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特許7396268運転支援のためのシステム、車載装置、方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】運転支援のためのシステム、車載装置、方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G08G1/09 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020509897
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010559
(87)【国際公開番号】W WO2019188343
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018062358
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】小川 明紘
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-129815(JP,A)
【文献】特開2016-197842(JP,A)
【文献】特開2012-163461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバコンピュータと、前記サーバコンピュータと通信回線を介して通信する第1車両の第1車載装置とを含むシステムであって、
前記第1車載装置は、
前記第1車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集された前記センサ情報を前記サーバコンピュータに前記通信回線を介して送信する第1送信部と、
前記第1車両の走行予定エリアにおける前記通信回線の回線速度を含む第1データを前記第1車両の外部から受信する受信部と、
前記第1データを記憶する記憶部と、
前記受信部により受信された前記第1データに基づき、前記第1車両の将来の走行予定位置における前記通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、
前記回線管理部により決定された前記予測回線速度に基づいて、前記収集部により収集される前記センサ情報の前記サーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含み、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記回線速度の有効性を判定し、有効でなければ前記サーバコンピュータに前記通信回線の回線速度の送信を要求する、システム。
【請求項2】
第2車両の第2車載装置をさらに含み、
前記第2車載装置は、
前記第2車両の走行位置の情報と前記走行位置における前記通信回線の回線速度とを含む第2データを生成する生成部と、
前記第2データを、前記第1車載装置及び前記サーバコンピュータの少なくとも一方に前記通信回線を介して送信する第2送信部とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2車両は、前記第1車両の前記走行予定エリアを走行している車両である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サーバコンピュータは、
前記第2車載装置から送信された前記第2データを受信し、
受信した前記第2データから前記第1データを生成し、当該第1データを前記第1車載装置に送信する、請求項2又は請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1車載装置は、前記第1車両の走行ルートを示す走行ルート情報を前記サーバコンピュータに送信し、
前記サーバコンピュータは、受信した前記走行ルート情報により特定される道路上の位置と、当該位置に対応する前記通信回線の回線速度とを含む前記第1データを前記第1車載装置に送信する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1車載装置の前記第1送信部は、前記第1車両の走行ルートを示す走行ルート情報を前記第2車載装置にさらに送信し、
前記第2車載装置の前記第2送信部は、受信した前記走行ルート情報により特定される道路上の位置と、当該位置に対応する前記通信回線の回線速度とを含む前記第2データを前記第1車載装置にさらに送信する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記サーバコンピュータは、道路上の位置と、当該位置に対応する前記通信回線の回線速度とを含む第3データを、前記第1車載装置に送信し、
前記受信部は、前記第3データをさらに受信し、
前記回線管理部は、前記受信部により受信された前記第3データの中から、前記走行予定エリア内の位置に対応する回線速度を抽出して前記第1データとして使用し、前記予測回線速度を決定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2データは、第3車両の車載装置を介して前記第1車載装置により受信される、請求項2から請求項4、および請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記パラメータは、前記第1送信部から送信されるセンサ情報を含むデータの送信速度を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1車載装置は、前記収集部から出力されるセンサ情報を記憶した後に前記第1送信部に出力するバッファ部をさらに含み、
前記パラメータは、前記バッファ部のサイズを指定するパラメータを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記パラメータは、前記センサにより検出される前記センサ情報を収集する速度を指定するパラメータを含む、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御部は、
複数の回線速度範囲と前記パラメータの複数の値とが1対1に対応付けられたテーブルを含み、
前記テーブルを前記予測回線速度で参照し、前記予測回線速度に対応する前記パラメータの値を決定する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記サーバコンピュータは、前記第1車両の進行方向に複数の走行可能ルートがある場合、前記複数の走行可能ルートのそれぞれに関する前記第1データを前記第1車載装置に送信し、
前記回線管理部は、前記第1車両が前記複数の走行可能ルートのうちのいずれかを走行開始した後に、前記第1車両が走行している位置を含む前記走行可能ルートに関する前記第1データを使用して、前記予測回線速度を決定する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記回線管理部は、前記第1車両の速度、前記第1車両の加速度、及び、前記第1車両の周辺の交通状況の少なくともいずれか1つに基づいて、前記第1車両の将来の走行予定位置を決定し、当該走行予定位置に対応する前記予測回線速度を決定する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記受信部は、複数の通信回線のそれぞれに関して前記第1データを受信し、
前記回線管理部は、前記第1送信部が前記サーバコンピュータとの通信に使用している通信回線に対応する前記第1データに基づき、前記予測回線速度を決定する、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、
前記収集部により収集された前記センサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信部と、
前記車両の走行予定エリアにおける前記通信回線の回線速度を含むデータを前記車両の外部から受信する受信部と、
記データを記憶する記憶部と、
前記受信部により受信された前記データに基づき、前記車両の将来の走行予定位置における前記通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、
前記予測回線速度に基づいて、前記収集部により収集される前記センサ情報の前記サーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含み、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記回線速度の有効性を判定し、有効でなければ前記外部に前記通信回線の回線速度の送信を要求する、車載装置。
【請求項17】
車両に搭載される車載装置を制御する方法であって、
前記車載装置の制御部が、前記車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集ステップと、
前記制御部が、前記収集ステップにより収集された前記センサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信ステップと、
前記制御部が、前記車両の走行予定エリアにおける前記通信回線の回線速度を含むデータを前記車両の外部から受信する受信ステップと、
記データを記憶する記憶ステップと、
前記制御部が、前記受信ステップにより受信された前記データに基づき、前記車両の将来の走行予定位置における前記通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理ステップと、
前記制御部が、前記回線管理ステップにより決定された前記予測回線速度に基づいて、前記収集ステップにより収集される前記センサ情報の前記サーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御ステップと、
前記制御部が、前記記憶ステップにより記憶されている前記回線速度の有効性を判定し、有効でなければ前記外部に前記通信回線の回線速度の送信を要求するステップとを含む、制御方法。
【請求項18】
車両に搭載されたコンピュータに、
前記車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集機能と、
前記収集機能により収集された前記センサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信機能と、
前記車両の走行予定エリアにおける前記通信回線の回線速度を含むデータを前記車両の外部から受信する受信機能と、
記データを記憶する記憶機能と、
前記受信機能により受信された前記データに基づき、前記車両の将来の走行予定位置における前記通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理機能と、
前記回線管理機能により決定された前記予測回線速度に基づいて、前記収集機能により収集される前記センサ情報の前記サーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御機能と、
前記記憶機能により記憶されている前記回線速度の有効性を判定し、有効でなければ前記外部に前記通信回線の回線速度の送信を要求する機能とを実現させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援のためのシステム、車載装置、方法及びコンピュータプログラムに関する。本出願は、2018年3月28日出願の日本出願第2018-62358号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車及び自動二輪車等(以下、車両という)の運転に関して運転者を支援する種々のシステム(以下、運転支援システムという)が提案されている。運転支援システムでは、道路及びその周辺に設定された種々のセンサ機器(カメラ、レーダ等)から情報を収集し、それを解析して交通に関する情報(事故、渋滞等)を車両に提供する。また、移動体通信回線(以下、通信回線ともいう)の高速化に伴い、道路周囲に設置されたセンサ機器に限らず、車両に搭載されているセンサ機器からの情報を収集し、運転支援に有効利用することも提案されている。例えば、第3世代移動通信システム及びそれに続く移動通信システムの規格化を推進している3GPP(Third Generation Partnership Project)からは、セルラーV2Xという規格が提案されている。Vは車両(Vehicle)を意味し、Xはそれ以外のものを意味している。この規格は、車両とそれ以外のものとの通信を、LTE(Long Term Evolution)及び5G(第5世代移動体通信システム)により行うことを目的とする。5G回線の回線速度は、LTE回線の100から1000倍の速度を実現できる。
【0003】
また、後掲の特許文献1には、プローブ情報(プローブ車両を通じて収集される位置情報、時刻情報及び路面状況情報等)を収集するセンターの制御によって、プローブ情報の収集を最適化できるプローブ情報収集装置、プローブ情報送信装置及びプローブ情報収集方法が開示されている。具体的には、プローブ情報収集センターは、プローブ情報収集対象地域における通信状態情報(輻輳状態)及び道路交通情報の少なくとも一方を取得し、それに基づいて、プローブ情報を収集する収集条件を決定する。プローブ情報収集センターは、決定した収集条件をプローブ車両に送信し、収集条件に適合するプローブ情報を受信する。
【0004】
後掲の特許文献2には、所望の情報を適切に伝達可能な車両用通信端末装置及び通信システムが開示されている。具体的には、車両に緊急事態が発生した場合に、無線通信状態に応じて、車両から緊急通報センターに送信する画像情報の送信レートを調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-77143号公報
【文献】特開2008-263580号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係るシステムは、サーバコンピュータと、当該サーバコンピュータと通信回線を介して通信する車両の車載装置とを含むシステムである。車載装置は、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、収集部により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信部と、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信部と、受信部により受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、回線管理部により決定された予測回線速度に基づいて、収集部により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含む。
【0007】
本開示の別の局面に係る車載装置は、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、収集部により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信部と、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信部と、受信部により受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、予測回線速度に基づいて、収集部により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含む。
【0008】
本開示のさらに別の局面に係る制御方法は、車両に搭載される車載装置を制御する方法であって、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集ステップと、収集ステップにより収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信ステップと、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信ステップと、受信ステップにより受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理ステップと、回線管理ステップにより決定された予測回線速度に基づいて、収集ステップにより収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御ステップとを含む。
【0009】
本開示のさらに別の局面に係るコンピュータプログラムは、車両に搭載されたコンピュータに、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集機能と、収集機能により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信機能と、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信機能と、受信機能により受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理機能と、回線管理機能により決定された予測回線速度に基づいて、収集機能により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御機能とを実現させるためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る運転支援システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、車載装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、サーバコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、車載装置の機能的構成を示すブロック図である。
図5図5は、車両の走行ルートを示す模式図である。
図6図6は、予測回線速度の特定処理を示すグラフである。
図7図7は、回線速度と制御パラメータとの対応関係を表形式で示す図である。
図8図8は、車載装置の動作を示すフローチャートである。
図9図9は、サーバの動作を示すフローチャートである。
図10図10は、一変形例に係る車両の走行可能ルートを示す模式図である。
図11図11は、一変形例に係るサーバの動作を示すフローチャートである。
図12図12は、一変形例に係る車載装置の動作を示すフローチャートである。
図13図13は、一変形例に係る車載装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示が解決しようとする課題]
5G回線を導入したセルラーV2Xシステムにおいては、5G回線での通信を提供できるエリアを外れた車両では、5G回線からLTE回線への切り替えが発生し、回線速度が大きく変動する。その結果、車両からサーバコンピュータ(以下、単にサーバともいう)にアップロードできるデータ量(特に、車両に搭載されたセンサ機器による測定データ量)が制限される。現在、LTE回線は日本国内で比較的広く普及しているが、5G回線は、主要都市の駅及び繁華街に限定されており、その普及はこれからである。したがって、車両に搭載された通信機器では、5G回線とLTE回線との切り替えが頻繁に発生すると予想される。
【0012】
5G回線とLTE回線との切り替えが発生すると、送信できないデータが消失しないように、バッファする容量を大きくする、又は、低速回線でも送信可能なサイズにデータを小さくする(データ圧縮、データ間引き等)、等の対応を行うことが必要になる。したがって、5G回線とLTE回線との切り替えにスムーズに対応するには、切り替えが発生する場合に、前もって5G回線とLTE回線との切り替えに対応する準備ができることが好ましい。
【0013】
これは、5G回線とLTE回線との切り替えに限らない。回線速度の仕様が大きく異なる通信回線間での切り替えが発生する場合にも、同様のことが言える。さらには、同じ通信回線を使用している場合でも、回線速度は車両の走行環境(走行場所、走行時間帯等)に応じて大きく変化し得る。したがって、同じ回線を使用する場合にも、回線速度の変化にスムーズに対応するには、前もって回線速度の変化を予測できることが好ましい。特許文献1及び2によっては、この課題を解決することはできない。
【0014】
したがって、本開示は、車両及びサーバ間の通信回線の回線速度の変化に車両側で速やかに対応でき、回線速度が変化しても、車両から、運転支援に使用され得るデータを適切にサーバに送信できる運転支援のためのシステム、車載装置、方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0015】
[本開示の効果]
本開示によれば、車両の車載装置は、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0016】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0017】
(1)本開示の第1の局面に係るシステムは、サーバコンピュータと、当該サーバコンピュータと通信回線を介して通信する第1車両の第1車載装置とを含むシステムである。第1車載装置は、第1車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、収集部により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する第1送信部と、第1車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含む第1データを第1車両の外部から受信する受信部と、受信部により受信された第1データに基づき、第1車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、回線管理部により決定された予測回線速度に基づいて、収集部により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含む。
【0018】
これにより、第1車載装置は、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信に関するパラメータを適切に設定でき、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応できる。したがって、第1車載装置は、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0019】
(2)好ましくは、上記システムは、第2車両の第2車載装置をさらに含む。第2車載装置は、第2車両の走行位置の情報と当該走行位置における通信回線の回線速度とを含む第2データを生成する生成部と、第2データを、第1車載装置及びサーバコンピュータの少なくとも一方に通信回線を介して送信する第2送信部とを含む。これにより、第1車載装置は、第1車両の走行ルート上の通信回線の回線速度の情報をより確実に取得できる。
【0020】
(3)より好ましくは、第2車両は、第1車両の走行予定エリアを走行している車両である。これにより、第1車載装置は、より信頼性の高い、走行ルート上の通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0021】
(4)さらに好ましくは、上記のサーバコンピュータは、第2車載装置から送信された第2データを受信し、受信した第2データから第1データを生成し、当該第1データを第1車載装置に送信する。これにより、サーバコンピュータは、より信頼性の高い回線速度の情報を提供できる。
【0022】
(5)好ましくは、第1車載装置は、第1車両の走行ルートを示す走行ルート情報をサーバコンピュータに送信し、走行ルート情報を受信したサーバコンピュータは、受信した走行ルート情報により特定される道路上の位置と、当該位置に対応する通信回線の回線速度とを含む第1データを第1車載装置に送信する。これにより、第1車載装置は、適切なタイミングで、第1車両の走行ルート上の通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0023】
(6)より好ましくは、第1車載装置の第1送信部は、第1車両の走行ルートを示す走行ルート情報を第2車載装置にさらに送信し、第2車載装置の第2送信部は、受信した走行ルート情報により特定される道路上の位置と、当該位置に対応する通信回線の回線速度とを含む第2データを第1車載装置にさらに送信する。これにより、第1車載装置は、適切なタイミングで、第1車両の走行ルート上の通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0024】
(7)さらに好ましくは、サーバコンピュータは、道路上の位置と、当該位置に対応する通信回線の回線速度とを含む第3データを、第1車載装置に送信し、受信部は、第3データを受信し、回線管理部は、受信部により受信された第3データの中から、走行予定エリア内の位置に対応する回線速度を抽出して第1データとして使用し、予測回線速度を決定する。これにより、第1車載装置は、第1車両の走行ルートが変化した場合にも、外部から新たな回線速度情報を取得することなく、適切に予測回線速度を決定できる。
【0025】
(8)好ましくは、第2データは、第3車両の車載装置を介して第1車載装置により受信される。これにより、第1車載装置は、より確実に通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0026】
(9)より好ましくは、パラメータは、第1送信部から送信されるセンサ情報を含むデータの送信速度を含む。これにより、第1車載装置は、サーバコンピュータへのデータ送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0027】
(10)さらに好ましくは、第1車載装置は、収集部から出力されるセンサ情報を記憶した後に第1送信部に出力するバッファ部をさらに含み、パラメータは、バッファ部のサイズを指定するパラメータを含む。これにより、第1車載装置は、バッファの大きさを適切に決定でき、バッファのオーバーフロー又は不必要に大きいバッファが確保されてしまう非効率性を防止できる。
【0028】
(11)好ましくは、パラメータは、センサにより検出されるセンサ情報を収集する速度を指定するパラメータを含む。これにより、第1車載装置は、後段での処理が非効率にならないように、送信すべきセンサ情報を収集する最初の段階において適切な処理を行うことができる。
【0029】
(12)より好ましくは、制御部は、複数の回線速度範囲とパラメータの複数の値とが1対1に対応付けられたテーブルを含み、当該テーブルを予測回線速度で参照し、予測回線速度に対応するパラメータの値を決定する。これにより、予測回線速度に応じたパラメータの値を速やかに決定できる。
【0030】
(13)さらに好ましくは、サーバコンピュータは、第1車両の進行方向に複数の走行可能ルートがある場合、複数の走行可能ルートのそれぞれに関する第1データを第1車載装置に送信し、回線管理部は、第1車両が複数の走行可能ルートのうちのいずれかを走行開始した後に、第1車両が走行している位置を含む走行可能ルートに関する第1データを使用して、予測回線速度を決定する。これにより、サーバコンピュータは、第1車載装置に、回線速度情報を含む第1データを送信する回数を低減できる。第1車載装置は、第1車両の走行ルートが変化した場合にも、適切に予測回線速度を決定できる。
【0031】
(14)好ましくは、回線管理部は、第1車両の速度、第1車両の加速度、及び、第1車両の周辺の交通状況の少なくともいずれか1つに基づいて、第1車両の将来の走行予定位置を決定し、当該走行予定位置に対応する予測回線速度を決定する。これにより、第1車載装置は、より正確に予測回線速度を決定できる。
【0032】
(15)より好ましくは、受信部は、複数の通信回線のそれぞれに関して第1データを受信し、回線管理部は、第1送信部がサーバコンピュータとの通信に使用している通信回線に対応する第1データに基づき、予測回線速度を決定する。これにより、特定の通信回線にしか対応していない第1車載装置であっても、適切に予測回線速度を決定でき、サーバコンピュータへのデータ送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0033】
(16)本開示の第2の局面に係る車載装置は、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集部と、収集部により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信部と、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信部と、受信部により受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理部と、予測回線速度に基づいて、収集部により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御部とを含む。これにより、車載装置は、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信に関するパラメータを適切に設定でき、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応できる。したがって、車載装置は、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0034】
(17)本開示の第3の局面に係る制御方法は、車両に搭載される車載装置を制御する方法である。この制御方法は、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集ステップと、収集ステップにより収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信ステップと、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信ステップと、受信ステップにより受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理ステップと、回線管理ステップにより決定された予測回線速度に基づいて、収集ステップにより収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御ステップとを含む。これにより、車載装置は、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信に関するパラメータを適切に設定でき、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応できる。したがって、車載装置は、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0035】
(18)本開示の第4の局面に係るコンピュータプログラムは、車両に搭載されたコンピュータに、車両に装備されたセンサにより検出されたセンサ情報を収集する収集機能と、収集機能により収集されたセンサ情報をサーバコンピュータに通信回線を介して送信する送信機能と、車両の走行予定エリアにおける通信回線の回線速度を含むデータを車両の外部から受信する受信機能と、受信機能により受信されたデータに基づき、車両の将来の走行予定位置における通信回線の回線速度を予測回線速度として決定する回線管理機能と、回線管理機能により決定された予測回線速度に基づいて、収集機能により収集されるセンサ情報のサーバコンピュータへの送信に関するパラメータを決定する制御機能とを実現させるためのものである。これにより、車両に搭載されたコンピュータは、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信に関するパラメータを適切に設定でき、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応できる。したがって、車両に搭載されたコンピュータは、サーバコンピュータへのセンサ情報の送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0036】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0037】
(実施の形態)
[全体構成]
図1を参照して、本開示の実施の形態に係る運転支援システム100は、サーバコンピュータ(以下、サーバという)102、第1基地局104、第2基地局106、第1車両108及び第2車両110を含む。第2車両110は第1車両108が今後走行する予定のエリア(例えば、進行方向前方)を走行している。サーバ102は、第1車両108及び第2車両110の車載装置に対して運転に役立つ情報(以下、運転支援情報という)を提供し、それぞれの運転者を支援する。運転支援システム100を構成する各要素間の通信は、公知の移動体通信回線により行われる。ここでは、第1基地局104は、LTE回線及び5G回線によるサービスを提供しており、第2基地局106は、LTE回線による通信サービスを提供しているが、5G回線による通信サービスを提供していないとする。即ち、図1の破線を挟んで左側が5G回線のサービスエリア(以下、5Gエリアともいう)であり、左右両方のエリアはLTE回線のサービスエリア(以下、LTEエリアともいう)である。
【0038】
また、第1車両108及び第2車両110がそれぞれ搭載している車載装置は、LTE回線及び5G回線による通信機能を有している。第1車両108は、5Gエリア内を走行している間は、サーバ102との間で5G回線による高速通信が可能であるが、5Gエリアを出ると(但し依然としてLTEエリア内にある)、LTE回線でしか通信できず、通信速度が低下する。
【0039】
図1には、複数の基地局の代表として2つの基地局を示しているが、これに限定されない。通常、より多くの基地局が設けられている。車両に関しても、図1では代表的に2台の車両を示しているが、これに限定されず、サーバ102はより多くの車両の車載装置と通信し、情報を収集して解析し、運転支援情報を提供する。
【0040】
[車載装置のハードウェア構成]
図2を参照して、第1車両108に搭載されている車載装置120のハードウェア構成の一例を示す。車載装置120は、センサ機器122に接続されたA/D変換部124、通信する通信部126、データを記憶するメモリ128、それらを制御する制御部130、及び各部の間でデータを交換するためのバス132を含む。
【0041】
センサ機器122は、第1車両108に搭載されている公知のセンサである。車両には、種々のセンサが搭載されているが、それらのうちセンサ機器122は、運転支援情報の生成に供するものを意味する。センサ機器122は、例えば、デジタルカメラ(CCDカメラ、CMOSカメラ)、レーダ(ミリ波レーダ、レーザレーダ)等である。センサ機器122は、対象物をセンシングして検出信号(例えばアナログ信号)を出力する。
【0042】
センサ機器122による検出信号はA/D変換部124に入力される。A/D変換部124は、入力されるアナログ信号を所定周波数でサンプリングし、デジタルデータを生成して出力する。生成されたデジタルデータはメモリ128に記憶される。メモリ128は、例えば書換可能な不揮発性の半導体メモリ、又はハードディスクドライブ(以下、HDDという)である。
【0043】
通信部126は、LTE回線及び5G回線での通信機能を有し、第1基地局104及び第2基地局106と通信する。第1車両108とサーバ102との間の通信、又は、第1車両108と第2車両110との間の通信は、第1基地局104及び第2基地局106を介して行われる。通信部126は、LTE回線及び5G回線のそれぞれで採用されている変調及び多重化を行うIC、所定周波数の電波を放射及び受信するアンテナ、並びにRF回路等により構成されている。
【0044】
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されており、各部を制御することにより、後述する車載装置120の機能を実現する。
【0045】
[サーバのハードウェア構成]
図3を参照して、サーバ102は、制御部140、メモリ142、通信部144及びバス146を含む。各部の間のデータ伝送は、バス146を介して行われる。制御部140は、例えばCPUを含み、各部を制御し、サーバ102の種々の機能を実現する。通信部144は、第1車両108及び第2車両110の車載装置からアップロードされるセンサ情報、及び、道路等に配置されたカメラ等のセンサ(図1において図示せず)からアップロードされる情報を、第1基地局104又は第2基地局106を介して受信する。また、通信部144は、第1車両108、第2車両110及び道路等に配置されたカメラ等のセンサ機器との間の通信回線の速度を取得する。メモリ142は、書換可能な半導体の不揮発メモリ及びHDD等の大容量記憶装置を含む。通信部144により受信されたデータは、メモリ142に伝送され、データベースとして記憶される。制御部140は、メモリ142から適宜データを読出し、所定の解析処理(例えば、運転支援サービスにおいて、車両の車載装置に提供される運転支援情報を得るための解析)を実行し、その結果をメモリ142に記憶する。
【0046】
[車載装置の機能的構成]
図4を参照して、車載装置120の機能について説明する。車載装置120は、センサ情報収集部160、優先制御部162、パケットデータを送信するパケット送信部164、これらを制御するマルチレベル制御部166、パケットデータを受信するパケット受信部168、及び回線管理部170を含む。センサ情報収集部160は、センサ機器122から情報を取得する。優先制御部162は、取得した情報をバッファする。
【0047】
センサ機器122の検出信号はセンサ情報収集部160によりセンサ情報として取得される。センサ情報収集部160の機能は、例えば図2のA/D変換部124により実現される。センサ情報収集部160はマルチレベル制御部166により制御される。具体的には、マルチレベル制御部166からセンサ情報収集部160にデータ取込速度の情報(パラメータ)を伝送し、センサ情報収集部160は、マルチレベル制御部166から指定されたデータ取込速度で、センサ機器122の検出信号をデジタルデータとして取込む。通常、センサ機器122からは一定のタイミングで検出信号が出力されるので、センサ情報収集部160は、低いデータ取込速度が指定された場合、サンプリングしたデータの一部のみを出力する。例えば、センサ機器122の検出信号が画像データであれば、フレーム単位でデータを間引いて出力する。
【0048】
センサ情報収集部160により取込まれたデータは、優先制御部162に入力され、優先制御部162により一時的に記憶される。優先制御部162の機能は、例えば、図2のメモリ128により実現される。即ち、メモリ128の一部の領域がバッファ用メモリとして使用される。優先制御部162はマルチレベル制御部166により制御される。具体的には、マルチレベル制御部166から優先制御部162にバッファサイズの情報(パラメータ)を伝送し、優先制御部162はマルチレベル制御部166から指定されたサイズのメモリをバッファとして確保する。
【0049】
パケット送信部164は、優先制御部162のバッファからデータを取得し、現在使用している通信回線(LTE又は5G)に応じたフォーマット及びサイズのパケットデータを生成する。その後、パケット送信部164は、生成したパケットデータを、現在使用している通信回線に応じて変調及び多重化し、アンテナから所定周波数の電波として出力する。パケット送信部164は、例えば図2の通信部126により実現される。パケット送信部164は、マルチレベル制御部166により制御される。具体的には、マルチレベル制御部166からパケット送信部164に送信速度の情報(パラメータ)を伝送し、パケット送信部164は、生成したパケットを、マルチレベル制御部166から指示された送信速度で送信する。これにより、車載装置120は、センサ機器122から収集した情報を、サーバ102による解析に提供するために、適宜サーバ102にアップロードできる。なお、サーバ102は、第1車両108以外の車両の車載装置からも同様にアップロードされるセンサ情報を受信し、解析した結果を、運転支援情報として第1車両108の車載装置120に提供する。
【0050】
マルチレベル制御部166は、上記したようにセンサ情報収集部160、優先制御部162、及びパケット送信部164に各パラメータを伝送し、それぞれの動作を制御する。マルチレベル制御部166は、例えば図2の制御部130により実現される。詳細は後述するが、マルチレベル制御部166は各パラメータを、回線管理部170から伝送される予測回線速度に応じて決定する。
【0051】
パケット受信部168は、電波を受信して復調し、パケットデータを生成する。パケット受信部168は、受信したパケットデータが回線速度情報を含む場合、それを回線管理部170に伝送する。それ以外のパケットデータに関しては、適宜メモリ128に記憶され、オペレーションシステム又は別のアプリケーションプログラム等により使用される。パケット受信部168は、例えば図2の通信部126により実現される。
【0052】
ここで回線速度情報は、例えばサーバ102が運転支援サービスを提供している対象エリア内の各位置における実際の通信回線の速度の情報を含む。例えば、回線速度情報は、車両が走行予定のルート情報(iを1からMの自然数としてM個の位置座標(xi,yi))とルート上の位置での回線速度pi(bps)を対応させた配列データ{xi,yi,pi}である。例えば、第1車両108が、図5に示した地図上を矢印の方向に走行している場合、第1車両108の走行ルートは、例えば破線の走行ルート182で示される。第1車両108が、サーバ102から取得する回線速度情報は、走行ルート182上の各位置のうち、所定範囲180内にある位置(即ち、第1車両108の現在位置から境界点184までの範囲)での回線速度である。詳細は後述するが、第1車両108の車載装置120は、第1車両108の走行ルートの情報をサーバ102に送信することにより、回線速度情報を取得できる。横軸を位置として回線速度情報を表示すると、例えば図6のようなグラフとなる。図6では連続するグラフとして示しているが、複数の点の集合である。図6は、第1車両108の現在の位置(走行位置)から、将来走行する予定のルート(図5の走行ルート182)上での回線速度を示している。図6のグラフは、例えば、第1車両108は現在5G回線で回線速度p1(bps)の高速通信が可能であるが、今後さらに走行して5Gエリアを出ると回線速度がp2(bps)に低下することを示している。回線速度情報は、走行ルート182上の回線速度に限らず、その近傍を含む所定エリア(以下、走行予定エリアという)における回線速度を含んでいてもよい。その場合にも回線速度情報は、走行予定エリア内の位置座標(xi,yi)とその位置での回線速度piとを対応させた配列データ{xi,yi,pi}とすることができる。
【0053】
なお、図5では、第1車両108の走行ルートを、第1車両108の走行方向の道路に沿った線分として示したが、これに限定されない。例えば、第1車両108に搭載されているカーナビゲーションシステム(車載装置120がカーナビゲーション機能を有していてもよい)で目的地が設定されていれば、それにより決定されたルートに沿った回線速度情報を取得してもよい。その場合、第1車両108は、カーナビゲーションシステムから取得したルート情報をサーバ102に送信すればよい。また、図5に示した所定範囲180の形状は矩形に限定されず、任意である。例えば、円形であっても、楕円形であってもよい。
【0054】
回線管理部170は、パケット受信部168から回線速度情報を受信すると、第1車両108の将来の走行予定位置における回線速度(以下、予測回線速度という)を決定し、マルチレベル制御部166に伝送する。第1車両108の将来の走行予定位置は、例えば所定時間Δt後に予想される第1車両108の位置である。Δtは、例えば秒単位又は分単位で予め設定された一定値である。回線管理部170は、例えば図2の制御部130により実現される。具体的には、回線管理部170は、現在の第1車両108の走行位置及び走行速度を管理している。回線管理部170は、パケット受信部168から回線速度情報{xi,yi,pi}(iは1からMの自然数)を受信すると、現在から所定時間Δt後の車両の位置座標(x,y)を、現在の走行位置及び走行速度を用いて算出する。続いて、回線管理部170は、算出された位置座標で回線速度情報を参照して対応する回線速度を特定し、それを予測回線速度として決定する。該当する位置座標がなければ、例えば、最も近い位置座標の回線速度を、予測回線速度として採用すればよい。また、回線速度情報の中の複数の情報を用いて、補間により、該当する位置座標の回線速度(予測回線速度)を算出してもよい。なお、第1車両108の将来の走行予定位置座標(x,y)の決定に、第1車両108の周辺の交通状況をも考慮して決定すれば、より正確に予測回線速度を決定できる。Δtは、予測回線速度を決定するときの車両速度に応じて設定されてもよい。
【0055】
回線速度は複数のレベルに分類され、図7に示すようなマルチレベル制御用管理表として管理されている。図7のマルチレベル制御用管理表では、0以上の回線速度がNの範囲に区分され、それぞれにインデックス(1からNの自然数)が付与されている。マルチレベル制御部166は、図7に示すマルチレベル制御用管理表を記憶している。マルチレベル制御部166は、回線管理部170から伝送される予測回線速度(将来の走行予定位置における回線速度p)がどのインデックスに対応するか決定する。これにより、該当するパラメータ(センサ情報収集速度q(fps:frame per second)、送信バッファサイズr(byte)、及びセンサ情報送信速度s(bps:bit per second))が速やかに決定される。ここで、センサ情報収集速度qは、カメラ等により検出されるビデオ映像を想定して、フレーム単位(fps)で設定されている。センサ機器に応じて出力される検出信号の形式は異なるので、センサ情報収集速度qは、各センサ機器に応じて設定されることが好ましい。センサ機器によっては、bpsで設定され得る。
【0056】
マルチレベル制御部166は、決定されたパラメータを、それぞれセンサ情報収集部160、優先制御部162及びパケット送信部164に伝送する。これにより、上記したようにセンサ情報収集部160、優先制御部162及びパケット送信部164は、指定された条件で動作を開始する。図7のマルチレベル制御用管理表においては、インデックスが大きくなるほど、回線速度と、それに対応するパラメータとが大きくなるように設定されている。即ち、iを1からNの自然数として、p、Q、R及びSの値はそれぞれ、pi-1<p、Qi-1<Q、Ri-1<R、Si-1<Sとなるように設定されている。
【0057】
図4の各機能を実現するためのハードウェア構成は図2に限定されず、任意である。例えば、図4の各部を、CPU又はマイコンを含んで構成することも、一部を専用のICとして実現することも可能である。
【0058】
なお、上記では、回線速度情報が配列データ{xi,yi,pi}(iは1からMの自然数)として提供される場合を説明したが、これに限定されず、回線速度情報の形式は任意である。例えば、道路に沿って所定間隔で提供することが予め取り決められていれば、回線速度{pi}(iは1からMの自然数)のみが提供されてもよい。また、回線速度pが位置座標(x,y)の関数(近似的な関数)として提供されてもよい。これにより、サーバ102での負荷は増加する(回線速度の関数p(x,y)の算出)が、送信される回線速度情報のデータ量は著しく軽減される。
【0059】
[動作]
図8及び図9を参照して、第1車両108の車載装置120及びサーバ102の動作を説明することにより、運転支援システム100の動作を説明する。図8に示した処理は、制御部130が、所定のプログラムをメモリ128から読出して実行することにより実現される。図9に示した処理は、制御部140が、所定のプログラムをメモリ142から読出して実行することにより実現される。
【0060】
図8を参照して、ステップ300において、制御部130は、第1車両108の走行ルートの情報及び回線速度情報要求をサーバ102に送信する。具体的には、制御部130は、第1車両108の現在の位置座標、進行方向(方角)の情報、所定の要求コード(以下「回線速度情報要求コード」という)、送信元情報(自己を特定する情報)、及び、サーバ102を送信先とする送信先情報を含むパケットデータを生成する。続いて制御部130は、生成されたパケットデータを、通信部126を介して送信する。現在の位置座標と、進行方向(方角)の情報には、カーナビゲーションが管理している情報を使用できる。回線速度情報要求コードは、予め車載装置120とサーバ102との間(より正確には、車載装置120及びサーバ102でそれぞれ動作するプログラム)で取り決めたものであれば、任意である。
【0061】
ステップ302において、制御部130は、サーバ102から回線速度情報を取得したか否かを判定する。回線速度情報の取得は、図4のパケット受信部168の機能である。回線速度情報を受信したと判定されると、制御はステップ304に移行する。そうでなければ、ステップ302の処理が繰返される。後述するように、サーバ102は、回線速度情報要求コードを含むパケットを受信すると、該当する回線速度情報を含むパケットデータを送信するので、そのパケットデータに所定のコード(以下「回線速度情報送信コード」という)を含めておけばよい。制御部130は、受信したパケットデータに回線速度情報送信コードが含まれていれば、回線速度情報を受信したと判定できる。
【0062】
ステップ304において、制御部130は、受信した回線速度情報を用いて、上記したように、第1車両108の将来の走行予定位置を決定し、それに対応する回線速度を特定する。これは、図4の回線管理部170による機能である。
【0063】
ステップ306において、制御部130は、ステップ304で特定された回線速度pで、記憶しているマルチレベル制御用管理表(図7)を参照し、該当するレベル(インデックス)を決定し、それに対応するパラメータを決定する。これは、図4のマルチレベル制御部166による機能である。これにより、1組のセンサ情報収集速度q、送信バッファサイズr、及びセンサ情報送信速度sが決定される。
【0064】
ステップ308において、制御部130は、ステップ306で決定された1組のパラメータのそれぞれを、該当部に伝送し、センサ情報のアップロードを開始させる。これは、図4のマルチレベル制御部166による機能である。即ち、センサ情報収集速度qはセンサ情報収集部160に、送信バッファサイズrは優先制御部162に、センサ情報送信速度sはパケット送信部164にそれぞれ伝送される。これにより、センサ機器122の検出信号は、センサ情報収集部160によりデジタルデータとして取得され、優先制御部162によりバッファリングされた後、パケット送信部164によりパケットデータに組み込まれて、センサ情報としてサーバ102に送信される。
【0065】
ステップ310において、制御部130は、終了が指示されているか否かを判定する。終了の指示は、例えば車載装置120の電源がオフされることにより指示される。終了が指示されていると判定されると、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ312に移行する。
【0066】
ステップ312において、制御部130は、ステップ308の処理(該当部へのパラメータの伝送)を実行してから所定時間が経過したか否かを判定する。制御部130は、所定時間の経過を、内部のタイマにより知ることができる。例えば、制御部130は、ステップ308の処理の最後で、タイマから現在時刻を取得して基準時刻として記憶しておき、その後タイマから現在時刻を取得し、基準時刻と比較することにより所定時間が経過したか否かを判定できる。所定時間が経過したと判定されると、制御はステップ314に移行する。そうでなければ、制御はステップ310に戻る。これにより、所定時間が経過するまで、ステップ308で各部に指示したパラメータで、センサ情報の取得及びアップロードが行われる。
【0067】
ステップ314において、制御部130は、現在記憶している回線速度情報が有効であるか否かを判定する。第1車両108が走行している場合、時間が経過すると、サーバ102から取得して記憶している回線速度情報には、既に通過してしまった位置に対応する回線速度情報しか含まれなくなり、将来の走行予定位置の回線速度を予測できなくなる。例えば、制御部130は、記憶している回線速度情報に含まれる位置座標のうちまだ通過しておらず、現在の走行位置から最も遠い位置と、現在の走行位置との距離を算出し、その値が所定値よりも大きい場合、現在記憶している回線速度情報は有効であると判定できる。そうでなければ、制御部130は有効でないと判定できる。
【0068】
現在記憶している回線速度情報が有効であると判定されると、制御はステップ304に戻る。これにより、現在記憶されている回線速度情報と現在の走行位置とに基づいて、再び予測回線速度が特定され、対応するパラメータが決定される。一方、現在の回線速度情報が有効でないと判定されると、制御はステップ300に戻る。これにより、制御部130は再度、サーバ102に回線速度情報の送信を要求し、新たな回線速度情報を取得すると、上記と同様に、予測回線速度を特定し、対応するパラメータを決定できる。したがって、第1車両108の車載装置120は、常に有効な回線速度情報を使用して、実際に回線速度が変化する少し前(例えばΔt)に、回線速度を予測し、各部に適切なパラメータを指定でき、回線速度の変化に適切に対応した処理を速やかに実行できる。
【0069】
[サーバの動作]
図9を参照して、ステップ400において、制御部140は、通信部144を介してパケットデータを受信したか否かを判定する。受信したと判定された場合、制御はステップ404に移行する。そうでなければ、制御はステップ402に移行する。
【0070】
ステップ402において、制御部140は、サーバ102がサービスを提供しているエリア内にある道路とその周辺における現在の通信回線の回線速度を取得し、メモリ142の所定のデータベースに記憶する。その後、制御はステップ416に移行する。例えば、制御部140は、サービスエリア内にある道路上及びその周辺に位置している車両(走行車両、停車車両、及び駐車車両を含む)及びセンサ機器(監視機器)等に対して、所定のコマンド(例えばpingコマンド又はそれに相当するコマンド)で所定サイズのデータを送信する。制御部140は、それに対する応答を受信して回線速度を算出できる。車両又は機器から応答として送信されるデータ内に、応答した車両又は機器の位置情報(xi,yi)(GPS情報等)を含むようにしておけば、算出された回線速度piを位置情報と対応させて、回線速度情報{xi,yi,pi}としてメモリ142のデータベースに記憶できる。同じ位置に関して新たな回線速度が取得された場合、例えば、古い回線速度に新たな回線速度を上書きする。なお、古い回線速度は、所定期間記憶しておいてもよい。ステップ402が繰返されることにより、データベースには、サーバ102のサービスエリア内にある道路に関して最新の回線速度情報が蓄積される。
【0071】
ステップ404において、制御部140は、ステップ400で受信したパケットデータにセンサ情報が含まれているか否かを判定する。含まれていると判定されると、制御はステップ406に移行する。そうでなければ、制御はステップ408に移行する。センサ情報は、上記したように第1車両108の車載装置120からサーバ102にアップロードされる。第1車両108以外の第2車両110からも、第2車両110に搭載されているセンサ情報が、サーバ102にアップロードされる。また、道路に設置されたセンサ機器からの情報もサーバ102にアップロードされる。
【0072】
ステップ406において、制御部140は、受信したセンサ情報をメモリ142の所定のデータベースに記憶する。その後、制御はステップ416に移行する。記憶されたデータは、別途解析プログラムにより解析される。解析結果は運転支援情報として、適宜第1車両108に送信される。
【0073】
ステップ416において、制御部140は、終了の指示が成されたか否かを判定する。終了の指示は、例えば、実行中のプログラムを停止させる指示により成される。終了の指示を受けると、本プログラムは終了する。終了の指示を受けていなければ、制御は、ステップ400に戻る。
【0074】
ステップ404において、センサ情報を受信していないと判定されると、ステップ408において、制御部140は、回線速度情報要求を受信したか否かを判定する。上記したように、第1車両108からは、回線速度情報要求コードを含むパケットが送信される。制御部140は、受信したパケットに、回線速度情報要求コードが含まれていれば、回線速度情報の要求を受信したと判定する。回線速度情報の要求を受信したと判定されると、制御はステップ410に移行する。そうでなければ、制御はステップ414に移行する。
【0075】
ステップ410において、制御部140は、メモリ142から回線速度情報を取得する。上記したように、第1車両108の車載装置120から送信される回線速度情報要求コードを含むパケットには、走行ルートの情報(第1車両108の現在の位置座標、進行方向(方角)情報)が含まれている。したがって、これを用いて制御部140は、メモリ142のデータベース(ステップ402参照)に記憶されている回線速度情報から、所定範囲の地図領域における回線速度情報を取得する。例えば、制御部140は、第1車両108から受信した第1車両108の現在位置の情報と、進行方向の情報とに基づき、図5に示したように、所定範囲180内の走行ルート182を特定する。続いて、制御部140は、走行ルート182上の位置座標(xi,yi)と、それに対応する回線速度piとをメモリ142から読出す。メモリ142のデータベースに記憶されている回線速度情報は、サービスエリア内を走行している車両から取得した回線速度が含まれているので、サーバコンピュータは、より信頼性の高い回線速度の情報を提供できる。なお、上記したように、走行ルート182上の回線速度に限らず、走行予定エリアにおける回線速度情報が送信されてもよい。
【0076】
ステップ412において、制御部140は、ステップ410で読出した回線速度情報(配列データ{xi,yi,pi})を含むパケットデータを生成して、通信部144を介して送信する。送信されるパケットデータには、回線速度情報送信コードが付加され、ステップ400で受信したパケットデータ(回線速度情報要求コードを含む)の送信元情報が、送信先情報として付加される。
【0077】
ステップ408において、回線速度情報要求を受信したと判定されなければ、ステップ414において、制御部140は該当する処理を実行する。サーバ102においては運転支援サービス以外の処理も実行されるので、制御部140は別のプログラムに、受信したパケットデータを引き渡す。
【0078】
以上により、サーバ102は、第1車両108の車載装置120から回線速度情報送信コードを含むパケットデータを受信すると、車載装置120に、第1車両108の走行予定エリアの回線速度情報を送信できる。また、サーバ102は、第1車両108の車載装置120からセンサ情報を受信すると記憶し、適宜解析できる。解析結果は、運転支援情報として第1車両108の車載装置120に提供される。
【0079】
なお、予測回線速度に応じて、センサ情報収集速度、送信バッファサイズ、及びセンサ情報送信速度を全て適切な値に設定する場合を説明したが、これに限定されない。センサ情報収集速度、送信バッファサイズ、及びセンサ情報送信速度の少なくとも1つのパラメータを、予測回線速度に応じて適切な値に設定できればよい。
【0080】
[効果]
運転支援システム100において、サーバ102は、第1車両108の車載装置120からの回線速度情報の送信要求を受けて、車載装置120に、その走行予定エリア内の回線速度情報を送信できる。車載装置120は、適切なタイミングで、第1車両108の走行予定エリア内の通信回線の回線速度の情報を取得でき、受信した回線速度情報を用いて、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、適切なパラメータを決定できる。したがって、車載装置120は、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応した処理を実行できる。即ち、車載装置120は、後段での処理が非効率にならないように、送信すべきセンサ情報を収集する最初の段階において適切な処理を行うことができる。また、車載装置120は、バッファの大きさを適切に決定でき、バッファのオーバーフロー又は不必要に大きいバッファが確保されてしまう非効率性を防止できる。さらに、車載装置120は、サーバコンピュータへのデータ送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。したがって、サーバ102は、第1車両108の車載装置120から効率的にセンサ情報を取得でき、それを解析し、解析結果を運転支援情報として第1車両108の車載装置120に提供できる。
【0081】
(変形例)
上記では、通信回線が5G回線であるかLTE回線であるかを区別せずに、回線速度情報が送信される場合を説明したが、これに限定されない。サーバ102は、5G回線とLTE回線とを区別して回線速度情報を管理可能であるので、回線毎の回線速度情報を送信してもよい。即ち、サーバ102は、5G回線の回線速度情報と、LTE回線の回線速度情報とを、回線速度情報を要求した車両に送信できる。車載装置によっては、LTE回線に対応しているが5G回線には対応していない場合も考えられる。同じLTE回線においても、回線速度は変化するので、そのような車載装置であっても、受信した回線速度情報を有効に活用できる。即ち、特定の通信回線にしか対応していない車載装置を搭載している車両であっても、適切に予測回線速度を決定でき、サーバコンピュータへのデータ送信を効率的に且つ支障を生じることなく行うことができる。
【0082】
上記では、車載装置が対応可能な通信回線がLTE及び5Gである場合を説明したが、これに限定されない。車載装置が対応可能な通信回線は、回線速度の仕様が大きく異なる複数の回線であればよい。また、車載装置が対応可能な通信回線が1つであってもよい。同じ通信回線を使用している場合でも、回線速度は車両の走行環境(走行場所、走行時間帯等)に応じて大きく変化し得るからである。
【0083】
上記では、第1車両108の車載装置120がサーバ102に対して回線速度情報を要求する場合を説明したが、これに限定されない。車載装置120は、第1車両108から、所定範囲内にある他車両の車載装置に回線速度情報を要求してもよい。その場合、要求を受信した車両の車載装置は、記憶している自己車両の走行履歴と回線速度情報とを対応させて、車載装置120に対して送信する。また、車載装置120は、第1車両108の走行ルートを送信して、回線速度情報を要求してもよい。それを受信した車両の車載装置は、記憶している自己車両の走行履歴が、受信した走行ルートと重なる場合に、その回線速度情報を車載装置120に送信する。これらの機能は、車載装置のアプリケーションプログラムとして実現できる。また、第2車両110の車載装置から車載装置120に回線速度情報を送信する場合、車載装置120宛に直接送信しても、別の車両の車載装置を介して送信してもよい。これにより、車載装置120は、適切なタイミングで、より確実に第1車両108の走行ルート上の通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0084】
上記では、第1車両108の車載装置120から送信した走行ルートに関する回線速度情報が、サーバ102から送信される場合を説明したが、これに限定されない。第1車両108の走行ルートは変更され得る。第1車両108の進行方向に交差点(十字路、T字路又はY字路等、複数の道路が交わる道路部分)があり、複数の走行可能ルートがある場合がある。その場合、第1車両108の車載装置120から走行ルートを受信したサーバ102は、走行ルートに関する回線速度情報に加えて、その交差点を分岐点とする複数の走行可能ルートに関する回線速度情報を送信することが好ましい。例えば、図10では、交差点186を分岐点としてそこから延伸する道路が走行可能ルートとなるので、サーバは、それらの走行可能ルートに関しても回線速度情報を送信する。回線速度情報を受信した第1車両108の車載装置120は、第1車両108が交差点186を通過(直進、左折又は右折)した後、予測回線速度を特定できる。即ち、第1車両108が複数の走行可能ルートのうちの1つを走行開始した後に、車載装置120は、サーバから受信して記憶している回線速度情報の中から、実際の走行ルートに対応する回線速度情報を特定し、それを用いて予測回線速度を特定できる。このように、車載装置120は、第1車両108の走行ルートが変化した場合にも、適切に予測回線速度を決定できる。
【0085】
また、サーバ102は、第1車両108の車載装置120から回線速度情報の要求を受信しなくても、サービスエリア内の回線速度情報を、所定のタイミングで繰返しブロードキャストしてもよい。ブロードキャストされた回線速度情報を受信した車載装置は、それを用いて、上記したように自己車両の予測回線速度を特定できる。この場合、サーバ102は、サービスのエリア内の車両が進行可能な道路上における回線速度情報を、ブロードキャストすればよい。例えば、サーバ102は図11に示すフローチャートを実行する。図11図9のフローチャートと異なる点は、ステップ408、410及び412がそれぞれステップ420、422及び424により代替されていることだけである。したがって、重複説明を繰返さず、異なる処理に関してのみ説明する。
【0086】
ステップ420において、制御部140は、所定のタイミングになったか否かを判定する。所定のタイミングは、予め定められた数秒から数分程度の一定の時間間隔である。制御部140内部のタイマにより一定の時間が経過した(所定のタイミングになった)と判定されると、制御はステップ422に移行する。そうでなければ、制御はステップ414に移行する。ステップ422において、制御部140は、メモリ142のデータベースから、記憶されているサーバ102のサービスエリア内の道路に関する回線速度情報{xi,yi,pi}を読出す。ステップ424において、制御部140は、ステップ422で読出した回線速度情報をブロードキャストで送信する。
【0087】
これに対して第1車両108の車載装置120は、図12に示すフローチャートを実行する。図12が、図8のフローチャートと異なる点は、ステップ300が削除され、ステップ304がステップ430により代替されていることだけである。したがって、重複説明を繰返さず、異なる処理に関してのみ説明する。ここでは、制御部130は、回線速度情報要求を送信しない。ステップ430において、制御部130は、ステップ302で受信した回線速度情報(図のステップ412でサーバ102から送信された回線速度情報)の中から、第1車両108の走行予定エリアに関する回線速度情報を抽出する。続いて、制御部130は、抽出した回線速度情報を用いて、上記したように、予測回線速度を特定する。したがって、車載装置120は、第1車両108の走行ルートが変化した場合にも、外部から新たな回線速度情報を取得することなく、実際に回線速度が変化する少し前に、回線速度を予測し、適切なパラメータを決定できる。よって、車載装置120は、回線速度の変化に適切に且つ速やかに対応した処理を実行できる。
【0088】
また、サーバ102が回線速度情報をブロードキャストすることに代えて、又は、それに加えて、各車両の車載装置が、回線速度情報を送信してもよい。例えば、図13を参照して、各車両の車載装置200は、自己車両が走行したルート上の位置座標とその位置での回線速度とを含む回線速度情報を生成する回線速度情報生成部202と、生成した回線速度情報を記憶する記憶部204と、所定のタイミングで回線速度情報を記憶部204から読出して送信(例えばブロードキャスト)する送信部206とを有していてもよい。例えば、第2車両110の車載装置からブロードキャストされた回線速度情報を、第1車両108の車載装置120が受信してもよい。これにより、第2車両110が第1車両108の走行予定エリア内を走行していれば、車載装置120は、第1車両108の走行予定エリア内の通信回線の回線速度の情報をより確実に取得できる。第2車両110が、第1車両108の前方を走行していれば、車載装置120は、より信頼性の高い、第1車両108の走行ルート上の通信回線の回線速度の情報を取得できる。
【0089】
上記では、サーバ102が、車両と道路等に設けられたセンサ機器とに対して、所定のコマンドで所定サイズのデータを送信し、回線速度を算出して、データベースとして記憶する場合を説明した(図9のステップ402参照)。しかし、サーバ102が回線速度情報のデータベースを生成する方法はこれに限定されない。車両と道路に設けられたセンサ機器とのそれぞれが通信回線速度を測定し、位置情報と対応させてサーバ102に送信してもよい。サーバ102は、それを収集して回線速度情報のデータベースを構築できる。
【0090】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0091】
100 運転支援システム
102 サーバ
104 第1基地局
106 第2基地局
108 第1車両
110 第2車両
120、200 車載装置
122 センサ機器
124 A/D変換部
126、144 通信部
128、142 メモリ
130、140 制御部
132、146 バス
160 センサ情報収集部
162 優先制御部
164 パケット送信部
166 マルチレベル制御部
168 パケット受信部
170 回線管理部
180 所定範囲
182 走行ルート
184 境界点
186 交差点
202 回線速度情報生成部
204 記憶部
206 送信部
300、302、304、306、308、310、312、314、400、402、404、406、408、410、412、414、416、420、424、430 ステップ
図1
図2
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図7
図8
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図10
図11
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図13