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特許7396305画像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】画像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20231205BHJP
   G02B 30/00 20200101ALI20231205BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231205BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B30/00
G02B3/00 A
H04N5/64 511A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020571110
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2020002873
(87)【国際公開番号】W WO2020162258
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019021184
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 健
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041281(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170497(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0045176(US,A1)
【文献】国際公開第2009/011153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
G02B 30/00
G02B 3/00
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一の像各々に対応する光が入射するレンズ部と、
前記レンズ部を通過した前記光が入射する拡大部と
を具備し、
前記レンズ部は、
前記複数の同一の像各々に対応するレンズを少なくとも2つ以上含む第1のレンズ群と、
前記第1のレンズ群により屈折した前記光が入射する第2のレンズ群と、
前記第2のレンズ群により屈折した前記光を集光する集光レンズと
を有する
画像表示装置。
【請求項2】
請求項に記載の画像表示装置であって、
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を変調する空間光変調器と
をさらに具備する画像表示装置。
【請求項3】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記空間光変調器は、前記第1のレンズ群を構成する複数のレンズ各々に対応する第1の像面において、前記複数の同一の像各々に対応する光を結像させる
画像表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記空間光変調器は、前記複数の同一の像各々に対応する光の結像位置を、前記光源の光軸方向に変更可能に構成される
画像表示装置。
【請求項5】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記レンズ部は、前記複数の同一の像各々に対応する光が合成された合成光を形成する
画像表示装置。
【請求項6】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記レンズ部は、前記拡大部との間において、前記合成光を第2の像面で結像させる
画像表示装置。
【請求項7】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記第2の像面における前記合成光の最外光線角度は、前記第1の像面における光の最外光線角度よりも大きい
画像表示装置。
【請求項8】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記第1及び第2のレンズ群は、前記合成光にエアギャップを形成するレンズピッチ及び焦点距離を有し、
前記集光レンズ及び前記拡大部は、前記合成光に前記エアギャップを形成する焦点距離を有する
画像表示装置。
【請求項9】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記拡大部は、前記合成光を平行光にコリメートするホログラムレンズである
画像表示装置。
【請求項10】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記第2のレンズ群と前記集光レンズとの間において、アパーチャ(絞り)をさらに具備する画像表示装置。
【請求項11】
請求項に記載の画像表示装置であって、
前記第1及び第2のレンズ群は、マイクロレンズアレイである
画像表示装置。
【請求項12】
複数の同一の像各々に対応する光が入射するレンズ部と、
前記レンズ部を通過した前記光が入射する拡大部と
を有する画像表示装置と、
前記拡大部により拡大された像を表示する表示部と
を具備し、
前記レンズ部は、
前記複数の同一の像各々に対応するレンズを少なくとも2つ以上含む第1のレンズ群と、
前記第1のレンズ群により屈折した前記光が入射する第2のレンズ群と、
前記第2のレンズ群により屈折した前記光を集光する集光レンズと
を有する
ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、画像表示装置及び当該画像表示装置を有するヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイ等のアイウェアに、レンズアレイを用いた画像表示装置を適用する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、光源と、光源からの光を結像させるレンズと、これらをラスタースキャンすることによって像を形成する可動ミラーとを有する画像表示装置の光学系が記載されている。この光学系においては、像の形成位置にマルチレンズアレイ、マイクロレンズアレイが配置されることによって光線の見込み角が増大されたのち、像が拡大される。これにより、アイウェアを装着したユーザに広視域な画像がユーザに提示される。ここで、広視域とは、ユーザが像を確認可能は範囲が広いことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/175549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ヘッドマウントディスプレイ等のアイウェアにおいて、広視域な画像をユーザに提示可能な技術が求められている。
【0005】
本技術は以上のような事情に鑑み、例えば、広視域な画像をユーザに提示することが可能な画像表示装置及びこの画像表示装置を有するヘッドマウントディスプレイを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本技術の一形態に係る画像表示装置は、レンズ部と、拡大部とを有する。
上記レンズ部には、複数の同一の像各々に対応する光が入射する。
上記拡大部には、上記レンズ部を通過した上記光が入射する。
【0007】
上記レンズ部は、上記複数の同一の像各々に対応するレンズを少なくとも2つ以上含む第1のレンズ群を有してもよい。
【0008】
上記レンズ部は、
上記第1のレンズ群により屈折した上記光が入射する第2のレンズ群と、
上記第2のレンズ群により屈折した上記光を集光する集光レンズと
をさらに有してもよい。
【0009】
光を出射する光源と、
上記光源から出射された光を変調する空間光変調器と
をさらに具備してもよい。
【0010】
上記空間光変調器は、上記第1のレンズ群を構成する複数のレンズ各々に対応する第1の像面において、上記複数の同一の像各々に対応する光を結像させてもよい。
【0011】
上記空間光変調器は、上記複数の同一の像各々に対応する光の結像位置を、上記光源の光軸方向に変更可能に構成されてもよい。
【0012】
上記レンズ部は、上記複数の同一の像各々に対応する光が合成された合成光を形成してもよい。
【0013】
上記レンズ部は、上記拡大部との間において、上記合成光を第2の像面で結像させてもよい。
【0014】
上記第2の像面における上記合成光の最外光線角度は、上記第1の像面における光の最外光線角度より大きくてもよい。
【0015】
上記第1及び第2のレンズ群は、上記合成光にエアギャップを形成するレンズピッチ及び焦点距離を有し、
上記集光レンズ及び上記ホログラムレンズは、上記合成光に上記エアギャップを形成する焦点距離を有してもよい。
【0016】
上記拡大部は、上記合成光を平行光にコリメートするホログラムレンズであってもよい。
【0017】
上記第2のレンズ群と上記集光レンズとの間において、アパーチャ(絞り)をさらに具備してもよい。
【0018】
上記第1及び第2のレンズ群は、マイクロレンズアレイであってもよい。
【0019】
上記課題を解決するため、本技術の一形態に係るヘッドマウントディスプレイは、画像表示装置と、表示部とを有する。
上記画像表示装置は、レンズ部と、拡大部とを有する。
上記レンズ部には、複数の同一の像各々に対応する光が入射する。
上記拡大部には、上記レンズ部を通過した上記光が入射する
上記表示部は、上記拡大部により拡大された像を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本技術の第1の実施形態に係る画像表示装置の光学系の構成例を簡略的に示す模式図である。
図2】上記画像表示装置の光学系の構成を平面的に示す模式図である。
図3】第1の像面に投影される像の一例と、第2の像面に投影される像の一例とを併記して示す図である。
図4】本技術の第2の実施形態に係る画像表示装置の光学系の構成例を簡略的に示す模式図である。
図5】本技術の変形例に係るレンズの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本技術の実施形態を説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
[画像表示装置の構成]
図1は、本技術の第1の実施形態に係る画像表示装置の光学系の構成例を簡略的に示す模式図である。画像表示装置100は、図1に示すように、光源10と、集光レンズ20と、SLM(空間光変調器:Spatial Light Modulator)30と、反射ミラー40と、レンズアレイ群50と、ホログラムレンズ60とを有する。なお、図1に示すX,Y及びZ軸は相互に直交する3軸方向であり、以下の図においても共通である。
【0023】
光源10は、典型的にはレーザーのような可干渉性のある光源であるがこれに限られず、点光源あってもよく、コリメートされた光源であってもよい。光源10からでた光は集光レンズ20に向かって照射される。
【0024】
集光レンズ20は、光源10から照射された光を集光させるためのレンズである。集光レンズ20により集光された光は、SLM30に向かって照射される。集光レンズ20は、単レンズであってもよく、組み合わせレンズであってもよい。集光レンズ20は、SLM30よりも光の入射側において光源10と対向するように配置される。
【0025】
SLM30は、ユーザに提示される再生像(ホログラム像)のもととなる干渉縞(回折パターン)を表示するデバイスであり、光源10からの光の空間的な分布(振幅、位相、偏光など)を電気的に制御することによって光を変調可能に構成される。
【0026】
SLM30は、集光レンズ20から照射された入射光を回折させ、この回折光を反射ミラー40に向かって反射させる。本実施形態のSLM30は、典型的には反射型の空間光変調器であるがこれに限られず、例えば透過型の空間光変調器であってもよい。
【0027】
反射ミラー40は、SLM30から反射された回折光をレンズアレイ群50に向かって反射させるミラーである。反射ミラー40により反射された回折光は、レンズアレイ群50を通過する。反射ミラー40は、SLM30に対して所定の距離をおいて対向するように配置される。本実施形態の反射ミラー40は、例えばSLM30に表示された干渉縞により回折された回折光の色分散やホログラムレンズ60の色分散を補正する機能を有する。
【0028】
レンズアレイ群50は、図1に示すように、第1マイクロレンズアレイ50aと、第2マイクロレンズアレイ50bと、凸レンズ50cとを有する。レンズアレイ群50は、特許請求の範囲の「レンズ部」の一例である。
【0029】
第1マイクロレンズアレイ50aは、一軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数の凸レンズ51aからなる。本実施形態の凸レンズ51aは、当該一軸方向及びZ軸方向に沿って、2次元的に配置されることが好ましい。凸レンズ51aは、光源10側の面が所定の曲率半径を持つ曲面であり、この曲面に対して反対側の面が平面である。第1マイクロレンズアレイ50aは、特許請求の範囲の「第1のレンズ群」の一例である。
【0030】
凸レンズ51aの間隔(レンズピッチ)は、SLM30に対して相対的に小さすぎると再生像の分解能が落ち、大きすぎると当該再生像を構成する光線の空気幅(エアギャップ)が大きくなりユーザの眼の瞳孔サイズを大幅に超えてしまうことから、例えば1mm以上5mm以下が好ましく、0.8mm以上3.4mm以下がより好ましい。ここで、レンズピッチとは、隣接する凸レンズ51a同士の間隔を意味する。
【0031】
凸レンズ51aは、典型的には平凸レンズであるがこれに限られず、例えば両凸レンズ又は凸メニスカスレンズであってもよい。
【0032】
凸レンズ51aは、例えば、ガラス、プラスチック、石英又は蛍石からなるものであってもよいが、これらの材料に限定されない。凸レンズ51aの数は2個以上であれば特に限定されないが、レンズ数が少ないと再生像を構成する光線の光線数が少なくなり視域を大きく確保することが難しく、レンズ数が多すぎると再生像の分解能が落ちることから、例えば2個以上10個以下が好ましい。この場合、凸レンズ51aの配列方向に直交するZ軸方向における凸レンズ51aの配列数は2列以上10列以下が好ましい。
【0033】
凸レンズ51aは、反射ミラー40により反射された回折光を屈折させ、第2マイクロレンズアレイ50bに導く機能を有する。第2マイクロレンズアレイ50bは、特許請求の範囲の「第2のレンズ群」の一例である。
【0034】
第2マイクロレンズアレイ50bは、図1に示すように、複数の凸レンズ51aが配列される方向と直交する方向に所定の間隔をあけて第1マイクロレンズアレイ50aと対向する。
【0035】
第2マイクロレンズアレイ50bは、複数の凸レンズ51aの配列方向と平行な方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数の凸レンズ51bからなる。本実施形態の凸レンズ51bは、当該配列方向及びZ軸方向に沿って、2次元的に配置されることが好ましい。ここで、複数の凸レンズ51b各々は、典型的には、複数の凸レンズ51a各々と対向する。凸レンズ51bは、光源10側の面が平面であり、この反対側の面が所定の曲率半径を持つ曲面である。
【0036】
凸レンズ51b間の間隔(レンズピッチ)は、典型的には凸レンズ51a間の間隔と同じであるがこれに限られず、当該間隔と異なっていてもよい。また、図1に示す凸レンズ51bは平凸レンズであるがこれに限られず、例えば両凸レンズ又は凸メニスカスレンズであってもよい。
【0037】
凸レンズ51bは、例えば、ガラス、プラスチック、石英又は蛍石からなるものであってもよいが、これらの材料に限定されない。凸レンズ51bは、凸レンズ51aにより屈折された回折光をさらに屈折させ、凸レンズ50cに導く機能を有する。
【0038】
凸レンズ50cは、凸レンズ51bにより屈折された回折光を集光させるための集光レンズである。凸レンズ50cは、光源10側の面が所定の曲率半径を持つ曲面であり、この曲面に対して反対側の面が平面である。凸レンズ50cは、特許請求の範囲の「集光レンズ」の一例である。
【0039】
凸レンズ50cは、典型的には平凸レンズであるがこれに限られず、両凸レンズ又は凸メニスカスレンズであってもよい。凸レンズ50cは、例えば、ガラス、プラスチック、石英又は蛍石からなるものであってもよいが、これらの材料に限定されない。
【0040】
凸レンズ50cは、凸レンズ51bにより屈折された回折光をさらに屈折させ、当該回折光を凸レンズ50cとホログラムレンズ60との間において結像させる。凸レンズ50cは、第2マイクロレンズアレイ50bよりも光の出射側において複数の凸レンズ51bの全てと対向するように配置される。凸レンズ50cはユーザの視界を妨げないように、第2マイクロレンズアレイ50bに近接して配置されることが好ましい。
【0041】
ホログラムレンズ60は、光源10側の面が平面であり、この平面に対して反対側の面が曲面である(図2参照)。ホログラムレンズ60には、レンズアレイ群50により屈折した回折光が入射する。ホログラムレンズ60は、ガラス、プラスチック、石英又は蛍石からなるものであってもよいが、これらの材料に限定されない。ホログラムレンズ60は、特許請求の範囲の「拡大部」の一例である。
【0042】
ホログラムレンズ60は、図1に示すように、ユーザの眼と所定の間隔をあけて対向するように配置される。ホログラムレンズ60とユーザの眼との間隔は、例えば20mm以上50mm以下程度である。
【0043】
ホログラムレンズ60は、焦点位置や集光形状を自在に成形可能に加工されたレンズであり、本実施形態のホログラムレンズ60は、レンズアレイ群50とホログラムレンズ60との間において結像後の回折光を平行光にコリメートし、ユーザの眼に届ける。これにより、ユーザは虚像を確認する。
【0044】
本実施形態のホログラムレンズ60は、典型的には反射型のホログラムレンズであるがこれに限られず、透過型のホログラムレンズであってもよい。なお、ホログラムレンズ60は偏心しており、この偏心とは、ホログラムレンズ60に入射する参照光及び物体光のいずれか又は両方に対してホログラムレンズ60の中心軸(ホログラムレンズ60の長手方向中央を通る軸心)が傾斜していることを意味する。
【0045】
以上、画像表示装置100の光学系の構成例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよいし、各構成要素の機能に特化した部材により構成されていてもよい。かかる構成は、実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更され得る。
【0046】
[画像表示装置の動作]
図2は、画像表示装置100の光学系の構成を平面的に示す模式図であり、当該光学系における光線追跡結果を示す図である。以下、画像表示装置100の動作について図2を適宜参照しながら説明する。
【0047】
先ず、光源10から照射された光が集光レンズ20に集光され、この集光された光がSLM30に照射される。SLM30に照射された光は、その一部がSLM30に表示されている干渉縞により回折し、反射ミラー40に向かって直進する。反射ミラー40は、SLM30により回折された回折光をレンズアレイ群50に向かって反射させる。
【0048】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、SLM30の空間変調作用によって、反射ミラー40に反射された回折光が複数の凸レンズ51a各々の光源側表面近傍に位置する像面S1(第1の像面)において結像し、凸レンズ51a毎に対応した実像が像面S1に投影される。本実施形態のSLM30は、空間上に実像が投影される結像位置、即ち、像面S1の空間上の位置を光源10の光軸方向に変更可能に構成される。
【0049】
これにより、後述する像面S2(第2の像面)の空間上の位置も光軸方向に変更可能となるので、像面S2に投影されホログラムレンズ60により拡大された虚像の奥行表現が可能となり、当該虚像の3次元像を得ることができる。これは、眼の輻輳運動と焦点調節の機能のアンバランスを意味する所謂「輻輳と調節の矛盾」を解決可能とするものである。なお、上記のSLM30の空間変調作用とは、SLM30に表示される干渉縞(回折パターン)に可干渉性の高い光をあてることによって再生像を空間上に投影することを意味する。SLM30は当該再生像の3次元的な奥行きを表現することができるデバイスである。
【0050】
図3は、像面S1に投影された実像の一例と、像面S2に投影された虚像の一例とを併記して示す図である。像面S1においては、例えば、図3aに示すような実像が投影される。本実施形態では、複数の凸レンズ51a各々に対応した像面S1毎に図3aに示すようなほぼ同一又は同一の実像が投影される。これらの実像は、特許請求の範囲の「複数の同一の像」の一例である。
【0051】
実像を結像後の回折光はレンズアレイ群50に入射し、第1マイクロレンズアレイ50a,第2マイクロレンズアレイ50b及び凸レンズ50cにより屈折されて、図2に示すように凸レンズ50cとホログラムレンズ60との間において合成される。これにより、像面S1よりも見込み角の大きな像面S2が形成され、複数に分割されていた実像が合成、拡大された虚像が得られる。
【0052】
より詳細には、図3aに示される実像の星G1に対応する光が回折光L1であり、星G2に対応する光が回折光L2であり、星G3に対応する光が回折光L3である場合に、実像を結像後の回折光L1,L2,L3は凸レンズ51aにより屈折されて凸レンズ51bに集光される。この際、凸レンズ51bに屈折された回折光L1,L2,L3各々の光線角度は像(例えば図3aの星G1,G2,G3)毎にそれぞれ異なるものとなり、複数の凸レンズ51b各々を通過後の回折光L1(回折光L2,回折光L3)が平行光となる。そして、この複数の回折光L1(回折光L2,回折光L3)からなる平行光が凸レンズ50cに入射することによって、像面S2(凸レンズ50cの焦点位置)において結像する。即ち、像面S1で分割された実像が像面S2において合成される。
【0053】
本実施形態では、空間上の像面S2に虚像が投影されることから、レンズ上に像を投影して拡大するこれまでの方式と比較して、レンズパターンやレンズの製造誤差による不要なパターンがユーザにより確認されることが抑制される。なお、像面S2においては、像面S1で図3aに示すような実像が投影された場合、例えば図3bに示すような当該実像に対して反転した実像が再結像される。
【0054】
ここで、本実施形態では、像面S2において結像された合成光(例えば図3bの各星にそれぞれ対応した平行光)の見込み角βが最外光線角度αより大きい場合に、合成光に間隔D(エアギャップ)が生まれるように、凸レンズ51a,51bのレンズピッチと、凸レンズ51a,51b,50cとホログラムレンズ60の焦点距離が設定される。これにより、合成光に光線間の間隔D(エアギャップ)が生まれ、間隔Dがユーザの視域を確保する上での最適値となる。
【0055】
間隔Dは、ユーザの視域をE、最外光線角度をα、凸レンズ群50aの一次元分割数をn、ホログラムレンズ60の焦点距離をf60とした場合に、例えば下記式(1)により算出される。
【0056】
E=f60・tanα+D(n-1)・・・(1)
【0057】
また、像面S1において結像された回折光の最外光線角度(SLM30の見込み角)αは、SLM30の画素ピッチをP30、光源10の光源波長をλ10とした場合に、例えば下記式(2)により算出される。
【0058】
2・P30・sin(α/2)=λ10・・・(2)
【0059】
具体的には、凸レンズ51a,51bのレンズピッチと、凸レンズ51a,51b,50cとホログラムレンズ60の焦点距離は、例えば間隔Dが0.2mm以上1.0mm以下となるように設定される。
【0060】
これにより、合成光を構成する光線がユーザの眼の瞳孔サイズに捉えられる機会が増える、即ち、ユーザの眼が旋回する動きの範囲内において捉えられる当該光線数が増えるため視域(ユーザが像を確認可能な範囲)が拡大するという効果がある。これは、画像表示装置100が例えばヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)等のアイウェアに適用された場合に、アイウェアのかけずれによるユーザの不快感を緩和させ、より多くのユーザに適したアイウェアを提供可能とする。
【0061】
虚像を結像後の回折光(合成光)は、ホログラムレンズ60により平行光にコリメートされ、ユーザの眼に届けられる。これにより、像面S2に投影された虚像が小さくならずに、当該虚像が拡大された像がユーザの網膜上に結像されるので、画像表示装置100が例えばHMD等のアイウェアに適用された場合に、実像よりも画角が広角な画像(虚像)がHMDの表示部(図示略)を介してユーザに提示される。
【0062】
なお、上記の表示部とは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置である。この表示装置は、テキスト及び画像などの映像に加えて、音声もしくは音響などの音声またはバイブレーションなども出力してもよい。
【0063】
<第2の実施形態>
図4は、本技術の第2の実施形態に係る画像表示装置200の光学系の構成例を簡略的に示す模式図である。以下、第1の実施形態と同様の構成、機能については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態では、画像表示装置200がビームスプリッタ70を有し、反射ミラー40が無く、レンズアレイ群50にかえてレンズアレイ群80が採用される点で第1の実施形態と異なる。
【0065】
ビームスプリッタ70は、レンズアレイ群80とSLM30との間に設けられ、光源10から照射された光の一部をSLM30に向かって反射させる。ビームスプリッタ70は、
光源10からの光をSLM30に対して大よそ垂直に反射させる。SLM30により回折、変調された回折光はビームスプリッタ70を透過してレンズアレイ群80に入射する。
【0066】
レンズアレイ群80は、図4に示すように、凸レンズ群80aと凸レンズ80bとを有する。凸レンズ群80aは、一軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数の凸レンズ81aからなる。凸レンズ群80は、画像表示装置200が適用されるデバイスの装置構成のコンパクト化を図る観点から、ビームスプリッタ70の端部と近接して配置されるのが好ましい。
【0067】
凸レンズ81aは、ビームスプリッタ70側及び凸レンズ80b側の両面が所定の曲率半径を持つ曲面である。凸レンズ81aは、典型的には両凸レンズであるがこれに限られず、例えば平凸レンズ又は凸メニスカスレンズであってもよい。
【0068】
凸レンズ81aの数は2個以上であれば特に限定されないが例えば2個以上10個以下が好ましい。この場合、凸レンズ81aの配列方向に直交するZ軸方向における凸レンズ81aの配列数は2列以上10列以下が好ましい。
【0069】
凸レンズ81aは、SLM30に表示された干渉縞により回折された回折光を屈折させ、凸レンズ80bに導く機能を有する。
【0070】
凸レンズ80bは、図4に示すように、複数の凸レンズ81aの配列方向と直交する方向に所定の間隔をあけて凸レンズ群80aと対向する。凸レンズ80bはユーザの視界を妨げないように、凸レンズ群80aに近接して配置されることが好ましい。なお、第2の実施形態においては、凸レンズ群80aと凸レンズ80bとの間にアパーチャ(絞り)が設けられてもよい。
【0071】
凸レンズ80bは、凸レンズ81a近傍に凸レンズ81aとほぼ同サイズに投影された再生像(実像)を、凸レンズ81aにより再結像させるための集光レンズである。凸レンズ80bは、凸レンズ群80a側及びホログラムレンズ60側の両面が所定の曲率半径を持つ曲面である。
【0072】
凸レンズ80bは、典型的には両凸レンズであるがこれに限られず、例えば平凸レンズ又は凸メニスカスレンズであってもよい。凸レンズ80bは、例えば、ガラス、プラスチック、石英又は蛍石からなるものであってもよいが、これらの材料に限定されない。
【0073】
凸レンズ80bは、凸レンズ81aにより屈折された回折光をさらに屈折させ、当該回折光を凸レンズ80bとホログラムレンズ60との間において結像させる。
【0074】
第2の実施形態の画像表示装置200は、第1の実施形態の画像表示装置100と同様に動作する。これにより、上述した第1の実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0075】
<変形例>
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術は上述の実施形態に限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
例えば、上記第1の実施形態の画像表示装置100の光学系は図1に示す構成に限定されず、第2マイクロレンズアレイ50bと凸レンズ50cとの間にアパーチャ(絞り)が設けられてもよい。これにより、ユーザの眼に不要光が入り、SLM30により再生された再生像(ホログラム像)の乱れが抑制される。
【0077】
図5は、本技術の変形例に係るレンズの構成例を示す模式図である。上記第1の実施形態の画像表示装置100の光学系においては、凸レンズ51aと凸レンズ51bとが別体的に構成されるがこれに限られず、凸レンズ51aと凸レンズ51bとが一体的に構成されてもよい。この場合、凸レンズ51a及び凸レンズ51bと共に又はこれらにかえて図5に示すような、レンズの長手方向に直交する方向に突出する曲面状の凸部が当該長手方向に沿って所定の間隔をあけて設けられる構成であってもよい。
【0078】
また、上記第2の実施形態の画像表示装置200の光学系では、凸レンズ80bが単一のレンズであるがこれに限られず、凸レンズ80bにかえて、凸レンズ群が採用されてもよい。この場合、虚像面を効率的に形成させるため、あるいは、SLM30の補正量を低減させるために、当該凸レンズ群にチルト成分を持たせてもよい。これにより、SLM30での再生像作成時に光学系の収差を補正する必要がなくなる。
【0079】
さらに、上記第1及び第2の実施形態の画像表示装置100,200の光学系においては、像面S1に奥行きのある実像が投影されてもよい。これにより、像面S2に奥行きのある虚像が投影される。この場合、複数の像面S1各々に投影される実像は完全に同じ実像ではなく、像面S2において各実像が重畳されるように予め調整されることによって画質の劣化が抑制される。
【0080】
加えて、上記第1及び第2の実施形態の画像表示装置100,200の光学系においては、SLM30が採用されるがこれに限られず、例えばSLM30にかえてマイクロミラーが採用されてもよい。あるいは、光源10及びSLM30にかえて例えばマイクロディスプレイが採用されてもよい。
【0081】
<補足>
本技術の画像表示装置100,200は典型的にはHMD等のアイウェアに適用されるがこれに限られず、画像を表示することが可能な種々の装置に適用されてもよい。
【0082】
さらに、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本技術の好適な実施形態について詳細に説明したが、本技術はかかる例に限定されない。本技術の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本技術の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0085】
(1)
複数の同一の像各々に対応する光が入射するレンズ部と、
上記レンズ部を通過した上記光が入射する拡大部と
を具備する画像表示装置。
(2)
上記(1)に記載の画像表示装置であって、
上記レンズ部は、上記複数の同一の像各々に対応するレンズを少なくとも2つ以上含む第1のレンズ群を有する
画像表示装置。
(3)
上記(2)に記載の画像表示装置であって、
上記レンズ部は、
上記第1のレンズ群により屈折した前記光が入射する第2のレンズ群と、
上記第2のレンズ群により屈折した前記光を集光する集光レンズと
をさらに有する画像表示装置。
(4)
上記(3)に記載の画像表示装置であって、
光を出射する光源と、
上記光源から出射された光を変調する空間光変調器と
をさらに具備する画像表示装置。
(5)
上記(4)に記載の画像表示装置であって、
上記空間光変調器は、上記第1のレンズ群を構成する複数のレンズ各々に対応する第1の像面において、上記複数の同一の像各々に対応する光を結像させる
画像表示装置。
(6)
上記(4)又は(5)に記載の画像表示装置であって、
上記空間光変調器は、上記複数の同一の像各々に対応する光の結像位置を、上記光源の光軸方向に変更可能に構成される
画像表示装置。
(7)
上記(5)又は(6)に記載の画像表示装置であって、
上記レンズ部は、上記複数の同一の像各々に対応する光が合成された合成光を形成する
画像表示装置。
(8)
上記(7)に記載の画像表示装置であって、
上記レンズ部は、上記拡大部との間において、上記合成光を第2の像面で結像させる
画像表示装置。
(9)
上記(8)に記載の画像表示装置であって、
上記第2の像面における上記合成光の最外光線角度は、上記第1の像面における光の最外光線角度よりも大きい
画像表示装置。
(10)
上記(7)から(9)のいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
上記第1及び第2のレンズ群は、上記合成光にエアギャップを形成するレンズピッチ及び焦点距離を有し、
上記集光レンズ及び上記ホログラムレンズは、上記合成光に前記エアギャップを形成する焦点距離を有する
画像表示装置。
(11)
上記(7)から(10)のいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
上記拡大部は、上記合成光を平行光にコリメートするホログラムレンズである
画像表示装置。
(12)
上記(3)から(11)のいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
上記第2のレンズ群と上記集光レンズとの間において、アパーチャ(絞り)をさらに具備する画像表示装置。
(13)
上記(3)から(12)のいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
上記第1及び第2のレンズ群は、マイクロレンズアレイである
画像表示装置。
(14)
複数の同一の像各々に対応する光が入射するレンズ部と、
上記レンズ部を通過した上記光が入射する拡大部と
を有する画像表示装置と、
上記拡大部により拡大された像を表示する表示部と
を具備するヘッドマウントディスプレイ。
【符号の説明】
【0086】
光源・・・10
集光レンズ・・・20
SLM(空間光変調器)・・・30
反射ミラー・・・40
レンズアレイ群(レンズ部)・・・50
第1のマイクロレンズアレイ(第1のレンズ群)・・・50a
第2のマイクロレンズアレイ(第2のレンズ群)・・・50b
凸レンズ・・・51a,51b,50c(集光レンズ)
ホログラムレンズ(拡大部)・・・60
画像表示装置・・・100,200
図1
図2
図3
図4
図5