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特許7396260電波マップ提供装置、及び電波マップ取得利用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電波マップ提供装置、及び電波マップ取得利用装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20231205BHJP
   H04W 48/14 20090101ALI20231205BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04W48/14
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020207129
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094215
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【弁護士】
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【弁理士】
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】河合 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】前本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 恒夫
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203823(JP,A)
【文献】特開2009-194823(JP,A)
【文献】特開2015-109509(JP,A)
【文献】特開2016-100606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求める最低保証速度算出部(208)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求める推定速度算出部(209)と、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記接続確率、前記最低保証速度、及び前記推定速度、を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項2】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記通信速度及び前記接続確率、を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項3】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求める最低保証速度算出部(208)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求める推定速度算出部(209)と、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定する不安定領域判定部(111)と、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記接続確率、前記最低保証速度、前記推定速度、及び前記基準位置が前記不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項4】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定する不安定領域判定部(111)と、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記通信速度、前記接続確率、及び前記基準位置が前記不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する、
電波マップ提供装置(250)。
【請求項5】
前記最低保証速度算出部は、前記接続確率が所定の閾値以上であり、かつ、前記通信速度の最小値を前記最低保証速度とする、
請求項1又は3記載の電波マップ提供装置。
【請求項6】
要求する位置を示す要求位置情報を取得する要求位置情報取得部(110)と、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における最低保証速度、並びに前記通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における推定速度、を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定する不安定領域判定部(111)と、
前記不安定領域判定部の判定結果に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う通信制御部(113)と、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項7】
要求する位置を示す要求位置情報を取得する要求位置情報取得部(110)と、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、及び前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定する不安定領域判定部(111)と、
前記不安定領域判定部の判定結果に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う通信制御部(113)と、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項8】
要求する位置を示す要求位置情報を取得する要求位置情報取得部(110)と、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における最低保証速度、前記通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における推定速度、並びに前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う通信制御部(113)と、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項9】
要求する位置を示す要求位置情報を取得する要求位置情報取得部(110)と、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、並びに前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う通信制御部(113)と、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する無線通信部(102)と、を有する、
電波マップ取得利用装置(150)。
【請求項10】
さらに、前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求める最低保証速度算出部(114)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求める推定速度算出部(115)と、を有する、
請求項7記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項11】
さらに、前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求める最低保証速度算出部(114)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求める推定速度算出部(115)と、を有する、
請求項9記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項12】
前記不安定領域判定部は、前記接続確率の最大値が所定の閾値以下の場合、前記基準位置が不安定領域であると判定する、
請求項6又は7記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項13】
さらに、前記データの特徴であるデータ種別を検知するデータ種別検知部(112)を有し、
前記通信制御部は、前記不安定領域判定部の判定結果に加え、前記データ種別検知部で検知した前記データ種別に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う、
請求項6又は10記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項14】
さらに、前記データの特徴であるデータ種別を検知するデータ種別検知部(112)を有し、
前記通信制御部は、前記基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報に加え、前記データ種別検知部で検知した前記データ種別に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う、
請求項8又は11記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項15】
前記基準位置が不安定領域であり、かつ、前記データ種別検知部で検知した前記データ種別が通信遅延を許容する通信遅延許容データである場合、
前記通信制御部は、前記無線通信部に対し、前記通信遅延許容データの送信を停止するよう指示する、
請求項13又は14記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項16】
前記基準位置が不安定領域であり、かつ、前記データ種別検知部で検知した前記データ種別が通信遅延を許容しないリアルタイムデータである場合、
前記通信制御部は、前記無線通信部に対し、前記最低保証速度に基づき前記リアルタイムデータを送信するよう指示する、
請求項13又は14記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項17】
前記基準位置が不安定領域であり、かつ、前記データ種別検知部で検知した前記データ種別が情報伝達の緊急性を有する緊急データである場合、
前記通信制御部は、前記無線通信部に対し、前記推定速度に基づき前記緊急データを送信するよう指示する、
請求項13又は14記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項18】
当該電波マップ取得利用装置は、移動体に搭載されている、
請求項6~17記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項19】
前記要求位置情報取得部は、移動体に搭載された端末装置から送信された位置情報を取得する、
請求項6~17記載の電波マップ取得利用装置。
【請求項20】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置で実行される電波マップ提供方法であって、
前記電波マップ提供装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)を有し、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信し(S251)、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求め(S252)、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求め(S253)、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記接続確率、前記最低保証速度、及び前記推定速度、を含む電波マップリプライを送信する(S254)、
電波マップ提供方法。
【請求項21】
電波マップ取得利用装置で実行される電波マップ取得利用方法であって、
要求する位置を示す要求位置情報を取得し(S151)、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信し(S152)、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における最低保証速度、並びに前記通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における推定速度、を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信し(S153)、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定し(S154)、
前記基準位置が前記不安定領域であるか否かの判定結果に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行い(S155)、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する(S156)、
電波マップ取得利用方法。
【請求項22】
電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置で実行可能な電波マップ提供プログラムであって、
前記電波マップ提供装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)を有し、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信し(S251)、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求め(S252)、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求め(S253)、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記接続確率、前記最低保証速度、及び前記推定速度、を含む電波マップリプライを送信する(S254)、
電波マップ提供プログラム。
【請求項23】
電波マップ取得利用装置で実行可能な電波マップ取得利用プログラムであって、
要求する位置を示す要求位置情報を取得し(S151)、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信し(S152)、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における最低保証速度、並びに前記通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における推定速度、を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信し(S153)、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定し(S154)、
前記基準位置が前記不安定領域であるか否かの判定結果に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行い(S155)、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する(S156)、
電波マップ取得利用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波マップに関する装置等であって、主にサーバで実現される電波マップ提供装置、並びに移動体又は配信サーバで実現され電波マップ提供装置から提供された電波マップを利用する電波マップ取得利用装置、そして、これらの装置で実行する方法及びこれらの装置で実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信が普及するにつれ、様々な場所で無線通信を用いた通信を行う機会が増えている。とりわけ、自動車等の移動体においては、大容量のセルラー通信や、車車間通信及び路車間通信のようなV2Xなどを用いて、運転支援や自動運転制御を行う技術が注目されている。これに伴い、車両が通信機能を備えるようになり、いわゆる車両のコネクティッド化が進んでいる。
【0003】
大容量のセルラー通信を用いる場合、移動体に搭載された端末装置は基地局装置と無線通信を行うが、移動体が2つの基地局装置の境界付近に位置する場合、2つの基地局装置の間で頻繁に切り替えが発生することがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、端末装置と無線通信を確立する基地局装置の切り替えの発生を抑制する技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-216645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者らは、以下の課題を見出した。
特許文献1の技術は、基地局装置の切り替えの発生頻度を低減することはできるが、基地局装置の切り替え自体を防ぐことはできない。また、移動体に搭載される端末装置が通信を継続するには、移動に伴い無線通信を行う基地局装置を切り替えること、いわゆるハンドオーバーが必須である。そうであれば、基地局装置の切り替え時に通信が不安定になることを前提とした通信制御が必要になる。
【0007】
本発明は、無線通信を行う位置が基地局装置の切り替えが起こりうる不安定領域であるかどうかの判断に必要な情報を電波マップとして提供することを目的とする。
また、本発明は、無線通信を行う位置が基地局装置の切り替えが起こりうる不安定領域であるかどうかを電波マップを用いて判定し、これに対応した適切な通信制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電波マップ提供装置(250)は、電波マップ取得利用装置(150)から電波マップリクエストを受信して必要な情報を送信する電波マップ提供装置であって、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置における複数の外部の通信装置それぞれとの間の通信速度、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、を含む電波マップを保存する電波マップ保存部(204)と、
要求する位置を示す要求位置情報を含む前記電波マップリクエストを受信する受信部(201)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における最低保証速度を求める最低保証速度算出部(208)と、
前記通信速度及び前記接続確率に基づき前記基準位置における推定速度を求める推定速度算出部(209)と、
前記要求位置情報に対応する前記基準位置における前記接続確率、前記最低保証速度、及び前記推定速度、を含む電波マップリプライを送信する送信部(205)と、を有する。
【0009】
本開示の電波マップ取得利用装置(150)は、
要求する位置を示す要求位置情報を取得する要求位置情報取得部(110)と、
前記要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置(250)に送信する送信部(105)と、
前記要求位置情報に対応する基準位置における複数の外部の通信装置それぞれと無線通信を行う確率である接続確率、前記基準位置における複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における最低保証速度、並びに前記通信速度及び前記接続確率に基づいて求めた前記基準位置における推定速度、を含む電波マップリプライを前記電波マップ提供装置から受信する受信部(106)と、
前記接続確率に基づき、前記基準位置が不安定領域であるかを判定する不安定領域判定部(111)と、
前記不安定領域判定部の判定結果に基づき、複数の前記外部の通信装置それぞれとの間の無線通信の制御を行う通信制御部(113)と、
複数の前記外部の通信装置との間で無線通信を行うことでデータを送信する無線通信部(102)と、を有する。
【0010】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成により、不安定領域の判断に必要な情報を電波マップとして提供することができる。
また、上述のような構成により、不安定領域であるかどうかを電波マップを用いて判定し、適切な通信制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の各実施形態で用いる機器及びこれらの相互関係を示す全体構成図
図2】本開示の実施形態1の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
図3】本開示の不安定領域判定部の判定方法を説明する説明図
図4】本開示の実施形態1の電波マップサーバ装置である電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図5】本開示の実施形態1で生成する電波マップを説明する説明図
図6】本開示の実施形態1で提供する電波マップを説明する説明図
図7】本開示の実施形態1のプローブ情報送信装置及び電波マップ生成装置の動作を示すフローチャート
図8】本開示の実施形態1の電波マップ取得利用装置及び電波マップ提供装置の動作を示すフローチャート
図9】本開示の実施形態1の電波マップ取得利用装置の無線通信制御の具体例を示すフローチャート
図10】本開示の実施形態1の変形例1の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
図11】本開示の実施形態1の変形例1の電波マップサーバ装置である電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図12】本開示の実施形態1の変形例2の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
図13】本開示の実施形態1の変形例2の電波マップサーバ装置である電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図14】本開示の実施形態1の変形例3の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
図15】本開示の実施形態1の変形例3の電波マップサーバ装置である電波マップ生成装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図16】本開示の実施形態2の情報配信サーバ装置である電波マップ取得利用装置の構成例を示すブロック図
図17】本開示の実施形態3の車載装置である電波マップ取得利用装置と他の車載装置との関係を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0016】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0017】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせても良い。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせても良い。
【0018】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0019】
1.各実施形態で関係する機器の相互関係
図1を用いて、各実施形態で用いる機器及びこれらの相互関係を示す全体構成をまず説明する。
【0020】
「移動体」である車両に「搭載されている」車載装置1は実施形態1の電波マップ取得利用装置150に相当し、基地局装置4を介して各種データを情報蓄積サーバ装置3に送信する。
この他、車載装置1はプローブ情報送信装置100に相当し、電波マップサーバ装置5にプローブ情報を送信する。
【0021】
ここで、「移動体」とは、移動可能な物体をいい、移動速度は任意である。また移動体が停止している場合も当然含む。例えば、自動車、自動二輪車、自転車、歩行者、船舶、航空機、及びこれらに搭載される物を含み、またこれらに限らない。
また、「搭載されている」とは、移動体に直接固定されている場合の他、移動体に固定されていないが移動体と共に移動する場合も含む。例えば、移動体に乗った人が所持している場合、移動体に載置された積荷に搭載されている場合、が挙げられる。
【0022】
情報配信サーバ装置2は実施形態2の電波マップ取得利用装置160に相当し、基地局装置4を介して各種データを車載装置1に送信する。
【0023】
基地局装置4(「外部の通信装置」に相当)は、車載装置1との間で無線通信を行う装置である。各実施形態では、複数の基地局装置4を想定しており、これらを区別する場合は基地局装置4A、基地局装置4B、のように記載する。
【0024】
電波マップサーバ装置5は実施形態1及び実施形態2の電波マップ提供装置250に相当し、電波マップを車載装置1や情報配信サーバ装置2に送信する。
この他、電波マップサーバ装置5は電波マップ生成装置200に相当し、車載装置1からプローブ情報を受信して電波マップを生成する。
【0025】
基地局装置4と車載装置1との間の無線通信方式は、例えば、IEEE802.11(WiFi(登録商標))やIEEE802.16(WiMAX(登録商標))、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G、5G等を用いることができる。あるいは、DSRC(Dedicated Short Range Communication)を用いることができる。
【0026】
情報配信サーバ装置2と基地局装置4との通信方式、及び情報蓄積サーバ装置3と基地局装置4との通信方式は、有線通信方式、無線通信方式、有線通信方式と無線通信方式の両方、のいずれでもよい。例えば基地局装置4と車載装置1との間の無線通信方式が4Gの場合は、基地局装置4はeNBに相当するので、eNBから先は通常通信サービス事業者の有線回線であるが、基地局装置4と車載装置1との間の無線通信方式がWiFiである場合は、基地局装置4はアクセスポイント(AP)に相当するので、アクセスポイントからルータまでの間は無線通信方式でも有線通信方式でもよい。
【0027】
電波マップサーバ装置5は、「電波マップ」を保存するとともに電波マップをリクエスト先に送信する。例えば、電波マップサーバ装置5は、車載装置1や情報配信サーバ装置2に対し、電波マップリクエストに応じて、あるいは定期的に、電波マップを送信する。電波マップの送信に用いる通信ネットワークは、有線通信方式でも無線通信方式でもよい。また、図1において、電波マップサーバ装置5から車載装置1に対して電波マップを送信する場合に、基地局装置4を経由しない通信ネットワークを用いているが、基地局装置4を経由する通信ネットワークを用いてもよい。
【0028】
ここで、「電波マップ」とは、特定の位置における電波伝搬路の状態又は推定結果の集合をいい、例えば地図上の格子点毎にRSSIや送信ビットレートをマッピングしたものをいう。後述の実施形態では、電波伝搬路の状態又は推定結果を表す指標として、送信ビットレートなどの通信速度を用いている。
【0029】
図1において、電波マップサーバ装置5は、基地局装置4の無線通信方式が提供する電波伝搬路の状態又は推定結果を保存するとともに利用に供している。電波伝搬路は、上り回線(アップリンク)と下り回線(ダウンリンク)があるので、電波マップサーバ装置は望ましくはその両方の電波マップを保存している。
【0030】
下り回線用の電波マップは、下り回線の受信状況を評価するための情報が位置情報と紐づけられていればよい。例えば基地局装置4が送信した参照信号を、プローブ車両が受信したときの受信強度を測定しこれを収集することにより受信電波マップを生成している。例えば、参照信号のRSSI、RSRP、又はRSRQがこれにあたる。あるいは、情報配信サーバ装置2がデータを送信した時の送信平均ビットレート(bit/s)をプローブ車両の位置情報とともに収集することにより送信電波マップを生成している。
上り回線用の電波マップは、上り回線の受信状況を評価するための情報が位置情報と紐づけられていればよい。例えば、プローブ車両が送信した参照信号を、基地局装置4が受信したときの受信強度を測定し、これをプローブ車両の位置情報とともに収集することにより受信電波マップを生成している。例えば、参照信号のRSSI、RSRP、又はRSRQがこれにあたる。あるいは、プローブ車両がデータを送信したときの送信平均ビットレート(bit/s)をプローブ車両の位置情報とともに収集することにより送信電波マップを生成している。
【0031】
原則として、上り回線の電波伝搬路の評価には上り回線用の電波マップを、下り回線の電波伝搬路の評価には下り回線用の電波マップを用いる。実施形態1は、車載装置1がデータを送信するために上り回線を利用する場合であるので、上り回線用の電波マップを用いている。また、実施形態2は、情報配信サーバ装置2がデータを送信するために下り回線を利用する場合であるので、下り回線用の電波マップを用いている。
もっとも、上り回線と下り回線の伝搬環境が同じと評価できる場合は、上り回線の評価に下り回線用電波マップを用いてもよいし、下り回線の評価に上り回線用電波マップを用いてもよい。例えば、上り回線と下り回線とが同じ周波数帯域を用いるTDDモードの場合が挙げられる。別の例として、ビル等の遮蔽物により、上り回線と下り回線で同じ伝搬環境の変化が予想される場合が挙げられる。
【0032】
GNSS衛星6は、測位信号を送信する衛星であり、例えば、GPSやディファレンシャルGPSが例として挙げられる。車載装置1は、測位信号を受信し、必要に応じてジャイロやレーダセンサを併用して、車両の現在の位置を示す現在位置情報を取得する。
【0033】
なお、情報配信サーバ装置2、情報蓄積サーバ装置3、及び電波マップサーバ装置5は別の装置としているが、これらの機能の少なくとも2つを同一のサーバ装置で実現してもよい。
また、図1では情報配信サーバ装置2は移動しないことを前提としているが、情報配信サーバ装置2を、車載装置1を搭載している車両とは別の車両に搭載して、車載装置1に対して基地局装置4を介してデータを送信するようにしてもよい。これは、実施形態3で説明する。
【0034】
なお、車載装置1は、電波マップ取得利用装置150及びプローブ情報送信装置100の両方の機能を有する例を説明したが、車載装置1が片方の機能のみを有するようにしてもよい。
また、電波マップサーバ装置5は、電波マップ生成装置200及び電波マップ提供装置250の両方の機能を有する例を説明したが、これらを別々のサーバ装置に分けて設けてもよい。
【0035】
2.実施形態1
(1)車載装置1(プローブ情報送信装置100、電波マップ取得利用装置150)の構成
図2を用いて、本実施形態の車載装置1の構成について説明する。本実施形態では、車載装置1が、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0036】
車載装置1は、位置情報取得部101、無線通信部102、伝搬環境情報取得部103、制御部104、送信部105、受信部106、アプリケーション107、保存部108からなる。
【0037】
車載装置1は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の不揮発性メモリ、各種インターフェース、及びこれらを接続する内部バスで構成することができる。そして、これらのハードウェア上でソフトウェアを実行することにより、図2に記載の各機能ブロックの機能を発揮させるように構成することができる。後述の図4で示される電波マップサーバ装置5においても同様である。
もちろん、車載装置を、LSI等の専用のハードウェアで実現してもよい。
【0038】
車載装置1は、本実施形態では半完成品としての電子制御装置(ECU(Electric Control Unit)、以下ECUと略する。)の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーションシステムが挙げられる。
なお、車載装置1は、単一のECUの他、複数のECUで構成されてもよい。例えば、外部との通信を通信ECUが担当するようにしてもよい。また、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150を別々のECUで構成してもよい。
【0039】
図2の車載装置1の各ブロックは、専らプローブ情報送信装置100で用いられるブロック、専ら電波マップ取得利用装置150で用いられるブロック、プローブ情報送信装置100と電波マップ取得利用装置150の両方で用いられるブロックがある。以下、まずプローブ情報送信装置100で用いられるブロック、次に、電波マップ取得利用装置150で用いられるブロックを説明する。
【0040】
まず、プローブ情報送信装置100で用いられるブロックを説明する。
位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部101は、主に衛星測位(GNSS)装置の測位受信機で構成される。測位受信機は、利用する衛星システムに対応する測位受信機を設ければよい。
位置情報取得部101は、測位受信機の他、位置情報の補正に用いる補正情報を供給する機器も含まれる。例えば、ジャイロセンサや加速度センサなどの慣性センサ、レーザセンサ、地図情報データベース、も位置情報取得部101として把握できる。
位置情報の測位精度は、利用する衛星システムの測位方式や、補正に用いるデータの種類、及び測位演算の結果によって異なる。例えば、GPSのような単独測位方式の場合、1m~10mの誤差を常に含んでいる。これに対し、相対測位方式やDGPS(Differential GPS)、RTK(Real Time Kinematic)-GPS測位、ネットワーク型RTK-GPS測位のように、誤差1m未満級や10cm未満級の測位方式も存在する。10cm未満級としては、RTK-GNSS/PPP-AR(準天頂衛星MADOCA方式)、PPP-RTK(準天頂衛星CLAS方式)がある。単独測位方式にジャイロ航法やレーザセンサを併用して測位精度を1m未満級や10cm未満級に引き上げることもできる。1m未満級としては、補正データ利用のSLAS(サブメータ級測位補強サービス)方式がある。また、測位演算において、FIX解が求まる場合は用いる測位方式の精度が低い場合でも1m未満級や10cm未満級の測位精度が得られることもある。FLOAT解が求まる場合も、用いる測位方式の精度が高ければ、1m未満級の測位精度が得られることもある。なお、測位解にFIX解やFLOAT解が存在するのは、AR(Ambiguity Resolution)を行う方式である。
なお、以下の記載では、10m未満級を1m以上、1m未満級を10cm~1m、10cm未満級を10cm未満と、誤差範囲で記載する。
【0041】
無線通信部102は、外部の通信装置、本実施形態では基地局装置4との間で無線通信を行い、必要なデータの送受信を行う。本実施形態では、外部の通信装置としてセルラー通信方式のeNBのような基地局装置を想定しているが、WiFiを用いる場合はAP、V2Xを用いる場合は他の車両や路側機であってもよい。もちろん、複数の通信方式に対応していてもよい。
【0042】
伝搬環境情報取得部103は、位置情報取得部101が取得した車両の現在位置において、無線通信部102の無線通信で用いる電波伝搬路の「伝搬環境情報」を「取得する」。例えば、伝搬環境情報取得部103は、参照信号の電波強度を測定する装置を用いることができる。あるいは、無線通信部102から送信するデータのビットレーを測定する装置を用いることができる。
【0043】
ここで、「伝搬環境情報」とは、電波伝搬路の状態又は推定結果を示すものであり、これを表す指標として、例えばRSSI、RSRP、RSRQ、SNR、SIR、BER、伝搬関数、伝搬路行列、単位時間当たりの平均ビットレート(bits/s)等が挙げられる。
また、「取得する」とは、伝搬環境情報を外部の通信装置等から取得する場合、伝搬環境情報を当該プローブ情報送信装置が自ら生成することにより取得する場合のいずれも含む。
【0044】
伝搬環境情報取得部103は、下り回線(ダウンリンク)の受信品質を評価するための情報を取得するためには、下り回線に割り当てられている周波数帯域における受信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、参照信号のRSSI、RSRP、RSRQがこれにあたる。これらの情報を用いることにより、電波マップ生成装置200において、地図上の特定の位置における受信電波マップを生成又は更新することができる。
また、伝搬環境情報取得部103は、上り回線(アップリンク)の受信品質を評価するための情報を取得するためには、上り回線に割り当てられている周波数帯域における送信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、単位時間当たりの送信平均ビットレート(bits/s)がこれにあたる。あるいは、基地局において測定した参照信号のRSSI、RSRP、RSRQを、基地局から受信するようにしてもよい。これらの情報を用いることにより、電波マップ生成装置200において、地図上の特定の位置における送信電波マップを生成又は更新することができる。
【0045】
伝搬環境情報取得部103は、伝搬環境情報に加え、基地局装置4を識別する外部通信装置識別情報を「取得する」。外部通信装置識別情報は、例えば各基地局装置4それぞれに付与された基地局IDである。伝搬環境情報取得部103は、基地局装置4から送信されたパケットを復号する際に、パケットに含まれる基地局IDを取得する。
【0046】
ここで、「取得する」とは、外部通信装置識別情報を外部の通信装置等から取得する場合、外部通信装置識別情報を当該プローブ情報送信装置が自ら生成することにより取得する場合のいずれも含む。
【0047】
伝搬環境情報取得部103は、さらに、無線通信で用いる電波伝搬路の周波数帯域を示すバンド情報を取得してもよい。バンド情報は、例えば無線通信方式がLTEの場合、周波数帯域及びデュプレックスモードに応じてバンド1、バンド2のような数字が振られることにより区別される。バンド情報も、基地局から送信されたパケットを復号する際に、パケットに含まれるバンド情報を取得する。
周波数帯域が変わると電波伝搬路の特性も変わるので、バンド情報を含めた電波マップを生成することにより、電波伝搬路の状態をより正確に表すことができる。
【0048】
以上で説明した伝搬環境情報取得部103は、その全て又は一部を、無線通信部102の機能として無線通信部102と兼ねるようにしてもよい。
また、伝搬環境情報取得部103で取得し出力する伝搬環境情報は、各値の測定結果の絶対値ではなく、正規化した相対値で求めるようにしてもよい。例えば、電波干渉がない理想的な通信状況で引き出せる最大速度を100、最小を0とした値としてもよい。
【0049】
制御部104は、位置情報取得部101、無線通信部102、伝搬環境情報取得部103、送信部105、受信部106、アプリケーション107、保存部108の動作を制御する。また、制御部104は、それ自身で、プローブ情報生成部109、要求位置情報取得部110、不安定領域判定部111、データ種別検知部112、及び通信制御部113を実現する。
【0050】
プローブ情報生成部109は、位置情報取得部101で取得した位置情報、並びに伝搬環境情報取得部103で取得した伝搬環境情報及び外部通信装置識別情報を含めたプローブ情報を生成する。伝搬環境情報取得部103でバンド情報を取得した場合は、これもプローブ情報に含めてもよい。
【0051】
送信部105は、プローブ情報生成部109で生成したプローブ情報を、電波マップ生成装置200に送信する。
例えば、本実施形態の場合、プローブ情報として以下の情報を送信している。
【0052】
(プローブ情報)
[下り回線用電波マップの場合の例]
タイムスタンプ:プローブ情報を生成した時刻(UTC)
位置情報:GNSSで測位した座標、緯度経度高度(WGS-84)、地図上の格子点を表すIDのいずれか
測位精度情報:測位精度のグレード[1m以上/10cm~1m/10cm未満]
通信システムID:基地局ID、バンド情報
伝搬環境情報:受信電波強度(RSSI)の相対値
[上り回線用電波マップの場合の例]
タイムスタンプ:プローブ情報を生成した時刻(UTC)
位置情報:GNSSで測位した座標、緯度経度高度(WGS-84)、地図上の格子点を表すIDのいずれか
測位精度情報:測位精度のグレード[1m以上/10cm~1m/10cm未満]
通信システムID:基地局ID、バンド情報
伝搬環境情報:送信ビットレート(bit/s)
【0053】
なお、プローブ情報としてこれ以外の情報を送るようにしてもよい。
また、プローブ情報として送信する情報は、制御部104の他、特定のブロックで生成するようにしてもよい。
【0054】
以上、本実施形態のプローブ情報送信装置100によれば、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を送信しているので、これを受信した電波マップ生成装置200の側で、外部通信装置を特定した電波マップを生成することができる。
【0055】
次に、電波マップ取得利用装置150で用いられるブロックを説明する。
要求位置情報取得部110は、車載装置1である電波マップ取得利用装置150で無線通信を利用する物理的位置を特定するとともに、要求する位置として決定し、「要求位置情報」を「取得する」。要求する位置は、例えば現在の位置でもよいし、走行計画に基づき将来走行を予定している位置としてもよい。走行計画を用いる場合、現在の車速に基づき一定時間内に到達する単一若しくは複数の地点を、要求する位置としてもよい。複数の地点の場合、例えば一定時間毎又は一定距離毎の位置を選択するようにしてもよい。
本実施形態では、走行計画を用いて要求位置情報取得部110自らが要求位置情報を生成することにより取得しているが、他の装置から要求位置情報を受信することにより取得してもよい。例えば車載装置1の内部から取得する例として、位置情報取得部101から位置情報を受信することにより取得することが挙げられる。車載装置1の外部から取得する例として、走行計画を管理する外部のサーバ装置から無線通信部102を介して受信することにより取得することが挙げられる。
【0056】
ここで、「要求位置情報」とは、要求する位置を特定する情報であれば足り、位置は点や点の集合で示される他、線、面、又は面に高度を加えた立体で示されてもよい。また、位置は、現在の位置の他、将来の位置であってもよい。さらに、位置を直接示す情報の他、速度や時間など、位置を間接的に示す情報であってもよい。
また、「取得する」とは、他の装置から受信して取得する場合の他、自装置で自ら生成して取得する場合も含む。
【0057】
送信部105は、要求位置情報取得部110で生成・取得した要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置250に送信する。
例えば、本実施形態の場合、電波マップリクエストとして以下の情報を送信している。なお、本実施形態では、車載装置1から情報蓄積サーバ装置3にデータを送信する際の送信制御が目的であるので、上り回線用の電波マップをリクエストしている。
【0058】
(電波マップリクエスト)
要求位置情報:緯度経度高度(WGS-84)又は地図上の格子点を表すID
【0059】
電波マップリクエストを受信した電波マップ提供装置250は、電波マップリクエストに含まれる要求位置情報に基づき送信する電波マップの情報を選択し、電波マップリプライとして電波マップ取得利用装置150に送信する。電波マップ提供装置250における動作の詳細は後述する。
【0060】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。具体的には、「要求位置情報に対応する」基準位置を示す基準位置情報、基準位置における基地局装置4毎(「複数の外部の通信装置それぞれ」に相当)と無線通信を行う確率である接続確率、基準位置における基地局装置4毎との間の通信速度と接続確率に基づいて求めた基準位置における最低保証速度、並びに通信速度及び接続確率に基づいて求めた基準位置における推定速度を含む電波マップリプライを受信する。
通信速度及び接続確率の詳細は、電波マップ提供装置250の構成及び動作で説明する。
なお、受信した基準位置情報及び接続確率は、電波マップ提供装置250が選択した電波マップの一部であることから、これらも電波マップと呼ぶことがある。
例えば、本実施形態の場合、電波マップリプライとして以下の情報を受信している。
【0061】
ここで、「要求位置情報に対応する」とは、要求位置情報が示す位置と同じ又は近傍にあることをいう。
【0062】
(電波マップリプライ)
タイムスタンプ:電波マップを生成した時刻(UTC)
基準位置情報:緯度経度高度(WGS-84)又は地図上の格子点を表すID
予想接続基地局:基準位置において接続可能性のある基地局装置の基地局ID、及び基地局ID毎の接続確率
最低保証速度:最低保証速度(bit/s)
推定速度:推定速度(bit/s)
【0063】
保存部108は、受信した電波マップリプライを保存する。保存部108に保存された基準位置情報、基地局ID、接続確率、最低保証速度、及び推定速度の集合は電波マップ提供装置250に保存された電波マップの一部であることから、保存部108には電波マップのレプリカが保存されているといえる。保存部108に一定期間電波マップのレプリカを保存することにより、電波マップリクエストにより電波マップ提供装置250にアクセスする機会を減らすることができる。また、有効期限を設定しておき、有効期間が経過した情報は破棄するようにしてもよい。これにより、電波マップのレプリカの鮮度を一定以上に保つことができる。
【0064】
不安定領域判定部111は、受信部106で受信した接続確率に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを判定する。
【0065】
図3を用いて、不安定領域の判定方法を説明する。
図3は、車載装置1が基地局装置4A及び基地局装置4Bと接続する接続確率を示す図である。当初、車載装置1を搭載した車両は基地局装置4Aが設けられている方向に向かって進行しているので、基地局装置4Aとの接続確率はほぼ100%となっている。しかし、基地局装置4A近傍を通過し基地局装置4Aから遠ざかるにつれて基地局装置4Aとの接続確率は低くなるとともに、進行方向側にある基地局装置4Bとの接続確率が高くなる。そして、基地局装置4Aとの接続確率はゼロになるとともに基地局装置4Bとの接続確率が100%となる。
【0066】
基地局装置4A及び基地局装置4Bの両方と接続可能な領域では、基地局装置4Aと基地局装置4Bとの間の接続の切り替え処理が発生するため、接続が不安定になる。このような接続が不安定になる領域を不安定領域とする。例えば基地局装置4A及び基地局装置4Bそれぞれとの接続確率の最大値、すなわちこの例では大きい方の接続確率が「所定の閾値」であるTH1「以下」の領域を不安定領域と判定する。例えば、TH1は概ね0.8とすることができる。
あるいは、例えば基地局装置4Aとの接続確率と基地局装置4Bとの接続確率との差が所定の閾値であるTH2以下の領域を不安定領域としてもよい。例えば、TH2は概ね0.6とすることができる。
この他、接続確率以外のデータを併用して不安定領域の判定を行ってもよい。
また、基地局装置4が3つ以上存在する場合も同様の演算を行えばよい。
【0067】
ここで、「所定の閾値」とは、一定値の他、条件を特定することにより定まる値であってもよい。
また、「以下」とは、所定の閾値を含む場合の他、含まない場合も含む。
【0068】
アプリケーション107は、無線通信部102を利用するアプリケーションである。例えば、車両遠隔監視システムを利用するために車載カメラの映像データを送信するプログラムや、ナビゲーションシステムで用いる地図データやアプリケーションの更新データを受信するプログラムが挙げられる。
【0069】
データ種別検知部112は、無線通信部102で送信するデータの特徴であるデータ種別を検知する。無線通信部102で送信するデータは、アプリケーション107で取り扱うデータであり、例えばアプリケーション107が車両遠隔監視システムの端末側のプログラムである場合は、車載カメラの映像データである。
【0070】
データ種別検知部112は、例えば以下のテータ種別を検知する。
無線通信部102で送信するデータが情報伝達の緊急性を有するデータである場合、データ種別検知部112は、データ種別が緊急データであることを検知する。緊急データは、他の通信よりも優先して送信する必要があるデータである。緊急データの例として、救急車などの緊急車両が送信するデータである緊急車両データ、交差点の路側機が衝突回避のために送信する衝突回避通知データ、が挙げられる。
【0071】
無線通信部102で送信するデータが通信遅延を許容するデータである場合、データ種別検知部112は、データ種別が通信遅延許容データであることを検知する。通信遅延許容データは、通信遅延に対する要求が数秒から1日以上と長いデータである。通信遅延許容データとして、例えばナビゲーションシステムで用いる地図データやアプリケーションの更新データが挙げられる。
【0072】
無線通信部102で送信するデータがリアルタイムに送信する必要があるデータである場合、データ種別検知部112は、データ種別がリアルタイムデータであることを検知する。リアルタイムデータは、リアルタイム性を有し通信遅延をほとんど許容しないデータである。リアルタイムデータとして、例えば車載カメラの映像データや、各種のストリームデータが挙げられる。
【0073】
データ種別検知部112は、例えばデータに含まれるデータ種別識別子を読み出して、データ種別を検知することができる。例えば、データ種別識別子を2ビットの情報としたとき、00を緊急データ、01を通信遅延許容データ、10をリアルタイムデータ、11をその他のデータと予め定めておき、データを生成するときにデータ種別識別子をデータに含めておけばよい。
【0074】
その他のデータ種別の検知方法として以下の例が挙げられる。
データ種別検知部112は、IPプロトコル中の優先フラグを読み出すことにより、データ種別が緊急データであることを検知することができる。
データ種別検知部112は、データが特定サーバに送信される場合、特定サーバの目的や用途からデータ種別を検知することができる。例えば、車両遠隔監視システムのサーバ装置に送信する場合、データ種別がリアルタイムデータであることを検知することができる。
データ種別検知部112は、データが特定の拡張子を有する場合、データの種類を特定することによりデータ種別を検知することができる。例えば、拡張子が特定のOSに用いるアップデートプログラムを示す場合、データ種別が通信遅延許容データであることを検知することができる。
【0075】
通信制御部113は、不安定領域判定部111の判定結果に基づき、基地局装置4それぞれとの間の無線通信の制御を行う。例えば、不安定領域での通信を停止したり、不安定領域ではビットレートを下げて通信を行う。
【0076】
本実施形態では、不安定領域判定部111の判定結果に加え、データ種別検知部112で検知したデータ種別に基づき、基地局装置4それぞれとの間の無線通信の制御を行う。すなわち、不安定領域においては、データ種別に応じて基地局装置4との間の無線通信の制御を行う。
【0077】
例えば、データ種別検知部112で検知したデータ種別が通信遅延許容データである場合、通信制御部113は、無線通信部102に対し、通信遅延許容データの送信を停止するよう指示する。この制御により、通信環境がよい場所でのみ無線通信を行うことで通信に要する時間を短くすることができる。
【0078】
データ種別検知部112で検知したデータ種別がリアルタイムデータである場合、通信制御部113は、無線通信部102に対し、電波マップリプライに含まれる最低保証速度に基づきリアルタイムデータを送信するよう指示する。例えば、送信レートを最低保証速度に下げてリアルタイムデータを送信したり、最低保証速度で送信してもリアルタイム性が損なわれない圧縮率、解像度、又は変調方式を用いる。この制御により、リアルタイム性を維持したまま通信を継続することができる。
【0079】
データ種別検知部112で検知したデータ種別が緊急データである場合、通信制御部113は、無線通信部102に対し、電波マップリプライに含まれる推定速度に基づき緊急データを送信するよう指示する。この制御により、他の通信より優先して緊急データを送信することができる。
【0080】
無線通信部102は、通信制御部113の制御の下で基地局装置4それぞれとの間で無線通信を行うことでデータを送信する。
【0081】
以上、本実施形態の電波マップ取得利用装置150によれば、不安定領域判定部111の判定結果に基づき基地局装置4との間の無線通信の制御を行うので、不安定領域での通信に対する影響を最小限に抑えることができる。
また、不安定領域判定部の判定結果に加え、送信するデータのデータ種別に基づき基地局装置4との間の無線通信の制御を行うので、データ種別に応じて不安定領域での無線通信の制御を適応的に変更することができる。
【0082】
(2)電波マップサーバ装置5(電波マップ生成装置200、電波マップ提供装置250)の構成
図4を用いて、本実施形態の電波マップサーバ装置5の構成について説明する。本実施形態では、電波マップサーバ装置5が、電波マップ生成装置200と電波マップ提供装置250の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0083】
電波マップサーバ装置5は、受信部201、プローブ情報保存部202、制御部203、電波マップ保存部204、及び送信部205からなる。
【0084】
電波マップサーバ装置5は、本実施形態では完成品としてのサーバ装置の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、半完成品の形態としてはECU、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、スマートフォン、携帯電話が挙げられる。
【0085】
また、電波マップサーバ装置5は移動体に搭載されてもよい。電波マップサーバ装置5が移動体に搭載される場合は、直接車両同士が通信を行う車車間通信や、基地局装置等を介して間接的に車両同士が通信を行う車車間通信において実現される。
【0086】
図4の電波マップサーバ装置5の各ブロックは、専ら電波マップ生成装置200で用いられるブロック、専ら電波マップ提供装置250で用いられるブロック、電波マップ生成装置200と電波マップ提供装置250の両方で用いられるブロックがある。以下、まず電波マップ生成装置200で用いられるブロック、次に、電波マップ提供装置250で用いられるブロックを説明する。
【0087】
まず、電波マップ生成装置200で用いられるブロックを説明する。
受信部201は、移動体である車両の位置を示す位置情報、当該位置において車両が外部の通信装置である基地局装置4との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び基地局装置4を識別する外部通信装置識別情報を含むプローブ情報を複数受信する。なお、複数のプローブ情報は、同一の車両でもよいが、多数の車両から受信することが望ましい。本実施形態で用いるプローブ情報は、(1)で説明した例と同じである。
【0088】
プローブ情報保存部202は、受信部201で受信したプローブ情報を保存する。プローブ情報保存部202は、情報を消去しない限り過去に受信した全てのプローブ情報を保持している。
【0089】
制御部203は、受信部201、プローブ情報保存部202、制御部203、電波マップ保存部204、及び送信部205の動作を制御する。また、制御部203は、それ自身で、通信速度算出部206、接続確率算出部207、最低保証速度算出部208、及び推定速度算出部209を実現する。
【0090】
ここで、図5(a)を用いて本実施形態で生成する電波マップを参照しながら、通信速度算出部206、接続確率算出部207、及び電波マップ保存部204の機能を説明する。図5(a)は、電波マップ保存部204に保存されている本実施形態の電波マップを示す図である。
【0091】
通信速度算出部206は、プローブ情報保存部202に保存されているプローブ情報を読み出し、基地局装置4との間の電波伝搬路の伝搬環境情報から通信速度を算出する。ここで、本実施形態では、図5(a)に示す通り、同じ位置においても接続する基地局装置4が異なる場合を想定している。そこで、本実施形態では、同じ位置であっても基地局装置4が異なる場合は、それぞれ別個に通信速度を算出している。つまり、同じ位置において、無線通信を行う基地局装置4として基地局A及び基地局Bがある場合、通信速度算出部206は、基地局Aとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報から通信速度を算出し、基地局Bとの間の電波伝搬路の伝搬環境情報から通信速度を算出する。
【0092】
通信速度の算出方法の具体例として、図5(b)のような、伝搬環境情報としての電波強度(RSRP)と通信速度との関係を示すテーブルを予め準備しておき、各プローブ情報の電波強度(RSRP)が属する範囲に対応する下り通信速度及び上り通信速度を求めることが挙げられる。
この例では、電波強度として、RSRPを用いたが、その他の伝搬環境情報であるSINRやRSSIを用いてもよい。
また、テーブルを用いる以外に、所定の演算により通信速度を求めてもよい。
【0093】
プローブ情報に含まれる電波伝搬路の伝搬環境情報が送信ビットレートである場合は、送信ビットレートの値をそのまま通信速度としてもよい。
【0094】
ここで、同一位置かつ同一基地局のプローブ情報が複数ある場合は、通信速度は統計処理を行うことにより特定位置かつ特定基地局に対して1つの情報にまとめている。統計処理の方法として、平均値や中間値、分散を求めることが挙げられるが、これらには限らない。図5(a)においては、位置pにおいて基地局Aと接続したサンプルが7個ある場合、7個のサンプルの通信速度の平均値を、位置p及び基地局Aにおける通信速度(1.5Mbps)としている。また、位置pにおいて基地局Bと接続したサンプルが3個ある場合、3個のサンプルの通信速度の平均値を、位置p及び基地局Bにおける通信速度(0.9Mbps)としている。
これに代えて、通信速度を求める前に伝搬環境情報の段階で統計処理を行い、統計処理結果から通信速度を求めるようにしてもよい。
【0095】
なお、同一位置とは、完全に同一でなくても基準位置を中心に一定の範囲内であればよい。本実施形態では、地図情報や測位精度をもとにあらかじめ定められた地図上の格子点を中心に一定の範囲内にあるプローブ情報を、同一位置のプローブ情報としている。例えば測位精度が1m以上であれば格子点の間隔は10m、測位精度が10cm~1mであれば格子点の間隔は1m、とする。そして、本実施形態では格子点を基準位置としている。すなわち、図5(a)で示す位置は、基準位置に相当する。
【0096】
接続確率算出部207は、プローブ情報保存部202に保存されているプローブ情報を読み出し、特定の位置において基地局装置4毎に無線通信を行う確率である接続確率を求める。接続確率算出部207も、基地局装置4毎に接続確率を算出している。つまり、同じ位置において、基地局Aと無線通信を行う確率及び基地局Bと無線通信を行う確率を算出する。
例えば、図5(a)では、位置pにおいて基地局装置4と接続したサンプルが10個あり、そのうち基地局Aと接続したサンプルが7個、基地局Bと接続したサンプルが3個ある場合、基地局Aの接続確率は0.7、基地局Bの接続確率は0.3となる。
【0097】
電波マップ保存部204は、プローブ情報保存部202から読み出したプローブ情報、並びに通信速度算出部206、及び接続確率算出部207で算出した結果を電波マップとして保存する。図5(a)の例では、位置(「基準位置情報」に相当)、時間帯、接続基地局、通信速度、基地局への接続確率を保存している。
【0098】
プローブ情報保存部202からプローブ情報を読み出して統計処理を行うとともに、通信速度、及び接続確率を算出する処理の頻度は適宜定めることができる。例えば1日毎に処理を行う場合、1日の決まった時間にプローブ情報保存部202からその日に受信したプローブ情報を読み出して処理を行い、電波マップを生成するようにしてもよい。1日毎のようにある程度長いスパンで更新するようにすれば、電波マップのユーザである電波マップ取得利用装置150の側で更新タイミングをまたいだ新旧の電波マップが併存することを防止することができる。
もちろん、受信部201でプローブ情報を受信する毎に処理を行ってもよい。
【0099】
電波マップ保存部204の電波マップは、処理の頻度毎に既存の電波マップを消去して新たに生成してもよいが、既存の電波マップのデータも含めて処理を行い、電波マップを更新して新たな電波マップを生成するようにしてもよい。つまり、本実施形態では生成という語を用いているが、生成とは更新を含む概念である。
【0100】
なお、本実施形態では、図5(a)のように基地局装置4までを特定して電波マップを生成しているが、さらに同一基地局のバンド情報までを特定して電波マップを生成するようにしてもよい。これにより、バンド情報単位のレベルで正確な情報を生成することができる。
【0101】
また、上の説明では接続する基地局装置4が基地局A及び基地局Bの2つの場合を説明したが、図5(a)の位置rのように同一位置で3つ以上の基地局と接続が可能な場合も同様の処理を行う。
【0102】
以上、本実施形態の電波マップ生成装置200によれば、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を受信して電波マップを生成しているので、接続する基地局装置単位のレベルで正確な情報を有する電波マップを生成することができる。
また、本実施形態の電波マップ生成装置200によれば、通信速度、接続確率を算出するので、特定の地点での通信速度の最低保証値や推定値を容易に算出することができる。
【0103】
次に、電波マップ提供装置250で用いられるブロックを説明する。
電波マップ保存部204は、電波マップ生成装置200で説明したとおり、基地局装置4単位のレベルで、基準位置、通信速度、及び接続確率を含む電波マップを保存している。
【0104】
受信部201は、要求する位置を示す「要求位置情報」を含む電波マップリクエストを電波マップ取得利用装置150から受信する。本実施形態で用いる電波マップリクエストは、(1)で説明した例と同じである。
【0105】
ここで、「要求位置情報」とは、要求する位置を特定する情報であれば足り、位置は点や点の集合で示される他、線、面、又は面に高度を加えた立体で示されてもよい。また、位置は、現在の位置の他、将来の位置であってもよい。さらに、位置を直接示す情報の他、速度や時間など、位置を間接的に示す情報であってもよい。
【0106】
最低保証速度算出部208、及び推定速度算出部209の説明は、図5(a)及び図6を用いて説明する。図6は、電波マップ提供装置250から提供される電波マップを示す図である。
【0107】
最低保証速度算出部208は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における最低保証速度を求める。例えば、最低保証速度算出部208は、接続確率が「所定の閾値」であるTH3「以上」であり、かつ、通信速度の最小値を最低保証速度とする。例えば、TH3が0.2であるとすれば、図5(a)の位置pの場合、通信速度の最小値は0.9Mbpsであり、これは接続確率が0.3であるので、接続確率が0.2以上という条件を満たす。したがって、位置pでの最低保証速度は0.9Mbpsとなる。
【0108】
ここで、「所定の閾値」とは、一定値の他、条件を特定することにより定まる値であってもよい。
また、「以上」とは、所定の閾値を含む場合の他、含まない場合も含む。
【0109】
その他の最低保証速度の求め方としては、例えば所定の閾値を設けず、基地局装置4毎の通信速度のうち最も遅いものを最低保証速度としてもよい。
【0110】
最低保証速度は、特定の地点で最低限保証される通信速度という意義を有する。すなわち、最低保証速度を用いれば、最も通信状況の悪い場合を前提に通信計画を立てることができる。
【0111】
推定速度算出部209は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における推定速度を求める。例えば、推定速度算出部209は、最も接続確率の高い基地局装置4との通信速度を推定速度とする。例えば、図5(a)の位置pの場合、接続確率が最も高いのは接続確率が0.7の基地局Aであり、基地局Aとの通信速度は1.5Mbpsである。したがって、位置pでの推定速度は1.5Mbpsとなる。
【0112】
その他の推定速度の求め方としては、例えば期待値を求め、これを推定速度としてもよい。例えば、図5(a)の位置pの場合、基地局Aとの通信速度及び接続確率、基地局Bとの通信速度及び接続確率を用いれば、期待値は、
1.5Mbps×0.7+0.9Mbps×0.3=1.3Mbps
となる。
【0113】
推定速度は、特定の地点で通常想定される通信速度という意義を有する。すなわち、推定速度を用いれば、通常利用可能な通信速度を用いて通信計画を立てることができる。
【0114】
なお、図5(a)の電波マップにおいて、位置oや位置qのように接続する基地局が1つの場合は、最低保証速度算出部208、及び推定速度算出部209での計算を行っても位置oや位置qでの通信速度と同じ値となるから、最低保証速度や推定速度は、その地点での通信速度をそのまま出力してもよい。
【0115】
また、図5(a)の電波マップにおいて、位置rのように接続する基地局装置4が3つ以上の場合も、全ての基地局装置4を対象に計算を行えばよい。
【0116】
送信部205は、図6に示す通り、「要求位置情報に対応する」基準位置における接続確率、最低保証速度、及び推定速度、を含む電波マップリプライを送信する。本実施形態で用いる電波マップリプライは、(1)で説明した例と同じである。
【0117】
以上、本実施形態の電波マップ提供装置250によれば、電波マップリクエストに基づき最低保証速度及び推定速度を送信するので、電波マップ取得利用装置150側でデータの種別に応じた無線通信の制御を行うことができる。
また、本実施形態の電波マップ提供装置250によれば、基準位置における基地局装置4毎の接続確率を送信するので、電波マップ取得利用装置150側で不安定領域の判定を行うことができる。
【0118】
(3)電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200の動作
プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200は、共に電波マップの生成に関与している。以下、図7のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置100及び電波マップ生成装置200の動作を説明する。
なお、以下の動作は、プローブ情報送信装置100で実行されるプローブ情報送信方法を示すだけでなく、プローブ情報送信装置100で実行可能なプローブ情報送信プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ生成装置200で実行される電波マップ生成更新方法を示すだけでなく、電波マップ生成装置200で実行可能な電波マップ生成更新プログラムの処理手順を示すものである。
そして、これらの処理は、図7で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0119】
プローブ情報送信装置100の位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する(S101)。
伝搬環境情報取得部103は、現在位置において、外部の通信装置との間で行う無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報を取得する(S102)。
伝搬環境情報取得部103は、外部の通信装置を識別する外部通信装置識別情報を取得する(S103)。
そして、送信部105は、S101で取得した位置情報、S102で取得した伝搬環境情報、及びS103で取得した外部通信装置識別情報、をプローブ情報として電波マップ生成装置200に送信する(S104)。
【0120】
電波マップ生成装置200の受信部201は、車両の位置を示す位置情報、位置情報が示す位置において車両が外部の通信装置との間の無線通信で用いる電波伝搬路の伝搬環境情報、及び外部通信装置を識別する外部通信装置識別情報、を含むプローブ情報を複数受信し、プローブ情報保存部202に保存する(S201)。
通信速度算出部206は、複数のプローブ情報に基づき、位置情報が示す位置において、外部の通信装置毎に無線通信を行う通信速度を求める(S202)。
接続確率算出部207は、位置情報が示す位置において、外部の通信装置毎に無線通信を行う確率である接続確率を求める(S203)。
そして、電波マップ保存部204は、S201で受信した位置情報及び外部通信装置識別情報、S202で算出した通信速度、並びにS203で算出した接続確率を保存する(S204)。
【0121】
(4)電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150の動作
電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150は、共に電波マップの利用に関与している。以下、図8のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置250及び電波マップ取得利用装置150の動作を説明する。
なお、以下の動作は、電波マップ提供装置250で実行される電波マップ提供方法を示すだけでなく、電波マップ提供装置250で実行可能な電波マップ提供プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ取得利用装置150で実行される電波マップ取得利用方法を示すだけでなく、電波マップ取得利用装置150で実行可能な電波マップ取得利用プログラムの処理手順を示すものである。
そして、これらの処理は、図8で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0122】
電波マップ取得利用装置150の要求位置情報取得部110は、要求する位置を決定して要求位置情報を取得する(S151)。
送信部105は、S151で生成した要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置250に送信する(S152)。
【0123】
電波マップ提供装置250の受信部201は、要求する位置を示す要求位置情報含む電波マップリクエストを受信する(S251)。
最低保証速度算出部208は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における最低保証速度を求める(S252)。
推定速度算出部209は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における推定速度を求める(S253)。
そして、送信部205は、要求位置情報に対応する基準位置における接続確率、S252で求めた最低保証速度、及び又はS253で求めた推定速度、を含む電波マップリプライを送信する(S254)。
【0124】
電波マップ取得利用装置150の受信部106は、電波マップリプライを電波マップ提供装置250から受信する(S153)。
不安定領域判定部111は、S153で受信した接続確率に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを判定する(S154)。
通信制御部113は、S154の判定結果に基づき、基地局装置4それぞれとの間の無線通信の制御を行う(S155)。S154及びS155の無線通信の制御内容は、サブルーチンとして図9を用いて説明する。
そして、無線通信部102は、基地局装置4それぞれとの間で無線通信を行うことでデータを送信する(S156)。例えば、アプリケーション107を実行して、外部の通信装置に対し、車両が収集した車両情報を送信する。
【0125】
図9を用いて、図8のS154及びS155に示す無線通信制御の具体的動作を説明する。
【0126】
不安定領域判定部111は、基準位置において、接続する基地局装置の接続確率の最大値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(S301、S154)。所定の閾値以下である場合は(S301:Y)、処理をS303に移す。所定の閾値以上である場合は(S301:N)、処理をS302に移す。
【0127】
通信制御部113は、基準位置が安定領域であるとして、無線通信部102に対し、電波マップリプライに含まれる推定速度に基づき送信すべきデータを即時に送信するよう指示する(S302)。
【0128】
データ種別検知部112で検知したデータ種別が緊急データである場合(S303:Y)、通信制御部113は、基準位置が不安定領域であるが緊急性が高いので、無線通信部102に対し、電波マップリプライに含まれる推定速度に基づき緊急データを即時に送信するよう指示する(S302)。データ種別検知部112で検知したデータ種別が緊急データでない場合(S303:N)、処理をS304に移す。
【0129】
データ種別検知部112で検知したデータ種別がリアルタイムデータである場合(S304:Y)、通信制御部113は、無線通信部102に対し、電波マップリプライに含まれる最低保証速度に基づきリアルタイムデータを即時に送信するよう指示する(S305)。
【0130】
データ種別検知部112で検知したデータ種別がリアルタイムデータでない場合(S304:N)、通信制御部113は、無線通信部102に対し、データの送信を停止するよう指示する(S306)。
【0131】
3.実施形態1の変形例1
実施形態1では、最低保証速度及び推定速度は電波マップサーバ装置5で求め、これを車載装置1に送信した。本変形例では、最低保証速度及び推定速度は車載装置1で求める点が異なる。
以下実施形態1と異なる部分を説明し、実施形態1と同様の構成は図面上で同一番号を付すとともに、実施形態1の説明を引用する。
【0132】
(1)車載装置(プローブ情報送信装置100、電波マップ取得利用装置150)の構成
図10を用いて、本変形例の車載装置1の構成について説明する。実施形態1との相違点は電波マップ取得利用装置150のみであるので、以下本変形例の電波マップ取得利用装置150の構成を説明する。
【0133】
本変形例の電波マップ取得利用装置150は、実施形態1の電波マップ取得利用装置150に、最低保証速度算出部114及び推定速度算出部115を追加した構成である。
【0134】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。具体的には、「要求位置情報に対応する」基準位置を示す基準位置情報、基準位置における基地局装置4毎との間の通信速度、及び基準位置における基地局装置4毎と無線通信を行う確率である接続確率、含む電波マップリプライを受信する。実施形態1と異なり、最低保証速度、及び推定速度は電波マップリプライには含まれていない。
【0135】
最低保証速度算出部114は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における最低保証速度を求める。最低保証速度算出部114は、実施形態1の電波マップ提供装置250における最低保証速度算出部208と同じ構成及び機能を有する。
【0136】
推定速度算出部115は、基準位置における通信速度及び接続確率に基づき、基準位置における推定速度を求める。推定速度算出部115は、実施形態1の電波マップ提供装置250における推定速度算出部209と同じ構成及び機能を有する。
【0137】
以上、本変形例の電波マップ取得利用装置150によれば、最低保証速度及び推定速度を車載装置1側で求めるので、電波マップサーバ装置5の負担を減らすことができる。
【0138】
(2)電波マップサーバ装置(電波マップ生成装置200、電波マップ提供装置250)の構成
図11を用いて、本変形例の電波マップサーバ装置5の構成について説明する。実施形態1との相違点は電波マップ提供装置250のみであるので、以下本変形例の電波マップ提供装置250の構成を説明する。
【0139】
本変形例の電波マップ提供装置250は、実施形態1の電波マップ提供装置250から、最低保証速度算出部208及び推定速度算出部209を除いた構成である。
【0140】
送信部205は、要求位置情報に対応する基準位置における通信速度及び接続確率を含む電波マップリプライを送信する。
【0141】
(3)その他
本変形例における電波マップ提供装置250に対応する電波マップ取得利用装置150では、不安定領域判定部111が必須の構成である。最低保証速度算出部114及び推定速度算出部115は、任意の構成である。
【0142】
以上、本実施形態の電波マップ提供装置250によれば、最低保証速度及び推定速度を車載装置1側で求めるので、電波マップサーバ装置5の負担を減らすことができる。
【0143】
4.実施形態1の変形例2
実施形態1では、不安定領域判定部111は車載装置1に設けた。本変形例では、不安定領域判定部210を、車載装置1ではなく電波マップサーバ装置5に設ける点が異なる。
以下実施形態1と異なる部分を説明し、実施形態1と同様の構成は図面上で同一番号を付すとともに、実施形態1の説明を引用する。
【0144】
(1)車載装置(プローブ情報送信装置100、電波マップ取得利用装置150)の構成
図12を用いて、本変形例の車載装置1の構成について説明する。実施形態1との相違点は電波マップ取得利用装置150のみであるので、以下本変形例の電波マップ取得利用装置150の構成を説明する。
【0145】
本変形例の電波マップ取得利用装置150は、実施形態1の電波マップ取得利用装置150から、不安定領域判定部111を除いた構成である。
【0146】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。具体的には、「要求位置情報に対応する」基準位置を示す基準位置情報、基準位置における基地局装置4毎と無線通信を行う確率である接続確率、基準位置における基地局装置4毎との間の通信速度と接続確率に基づいて求めた基準位置における最低保証速度、通信速度及び接続確率に基づいて求めた基準位置における推定速度、並びに接続確率に基づいて求めた基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを受信する。つまり、実施形態1と異なり、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報が追加されている。
【0147】
通信制御部113は、受信部106で受信した、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報に基づき、複数の基地局装置4それぞれとの間の無線通信の制御を行う。
【0148】
(2)電波マップサーバ装置(電波マップ生成装置200、電波マップ提供装置250)の構成
図13を用いて、本変形例の電波マップサーバ装置5の構成について説明する。実施形態1との相違点は電波マップ提供装置250のみであるので、以下本変形例の電波マップ提供装置250の構成を説明する。
【0149】
本変形例の電波マップ提供装置250は、実施形態1の電波マップ提供装置250に、不安定領域判定部210を追加した構成である。
【0150】
不安定領域判定部210は、電波マップ保存部204に保存されている接続確率に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを判定する。そして、判定結果に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を生成する。
【0151】
送信部205は、要求位置情報に対応する基準位置における接続確率、最低保証速度、推定速度、及び基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを送信する。
【0152】
5.実施形態1の変形例3
実施形態1の変形例1では、不安定領域判定部111は車載装置1に設けた。本変形例では、不安定領域判定部210を、車載装置1ではなく電波マップサーバ装置5に設ける点が異なる。
以下実施形態1の変形例1と異なる部分を説明し、実施形態1の変形例1と同様の構成は図面上で同一番号を付すとともに、実施形態1の説明を引用する。
【0153】
(1)車載装置(プローブ情報送信装置100、電波マップ取得利用装置150)の構成
図14を用いて、本変形例の車載装置1の構成について説明する。実施形態1の変形例1との相違点は電波マップ取得利用装置150のみであるので、以下本変形例の電波マップ取得利用装置150の構成を説明する。
【0154】
本変形例の電波マップ取得利用装置150は、実施形態1の変形例1の電波マップ取得利用装置150から、不安定領域判定部111を除いた構成である。
【0155】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。具体的には、「要求位置情報に対応する」基準位置を示す基準位置情報、基準位置における基地局装置4毎との間の通信速度、基準位置における基地局装置4毎と無線通信を行う確率である接続確率、並びに接続確率に基づいて求めた基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを受信する。つまり、実施形態1と異なり、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報が追加されている。
【0156】
通信制御部113は、受信部106で受信した、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報に基づき、複数の基地局装置4それぞれとの間の無線通信の制御を行う。
【0157】
(2)電波マップサーバ装置(電波マップ生成装置200、電波マップ提供装置250)の構成
図15を用いて、本変形例の電波マップサーバ装置5の構成について説明する。実施形態1の変形例1との相違点は電波マップ提供装置250のみであるので、以下本変形例の電波マップ提供装置250の構成を説明する。
【0158】
本変形例の電波マップ提供装置250は、実施形態1の変形例1の電波マップ提供装置250に、不安定領域判定部210を追加した構成である。
【0159】
不安定領域判定部210は、電波マップ保存部204に保存されている接続確率に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを判定する。そして、判定結果に基づき、基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を生成する。
【0160】
送信部205は、要求位置情報に対応する基準位置における通信速度、接続確率、及び基準位置が不安定領域であるか否かを示す情報を含む電波マップリプライを送信する。
【0161】
6.実施形態2
実施形態1は、電波マップ取得利用装置150が、移動体である車両に搭載された車載装置1である場合であった。本実施形態は、電波マップ取得利用装置160が、情報配信サーバ装置2である場合として説明する。
【0162】
図16は、本実施形態の電波マップ取得利用装置160の構成を示す。実施形態1の説明で用いた図2との相違点は、プローブ情報送信装置100に相当する構成を有しないことである。
以下、実施形態1と異なる部分を説明し、実施形態1の図2と同様の構成は図面上で同一番号を付すとともに、実施形態1の説明を引用する。
【0163】
要求位置情報取得部110は、通信相手である車載装置1の物理的位置を特定するとともに、要求する位置として決定し、「要求位置情報」を「取得する」。具体的には、車載装置1から位置情報を受信し、これを要求位置情報とする。
なお、車載装置1から位置情報に加え、速度情報や進行方向情報を受信するようにしてもよい。これにより、車載装置1が将来走行する位置を予測して要求位置情報とすることができる。
【0164】
送信部105は、要求位置情報取得部110で生成・取得した要求位置情報を含む電波マップリクエストを電波マップ提供装置250に送信する。
なお、本実施形態では、情報配信サーバ装置2から車載装置1にデータを送信する際の送信制御が目的であるので、下り回線用の電波マップをリクエストしている。
【0165】
受信部106は、電波マップ提供装置250から電波マップリプライを受信する。電波マップ提供装置250は、実施形態1で説明した電波マップ提供装置250と同様であるので、実施形態1の説明を引用する。
【0166】
アプリケーション107は、無線通信部102を利用するアプリケーションである。例えば、ナビゲーションシステムで用いる地図データやアプリケーションの更新データを送信するプログラムが挙げられる。
【0167】
以上、本実施形態の電波マップ取得利用装置160によれば、不安定領域判定部111の判定結果に基づき基地局装置4を介した端末装置1との間の無線通信の制御を行うので、不安定領域での通信に対する影響を最小限に抑えることができる。
また、不安定領域判定部の判定結果に加え、送信するデータのデータ種別に基づき基地局装置4を介した端末装置1との間の無線通信の制御を行うので、データ種別に応じて不安定領域での無線通信の制御を適応的に変更することができる。
【0168】
なお、実施形態2においても、実施形態1の各変形例を適用できるので、実施形態1の各変形例を引用する。
【0169】
7.実施形態3
実施形態2の電波マップ取得利用装置160は情報配信サーバ装置2で実現しているが、電波マップ取得利用装置160は移動体である車両に搭載し、他の車両に対しデータを送信するようにしてもよい。
【0170】
図17において、車両Aに搭載されている電波マップ取得利用装置160は、基地局装置4を介して他の車両である車両Bに対しデータを送信している。この場合も、図16で示した実施形態2と同様の構成を有する電波マップ取得利用装置160を用いることができる。そして、この場合も、基地局装置4を介して車載装置1にデータを送信する際の送信制御が目的であるので、下り回線用の電波マップをリクエストすればよい。さらに、車両Aから基地局装置4へデータを送信する場合でもあるので、実施形態1と同様上り回線用の電波マップもリクエストするようにしてもよい。
【0171】
8.その他の実施形態
実施形態1では、電波マップの生成及び提供は電波マップサーバ装置5、プローブ情報の生成及び電波マップの取得・利用は端末装置1が行っていたが、これらを一体にしてもよい。すなわち、これらすべての機能を端末装置1に設けてもよい。この場合は、自らが用いる電波マップを自らが生成、蓄積し、利用する装置となる。
【0172】
9.総括
以上、本発明の各実施形態におけるプローブ情報送信装置、電波マップ生成装置、電波マップ提供装置、電波マップ取得利用装置の特徴について説明した。
【0173】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0174】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0175】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0176】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0177】
各実施形態は、車両に搭載されるプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、車両用以外の専用又は汎用の装置も含むものである。
【0178】
各実施形態では、各実施形態に開示のプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置を車両に搭載する前提で説明したが、歩行者が所持する前提としてもよい。
【0179】
また、本発明の装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0180】
また各装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0181】
本発明の電波マップ生成装置や電波マップ提供装置は、各種サービスの提供を目的とするために用いられることが想定される。かかるサービスの提供に伴い、本発明の装置が使用され、本発明の方法が使用され、又は/及び本発明のプログラムが実行されることになる。
【0182】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0183】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明のプローブ情報送信装置や電波マップ取得利用装置は、主として自動車に搭載される車両用の電子制御装置として説明したが、自動二輪車、電動機付自転車、鉄道はもちろん、歩行者、船舶、航空機等、移動する移動体全般に適用することが可能である。
また、携帯電話やタブレット、ゲーム機等、様々な用途に用いられる装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0185】
250 電波マップ提供装置、201 受信部、204 電波マップ保存部、205 送信部、208 最低保証速度算出部、209 推定速度算出部、150 電波マップ取得利用装置、102 無線通信部、105 送信部、106 受信部、110 要求位置情報取得部、111 不安定領域判定部、113 通信制御部
図1
図2
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図17