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<図1>
  • -差圧測定方法 図1
  • -差圧測定方法 図2
  • -差圧測定方法 図3
  • -差圧測定方法 図4
  • -差圧測定方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】差圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01L13/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188946
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077885
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】沖田 憲治
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183853(JP,A)
【文献】特開平11-118649(JP,A)
【文献】特開2012-241961(JP,A)
【文献】特開2007-220773(JP,A)
【文献】特開2009-270752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0166235(US,A1)
【文献】特開平07-174777(JP,A)
【文献】特開2014-005996(JP,A)
【文献】特開2002-257392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157882(US,A1)
【文献】国際公開第2018/164434(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
F24F 7/04-7/10
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床にグレーチング床板が配置された部屋の前記グレーチング床板上に
上領域の圧力を取得する第1のポートと床下領域の圧力を取得する第2のポートとを有する差圧測定部であって、第1の配管の一端が前記第1のポートに接続され、第2の配管の一端が前記第2のポートに接続されている、差圧測定部と、
前記第2の配管の他端が接続されており、前記グレーチング床板上に配置した際に、前記グレーチング床板との間に前記床下領域の圧力を測定するための空間を形成するカップと、
を備え、
前記第1の配管の他端と前記第2の配管の前記他端との間の装置高さ方向の距離が固定されている差圧測定装置を配置して、
前記床上領域の圧力と前記床下領域の圧力との差圧を測定することを特徴とする差圧測定方法
【請求項2】
前記第1の配管の前記他端と前記第2の配管の前記他端との間の前記装置高さ方向の距離は0mm以上250mm以下である、請求項1に記載の差圧測定方法
【請求項3】
前記第1の配管の前記他端が装置高さ方向に対して交差する方向を向いている、請求項1または2に記載の差圧測定方法
【請求項4】
前記第1の配管の前記他端への気流を抑制するカバーをさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の差圧測定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧測定装置および差圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスは、室内の清浄度が所定の水準を満たすように構成されたクリーンルームにおいて製造されている。クリーンルームとしては、天井部から床下領域に向かって清浄な空気を供給し、床下領域の空気を回収して清浄化した後、天井部に導いて清浄空気を床下領域に向かって再度供給する循環型ダウンフロー方式のものが多く使用されている。
【0003】
図1は、循環型ダウンフロー方式のクリーンルームの一例の模式図を示している。図1に示したクリーンルーム100においては、天井部100aにFFU(Fan Filter Unit)などの清浄な空気を供給する清浄空気供給部101が配置されている。また、床100bには、複数の開口部102aを有するグレーチング床板102が配置されている。
【0004】
清浄な空気の供給に関して、天井部100a全面から清浄な空気を供給する全面ダウンフロー方式と、天井部100aの一部から供給する部分ダウンフロー方式とが存在する(図1の例は部分ダウンフロー方式のもの)。また、グレーチング床板102の配置についても、床の全面に配置する場合と、一部に配置する場合とが存在する(図1の例は一部の場合)。
【0005】
また、クリーンルーム100の床下領域100dには、クリーンルーム100を上面視した際に、対向する一対の壁のそれぞれ、あるいは全体で1カ所または複数箇所に、床下領域100dに排気された空気を回収するリターン口103が設けられている。
【0006】
このようなクリーンルーム100において、清浄空気供給部101から供給された清浄な空気は、床上領域100cを通過し、グレーチング床板102に設けられた開口部102aを介して床下領域100dに排気される。排気された空気は、リターン口103から回収された後、フィルタ(図示せず)を通過して清浄化され、送風ファン104によって天井部100aに導かれる。そして、清浄空気供給部101によって清浄な空気が再度床下領域100dに向かって供給される。こうして、清浄な空気が天井部100aと床下領域100dとの間を循環するように構成されている。
【0007】
このような構成のクリーンルーム100では、床上領域100cの圧力は比較的高い陽圧となり、床下領域100dの圧力は比較的低い陰圧となる。そのため、空気が上方から下方に流れてパーティクルが上方に拡散するのを抑制することができる。
【0008】
上記クリーンルーム100において、清浄な空気の風量は、床上領域100cの全領域において均一ではなく、リターン口103に近い領域で多い一方、リターン口103から離れた領域では少ない。クリーンルーム100では、清浄空気の風量は床上領域100cの全領域で均一であることが好ましいため、清浄空気供給部101からの空気の供給量やグレーチング床板102の開口部102aの開口率などを調整して、清浄な空気の風量が均一となるように調整する必要がある。
【0009】
上記清浄空気の風量を調整するに当たって、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を指標として調整することが行われている。例えば、特許文献1には、差圧測定装置(差圧計)の2つのポートのうち、一方のポートにより床上領域100cの圧力を取得し、他方のポートにより床下領域100dの圧力を取得して、床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧を測定し、測定された差圧に基づいて清浄空気の流量を調節する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-218919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、差圧が大きい場合には精度よく差圧が測定できるが、差圧が小さい場合(例えば、0.1Paオーダー)には差圧を精度よく測定できないことが判明した。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧が小さい場合にも、上記差圧を精度よく測定することができる差圧測定装置および差圧測定方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
【0014】
[1]床にグレーチング床板が配置された部屋の床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧を測定する差圧測定装置であって、
前記床上領域の圧力を取得する第1のポートと前記床下領域の圧力を取得する第2のポートとを有する差圧測定部であって、第1の配管の一端が前記第1のポートに接続され、第2の配管の一端が前記第2のポートに接続されている、差圧測定部と、
前記第2の配管の他端が接続されており、前記グレーチング床板上に配置した際に、前記グレーチング床板との間に前記床下領域の圧力を測定するための空間を形成するカップと、
を備え、
前記第1の配管の他端と前記第2の配管の前記他端との間の装置高さ方向の距離が固定されていることを特徴とする差圧測定装置。
【0015】
[2]前記装置高さ方向の距離は0mm以上250mm以下である、前記[1]に記載の差圧測定装置。
【0016】
[3]前記第1の配管の前記他端が装置高さ方向に対して交差する方向を向いている、前記[1]または[2]に記載の差圧測定装置。
【0017】
[4]前記第1の配管の他端への気流を抑制するカバーをさらに有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の差圧測定装置。
【0018】
[5]床にグレーチング床板が配置された部屋の前記グレーチング床板上に前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の差圧測定装置を配置して床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧を測定することを特徴とする差圧測定方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧が小さい場合にも、上記差圧を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】循環型ダウンフロー方式のクリーンルームの一例の模式図である。
図2】本発明による差圧測定装置の好適な一例の断面図である。
図3】本発明による差圧測定装置による効果を説明する図である。
図4】実施例における差圧の測定位置を説明する図である。
図5】発明例および比較例について、差圧の測定位置と測定された差圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(差圧測定装置)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明による差圧測定装置は、床にグレーチング床板が配置された部屋の床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧を測定する差圧測定装置であり、床上領域の圧力を取得する第1のポートと床下領域の圧力を取得する第2のポートとを有する差圧測定部であって、第1の配管の一端が第1のポートに接続され、第2の配管の一端が第2のポートに接続されている、差圧測定部と、第2の配管の他端が接続されており、グレーチング床板上に配置した際に、グレーチング床板との間に床下領域の圧力を測定するための空間を形成するカップとを備え、第1の配管の他端と第2の配管の他端との間の装置高さ方向の距離が固定されていることを特徴とする。言い換えると、本発明による差圧測定装置は、第1の配管の他端と第2の配管の他端との間の装置高さ方向の相対的な位置関係が一定で変化しないことを特徴としている。
【0022】
上述のように、特許文献1に記載された方法では、差圧測定装置を用いてクリーンルーム100の床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を測定すると、差圧が小さい場合に精度よく測定することができない。本発明者は、上記差圧を精度よく測定できない原因について鋭意検討した結果、清浄な空気の気流が床上領域100cの圧力および床下領域100dの圧力の取得に影響を与えているのではないかと考えた。
【0023】
すなわち、差圧測定装置では、一般に、差圧を測定するために取得する2カ所の圧力として、空気の圧力である静圧と、空気の運動エネルギーを圧力に換算した動圧との和である全圧が測定される。図1に示したクリーンルーム100では、床上領域100cの清浄な空気が部分的に配置されたグレーチング床板102の開口部102aに集中して通過し、床下領域100dに流れ込む。そのため、グレーチング床板102の下方での空気の流速が大きくなる。上述のように、特許文献1に記載された方法では、床下領域100dの圧力を取得するポートは、グレーチング床板102下方の床下領域100dに配置されているため、取得される床下領域100dの圧力は動圧の影響を大きく受ける。
【0024】
しかしながら、クリーンルーム100内の清浄空気の気流の調整に必要なのは、床上領域100cの静圧と床下領域100dの静圧との差圧である。そこで、本発明者らは、床下領域100dの圧力を取得する際に、上述のような動圧の影響を低減する方途について鋭意検討した。その結果、一端が差圧測定装置における床下領域100dの圧力を取得するポートに接続された配管の他端にカップを接続することに想到した。そして、これにより、カップをグレーチング床板102上に配置した際に、カップとグレーチング床板102との間に擬似的な床下空間を構成することができ、清浄な空気の動圧の影響を低減して床下領域100dの圧力を取得することができることを見出した。
【0025】
また、本発明者らは、床下領域100dの圧力を取得する際に、床上領域100cの圧力を取得するポートに可撓性を有する配管の一端を接続して床上領域100cに圧力を取得すると、配管の他端の位置が測定毎にばらつき、それが差圧の値のばらつきに繋がると考えた。そこで、本発明者らは、床上領域の100cの圧力を取得するポート(第1のポート)に接続された配管(第1の配管)の他端と床下領域100dの圧力を取得するポート(第2のポート)に接続された配管(第2の配管)の他端の装置高さ方向の距離を固定することに想到した。こうして、本発明を完成させるに至った。以下、本発明による差圧測定装置の各構成について説明する。
【0026】
図2は、本発明による差圧測定装置の好適な一例の断面図を示している。図2に示した差圧測定装置1は、差圧測定部11と、第1の配管12と、第2の配管13と、カップ14と、パッキン15とを備える。
【0027】
差圧測定部11は、床上領域100cの圧力を取得する第1のポート11aと、床下領域100dの圧力を取得する第2のポート11bとを有している。第1のポート11aには、第1の配管12の一端12aが接続されており、第2のポート11bには、第2の配管13の一端13aが接続されている。差圧測定部11は、取得した床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差から差圧を測定する。
【0028】
差圧測定部11は、床上領域100cの圧力および床下領域100dの圧力を取得して、それらの差圧を測定することができれば特に限定されず、従来公知の差圧測定装置(差圧計)で構成することができる。ただし、クリーンルーム100の床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧の値が小さいことから、差圧測定部11が0.1Pa以下の分解能を有することが好ましい。0.1Pa以下の分解能を有することにより、十分な精度で床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を把握できる。
【0029】
第1の配管12および第2の配管13は、軟質塩化ビニルやシリコンチューブなどで構成することができる。
【0030】
また、第2の配管13の他端13bにはカップ14が接続されている。図3に示すように、カップ14は、カップ14をグレーチング床板102上に配置した際に、カップ14とグレーチング床板102との間に、擬似的な床下領域100dの空間が形成されるように構成されている。このように構成することにより、床下領域100dの空気流の動圧を抑制して床下領域100dの静圧を測定することができる。
【0031】
なお、図2に示すように、カップ14の縁部14aに沿ってパッキン15が設けられていることが好ましい。これにより、床上領域100cの気流がカップ14とグレーチング床板102との間の空間に侵入するのを低減して、上記空間をより床下領域100dの環境に近い空間にすることができる。
【0032】
カップ14は、差圧の測定に影響を与えない十分な強度を有する材料で構成することができ、例えばポリプロピレンなどの樹脂や軽量な金属、例えばアルミニウムなどで構成することができる。
【0033】
また、カップ14のサイズについては、グレーチング床板102のサイズが縦600mm×横600mm程度の場合が多いことから、縦、横ともに100mm以上600mm以下であることが好ましい。縦、横ともに100mm以上であれば、床下領域100dの静圧を良好に取得することができる。また、縦横ともに600mm以下であれば、1枚のグレーチング床板102上の異なる位置で差圧を細かく測定することができる。カップ14の寸法は、縦200mm、横100mmの場合に最も好ましい。床下領域100dのリターン口103に向かう方向に対して離れるほど差圧が小さくなる場合があるため、カップの横方向の長さを100mmとしてカップ14の横方向をリターン口103方向に対して平行に配置にすることによって、より細かい差圧分布を確認することができる。一方、カップ14の縦方向の長さを200mmとしてカップ14の縦方向をリターン口103方向に対して垂直に配置することによって、距離に対する変化が小さい方向にカップ14の面積を広げ、安定した計測面積を広くして測定値を安定化することができる。また、カップ14の高さは、20mm以上100mm以下であることが好ましい。カップ14の高さが20mm以上であれば、カップの内部に擬似的な床下領域100dの空間を形成して、床下領域100dの静圧の測定を安定して行うことができる。また、カップ14の高さが100mm以下であれば、携帯性を損なうことなく、床下領域100dの静圧を測定することができる。
【0034】
上述のような構成を有する差圧測定装置1において、第1の配管12の他端12bと、第2の配管13の他端13bとの装置高さ方向の距離が固定されていることが肝要である。これにより、差圧の測定をより高精度に行うことができる。なお、「第2の配管13の他端13bとの装置高さ方向の距離」とは、カップ14をその縁部14aが水平面に接触するように水平面に載置した際に、第1の配管12の中心軸の他端12bでの高さ位置と、第2の配管13の中心軸の他端13bでの高さ位置との差を意味している。
【0035】
また、床上領域100cの圧力を取得する第1のポート11aに接続された第1の配管12の他端12bおよび床下領域100dの圧力を取得する第2のポート11bに接続された第2の配管13の他端13bの位置を、本発明の差圧測定装置1上で固定することが好適である。
【0036】
上記第1の配管12の他端12bと第2の配管13の他端13bとの間の装置高さ方向の距離は、0mm以上250mm以下であることが好ましい。これにより、差圧の測定誤差を0.1Pa以下にすることができる。装置高さ方向の距離は、0mm以上120mm以下であることがより好ましい。これにより、差圧の測定誤差を0.0Paにすることができる。
【0037】
また、第1の配管12の他端12bは、図2に示すように、装置高さ方向に対して交差する方向を向いていることが好ましい。上述のように、清浄空気の気流の調整には床上領域100cの静圧と床下領域100dの静圧の差圧を測定する必要があるが、第1の配管12の他端12bが装置高さ方向に対して交差する方向に向くことにより、床上領域100cの圧力を取得する場合に、床下領域100dの圧力を取得する場合に比べて動圧の影響を受けにくい。
【0038】
ただし、第1の配管12の他端12bを鉛直方向上方に向ける場合には、第1の配管12の内部に清浄空気が入り込み、動圧の影響を大きく受ける。また、第1の配管12の他端12bを鉛直方向下方に向けた場合には、カップ14の表面で反射した空気流が第1の配管12内に入り込みやすくなり、動圧の影響が大きくなる。
【0039】
そのため、第1の配管12の他端12bは、装置高さ方向に対して交差する方向を向いていることが好ましい。図2に示すように、第1の配管12の他端12bは、装置高さ方向に対して直交する方向に向いていることがより好ましい。
【0040】
さらに第1の配管12の他端12bへの気流を抑制するカバーをさらに有することが好ましい。こうしたカバーとしては、通気性を有し、空気流の勢いを低減して動圧を低減することができれば特に限定されない。カバーは、例えば多数の気泡を有する多孔質素材、水槽などで空気の供給に使用されるバブラー、密度の高い綿状素材、小さな貫通孔(例えば、直径0.05~1mm)を有する金属材や樹脂の球体で構成することができる。このようなカバーを第1の配管12の他端12bの上方に配置してもよいし、上記金属材を箱状にして第1の配管12の他端12bを箱状のカバー内に挿入するか、差圧測定装置1全体を箱状カバー内に収容してもよい。また、箱状カバーは、大きさの異なる箱を二重、三重に重ねたものとしてもよく、最も内側の箱状カバーの内部に第1の配管12の他端12bまたは差圧測定装置1を配置してもよい。
【0041】
このように、本発明による差圧測定装置1により、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧が小さい場合にも、差圧を精度よく測定することができる。また、本発明により差圧測定装置1は携帯性に優れるため、クリーンルーム100内の様々な位置にて床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を測定することができる。
【0042】
(差圧測定方法)
次に、本発明による差圧測定方法について説明する。本発明による差圧測定方法は、床にグレーチング床板が配置された部屋のグレーチング床板上に、上述した本発明による差圧測定装置を配置して、床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧を測定することを特徴とする。
【0043】
上述のように、本発明による差圧測定装置1により、床下領域100dの圧力を、カップ14とグレーチング床板102との間の擬似的な床下領域100dの空間において、動圧の影響を低減した状態で行うことができる。これにより、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧が小さい場合にも、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を高精度に測定することができる。
【0044】
上記本発明による差圧測定装置1をグレーチング床板102上に配置する際に、カップ14の縁部14aがグレーチング床板102の開口部102a上にできるだけ配置しないことが好ましく、開口部102a上に全く配置されないことが好ましい。これにより、カップ14とグレーチング床板102との間の空間をより実際の床下領域100dの空間により近づけることができる。
【実施例
【0045】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0046】
図2に示した差圧測定部11として差圧計(柴田化学社製FP-1型)を用い、第1のポート11aの高さ位置と第2のポート11bの高さ位置との差が差圧に与える影響について調べた。具体的には、第1のポート11aには第1の配管12を接続せず、第2のポート11bに第2の配管13の一端13aを接続した。そして、第2の配管13の他端13bの高さ位置が第1のポート11aの高さ位置よりも0mm(参考例1)、250mm(参考例2)、500mm(参考例3)低い状態で、差圧を測定した。上記差圧の測定は、第1のポート11aおよび第2の配管13の他端13bが床上領域100cに配置された状態で行った。その結果、差圧の値は0Pa(参考例1)、0.1Pa(参考例2)、0.2Pa(参考例3)となった。この結果から、第1のポート11a(すなわち、第1の配管12の他端12b)の高さ位置と、第2の配管13の他端13bの高さ位置との差が0mm以上250mm以下の場合には、0.1Paの測定誤差で差圧を測定でき、0mm以上120mm以下の場合には0.0Paの測定誤差で差圧を測定できることが分かる。
【0047】
(発明例)
図2に示した差圧測定装置1を用いて、クリーンルーム100内の床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を測定した。具体的には、差圧測定部11として差圧計(柴田化学社製FP-1型)を用いた。また、第1の配管12および第2の配管13をシリコンチューブで構成し、カップ14はプラスチック素材のポリプロピレンで構成した。カップ14のサイズは、縦150mm、横200mm、高さ50mmとした。
【0048】
上記差圧測定装置1を、図4に示すようにリターン口103からの距離を変更して、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を測定した。得られた結果を図5に示す。
【0049】
(比較例)
発明例と同様に、床上領域100cの圧力と床下領域100dの圧力との差圧を測定した。ただし、差圧測定装置としては、図2に示した差圧測定装置1の差圧測定部11を取り出し、第1のポート11aに第1の配管12を接続せず、第2のポート11bに第2の配管13(長さ500mm)を接続したものを用い、測定の際に第2の配管13の他端13bをグレーチング床板102の開口部102aを介して床下領域100dに挿入した。その他の条件は、発明例と全て同じである。
【0050】
図5は、発明例および比較例について、差圧の測定位置と測定された差圧との関係を示している。図5から明らかなように、発明例については、差圧の測定位置がリターン口から離れるにつれて、差圧が小さくなることが分かる。これに対して、比較例については、第2の配管13の他端13bのリターン口103からの位置が65~105cmの場合には、差圧が一定となり、差圧が正しく測定できていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、床上領域の圧力と床下領域の圧力との差圧が小さい場合にも、上記差圧を精度よく測定することができるため、半導体産業において有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 差圧測定装置
11 差圧測定部
12 第1の配管
12a 第1の配管の一端
12b 第1の配管の他端
13 第2の配管
13a 第2の配管の一端
13b 第2の配管の他端
14 カップ
14a 縁部
15 パッキン
100 クリーンルーム
100a 天井部
100b 床
100c 床上領域
100d 床下領域
101 清浄空気供給部
102 グレーチング床板
102a 開口部
103 リターン口
104 送風ファン
図1
図2
図3
図4
図5