(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20231205BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F02B37/18 A
F02B37/18 D
F02B37/18 C
F02B37/18 E
F02B39/00 F
(21)【出願番号】P 2020191697
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 武士
(72)【発明者】
【氏名】松田 真明
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-084923(JP,A)
【文献】特開2020-090957(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097786(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/190662(WO,A1)
【文献】特表2015-537153(JP,A)
【文献】特表2019-509421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174077(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247450(US,A1)
【文献】特開2019-056356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の流れにより回転するタービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するとともに前記タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスするバイパス通路を区画するタービンハウジングと、
前記バイパス通路を開閉するウェイストゲートバルブと、
アクチュエータからの駆動力を前記ウェイストゲートバルブに伝達するリンク機構と、を備え、
前記タービンハウジングは、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に前記ウェイストゲートバルブに接触する平面の弁座面と、前記タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔と、を有し、
前記ウェイストゲートバルブは、前記貫通孔を貫通しているとともに前記タービンハウジングに回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトにおける前記タービンハウジングの内部側の端から前記シャフトの径方向に延びる弁体と、を有し、
前記弁体は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に向かい合う平面のバルブ面を有し、
前記シャフト及び前記弁体が一体成形物であるターボチャージャであって、
前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記リンク機構が前記シャフトにおける前記タービンハウジングの外部側の端に付与する力の向きを第1方向とし、
前記シャフトの中心軸に沿う方向であって前記タービンハウジングの外部側から内部側へと向かう方向を第1シャフト方向としたとき、
前記第1方向は、前記貫通孔の中心軸に沿う方向から視て前記弁座面に対して傾斜しており、
前記弁座面は、前記貫通孔の中心軸と平行であり、
前記シャフトの中心軸と平行であり且つ前記バルブ面の重心を含む断面視で、前記バルブ面における前記第1シャフト方向側の端
が、前記重心から視て、前記シャフトの中心軸に直交する方向において前記第1方向側に位置
するように、前記シャフトの中心軸に対して前記バルブ面が傾斜しており、
前記シャフトの中心軸と前記貫通孔の中心軸とが一致している場合であって前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合での、前記シャフトの中心軸と直交し且つ前記バルブ面の重心を含む断面視で、前記バルブ面のうち、前記弁座面に沿う方向において前記第1方向とは反対側の端
が、前記重心から視て、前記弁座面に直交方向する方向において前記第1方向側に位置
するように、前記弁座面に対して前記バルブ面が傾斜して
おり、
前記タービンハウジングには、前記弁座面に開口する前記バイパス通路が複数区画されており、
前記弁体は、前記バルブ面に対して窪んだ窪みを有し、
前記窪みは、前記弁体のうち、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に複数の前記バイパス通路に挟まれた箇所に向かい合う箇所に、位置しており、
前記バルブ面においては環状溝が窪んでおり、
前記環状溝は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に複数の前記バイパス通路及び前記窪みを取り囲むように前記バルブ面上を延びており、且つ、前記窪みに接続していない
ターボチャージャ。
【請求項2】
前記ウェイストゲートバルブは、前記バルブ面から突出する凸部を備え、
前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記凸部は、前記バイパス通路に挿入される
請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記凸部の先端面においては凹部が窪んでおり、
前記凹部の内面の少なくとも一部は、曲面である
請求項2に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のターボチャージャは、タービンホイール、タービンハウジング、ウェイストゲートバルブ、及びリンク機構を備えている。タービンハウジングはタービンホイールを収容している。タービンハウジングは、バイパス通路を区画している。バイパス通路は、タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスしている。タービンハウジングは、ウェイストゲートバルブが閉状態のときに当該ウェイストゲートバルブに接触する弁座面を備えている。また、タービンハウジングは、当該タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔を備えている。
【0003】
ウェイストゲートバルブは、バイパス通路を開閉する。ウェイストゲートバルブは、シャフト、及び弁体を備えている。シャフトは、貫通孔を貫通しているとともにタービンハウジングに回転可能に支持されている。弁体は、シャフトにおけるタービンハウジングの内部側の端からシャフトの径方向に延びている。弁体は、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、弁座面に向かい合う平面のバルブ面を備えている。シャフト及び弁体は、一体成形物である。
【0004】
リンク機構は、シャフトにおけるタービンハウジングの外部側の端に連結している。リンク機構は、アクチュエータからの駆動力をウェイストゲートバルブに伝達する。ウェイストゲートバルブは、リンク機構からの駆動力に基づきバイパス通路を開閉する。また、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、リンク機構は、シャフトにおけるタービンハウジングの外部側の端に対してバルブ面から弁座面に向かう力を付与する。
【0005】
さらに、バルブ面は、シャフトの中心軸に対して傾いている。具体的には、バルブ面は、シャフトの中心軸に沿う方向のうち、タービンハウジングの外部側から内部側に向かうほど、シャフトの中心軸から離れるように傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなターボチャージャでは、上記のとおり弁体のバルブ面が傾斜しているため、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、リンク機構からの力を受けて貫通孔に対してシャフトが傾いても、バルブ面と弁座面との間に大きな隙間が生じることは防げる。しかしながら、リンク機構からの力の方向によっては、依然として、バルブ面と弁座面との間に隙間が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのターボチャージャは、排気の流れにより回転するタービンホイールと、前記タービンホイールを収容するとともに前記タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスするバイパス通路を区画するタービンハウジングと、前記バイパス通路を開閉するウェイストゲートバルブと、アクチュエータからの駆動力を前記ウェイストゲートバルブに伝達するリンク機構と、を備え、前記タービンハウジングは、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に前記ウェイストゲートバルブに接触する平面の弁座面と、前記タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔と、を有し、前記ウェイストゲートバルブは、前記貫通孔を貫通しているとともに前記タービンハウジングに回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトにおける前記タービンハウジングの内部側の端から前記シャフトの径方向に延びる弁体と、を有し、前記弁体は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に向かい合う平面のバルブ面を有し、前記シャフト及び前記弁体が一体成形物であるターボチャージャであって、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記リンク機構が前記シャフトにおける前記タービンハウジングの外部側の端に付与する力の向きを第1方向とし、前記シャフトの中心軸に沿う方向であって前記タービンハウジングの外部側から内部側へと向かう方向を第1シャフト方向としたとき、前記第1方向は、前記貫通孔の中心軸に沿う方向から視て前記弁座面に対して傾斜しており、前記弁座面は、前記貫通孔の中心軸と平行であり、前記シャフトの中心軸と平行であり且つ前記バルブ面の重心を含む断面視で、前記バルブ面における前記第1シャフト方向側の端は、前記重心から視て、前記シャフトの中心軸に直交する方向において前記第1方向側に位置しており、前記シャフトの中心軸と前記貫通孔の中心軸とが一致している場合であって前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合での、前記シャフトの中心軸と直交し且つ前記バルブ面の重心を含む断面視で、前記バルブ面のうち、前記弁座面に沿う方向において前記第1方向とは反対側の端は、前記重心から視て、前記弁座面に直交方向する方向において前記第1方向側に位置している。
【0009】
上記のターボチャージャでは、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合において、シャフトにおけるタービンハウジングの外部側の端に第1方向の力が作用する。すると、シャフトにおけるタービンハウジングの外部側の端が第1方向に、シャフトにおけるタービンハウジングの内部側の端が第1方向とは反対方向に位置するように、貫通孔の中心軸に対してシャフトの中心軸が傾く。上記構成では、バルブ面は、シャフトの中心軸が延びる方向に対して傾斜しているのみならず、シャフトの中心軸に直交する方向においても傾斜している。すなわち、第1方向が弁座面に対して傾斜しているのに合わせて、バルブ面も傾斜している。これにより、弁座面に対して傾斜する第1方向の力がシャフトに作用したとしても、バルブ面と弁座面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0010】
上記構成において、前記バルブ面においては環状溝が窪んでおり、前記環状溝は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に前記バイパス通路を取り囲むように、前記バルブ面上を延びていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、環状溝の内面と弁座面との間に空隙が生じる。仮に、バルブ面と弁座面との間に隙間が生じている場合、排気が漏れる流路上に上記空隙が存在することになる。そして、この空隙においては流路断面積が急激に大きくなるため、排気の流れが乱されて、排気の流通抵抗が大きくなる。これにより、バルブ面と弁座面との間に隙間が生じていたとしても、環状溝によって区画される空隙により、漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0012】
上記構成において、前記ウェイストゲートバルブは、前記バルブ面から突出する凸部を備え、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記凸部は、前記バイパス通路に挿入されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合において、バルブ面と弁座面との間に排気が至る際には、凸部の外周面とパイパス通路の内周面との間を介して流通する。すなわち、凸部の存在により、バルブ面と弁座面との間に至るまでの排気の流路断面積を小さくできる。したがって、凸部が設けられていない構成に比べて、バルブ面と弁座面との間へと至る排気の量を抑制できる。
【0014】
上記構成において、前記凸部の先端面においては凹部が窪んでおり、前記凹部の内面の少なくとも一部は、曲面であってもよい。
上記構成によれば、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、凹部の内面に衝突した排気の一部が曲面に案内されることにより、下流から上流へと向かって吹き返される。この吹き返しの排気によって、上流から下流への排気の流れが弱められるので、ウェイストゲートバルブを開こうとする排気の力を弱めることができる。
【0015】
上記構成において、前記タービンハウジングには、前記弁座面に開口する前記バイパス通路が複数区画されており、前記弁体は、前記バルブ面に対して窪んだ窪みを有し、前記窪みは、前記弁体のうち、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に複数のバイパス通路に挟まれた箇所に向かい合う箇所に、位置していてもよい。
【0016】
上記構成においては、弁体のうち、複数のバイパス通路に挟まれていて排気による熱の影響を受けやすい弁座面の箇所に向かい合う箇所に窪みが存在する。そのため、上記構成によれば、排気の熱の影響を受けて弁座面が熱膨張したとしても、弁座面のうちバイパス通路に挟まれた箇所のみが、バルブ面と接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】同実施形態にかかるターボチャージャの正面図。
【
図3】同実施形態にかかるタービンハウジングの周辺構成を示す断面図。
【
図4】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの周辺構成を示す断面図。
【
図5】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの部分断面を含む正面図。
【
図6】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの部分断面を含む右側面図。
【
図7】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの底面図。
【
図8】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの周辺構成を示す説明図。
【
図9】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの周辺構成を示す説明図。
【
図10】第2実施形態にかかるウェイストゲートバルブの正面図。
【
図11】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの右側面図。
【
図12】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの底面図。
【
図13】同実施形態にかかるウェイストゲートバルブの周辺構成を示す説明図。
【
図14】同実施形態にかかるタービンハウジングの周辺構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
<内燃機関の概略構成>
以下、本発明の第1実施形態を
図1~
図9にしたがって説明する。先ず、本発明のターボチャージャ20が適用された車両の内燃機関10の概略構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、内燃機関10は、吸気通路11、気筒12、排気通路13、触媒15、及びターボチャージャ20を備えている。吸気通路11は、内燃機関10の外部からの吸気を導入する。気筒12は、吸気通路11に接続している。気筒12は、燃料と吸気とを混合して燃焼させる。排気通路13は、気筒12に接続している。排気通路13は、気筒12からの排気を排出する。触媒15は、排気通路13の途中に位置している。触媒15は、排気通路13を流通する排気を浄化する。
【0020】
ターボチャージャ20は、コンプレッサハウジング30、ベアリングハウジング50、タービンハウジング60、コンプレッサホイール70、連結シャフト80、及びタービンホイール90を備えている。
【0021】
コンプレッサハウジング30は、吸気通路11の途中に取り付けられている。タービンハウジング60は、排気通路13における触媒15よりも上流の部分に取り付けられている。ベアリングハウジング50は、コンプレッサハウジング30及びタービンハウジング60にそれぞれ固定されており、コンプレッサハウジング30及びタービンハウジング60を接続している。このように、ターボチャージャ20は、吸気通路11及び排気通路13に跨って設けられている。
【0022】
タービンハウジング60は、タービンホイール90を収容している。ベアリングハウジング50は、連結シャフト80を収容している。ベアリングハウジング50は、図示しないベアリングを介して回転可能に連結シャフト80を支持している。連結シャフト80の第1端は、タービンホイール90に接続している。コンプレッサハウジング30は、コンプレッサホイール70を収容している。コンプレッサホイール70は、連結シャフト80の第2端に接続している。すなわち、コンプレッサホイール70は、連結シャフト80を介してタービンホイール90に連結している。
【0023】
タービンホイール90がタービンハウジング60の内部の排気の流通により回転すると、連結シャフト80を介してコンプレッサホイール70が共に回転する。そして、コンプレッサホイール70が回転することにより、コンプレッサハウジング30の内部の吸気が圧縮される。
【0024】
<ターボチャージャの構成>
次に、ターボチャージャ20の具体的な構成について説明する。
図2に示すように、タービンハウジング60は、円弧部60A、筒状部60B、及びフランジ部60Cを備えている。筒状部60Bは、略円筒形状になっている。筒状部60Bは、概ねタービンホイール90の回転中心である回転軸線90Aに沿って延びている。円弧部60Aは、筒状部60Bの外周を取り囲むように延びており、略円弧形状になっている。フランジ部60Cは、円弧部60Aの上流端に位置している。フランジ部60Cは、排気通路13におけるタービンハウジング60よりも上流側の部分に固定されている。
【0025】
図3に示すように、タービンハウジング60は、排気が流通する空間として、2つのスクロール通路61、収容空間62、排出通路63、及び2つのバイパス通路64を区画している。なお、
図3では、1つのバイパス通路64を図示している。各スクロール通路61は、円弧部60A及び筒状部60Bの内部に位置している。スクロール通路61は、タービンホイール90を取り囲むように円弧状に延びている。スクロール通路61の上流端は、タービンハウジング60よりも上流側の排気通路13に接続している。スクロール通路61の下流端は、収容空間62に接続している。2つのスクロール通路61は、互いに略平行に延びている。収容空間62は、筒状部60Bの内部空間のうち、タービンホイール90が位置している空間である。収容空間62は、排出通路63に接続している。排出通路63は、筒状部60Bの内部空間のうち、ベアリングハウジング50とは反対側の端、すなわち
図3における上端を含む一部の空間である。排出通路63の下流端は、タービンハウジング60よりも下流側の排気通路13に接続している。各バイパス通路64は、円弧部60A及び筒状部60Bの内部に位置している。各バイパス通路64は、スクロール通路61と排出通路63とを接続する。すなわち、バイパス通路64は、タービンホイール90よりも排気上流側及び排気下流側をバイパスする。
【0026】
図4に示すように、タービンハウジング60は、弁座面66、及び貫通孔69を備えている。弁座面66は、排出通路63を区画するタービンハウジング60の内壁面のうち、2つのバイパス通路64の開口縁を取り囲む平面である。すなわち、各バイパス通路64は、弁座面66に開口している。タービンハウジング60の内面のうち、弁座面66を含む一部は、他の箇所に対して隆起している。
図9に示すように、各バイパス通路64の開口縁の形状は、略半円形状である。また、各バイパス通路64は互いに並んでいる。したがって、弁座面66に直交する方向から視たときに、2つのバイパス通路64の開口縁を合わせた形状は、全体として円形状である。
【0027】
図4に示すように、貫通孔69は、タービンハウジング60の壁を貫通している。貫通孔69は、タービンハウジング60の壁のうち排出通路63を区画する部分に位置している。貫通孔69の中心軸69Aに沿う方向から視たときに、当該貫通孔69は、略真円形状である。貫通孔69の中心軸69Aは、弁座面66と平行になっている。
【0028】
図2及び
図4に示すように、ターボチャージャ20は、ウェイストゲートバルブ110、ブッシュ120、リンク機構130、及びアクチュエータ140を備えている。
図4に示すように、ブッシュ120の形状は、略円筒形状である。ブッシュ120の外径は、貫通孔69の内径と略同じである。ブッシュ120は、貫通孔69の内部に位置している。
【0029】
図4に示すように、ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111、及び弁体112を備えている。シャフト111の形状は、略円柱形状である。シャフト111の外径は、ブッシュ120の内径よりもわずかに小さくなっている。シャフト111は、ブッシュ120に挿通されている。すなわち、シャフト111は、タービンハウジング60の貫通孔69を貫通している。タービンハウジング60は、ブッシュ120を介してシャフト111を回転可能に支持している。
【0030】
図6に示すように、弁体112は、接続部113、及び弁本体114を備えている。接続部113は、シャフト111から当該シャフト111の径方向に延びている。
図4に示すように、接続部113は、シャフト111におけるタービンハウジング60の内部側の端、すなわち
図4におけるシャフト111の右端に位置している。
図6に示すように、弁本体114は、接続部113におけるシャフト111の径方向外側の端に接続している。
図7に示すように、弁本体114の形状は、略円板形状である。また、弁本体114のうち、接続部113とは反対の面、すなわち
図7における紙面手前の面は、バルブ面116として機能する。バルブ面116は、平面である。バルブ面116は、ウェイストゲートバルブ110が閉状態である場合に、弁座面66と向かい合う。ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111及び弁体112が一体成形された一体成形物である。なお、ウェイストゲートバルブ110は、例えば鋳造により一体成形されている。
【0031】
図2に示すように、リンク機構130は、リンクアーム131、及びリンクロッド132を備えている。リンクアーム131の形状は、略長板形状である。リンクアーム131の第1端、すなわち
図2におけるリンクアーム131の右端を含む端部は、シャフト111におけるタービンハウジング60の外部側の端に連結している。リンクアーム131は、シャフト111の径方向に延びている。リンクロッド132の形状は、略棒状である。リンクロッド132の第1端、すなわち
図2におけるリンクロッド132の上側の端を含む端部は、リンクアーム131の第2端、すなわち
図2におけるリンクアーム131の左端を含む端部に連結している。すなわち、リンクロッド132は、リンクアーム131及びシャフト111の連結中心から径方向に離れた部分に連結している。
【0032】
図2に示すように、アクチュエータ140は、コンプレッサハウジング30に固定されている。アクチュエータ140は、リンクロッド132の第2端、すなわち
図2におけるリンクロッド132の下端に連結している。アクチュエータ140は、リンク機構130に駆動力を伝達する。そして、リンク機構130は、アクチュエータ140からの駆動力をウェイストゲートバルブ110に伝達することにより、バイパス通路64を開閉する。
【0033】
具体的には、ウェイストゲートバルブ110が開状態から閉状態になる際には、アクチュエータ140の駆動力により、リンクロッド132が、第1端から第2端に向かう方向、すなわち
図2における概ね下方向に運動する。すると、リンクアーム131は、リンクロッド132の運動を回転運動に変換して、シャフト111の周方向の第1回転方向、すなわち
図2における反時計回り方向に回転する。そして、ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111の周方向の第1回転方向に回転する。すると、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66に接触する。したがって、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合、タービンハウジング60の弁座面66にウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が向かい合うことにより、バイパス通路64の下流端はウェイストゲートバルブ110のバルブ面116に覆われる。なお、本実施形態において、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66に接触してウェイストゲートバルブ110がそれ以上閉側に回転できなくなる状態が閉状態である。
【0034】
一方、ウェイストゲートバルブ110が閉状態から開状態になる際には、アクチュエータ140の駆動力により、リンクロッド132が、第2端から第1端に向かう方向、すなわち
図2における概ね上方向に運動する。すると、リンクアーム131は、リンクロッド132の運動を回転運動に変換して、シャフト111の周方向の第2回転方向、すなわち
図2における時計回り方向に回転する。そして、ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111の周方向の第2回転方向に回転する。すると、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66から離間する。したがって、ウェイストゲートバルブ110が開状態の場合、バイパス通路64の下流端はウェイストゲートバルブ110のバルブ面116に覆われない。
【0035】
<リンク機構から作用する力>
次に、リンク機構130から作用する力について説明する。
以下では、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、リンク機構130がシャフト111におけるタービンハウジング60の外部側の端に付与する力の向きを第1方向L1と呼称し、第1方向L1の反対方向を第2方向L2と呼称する。
【0036】
図2に示すように、弁座面66を含む仮想平面を弁座仮想平面66Zとする。ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合において、貫通孔69の中心軸69Aに沿う方向から視たときに、リンクロッド132の軸線132Aは、弁座仮想平面66Zと交差している。このとき、リンクロッド132の軸線132Aと弁座仮想平面66Zとがなす鋭角の角度の一例は、約55°である。その結果、
図8に示すように、第1方向L1は、貫通孔69の中心軸69Aに沿う方向から視たときに、弁座面66に対して傾斜している。リンクロッド132からの第1方向L1の力は、リンクアーム131によって回転運動に変換され、シャフト111に伝わる。しかし、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合には、シャフト111はそれ以上回転することができない。したがって、シャフト111には、リンクアーム131を介して、リンクロッド132が運動する方向と略同じ方向、すなわち第1方向L1の力が作用する。
【0037】
<バルブ面の構成>
次に、バルブ面116の構成について具体的に説明する。
以下では、シャフト111の中心軸111Aに沿う方向のうち、タービンハウジング60の外部側から内部側に向かう方向を第1シャフト方向S1と呼称し、第1シャフト方向S1の反対方向を第2シャフト方向S2と呼称する。
【0038】
図5に示すように、シャフト111の中心軸111Aと貫通孔69の中心軸69Aとが一致している場合であってウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合を仮定する。また、この仮定の下で、シャフト111の中心軸111Aと平行であり、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面で視たとする。このとき、バルブ面116は、第1シャフト方向S1に向かうほど、第1方向L1側に、すなわち
図5における下方に位置するように傾斜している。したがって、バルブ面116における第1シャフト方向S1の端116Dは、重心116Cから視て、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向において第1方向L1側に位置している。
【0039】
なお、
図5の断面において、バルブ面116とシャフト111の中心軸111Aとがなす鋭角の角度は、実際には例えば0.1~1°程度である。
図5では、バルブ面116とシャフト111の中心軸111Aとがなす鋭角の角度を誇張して図示している。また、
図7に示すように、重心116Cは、バルブ面116における幾何中心である。
【0040】
さらに、
図6に示すように、シャフト111の中心軸111Aと貫通孔69の中心軸69Aとが一致している場合であってウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合を仮定する。また、この仮定の下で、シャフト111の中心軸111Aに直交し、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面で視たとする。このとき、バルブ面116は、弁座面66に対して傾斜している。具体的には、バルブ面116は、弁座面66に沿う方向において第2方向L2側ほど、すなわち
図6における右側ほど、弁座面66に直交する方向の第1方向L1側に、すなわち
図6における下方に位置するように傾斜している。したがって、バルブ面116のうち、弁座面66に沿う方向において第2方向L2側の端116Eは、重心116Cから視て、弁座面66に直交する方向において第1方向L1側に位置している。
【0041】
なお、
図6の断面において、バルブ面116と弁座面66とがなす鋭角の角度は、実際には例えば0.1~1°程度である。
図6では、バルブ面116と弁座面66とがなす鋭角の角度を誇張して図示している。
【0042】
弁座面66に直交する方向を高さ方向としたとき、上記のようにバルブ面116が傾斜している結果、バルブ面116からシャフト111の中心軸111Aまでの高さ方向の距離が、バルブ面116の箇所毎に異なっている。具体的には、上述の例と同様に、シャフト111の中心軸111Aと貫通孔69の中心軸69Aとが一致している場合であってウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合を仮定する。このとき、バルブ面116のうち高さ方向の中心軸111Aまでの距離が最も大きい最高点116Aは、バルブ面116のうち、弁座面66に直交する方向において最も第1方向L1側に位置している。
図7に示すように、最高点116Aは、バルブ面116の外周縁のうち、バルブ面116の端116Dとバルブ面116の端116Eとの間に位置している。また、バルブ面116のうち高さ方向の中心軸111Aまでの距離が最も小さい最低点116Bは、バルブ面116のうち、弁座面66に直交する方向において最も第2方向L2側に位置している。
図7に示すように、最低点116Bは、バルブ面116の外周縁のうち、重心116Cを挟んで最高点116Aとは180度反対の箇所に位置している。
【0043】
<本実施形態の作用>
図8において実線矢印で示すように、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、シャフト111におけるタービンハウジング60の外部側の端に第1方向L1の力、すなわち
図8における右下側に向かう力が作用する。すると、シャフト111におけるタービンハウジング60の外部側の端が第1方向L1に、シャフト111におけるタービンハウジング60の内部側の端が第2方向L2に位置するように、貫通孔69の中心軸69Aに対してシャフト111の中心軸111Aが傾く。その結果、貫通孔69に対するシャフト111の傾きに伴って、弁座面66に対して弁体112が傾く。具体的には、弁体112のうち重心116Cの近傍部分に比べて、弁体112のうち最高点116Aの近傍部分が弁座面66に対して離れるように傾く。
【0044】
この点、シャフト111の中心軸111Aと貫通孔69の中心軸69Aとが一致している場合であってウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合を仮定したときに、予めバルブ面116は傾斜している。
【0045】
具体的には、
図5に示すように、シャフト111の中心軸111Aと平行であり、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面で視たとする。このとき、バルブ面116における第1シャフト方向S1の端116Dは、重心116Cから視て、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向において第1方向L1側に位置している。したがって、第1方向L1の力に起因した貫通孔69の中心軸69Aに対するシャフト111の中心軸111Aの傾きのうち、弁座面66に直交する方向、すなわち
図8における上下方向の傾きを見越して、バルブ面116は、シャフト111の中心軸111Aが延びる方向に対して傾斜している。さらに、
図6に示すように、シャフト111の中心軸111Aに直交し、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面で視たとする。このとき、バルブ面116のうち、弁座面66に沿う方向において第2方向L2側の端116Eは、重心116Cから視て、弁座面66に直交する方向において第1方向L1側に位置している。したがって、第1方向L1の力に起因した貫通孔69の中心軸69Aに対するシャフト111の中心軸111Aの傾きのうち、弁座面66に沿う方向、すなわち
図8における左右方向の傾きを見越して、バルブ面116は、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向においても傾斜している。このように、バルブ面116は、シャフト111の中心軸111Aが延びる方向に対して傾斜しているのみならず、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向においても傾斜している。
【0046】
<本実施形態の効果>
(1-1)上記のとおり、弁座面66に対して傾斜する第1方向L1の力に起因して、弁体112のうち重心116Cの近傍部分に比べて、弁体112のうち最高点116Aの近傍部分が弁座面66に対して離れるように傾いても、その傾きを見越して傾斜したバルブ面116により、弁座面66に対してバルブ面116が傾斜することが抑制される。このように弁座面66に対してバルブ面116が傾斜することが抑制されることにより、バルブ面116が弁座面66に面接触しやすく、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0047】
<第2実施形態>
<ウェイストゲートバルブの構成>
以下、本発明の第2実施形態を
図10~
図14にしたがって説明する。第2実施形態において、ターボチャージャ20は、ウェイストゲートバルブ110に代えて、ウェイストゲートバルブ210を備える点が異なる。第2実施形態では、ウェイストゲートバルブ210に関して、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略化する。
【0048】
図10に示すように、ウェイストゲートバルブ210の弁本体114は、環状溝221、2つの凸部222、2つの凹部223、及び窪み224を備えている。環状溝221は、バルブ面116から窪んでいる。
図12に示すように、環状溝221の形状は、バルブ面116の外周縁に沿ってバルブ面116上を延びる略円環形状である。環状溝221は、バルブ面116の外周縁よりも僅かに径方向内側であって、当該バルブ面116の外周縁の近傍に位置している。したがって、
図13に示すように、環状溝221は、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、2つのバイパス通路64を取り囲むように、バルブ面116上を延びている。
【0049】
図10に示すように、凸部222は、バルブ面116から突出している。
図12に示すように、バルブ面116に直交する方向から視たときに、凸部222の形状は、略半円形状である。凸部222は、バイパス通路64の開口形状よりも僅かに小さい。ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、凸部222は、バイパス通路64と同じ箇所に位置している。したがって、
図13に示すように、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、凸部222は、バイパス通路64に挿入される。
【0050】
図11に示すように、凸部222は、傾斜部222A、及び平行部222Bを備えている。傾斜部222Aは、凸部222のうち、シャフト111の中心軸111Aに近い一部分、すなわち
図11における左側の一部分である。傾斜部222Aの先端面、すなわち
図11における下面は、バルブ面116に対して傾斜している。具体的には、傾斜部222Aの先端面は、シャフト111の中心軸111Aに近いほど、バルブ面116に対する突出量が小さくなるように傾斜している。
【0051】
平行部222Bは、凸部222のうち、傾斜部222A以外の一部分、すなわち
図11における右側の一部分である。平行部222Bの先端面、すなわち
図11における下面は、バルブ面116と平行になっている。平行部222Bにおけるバルブ面116に対する突出量は、傾斜部222Aにおける平行部222Bに近い端の突出量と同じになっている。
【0052】
図11に示すように、凹部223は、傾斜部222Aの先端面、及び平行部222Bの先端面から窪んでいる。凹部223におけるシャフト111の中心軸111Aから遠い端、すなわち
図11における右端は、平行部222Bにおけるシャフト111の中心軸111Aから遠い端の近傍に位置している。凹部223におけるシャフト111の中心軸111Aに近い端、すなわち
図11における左端は、傾斜部222Aのうち、平行部222Bに近い部分に位置している。
図12に示すように、バルブ面116に直交する方向から視たときに、凹部223の縁の全域は、凸部222の縁よりも内側に位置している。
図13に示すように、弁体112を断面視したとき、凹部223の底面のうちの縁を含む一部の領域は、曲面になっている。
【0053】
図10に示すように、窪み224は、バルブ面116に対して窪んでいる。
図12に示すように、バルブ面116に直交する方向から視たときに、窪み224は、バルブ面116のうち、2つの凸部222に挟まれた箇所の略全域に亘って位置している。窪み224のうち、シャフト111の中心軸111Aに近い端、すなわち
図12における上端は、環状溝221におけるシャフト111の中心軸111Aに近い部分の近傍に位置している。また、窪み224のうち、シャフト111の中心軸111Aから遠い端、すなわち
図12における下端は、環状溝221におけるシャフト111の中心軸111Aから遠い部分の近傍に位置している。
【0054】
上述したように、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、凸部222は、バイパス通路64に挿入される。したがって、
図13に示すように、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、窪み224は、弁本体114のうち、弁座面66において2つのバイパス通路64に挟まれた箇所に向かい合う箇所に位置している。
【0055】
なお、本実施形態において、ウェイストゲートバルブ210の弁本体114が、環状溝221、2つの凸部222、2つの凹部223、及び窪み224を備えている結果、
図12に示すように、バルブ面116の形状は、全体として円環形状である。
【0056】
第1実施形態と同様に、バルブ面116は、平面である。さらに、第1実施形態と同様に、バルブ面116は、傾斜している。すなわち、シャフト111の中心軸111Aと平行であり、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面視で、バルブ面116は、第1シャフト方向S1に向かうほど、第1方向L1側に位置するように傾斜している。また、シャフト111の中心軸111Aに直交し、且つ、バルブ面116の重心116Cを含む断面視で、バルブ面116は、弁座面66に沿う方向において第2方向L2側ほど、弁座面66に直交する方向の第1方向L1側に位置するように傾斜している。
【0057】
<本実施形態の作用>
図13において実線矢印で示すように、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合であっても、排気の圧力によってウェイストゲートバルブ210ががたつくなどして、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じることがある。このとき、バルブ面116と弁座面66との隙間を介して、バイパス通路64から排出通路63へと排気が漏れ出る。
【0058】
<本実施形態の効果>
本実施形態では、上記の(1-1)の効果に加えて、以下の(2-1)~(2-5)の効果がある。
【0059】
(2-1)ウェイストゲートバルブ210は環状溝221を備えているため、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、環状溝221の内面と弁座面66との間に空隙が生じる。そのため、仮に、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じている場合、排気が漏れる流路上に上記の空隙が存在することになる。そして、排気が漏れる流路のうち、この空隙においては流路断面積が急激に大きくなるため、排気の流れが乱されて、排気の流通抵抗が大きくなる。これにより、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じていても、環状溝221によって区画される空隙により、漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0060】
(2-2)本実施形態では、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、ウェイストゲートバルブ210の凸部222がタービンハウジング60のバイパス通路64に挿入される。そのため、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、バルブ面116と弁座面66との隙間に排気が至る際には、凸部222の外周面とバイパス通路64の内周面との間を介して流通する。すなわち、凸部222の存在により、バルブ面116と弁座面66との間に至るまでの排気の流路断面積を小さくできる。その結果、バルブ面116と弁座面66との間へと至る排気の量を抑制できる。
【0061】
(2-3)ウェイストゲートバルブ210は、凹部223を備えている。また、凹部223の底面のうちの縁を含む一部の領域は、曲面になっている。そのため、
図13において二点鎖線矢印で示すように、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、上流から下流へと流通する排気が凹部223の中央部に衝突すると、その排気が外側に流れる。すると、その排気は、凹部223の曲面に案内されることにより下流から上流へと吹き返される。このように吹き返される排気により、バイパス通路64において上流から下流への排気の流れが弱められるので、ウェイストゲートバルブ210を開こうとする排気の力を弱めることができる。その結果、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じることを抑制できるし、仮に隙間が生じた場合でも、その隙間を介して漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0062】
(2-4)タービンハウジング60の壁のうち、2つのバイパス通路64に挟まれる箇所は、2つのバイパス通路64を流通する排気の熱の影響を受けやすい。そのため、弁座面66のうち、2つのバイパス通路64に挟まれる箇所は、例えば弁座面66の外周部分に比べて熱膨張の影響が大きい。
【0063】
この点、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、弁体112のうち、弁座面66において2つのバイパス通路64に挟まれる箇所に向かい合う箇所に窪み224が存在する。そのため、排気の熱を受けて弁座面66が上記のように熱膨張したとしても、弁座面66のうち2つのバイパス通路64に挟まれる箇所のみが、バルブ面116に接触することを抑制できる。その結果、バルブ面116の外周部分と弁座面66の外周部分との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0064】
(2-5)
図14において実線矢印で示すように、ウェイストゲートバルブ210が開状態の場合に、バイパス通路64からの排気の一部は、ウェイストゲートバルブ210のうち、バルブ面116から突出した凸部222に衝突する。このように、凸部222に対する排気の衝突により排気の流通が乱れると、排気通路13を流通する排気全体の流れが乱されることになるため、排気の速やかな流通の妨げとなる。また、排気の流れが乱されることにより、排気による触媒15の暖機効果が期待どおりに得られない可能性もある。
【0065】
この点、傾斜部222Aの先端面は、シャフト111の中心軸111Aに近いほど、すなわちバイパス通路64に近いほど、バルブ面116に対する突出量が小さくなるように傾斜している。これにより、バイパス通路64を流通した排気が、凸部222の側面に衝突せず、概ね傾斜部222Aの先端面に沿って流通する。その結果、バイパス通路64を流通した排気の流通が乱れることを抑制できる。
【0066】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
「第1方向について」
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、第1方向L1は、上記実施形態の例に限らない。例えば、
図8を参照して説明すると、第1方向L1は、
図8における左下方向、
図8における左上方向、
図8における右上方向、といった方向でもよい。これらのように、貫通孔69の中心軸69Aに沿う方向から視て、第1方向L1は、弁座面66に対して傾斜していればよい。このように弁座面66に対して第1方向L1が傾斜していれば、本件技術を適用することによりバルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0068】
具体例として、第1方向が
図8における左下に向かっている場合のバルブ面116の構成について説明する。この場合、バルブ面116における第1シャフト方向S1の端116Dは、重心116Cから視て、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向において第1方向側に位置している。また、バルブ面116のうち、弁座面66に沿う方向において第2方向側の端は、重心116Cから視て、弁座面66に直交する方向において第1方向側に位置している。
【0069】
「環状溝について」
・上記第2実施形態において、環状溝221の数は変更できる。例えば、ウェイストゲートバルブ210は、2つのバイパス通路64に対応して2つの環状溝221を備えていてもよい。この構成では、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、2つの環状溝221の一方は、2つのバイパス通路64の一方を取り囲むように、バルブ面116上を延びている。さらに、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、2つの環状溝221の他方は、2つのバイパス通路64の他方を取り囲むように、バルブ面116上を延びている。なお、この構成では、2つの環状溝221を採用するにあたって、窪み224の形状を変更したり、窪み224を省略したりすればよい。また、例えば、バルブ面116上において、同心円状に複数の環状溝221が設けられていてもよい。
【0070】
・上記第2実施形態において、環状溝221を省略してもよい。
「凸部について」
・上記第2実施形態において、凸部222の形状は変更できる。例えば、凸部222は、傾斜部222Aを備えていなくてもよく、バルブ面116に対する凸部222全体の突出量が同じになっていてもよい。
【0071】
・上記第2実施形態において、凸部222の数は変更できる。例えば、ウェイストゲートバルブ210が閉状態の場合に、2つのバイパス通路64のうち一方を介して漏れ出る排気の量が、2つのバイパス通路64の他方に比べて多いことがある。この場合、ウェイストゲートバルブ210は、2つのバイパス通路64のうち一方に挿入される凸部222のみを備えていてもよい。また、例えば、全ての凸部222を省略してもよい。
【0072】
「凹部について」
・上記第2実施形態において、凹部223の数は変更できる。例えば、2つの凸部222のうちの一方のみに凹部223が設けられていてもよい。また、例えば、1つの凸部222に対して複数の凹部223が設けられていてもよい。さらに、例えば、全ての凹部223を省略してもよい。
【0073】
・凹部223は、必ずしも凸部222に設けられていなくてもよい。例えば、凸部222を採用していない場合には、バルブ面116に対して窪んだ凹部223を採用してもよい。
【0074】
・凹部223の形状は変更してもよい。例えば、凹部223は、半球形状になるように窪んでいてもよい。すなわち、凹部223の内面の全域が曲面になっていてもよい。また、例えば、凹部223の内面は、曲面になっていなくてもよい。この構成であっても、凹部223の存在により、凹部223に衝突した排気の一部は、下流から上流へと吹き返すことができ得る。
【0075】
「窪みについて」
・上記第2実施形態において、窪み224の形状は変更できる。例えば、窪み224は、バルブ面116のうち、2つの凸部222に挟まれた箇所の一部のみに設けられていてもよい。この構成においても、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、弁座面66のうち、窪み224に向かい合う箇所が膨張したときの悪影響を抑制できる。
【0076】
・上記第2実施形態において、窪み224を省略してもよい。例えば、弁座面66における熱膨張が比較的に小さいのであれば、窪み224を省略しても、その影響は小さい。
「その他の構成について」
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、バイパス通路64の数は変更できる。例えば、バイパス通路64は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、この場合、バイパス通路64の数に合わせて、凸部222の数、凹部223の数、及び窪み224の数を変更すればよい。また、バイパス通路64が1つの場合、窪み224は、省略すればよい。
【符号の説明】
【0077】
L1…第1方向
L2…第2方向
S1…第1シャフト方向
S2…第2シャフト方向
10…内燃機関
20…ターボチャージャ
60…タービンハウジング
61…スクロール通路
64…バイパス通路
66…弁座面
69…貫通孔
69A…中心軸
90…タービンホイール
110…ウェイストゲートバルブ
111…シャフト
111A…中心軸
112…弁体
116…バルブ面
116A…最高点
116B…最低点
116C…重心
120…ブッシュ
130…リンク機構
140…アクチュエータ
210…ウェイストゲートバルブ
221…環状溝
222…凸部
223…凹部
224…窪み