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特許7396273カートリッジメモリおよびその制御方法、カートリッジならびに記録再生システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】カートリッジメモリおよびその制御方法、カートリッジならびに記録再生システム
(51)【国際特許分類】
   G11B 23/30 20060101AFI20231205BHJP
   G11B 23/107 20060101ALI20231205BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20231205BHJP
   G11B 15/68 20060101ALI20231205BHJP
   G11B 25/06 20060101ALI20231205BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20231205BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20231205BHJP
   G06F 11/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G11B23/30 E
G11B23/107
G11B20/10 301Z
G11B15/68
G11B25/06 A
G06K19/07 230
G06K7/10 244
G06F11/10 604
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020522079
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041378
(87)【国際公開番号】W WO2020085328
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018199942
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】阿武 和男
(72)【発明者】
【氏名】岩間 孝信
(72)【発明者】
【氏名】栃久保 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】中塩 栄治
(72)【発明者】
【氏名】足立 直大
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-150742(JP,A)
【文献】特開2002-189994(JP,A)
【文献】特開2008-186499(JP,A)
【文献】特開2011-146822(JP,A)
【文献】特開2015-091063(JP,A)
【文献】特開2015-133602(JP,A)
【文献】特開2007-151077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0300594(US,A1)
【文献】特開2010-233128(JP,A)
【文献】特開2010-219869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 23/30
G11B 23/107
G11B 20/10
G11B 15/68
G11B 25/06
G06K 19/07
G06K 7/10
G06F 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、
アンテナ部と、
データを記憶する記憶部と、
記録再生装置の要求に応じて、前記記憶部から前記データを読み出し前記アンテナ部を介して送信する制御部と
を備え
前記制御部は、
前記記録再生装置のモータが駆動されている場合には、前記データに誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信し、
前記記録再生装置のモータが駆動されていない場合には、前記データに前記誤り訂正符号を付加せずに前記アンテナ部を介して送信するカートリッジメモリ。
【請求項2】
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、
アンテナ部と、
データと誤り訂正符号を記憶する記憶部と、
記録再生装置の要求に応じて、前記記憶部から前記データおよび前記誤り訂正符号を読み出し、読み出した前記データに対して、読み出した前記誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信する制御部と
を備えるカートリッジメモリ。
【請求項3】
前記制御部は、
第1の通信速度で前記データを送信する第1の通信モードと、
前記第1の通信速度よりも速い第2の通信速度で前記データを送信する第2の通信モードと
を有し、
前記第1の通信モードでは、前記データに前記誤り訂正符号を付加せずに送信し、
前記第2の通信モードでは、前記データに前記誤り訂正符号を付加して送信する請求項1または2に記載のカートリッジメモリ。
【請求項4】
前記アンテナ部を介して受信したデータのノイズを低減するフィルタをさらに備える請求項1または2に記載のカートリッジメモリ。
【請求項5】
前記記憶部は、同一の前記データを複数記憶している請求項1または2に記載のカートリッジメモリ。
【請求項6】
請求項1または2に記載された前記カートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジ。
【請求項7】
請求項1または2に記載された前記カートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジと、
前記磁気テープカートリッジの記録再生を行う記録再生装置と
を備える記録再生システム。
【請求項8】
前記記録再生装置は、ドライブ、オートローダまたはライブラリ装置である請求項に記載の記録再生システム。
【請求項9】
前記記録再生装置は、
リーダライタと、
データに誤り訂正符号を付加して前記カートリッジメモリに前記リーダライタを介して送信する制御部と
を備える請求項に記載の記録再生システム。
【請求項10】
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリの制御方法であって、
記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータを読み出しアンテナ部を介して送信すること
を含み、
前記記録再生装置のモータが駆動されている場合には、前記データに誤り訂正符号が付加され、
前記記録再生装置のモータが駆動されていない場合には、前記データに前記誤り訂正符号が付加されないカートリッジメモリの制御方法。
【請求項11】
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリの制御方法であって、
記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータおよび誤り訂正符号を読み出し、読み出した前記データに対して、読み出した前記誤り訂正符号を付加してアンテナ部を介して送信すること
を含むカートリッジメモリの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジメモリおよびその制御方法、カートリッジならびに記録再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子データの保存のために、磁気記録媒体が広く利用されている。特にデータ単位容量あたりのコストが安い磁気テープは再注目されており、クラウドストレージサービスで用いられる記録媒体として、HDD(Hard Disk Drive)と共にデータセンター等で活用されている。
【0003】
磁気テープはLinier Tape Open(LTO)Ultrium規格の磁気テープが広く普及している。LTO Ultium規格のテープカートリッジには、カートリッジメモリ(Cartridge Memory:CM)と呼ばれるRF無線通信を用いた非接触型の不揮発性メモリが内臓されている(例えば特許文献1参照)。カートリッジメモリには、例えば、製造情報、ドライブ使用履歴、ベンダー固有の管理情報等のデータが書き込まれる。カートリッジがドライブにロードされた後、ドライブがカートリッジメモリから上記のデータを読み取ることで、カートリッジの使用状況等を調べることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-109353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、磁気テープの記録密度の向上に伴い、保存するトラック情報内容が増加し、カートリッジメモリの容量も増加する傾向にある。このため、カートリッジメモリとドライブの間でやり取りされるデータ量も増加する傾向にあり、データの転送速度を高速化し、データの転送時間を短縮化することが望まれている。しかし、データの転送速度を単純に高速化すると、S/N(Signal-Noise Ratio)が悪化し、重要なカートリッジメモリのデータの健全性が低下する虞がある。このため、ノイズ耐性を向上し、データの健全性の低下を抑制することが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、ノイズ耐性を向上することができるカートリッジメモリおよびその制御方法、カートリッジならびに記録再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、アンテナ部と、データを記憶する記憶部と、記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータを読み出しアンテナを介して送信する制御部とを備え、制御部は、記録再生装置のモータが駆動されている場合には、データに誤り訂正符号を付加してアンテナ部を介して送信し、記録再生装置のモータが駆動されていない場合には、データに誤り訂正符号を付加せずにアンテナ部を介して送信するカートリッジメモリである。
第2の開示は、磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、アンテナ部と、データと誤り訂正符号を記憶する記憶部と、記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータおよび誤り訂正符号を読み出し、読み出したデータに対して、読み出した誤り訂正符号を付加してアンテナ部を介して送信する制御部とを備えるカートリッジメモリである。
【0008】
の開示は、第1または第2の開示のカートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジである。
【0009】
の開示は、第1または第2の開示のカートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジと、磁気テープカートリッジの記録再生を行う記録再生装置とを備える記録再生システムである。
【0010】
の開示は、磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリの制御方法であって、記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータを読み出しアンテナ部を介して送信することを含み、記録再生装置のモータが駆動されている場合には、データに誤り訂正符号が付加され、記録再生装置のモータが駆動されていない場合には、データに誤り訂正符号が付加されないカートリッジメモリの制御方法である。
第6の開示は、磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリの制御方法であって、記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータおよび誤り訂正符号を読み出し、読み出したデータに対して、読み出した誤り訂正符号を付加してアンテナ部を介して送信することを含むカートリッジメモリの制御方法である
【0011】
の開示は、記録媒体カートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、アンテナ部と、データを記憶する記憶部と、記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータを読み出し、誤り訂正符号を付加してアンテナを介して送信する制御部とを備えるカートリッジメモリである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施形態に係る記録再生システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】カートリッジの構成の一例を示す分解斜視図である。
図3】磁気テープの構成の一例を示す断面図である。
図4】カートリッジメモリの構成の一例を示すブロック図である。
図5】本開示の第1の実施形態に係る記録再生システムのモード切替動作の一例について説明するための状態遷移図である。
図6】カートリッジメモリの変形例を示すブロック図である。
図7】本開示の第2の実施形態に係る記録再生システムのモード切替動作の一例について説明するための状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(記録再生システム、カートリッジおよびカートリッジメモリの例)
2 第2の実施形態(記録再生システム、カートリッジおよびカートリッジメモリの例)
【0014】
<1 第1の実施形態>
[記録再生システムの構成]
図1は、本開示の第1の実施形態に係る記録再生システム100の構成の一例を示す。記録再生システム100は、磁気テープ記録再生システムであり、磁気テープMTおよびカートリッジメモリ11を有するカートリッジ10と、カートリッジ10をロードおよびアンロード可能に構成された記録再生装置20とを備える。
【0015】
記録再生装置20にカートリッジ10がロードされた状態における、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送は、通常速度通信モード(第1の通信モード)または高速通信モード(第2の通信モード)で行われる。
【0016】
通常速度通信モードで用いられる電波の周波数は、例えば13.56MHzである。一方、高速通信モードで用いられる電波の周波数は、例えば13.56MHzより大きく、13.56×n(n:2以上の整数)であることが好ましい。
【0017】
通常速度通信モードは、通常の通信速度(第1の通信速度)でデータを転送する通信モードである。高速通信モードは、通常の通信速度よりも速い高速の通信速度(第2の通信速度)でデータを転送する通信モードである。通常速度通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加されないのに対して、高速通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加される。転送データに付加される誤り訂正符号としては、例えば、ハミング符号、水平垂直パリティ符号、リードソロモン符号またはBCH符号等を用いることができるが、これらの符号に限定されるものではない。
【0018】
[記録再生装置の構成]
記録再生装置20は、いわゆる磁気テープドライブであり、通信部としてのリーダライタ21と、記録再生部22と、制御部としてのシステムコントローラ23と、インタフェース24とを備える。記録再生装置20は、インタフェース24を介して外部コンピュータ200に対して接続されている。
【0019】
リーダライタ21は、規定の無線通信規格でカートリッジメモリ11と通信を行う。ここで、規定の通信規格は、例えば、LTO(Linear Tape-Open)規格でカートリッジメモリ11用に定められている通信規格(以下「LTO規定の通信規格」という。)である。
【0020】
LTO規格の通信規格は、ISO14443-2のTypeA方式(NXP)をベースにLTO用にカスタマイズされた近距離無線通信規格である。なお、LTO規格は、LTO1~8のいずれの規格であってもよいし、今後策定が見込まれるLTO9以降の規格であってもよい。
【0021】
記録再生部22は、磁気テープMTを走行させるためのモータ(図示せず)、およびヘッドユニット(図示せず)等を備え、磁気テープMTに対するデータの記録および再生を行う。
【0022】
インタフェース24は、記録再生部22および外部コンピュータ200と接続されている。記録再生部22によって磁気テープMTから読み出された信号は、インタフェース24を介して外部コンピュータ200に出力される。一方、記録再生部22によって磁気テープMTに記録される信号は、インタフェース24を介して外部コンピュータ200から供給される。
【0023】
インタフェース24がリーダライタ21と接続されていてもよい。この場合には、インタフェース24と接続された外部コンピュータ200からの操作入力により、リーダライタ21の制御が行われる構成とすることができる。
【0024】
システムコントローラ23は、リーダライタ21や記録再生部22等の記録再生装置20の各部を制御する。システムコントローラ23は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備える。
【0025】
システムコントローラ23は、インタフェース24を介してカートリッジメモリ11に通信モードの切替を要求する。具体的には、システムコントローラ23は、インタフェース24を介してカートリッジメモリ11に高速通信モードで通信可能であるか否かを問い合わせる。問い合わせに対してカートリッジメモリ11から高速通信モードで通信可能であるとの返答があった場合には、システムコントローラ23は、カートリッジメモリ11に通常速度通信モードから高速通信モードへのモード切替を要求し、その後のデータ転送を高速通信モードで行う。一方、問い合わせに対してカートリッジメモリ11から返答がなかった場合には、もしくは問い合わせに対してカートリッジメモリ11から高速通信モードで通信不可能であるとの返答があった場合には、システムコントローラ23は、通常速度通信モードを維持する。
【0026】
通常通信モードにおいてデータをカートリッジメモリ11に送信する場合には、システムコントローラ23は、外部コンピュータ200からインタフェース24を介して供給されたデータに誤り訂正符号を付加せずに、リーダライタ21を介して通常の通信速度でデータを送信する。通常通信モードにおいてカートリッジメモリ11からリーダライタ21を介してデータを受け取った場合には、システムコントローラ23は、受け取ったデータをインタフェース24を介して外部コンピュータ200に供給する。
【0027】
高速通信モードにおいてデータをカートリッジメモリ11に送信する場合には、システムコントローラ23は、外部コンピュータ200からインタフェース24を介して供給されたデータに対して誤り訂正符号を生成し、供給されたデータに誤り訂正符号を付加し、リーダライタ21を介して高速の通信速度でデータをカートリッジメモリ11に送信する。なお、誤り訂正符号は、例えばブロック単位で付加される。高速通信モードにおいてカートリッジメモリ11からリーダライタ21を介して誤り訂正符号が付加されたデータを受け取った場合には、システムコントローラ23は、データに付加された誤り訂正符号を用いて、受け取ったデータのエラー(符号誤り)を検出し、エラーが検出された場合にはそのエラーを訂正した後、インタフェース24を介して外部コンピュータ200に供給する。この際、システムコントローラ23が、受け取ったデータに誤り訂正を行わず、誤り訂正符号が付加されたデータそのものを、外部コンピュータ200に供給するようにしてもよい。
【0028】
[カートリッジの構成]
図2は、カートリッジ10の構成の一例を示す。カートリッジ10は、LTO規格に準拠した磁気テープカートリッジ(記録媒体カートリッジ)であり、下シェル12Aと上シェル12Bとで構成されるカートリッジケース12の内部に、磁気テープMTが巻かれたリール13と、リール13の回転をロックするためのリールロック14およびリールスプリング15と、リール13のロック状態を解除するためのスパイダ16と、下シェル12Aと上シェル12Bに跨ってカートリッジケース12に設けられたテープ引出口12Cを開閉するスライドドア17と、スライドドア17をテープ引出口12Cの閉位置に付勢するドアスプリング18と、誤消去を防止するためのライトプロテクト19と、カートリッジメモリ11とを備える。リール13は、中心部に開口を有する略円盤状であって、プラスチック等の硬質の材料からなるリールハブ13Aとフランジ13Bとにより構成される。
【0029】
カートリッジメモリ11は、カートリッジ10の1つの角部の近傍に設けられている。カートリッジ10が記録再生装置20にロードされた状態において、カートリッジメモリ11は、記録再生装置20のリーダライタ21と対向するようになっている。カートリッジメモリ11は、上述のように規定の無線通信規格で記録再生装置20、具体的にはリーダライタ21と通信を行う。
【0030】
[磁気テープの構成]
図3は、磁気テープMTの構成の一例を示す。磁気テープMTは、いわゆる塗布型の磁気テープであって、長尺状の基体41と、基体41の一方の主面上に設けられた下地層42と、下地層42上に設けられた磁性層43とを備える。なお、下地層42は必要に応じて備えられるものであって、なくてもよい。磁気テープMTが、必要に応じて、基体41の他方の主面上に設けられたバックコート層44をさらに備えるようにしてもよい。
【0031】
(基体)
支持体となる基体41は、可撓性を有する長尺状の非磁性基体である。非磁性基体はフィルムであり、フィルムの厚さは、例えば3μm以上8μm以下である。基体41の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、またはアルミナガラス等のセラミック等を用いることができる。
【0032】
(磁性層)
磁性層43は、信号を記録するための記録層である。磁性層43は、垂直方向に磁気異方性を有していることが好ましい。すなわち、磁性層43の磁化容易軸は、垂直方向に向いていることが好ましい。磁性層43は、複数のサーボバンドと複数のデータバンドとを予め有していることが好ましい。複数のサーボバンドは、磁気テープMTの幅方向に等間隔で設けられている。隣り合うサーボバンドの間には、データバンドが設けられている。サーボバンドには、磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号が予め書き込まれている。データバンドには、ユーザデータが記録される。
【0033】
磁性層43は、例えば、磁性粉および結着剤を含む。磁性層43が、必要に応じて、潤滑剤、導電性粒子、研磨剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0034】
磁性粉は、磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)に配向されていることが好ましい。磁性粉は、例えば、ε酸化鉄粒子、Co含有スピネルフェライト粒子または六方晶フェライト粒子(例えばバリウムフェライト粒子)等を含む。
【0035】
結着剤としては、ポリウレタン系樹脂または塩化ビニル系樹脂等に架橋反応を付与した構造の樹脂が好ましい。しかしながら結着剤はこれらに限定されるものではなく、磁気テープMTに対して要求される物性等に応じて、その他の樹脂を適宜配合してもよい。配合する樹脂としては、通常、塗布型の磁気テープにおいて一般的に用いられる樹脂であれば、特に限定されない。
【0036】
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル-エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂および合成ゴム等のうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0037】
磁性層43の平均厚みは、好ましくは30nm以上120nm以下、より好ましくは50nm以上70nm以下である。磁性層43の平均厚みは、断面TEM(Transmission Electron Microscope)像から磁気テープMTの長手方向に少なくとも10点以上の位置で磁性層43の厚みを測定した後、それらの測定値を単純に平均(算術平均)することことにより求められる。
【0038】
(下地層)
下地層42は、基体41の表面の凹凸を緩和し、磁性層43の表面の凹凸を調整するためのものである。下地層42は、非磁性粉および結着剤を含む非磁性層である。下地層42が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0039】
非磁性粉は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性粉は、カーボンブラック等でもよい。無機物質としては、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物および金属硫化物等のうちの少なくとも1種を用いることができる。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状または板状等の各種形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。結着剤は、上述の磁性層43と同様である。
【0040】
下地層42の平均厚みは、好ましくは0.5μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.6μm以上1.4μm以下である。下地層42の平均厚みは、磁性層43の平均厚みと同様にして求められる。
【0041】
[カートリッジメモリの構成]
図4は、カートリッジ10に用いられるカートリッジメモリ11の構成の一例を示す。カートリッジメモリ11は、規定の通信規格でリーダライタ21と通信を行うアンテナコイル(アンテナ部)31と、アンテナコイル31により受信した電波から、誘導起電力を用いて発電、整流して電源を生成する整流・電源回路32と、アンテナコイル31により受信した電波から、同じく誘導起電力を用いてクロックを生成するクロック回路33と、アンテナコイル31により受信した電波の検波およびアンテナコイル31により送信する信号の変調を行う検波・変調回路34と、検波・変調回路34から抽出されるデジタル信号から、コマンドおよびデータを判別し、これを処理するための論理回路等で構成されるコントローラ(制御部)35と、データを記憶するメモリ36とを備える。
【0042】
また、カートリッジメモリ11は、アンテナコイル31に対して並列に接続されたキャパシタ37を備え、アンテナコイル31とキャパシタ37により共振回路が構成される。アンテナコイル31のインダクタンスLとキャパシタ37のキャパシタンスCで決まる共振周波数f(=1/2π√LC)をリーダライタ21から送られる電波の周波数(例えば通常速度通信モードでは13.56MHz、高速通信モードでは13.56×n(n:2以上の整数))に合わせることにより、高い誘起電圧を得ることができる。
【0043】
メモリ36は、カートリッジ10に関連するデータを記憶する。メモリ36は、不揮発性メモリ(Non Volatile Memory:NVM)である。メモリ36の記憶容量は、好ましくは約16KB以上、より好ましくは約32KB以上である。例えばカートリッジ10がLTO-6規格、LTO-7規格またはLTO-8規格に準拠したものである場合には、メモリ36は、約16KBの記憶容量を有する。LTO-9規格またはLTO-10規格に準拠したものである場合には、メモリ36は、約32KBの記憶容量を有する。
【0044】
メモリ36は、第1の記憶領域36Aと第2の記憶領域36Bとを有するようにしてもよい。第1の記憶領域36Aは、LTO規格に準拠したデータ(すなわち一般的なカートリッジメモリのデータ)が記憶される領域であり、LTO規格に準拠した一般的なカートリッジメモリの記憶領域に対応する。LTO規格に準拠したデータは、例えば製造情報(例えばカートリッジ10の固有番号等)、使用履歴(例えばテープ引出回数(Thread Count)等)等である。
【0045】
第2の記憶領域36Bは、一般的なカートリッジメモリの記憶領域に対する拡張記憶領域に相当する。第2の記憶領域36Bには、付加データが記憶される。ここで、付加データとは、LTO規格で規定されていない、カートリッジ10に関連するデータを意味する。付加データの例としては、第1の記憶領域36Aに記憶されたデータに関連する誤り訂正符号、管理台帳データ、Index情報、または磁気テープMTに記憶された動画のサムネイル情報等が挙げられるが、これらのデータに限定されるものではない。
【0046】
メモリ36は、複数のバンクを有していてもよい。この場合、複数のバンクうちの一部のバンクにより第1の記憶領域36Aが構成され、残りのバンクにより第2の記憶領域36Bが構成されてもよい。具体的には例えば、カートリッジ10がLTO-8規格に準拠したものである場合には、各バンクは16KBの記憶容量を有し、複数のバンクのうちの1つのバンクにより第1の記憶領域36Aが構成され、残りのバンクにより第2の記憶領域36Bが構成されてもよい。
【0047】
アンテナコイル31は、電磁誘導により誘起電圧を誘起する。コントローラ35は、アンテナコイル31を介して、規定の通信規格で記録再生装置20と通信を行う。具体的には例えば、相互認証、コマンドの送受信またはデータのやり取りなどを行う。
【0048】
コントローラ35は、通常速度通信モードと高速通信モードとを有し、記録再生装置20の要求に応じて、これらの通信モードを切り替える。コントローラ35は、記録再生装置20から高速通信モードで通信可能であるか否かの問い合わせがあった場合には、高速通信モードで通信可能であることを記録再生装置20に返答する。
【0049】
通常通信モードにおいて、記録再生装置20からデータを受け取った場合には、コントローラ35は、受け取ったデータをメモリ36に記憶する。通常通信モードにおいて、記録再生装置20からデータ送信の要求があった場合には、コントローラ35は、要求に応じたデータをメモリ36から読み出し、誤り訂正符号を付加せずにアンテナコイル31を介して記録再生装置20に通常の通信速度で送信する。
【0050】
高速通信モードにおいて、記録再生装置20から誤り訂正符号が付加されたデータを受け取った場合には、コントローラ35は、データに付加された誤り訂正符号を用いて、受け取ったデータのエラー(符号誤り)を検出し、エラーが検出された場合にはそのエラーを訂正した後、メモリ36に記憶する。高速通信モードにおいて、記録再生装置20からデータ送信の要求があった場合には、コントローラ35は、要求に応じたデータをメモリ36から読み出すと共に、読み出したデータに対する誤り訂正符号を生成し、読み出したデータに対して、生成した誤り訂正符号を付加してアンテナコイル31を介して記録再生装置20に高速の通信速度で送信する。なお、誤り訂正符号は、例えばブロック単位で付加される。
【0051】
[通信モードの切替動作]
以下、図5を参照して、記録再生システム100のモード切替動作の一例について説明する。なお、以下の説明においてカートリッジメモリ11、記録再生装置20の動作はそれぞれ、コントローラ35、システムコントローラ23により実行されるものである。
【0052】
まず、カートリッジメモリ11と記録再生装置20とのリンクが確立されると(ステップS1)、カートリッジメモリ11は、通信モードを通常速度通信モードに設定する(ステップS2)。その後、記録再生装置20からカートリッジメモリ11に高速通信モードで通信可能である否かの問い合わせがなされると(ステップS3)、カートリッジメモリ11は、高速通信モードで通信が可能であるか否かを記録再生装置20に返答する(ステップS4)。
【0053】
カートリッジメモリ11から記録再生装置20に高速通信モードで通信不可能であるとの返答があった場合には、もしくはカートリッジメモリ11から記録再生装置20に高速通信モードで通信が可能であるか否かの返答がなかった場合には、記録再生装置20は、通常通信モードを維持する。一方、カートリッジメモリ11から記録再生装置20に高速通信モードで通信可能であるとの返答があった場合には、記録再生装置20は、通常通信モードから高速通信モードへの通信モードの切替をカートリッジメモリ11に要求する(ステップS5)。この要求を受けたカートリッジメモリ11は、通常通信モードから高速通信モードに通信モードを切り替える(ステップS6)。これにより、カートリッジメモリ11と記録再生装置20との間の以降の通信は、高速通信で行われる(ステップS7)。なお、高速通信モードでは、カートリッジメモリ11と記録再生装置20の間でやり取りされるデータには、誤り訂正符号が付加される。
【0054】
[効果]
第1の実施形態に係る記録再生システム100では、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送は、通常速度通信モードまたは高速通信モードで行われる。通常速度通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加されないのに対して、高速通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加される。したがって、高速通信におけるノイズ耐性(エラー耐性)を向上し、データの健全性の低下を抑制することができる。
【0055】
一般的なドライブシステムにおいては、ドライブのモータ駆動時に発生するノイズの影響により、転送データにエラー(符号誤り)が発生する可能性がある。このため、一般的には、テープカートリッジのローディング後におけるデータ転送は、モータが駆動される前に行われる。また、テープカートリッジのアンローディング前におけるデータ転送は、モータの駆動が停止された後に行われる。したがって、ローディングおよびアンローディング時におけるカートリッジの取り扱いに待ち時間が発生する。近年では、カートリッジメモリとドライブ間でやり取りされるデータ量も増加する傾向にあり、ローディングおよびアンローディング時におけるカートリッジの取り扱い待ち時間が長くなり傾向にある。第1の実施形態に係る記録再生システム100では、ローディングおよびアンローディング時において、高速通信モードでデータを転送することが可能であるため、ローディングおよびアンローディング時におけるカートリッジ10の取り扱いに待ち時間を短縮することができる。
【0056】
[変形例]
(変形例1)
高速通信モードにおいて、コントローラ35が以下のように動作するようにしてもよい。高速通信モードにおいて記録再生装置20から誤り訂正符号が付加されたデータを受け取った場合には、コントローラ35は、受け取ったデータと、このデータに付加されていた誤り訂正符号とを関連付けてメモリ36に記憶する。この際、記憶するデータに対してエラー訂正の処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0057】
高速通信モードにおいて記録再生装置20からデータ送信の要求を受けた場合には、コントローラ35は、データ送信が要求されたデータに関連付けられて誤り訂正符号が記憶されているか否かを判別する。誤り訂正符号が関連付けて記憶されていると判別された場合には、コントローラ35は、データ送信が要求されたデータと共に、このデータに関連付けられた誤り訂正符号をメモリ36から読み出し、読み出したデータに対して誤り訂正符号を付加して記録再生装置20に高速の通信速度で送信する。一方、誤り訂正符号が関連付けて記憶されていないと判別された場合には、コントローラ35は、データ送信が要求されたデータをメモリ36から読み出すと共に、読み出したデータに対する誤り訂正符号を生成し、読み出したデータに対して生成した誤り訂正符号を付加して記録再生装置20に高速の通信速度で送信する。
【0058】
コントローラ35が上述のように動作することで、データ送信が要求されたデータと共に、誤り訂正符号がメモリ36に記憶されている場合には、コントローラ35は誤り訂正符号を生成する処理を行わずに済むため、カートリッジメモリ11の処理を軽減することができる。なお、上述の例において、カートリッジメモリ11に予め記憶されているデータにも、誤り訂正符号が関連付けられて記憶されていてもよい。
【0059】
(変形例2)
通常通信モードおよび高速通信モードに関わらず、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間で転送されるデータ全てに、誤り訂正符号を付加するようにしてもよい。
【0060】
(変形例3)
リーダライタ21およびカートリッジメモリ11が、送信データに誤り訂正符号を付加する処理に代えて、図6に示すように、受信したデータのノイズを低減するフィルタ38を備えるようにしてもよい。この場合にも、受信データのS/Nを改善し、ノイズ耐性を向上することができる。したがって、パルス制御により駆動中のモータ等から発せられるノイズの影響の低減することができる。
【0061】
リーダライタ21およびカートリッジメモリ11が、送信データに誤り訂正符号を付加する処理と共に、上記フィルタ38をさらに備えるようにしてもよい。この場合、データの不要信号成分をさらに低減できるので、ノイズ耐性をさらに向上することができる。
【0062】
フィルタ38としては、パルス制御により駆動中のモータから発せられるノイズを低減可能なものが好ましい。このようなノイズを低減可能なフィルタ38としては、10MHz以下の周波数帯域をカットするものが好ましい。なお、システムコントローラ23およびコントローラ35が、上述のフィルタ38に相当するフィルタ処理を行うようにしてもよい。
【0063】
(変形例4)
カートリッジメモリ11において、データが多重化されていてもよい。より具体的には、カートリッジメモリ11が複数のメモリ36を備え、複数のメモリ36それぞれに同一のデータを記憶するようにしてもよい。もしくは、カートリッジメモリ11が、複数のデータ記憶領域を有し、複数のデータ記憶領域それぞれに同一のデータを記憶するようにしてもよい。このようにデータが多重化されていることで、コントローラ35が、カートリッジメモリ11内のデータで欠落したデータを検出訂正することができる。また、データが多重化されていることにより、記憶データの耐久性の向上も実現することができる。
【0064】
(変形例5)
カートリッジメモリ11がメモリ36に容量指定領域を有し、記録再生装置20からは記憶領域として上記の容量指定領域のみが見えるように、アクセス可能な記憶領域を制限するようにしてもよい。例えば、カートリッジメモリ11が記憶容量32KBのメモリ36を有する場合には、制御ビットにより、記録再生装置20からは4KB、8KB、16KBまたは32KBの容量指定領域が見えるようにアクセス可能な記録領域を制限するようにしてもよい。
【0065】
(その他の変形例)
カートリッジメモリ11が、メモリ36に記憶されたデータのエラー検出、訂正および補正を行う機能を有していてもよい。
【0066】
カートリッジメモリ11内や通信におけるデータの冗長性を利用して、欠落データを予測した誤り補正を可能とするようにしてもよい。
【0067】
上述の第1の実施形態では、記録再生装置が磁気テープドライブである場合について説明したが、記録再生装置が磁気テープオートローダまたは磁気テープライブラリ装置であってもよい。
【0068】
上述の第1の実施形態では、記録再生システムが磁気テープ記録再生システムである場合について説明したが、記録再生システムが光ディスク記録再生システムであってもよい。すなわち、カートリッジメモリ、記録再生装置がそれぞれ、光ディスクカートリッジ、光ディスク記録再生装置であってもよい。
【0069】
上述の第1の実施形態ではドライブに本開示を適用した例について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、サーボ信号書き込み機、磁気テープをカートリッジに組み込む組み込み機、およびカートリッジの状態を検査する検査装置に本開示を適用してもよい。
【0070】
<2 第2の実施形態>
第2の実施形態においては、記録再生装置20にカートリッジ10がロードされ、記録再生装置20のモータが駆動されていない状態においては、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送はモータ非駆動時通信モード(第3の通信モード)で行われる。一方、記録再生装置20にカートリッジ10がロードされ、記録再生装置20のモータが駆動されている状態においては、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送はモータ駆動時通信モード(第4の通信モード)で行われる。モータ非駆動時通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加されないのに対して、モータ駆動時通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加される。
【0071】
システムコントローラ23は、カートリッジメモリ11に通信モードの切替を要求する。具体的には、システムコントローラ23は、カートリッジメモリ11にモータ駆動時通信モードで通信可能であるか否かを問い合わせる。問い合わせに対してカートリッジメモリ11からモータ駆動時通信モードで通信可能であるとの返答があった場合には、システムコントローラ23は、モータ非駆動時通信モードからモータ駆動時通信モードへのモード切替をカートリッジメモリ11に要求し、モータの駆動後のデータ転送をモータ駆動時通信モードで行う。一方、問い合わせに対してカートリッジメモリ11からモータ駆動時通信モードで通信不可能であるとの返答があった場合には、もしくは問い合わせに対してカートリッジメモリ11から問い合わせに対する回答がなかった場合には、システムコントローラ23は、モータ非駆動時通信モードを維持する。
【0072】
システムコントローラ23は、モータの駆動を停止した場合には、モータ駆動時通信モードからモータ非駆動時通信モードへのモード切替をカートリッジメモリ11に要求し、モータの駆動停止後におけるデータ転送をモータ非駆動時通信モードで行う。
【0073】
モータ非駆動時通信モードにおいて、データをカートリッジメモリ11に送信する場合には、システムコントローラ23は、外部コンピュータ200からインタフェース24を介して供給されたデータに誤り訂正符号を付加せずに、リーダライタ21を介してデータを送信する。モータ非駆動時通信モードにおいて、カートリッジメモリ11からリーダライタ21を介してデータを受け取った場合には、システムコントローラ23は、受け取ったデータをインタフェース24を介して外部コンピュータ200に供給する。
【0074】
モータ駆動時通信モードにおいて、データをカートリッジメモリ11に送信する場合には、システムコントローラ23は、外部コンピュータ200からインタフェース24を介して供給されたデータに対して誤り訂正符号を生成し、供給されたデータに誤り訂正符号を付加し、リーダライタ21を介してデータを送信する。モータ駆動時通信モードにおいて、カートリッジメモリ11からリーダライタ21を介して誤り訂正符号が付加されたデータを受け取った場合には、システムコントローラ23は、データに付加された誤り訂正符号を用いて、受け取ったデータのエラー(符号誤り)を検出し、エラーが検出された場合にはそのエラーを訂正した後、インタフェース24を介して外部コンピュータ200に供給する。この際、システムコントローラ23が、受け取ったデータに誤り訂正を行わず、誤り訂正符号が付加されたデータそのものを、外部コンピュータ200に供給するようにしてもよい。
【0075】
コントローラ35は、モータ非駆動時通信モードとモータ駆動時通信モードとを有し、記録再生装置20の要求に応じて、これらの通信モードを切り替える。コントローラ35は、記録再生装置20からモータ駆動時通信モードで通信可能であるか否かの問い合わせがあった場合には、モータ駆動時通信モードで通信可能であることを記録再生装置20に返答する。
【0076】
モータ非駆動時通信モードにおいて、記録再生装置20からデータを受け取った場合には、コントローラ35は、受け取ったデータをメモリ36に記憶する。モータ非駆動時通信モードにおいて、記録再生装置20からデータ送信の要求があった場合には、コントローラ35は、要求に応じたデータをメモリ36から読み出し、誤り訂正符号を付加せずに記録再生装置20に送信する。
【0077】
モータ駆動時通信モードにおいて、記録再生装置20から誤り訂正符号が付加されたデータを受け取った場合には、コントローラ35は、データに付加された誤り訂正符号を用いて、受け取ったデータのエラー(符号誤り)を検出し、エラーが検出された場合にはそのエラーを訂正した後、メモリ36に記憶する。モータ駆動時通信モードにおいて、記録再生装置20からデータ送信の要求があった場合には、コントローラ35は、要求に応じたデータをメモリ36から読み出すと共に、読み出したデータに対する誤り訂正符号を生成し、読み出したデータに対して、生成した誤り訂正符号を付加してアンテナコイル31を介して記録再生装置20に送信する。
【0078】
[通信モードの切替動作]
以下、図7を参照して、記録再生システム100の通信モードの切替動作の一例について説明する。なお、以下の説明においてカートリッジメモリ11、記録再生装置20の動作はそれぞれ、コントローラ35、システムコントローラ23により実行されるものである。
【0079】
まず、カートリッジメモリ11と記録再生装置20とのリンクが確立されると(ステップS11)、カートリッジメモリ11は、通信モードをモータ非駆動時通信モードに設定する(ステップS12)。その後、記録再生装置20がモータを駆動しない状態においては、カートリッジメモリ11と記録再生装置20の間でのデータのやり取りは、データに誤り訂正符号が付加されない状態で行われる(ステップS13)。
【0080】
上記データのやり取り後、または上記データのやり取りと並行して、記録再生装置20からカートリッジメモリ11にモータ駆動時通信モードで通信可能である否かかの問い合わせがなされると(ステップS14)、カートリッジメモリ11は、モータ駆動時通信モードで通信可能であるか否かを記録再生装置20に返答する(ステップS15)。
【0081】
カートリッジメモリ11から記録再生装置20にモータ駆動時通信モードで通信不可能であるとの返答があった場合、もしくはカートリッジメモリ11から記録再生装置20にモータ駆動時通信モードで通信が可能であるか否かの返答がなかった場合には、記録再生装置20は、モータ非駆動時通信モードを維持する。一方、カートリッジメモリ11から記録再生装置20にモータ駆動時通信モードで通信可能であるとの返答があった場合には、記録再生装置20は、モータ非駆動時通信モードからモータ駆動時通信モードへの通信モードの切替を記録再生装置20に要求すると共に(ステップS16)、モータを駆動する(ステップS17)。上記の要求を受けたカートリッジメモリ11は、モータ非駆動時通信モードからモータ駆動時通信モードに通信モードを切り替える(ステップS18)。これにより、カートリッジメモリ11と記録再生装置20との間の以降のデータのやり取りは、誤り訂正符号が付加された状態で行われる(ステップS19)。
【0082】
[効果]
第2の実施形態に係る記録再生システム100では、記録再生装置20のモータが駆動されていない状態においては、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送はモータ非駆動時通信モードで行われる。一方、記録再生装置20のモータが駆動されている状態においては、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間のデータ転送はモータ駆動時通信モードで行われる。モータ非駆動時通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加されないのに対して、モータ駆動時通信モードでは、誤り訂正符号が転送データに付加される。したがって、モータ駆動時においても、安定したデータ転送が可能となり、磁気テープMTの巻き取り時間中においても、カートリッジメモリ11に対するデータの書き込み、およびカートリッジメモリ11からのデータの読み出しが可能となる。よって、ローディングおよびアンローディング時におけるカートリッジの取り扱いに待ち時間を短縮することができる。
【0083】
[変形例]
モータ駆動時通信モードにおいて、コントローラ35が、第1の実施形態の変形例1と同様の動作を行うようにしてもよい。
モータ非駆動時通信モードおよびモータ駆動時通信モードに関わらず、記録再生装置20とカートリッジメモリ11との間で転送されるデータ全てに、誤り訂正符号を付加するようにしてもよい。
第1の実施形態における通信モードと、第2の実施形態における通信モードとを組み合わせるようにしてもよい。
【0084】
以上、本開示の第1、第2の実施形態およびそれらの変形例について具体的に説明したが、本開示は、上述の第1、第2の実施形態およびそれらの変形例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0085】
例えば、上述の第1、第2の実施形態およびそれらの変形例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。
【0086】
また、上述の第1、第2の実施形態およびそれらの変形例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0087】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、
アンテナ部と、
データを記憶する記憶部と、
記録再生装置の要求に応じて、前記記憶部から前記データを読み出し、誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信する制御部と
を備えるカートリッジメモリ。
(2)
前記制御部は、
前記記録再生装置のモータが駆動されている場合には、前記データに前記誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信し、
前記記録再生装置のモータが駆動されていない場合には、前記データに前記誤り訂正符号を付加せずに前記アンテナ部を介して送信する(1)に記載のカートリッジメモリ。
(3)
前記制御部は、
第1の通信速度で前記データを送信する第1の通信モードと、
前記第1の通信速度よりも速い第2の通信速度で前記データを送信する第2の通信モードと
を有し、
前記第1の通信モードでは、前記データに前記誤り訂正符号を付加せずに送信し、
前記第2の通信モードでは、前記データに前記誤り訂正符号を付加して送信する(1)または(2)に記載のカートリッジメモリ。
(4)
前記アンテナ部を介して受信したデータのノイズを低減するフィルタをさらに備える(1)から(3)のいずれかに記載のカートリッジメモリ。
(5)
前記記憶部は、同一の前記データを複数記憶している(1)から(4)のいずれかに記載のカートリッジメモリ。
(6)
前記記憶部は、前記データと共に前記誤り訂正符号をさらに記憶し、
前記制御部は、前記記憶部から前記データおよび前記誤り訂正符号を読み出し、読み出した前記データに対して、読み出した前記誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信する(1)から(5)のいずれかに記載のカートリッジメモリ。
(7)
(1)から(6)のいずれかに記載された前記カートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジ。
(8)
(1)から(6)のいずれかに記載された前記カートリッジメモリを備える磁気テープカートリッジと、
前記磁気テープカートリッジの記録再生を行う記録再生装置と
を備える記録再生システム。
(9)
前記記録再生装置は、ドライブ、オートローダまたはライブラリ装置である(8)に記載の記録再生システム。
(10)
前記記録再生装置は、
リーダライタと、
データに誤り訂正符号を付加して前記カートリッジメモリに前記リーダライタを介して送信する制御部と
を備える(8)または(9)に記載の記録再生システム。
(11)
磁気テープカートリッジに用いられるカートリッジメモリの制御方法であって、
記録再生装置の要求に応じて、記憶部からデータを読み出し、誤り訂正符号を付加してアンテナ部を介して送信すること
を含むカートリッジメモリの制御方法。
(12)
記録媒体カートリッジに用いられるカートリッジメモリであって、
アンテナ部と、
データを記憶する記憶部と、
記録再生装置の要求に応じて、前記記憶部から前記データを読み出し、誤り訂正符号を付加して前記アンテナ部を介して送信する制御部と
を備えるカートリッジメモリ。
【符号の説明】
【0088】
10 カートリッジ
11 カートリッジメモリ
12 カートリッジケース
12A 下シェル12A
12B 上シェル12B
12C 引出口
13 リール
13A リールハブ
13B フランジ
14 リールロック
15 リールスプリング
16 スパイダ
17 スライドドア
18 ドアスプリング
19 ライトプロテクト
20 記録再生装置
21 リーダライタ
22 記録再生部
23 システムコントローラ
24 インタフェース
31 アンテナコイル
32 整流・電源回路
33 クロック回路
34 検波・変調回路
35 コントローラ
36 メモリ
37 キャパシタ
38 フィルタ
41 基体
42 下地層
43 磁性層
44 バックコート層
100 記録再生システム
200 外部コンピュータ
MT 磁気テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7