存するので遅れてしまうことがあるが、上記の傾向から、本実施例によって遅れによる問題を解決できる。
【実施例2】
【0040】
本実施例2では、並列接続する単相インバータユニットの個数を図6に示すように(2N+1)(Nは2以上の整数)とした。図6において図2と同一部分は同一符号をもって示している。
【0041】
図2と同様に構成された単相インバータユニット1、2、3と、…単相インバータユニット1と同様に接続され、入力部インダクタンスLDC(2N+1)1、LDC(2N+1)2、平滑コンデンサC(2N+1)、半導体スイッチング素子U(2N+1)、X(2N+1)、V(2N+1)、Y(2N+1)および出力部インダクタンスLAC(2N+1)1、LAC(2N+1)2を備えた単相インバータユニット(2N+1)とが、直流リンク電圧入力部100INと矩形波電圧出力部100OUT間に並列に接続されている。
【0042】
ゲート指令信号生成部で生成されるゲート指令の信号生成パターンは図7のように構成される。
【0043】
図7は単相インバータユニットの並列数M=(2N+1)を想定して、1周期が2*(2N+1)クロック(2Mクロック)の信号生成パターンを示す。1クロック期間は出力電流の半サイクルに相当する。
【0044】
ゲート指令信号パターンは、
1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U1/Y1と、
U1/Y1より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V2/X2と、
V2/X2より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U3/Y3と、



V(2N)/X(2N)より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U(2N+1)/Y(2N+1)と、
U(2N+)/Y(2N+1)より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V1/X1と、
V1/X1より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U2/Y2と、



U(2N)/Y(2N)より1クロック遅延した1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V(2N+1)/X(2N+1)と、
から構成される。
【0045】
図7のパターンによれば、単相インバータユニット1→2→3→…→(2N+1)→1→2→3→…→(2N+1)…の順に駆動されており、同一ユニットが駆動されるのは2N+1クロック後である。このように同一ユニット内の半導体スイッチング素子が連続して駆動されることがないので、半導体スイッチング素子の誤動作が防止される。
【0046】
本実施例2においても、図4で述べた短絡電流抑制効果が得られ、図5で述べた遮断ノイズの影響を解決することができる。
【実施例3】
【0047】
本実施例3では、並列接続する単相インバータユニットの並列個数を図8に示すようにM(Mは任意の正の整数であり、奇数偶数は問わない)とした。
【0048】
図8において図2と同一部分は同一符号をもって示している。
【0049】
図2と同様に構成された単相インバータユニット1、2と、…単相インバータユニット1と同様に接続され、入力部インダクタンスLDC(K)1、LDC(K)2、平滑コンデンサC(K)、半導体スイッチング素子U(K)、X(K)、V(K)、Y(K)および出力部インダクタンスLAC(K)1、LAC(K)2を備えた単相インバータユニットKと、…単相インバータユニット1と同様に接続され、入力部インダクタンスLDC(M)1、LDC(M)2、平滑コンデンサC(M)、半導体スイッチング素子U(M)、X(M)、V(M)、Y(M)および出力部インダクタンスLAC(M)1、LAC(M)2を備えた単相インバータユニットMとが、直流リンク電圧入力部100INと矩形波電圧出力部100OUT間に並列に接続されている。
【0050】
ゲート指令信号生成部で生成されるゲート指令の信号生成パターンは次のように構成される。
【0051】
1クロック期間は出力電流の半サイクルに相当し、
1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U1/Y1と、
1+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V1/X1と、
3番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U2/Y2と、
3+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V2/X2と、



2K-1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U(K)/Y(K)と、
2K-1+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V(K)/X(K)と、



2M-1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U(M)/Y(M)と、
2M-1+N番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V(M)/X(M)と、
から構成される。
【0052】
前記Nは3以上、且つ2M-3以下の奇数であり、U(M)/Y(M)とV(M)/X(M)の駆動されるクロック期間数の差に相当。2K-1+Nが2Mを超える場合は2Mを減算したものを用いる(Kは1以上M以下の整数)。
【0053】
ここで、U(M)/Y(M)はいずれも奇数回目、V(M)/X(M)はいずれも偶数回目に駆動されることから、Nは奇数と偶数の差が奇数であることより、奇数となる。また、N=1ではU(M)/Y(M)の次にV(M)/X(M)が、N=M-1ではV(M)/X(M)の次にU(M)/Y(M)が駆動されるため(すなわち同一ユニットが連続して駆動されるため)、これらを除外して、Nは3以上2M-3以下の奇数である必要がある。
【0054】
次に単相インバータユニットが4並列である場合の例を図9とともに説明する。この場合2M-3=2*4-3=5であるので、Nは3と5である。
【0055】
図9において図2と異なる点は、単相インバータユニット1、2、3に加えて、単相インバータユニット1と同様に構成された単相インバータユニット4がさらに並列に接続されていることである。
【0056】
図9の構成におけるゲート指令の信号生成パターンは、
N=3ならば、
1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U1/Y1と、
4番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V1/X1と、
3番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U2/Y2と、
6番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V2/X2と、
5番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U3/Y3と、
8番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V3/X3と、
7番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U4/Y4と、
2番目(10番目)に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V4/X4と、
から構成される。
【0057】
10番目は4ユニット×2(すなわち2M)を超えるので、2番目とする。
【0058】
またN=5ならば、
1番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U1/Y1と、
6番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V1/X1と、
3番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U2/Y2と、
8番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V2/X2と、
5番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U3/Y3と、
2番目(10番目)に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V3/X3と、
7番目に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令U4/Y4と、
4番目(12番目)に1クロック期間のON信号を出力するゲート指令V4/X4と、
から構成される。
【0059】
10番目は4ユニット×2(すなわち2M)を超えるので、2番目とする。12番目は4ユニット×2(すなわち2M)を超えるので、4番目とする。
【0060】
前記N=3の場合の信号パターンによれば、単相インバータユニット1→4→2→1→3→2→4→3…の順に駆動されており、同一ユニットが駆動されるのは最短でも3クロック後である。
【0061】
また前記N=5の場合の信号パターンによれば、単相インバータユニット1→3→2→4→3→1→4→2…の順に駆動されており、同一ユニットが駆動されるのは最短でも3クロック後である。
【0062】
したがって本実施例3においても、同一ユニット内の半導体スイッチング素子が連続して駆動されることがないので、半導体スイッチング素子の誤動作が防止される。
【0063】
尚、前記実施例2は本実施例3においてMを奇数、N=Mとした場合について、ユニット番号を入れ替えた形に相当し、同一の構成である。
【0064】
例として、単相インバータユニットの3並列及び5並列における対応は次の表1、表2のようになる。それ以上の場合においても、本実施例3におけるユニット番号が、1~(M+1)/2番目のものを奇数(1,3,…,M)に、(M+3)/2~M番目のものを偶数(2,4,…,M-1)に、それぞれ順に配置したものが実施例2に相当する。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1において、実施例3では単相インバータユニット1→3→2→1→3→2の順に駆動されるのに対し、実施例2では単相インバータユニット1→2→3→1→2→3の順に駆動されている。どちらの実施例でも、同一ユニット内の半導体スイッチング素子は連続駆動されない。
【0068】
また表2において、実施例3では単相インバータユニット1→4→2→5→3→1→4→2→5→3の順に駆動されるのに対し、実施例2では単相インバータユニット1→2→3→4→5→1→2→3→4→5の順に駆動されている。どちらの実施例でも、同一ユニット内の半導体スイッチング素子は連続駆動されない。
【0069】
実施例1~3のいずれにおいても同一ユニット内の半導体スイッチング素子は連続して駆動されることはないが、その動作間隔のイメージの一例を図10に示す。
【0070】
図10は単相インバータユニットが3並列の例であるが、図10(b)の波形図のように各ゲートのオン時間は出力周波数の半サイクル分となり、単相インバータユニット1のU1/Y1がOFF動作してから単相インバータユニット1のV1/X1がON動作するまでの時間は出力周波数が500kHzであれば2000nsほどとなり、前記図11の説明で述べたデッドタイム100nsと比較して非常に大きな値であり、ばらつきの制約も大きく緩和される。
【符号の説明】
【0071】
1~M…単相インバータユニット
10…交直変換装置
11…直流電圧源
12…共振負荷
21…コンデンサ
22…ダイオード
100IN…直流リンク電圧入力部
100OUT…矩形波電圧出力部
LDC11,LDC12~LDC(M)1,LDC(M)2…入力部インダクタンス
LAC11,LAC12~LAC(M)1,LAC(M)2…出力部インダクタンス
C1~C(M)…平滑コンデンサ
U1,X1,V1,Y1~U(M),X(M),V(M),Y(M)…半導体スイッチング素子
Q2…正バイアス用スイッチング素子
Q3…負バイアス用スイッチング素子
Q4…アックティブミラークランプ用スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11