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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】噛み合いクラッチの位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 11/10 20060101AFI20231205BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F16D11/10 Z
G01B7/30 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188039
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077264
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
(72)【発明者】
【氏名】安東 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 孝範
(72)【発明者】
【氏名】公森 俊之
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-035234(JP,U)
【文献】特開2001-235377(JP,A)
【文献】特開2000-338257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14,25/00-39/00,48/00-48/12
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線(AL1)を中心に回転し、前記軸線を中心に回転するときの回転方向の全周にわたって複数の第1ギヤ歯(13)が形成された第1係合部材(11)と、前記軸線を中心に前記第1係合部材と同じ方向に回転し、前記複数の第1ギヤ歯と噛み合う複数の第2ギヤ歯(14)が前記回転方向の全周にわたって形成された第2係合部材(12)と、の少なくとも一方が前記軸線に平行な軸線方向(DR1)に移動することで、前記複数の第1ギヤ歯と前記複数の第2ギヤ歯とが噛み合って前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合する係合状態と、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが離間する解放状態との切り替えが可能である噛み合いクラッチ(10)に適用され、前記第1係合部材と前記第2係合部材との位置関係を検出する噛み合いクラッチの位置検出装置であって、
前記第1係合部材および前記第2係合部材に対して前記軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、同じ極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
前記解放状態のときの前記複数の第1ギヤ歯、前記複数の第2ギヤ歯、および、前記複数の第1ギヤ歯と前記複数の第2ギヤ歯との前記軸線方向での間の空間のそれぞれに対して前記径方向で対向する第1端面(43b)を有し、前記2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と前記第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
前記解放状態ときの前記複数の第1ギヤ歯、前記複数の第2ギヤ歯、および、前記複数の第1ギヤ歯と前記複数の第2ギヤ歯との前記軸線方向での間の空間のそれぞれに対して前記径方向で対向する第2端面(44b)を有し、前記2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と前記第2端面との間に磁束を通過させ、前記第1ヨークに対して間を空けて前記回転方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間に配置され、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間を通過する磁束における前記径方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える、噛み合いクラッチの位置検出装置。
【請求項2】
軸線(AL1)を中心に回転し、前記軸線を中心に回転するときの回転方向の全周にわたって複数の第1ギヤ歯(13)が形成された第1係合部材(11)と、前記軸線を中心に前記第1係合部材と同じ方向に回転し、前記複数の第1ギヤ歯と噛み合う複数の第2ギヤ歯(14)が前記回転方向の全周にわたって形成された第2係合部材(12)と、の少なくとも一方が前記軸線に平行な軸線方向(DR1)に移動することで、前記複数の第1ギヤ歯と前記複数の第2ギヤ歯とが噛み合って前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合する係合状態と、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが離間する解放状態との切り替えが可能である噛み合いクラッチ(10)に適用され、前記第1係合部材と前記第2係合部材との位置関係を検出する噛み合いクラッチの位置検出装置であって、
前記第1係合部材および前記第2係合部材に対して前記軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、同じ極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
前記解放状態のときの前記複数の第1ギヤ歯に対して前記径方向で対向する第1端面(43b)を有し、前記2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と前記第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
前記解放状態のときの前記複数の第2ギヤ歯に対して前記径方向で対向する第2端面(44b)を有し、前記2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と前記第2端面との間に磁束を通過させ、前記第1ヨークに対して間を空けて前記軸線方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間に配置され、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間を通過する磁束における前記径方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える、噛み合いクラッチの位置検出装置。
【請求項3】
軸線(AL1)を中心に回転し、前記軸線を中心に回転するときの回転方向の全周にわたって複数の第1ギヤ歯(13)が形成された第1係合部材(11)と、前記軸線を中心に前記第1係合部材と同じ方向に回転し、前記複数の第1ギヤ歯と噛み合う複数の第2ギヤ歯(14)が前記回転方向の全周にわたって形成された第2係合部材(12)と、の少なくとも一方が前記軸線に平行な軸線方向(DR1)に移動することで、前記複数の第1ギヤ歯と前記複数の第2ギヤ歯とが噛み合って前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合する係合状態と、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが離間する解放状態との切り替えが可能である噛み合いクラッチ(10)に適用され、前記第1係合部材と前記第2係合部材との位置関係を検出する噛み合いクラッチの位置検出装置であって、
前記第1係合部材および前記第2係合部材に対して前記軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、異なる極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
前記解放状態のときの前記複数の第1ギヤ歯に対して前記径方向で対向する第1端面(43b)を有し、前記2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と前記第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
前記解放状態のときの前記複数の第2ギヤ歯に対して前記径方向で対向する第2端面(44b)を有し、前記2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と前記第2端面との間に磁束を通過させ、前記第1ヨークに対して間を空けて前記軸線方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間に配置され、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの間を通過する磁束における前記軸線方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える、噛み合いクラッチの位置検出装置。
【請求項4】
前記磁界発生部は、
前記一方の磁極部としての第1磁極部(41a)、および、前記第1磁極部と異なる極性の第2磁極部(41b)を有する第1磁石(41)と、
前記他方の磁極部としての第3磁極部(42a)、および、前記第3磁極部と異なる極性の第4磁極部(42b)を有する第2磁石(42)と、を備え、
前記位置検出装置は、前記第2磁極部と前記第4磁極部との間に磁束を通過させる第3ヨーク(45)を備える、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の噛み合いクラッチの位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛み合いクラッチの位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気検出素子であるホール素子を用いて、噛み合いクラッチの第1係合部材と第2係合部材との位置関係を検出する噛み合いクラッチの位置検出装置が開示されている。この位置検出装置は、第1係合部材と第2係合部材との係合可能時期の検出のために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-513766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
噛み合いクラッチの制御では、噛み合いクラッチの係合不具合を防止するため、係合可能時期の検出と、係合が完了した係合完了状態の検出とが必要である。しかしながら、上記の特許文献1には、係合完了状態の検出については、何ら述べられていない。また、係合完了状態の検出のために、係合可能時期の検出のために用いる磁気検出素子とは、別の磁気検出素子を用いることは、コストが増大するため、好ましくない。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、第1係合部材と第2係合部材との位置関係を検出する噛み合いクラッチの位置検出装置であって、同じ磁気検出素子を用いて、第1係合部材と第2係合部材との係合可能時期の検出と、第1係合部材と第2係合部材との係合完了状態の検出との両方が可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、噛み合いクラッチの噛み合いクラッチの位置検出装置は、
第1係合部材および第2係合部材に対して軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、同じ極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
解放状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯、および、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との軸線方向での間の空間のそれぞれに対して径方向で対向する第1端面(43b)を有し、2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
解放状態ときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯、および、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との軸線方向での間の空間のそれぞれに対して径方向で対向する第2端面(44b)を有し、2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と第2端面との間に磁束を通過させ、第1ヨークに対して間を空けて回転方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
第1ヨークおよび第2ヨークの間に配置され、第1ヨークおよび第2ヨークの間を通過する磁束における径方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の発明によれば、噛み合いクラッチの位置検出装置は、
第1係合部材および第2係合部材に対して軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、同じ極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
解放状態のときの複数の第1ギヤ歯に対して径方向で対向する第1端面(43b)を有し、2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
解放状態のときの複数の第2ギヤ歯に対して径方向で対向する第2端面(44b)を有し、2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と第2端面との間に磁束を通過させ、第1ヨークに対して間を空けて軸線方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
第1ヨークおよび第2ヨークの間に配置され、第1ヨークおよび第2ヨークの間を通過する磁束における径方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える。
【0008】
請求項1、2に記載の発明によれば、磁界発生部、第1ヨークおよび第2ヨークは、磁気回路を構成する。この磁気回路により、第1ヨークと第2ヨークとの間に、径方向の一方側から他方側へ向かう磁束が発生する。磁気検出素子は、第1ヨークと第2ヨークとの間に配置され、磁気検出素子を通過する磁束における径方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する。
【0009】
磁気検出素子、第1ヨークの第1端面および第2ヨークの第2端面の付近において、複数の第1ギヤ歯のそれぞれと複数の第2ギヤ歯のそれぞれとの位置関係が変化することによって、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束の向きが変化する。これにより、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における径方向の磁束強度が変化する。
【0010】
複数の第1ギヤ歯のそれぞれと複数の第2ギヤ歯のそれぞれとが、軸線方向で対向している係合不可状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転するとき、対向する第1ギヤ歯および第2ギヤ歯の組と、対向する第1空隙部および第2空隙部の組とが、交互に、磁気検出素子の付近を通過する。第1空隙部は、回転方向で隣り合う第1ギヤ歯と第1ギヤ歯との間の空隙である。第2空隙部は、回転方向で隣り合う第2ギヤ歯と第2ギヤ歯との間の空隙である。このため、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における径方向の磁束強度の時間変化が大きく、磁気検出素子の出力値は、時間の経過とともに変動する。
【0011】
一方、第1係合部材と第2係合部材とが係合可能状態で回転しているときでは、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方のギヤ歯と、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方の空隙とが対向した状態である。この係合可能状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転するとき、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方のギヤ歯が、常に、磁気検出素子から等距離の位置に存在する。このため、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における径方向の磁束強度は一定の大きさとなり、磁気検出素子の出力値は一定の大きさとなる。
【0012】
実際の制御においては、第1係合部材と第2係合部材のそれぞれの回転数は完全に一致しない場合が多いため、磁気検出素子の出力値の時間変化を示す波形では、振幅の増減が繰り返される。上記の通り、係合可能状態で回転しているときでは、出力値が一定になることから、この波形の節部、すなわち、振幅が極小となる時点を係合可能時期として判別することができる。
【0013】
また、第1係合部材と第2係合部材との係合が完了した係合完了状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときでは、磁気検出素子に対して径方向で対向する位置には、係合した状態の第1係合部材と第2係合部材とが常に存在する。このとき、磁気検出素子対して径方向で対向する位置に存在する空隙は、未係合状態のときよりも少ない。このため、理論的には、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における径方向の磁束強度は最大値で一定となり、磁気検出素子の出力値は最大値で一定となる。このことから、磁気検出素子のセンサ信号に基づいて、係合完了状態を判別することができる。
【0014】
よって、請求項1、2に記載の発明の位置検出装置によれば、同じ磁気検出素子を用いて、第1係合部材と第2係合部材との係合可能時期の検出と、第1係合部材と第2係合部材との係合完了状態の検出との両方が可能である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、噛み合いクラッチの位置検出装置は、
第1係合部材および第2係合部材に対して軸線を中心とする径方向(DR2)の外側に配置され、異なる極性の2つの磁極部(41a、42a)を有する磁界発生部(41、42)と、
解放状態のときの複数の第1ギヤ歯に対して径方向で対向する第1端面(43b)を有し、2つの磁極部のうち一方の磁極部(41a)と第1端面との間に磁束を通過させる第1ヨーク(43)と、
解放状態のときの複数の第2ギヤ歯に対して径方向で対向する第2端面(44b)を有し、2つの磁極部のうち他方の磁極部(42a)と第2端面との間に磁束を通過させ、第1ヨークに対して間を空けて軸線方向に沿う方向に並んで配置される第2ヨーク(44)と、
第1ヨークおよび第2ヨークの間に配置され、第1ヨークおよび第2ヨークの間を通過する磁束における軸線方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する磁気検出素子(46)と、を備える。
【0016】
これによれば、磁界発生部、第1ヨークおよび第2ヨークは、磁気回路を構成する。この磁気回路により、第1ヨークと第2ヨークとの間に、軸線方向の一方側から他方側へ向かう磁束が発生する。磁気検出素子は、第1ヨークと第2ヨークとの間に配置され、磁気検出素子を通過する磁束における軸線方向の磁束強度を示すセンサ信号を出力する。
【0017】
磁気検出素子、第1ヨークの第1端面および第2ヨークの第2端面の付近において、複数の第1ギヤ歯のそれぞれと複数の第2ギヤ歯のそれぞれとの位置関係が変化することによって、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束の向きが変化する。これにより、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における軸線方向の磁束強度が変化する。
【0018】
複数の第1ギヤ歯のそれぞれと複数の第2ギヤ歯のそれぞれとが、軸線方向で対向している係合不可状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転するとき、対向する第1ギヤ歯および第2ギヤ歯の組と、対向する第1空隙部および第2空隙部の組とが、交互に、磁気検出素子の付近を通過する。第1ヨークの第1端面および第2ヨークの第2端面に対して径方向で対向する位置に、両ギヤ歯が存在する状態のとき、磁気回路の磁束は、両ギヤ歯へ引き寄せられる。このため、磁気検出素子が検出する軸線方向の磁束強度は、小さい。第1ヨークの第1端面および第2ヨークの第2端面に対して径方向で対向する位置に、両空隙部が存在する状態のとき、磁気回路の磁束に対する両ギヤ歯の影響は小さい。このため、磁気検出素子が検出する軸線方向の磁束強度は、大きい。よって、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における軸線方向の磁束強度の時間変化が大きく、磁気検出素子の出力値は、時間の経過とともに大きく変動する。
【0019】
一方、第1係合部材と第2係合部材とが係合可能状態で回転しているときでは、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方のギヤ歯と、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方の空隙とが対向した状態である。この係合可能状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転するとき、複数の第1ギヤ歯と複数の第2ギヤ歯との一方のギヤ歯が、常に、磁気検出素子から等距離の位置に存在する。このため、磁気回路の磁束は、常に、一方のギヤ歯へ引き寄せられる。第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における軸線方向の磁束強度は、両ギヤ歯が存在する状態のときと両空隙部が存在する状態のときの間の大きさで一定となり、磁気検出素子の出力値は両ギヤ歯が存在する状態のときと両空隙部が存在する状態のときの間の大きさで一定となる。
【0020】
実際の制御においては、第1係合部材と第2係合部材のそれぞれの回転数は完全に一致しない場合が多いため、磁気検出素子の出力値の時間変化を示す波形では、振幅の増減が繰り返される。上記の通り、係合可能状態で回転しているときでは、出力値が一定になることから、この波形の節部、すなわち、振幅が極小となる時点を係合可能時期として判別することができる。
【0021】
また、第1係合部材と第2係合部材との係合が完了した係合完了状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときでは、磁気検出素子付近には、係合した状態の第1係合部材と第2係合部材とが常に存在する。このとき、第1係合部材と第2係合部材との間に存在する空隙は、未係合状態のときよりも少ない。このため、理論的には、第1ヨークと第2ヨークとの間を通過する磁束における軸線方向の磁束強度は最小値で一定となり、磁気検出素子の出力値は最小値で一定となる。このことから、磁気検出素子のセンサ信号に基づいて、係合完了状態を判別することができる。
【0022】
よって、本発明の位置検出装置によれば、同じ磁気検出素子を用いて、第1係合部材と第2係合部材との係合可能時期の検出と、第1係合部材と第2係合部材との係合完了状態の検出との両方が可能である。
【0023】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態における動力伝達システムの構成を示す図である。
図2図1中の位置検出装置の構成を示す図であり、図1中のII矢視図である。
図3図2の位置検出装置のIII矢視図である。
図4図1中の位置検出装置、第1係合部材および第2係合部材の斜視図である。
図5】(a)~(d)のそれぞれは、第1実施形態において、係合不可状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図6図5に示す係合不可状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときに、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図7】(a)~(d)のそれぞれは、第1実施形態において、係合可能状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図8図7に示す係合可能状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときに、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図9】第1実施形態において、第1係合部材と第2係合部材とに回転数差がある場合に、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図10図9に示すセンサ信号の波形のうち未係合前の一部を拡大した図である。
図11】第1実施形態における制御装置が実行する制御処理のフローチャートである。
図12】第1実施形態における制御装置が実行する制御処理のフローチャートである。
図13】第2実施形態における位置検出装置の構成を示すとともに、位置検出装置、第1係合部材および第2係合部材の位置関係を示す図である。
図14A】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合不可状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図14B】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合不可状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図14C】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合可能状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図15】第2実施形態において、第1係合部材と第2係合部材とに回転数差がある場合に、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図16A】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合可能状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図16B】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合途中状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図16C】第2実施形態の位置検出装置によって生じる磁場のシミュレーション結果を示す図であって、係合完了状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図17】第2実施形態において、係合可能状態から係合完了状態に至るまでの期間のストロークの時間変化、および、位置検出装置から出力されるセンサ信号の時間変化を示す図である。
図18】第3実施形態における位置検出装置の構成を示すとともに、位置検出装置、第1係合部材および第2係合部材の位置関係を示す図である。
図19】(a)、(b)のそれぞれは、第3実施形態において、係合不可状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図20図19に示す係合不可状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときに、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図21】(a)、(b)のそれぞれは、第3実施形態において、係合可能状態のときの複数の第1ギヤ歯、複数の第2ギヤ歯および位置検出装置の位置関係を示す図である。
図22図21に示す係合可能状態で、第1係合部材および第2係合部材が回転しているときに、位置検出装置から出力されるセンサ信号の出力値の時間変化を示す図である。
図23】他の実施形態における位置検出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示す動力伝達システム1に本発明の位置検出装置が適用されている。動力伝達システム1は、車両に搭載され、電動モータ30の動力を駆動輪に伝達したり遮断したりする。具体的には、動力伝達システム1は、噛み合いクラッチ10と、アクチュエータ20と、電動モータ30と、位置検出装置40と、制御装置50とを備える。
【0027】
噛み合いクラッチ10は、第1係合部材11と、第2係合部材12とを有する。第1係合部材11は、軸線AL1を中心に回転する。軸線AL1に平行な方向が軸線方向DR1である。第1係合部材11の軸線方向DR1の端面には、軸線AL1を中心に回転するときの回転方向の全周にわたって複数の第1ギヤ歯13が形成されている。複数の第1ギヤ歯13のそれぞれは、間を空けて列をなしている。このため、複数の第1ギヤ歯13は、第1ギヤ歯13列とも呼ばれる。回転方向で隣り合う第1ギヤ歯13と第1ギヤ歯13との間には、第1空隙部15が存在する。
【0028】
第2係合部材12は、第1係合部材11と同じ軸線AL1を中心に、第1係合部材11と同じ方向に回転する。第2係合部材12の軸線方向DR1の第1係合部材11側の端面には、複数の第1ギヤ歯13と噛み合う複数の第2ギヤ歯14が、回転方向の全周にわたって形成されている。複数の第2ギヤ歯14のそれぞれは、間を空けて列をなしている。このため、複数の第2ギヤ歯14は、第2ギヤ歯14列とも呼ばれる。回転方向で隣り合う第2ギヤ歯14と第2ギヤ歯14との間には、第2空隙部16が存在する。
【0029】
第2係合部材12は、タイヤの回転軸につながっている。複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14とが噛み合う(すなわち、嵌合する)ことで、第1係合部材11と第2係合部材12とが係合する(すなわち、つながった状態となる)。第1係合部材11と、第2係合部材12とのそれぞれは、磁性材料によって構成されている。したがって、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14とのそれぞれは、磁性体である。
【0030】
アクチュエータ20は、第1係合部材11を軸線方向DR1の一方側と他方側とに移動させる。第1係合部材11が軸線方向DR1に移動することで、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14とが噛み合って第1係合部材11と第2係合部材12とが係合する係合状態と、第1係合部材11と第2係合部材12とが離間する解放状態との切り替えが可能である。解放状態から係合状態へ切り替わるとき、第1係合部材11は第2係合部材12に向かって軸線方向D1に移動する。アクチュエータ20としては、電動モータや電磁ソレノイドが用いられる。
【0031】
電動モータ30は、第1係合部材11が回転する回転力を第1係合部材11に与える駆動源である。すなわち、電動モータ30は、第1係合部材11を回転させる。
【0032】
位置検出装置40は、第1係合部材11と第2係合部材12との位置関係を検出するために用いられる。より具体的には、位置検出装置40は、第1係合部材11と第2係合部材12との係合が可能な係合可能時期を検出するため、および、第1係合部材11と第2係合部材12との係合が完了した係合完了状態を検出するために用いられる。
【0033】
位置検出装置40は、それ自体が磁界を発生させて、磁気回路を形成する自励式のセンサである。位置検出装置40は、位置検出装置40が形成する磁気回路に対して第1ギヤ歯13と第2ギヤ歯14との両方が入る位置に、設置される。具体的には、位置検出装置40は、複数の第1ギヤ歯13および複数の第2ギヤ歯14の両方に対して、軸線AL1を中心とする径方向DR2の外側に設置される。径方向DR2は、軸線AL1に直交する方向と同じである。径方向DR2の外側は、径方向DR2における中心から離れる側である。このように、位置検出装置40は、第1係合部材11と第2係合部材12との係合を阻害しない位置に設置される。位置検出装置40は、検出範囲内の磁性体(すなわち、第1ギヤ歯13および第2ギヤ歯14)の位置に応じたセンサ信号を出力する。
【0034】
制御装置50の入力側には、位置検出装置40が接続されている。制御装置50の出力側には、アクチュエータ20と電動モータ30とが接続されている。制御装置50は、電動モータ30の作動を制御する。制御装置50は、位置検出装置40のセンサ信号に基づいて、アクチュエータ20の作動を制御する。
【0035】
制御装置50は、プロセッサ、メモリを含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。メモリには、電動モータ30、アクチュエータ20の作動を制御するための制御プログラムおよび制御データ等が記憶されている。プロセッサが制御プログラムを実行することで、各種処理が実行される。
【0036】
次に、位置検出装置40の具体的な構成と配置について説明する。図2、3に示すように、位置検出装置40は、第1磁石41と、第2磁石42と、第1ヨーク43と、第2ヨーク44と、第3ヨーク45と、磁気検出素子46と、これらを保持する図示しないケースとを備える。
【0037】
第1磁石41および第2磁石42は、磁界を発生させる磁界発生部である。第1磁石41は、第1磁極部41a、および、第1磁極部41aと異なる極性の第2磁極部41bを有する。第2磁石42は、第1磁極部41aと同じ極性の第3磁極部42a、および、第3磁極部42aと異なる極性の第4磁極部42bを有する。第1磁極部41aおよび第3磁極部42aは、N極である。第2磁極部41bおよび第4磁極部42bは、S極である。第1磁石41および第2磁石42として、永久磁石が用いられる。第1磁極部41aおよび第3磁極部42aが、磁界発生部が有する同じ極性の2つの磁極部に相当する。本実施形態では、第1磁極部41aが、2つの磁極部のうち一方の磁極部に相当する。第3磁極部42aが、2つの磁極部のうち他方の磁極部に相当する。
【0038】
第1磁石41と第2磁石42とは、間を空けて、並列に配置されている。具体的には、第1磁極部41aと第2磁極部41bとが位置検出装置40のセンサ中心線CLに沿う方向に並ぶとともに、第3磁極部42aと第4磁極部42bとがセンサ中心線CLに沿う方向に並ぶ、第1磁石41および第2磁石42の向きで、第1磁石41と第2磁石42とは、位置検出装置40のセンサ中心線CL1を挟んだ両側に配置されている。
【0039】
第1ヨーク43は、第1磁石41の第1磁極部41aに接続されている。より具体的には、第1ヨーク43は、センサ中心線CL1に沿う方向に延びている。第1ヨーク43は、その方向の一方側に位置する一方側端面43aと、その方向の他方側に位置する他方側端面43bとを有する。一方側端面43aは、第1磁石41の第1磁極部41aに対向し、第1磁極部41aに接続されている。このため、他方側端面43bは、第1ヨーク43のうち第1磁極部41aから離れた側に位置する。
【0040】
第1ヨーク43は、第1磁極部41aと他方側端面43bとの間に磁束を通過させる部材である。本実施形態では、第1磁極部41aから他方側端面43bに向かう方向に、磁束が第1ヨーク43を通過する。他方側端面43bが、第1ヨーク43が有する第1端面に相当する。なお、第1磁極部41aと他方側端面43bとの間に磁束を通過させることができれば、一方側端面43aと第1磁極部41aとが離れていてもよい。
【0041】
第2ヨーク44は、第2磁石42の第3磁極部42aに接続されている。より具体的には、第2ヨーク44は、第1ヨーク43に対してセンサ中心線CL1に対して直交する方向に、間を空けて配置されている。第2ヨーク44は、センサ中心線CL1に沿う方向に延びている。第2ヨーク44は、その方向の一方側に位置する一方側端面44aと、その方向の他方側に位置する他方側端面44bとを有する。一方側端面44aは、第2磁石42の第3磁極部42aに対向し、第3磁極部42aに接続されている。このため、他方側端面44bは、第2ヨーク44のうち第3磁極部42aから離れた側に位置する。
【0042】
第2ヨーク44は、第3磁極部42aと他方側端面44bとの間に磁束を通過させる部材である。本実施形態では、第3磁極部42aから他方側端面44bに向かう方向に、磁束が第2ヨーク44を通過する。他方側端面44bが、第2ヨーク44が有する第2端面に相当する。なお、第3磁極部42aと他方側端面44bとの間に磁束を通過させることができれば、一方側端面44aと第3磁極部42aとが離れていてもよい。
【0043】
第3ヨーク45は、U字形状である。第3ヨーク45の一端は、第1磁石41の第2磁極部41bに接続されている。第3ヨーク45の他端は、第2磁石42の第4磁極部42bに接続されている。第3ヨーク45は、第2磁極部41b、第4磁極部42bを通過する磁束を通過させる部材である。なお、第3ヨーク45は、第2磁極部41b、第4磁極部42bを通過する磁束を通過させることができれば、第1磁石41および第2磁石42に対して離れていてもよい。
【0044】
第1磁石41、第2磁石42、第1ヨーク43、第2ヨーク44および第3ヨーク45は、磁気回路を構成する。この磁気回路により、第1ヨーク43と第2ヨーク44との間のうち第1磁石41および第2磁石42から離れた側において、センサ中心線CL1に沿う方向で、第1磁石41および第2磁石42から離れる側に向かう磁束が発生する。このような磁束を増やすために、第1ヨーク43および第2ヨーク44が用いられている。第3ヨーク45は、第1磁石41および第2磁石42への磁束の戻りを増やすために用いられているが、位置検出装置40は、第3ヨーク45を有していなくてもよい。
【0045】
第1磁石41および第2磁石42から離れる側に向かって第1ヨーク43と第2ヨーク44との間を通過する磁束は、磁気検出素子46、第1ヨーク43の他方側端面43bおよび第2ヨーク44の他方側端面44bのそれぞれに対向する磁性体の位置、形状によって向きが変わる。磁束の向きが変わることで、センサ中心線CL1に沿う方向の磁束強度が変わる。
【0046】
磁気検出素子46は、第1ヨーク43と第2ヨーク44との間に配置される。磁気検出素子46は、センサ中心線CL1に沿う方向の磁束強度を検出する。より具体的には、磁気検出素子46は、一方向を検出方向DR5として、その検出方向DR5の磁束の強度を検出するホール素子である。磁気検出素子46は、検出方向DR5がセンサ中心線CL1に沿う方向となるように配置される。
【0047】
図1、4に示すように、位置検出装置40は、第1ヨーク43と第2ヨーク44との並び方向DR3が回転方向DR4に沿う方向であり、位置検出装置40が複数の第1ギヤ歯13および複数の第2ギヤ歯14に対して径方向DR2の外側に位置するように設置される。回転方向DR4は、複数の第1ギヤ歯13の並び方向、複数の第2ギヤ歯14の並び方向、第1係合部材11の周方向、および、第2係合部材12の周方向と同じである。
【0048】
このとき、第1ヨーク43の他方側端面43bは、解放状態のときの複数の第1ギヤ歯13、複数の第2ギヤ歯14、および、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との軸線方向DR1での間の空間のそれぞれに対して、径方向DR2で対向する。同様に、第2ヨーク44の他方側端面44bは、解放状態のときの複数の第1ギヤ歯13、複数の第2ギヤ歯14、および、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との軸線方向DR1での間の空間のそれぞれに対して、径方向DR2で対向する。第2ヨーク44は、第1ヨーク43に対して間を空けて回転方向DR4に沿う方向に並んでいる。センサ中心線CL1は、径方向DR2に沿っている。磁気検出素子46を通過する磁束の向きは、径方向DR2に沿う方向である。磁気検出素子46は、検出方向DR5が径方向DR2に沿う方向となるように設置されている。このため、磁気検出素子46は、第1ヨーク43および第2ヨーク44の間を通過する磁束における径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号を出力する。
【0049】
図5(a)~(d)のそれぞれは、第1係合部材11と第2係合部材12とが未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向している係合不可状態を示している。図5(a)~(d)のそれぞれは、軸線方向DR1から見た位置検出装置40等を示している。この係合不可状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、図5(a)~(d)に示すように、軸線方向DR1で対向する第1ギヤ歯13および第2ギヤ歯14の組と、軸線方向DR1で対向する第1空隙部15および第2空隙部16の組とが、交互に、磁気検出素子46の付近を通過する。
【0050】
図5(a)に示すように、磁気検出素子46に対して径方向DR2で対向する位置を両ギヤ歯13、14が通過するとき、磁気検出素子46を通過する磁束は、両ギヤ歯13、14へ引き寄せられる。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は大きい。
【0051】
図5(c)に示すように、磁気検出素子46に対して径方向DR2で対向する位置を両空隙部15、16が通過するとき、磁気検出素子46を通過する磁束に対する両ギヤ歯13、14の影響は小さい。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、図5(a)に示すときよりも小さい。
【0052】
図5(b)、(d)に示すように、磁気検出素子46に対して径方向DR2で対向する位置よりも回転方向の一方側または他方側の位置を両ギヤ歯13、14が通過するとき、磁気検出素子46を通過する磁束は、径方向DR2に対して回転方向の一方側または他方側へ傾いた斜めの向きで、両ギヤ歯13、14に引き寄せられる。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、図5(a)に示すときと図5(c)に示すときの間の大きさとなる。
【0053】
したがって、第1係合部材11および第2係合部材12が係合不可状態で回転しているときでは、図6に示すように、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、時間の経過とともに変動する。図6中のA1~A4の各時点は、図5(a)~(d)に示すA1~A4の状態に対応している。
【0054】
図7(a)~(d)のそれぞれは、第1係合部材11と第2係合部材12とが未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向しておらず、回転方向で互い違いに位置する係合可能状態を示している。図7(a)~(d)のそれぞれは、軸線方向DR1から見た位置検出装置40等を示している。この係合可能状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、図7(a)~(d)に示すように、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との一方のギヤ歯が、常に、磁気検出素子46から等距離の位置に存在する。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、一定の大きさとなる。
【0055】
したがって、第1係合部材11および第2係合部材12が係合可能状態で回転しているときでは、図8に示すように、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、一定値となる。このときの出力値は、図5(a)に示す磁気検出素子46に対して両ギヤ歯が径方向DR2で対向するときよりも小さい。
【0056】
よって、第1係合部材11と第2係合部材12とに回転数差がある場合、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値の時間変化は、図9、10に示す波形となる。図10は、図9に示すセンサ信号の波形のうちクラッチ係合前の一部を拡大した図である。図10に示すセンサ信号の波形において、節部の時点(すなわち、振幅が極小となる時点)を、係合可能時期として判別することができる。
【0057】
第1係合部材11と第2係合部材12との係合開始から係合完了までの間の係合途中状態では、第1係合部材11のストローク量が増大する。第1係合部材11と第2係合部材12との係合が完了した状態である係合完了状態では、第1係合部材11のストローク量が最大となる。ストローク量は、第2係合部材12に向かって移動する第1係合部材11の軸線方向D1の移動量である。
【0058】
係合途中状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、ストローク量が増大するにつれて、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との軸線方向D1での間の空隙が徐々に減少する。すなわち、位置検出装置40に対して径方向DR2で対向する位置に存在する磁性体が徐々に増大する。このため、係合途中状態のときでは、第1係合部材11と第2係合部材12とに引き寄せられる磁束が徐々に増大し、磁気検出素子46を径方向に通過する磁束は、徐々に強くなる。
【0059】
そして、係合完了状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との軸線方向D1での間の空隙が最小となる。このとき、磁気検出素子46に対して径方向DR2で対向する位置には、係合した状態の第1係合部材11と第2係合部材12とが常に存在する。すなわち、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との両方のギヤ歯が常に存在する。第1係合部材11と第2係合部材12との一方は、磁気検出素子46からの距離が等距離の位置で存在する。このため、係合完了状態のときでは、第1係合部材11と第2係合部材12とに引き寄せられる磁束が最大となり、磁気検出素子46を径方向に通過する磁束は、最も強くなる。
【0060】
よって、図9に示すように、係合開始後において、ストローク量が増大するにつれて、軸線方向の磁束強度が徐々に大きくなるという関係がある。そして、係合完了状態のときでは、軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、理論的には、最大値で一定になり、実際には、最大値に近い値で変動する。このことから、係合完了状態を判別することができる。
【0061】
次に、制御装置50が実行する制御処理について説明する。制御装置50は、図11に示す制御処理を行って、位置検出装置40のセンサ信号に基づいて、係合可能時期を取得する。図11に制御処理は、車両走行状態を鑑みて、噛み合いクラッチ10を係合させるときに実行される。なお、図中に示したステップは、各種機能を実現する機能部に対応するものである。このことは、他の図においても同様である。
【0062】
ステップS1では、制御装置50は、位置検出装置40から出力されたセンサ信号を読み込む。これにより、センサ信号の時系列データを取得する。続いて、ステップS2では、制御装置50は、センサ信号の振幅を算出する。振幅としては、例えば、ピークピーク値の1/2の値が算出される。
【0063】
続いて、ステップS3では、制御装置50は、算出した振幅と閾値αとを比較して、算出した振幅が閾値α以下であるか否かを判定する。この閾値αは、上述の通り、図10に示すセンサ信号の波形において、節部を特定するために設定される。振幅が閾値αよりも大きい場合、制御装置50は、NO判定して、ステップS1に戻る。振幅が閾値α以下の場合、制御装置50は、YES判定して、ステップS4に進み、係合可能時期を取得する。ステップS4の実行後に、本処理が終了される。
【0064】
その後、制御装置50は、取得した係合可能時期に基づいて、アクチュエータ20を作動させて、噛み合いクラッチ10を係合させる。
【0065】
また、制御装置50は、図12に示す制御処理を行って、位置検出装置40のセンサ信号に基づいて、係合完了状態であるか否かを判定する。図12に示す制御処理は、噛み合いクラッチ10の係合作動が行われたときに実行される。
【0066】
ステップS11では、制御装置50は、位置検出装置40から出力されたセンサ信号を読み込む。続いて、ステップS12では、制御装置50は、取得したセンサ信号に対してフィルタ処理を行う。これにより、ノイズが除去される。続いて、ステップS13では、制御装置50は、フィルタ処理が行われたセンサ信号に基づいて、ストローク量を算出する。上述の通り、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の大きさとストローク量との間には所定の関係がある。本実施形態では、制御装置50は、所定の関係として、ストローク量が大きくなるにつれて、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号が大きくなるという関係を用いて、ストローク量を算出する。
【0067】
続いて、ステップS14では、制御装置50は、算出したストローク量と閾値βとを比較し、ストローク量が閾値β以上であるか否かを判定する。この閾値βは、係合完了状態を特定するために設定される。ストローク量が閾値βよりも小さい場合、制御装置50は、NO判定して、ステップS11に戻る。ストローク量が閾値β以上の場合、制御装置50は、YES判定して、ステップS15に進み、係合完了状態の決定を行う。ステップS15の実行後に、本処理が終了される。
【0068】
以上の説明の通り、本実施形態の位置検出装置40によれば、第1磁石41の第1磁極部41aと、第2磁石42の第3磁極部42aとは、同じ極性である。そして、位置検出装置40は、図4に示す向きで、噛み合いクラッチ10に対して設置される。
【0069】
磁気検出素子46から出力されるセンサ信号の時間変化を示す波形は、先の説明の通り、係合可能状態のときと、係合完了状態のときとのそれぞれにおいて、特異となる。このため、本実施形態の位置検出装置40によれば、同じ磁気検出素子46を用いて、第1係合部材11と第2係合部材12との係合可能時期の検出と、第1係合部材11と第2係合部材12との係合完了状態の検出との両方が可能である。
【0070】
なお、本実施形態の動力伝達システム1は、車両に搭載され、電動モータ30の動力を駆動輪に伝達したり遮断したりする用途に適用されているが、他の用途に適用されてもよい。また、本実施形態の動力伝達システム1では、第1係合部材11が軸線方向DR1に移動するが、第2係合部材12が軸線方向DR1に移動してもよく、第1係合部材11と第2係合部材12との両方が軸線方向DR1に移動してもよい。すなわち、第1係合部材11と第2係合部材12との少なくとも一方が軸線方向DR1に移動するようになっていればよい。
【0071】
(第2実施形態)
図13に示す本実施形態の位置検出装置40では、磁界発生部が有する2つの磁極部の極性が異なる。また、設置される位置検出装置40の向きが第1実施形態の位置検出装置40と異なる。
【0072】
具体的には、第1磁極部41aの極性と第3磁極部42aの極性とが異なる。第1磁極部41aはS極であり、第3磁極部42aはN極である。第1磁石41、第2磁石42、第1ヨーク43、第2ヨーク44等が構成する磁気回路により、第1ヨーク43と第2ヨーク44との間に、第1ヨーク43と第2ヨーク44とをつなぐように磁束が発生する。すなわち、第1ヨーク43と第2ヨーク44との間に、第1ヨーク43と第2ヨーク44との並び方向DR3に沿う方向で、第1ヨーク43に向かう磁束が発生する。磁気検出素子46は、第1ヨーク43と第2ヨーク44との間に、検出方向DR5が並び方向DR3に沿う方向となるように配置される。
【0073】
そして、位置検出装置40は、第1ヨーク43と第2ヨーク44との並び方向DR3が軸線方向DR1に沿う方向であり、位置検出装置40が複数の第1ギヤ歯13および複数の第2ギヤ歯14に対して径方向DR2の外側に位置するように、設置される。このとき、第1ヨーク43の他方側端面43bは、解放状態のときの複数の第1ギヤ歯13に対して径方向DR2で対向する。第2ヨーク44の他方側端面44bは、解放状態のときの複数の第2ギヤ歯14に対して径方向DR2で対向する。すなわち、第1ヨーク43の他方側端面43bの少なくとも一部は、解放状態のときの第1ギヤ歯13の少なくとも一部に対して径方向DR2で対向する。第2ヨーク44の他方側端面44bの少なくとも一部は、解放状態のときの第2ギヤ歯14の少なくとも一部に対して径方向DR2で対向する。センサ中心線CL1は、径方向DR2に沿っている。磁気検出素子46を通過する磁束の向きは、軸線方向DR1に沿う方向である。磁気検出素子46は、検出方向DR5が軸線方向DR1に沿う方向となるように設置されている。このため、磁気検出素子46は、第1ヨーク43および第2ヨーク44の間を通過する磁束における軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号を出力する。
【0074】
位置検出装置40の他の構成は、第1実施形態と同じである。なお、本実施形態においても、動力伝達システム1は、車両に搭載され、電動モータ30の動力を駆動輪に伝達したり遮断したりする用途に適用されているが、他の用途に適用されてもよい。また、第1係合部材11と第2係合部材12との少なくとも一方が軸線方向DR1に移動するようになっていればよい。
【0075】
図14A図14Bは、未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向している係合不可状態のときの磁場を示している。この係合不可状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、対向する第1ギヤ歯13および第2ギヤ歯14の組と、対向する第1空隙部15および第2空隙部16の組とが、交互に、磁気検出素子46の付近を通過する。
【0076】
図14Bに示すように、第1ヨーク43の他方側端面43bおよび第2ヨーク44の他方側端面44bに対して径方向DR2で対向する位置に、両ギヤ歯13、14が存在するC2の状態のとき、磁気回路の磁束は、両ギヤ歯13、14へ引き寄せられる。このため、磁気検出素子46が検出する軸線方向DR1の磁束強度は、小さい。
【0077】
図14Aに示すように、第1ヨーク43の他方側端面43bおよび第2ヨーク44の他方側端面44bに対して径方向DR2で対向する位置に、両ギヤ歯13、14が存在せず、両空隙部15、16が存在するC1の状態のとき、磁気回路の磁束に対する両ギヤ歯13、14の影響は小さい。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、図14Bに示すC2の状態のときよりも大きい。
【0078】
したがって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向している係合不可状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているときでは、磁気検出素子46が検出する軸線方向DR1の磁束強度の変動は、大きい。
【0079】
図14Cは、未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向しておらず、回転方向で互い違いに位置する係合可能状態(すなわち、C3の状態)のときの磁場を示している。係合可能状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、図14Cに示すように、第1ギヤ歯13と第2ギヤ歯14との一方のギヤ歯が、常に、第1ヨーク43の他方側端面43bまたは第2ヨーク44の他方側端面44bに対して径方向DR2で対向する位置に位置する。このとき、磁気回路の磁束は、常に、一方のギヤ歯へ引き寄せられる。磁気検出素子46から一方のギヤ歯までの距離は同じである。
【0080】
このため、係合可能状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているときでは、磁気検出素子46が検出する軸線方向DR1の磁束強度は、C1の状態のときとC2の状態のときの磁束強度の間の中の大きさである。このときの磁束強度の変動は、小さい。
【0081】
よって、第1係合部材11と第2係合部材12とに回転数差がある場合、軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号の出力値の時間変化は、図15に示す波形となる。図15中のC1、C2、C3の時点は、図14A図14B図14Cに示すC1、C2、C3の状態に対応している。図15に示すセンサ信号の波形において、節部の時点(すなわち、振幅が極小となる時点)を、係合可能タイミングとして判別することができる。
【0082】
図16A図16B図16Cは、係合可能状態からストローク量が増大したときに、位置検出装置40によって生じる磁場の変化を示す図である。図16A図16B図16Cでは、第2係合部材12が軸線方向D1に移動する場合が示されている。ストローク量は、第2係合部材12が係合開始から軸線方向DR1に移動するときの移動量である。第1係合部材11が移動する場合、第1係合部材11と第2係合部材12との両方が移動する場合においても、図16A図16B図16Cと同様の結果となる。
【0083】
図16Aは、ストローク量が0であるD1の状態を示している。図16Bは、ストローク量が最大時の1/2であるD2の状態のときを示しており、係合途中状態のときを示している。図16Cは、ストローク量が最大であるD3の状態のときを示しており、係合完了状態になっているときを示している。図16Cでは、第2ギヤ歯14に加えて第2係合部材12のうち第2ギヤ歯14以外の部分が、位置検出装置40に対して径方向DR2で対向している状態が示されている。
【0084】
図16A図16B図16Cに示すように、係合可能状態からストローク量が増大するにつれて、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との間の空隙が徐々に減少する。すなわち、位置検出装置40に対して径方向DR2で対向する位置に存在する磁性体が増大する。このため、係合可能状態からストローク量が増大しながら、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、磁気回路によって発生する磁束が磁気検出素子46を迂回し、第1係合部材11および第2係合部材12を通る磁束が強くなり、磁気検出素子46を軸線方向DR1に通過する磁束が弱くなる。そして、ストローク量が最大の状態になると、第1係合部材11および第2係合部材12を通る磁束が最も強くなり、磁気検出素子46を軸線方向DR1に通過する磁束は最も弱くなる。このとき、第1係合部材11と第2係合部材12との一方は、磁気検出素子46からの距離が等距離の位置で存在する。
【0085】
よって、図17(a)、(b)に示すように、ストローク量が増大するにつれて、軸線方向DR1の磁束強度が徐々に小さくなるという関係がある。そして、ストローク量が最大値で一定になると、軸線方向DR1の磁気強度が最小値で一定になる。すなわち、係合完了状態のときでは、軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、理論的には、最小値で一定になり、実際には、最小値に近い値で変動する。このことから、係合完了状態を判別することができる。
【0086】
次に、制御装置50が実行する制御処理について説明する。上述の通り、図15に示すセンサ信号の波形において、節部の時点が係合可能時期である。このため、制御装置50は、第1実施形態と同様に、図11に示す制御処理を行って、位置検出装置40のセンサ信号に基づいて、係合可能時期を取得する。
【0087】
また、制御装置50は、第1実施形態と同様に、図12に示す制御処理を行って、位置検出装置40のセンサ信号に基づいて、係合完了状態であるか否かを判定する。本実施形態では、ステップS13において、制御装置50は、所定の関係として、ストローク量が大きくなるにつれて、軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号が小さくなるという関係を用いて、ストローク量を算出する。
【0088】
以上の説明の通り、本実施形態においても、磁気検出素子46から出力されるセンサ信号の時間変化を示す波形は、係合可能状態のときと、係合完了状態のときとのそれぞれにおいて、特異となる。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0089】
(第3実施形態)
図18に示す本実施形態の位置検出装置40の構成は、第1実施形態の位置検出装置40と同じである。第1実施形態と同様に、位置検出装置40は、複数の第1ギヤ歯13および複数の第2ギヤ歯14に対して径方向DR2の外側に設置される。磁気検出素子46は、検出方向DR5が径方向DR2に沿う方向となるように設置される。このため、磁気検出素子46は、第1ヨーク43および第2ヨーク44の間を通過する磁束における径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号を出力する。
【0090】
さらに、本実施形態では、設置される位置検出装置40の向きが、第2実施形態と同じである。具体的には、第1ヨーク43と第2ヨーク44との並び方向DR3が軸線方向DR1に沿う方向である。第1ヨーク43の他方側端面43bは、解放状態のときの複数の第1ギヤ歯13に対して径方向DR2で対向する。第2ヨーク44の他方側端面44bは、解放状態のときの複数の第2ギヤ歯14に対して径方向DR2で対向する。
【0091】
図19(a)、(b)のそれぞれは、第1係合部材11と第2係合部材12とが未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向している係合不可状態を示している。この係合不可状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、図19(a)、(b)に示すように、軸線方向DR1で対向する第1ギヤ歯13および第2ギヤ歯14の組と、軸線方向DR1で対向する第1空隙部15および第2空隙部16の組とが、交互に、磁気検出素子46の付近を通過する。
【0092】
図19(a)に示すように、磁気検出素子46の付近を両ギヤ歯13、14が通過するとき、磁気検出素子46を通過する磁束は、両ギヤ歯13、14へ引き寄せられる。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は大きい。
【0093】
図19(b)に示すように、磁気検出素子46の付近を両空隙部15、16が通過するとき、磁気検出素子46を通過する磁束に対する両ギヤ歯13、14の影響は小さい。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、図19(a)に示すときよりも小さい。
【0094】
したがって、第1係合部材11および第2係合部材12が係合不可状態で回転しているときでは、図20に示すように、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、時間の経過とともに変動する。図20中のE1、E2の時点は、図19(a)に示すE1、図19(b)に示すE2のそれぞれの状態に対応している。
【0095】
また、図21(a)、(b)のそれぞれは、第1係合部材11と第2係合部材12とが未係合状態であって、複数の第1ギヤ歯13のそれぞれと、複数の第2ギヤ歯14のそれぞれとが、軸線方向DR1で対向しておらず、回転方向で互い違いに位置する係合可能状態を示している。この係合可能状態で、第1係合部材11および第2係合部材12が回転しているとき、図21(a)、(b)に示すように、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との一方のギヤ歯が、常に、磁気検出素子46から等距離の位置に存在する。このため、磁気検出素子46が検出する径方向DR2の磁束強度は、一定の大きさとなる。
【0096】
したがって、第1係合部材11および第2係合部材12が係合可能状態で回転しているときでは、図22に示すように、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、一定値となる。図22中のF1、F2の時点は、図21(a)に示すF1、図21(b)に示すF2のそれぞれの状態に対応している。
【0097】
よって、第1係合部材11と第2係合部材12とに回転数差がある場合、径方向DR2の磁束強度を示すセンサ信号の出力値の時間変化は、第1実施形態と同様に、図9、10に示す波形となる。図10に示すセンサ信号の波形において、節部の時点(すなわち、振幅が極小となる時点)を、係合可能時期として判別することができる。
【0098】
また、第1係合部材11および第2係合部材12が係合完了状態で回転しているときでは、磁気検出素子46の付近には、複数の第1ギヤ歯13と複数の第2ギヤ歯14との両方のギヤ歯が常に存在する。このため、軸線方向DR1の磁束強度を示すセンサ信号の出力値は、第1実施形態と同様に、理論的には、最大値で一定となり、実際には、図9に示すように、最大値に近い値で変動する。このことから、係合完了状態を判別することができる。
【0099】
したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0100】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、磁気検出素子46はホール素子であったが、一方向を検出方向DR5として検出方向DR5の磁束の強度を検出する他の磁気検出素子であってもよい。
【0101】
(2)第2実施形態では、位置検出装置の磁界発生部は、2つの磁石によって構成されている。しかしながら、図23に示すように、磁界発生部は、1つの磁石のみで構成されてもよい。図23に示す位置検出装置40は、磁石61と、第1ヨーク62と、第2ヨーク63と、磁気検出素子64と、図示しないケースとを備える。
【0102】
磁石61は、異なる極性の2つの磁極部である第1磁極部61aおよび第2磁極部61bを有する。第1磁極部61aはS極であり、第2磁極部61bはN極である。磁石61として、永久磁石が用いられる。センサ中心線CL1に直交する一方向の一方側に、第1磁極部61aが位置し、センサ中心線CL1に直交する一方向の他方側に、第2磁極部61bが位置するように、磁石61が配置される。
【0103】
第1ヨーク62と第2ヨーク63とは、磁石61を挟んだ両側に配置されている。第1ヨーク62および第2ヨーク63は、磁性材料によって構成されている。
【0104】
第1ヨーク62は、磁石61の第1磁極部61aに接続されている。より具体的には、第1ヨーク62は、センサ中心線CL1に沿う方向に延びている。第1ヨーク62は、第2ヨーク63に対向する側面のうちセンサ中心線CL1に沿う方向の一方側に位置する一領域62aと、センサ中心線CL1に沿う方向の他方側に位置する他方側端面62bとを有する。第1ヨーク62の一領域62aは、磁石61の第1磁極部61aに対向し、第1磁極部61aに接続されている。このため、他方側端面62bは、第1ヨーク62のうち第1磁極部61aから離れた側に位置する。第1ヨーク62は、第1磁極部61aと他方側端面62bとの間に磁束を通過させる部材である。図23では、他方側端面62bから第1磁極部61aに向かう方向に、磁束が第1ヨーク62を通過する。他方側端面62bが、第1ヨーク62が有する第1端面に相当する。なお、第1磁極部61aと他方側端面62bとの間に磁束を通過させることができれば、第1ヨーク62の一領域62aと第1磁極部61aとが離れていてもよい。
【0105】
第2ヨーク63は、磁石61の第2磁極部61bに接続されている。より具体的には、第2ヨーク63は、第1ヨーク62に対してセンサ中心線CL1に対して直交する方向に、間を空けて配置されている。第2ヨーク63は、センサ中心線CL1に沿う方向に延びている。第2ヨーク63は、第1ヨーク62に対向する側面のうちセンサ中心線CL1に沿う方向の一方側に位置する一領域63aと、センサ中心線CL1に沿う方向の他方側に位置する他方側端面63bとを有する。第2ヨーク63の一領域63aは、磁石61の第2磁極部61bに対向し、第2磁極部61bに接続されている。このため、他方側端面63bは、第2ヨーク63のうち第2磁極部61bから離れた側に位置する。第2ヨーク63は、第2磁極部61bと他方側端面63bとの間に磁束を通過させる部材である。本実施形態では、第2磁極部61bから他方側端面63bに向かう方向に、磁束が第2ヨーク63を通過する。他方側端面63bが、第2ヨーク63が有する第2端面に相当する。なお、第2磁極部60bと他方側端面63bとの間に磁束を通過させることができれば、第2ヨーク63の一領域63aと第2磁極部61bとが離れていてもよい。
【0106】
磁気検出素子64は、一方向を検出方向DR5として検出方向DR5の磁束の強度を検出するホール素子である。磁石61、第1ヨーク62、第2ヨーク63が構成する磁気回路により、第2実施形態と同様に、第1ヨーク62と第2ヨーク63との間に、第1ヨーク62と第2ヨーク63との並び方向DR3に沿う方向で、第1ヨーク62に向かう磁束が発生する。磁気検出素子64は、第1ヨーク62と第2ヨーク63との間に、検出方向DR5が並び方向DR3に沿う方向となるように配置される。
【0107】
(3)第1、第3実施形態では、第1磁極部41aおよび第3磁極部42aは、N極であるが、S極であってもよい。また、第2実施形態では、第1磁極部41aは、S極であるが、N極であってもよい。
【0108】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0109】
(5)本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0110】
41 第1磁石
42 第2磁石
43 第1ヨーク
43b 第1ヨークの他方側端面
44 第2ヨーク
44b 第2ヨークの他方側端面
46 磁気検出素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23