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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/08 20230101AFI20231205BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20231205BHJP
   H01S 3/113 20060101ALI20231205BHJP
   H01S 3/042 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01S3/08
H01S3/0941
H01S3/113
H01S3/042
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020562862
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042302
(87)【国際公開番号】W WO2020137136
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018241347
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平野 豪
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-214207(JP,A)
【文献】特開2017-220652(JP,A)
【文献】特開2018-073984(JP,A)
【文献】米国特許第06973115(US,B1)
【文献】特開平06-235806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、
前記励起光源から出力された励起光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系により集光された前記励起光を受けて放出光を出力する利得媒質と、
前記利得媒質よりも表面粗さが小さく、前記利得媒質から出力された前記放出光を透過する透明部材と、
前記透明部材を透過した前記放出光の吸収に伴って透過率が増加する過飽和吸収体と、
前記透明部材を挟んで、前記利得媒質と前記過飽和吸収体との間で前記放出光を共振させる共振器と、
を備え、
前記透明部材の前記利得媒質側の面に、前記励起光を反射し、且つ前記放出光を透過する第1誘電体多層膜がコーティングされ
前記利得媒質の前記透明部材側の面に、前記第1誘電体多層膜よりも膜厚が薄く膜層数が少ない、前記励起光及び前記放出光に対する第1反射防止膜がコーティングされている、レーザ装置。
【請求項2】
前記透明部材と前記利得媒質とがオプティカルコンタクト又は接合されている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記透明部材と前記利得媒質との間にエアギャップが形成されている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記透明部材の前記過飽和吸収体側の面に、前記放出光に対する第2反射防止膜がコーティングされている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記透明部材と前記過飽和吸収体とがオプティカルコンタクト又は接合されている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記透明部材と前記過飽和吸収体との間にエアギャップが形成されている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記過飽和吸収体の前記透明部材側の面に、前記放出光に対する第2反射防止膜がコーティングされている、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記利得媒質がセラミックYAGからなる、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記セラミックYAGが、イッテルビウムが添加されたセラミックYAGである、請求項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記透明部材が二酸化珪素、サファイヤ又はダイヤモンドのいずれかである、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記共振器が、
前記過飽和吸収体から出力された前記放出光の一部を反射し、前記放出光の残部を透過するミラーと、
前記利得媒質の前記集光光学系側の面にコーティングされた第2誘電体多層膜と、
を備える、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記ミラーが、前記過飽和吸収体と離間して設けられる、請求項11に記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記ミラーが、前記過飽和吸収体の前記透明部材側の面とは反対側の面にコーティングされた第3誘電体多層膜で構成される、請求項11に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記励起光源及び前記集光光学系のそれぞれを複数有し、前記利得媒質、前記透明部材、前記過飽和吸収体及び前記共振器をアレイ構造とした、請求項1に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(本技術)は、レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップレーザは、励起光源、集光光学系、利得媒質、過飽和吸収体及び共振器を備えるレーザ装置である。マイクロチップレーザの利得媒質の過飽和吸収体側の面には、励起光を反射し、且つ利得媒質の放出光を透過する誘電体多層膜がコーティングされる。この誘電体多層膜は、共振器により共振する放出光のビームウエスト近傍に位置するため、放出光のエネルギーにより破壊され易い。
【0003】
誘電体多層膜等のコーティング膜のレーザ損傷閾値が、膜付けする対象表面の面状態に影響されることは一般的に知られている。非特許文献1には、膜付けする対象の表面欠陥によって電界増強が生じ、反射防止膜に損傷を与えることが報告されている。非特許文献2では、膜付けする対象の表面粗さに依存して反射防止膜のレーザ損傷閾値が変化することが報告されている。
【0004】
誘電体多層膜の耐久性を向上させる手段として、特許文献1には、熱損傷を防ぐためにダイヤモンドを用いた冷却構造が提案されている。しかしながら、膜付けする対象の表面粗さが大きいと電界増強が生じるため、熱損傷を防いだだけでは誘電体多層膜の耐久性を十分向上させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-235806号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】N. Bloembergen: Appl. Opt. 22 (1973) 661.
【文献】Y. Nose et al.: Japan. J. Appl. Phys. 26 (1987) 1256.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、マイクロチップレーザの利得媒質として、特性バラツキの小さいセラミックのイットリウム・アルミニウム・ガーネット(セラミックYAG)を使用する場合には、セラミックYAGは単結晶YAGと比較して、研磨による面精度を出すことができない。このため、利得媒質の表面粗さが大きい表面にコーティングされる誘電体多層膜の耐久性の低下が顕著となる。この結果、高出力化や高繰り返し化が困難となる。
【0008】
本技術は、利得媒質の表面粗さが大きい場合でも、高出力化や高繰り返し化を実現することができるレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の一態様に係るレーザ装置は、励起光源と、励起光源から出力された励起光を集光する集光光学系と、集光光学系により集光された励起光を受けて放出光を出力する利得媒質と、利得媒質よりも表面粗さが小さく、利得媒質から出力された放出光を透過する透明部材と、透明部材を透過した放出光の吸収に伴って透過率が増加する過飽和吸収体と、透明部材を挟んで、利得媒質と過飽和吸収体との間で放出光を共振させる共振器とを備え、透明部材の利得媒質側の面に、励起光を反射し、且つ放出光を透過する第1誘電体多層膜がコーティングされていることを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本技術の実施形態に係るレーザ装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示したレーザ装置の部分拡大図である。
図3図3は、比較例に係るレーザ装置の概略図である。
図4図4は、図3に示したレーザ装置の部分拡大図である。
図5図5は、本技術の実施形態に係るレーザ加工機の一例を示す概略図である。
図6図6は、本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置の一例を示す概略図である。
図7図7は、本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置の一例を示す概略図である。
図8図8は、図7に示したレーザ装置の部分拡大図である。
図9図9は、本技術の実施形態の第3変形例に係るレーザ装置の部分拡大図である。
図10図10は、本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置の一例を示す概略図である。
図11図11は、図10に示したレーザ装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照して本技術の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本技術の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0013】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0014】
<レーザ装置の構成>
本技術の実施形態に係るレーザ装置は、図1に示すように、励起光源1、集光光学系2、利得媒質5、透明部材6、過飽和吸収体7及びミラー(共振器ミラー)8を備えるマイクロチップレーザである。
【0015】
励起光源1は、励起光L1を出力する。励起光源1としては、半導体レーザ(レーザダイオード)を使用可能である。半導体レーザは、端面発光レーザであってもよく、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であってもよい。図1では模式的に、励起光源1が出力する励起光L1の光軸A1を破線で示し、励起光L1を一点鎖線で示している。
【0016】
集光光学系2は、励起光源1から出力された励起光L1を集光する。集光光学系2は、励起光L1を平行光とするコリメートレンズ3と、コリメートレンズ3からの平行光とされた励起光L1を集光する集光レンズ4とを備える。
【0017】
利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7は、励起光L1の光軸A1に沿って順に配置されている。利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7は互いにオプティカルコンタクト又は接合されて一体化されている。透明部材6は、利得媒質5に隣接し、利得媒質5の集光光学系2側の面S1とは反対側の面S2の方向に配置されている。過飽和吸収体7は、透明部材6に隣接し、透明部材6の利得媒質5側の面S3とは反対側の面S4の方向に配置されている。共振器ミラー8は、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5とは反対側の面S6の方向に配置されている。
【0018】
利得媒質5は、集光光学系2により集光された励起光L1を受けて励起光L1の振幅を増幅し、放出光L2を出力する。励起光L1の光軸A1に沿った利得媒質5の厚さは例えば0.1mm~1mm程度である。利得媒質5は、光活性物質を含有し、励起光L1により光活性物質が励起されることにより、放出光L2を発生させる。利得媒質5としては、例えばセラミックYAGからなる。利得媒質5としては、例えばイッテルビウム(Yb)を濃度10%~50%程度でセラミックYAGに添加したセラミックYb:YAGが好適である。セラミックYb:YAGの励起波長は940nmであり、発振波長は1030nmである。以下では、利得媒質5としてセラミックYb:YAGを使用した場合を説明する。
【0019】
透明部材6は、利得媒質5から出力された放出光L2を透過する。励起光L1の光軸A1に沿った透明部材6の厚さは例えば0.5mm~1mm程度である。透明部材6としては、例えば石英(SiO)、サファイヤ及びダイヤモンドのいずれかが使用可能である。透明部材6としては、利得媒質5とのオプティカルコンタクト又は接合の際の利得媒質5の冷却の観点からは、サファイヤ又はダイヤモンド等の高熱伝導材料が好ましい。
【0020】
過飽和吸収体7は、透明部材6を透過した放出光L2の吸収に伴って透過率が増加する。即ち、過飽和吸収体7は、光吸収の飽和により光吸収率が小さくなる特性を有し、受動Qスイッチとして機能する。励起光L1の光軸A1に沿った過飽和吸収体7の厚さは例えば0.5mm~1mm程度である。過飽和吸収体7の初期透過率は例えば30%~95%程度である。過飽和吸収体7としては、例えばセラミックYAGにクロム(Cr)を添加したセラミックCr:YAG等が使用可能である。
【0021】
共振器ミラー8は、利得媒質5の集光光学系2側の面S1にコーティングされた誘電体多層膜5a(図2参照)と共に共振器(8,5a)を構成する。共振器(8,5a)は、透明部材6を挟んで、利得媒質5と過飽和吸収体7との間で放出光L2を共振させる。図1では模式的に、共振する放出光L2を二点鎖線で示している。放出光L2が、共振器(8,5a)内で共振しながら利得媒質5で増幅される。利得媒質5の透明部材6側の面S2近傍には、例えば直径100μm程度のビームウエストが形成され、最もエネルギー密度が高くなる。
【0022】
共振器ミラー8は、過飽和吸収体7を透過した放出光L2の一部を反射すると共に、過飽和吸収体7を透過した放出光L2の残部を透過する機能を有する。共振器ミラー8を透過した放出光L2がパルス状のレーザ光(発振光)として出力される。共振器ミラー8の放出光L2の波長に対する反射率は例えば30%~95%程度である。共振器ミラー8としては、例えば誘電体多層膜が使用可能である。
【0023】
図1に示した利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7の部分の拡大図を図2に示す。利得媒質5の集光光学系2側の面S1には、共振器ミラー8と共に共振器(8,5a)を構成する誘電体多層膜5aがコーティングされている。誘電体多層膜5aは、例えばSiO及び五酸化タンタル(Ta)、或いはSiO及び酸化ハフニウム(HfO)等の、屈折率が互いに異なる材料からなる誘電体層を交互に積層することによって形成し得る。誘電体多層膜5aは、利得媒質5から出力された放出光L2を反射すると共に、励起光L1を透過する機能を有するように、膜厚、屈折率及び膜層数が選定された構造を有している。例えば、放出光L2の波長(1030nm)の反射率が99%以上であり、且つ励起光L1の波長(940nm)の透過率が95%以上である。一方、利得媒質5の透明部材6側の面S2には、励起光L1及び放出光L2の反射を防止する反射防止膜(ARコート)5bがコーティングされている。反射防止膜(ARコート)5bは、SiO層やTa層等からなる単層又は複数層の誘電体膜で構成することができる。
【0024】
利得媒質5の集光光学系2側の面S1及び利得媒質5の透明部材6側の面S2は、誘電体多層膜5a及び反射防止膜5bをそれぞれコーティングする前に研磨がそれぞれ施されるが、利得媒質5としてセラミックYAGを使用した場合にはケミカル研磨が困難でありメカニカル研磨程度の面精度しか出すことができない。このため、ケミカル研磨が容易な単結晶YAGと比較して面精度を出し難く、表面粗さを小さくし難い。
【0025】
透明部材6の利得媒質5側の面S3には、誘電体多層膜6aがコーティングされている。誘電体多層膜6aは、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する機能を有するように、膜厚、屈折率及び膜層数が選定された構造を有している。例えば、励起光L1の波長(940nm)の反射率が99%以上であり、放出光L2の波長(1030nm)の透過率が95%以上である。一方、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4には、放出光L2の反射を防止する反射防止膜(ARコート)6bがコーティングされている。反射防止膜6bは、SiO層やTa層等からなる単層又は複数層の誘電体膜で構成することができる。
【0026】
透明部材6の利得媒質5側の面S3及び透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4は、誘電体多層膜6a及び反射防止膜6bをそれぞれコーティングする前にケミカル研磨がそれぞれ施されるが、利得媒質5の集光光学系2側の面S1及び利得媒質5の透明部材6側の面S2と比較して、ケミカル研磨により面精度を出しやすく、表面粗さを小さくし易い。このため、透明部材6の利得媒質5側の面S3及び透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4の表面粗さは、利得媒質5の集光光学系2側の面S1及び利得媒質5の透明部材6側の面S2の表面粗さよりも小さい。例えば、透明部材6の利得媒質5側の面S3及び透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4の算出平均粗さRaは、0.1nm~1nm程度であってよい。
【0027】
過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5には、放出光L2の反射を防止する反射防止膜(ARコート)7aがコーティングされている。一方、過飽和吸収体7の共振器ミラー8側の面S6には、放出光L2の反射を防止する反射防止膜(ARコート)7bがコーティングされている。反射防止膜7a,7bは、SiO層やTa層等からなる単層又は複数層の誘電体膜で構成することができる。
【0028】
利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされた反射防止膜5bと、透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングされた誘電体多層膜6aとは、オプティカルコンタクトされているか、或いは常温接合等により接合されているのが好ましい。また、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4にコーティングされた反射防止膜6bと、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5にコーティングされた反射防止膜7aとは、オプティカルコンタクトされているか、或いは常温接合等により接合されているのが好ましい。
【0029】
<レーザ装置の動作>
次に、図1及び図2を参照して、本技術の実施形態に係るレーザ装置の基本的な動作を説明する。図1に示した励起光源1から励起光L1が出力され、集光光学系2により励起光L1が集光される。集光光学系2により集光された励起光L1は、図2に示した誘電体多層膜5aを透過して利得媒質5に入射する。利得媒質5は、励起光L1を受けて放出光L2を出力する。利得媒質5から出力された放出光L2は、反射防止膜5b、誘電体多層膜6a、透明部材6及び反射防止膜6bを透過して、過飽和吸収体7に入射する。過飽和吸収体7が透過した放出光L2は、反射防止膜7bを透過して共振器ミラー8に達する。放出光L2は、共振器(8,5a)内で共振しながら利得媒質5で増幅される。
【0030】
利得媒質5から出力される放出光L2の光強度が小さいときは、過飽和吸収体7の光吸収率が大きいため、レーザ発振は起こらない。やがて、利得媒質5から出力される放出光L2の光強度が大きくなり、過飽和吸収体7における光強度が所定値以上となると、過飽和吸収体7の光吸収が飽和して光吸収率が急激に小さくなる。これにより、放出光L2が過飽和吸収体7を透過することにより、利得媒質5で誘導放出が起こり、レーザ発振が起こる。そして、レーザ発振が起こると利得媒質5から出力される放出光L2の光強度が小さくなり、過飽和吸収体7の光吸収率が大きくなるため、レーザ発振が終了する。このようにして、本技術の実施形態に係るレーザ装置からパルス状のレーザ光(発振光)が出力される。
【0031】
<比較例>
ここで、図3及び図4を参照して、比較例に係るレーザ装置を説明する。比較例に係るレーザ装置は、図3に示すように、利得媒質5と過飽和吸収体7との間に透明部材が配置されていない点が、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置と異なる。
【0032】
図3に示した利得媒質5及び過飽和吸収体7の部分の拡大図を図4に示す。利得媒質5の集光光学系2側の面S1に誘電体多層膜5aがコーティングされている点は、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様である。一方、利得媒質5の過飽和吸収体7側の面S2には、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する機能を有する誘電体多層膜5xがコーティングされている点が、本技術の実施形態に係るレーザ装置と異なる。
【0033】
過飽和吸収体7の利得媒質5側の面S5に、発振波長の反射を防止する反射防止膜7aがコーティングされ、過飽和吸収体7の共振器ミラー8側の面S6に、発振波長の反射を防止する反射防止膜7bがコーティングされている点は、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様である。
【0034】
利得媒質5の過飽和吸収体7側の面S2にコーティングされている誘電体多層膜5xと、過飽和吸収体7の利得媒質5側の面S3にコーティングされた反射防止膜7aとは、オプティカルコンタクトされてるか、或いは常温接合等により接合されている。
【0035】
比較例に係るレーザ装置では、過飽和吸収体7の初期透過率を下げることによる高出力化や、励起光L1のパワーを上げることによる高繰り返し化を行っていくと、ビームウエスト近傍に位置する、利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされている誘電体多層膜5xが、放出光L2のエネルギーで破壊されてしまう。即ち、誘電体多層膜5xの耐久性が高出力化・高繰り返し化の制約となっている。特に、量産化を見据え、特性のバラつきが少ないセラミックYAGを利得媒質5として使用する場合には、誘電体多層膜5xの破壊が顕著になる。これは、セラミックYAGは単結晶YAGと比較して、ケミカル研磨が困難であり、表面粗さを小さくし難いため、レーザ損傷閾値の低い誘電体多層膜5xしかコーティングすることができないことに起因する。また、誘電体多層膜5xは、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する機能を有するように、膜層数を多くし、膜厚を厚くする必要があるが、誘電体多層膜5xは膜層数及び膜厚が増加するほど耐久性が低下する。
【0036】
<本技術の実施形態の効果>
これに対して、本技術の実施形態に係るレーザ装置によれば、利得媒質5と過飽和吸収体7との間に透明部材6を配置している。そして、比較例に係るレーザ装置では利得媒質5の過飽和吸収体7側の面S2にコーティングした誘電体多層膜5xと同様の、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する機能を有する誘電体多層膜6aを、利得媒質5よりも表面粗さが小さい透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングしている。一方、透明部材6よりも表面粗さの大きい利得媒質5の透明部材6側の面S2には、誘電体多層膜6aよりも膜厚が薄く膜層数が少ない、励起光L1及び放出光L2に対する反射防止膜5bをコーティングしている。そして、利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされた反射防止膜5bと、透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングされた誘電体多層膜6aとを、オプティカルコンタクト又は接合させている。
【0037】
したがって、本技術の実施形態に係るレーザ装置によれば、比較例に係るレーザ装置の誘電体多層膜5xと略同様の位置に誘電体多層膜6aが配置されることとなるが、誘電体多層膜6aが利得媒質5よりも表面粗さが小さい透明部材6にコーティングされているため、誘電体多層膜6aのレーザ損傷閾値の低下を防止することができ、誘電体多層膜6aの耐久性を向上させることができる。一方、透明部材6よりも表面粗さの大きい利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされた反射防止膜5bは、誘電体多層膜6aよりも膜厚が薄く膜層数が少ないため、利得媒質5にコーティングされた場合でも破壊され難い。よって、利得媒質5に表面粗さの大きいセラミックYAG等を使用した場合でも、高出力化及び高繰り返し化を実現することができる。更に、本技術の実施形態に係るレーザ装置によれば、セラミックYAG等の利得媒質5の表面粗さに影響されないので、品質の安定化にもつながる。
【0038】
<レーザ加工機>
本技術の実施形態に係るレーザ装置は、レーザ加工機に適用可能である。例えば図5に示すように、本技術の実施形態に係るレーザ加工機20は、レーザ装置21、光増幅器(アンプ)22、波長変換部23、パワー調整部24、スキャン光学系25及び集光光学系(第2集光光学系)26を備える。
【0039】
レーザ装置21は、図1及び図2に示した構成を有する。即ち、レーザ装置21は、励起光源1と、励起光源1から出力された励起光L1を集光する集光光学系(第1集光光学系)2と、セラミックYAG等からなり、第1集光光学系2により集光された励起光L1を受けて放出光L2を出力する利得媒質5と、利得媒質5よりも表面粗さが小さく、利得媒質5から出力された放出光L2を透過する透明部材6と、透明部材6を透過した放出光L2の吸収に伴って透過率が増加する過飽和吸収体7と、透明部材6を挟んで、利得媒質5と過飽和吸収体7との間で放出光L2を共振させる共振器(8,5a)とを備える。そして、透明部材6の利得媒質5側の面S3に、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する誘電体多層膜6aがコーティングされている。
【0040】
図5に示したアンプ22は、レーザ装置21から出力されたレーザ光を増幅する。波長変換部23は、アンプ22により増幅されたレーザ光の波長を変換する。波長変換部23は、例えば第2高調波発生(SHG)、第3高調波発生(THG)、第4高調波発生(FHG)等のための構成を有する。パワー調整部24は、波長変換部23により波長を変換されたレーザ光のパワーを調整する。パワー調整部24は、例えば可変減衰器(バリアブルアッテネータ)で構成できる。スキャン光学系25は、パワー調整部24によりパワーを調整されたレーザ光を走査する。スキャン光学系25は、例えばガルバノスキャナや微小電気機械システム(MEMS)ミラー等で構成することができる。第2集光光学系26は、スキャン光学系25により走査されたレーザ光を集光し、集光したレーザ光を被加工対象に照射する。集光光学系2は、例えばFθレンズ及び対物レンズで構成することができる。
【0041】
(第1変形例)
本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置は、図6に示すように、図1に示したレーザ装置にそれぞれが対応する複数のユニットセルを備える点が、本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と異なる。本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置は、複数の励起光源1a,1b,1c及び複数の集光光学系2a,2b,2cを有する。図6では、3つの励起光源1a,1b,1c及び3つの集光光学系2a,2b,2cに対応する3つのユニットセルを一次元に配列した場合を例示するが、ユニットセルを2次元に配列してもよい。また、ユニットセルの個数は限定されず、2つのユニットセルを配列してもよく、4つ以上のユニットセルを配列してもよい。
【0042】
集光光学系2aは、励起光源1aに対応して配置され、コリメートレンズ3a及び集光レンズ4aを備える。集光光学系2bは、励起光源1bに対応して配置され、コリメートレンズ3b及び集光レンズ4bを備える。集光光学系2cは、励起光源1cに対応して配置され、コリメートレンズ3c及び集光レンズ4cを備える。
【0043】
本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置は、利得媒質5、透明部材6、過飽和吸収体7及びミラー(共振器ミラー)8の共振器部分をアレイ構造とした点が、本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と異なる。過飽和吸収体7と共振器ミラー8とは透明材料からなるスペーサを介して一体化されていてもよい。
【0044】
図6において図示を省略するが、利得媒質5の集光光学系2側の面S1には、放出光を反射すると共に、励起光を透過する誘電体多層膜がコーティングされている。一方、利得媒質5の透明部材6側の面S2には、励起光及び放出光の反射を防止する反射防止膜(ARコート)がコーティングされている。利得媒質5の集光光学系2側の面S1にコーティングされた誘電体多層膜と共振器ミラー8により共振器が構成されている。
【0045】
また、図6において図示を省略するが、透明部材6の利得媒質5側の面S3には、励起光を反射し、且つ放出光を透過する誘電体多層膜がコーティングされている。一方、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4には、放出光の反射を防止する反射防止膜(ARコート)がコーティングされている。過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5には、放出光の反射を防止する反射防止膜(ARコート)がコーティングされている。一方、過飽和吸収体7の共振器ミラー8側の面S6には、放出光の反射を防止する反射防止膜(ARコート)がコーティングされている。
【0046】
透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4にコーティングされた反射防止膜と、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5にコーティングされた反射防止膜とは、オプティカルコンタクトされているか、或いは常温接合等により接合されているのが好ましい。利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされた反射防止膜と、透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングされた誘電体多層膜とは、オプティカルコンタクトされているか、或いは常温接合等により接合されているのが好ましい。
【0047】
利得媒質5は、集光光学系2a,2b,2cにより集光された励起光(一点鎖線で図示)を受けて放出光(二点鎖線で図示)を出力する。利得媒質5から出力された放出光は、共振器ミラー8と、利得媒質5の集光光学系2側の面S1にコーティングされた誘電体多層膜とで構成される共振器内で共振しながら利得媒質5で増幅され、各ユニットセル毎にパルス状のレーザ光(発振光)が出力される。
【0048】
本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置によれば、複数の励起光源1a,1b,1c及び複数の集光光学系2a,2b,2cを有し、利得媒質5、透明部材6、過飽和吸収体7及びミラー(共振器ミラー)8の共振器部分をアレイ構造とした複数のユニットセルを有する場合でも、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様に、高出力化及び高繰り返し化を実現することができる。
【0049】
(第2変形例)
本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置は、図7に示すように、励起光源1、集光光学系2、利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7を備える点は、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と同様である。しかし、本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置は、図7に示すように、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5とは反対側の面S6側に共振器ミラーが配置されていない点が、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と異なる。
【0050】
図7に示した利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7の部分の拡大図を図8に示す。過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5とは反対側の面S6には、反射防止膜7bの代わりに、図1に示した共振器ミラー8と同じ反射率の誘電体多層膜(部分反射ミラー)7cがコーティングされている。誘電体多層膜7cは、過飽和吸収体7を透過した放出光L2の一部を反射すると共に、過飽和吸収体7を透過した放出光L2の残部を透過する機能を有する。即ち、誘電体多層膜7cは、利得媒質5の集光光学系2側の面S1にコーティングされた誘電体多層膜5aと共に共振器(5a,7c)を構成する。誘電体多層膜7cを透過した放出光L2がパルス状のレーザ光(発振光)として出力される。
【0051】
本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置によれば、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置のように共振器ミラー8を個別に配置する代わりに、過飽和吸収体7の面S6にコーティングされた誘電体多層膜7cに共振器ミラー8と同様の役割を持たせた場合でも、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様に、高出力化及び高繰り返し化を実現することができる。なお、図6に示した本技術の実施形態の第1変形例に係るレーザ装置においても、本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置と同様に、共振器ミラー8を個別に配置せず、過飽和吸収体7の面S6に共振器ミラー8と同じ反射率の誘電体多層膜(部分反射ミラー)がコーティングされていてもよい。
【0052】
(第3変形例)
本技術の実施形態の第3変形例に係るレーザ装置の全体構成は、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と同様である。本技術の実施形態の第3変形例に係るレーザ装置の利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7の部分の拡大図を図9に示す。図9に示すように、利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7を互いにオプティカルコンタクト又は接合する構造を取る場合、利得媒質5の透明部材6側の面S2には、励起光L1及び放出光L2の反射を防止する反射防止膜がコーティングされていなくてもよい。利得媒質5の透明部材6側の面S2は、透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングされた、励起光L1を反射し、且つ放出光L2を透過する誘電体多層膜6aとオプティカルコンタクト又は接合されていてもよい。
【0053】
また、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5には、放出光L2の反射を防止する反射防止膜がコーティングされていなくてもよい。過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5は、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4にコーティングされた、放出光L2の反射を防止する反射防止膜6bとオプティカルコンタクト又は接合されていてもよい。
【0054】
なお、図示を省略するが、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4に反射防止膜6bがコーティングされず、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5に、放出光L2の反射を防止する反射防止膜がコーティングされていてもよい。その場合、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4は、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5にコーティングされた反射防止膜とオプティカルコンタクト又は接合されていてもよい。
【0055】
本技術の実施形態の第3変形例に係るレーザ装置によれば、利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7を互いにオプティカルコンタクト又は接合する構造を取る場合、例えば利得媒質5の透明部材6側の面S2及び過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5に、反射防止膜がそれぞれコーティングされていなくてもよい。この場合でも、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様に、高出力化及び高繰り返し化を実現することができる。なお、本技術の実施形態の第3変形例に係るレーザ装置においても、本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置と同様に、共振器ミラー8を個別に配置せず、過飽和吸収体7の面S6に共振器ミラー8と同じ反射率の誘電体多層膜(部分反射ミラー)がコーティングされていてもよい。
【0056】
(第4変形例)
本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置は、図10に示すように、励起光源1、集光光学系2、利得媒質5、透明部材6、過飽和吸収体7及び共振器ミラー8を備える点は、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と同様である。しかし、本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置は、図10に示すように、利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7が互いにオプティカルコンタクト又は接合せずに離間して、利得媒質5と透明部材6の間及び透明部材6と過飽和吸収体7の間にエアギャップがそれぞれ形成されている点が、図1に示した本技術の実施形態に係るレーザ装置の構成と異なる。
【0057】
図10に示した利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7の部分の拡大図を図11に示す。図11に示すように、利得媒質5の透明部材6側の面S2にコーティングされた反射防止膜5bと、透明部材6の利得媒質5側の面S3にコーティングされた誘電体多層膜6aとの間にエアギャップが形成されている。また、透明部材6の過飽和吸収体7側の面S4にコーティングされた反射防止膜6bと、過飽和吸収体7の透明部材6側の面S5にコーティングされた反射防止膜7aとの間にエアギャップが形成されている。
【0058】
本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置によれば、利得媒質5、透明部材6及び過飽和吸収体7が互いに離間する場合でも、本技術の実施形態に係るレーザ装置と同様に、高出力化及び高繰り返し化を実現することができる。なお、本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置においても、本技術の実施形態の第2変形例に係るレーザ装置と同様に、共振器ミラー8を個別に配置せず、過飽和吸収体7の面S6に共振器ミラー8と同じ反射率の誘電体多層膜(部分反射ミラー)がコーティングされていてもよい。
【0059】
なお、本技術の実施形態の第4変形例に係るレーザ装置において、利得媒質5と透明部材6の間にエアギャップが形成され、且つ透明部材6と過飽和吸収体7がオプティカルコンタクト又は接合されていてもよい。また、透明部材6と過飽和吸収体7の間にエアギャップが形成され、且つ利得媒質5と透明部材6がオプティカルコンタクト又は接合されていてもよい。
【0060】
(その他の実施形態)
上記のように、本技術は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本技術を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0061】
例えば、本技術の実施形態では、利得媒質5にセラミックYb:YAGを使用した場合を例示したが、他のセラミックYAGを使用してもよい。例えば、利得媒質5として、セラミックYAGにネオジウム(Nd)を添加したセラミックNd:YAG等を使用してもよい。セラミックNd:YAGの励起波長は808nmであり、発振波長は1064nmである。
【0062】
また、本技術の実施形態でに係るレーザ装置をレーザ加工機に適用した場合を例示したが、本技術の実施形態でに係るレーザ装置は、例えばライダー(LiDAR)等の車載用のセンサにも適用可能であり、種々の用途に適用可能である。
【0063】
このように、上記の実施形態が開示する技術内容の趣旨を理解すれば、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が本技術に含まれ得ることが明らかとなろう。また、上記の実施形態及び各変形例において説明される各構成を任意に応用した構成等、本技術はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本技術の技術的範囲は上記の例示的説明から妥当な、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0064】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることができる。
(1)
励起光源と、
前記励起光源から出力された励起光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系により集光された前記励起光を受けて放出光を出力する利得媒質と、
前記利得媒質よりも表面粗さが小さく、前記利得媒質から出力された前記放出光を透過する透明部材と、
前記透明部材を透過した前記放出光の吸収に伴って透過率が増加する過飽和吸収体と、
前記透明部材を挟んで、前記利得媒質と前記過飽和吸収体との間で前記放出光を共振させる共振器と、
を備え、
前記透明部材の前記利得媒質側の面に、前記励起光を反射し、且つ前記放出光を透過する第1誘電体多層膜がコーティングされている、レーザ装置。
(2)
前記透明部材と前記利得媒質とがオプティカルコンタクト又は接合されている、前記(1)に記載のレーザ装置。
(3)
前記透明部材と前記利得媒質との間にエアギャップが形成されている、前記(1)に記載のレーザ装置。
(4)
前記利得媒質の前記透明部材側の面に、前記励起光及び前記放出光に対する反射防止膜がコーティングされている、前記(1)~(3)のいずれかに記載のレーザ装置。
(5)
前記透明部材の前記過飽和吸収体側の面に、前記放出光に対する反射防止膜がコーティングされている、前記(1)~(4)のいずれかに記載のレーザ装置。
(6)
前記透明部材と前記過飽和吸収体とがオプティカルコンタクト又は接合されている、前記(1)~(5)のいずれかに記載のレーザ装置。
(7)
前記透明部材と前記過飽和吸収体との間にエアギャップが形成されている、前記(1)~(5)のいずれかに記載のレーザ装置。
(8)
前記過飽和吸収体の前記透明部材側の面に、前記放出光に対する反射防止膜がコーティングされている、前記(1)~(7)のいずれかに記載のレーザ装置。
(9)
前記利得媒質がセラミックYAGからなる、前記(1)~(8)のいずれかに記載のレーザ装置。
(10)
前記セラミックYAGが、イッテルビウムが添加されたセラミックYAGである、前記(9)に記載のレーザ装置。
(11)
前記透明部材が二酸化珪素、サファイヤ又はダイヤモンドのいずれかである、前記(1)~(10)のいずれかに記載のレーザ装置。
(12)
前記共振器が、
前記過飽和吸収体から出力された前記放出光の一部を反射し、前記放出光の残部を透過するミラーと、
前記利得媒質の前記集光光学系側の面にコーティングされた第2誘電体多層膜と、
を備える、前記(1)~(11)のいずれかに記載のレーザ装置。
(13)
前記ミラーが、前記過飽和吸収体と離間して設けられる、前記(12)に記載のレーザ装置。
(14)
前記ミラーが、前記過飽和吸収体の前記透明部材側の面とは反対側の面にコーティングされた第3誘電体多層膜で構成される、前記(12)に記載のレーザ装置。
(15)
前記励起光源及び前記集光光学系のそれぞれを複数有し、前記利得媒質、前記透明部材、前記過飽和吸収体及び前記ミラーをアレイ構造とした、前記(1)~(4)のいずれかに記載のレーザ装置。
【符号の説明】
【0065】
1…励起光源、2…集光光学系、3…コリメートレンズ、4…集光レンズ、5…利得媒質、5a,5x,6a,7c…誘電体多層膜、5b,6b,7a,7b…反射防止膜、6…透明部材、7…過飽和吸収体、8…共振器ミラー、20…レーザ加工機、21…レーザ装置、22…アンプ、23…波長変換部、24…パワー調整部、25…スキャン光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11